核廃絶を比較衡量してみよう

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ノーベル平和賞で核兵器廃絶を運動する団体が受賞しました。 

ノーベル平和賞授与式で被爆者のサーロー節子さんが、核兵器を「必要悪ではなく、絶対悪だ」と述べたのは記憶に新しいことです。

Photoサーロー節子氏

サーロー節子氏は核兵器が「絶対悪」な以上、それに反対する自分たちは「絶対善」だと信じています。

大変な苦難を受けた被爆者にこう言われると、大部分の人々はなにも言えなくなるわけですが、あえて言うことにします。 

このような「絶対悪」という極端な価値判断をすると、本来見えるものが見えなくなってしまいますよ、と。

なぜならそこには、廃絶したらどのようなデメリットをこうむるのか、という思考回路そのものが欠落しているからです。

残念ながら、私はサーロ節子氏のいう核の悲惨さは共有しますが、ではどうしたらその悲惨から逃れられるのかという道筋が分かりません。

これでは思考停止です。 どうしたら核廃絶ができるのか、あるいは削減できるのかというリアリティがないのです。

「絶対悪」という価値判断を一回はずしてみましょう。

廃絶した場合の利益と、存続するデメリットを秤にかけてみねばなりません。 

この考え方を比較衡量と呼びます。先日、記事で書きましたので、結論だけ言えば、今、核戦争にならないのは核兵器が大国同士でバランスしているからです。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/12/post-aaab.html

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サーロー節子氏が聞けば怒るような問いをあえて言えば、広島になぜ原爆が落されたのでしょうか?日本人はそのことを考えてみる必要があります。

いくつも答えはありますが、そのひとつに日本が核兵器を保有していなかったからだということも入れておいてもよいでしょう。

原爆は開発の初歩的段階にも達していなかったし、日本は戦争を継続すら力すらうしなって丸腰の状態に等しい状況でした。

だから、米国は原爆を投下したのです。

もし日本の原爆製造がかなりのレベルに達していれば、その可能性を考慮してそうとうに躊躇したはずです。

核兵器を防ぐには核兵器しかない、これが冷厳な現実なのです。

また戦後の歴史をみると核の恐怖によって、通常兵器による戦争もしにくくなっています。 

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大国は相手が核保有国でなければ、ようしゃなく攻撃をしかけています。典型はフォークランド(マルビナス)紛争です。

ここでもう一度同じ問いをしてみましょう。当時アルゼンチンが核兵器保有していたら、サッチャーは攻撃できただろうか、と。

サッチャーは一度譲歩すると、アルゼンチンに次々と譲歩を強いられ、国民の中に不満が増大するだろうと思っていました。

また、サッチャーは当時どんそこの英国経済に大鉈を奮う決意を固めていました。そのために支持を回復することに迫られていたのです。

そして最後にサッチャーの背中を後押ししたのは、アルゼンチンは非核保有国だったからです。

仮に核兵器を廃絶すれば、人類は核戦争の悪夢から自由になった代償として、通常兵器を使った戦争が頻発するもうひとつの悪夢の世界に住むことになります

世界中の核保有国が原爆を手放したとしても、北朝鮮と中国だけは握りしめて放さないでしょうから、唯一の核保有国たるこの二つの独裁国家は、スーパーパワーとして世界に君臨することができます。 

冗談のような話ですが、事実です。北朝鮮と中国の核を問わない核廃絶運動は無意味です。

残念ながらこの「力の均衡」がガッチリできあがってしまったために、現実的にできることは少なく、お互いに核兵器を減らしていこうとする核兵器削減交渉や、新たな核兵器保有国をなくすことていどしかできません。

日本は中国、ロシア、北朝鮮の核ミサイルの標的となっているが故に、これを防ぐためには米国の核の拡大抑止に依存さぜるを得ません。他に選択肢がないからです。

「核の拡大抑止」とは聞き慣れない言葉ですが、自国に対する核攻撃を抑止することを「基本抑止」といい、同盟国に対する核攻撃を抑止することを拡大抑止と呼びます。一般的には「核の傘」と呼んでいます。

この核の傘をはずせば、中国や北は大いに喜ぶでしょう。核ミサイルで脅迫しながら、いつでも通常兵器で侵攻することが可能になるからです。

侵攻せずとも、自国の主張に絶対服従させることも可能となります。

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ただし、日本は「倫理戦としての核廃絶」をしています。 安倍氏はオバマを広島に訪問させることを大きな政治課題としていました。

その理由は日米和解の儀式でもあったと同時に、日本が改めて「被爆国」であることを世界にアピールしたとも言えます。

日本が意識的に「唯一の被爆国」という外交カードを、日本に対して核ミサイルを向けている核保有国に突きつけたとも見ることが出来ます。

そのために、核兵器禁止条約には参加しなくとも、(それ以前に「核の傘」に依存する国は加入できませんが)、核廃絶を提唱し続ける国として自らを位置づけたのです。

これも道義的カードを使った立派な間接的核抑止力です。

比較衡量してみましょう。

米国の核に拡大抑止してもらうことの道義的後ろめたさと、現実に米国の核の拡大抑止によって核ミサイルの脅威から守られていることの、どちらが重いのか天秤にかけてみることです。

天秤は二つの重りしか乗りません。他国への絶対的服従か、さもなくば米国との同盟か、です。

双方イヤならば、米国との同盟関係を精算して、独自核武装という方法もないわけではありませんが、その代償は想像を越えて巨大だと申し上げておきましょう。

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広島高裁判決に従えばすべての科学文明は全否定されてしまう

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去る12月13日、伊方原発3号機の運転差し止めが広島高裁から出ました。 

またかい、というところです。訴えた市民団体側は「歴史的転換点」などと言っていますが、どうなりますか。 

野々上裁判長は判決でこんなことを言っています。

「熊本県の阿蘇での大規模噴火が起きた際に、原発がおよそ130kmの距離にある。およそ9万年前の阿蘇カルデラでの噴火で火砕流が原発の敷地内に到達した可能性が小さいとは言えないとして、立地に適さない」

私は福井地裁・樋口裁判官や大津地裁・山本裁判官の判決などを読んできましたが、もういいかげんにしてくれという気分です。 
関連記事
樋口判決 http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/post-c2ac.html
山本判決http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/post-32fe.html

そもそもこのような国のエネルギー政策を、司法が裁くこと自体がナンセンスです。 

司法は短時間の審理で、規制委の専門家の意見を否定したわけですが、どこでそんな素晴らしい知見を民事専門の野々上裁判長閣下がいつ蓄積されておられたのでしょうか。

「歴史的転換点」と市民団体側は言っていますが、なにも変わりません。 

あくまでも広島高裁判決は「司法としての判断」であって、国の「政府としての判断」でもなければ、再稼働審査の権限を持つ「規制委の判断」でもないからです。

司法に 国の判断も規制委員会の判断も超越できる権限を、一体誰が与えたのでしょうか。

高裁レベルでひっくり返ったというだけのことで、メディアはワーワーいいなさんな。 

当然のこととして四国電力の方はこれを不服として広島高裁に異議申し立てをするでしょう。 

そして決定の効力を一時的に止めるために、執行停止にも取りかかるはずです。 

つまり広島高裁を舞台にして2回戦があるわけですし、今回差し止めを命じた野々上裁判長は今月下旬に定年退官となりますから、次は別の裁判長が審理を担当するので、どのような判決になるのか、むしろそちらを注目しましょう。 

今回の野々上判決はいわば、隕石がぶつかったら原発は壊れるぞというようなもので、9万年前の阿蘇のカルデラから火砕流が流れて、海を渡って130㎞伊方原発に達するということを述べています。 

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正直、論評する気にもなりません。このていどのレベルなら地震による破壊を言った山本判決のほうがまだ科学的香りが残っていました。

いいですか、そもそも、福島第1原発の事故はどうして起きたのでしょうか。そこからはっきりさせましょう。

何万年に一回あるかないか誰にも分からない、広島高裁のいう「カルデラの大噴火」なのか、あるいは大津地裁がいう「耐震基準を上回った大地震によって破壊された」のか、どちらなんでしょう。

どちらでもありません。これについては、とっくに規制委が結論を出しています。

福島第1は巨大地震に耐えましたが、その後の津波による配電盤の水没によって全交流電源ブラックアウトに陥りました。これが事故原因です。

かつては、唯一国会事故調のみが、津波以前の地震での破損を「匂わせている」に止まっていましたが、今は否定されています。

福島第1の事故原因に対して溝口判決のように安全性に対する異論を唱えるならまだ納得できますが、まったく別次元の9万年前のAso4を持ち出すこと自体がぶっ飛んでいます。

