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2022年5月22日 (日)

日曜写真館 あやめ色とはこの色と咲きゐたり

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あさまだき草にあやめのこむらさき 日野草城

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あやめ見よ物やむ人の眉の上 嵐雪

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常陸野はみどりのたひらあやめ咲く 藤田湘子

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一茎のあやめ雲呼び日を迎へ 山口青邨

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こなたにもこれがたけよりあやめ草 此筋

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待ち焦がれゐしごと濃ゆき花あやめ 後藤比奈夫

 

2022年5月21日 (土)

トルコ、北欧二国の加盟に反対

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トルコとクロアチアが、北欧二国のNATO加盟に反対しているそうです。
やれやれ、やっぱりあの国がゴネているのですか。
話し合い外交が3度の飯より好きなマクロンさえ、ミラン対戦車ミサイルを送ろうというこの時期に。
エルドアンは、女性首相が牛耳る北欧二国など生意気だ、スウエーデンとフィンランドなどロシアの餌になればいいと言いたいようです。

「エルドアン大統領は、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟に対するトルコの反対を確認し、この問題に対処するためにアンカラに代表団を送るという北欧諸国の提案を拒否した。
「我々は、安全保障組織NATOに加わるためにトルコに制裁を適用する国々に『イエス』とは言わない」とエルドアンは月曜日の記者会見で述べ、隣国シリアでの軍事作戦を巡ってトルコへの武器販売を停止するというスウェーデンの2019年の決定に言及した。
トルコはまた、アンカラ、欧州連合、アメリカ合州国によってブラックリストに載せられたクルディスタン労働者党(PKK)を含む"テロ"集団をかくまっているとして、二つの加盟希望国を非難した。
「どちらの国もテロ組織に対して明確な立場をとっていない」とエルドアンは述べた。「どうすれば彼らを信頼できるだろうか」
(略)
トルコは、特に1984年以来、トルコ国家に対して武装蜂起を繰り広げてきたPKKに対する寛大さを示すストックホルムを非難している。
スウェーデン外務省は月曜日、スウェーデンとフィンランドの上級代表が、アンカラの反対に対処するための会談のためにトルコを訪問する予定だと述べた」(アルジャジーラ5月1日)
https://www.aljazeera.com/news/2022/5/17/turkey-confirms-opposition-to-nato-membership-for-sweden-finland

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エルドアン大統領  アルジャジーラ
Turkey accuses Sweden and Finland of harbouring 'terror' groups including the PKK [File: Yves Herman/Pool/Reuters]

このエルドアンという男は、何を勘違いしているのでしょうか。
今、NATO加盟国の一員としてトルコが聞かれているのは、ロシアの凶暴な侵略からいかに自由主義陣営が守れる国を増やしていくことなのかであって、自国の内政問題である少数民族問題ではありません。
クルド労働者党(PKK)とトルコがどのような関係にあろうと、グルド人をスウエーデンが人道支援していようと、なんの関係もありません。
スウエーデンがトルコのクルド民族対策をかねてから非難していようと、クルド人の引き渡しを33回も断ったとしても、それはNATO加盟国としての判断とどう関係があるというのでしょうか。
武器輸出をトルコに禁じていようと、NATOとどう関係あるのですか。

安全保障、それも一国的なそれではなく地域の集団安保体制のあり方を問われているのに、そんなことをまるで取引材料のように持ち出すのがヘンです。
クルド人を突き出せば、NATOに入れてやってもよいゾとか、おおイヤダ。よく恥ずかしげもなくこんなことを言えるもんだ。
これではNATO加盟が一国の反対でも通らないことに目をつけて、ネチネチと蒸し返しているイヤミなジジィにすぎません。

では、なぜウクライナがロシアの標的にされたのでしょうか。理由は3ツです。
まずひとつ目は、ウクライナが弱いと思われていたことです。
ロシアは強烈な力の信奉者で、弱きをくじき強きになびくのが習いでした。
いままで侵攻してきたのは、ろくな軍隊をもたない国ばかりです。
旧ソ連時代のアフガン、ロシアになってからのチェチェン、ジョージア、シリア、いずれも共通して弱小国ばかりです。
ですから今回も、軍事超大国のオレ様にかかれば数日でキーウを占領し、要人は全員ネオナチとして裁いてやる、程度に考えていました。

2つ目は、プーチンはウクライナなどしょせんは「人工的国家」にすぎない、ウクライナ民族とはロシア民族の亜種だから、国民はバラバラで戦う意志はない、むしろ我々をネオナチからの「解放軍」として歓迎するはずだ、と思っていました。
もちろん侵攻したその日にそれが重大な過ちであることを知るわけですが、時既に遅しで、ゼレンスキーは救国の英雄となり、その下にウクライナ国民は固く団結してしまったのです。
戦争は、ウクライナを真の民族国家に短期間で成長させてしまいました。

そして3つ目に、なによりロシアの食欲をそそったのは、ウクライナのNATO加盟が困難で非条約国の状態に置かれていたことです。
だから世界のどこの国も支援を送らず、孤立無援で戦うしかない、と思っていました。
実際は、米国とNATOは軍隊こそ送らなかったものの戦後最大の軍事支援を送り、戦うウクライナを支えました。
米国など、大戦以来初めてのレンドリース法を発動したくらいです。
現代において、同盟、即ち集団安保こそが戦争を未然に防ぐのだ、という認識が完全に国際社会に定着しました。
ですから、この時期にNATO加盟を拒否するという行為は、ほとんどロシア側についたも同然の利敵行為に等しいのです。