まだ福島第1事故の時に言われた貞観地震(869年)のほうが、はるかにリアリティがありました。せいぜい千年に一度ですからね。

それを言うに事欠いて9万年前ときたもんだ。もう私、開いた口が塞がりませんでしたよ。

万年単位で危険性判定ができるのなら、地上にあるすべてが「危険」です。

Aso4は阿蘇山最後の破局噴火と呼ばれていて、現在の阿蘇山がAso4レベルの大噴火を起こす可能性は、かぎりなくゼロです。
破局噴火 - Wikipedia
阿蘇山 - Wikipedia

科学にゼロはありませんから、ありえないとは言いませんが、火山学者ですぐに起きるという人がいたら、そうとうにレアな人でしょう。

では、もしAso4レベルの大噴火が起きたらどうなるのか、ラフ・シナリオを描いてみましょう。

火砕流によって地元の熊本はおろか、大分、長崎、佐賀、宮崎県北半分、山口県南端は短時間で全滅します。

時速200㎞の火砕流から、この範囲の住民1千万人は逃げる術すらないでしょう。

Aso4
九州全域はほぼ人が住めなくなり、降灰は本州、四国、北海道、朝鮮半島にまで達します。

判決がいうように、火砕流は伊方にも海を渡って怒濤のように押し寄せるでしょうから、伊方原発はたちまちその下に埋没してしまって、ちょうどいい「石棺」となって放射能を遮蔽してくれるかもしれません。(もちろん悪い冗談です)

Aso4の降灰は40㎝にも及び、沖縄、鹿児島、宮崎南部を除いて、北海道においても地層として今でも地層年代測定の目安になっています。

Aso4は日本列島全部を火山灰に埋没させてしまったのです。

下の絵は1783年の浅間山の噴火を描いたものですが、Aso4よりはるかに小規模でしたが、江戸時代の3大飢饉の1つ天明の大飢饉が引き起こされました。

「夏」がなくなったからです。

Photo_3http://blog.livedoor.jp/nara_suimeishi/archives/51782666.html

特に、東北の南部藩、津軽藩の冷害と旱魃、それにより引き起こされた飢饉は地獄を思わせるような悲惨な状況だったことが記録されています。

この降灰は民家や工場、公共施設の屋根に積もり、やがてラハール(土石流)となって倒壊させます。
土石流 - Wikipedia

交通インフラは寸断され、自動車は通行すらできなくなるでしょう。航空機は降灰をエンジン・タービンに吸い込むとストール(失速)を起こしますから、陸も空も交通機関は壊滅状態になります。

かつての東日本大震災は関東東部と東北地域に限定されていましたが、これを遥かに凌ぐ規模で、しかも全国規模で引き起こされ、工業、農業共に致命的打撃を受けます。

この時点で、日本経済は死滅します。経済だけに止まらず、政府機能も急速に失われていきます。

そして短期間にもはや居住することすら不可能な列島に変貌するでしょう。

しかしこれは序幕に過ぎません。第2幕はここから始まります。

降灰は成層圏を突き抜けてジェット気流に乗って地球を覆います。北半球全体は太陽光を遮断されて、急速に寒冷化現象が引き起こされます。これが「火山の冬」です。
火山の冬 - Wikipedia

おそらく年平均3度の寒冷化が起きて、最短で10年間、北半球の人間は夏をかんじることはないでしょう。

北海道と本州は凍結して歩いて通れることになり、カラフトとシベリアも繋がることでしょう。北半球の農業は死滅し、信じがたい規模での食料危機と飢餓が訪れます。

日本列島は人が住めない地域となり、日本民族は凍結した海を渡って中国か朝鮮半島に難民としてさまよい出るでしょう。

日本民族のおそらく千年以上続くであろうディアスポラの始まりです。

このようにして日本政府のみならず、民族そのものが事実上消滅します。

いやそれどころか、日本人のみならず人類の生存そのものが重大な危機にさらされます。

これが野々上裁判長が想定する、Aso4が今起きたとしたらというシナリオです。

野々上裁判長閣下、どうしてこのような極端な想定をするのでしょうか。

日本全土が原発もなにもあったもんではない壊滅状況に立ち至るような、極端な状態を想定するあなたの常識を疑います。

このような極端な想定は、「ゴジラが上陸したら原発が耐えられるか」というようなものです。

野々上裁判長閣下、あなたは映画『ボルケーノ』や『2012』の見すぎです。

Photo_2映画『ボルケーノ』

ちなみに、『ボルケーノ』はNASAが選んだ「ワーストありえない映画」に堂々4位に輝いています。https://matome.naver.jp/odai/2129431251731967001

こんな極端な想定をしたら、自動車や鉄道、船、航空機など一切の安全性は「ない」ということになります。

阿蘇が大噴火する可能性が9万年前にあったからという理由で、自動車を使用することを禁じる判決をだすようなものです。

したがって、原発に限らずすべての科学文明が全否定されてしまいます。これはそんな司法の仮面を被った流言蜚語の類の判決なのです。

規制委の更田(ふけた)豊志委員長は判決の後の会見でこう述べています。(産経12月13日)

「基準やガイドは不変のものではなく、科学的・技術的知見に基づき常に改善を考えている。基準やガイドは不変のものではなく、科学的・技術的知見に基づき常に改善を考えている」

また、判決が約9万年前の阿蘇山の噴火で、火砕流が原発敷地内まで到達した可能性を指摘したことに対してもこう答えています。

「四国電はこの噴火について、火砕流の堆積物が山口県南部にまで広がっているものの、四国には達していないとしており、規制委も審査でこれを妥当と確認していた。
 規制委は「火山影響評価ガイド」と呼ばれる内規を基に審査を行っており、原発の160キロ圏内で将来活動する可能性がある火山が対象となる。原発の稼働期間に噴火の可能性が低くても、過去に火砕流が原発のある場所まで到達したと考えられる火山は、電力会社に監視を義務付ける」(前掲)

実際に規制委11月29日、火山の噴火「規制委は原発周辺の火山が大規模噴火した際、設備や機器が機能を維持できる火山灰濃度の基準の試算方法を変更し、実質的に濃度基準を引き上げることを決めた」(前掲)改善をおこなっています。

大滅亡がお好きとみえる野々上裁判長閣下には、更田規制委員長の科学者らしい淡々とした言葉をお送りしましょう。

「われわれがどのような判断をしても、納得しない方は常にいる。私たちは私たちで規制の役割を果たすのみだ」

※大幅に加筆しました。(午後4時)

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ティラーソンの「前提なしの会談」発言の裏側にあるものとは

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米国の北朝鮮(以下北)に対する交渉方針が、正式に切り替わったようです。
 

このレックス・ティラーソンの「前提なしの会談」発言と前後して、トランプがエルサレムを首都と認める「宣言文」を出しています。 

ティラーソンは前提条件なしの北朝鮮(以下北)との交渉に応じると言明しました。
※NSCが否定しました。追記をご覧ください。

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「ティラーソン米国務長官は12日、ワシントンで講演し、核・ミサイル開発を進める北朝鮮との対話に関し、『前提条件なしで北朝鮮との最初の会議を開く用意がある』と述べた。米国はこれまで北朝鮮が非核化の意思を示すことを対話の前提としてきたが、ティラーソン氏は「非現実的だ」とし、トランプ大統領も現実的な判断をしていると強調した。
 米朝対話の議題について、ティラーソン氏は『天気の話でもいい』としたが、最初は、今後の協議の行程を決めるものとする意向を示した。ただ、『協議中に(核・ミサイル)装置を実験すれば協議は厳しくなる。静かな期間が必要だ』とし、核実験や弾道ミサイル発射の中止を求めた」(産経12月13日)

別稿で詳述しますが、米国は明らかに「封じ込め」路線にシフトしました。米国は北の脅威度が低いと読んだのです。 

だから軍事力行使の必要はなく、外交的手段で解決可能だと考えたのでしょう。 

現時点で北に対して軍事力行使をしてしまえば、中国と宥和を図ることが前提な以上、代償として中国の南シナ海での軍事拡張を容認するはめになりかねません。

スティーブン・バノンは調子がおかしい人物でしたが、ことこの読みに関してはまともで、一貫して北より中国が脅威だと主張して、ホワイトハウスを追われました。

また、中東での新たな危機的状況にも対応不可能になります。

また、朝鮮半島に全戦力を投入してしまえば、いつ起きてもおかしくないと言われるロシアのバルト諸国への侵攻にも対処不能になります。 

結局、米国にとって北相手の戦争などなにひとついいことはないのです。地上軍を入れて泥沼にでもなれば目も当てられませんしね。

このことに関しては、実は日本も同様です。軍事オプションをとられたら、弾道ミサイルの数発は覚悟すべきですし、日本経済は大打撃を受けます。 

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なるほど、北は核保有国に向けて、進行表に沿って着々と進んでいるかに見えます。 

北が望むものは「米国を話し合いの場に引き出す」こと一般にあるのではありません。

米国と相互確証破壊(もどき)の関係を結び、米国の介入を排除して、あくまで「民族の内部問題」としてムン・ジェインの登場で熟柿同然となった韓国との統一を果たすことです。 

そこまではいかに民が飢えようと、石油が底をつこうと眼をつぶる、国連の言うことなど馬耳東風、宗主国づらした中国の特使など追い返し、一気に米国に「核戦力保有国」だと認めさせるところまで突っ走るぞ、と考えているはずです。 

ですから、その一歩手前で止めてしまっては、一切が台無しになる、たぶん正恩はそう思っています。

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ではこの正恩の言うことは、ほんとうなのでしょうか? 

もちろん、フェークです。それも真実が8割くらいの嘘ですから、困るのです。 

全部嘘ならすぐバレるのに、真実と嘘をまぜこぜにしていちびるから始末が悪いのです。

米国はノース38など読むと、冷静に評価していると思いますが、そもそも北の核戦略技術は初歩的段階に止まっています。

比喩的にいえば、米露英仏の核戦力技術が高級スポーツカーとするなら、中国のそれは中古車、印パは軽自動車、北などはママチャリか電動アシストつきチャリに進化したていどの水準にすぎません。 

たとえば、核ミサイルの核心技術であるロケットエンジンは、ロシアのRD250という70年代の旧式を密輸入して焼き直したにすぎません。 

焼き直し技術で打ち上げたとしても、かんじんの再突入に際してマッハ24、表面温度7000度という超高温に耐えられなかったのは、バラバラになって墜落しているのが民間旅客機のパイロットに目撃さたことでわかってしまいました。 

バラバラになったことを多弾頭化だと考えて、必要以上に怯える必要はありません。 

そもそも再突入ができない弾道ミサイルなど、単なる巨大打ち上げ花火にすぎないのですから。 

Photo_4火星15の移動式発射装置

正恩は移動式発射装置が新型なのが得意そうでしたが、小川和久氏によればICBMクラスのものをあのような移動式で運ぶとなると随行車両だけで十数台となってしまい、そんな大名行列で静々と運んでいたら、たちまち警戒衛星に探知されてしまいます。

今回もかなり前から探知されていて、発射時期まで分かっていたようです。

また多弾頭化や米国に到達するICBM完成のためには、核弾頭の小型化が必須ですが、成功していないと見るべきです。 

成功したと証明したいなら、北は率先して弾頭重量を公表しているはずですし、おそらく前回の火星15は弾頭重量を軽くして飛距離を伸ばしたにすぎないと、軍事専門家は見ています。 

というのは、小型化の達成のためには核実験が必要ですが、この間できていないからです。 

プンゲリ(豊渓里)核実験場は、度重なる酷使で坑道が崩落を起こして使用不能の状態だと観測されています。 

崩落などしていないと北は言っていますが、ならばどうして新たな坑道を11月から12月にかけて掘り進めているのか説明がつきません。 

12月9日にはプンゲリ周辺を震源地とするM3.0の「自然地震」がありましたが、またどこかの坑道が崩落した可能性すらあります。 

また、前回の核実験は水爆実験をしたと称していますが、いま北の核技術に必要なことは水爆のような時代錯誤の巨大化ではなく、むしろ使える700㎏以下の小型化なのです。

小型化ができないので、水爆でめくらましをしているのです。 

したがってあくまで現時点でとお断りしておきますが、北が正規の弾頭重量を搭載し、燃料を満載して発射した場合、米本土、グアムはおろか日本にすら届くかも怪しいものだと思われます。 

このように見てくると、北が「核保有国」を宣言したのは、ただの北特有の政治プロパガンダ、いわば「吹かし」にすぎません。 

米国は、既に北の核の脅威度は低いと見始めています。 

でなければ、この時期にトランプがエルサレム首都認知などをするわけがありません。 

池内恵東大准教授は、昨日のラジオ『ザ ボイス』の中で、新たなインティファーダは起きないだろう、中東諸国は口では非難してもかつてのように一枚岩でイスラエルと敵対できるような国内状況ではないと述べられていました。

Photo_32012年のインティファーダ 

おそらく池内氏と似た観測を前提にして、トランプはエルサレム首都認知をしたと考えられます。 

米国の真の敵はイランです。今回のことでインティファーダを叫んでロケット弾を発射しているのはしょせんハマースだけで、他の中東諸国がいちばんおそれるのは自国内の反乱です。 

ですから、一時は民衆にガス抜きさせてやっても、かつてのような大規模デモや騒乱を起こすことは許さないでしょう。 

しかもハマースがイランの紐付きだというのは有名である以上、サウジとその同盟諸国は断じて彼らを支援することはしないはずです。 

したがって、中東は今回のエルサレム首都認知によって、大きく動揺することは考えにくいと、池内氏は見ます。 

もし、動くとすればそれはあくまでも、<サウジ+同盟国VSイラン>の構図の内であって、かつてのような<イスラエルVSすべてのアラブ諸国>という図式ではありません。 

今回この新たな図式で戦端が開かれた場合、イスラエルはサウジに対して好意的中立を保ち、米国はサウジを支援します。 

トランプの今回の宣言は、米国は同盟国を見捨てないというネバー・デカップリング(切り捨てない)を世界に示したものに思えます。

とするなら、なおのこと北を協議の場に引きずり出して、「封じ込め」て檻に入れておかねばなりません。

世界は日本人が見るように、北だけを軸にして回っているわけではないのです。

■追記

おいおいです。アップした後に、こんなニュースが入ってきました。ティラーソンの解任覚悟の最後ッ屁でしょうか。(午後5時)

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「ティラーソン米国務長官が核・ミサイル開発を続ける北朝鮮と前提条件なしに対話を行う用意があると発言したことについて、ホワイトハウス当局者は13日、「トランプ政権の北朝鮮政策に変更はない」と本紙に語った。
 「北朝鮮がまず挑発行為をやめ、非核化に向けた誠実で意味ある措置を講じなければならない」とし、ティラーソン氏の発言を軌道修正した。
 同当局者は「朝鮮半島を非核化する目的で、北朝鮮と対話する可能性についてはオープンだ」と述べる一方、北朝鮮が11月29日に新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」を発射したことを挙げ、「今は明らかに(対話の)時期ではない」と話した。
 その上で「北朝鮮が根本的に態度を改めるまで対話に応じないことで政権内は一致している」と強調した」(読売2017年12月14日 11時06分)

 

 

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NHKの「隠し田」としての子会社群

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NHKが受信料の負担減を言い出しました。

「NHKは12日の経営委員会で、受信料の負担軽減策を検討する方針を固めた。一律値下げではなく、経済的に支払いが困難な視聴者が対象になるもようだ。2018年度からの次期3カ年計画に盛り込む」(時事12月13日)

こういうセコイところが、たまりませんなぁ。 

NHKがこんな貧乏人にはちょっとまけてやってもよいぞという徳政令を出した理由は、昨年度の決算で余剰金がまたまた大幅に積み上がってしまったからです。

「NHKは9日、2016年度決算の速報を発表した。受信料収入は前年度比144億円増の6769億円となり、3年連続で過去最高を更新した。事業収入全体では同205億円増の7073億円、収入から支出を差し引いた事業収支差金は同7億円減で280億円の黒字となった。黒字は1990年度から27年連続」(毎日2017年5月10日)

「余剰金が過去最高」ということは、取りすぎたということです。それを免除対象をちょっと増やす、それも小学校が対象というのですから黒光するような吝嗇ぶりです。

ならば本来は、取りすぎた分を視聴者に還元すればいいだけのことです。

実際、籾井前会長は、それをやろうとしました。

昨日もふれましたが、昨年11月、籾井勝人前会長は、「視聴者に返すのが当然」(朝日2017年11月28日)として地上契約で月額1260円を今年10月から50円ていど値下げすることを提案しました。

しかし、経営委員の大半が反対したためにあえなく頓挫。自らもその座を追われることになります。

その旗頭に立って「時期尚早」として値下げ反対を唱えたのが、現会長の上田良一氏です。

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上田氏が唱えていたのが、この生活保護受給給者や小中学校で児童生徒用テレビなどに限定した減免措置でした。

当時の経営委員会内では、「一度下げれば、視聴者の反発もあり値上げはできなくなる。別の形での還元が免除の拡充だった」(朝日同上)という意見が大勢を占めたそうで、彼らに一般市場の感覚自体が欠落しているのかわかります。http://www.asahi.com/articles/ASKCN52CZKCNUCLV00G.html?iref=pc_rellink

受信料はコンテンツ提供の対価として支払われるもので、NHKオンラインのようにコンテンツごとに切り売りして商品市場の原則に従うべきなのです。

見もしないものを受信機があれば支払わせるという、まるで全体主義共産国家のようなことをするからおかしくなります。

いわば朝日新聞をポストがあれば、強制的に全国民から購読料3千円なにがしを徴集するようなものです。

新聞ならありえないでしょう。ならばテレビも例外ではないのすよ。

このような黙っていても金をふんだくれるという、市場原理に背いた怠惰なシステムを作れば、絶対的に腐敗します。

受信料が下がったまま固定化されてしまうのが恐ろしいならば、一般企業なみの経営努力をして経費削減に務めればいいはずです。

入社7,8年の役つきなしの30代ペーペーの年棒が700万円弱などという、超高給を少しカットするだけで多少は違うはずです。

山路氏から「人件費だけで、海保全体の予算よりも多い」とのコメントをいただいたので調べてみました。

現在は尖閣の緊張で増額されていますが、海保は2012年度は、全部の人件費、巡視艇からヘリなどの装備費を入れてたった1千732億円でした。

また海保の人員は1万2636人です。

一方、同年度のNHKの職員数は1万354人、人件費だけで1千819億円でした。わ、ははですな。

連日のように侵入する中国海警や違法漁船と危険を冒して取り締まりにあたっている海保の予算総額は、なんとNHKの人件費より少ないのです(号泣)。

Photo_5NHKエンタープライズ ウィキ

もしNHKが本気で経営環境を見直したいのなら、丸投げをしているNHKエンタープライズ(NEP)との関係を見直して、自社制作を増やせばいいだけです。

そもそも、NHKは放送業界最大の自前の放送設備や番組制作のリソースを持っています。

そのうえに全国すべての県にまたがった放送局もあるわけです。

なぜわざわざこの巨大な自社資産を使わないで、下請けのNEPに出す必要があるのでしょうか。

このNEPは大変な売り上げを上げている超優良企業です。NHKの名はかぶっていますが、ただの民間会社にすぎません。

このNEPも2015年度売り上げが544億3175万円で、その6割が番組制作費としてNHKから支払われています。

このようなNEPに渡った番組制作費用が正しく使われたか否かについて、国会は監査することができません。

なぜなら、NHK本体は「公共放送」ですから、国民の監査が可能ですが、NEPはただの民間企業ですので、監査の手が及ばないのです。

一般企業ならば一般株主の監査要求ができますが、なにぶん株主はNHKが独占しています。

つまり、NHKは経費の80.7%を占める番組制作・発送経費の多くを、監査不可能な民間会社に出しているのです。

これで「公共放送」とは、とんだ言い草ではありませんか。

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http://www.dempa-times.co.jp/housou/2017/0120-01.h...

つまり、NHKは自社内部に余剰金として毎年280億円もの金を溜め込み、そのうえに営利目的のNEPを作って、そこをもうひとつの「隠し田」にしています。
隠田 - Wikipedia

「隠し田」は領主からの年貢を避けるために農民が秘かに作った田んぼのことですが、NHKは領主である国の眼、つまりは監査から逃れるためにNEPのような「隠し田」を増やしていったのです。

またこのNEPはNHKの天下りが大半を占める意味でも、NHKにとって二重に美味しい「隠し田」なのです。

現在の放送業界は、視聴率最下位に転落したフジを見ればわかるように、制作コストの切り詰めから、さらに下請けの番組会社を圧迫することでコンテンツがいま以上に貧しくなるという悪循環に陥っています。

しかしこのNEPという番組制作会社のみは、バラ色の未来が拡がっています。

説明する必要もないでしょうが、親方NHKが税金まがいの視聴料徴集が可能で、それを気前よく下請けに丸投げしてくれるのですから、永久に鉄のお茶碗で飯がくえるからです。

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ちなみに、NEPはビデオやキャラクター商品の販売までやっていますから、「公共放送」が作ったコンテンツの二次利用で二度おいしい思いをすることすら可能です。

また、すこしでも儲けを増やそうとして韓国から格安の韓流ドラマを仕入れるという悪習を放送業界に取り入れたのも、このNEPでした。

2004年の『冬のソナタ』に始まり、わけのわからない朝鮮王朝ものをはやらせたのが、この「公共放送」の独占的下請けでした。

「公共放送」を自称するならば、日本の優秀な演出家や俳優を起用すべきなのに、このていたらくです。

フジはこれを模倣したあげく、ドラマ制作力を喪失して今の体たらくとなったのはご存じのとおりです。

NEPはこの版権を親会社NHKに独占的に売り込み、そこでもまた膨大な収益を得ました。

このような下請けは13社にも登り、その中にはNHKアイテックという発送設備整備会社まで含まれています。
NHKアイテック - Wikipedia

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ここも余剰金を154億円積み上げていています。

この会社の腐敗ぶりもなかなかで、2人で2億(!)という巨額着服事件まで発生しています。

それにしても作るのは子会社、電波を発送し、保守点検するのも子会社、では親会社は一体なにをする所なのでしょうか。

NHKは「公共放送」であるが故に、格安の価格で電波帯を多数押さえ、視聴料を強制的に徴集する権利を得ています。

テレビ゙局が支払っている電波利用料は、携帯電話会社の実に13分の1という破格な価格に据え置かれているのも、この「公共性」が認められているからです。

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しかし「公共性」の内実はご覧のとおりです。

会計検査院は2015年度のNHKに対する監査で、NEPのようなNHK子会社13社の利益剰余金総額を948億円あるとし、NHKに対してこの剰余金の性格を明瞭にすべきであるとの監査報告を出しています。

NHKが既に健全な「公共放送」としての性格を逸脱し、ただの官許独占企業、それも腐敗しきったそれになっていることは明らかです。

 

 

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NHK 「官」の如く尊大にして非効率、「民」の如く貪欲にして意地汚なし

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NHkについてもう少し考えてみましょう。 

NHKはよく勘違いされていますが、「国営放送」ではありません。 

これについて、最高裁寺田判決はこう述べています。

「(NHK受信料は)NHKの公共的性格を特徴づけ、特定の個人、団体または国家機関などから財政面での支配や影響が及ばないようにしたものだ」

最高裁判決の理屈は、国家統制や個人の財政的支配を受けない「公共性」を守るために、受信料の平等な国民負担を求めることは合憲だということです。 

つまり、NHKは放送法によって許された電波受像機を持っている国民から、分け隔てなく集める受信料で成り立つ「特殊法人」なのです。 

今どきテレビを持っていない人は捜した方が早いでしょうから、国民すべてから徴集することをしておきながら、「税金」ではないというところが味噌です。 

国家とは一線を画しているぞ、とNHKはくどいほど繰り返しています。
公共放送は必要なのか|NHKよくある質問集 - NHKオンライン
http://www.nhk.or.jp/faq-corner/1nhk/01.html
 

その理由を国営となると、財政支配を受けて自律性を失うからだと説明しています。 

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なんともヌエ的な存在ですね。

だって、国営でないのですから、職員は公務員ではないので国籍条項は問われませんし、忠誠義務も課されません。 

だから妙に中国寄りの戦争ドキュメンタリーや慰安婦報道が放映され、朝日と見紛うような政権バッシングをするのがわがNHKです。

そういえは韓流ドラマを初めに日本で流行らせたのも、このNHKでしたっけね。

まぁ、別に民放ならそれでいいのです。放送法がなんと言おうと、しょせん民間会社の商品カラーのようなもので,見なけりゃいいだけのことですからね。

しかし国民に等しく負担を求め、「公共の福祉」をうたっている放送局だと言われますよ、ということです。

また公務員でないために、公務員給与体系とは関係ない民間人としての待遇が保証されています。

つまりは権利は国並、義務は民間並なのです。 

紅白歌合戦が典型ですが、民放のようにスポンサー、大手代理店や芸能事務所に頭を下げる必要もないという大名商売が可能でした。 

この背景には、なんの経営努力をせずとも税金まがいに入ってくる超安定した財源、視聴率など無視できる「公共性」があったはずです。 

すると当然生れるのが、放漫経営です。 

NHK職員の年間基本給は、35歳で675万(16年度)、管理職で933万~1202万、そこに手厚い各種手当て、福利厚生手当てが積み上げられていきます。

この年収700~800万円 階層は、サラリーマン階層でわずか9%ていどしか存在しない富裕階層です。

NHK職員は30代で、ほぼ全員が富裕層に属してしまうというわけです。

一方地方局採用の契約アナは、せいぜいが150万~200万ていどといわれていますから、同じ放送局内部でも大変な格差社会です。 

番組制作費は、俗に民放の2倍以上、ときには一桁違うとまでいわれています。

ある地方局の現役記者から聞いたことがありますが、ある海外取材でNHKチームと一緒になったそうです。

地方民放チームは2名、それも泣きついてつけてもらったそうですが、NHKはトラックと四駆2台、日本人10名、地方雇いがその倍という大部隊だったそうです。

ですから、NHKに先行されてしまうと宿は一杯、食料は買い占められ、街の諸物価高騰という悲惨さだったそうで、泊まるところがなくなったこともあったとこぼしていました。

NHKが通った後は、ペンペン草もはえないとは彼の述懐です。

では、この日本人スタッフがみんなNHKの正規職員かといえば怪しいものです。

というのは、NHKは番組のかなり部分を、NHKエンタープライズ、NHKグローバルメディアサービスなど13の連結決算会社に下請けさせているからです。

とくにNHKエンタープライズ(NEP)は元請けとして、そこから多くの孫請け、曾孫受けに下請けさせています。
NHKエンタープライズ - Wikipedia

これが国や地方自治体なら公開入札すべきところを、下請けに丸投げしているわけです。

このNEPは株式会社でただの一民間企業にすぎませんが、幹部社員は全員NHKの天下りによって構成されています。

NEPの正規従業員497人中、NHK等からの出向者は113人(2014年度)にも登ります

本来、このようなNHKに寄生する関連会社の肥大化は、「公共性」を阻害する要因となるはずですが、それを監視すべき経営委員がお飾りになってしまっています。

そもそも経営委員とは、通常の民間会社でいえば監査役のように経営が正しく執行されているかを監視することが仕事なはずですが、そこから会長を選ぶ仕組み自体が矛盾しています。

このような経営形態は、国にも民間にもないもので、このNHKという「官」でも「民」でもない「特殊法人」固有の体質から生れたものです。

たとえば籾井勝人前会長が解任された理由を、ご存じでしょうか。

2016年11月に籾井氏の受信料50円値下げの提案が却下され、引責辞任に追い込まれたのです。

Photo_2籾井前会長

なぜ籾井氏はわずか50円の値下げで解任されたのでしょうか。それはNHKが隠しておきたい巨額余剰金問題に触れたからです。

NHKは受信料だけで、実に年間400億円以上の余剰金を積み上げています。つまり、あまりに金が潤沢すぎてザブザブ使っても使い切れなかったのです。

当然内部的には経営委員や、国会で追及されてしかるべきことでした。

そこでNHKが考えた会計処理が、これをNHK放送センターの建て替え費用組み立て金として処理するやり口だったわけです。

ところがなにせ毎年400億円超も積み重なっていきますから、2015年末時点で積み上がってしまった余剰金総額がなんと約1千627億円というのですから、ハンパではありません。

建て替え費用としては充分以上に溜まってしまったわけで、銀行からの借り入れゼロで本社建て替えができるという民間企業には夢のような状況に立ち至ったわけです。

この1千700億円という建て替え予算自体も、民放本社の3倍以上といわれる法外に贅沢なものなのですから、NHKの骨の髄まで染みついた大名意識が分かろうというものです。

ならば2015年末の時点で、万歳三唱して本社建て替えに取りかかり、次年度からは受信料の値下げをしてしかるべきでした。

これが非営利の特殊法人ならば、競争にさらされない特権を享受できる代償として、当然の視聴者たる国民への義務です。

ところがNHKはしませんでした。

今度考えた理屈は、4K、8K投資が残っているから、というわけですが、これではただの民間会社の内部留保となんら変わりません。

本来、放送センター建て替えも、一般企業のように銀行からの融資を受けてするべきであって、そうすればとっくの昔に受信料値下げが実現したはずです。

籾井氏は経営者としてしごくあたりまえのことを提案したことが、命取りになりました。

まぁ、それを見ていた他のメディアも「アベポチが追い出された」とばかりに拍手せんばかりでしたがね。

このようにNHKは「官」と「民」のいいとこ取りをした結果、「官」の如く尊大で非効率であり、「民」の如く利益中心の意地汚さばかりが目立つメディアに堕落していったのです。

 

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情報産業石器時代の放送法に縛られた最高裁判決

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最高裁は「視聴者がNHKを見ない自由」を認めなかったようです。 

それを伝えるNHKニュースです。

「6日の判決で、最高裁判所大法廷の寺田逸郎裁判長は、NHKの受信料について、「NHKの公共的性格を特徴づけ、特定の個人、団体または国家機関などから財政面での支配や影響が及ばないようにしたものだ。広く公平に負担を求めることによってNHKが放送を受信できる人たち全体に支えられていることを示している」と指摘しました。
そのうえで、放送法の規定が憲法に違反するかどうかについて、「受信料の仕組みは憲法の保障する表現の自由のもとで国民の知る権利を充たすために採用された制度で、その目的にかなう合理的なものと解釈され、立法の裁量の範囲内にある」として、最高裁として初めて憲法に違反しないという判断を示しました。
また、受信契約に応じない人に対しては、NHKが契約の承諾を求める裁判を起こして判決が確定した時に契約が成立し、支払いの義務はテレビなどを設置した時までさかのぼって生じるという判断も示しました」(12月6日NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171206/k10011248431000.html

 

 

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日曜写真館 光の衣装をまとった花たち

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トランプ演説は従来の米国政府の既定路線からはずれていない

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トランプがアラブのインティファーダ(反乱)に燃料を投下してしまったようです。当然、予測がついた事態です。 

いったん火をつけてしまうと、互いに行くところまで行ってしまう傾向があります。 

過激なことをいう者のほうが、穏健でパランスがいいことをいう者の声よりはるかに大きいために、多くの支持を集めてしまうのです。困ったことですが、よくあることです。 

イスラエルを海に叩き落とすと言っていたハマスと、イスラエルとの共存関係を模索してきたパレスチナ自治政府に共通の敵を与えてしまったことになります。 

ハマスはまたぞろイスラエルにロケット弾テロを行い、アイアンドームで迎撃されました。
アイアンドーム - Wikipedia

PhotoBBC  http://www.bbc.com/japanese/42275961

一方、ネタニヤフ首相は、米国の「喜びすぎないように」という忠告を無視して、こんなことを言い出しました。 

「トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認定したことについて、同国のネタニヤフ首相は7日、多くの国々が今後、米国に追随するだろうとの見通しを示し、「(米国と)同様の認定に向け、すでに他国と接触している」と明らかにした。具体的な国名は不明。(産経12月7日) 

お止めください、と申し上げたいですね。米国に追随すれば、その国も標的となり、またテロを世界にばらまくことになります。

さて、肝心のトランプがなにを言っていたのか、ほとんど報じられていないと思います。 

トランプのやり方が例の調子だったために、言っている内容が無視されています。 

トランプがイスラエルの肩を持っているのは確かですが、そう過激で突拍子もないことを言っているわけではなさそうです。 

まず、エルサレムがイスラエルの首都であるという認識自体は、米国政界において先日も書いたように特に珍しいものではありません。 むしろ常識でしょう。

1995年に議会の過半数で、「エルサレム大使館移転法」という形で法制化されています。ただ歴代大統領が署名しなかっただけです。 

トランプは決められたことをやらないのは、現実から眼を背けているのだと非難しています。 

Photo_2http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/12/...

大統領演説のこの部分です。
Transcript: Trump’s remarks on Jerusalem," The Washington Post (by Associated Press), December 6, 2017.
 

”In 1995, Congress adopted the Jerusalem Embassy Act urging the federal government to relocate the American Embassy to Jerusalem and to recognize that that city, and so importantly, is Israel’s capital. This act passed congress by an overwhelming bipartisan majority. And was reaffirmed by unanimous vote of the Senate only six months ago.
Yet, for over 20 years, every previous American president has exercised the law’s waiver, refusing to move the U.S. Embassy to Jerusalem or to recognize Jerusalem as Israel’s capital city. Presidents issued these waivers under the belief that delaying the recognition of Jerusalem would advance the cause of peace. ”

(意訳)
1995年、議会はエルサレムがイスラエル首都であることを認め、米国大使館を移転するエルサレム大使館法を採択した。この法律は圧倒的な超党派の過半数で議会を可決された。そして6か月前、上院の全会一致の投票によって再確認されいる。

しかし、20年以上にわたり、すべての米国大統領は、エルサレムに米国大使館を移動したり、イスラエルの首都としてエルサレムを認識することを拒否し、法律の行使を放棄してきた。
大統領たちはエルサレムの認識を遅らせることが、パレスチナ和平を進めるという信念で署名しなかったのだ」

 つまり、オレは決められたことをやる、いままでの大統領と違って現実に眼を背けないんだ、な、カッコイイだろうといいながら、実はつい先だって移転法の延期には署名していたわけです。 

池内恵・東大准教授が指摘するように、トランプの宣言には慎重に安全装置がいくつかかけられています。

「トランプは12月6日に署名した宣言文および演説でエルサレムを首都と認め、大使館のエルサレム移転の決意を表明したが、その直後に、1995年に議会が可決した「エルサレム大使館法」の適用を6カ月免除する大統領令にも署名している。
これは「エルサレム大使館法」の規定により、大統領は6カ月ごとに署名して大使館の移転を延期することができる。大使館移転をぶち上げて当選したトランプも、就任後の今年6月にすでに一度延期のための署名を行っていた」(Foresight中東通信12月8日)
 

つまりトランプはエルサレムを首都と認めた「だけ」であって、現実にエルサレムに大使館を移転するとは言っていないことになります。

また、トランプは「新しい大使館を建てるために建築家を雇う」とは言っているものの、肝心のどこに作るのか、いつまで作るかについては明言を避けました。

「新しい大使館を建てるため」と言っている以上、西エルサレムの総領事館に移転するわけでもないと思われるために、事実上移転先は決めていないようです。

果たして彼の任期中に移転できるのでしょうか。

Photo_3東エルサレムの神殿の丘頂上に建つ黄金のドーム。かつてこの場所に古代ヘブライ王国の神殿があった。

次に、池内氏が最大の懸念材料としていた東エルサレムの「ステータス・クオ」(現状維持)ですが、「当面は」維持すると宣言しています。

”In the meantime, the United States continues to support the status quo at Jerusalem's holy sites, including at the Temple Mount, also known as Haram al Sharif. Jerusalem is today -- and must remain -- a place where Jews pray at the Western Wall, where Christians walk the Stations of the Cross, and where Muslims worship at Al-Aqsa Mosque.”
”In the meantime, I call on all parties to maintain the status quo at Jerusalem’s holy sites including the Temple Mount, also known as Haram al-Sharif. ”

(池内氏訳) 「当面は、米国はエルサレムの聖地のステイタス・クオを支持する。聖地にはハラム・シャリーフとも呼ばれる神殿の丘を含む。エルサレムは今日、西壁でユダヤ人が祈り、十字架の通った道をキリスト教徒が歩き、アル=アクサー・モスクでムスリムが祈る場所であり、今後もそうあるべきである」
当面は、私はすべての当事者に、エルサレムの聖地のステイタス・クオを維持することを呼びかける。聖地には、ハラム・シャリーフとも呼ばれている神殿の丘を含む」
 

この「当面」という含みが気になりますが、トランプは複雑な3宗教の聖地が重なり合う東エルサレムの現状の均衡を崩すつもりはなく、むしろこの「ステータス・クオ」を維持することを当事者に呼びかけた「だけ」ということになります。

妥当な判断です。もしエルサレムの領有問題にまで、イスラエルの言い分に言質を与えてしまうと取り返しのつかないことになっていました。

簡単に説明すれば、イスラエルはエルサレム全域が、自国領土だと主張してきました。

これを現したイスラエル独特の表現が、「不可分で永遠の首都(indivisible and eternal capital)」という表現です。

「不可分」というのは、「東西エルサレムの線引きは認めない、全部オレのものだ」、という意味です。

米国の政治家でもこのイスラエルの枕詞を踏襲する人が多いのですが、トランプは宣言演説ではこの両方とも使用せず、ただ「エルサレム」とだけ表現しています。

それはこの宣言文のこの一節でわかるでしょう。枕詞なしで” Jerusalem ”とだけしか表現していません。

The specific boundaries of Israeli sovereignty in Jerusalem are subject to final status negotiations between the parties. The United States is not taking a position on boundaries or borders.”
”We are not taking a position of any final status issues including the specific boundaries of the Israeli sovereignty in Jerusalem or the resolution of contested borders. Those questions are up to the parties involved.”

(池内氏訳)「エルサレムでイスラエルの主権が及ぶ境界の特定は、当事者間の最終的地位交渉に委ねられる。米国は境界や国境について立場を取っていない」
「エルサレムでイスラエルの主権が及ぶ境界の特定についても、争われている国境の確定についても、我々は最終的地位の諸問題で立場を取っていません。これらは関係する当事者が決める課題です」

Photo_42017年05月23日トランプ米大統領とッバス・パレスチナ自治政府議長(23日、ヨルダン川西岸ベツレヘム)http://www.bbc.com/japanese/40011405

  • この部分はパレスチナ自治政府に対して言っている部分です。
  • ここでトランプは、米国は東西エルサレムには「境界」が存在し、それは未確定であり、それについて米国は関与しない、イスラエルとパレスチナ自治政府の二国間で協議すべきだと述べています。

    つまりトランプは、パレスチナ自治政府が東エルサレムを首都する可能性は残っているのだ、それの協議は「当事者同士」、すなわち二カ国でやって欲しい、とトランプは呼びかけていることになります。

    このように見てくると、いい意味でな~んだという気分になりますね。

    トランプの言い方は勇ましいですが、あくまでそれはトランプ節で威勢よくやるからにすぎません。

    宣言内容を精査すれば、以下のようなことを言っているにすぎず、それはいままで米国政府がさんざん言ってきたこととまったく一緒です。

    ニッキー・ヘイリー国連大使も、国連安保理でこのように明快に言い切っています。

    「エルサレムの主権の在り方についてはイスラエルとパレスチナが交渉で決めるものだ。アメリカはエルサレムの最終的な地位を決めるつもりはなく、持続的な和平合意の達成に力を尽くし続ける」(NHK12月9日)http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171209/k10011252421000.html

    つまりはトランプは、「エルサレムがイスラエルの首都だ」と言明した「だけ」にすぎず、以下のことに要約できます。

    ①エルサレムがイスラエルの首都である。
    ②エルサレムへの大使館移転は時期を決めていない。
    ③東エルサレムは現状維持とする。
    ④エルサレムの境界線は未確定であって、二カ国間協議すべきである。

    というわけで、いまごろ在イスラエル米国大使は、アッバス議長と膝詰めで、こんなことを言ってイルノカしれません。

    「まぁまぁアッバス閣下、怒らないでよく宣言文を読んで下さいよ。うちの親分はハッタリ好きなもんで、大げさな言い方してあたしらも困るんですが、従来わが国政府が言ってきたことと変わりないですから、ご安心ください」

    一方、イスラエル政府には

    「調子に乗ってアラブと国際社会全体を敵に回さないようにって、大統領からの伝言です。うちの国は東エルサレムの領有なんか認めてませんからね」

    どっちも当たらずとも遠からずでしょう。

    ちなみに、トランプ演説のためか暴落した東証株価は、演説の中身を知って安心したかのように、一昨日半値戻し、さらには、昨日は全値戻しという展開となりました。

     

     

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    異教徒はユダヤ教に改宗できるか?

    080

    アホンダラ1号さんの、「ユダヤ教徒になるのはあんがいカンタン」かどうかということをパン種にして、ユダヤ民族について少し考えてみます。 

    まず、ユダヤ教徒というのは「ユダヤ人」ということを指します。 

    したがって、イスラエル国籍とは関係なく、血統的に母親がユダヤ人であることを求められます。 

    キャッツ邦子さんという日系ユダヤ人女性の、『スカースデール村から』というブログを参考にしていくことにします。
    http://www.scarsdalemura-kara.com/kaishuu.htm 

    彼女はユダヤ人男性と結婚したのですが、彼女はアメリカ人と結婚したという意識であって、ユダヤ人と結婚したという意味をあまり考えていなかったようです。 

    子供が生れるまで四季折々のユダヤ教の儀式には参加していましたが、あまり関心がなかったそうです。 

    その夫が子供が生れて、3歳になった時とつぜん、「やっぱりユダヤ人のアイディンティティを教えないといかん」と言い出しました。 

    さてここからが、大変な道のりでした。 

    スカースデール村に越したことを機に、その土地のユダヤ教会(シナゴーグ)に行こうとするのですが、なんと2つの教会から拒否されてしまいます。 

    その理由は、「非教徒の母親から生まれた子供たちはユダヤ人ではないという理由」だったそうです。 

    はい、でてきました。これがユダヤ教の大原則のひとつである、「母親がユダヤ人でなければ、ユダヤ人とは呼ばない」です。 

    Photoディアスポラ 

    ユダヤ教はかつては異教徒と結婚すると、勘当した時代があったそうです。 

    それもただ出て行けではなく、葬式まで出して死んだと思うということまでしたのですからハンパないですね。 

    これには理由があります。 

    2000年前、ユダヤ民族はディアスポラとして父祖の地を追われ、諸国に離散していきました。
    ディアスポラ - Wikipedia
     

    ディアスポラとは「まき散らされた種」というヘブライ語ですが、現代の難民と違うのは故郷の地に二度と戻れない境涯になったということです。 

    ユダヤ民族の故郷の地とは、ユダヤ人が「カナン」と呼んだパレスチナです。
    パレスチナ - Wikipedia 

    この地に戻り再び離散したユダヤ民族が集まって、国家を作ろうとする運動のことをシオニズム運動といいます。
    シオニズム - Wikipedia

    いうまでもなく、その闘争の結果生れたユダヤ人国家が、今のイスラエルです。

    これを潰そうとする周囲のアラブ諸国との戦争が延々と続き、その和平の道として生れたのがオスロ合意ですが、別稿に譲ります。

    さて離散したユダヤ民族は西欧、東欧を中心にして定住していき、そこでユダヤ・コミュニティを作っていくわけですが、その結束の中心となったのがユダヤ教でした。
    ユダヤ教 - Wikipedia 

    ユダヤ教はアブラハム(ユダヤ民族の始祖)の宗教として、キリスト教と同じルーツをもちますが、大きな違いは、ユダヤ教には「布教」あるいは「宣教」という概念自体がないことです。 

    ちなみに、同一のルーツからいちばん遅く分離したのが、イスラム教です。これも説明しだすと長くなるので省きます。 

    Photo_2
    日本は男系社会ですが、ユダヤ民族は完全な女系主義です。 

    これも、ユダヤ民族の血脈を絶やさないという意味があったようです。

     

    Photo_3ニューヨークのシナゴーグ

    ですから、子供が生れてその子供をユダヤ教会に入れようとしたキャッツ邦子さんは、思いもしなかった壁にぶつかることになります。
     

    まず訪れたのが保守派の教会でしたが、あっさりと拒否されます。  

    「子供が生まれる前に改宗をしなかった私が保守派の教会を訪ねたことは明らかに私たちの勉強不足でしたが、密かに子供たちをユダヤ系アメリカ人に育てるための環境作りに尽力していると自負していた当時の私にとってかくもあっさりと断られたことはショッキングな出来事ではありました」(前掲) 

    母親がユダヤ人でないとユダヤ教徒にはなれない、逆に言えば母親がユダヤ人ならば父親が他宗派でも子供はユダヤ人とみなされるというわけです。 

    日本国籍の血統主義の女系版だと思うと分かりやすいでしょう。 

    ただし、改革派教会はもう少し柔軟な対応をしてくれました。 

    「次は改革派の教会へ行ったところ、ここでは両親の一方がユダヤ人で家庭でユダヤの習慣を取り入れているのであればもちろん子供はユダヤ人と言われ、大手をあげて歓迎されました。それ以来我が家はこの教会のメンバーとなり、子供たちは13歳の成人の祝い(バル・ミツバとバット・ミツバ)もここで受け、高校を卒業するまでユダヤ教を勉強しました」 

    で、子供たちを立派な「ユダヤ人」として育てた彼女は、子供を送り出して夫ふたりの食事をしている時に、こう言います。 

    「安息日の準備など既に私の生活の一部になっていることに気づいたのです。子供たちのためと思っていた様々なユダヤ教の習慣が今ではいつの間にか自分のものになっていたのでした。夫と結婚して既に26年が経っていましたが、改宗する時が来たと思いました。
    『あなたの民は私の民、あなたの神は私の神です』、」ある安息日の夜二人で食事をしているとき私は笑いながらルツ記の一部を夫に暗誦してみせました。(略)
    夫は突然のことで何のことか分からず、怪訝そうにしていましたので、「改宗することにしたのよ。」と言ったら、「え、君はまだユダヤ人じゃなかったけ?」と驚き、しばらくして「ようこそ!」と嬉しそうに叫びました。
    それからラビと相談してあらためて改宗のための勉強をして、教会での式では夫や子供たちだけでなく、教会のメンバーにも祝ってもらいました」
     

    いい話です。夫婦愛と子供への思いが26年たって、ようやく彼女をひとりの「ユダヤ教徒」にしたのです。

    このように他宗派はその宗教に信仰を持って、その教えどおりに生活を送れば改宗できますが、ユダヤ教だけは血統主義なので、そうとうにハードルが高いと思います。

    やるとすれば、ユダヤ教徒の女性と結婚し、子供をユダヤ教徒して育ててユダヤ教の戒律を守り、よきユダヤ人となったことを周囲のユダヤ人から認められれば可能かもしれません。   

    しかし男性の場合、もうひとつの「正式なプロセス」である宗教儀礼を受ける必要があります。 

    これもがなんとあの割礼です。そう、割礼は男性器の包皮を切り取る儀式のことです。 ゾゾっ。

    他宗派にはばかげてみえますが(※)、ユダヤ民族の始祖であるアブラハムとの契約として定められている重要な儀式です。 ※ムスリムにも割礼の儀式はあります。 

    米国においてはユダヤ教への改宗者はかなりいますが、キャッツ邦子さんのようにいずれも夫がユダヤ教徒、つまりはユダヤ人であるケースです。 

    日本にも改宗者はいますが、こちらもほぼすべて夫がユダヤ人です。  

    たまにユダヤ教に関心をもってなりたいという人もいるようですが、ラビに相談すると大方「止めなさい」と言われるようです。

     

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    トランプ エルサレムに大使館移動

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    昨日の日経平均が大暴落しました。不気味ですね。

    12月6日(15時15分)で、2万2177で445円の暴落です。特に内在的な理由が思い当たらないのに落ちるというのはイヤな気分です。
     

    なにをマーケットは読んだのでしょうか。 

    黒田日銀総裁は金融緩和の継続を述べて、このところ喧伝されている一部の与党からの「出口戦略」を明快に否定しています。 

    ならば考えられるのは、二つの外因です。 

    ひとつはいうまでもなく、北朝鮮危機の煮詰まりによる日本の地勢学的リスクの顕在化です。 

    市場は米国のティラーソン路線の破綻と、年末から年始にかけての軍事オプションの可能性を折り込み始めた可能性があります。

    Photo今年5月のイスラエル訪問時、現職大統領として初めて、ユダヤ教徒にとって神聖な「嘆きの壁」を訪れたトランプ大統領 (C)AFP=時事Foresightより引用させていただきました。

    ふたつめは、トランプがエルサレムをイスラエルの首都に移したことです。それを伝えるAFP(12月7日)です。

    https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171207-00000000-jij_afp-int 

    「ドナルド・トランプ米大統領は6日、ホワイトハウス(White House)で声明を発表し、エルサレムをイスラエルの首都に認定する方針を表明した。米国が数十年にわたり保持してきた方針を転換する歴史的決定で、中東の情勢悪化を招く恐れがある。(略)
    在イスラエル米大使館をテルアビブからエルサレムに移転する手続きの開始も表明した。

    実はこのエルサレムをイスラエルの首都として承認すること自体は、トランプが言い出したことではありません。 

    かねてから大使館移転は、米国政界の宗教保守派と呼ばれる福音派キリスト教徒や右派ユダヤ系の献金者たちが熱望してきたことで、1995年にはエルサレムに大使館移転する法律すら作られています。 

    ただ、歴代の大統領たちは、中東の火種となりうるエルサレム移転を実行してきませんでした。 

    それをトランプ氏が大統領選の公約として取り込んだものです。 

    Photo_2エルサレム https://wondertrip.jp/middleeast/israel/90643.html

    エルサレムはダビデ、ソロモンが築いた古代ヘブライ王国の輝ける黄金期の首都でした。
    エルサレム - Wikipedia

    またユダヤ、イスラム、キリスト教の信者にとって聖地とされる都市で、このように3つの世界宗教の聖地が重なるという都市は世界でもここだけです。

    まぁ、世界三大宗教といっても、アブラハムの宗教であるユダヤ教、キリスト教、イスラム教はもともとは同じ宗教であり、分化したものでルーツが一緒ですからね。
    アブラハムの宗教 - Wikipedia

    しかもここはアッパス議長率いるパレスチナ自治政府の管理するとされる地域であって、イスラエルは首都と宣言していますが、国連などの国際社会にはみとめられていません。 

    かつて1967年までは、13カ国の大使館がエルサレムに置かれていた時期もあったのですが、イスラエルのヨルダン川西岸やガザ地区占領に抗議してこれらの国はテルアビブに大使館を移しています。 

    日本ももちろん同じで、今回のトランプのエルサレム大使館移転について追随する気はないと、菅氏は記者会見で述べています。 

    では、エルサレムのどこに、米国は大使館を移転するのでしょうか? 

    エルサレムはふたつの地域によって成り立っています。東エルサレムと西エルサレムです。 

    Photo_3

    エルサレムの東西分断の経緯はこうです。 

    ①1949年、第一次中東戦争の休戦協定により東西に分断。東側はアラブ地域、西側はイスラエル地域とされる。第一次中東戦争 - Wikipedia
    ②1950年、西エルサレムを占領したイスラエルはエルサレムを首都と宣言し、テルアビブの首都機能を西エルサレムに移転。
    ③1967年、第三次中東戦争でイスラエルが東西ともに占領。
    ④1980年、イスラエル議会、統一エルサレムは「イスラエルの永遠の首都」と宣言。
     

    西エルサレムは、イスラエルの首都機能や経済センターがある新市街なので、とりあえずは問題になりません。 

    問題となるのは、もう一方の東エルサレムの方です。 

    Photo_5http://www.christiantoday.co.jp/articles/24188/201...

    ここには有名な「神殿の丘」があり、3宗教の聖地と、いまでも運用されている宗教施設が目白押しに立ち並んだ旧市街です。 

    かつてここにはユダヤ教の神殿のあった場所でしたが、ローマ帝国の支配の下で神殿は破壊され、ユダヤ教徒はその麓にわずかに残る神殿の石垣の跡に向かって祈っています。

    トランプが訪れたのもここです。 

    ところで、イスラエルは東西共に「一体不可分な聖なる都市」として領有権・管理権を主張していますが、先の①の第一次中東戦争の休戦協定に従って、国際社会は東エルサレムの潜在的領有権をパレスチナ国家にあるとしています。 

    イスラエルの主張どおりにしてしまうと、イスラム教の宗教遺跡や施設を破壊されるという恐怖が、イスラム側にはあります。 

    そこで今取られている方法は、「ステータス・クオ」と呼ばれる考え方です。ラテン語で「現状維持」という意味で、外交用語として使われる概念です。 

    この東エルサレム(旧市街)の「ステイタス・クオ」とは、「神殿の丘」およびその周辺のユダヤ・キリスト・イスラム教の三宗教の施設と運営の現状をそのまま保存し共存させ、いかなる国家も干渉しないとすることです。 

    つまり、数千年の間、あるときはローマ帝国、現代においては米国という世界帝国によってイスラエルやエルサレムの処遇が変化したとしても、この宗教的核心部分の「神殿の丘」とその周辺部分だけは宗教的なサンクュアリ(聖域)として保存していこうということです。 

    ですから、今回トランプがエルサレムに大使館を移転するといっても、西エルサレムの新市街ですから、イスラム諸国も「ステータス・クオ」さえ守ればギリギリ許容ということもありえるわけです。(現実には相当にもめるでしょうが) 

    イスラーム研究者の池内恵氏はこう述べています。 

    「トランプの演説で、見どころとなるのは「エルサレム」をイスラエルが1948−49年の段階から掌握している西エルサレムに限定し、東エルサレムが依然として将来の「パレスチナの首都」として残る、ということを説得的に伝えられるかだろう。」(Foresight12月7日) 

    つまり、パレスチナ国家の首都して東エルサレムを潜在的に認めた上で、米大使館は西エルサレムに移動すればイスラム国家としてもなんとか受容できるのではないかということです。 

    ところがここで、ひとつやっかいなことが残っていると池内氏は指摘します。 

    米大使館予定地は、米総領事館の施設と近隣の取得地となる可能性が高いのですが、この土地の位置がクセモノなのです。 

    「この地区は1948−49年の第一次中東戦争で停戦ラインが引かれた「グリーン・ライン」上にあり、個人の所有権という意味でも、二国家解決の際の領土としての帰属という意味でも、係争の対象になりかねない。現在の総領事館の建物の真ん中を、1949年の停戦ラインが走っている。
    順次購入してきた近隣の土地や建物はその東側に位置し、国際的には潜在的にパレスチナ国家に帰属するとみなされている東エルサレムの一部である。
    米国がここに大使館を置くことは、イスラエルの主張する東西エルサレムの不可分性を物理的な施設の形で認めたと解釈されるだろう。」(Foresight12月6日)
     

    きょうのトンプ演説の詳細は分かりませんが、私たちとしては細心の注意を払ってエルサレム移転をしていただきたいものです。

    トランプがエルサレム移転を認めた背景には、娘婿のクシュナーとイスラエルロビーの存在が指摘されています。

    トランプが来年の中間選挙を睨んでいることは確かでしょうが、とまれ、これで 1993年に締結された和平プロセスであるオスロ合意は一挙に崩壊したことになります。  

    これについては長くなりそうなので、別稿にします。

    それにしてもこの時期に、こんなことを中東でやられるのは実に迷惑だなぁ。

    今の米国は現状でも、中東-アフガン-北朝鮮の3正面は大きな負荷なのに、そのうえに中東でこじらせれば眼も当てられません。

    正直言って、止めて欲しかったですね。

    追記

    記事写真の「嘆きの壁」で祈るトランプについて追加情報を付け加えます。

    あの写真は現職の合衆国大統領として初めて訪問した時のものです。

    トランプの姿はご覧のように、ユダヤ教徒の男性を表す小さな黒い帽子(キッパ)を被り、同行したユダヤ教のラビに従って「嘆きの壁」に頭をつけて、ユダヤ教のオーソドックスな祈りを捧げています。

    これはもちろん娘婿でこの東エルサレム訪問に同行したジャレッド・クシュナー中東担当上席顧問の指導があったからです。
    ジャレッド・クシュナー - Wikipedia

    Photo_6ジャレッド・クシュナーと夫人のイヴァンカ

    ティラーソンもイスラエルには同行していましたが、嘆きの壁には行っていません。
    ティラーソンは、その後こうコメントしています。

    「トランプ大統領が嘆きの壁がある東エルサレムを訪問したことは米国が東エルサレムをイスラエルのものと認めたことを意味しない」

    今回の大使館エルサレム移転に対してもティラーソンは強く反対したそうですが、国務長官としてはまた同じことを言うしかないだろうと思います。

    あるいは、いっそ辞任ですか。

    なお、トランプ氏が礼拝中、長女のイヴァンカ補佐官も女性専用ゾーン(男女礼拝所は別になっているそうですが)礼拝していました。

    イヴァンカは旦那と結婚して、ユダヤ教に改宗しました。よほど旦那に惚れていたんでしょうな。

    トランプ家の宗教ですが、トランプ家のルーツはドイツですので、プロテスタントの長老派です。もちろんユダヤ教ではありません。

    ユダヤ教は元来がユダヤ民族固有の宗教なので、イヴァンカのように他人種は結婚などによらなければ改宗は難しいのです。

    ちなみにこの嘆きの壁に黒い帽子(キッパ)を被り祈ったのは現職ではトランプが初めてでしたし、ブッシュ・ジュニア、クリントン、オバマもいます。彼らもプロテスタントですので、あくまでも大統領としては、です。

    トランプという大統領は明暗のコントラストがある人ですが、今回ははっきりと失敗だと思います。

    今、この時期にこのような重大決定をしたというのは中間選挙で固有の支持層にいい顔したかっただけで、その代償は大きいと思います。

    こんな外交的リスクは、かえって北に対する圧力を拡散させてしまいます。悪い意味でのトランプの素人っぽさが出てしまった選択だと思います。

     

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