このように見ると、もっとも侵略されやすい国とは、①軍備が弱く、②国民がバラバラであり、かつ③非同盟国家だという条件があります。
あれ、どこかで見ませんでしたか、こんな国。
そうです、戦後左翼が理想とした「9条国家」とは、まさにこの三つの条件を揃えた国のことなのです。
日本は、③が日米安保がありましたからセーフでしたが、それすら「米軍がいるから戦争になる」なんて平気で言う人たちがいるんですからね。

それにしても困りましたね、こういう国は。
使えるネタならなんでも使う、意地汚く自国利害しか考えない、なんにでもかこつけてゴネる、というあざとい小人ぶりです。
ひと頃のムン政権が年中このスタイルでした。
輸出規制強化をされれば、まったく関係ないGSOMIAを持ち出してゴネる、スネる、キレる。

今回の件で露になったのは、いまやトルコは自由主義陣営の異物なのです。
大統領に過度に集中した独裁体制、少数民族弾圧と人権弾圧のひどさはロシアと何ら変わりません。
ですから、グダグダ言っていないで、NATOなどさっさと脱退してプーチンが作った独裁国家群である「ユーラシア共同体」にでも加盟したらいいのです。そちらのほうが居心地がいいですよ。
ただ、そこまでの度胸はないから、自由主義陣営の軍事同盟であるNATOにまだしがみついているのです。
実際、この戦争でロシアが目論見どおり4日で勝利していたら、あるいはやらかしたかもしれませんが。
いまやロシアの盟友ベラルーシですら、派兵要請をネグっているのですから、そんな自殺行為をするわけはありませんがね。

できるのはオレならプーチンとゼレンスキーどっちにも顔が効くぜとばかりに、停戦交渉の仲介役ていどですが、ロシアとウクライナ両首脳に電話をしてこんなことを言ったそうです。

「トルコ大統領府によりますと、エルドアン大統領はロシアとウクライナ両国の「常識ある行動と対話の維持が重要だ」と伝えました」
(テレ朝4月2日)

おいおい、「両国の常識ある行動」とはなんのことでしょうか。
それはロシアだけに言いなさい。
非常識の極みはロシアであって、ウクライナは至ってノーマルな祖国防衛戦争を戦っているにすぎません。
露ウ関係は、いわゆる紛争当事国関係ではなく、侵略国とその被害国という関係であって、前者は絶対悪なのです。
したがって喧嘩両成敗よろしく仲介にしゃしゃり出て、「まぁまぁご両人、そうイキリたたず常識を持って話しあえばまた友達に戻れます」的仲介なら、無意味なばかりか有害でさえあります。

エルドアンがこの仲介に乗り出した4月初めの時期は、ロシアがキーウ包囲撤退を断念し南部東部に軍を集中させている局面転換の頃でした。
ウクラナイナ軍の手ごわさをロシアが骨身に徹してわかり始めた戦局の転換点の時期でした。
しかしこの時期に停戦してしまえば、占領地はそのままロシア領土として既成事実化する危険がありました。
事実、南部ハリコフでは、住民投票という形でロシア領土化が始まっています。

つまりトルコが仲介の声を両国にかけ始めた3月末から4月の時期において、ロシアは短期戦争を断念して戦略配置を転換しようとしており、一方のウクライナもまた西側各国からの支援を得るための時間稼ぎが必要でした。
この奇妙な思惑の一致が、停戦交渉が開かれた理由でした。

しかしこの構図を根底から覆したのが、4月初めのブチャの大虐殺発覚でした。

「ウクライナに侵攻しているロシア軍の地上部隊が、首都キーウ(キエフ)近郊ブチャで多数の民間人を殺害していた疑いが、現地入りしたウクライナ軍や報道機関の指摘で浮上した。他の都市でも露軍部隊による民間人殺害や暴行が報告されており、ブチャの惨状は氷山の一角とみられる。
2日、ブチャに入ったAFP通信の記者は、「静かな並木道に、見渡す限り遺体が散乱していた」と表現した。記者が確認した約20人の遺体は、いずれもジーンズやスニーカーなどを身に着けており、軍人には見えない服装だったという。
遺体は露軍の激しい攻撃で廃虚と化した市内各地に点在している」
(読売4月4日)

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読売

当然のことながら、この大虐殺発覚によってウクライナは停戦交渉を拒否しました。
このような民族浄化を計画し、実行する国とは話すことなどなにもない、徹底的に国外に叩き出すまで戦う、そうウクライナ国民は覚悟を定めたのです。

こうしてロシアから感謝をえようとしたえるとエルドアンの目論見は挫折しました。
面目を潰されて面白くないので、無関係な北欧二国のNATO加盟を妨害して、米国からなんらかの代償をもぎとってやるんだ、F-35の導入再開なんてどうだ、くらいの低次元のコトを考えているのかもしれません。

 

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ウクライナに平和と独立を

2022年5月20日 (金)

プーチンにガン入院説

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自分が引き起こしたウクライナ戦争によって、プーチンが得たものは、深甚な世界的孤立とNATOと接する国境線がかえって拡大したことでした。
この北欧二国の歴史的決断に驚いたプーチンは、フィンランドのニーニスト大統領に電話を入れて「ウチの国は無害だ」と言ったとか。
ミーニストは外交的上品さで返答したそうですが、内心こう言いたかったはずです。

「ニーニスト氏はボリス・ジョンソン英首相と共に、フィンランドと英国の安全保障協定に関する合意文書に署名。その席で、「NATO加盟は誰の不利益にもならない。ゼロサムゲームではない」とし、もしフィンランドが加盟することになれば、ロシアに対して 「原因は貴国だ、鏡を見よ」と告げるだろうと語った」(AFP5月12日)
NATO加盟「誰の不利益にもならない」 フィンランド大統領(AFP=時事) - Yahoo!ニュース

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マリン首相とニーニスト大統領 富山新聞
フィンランド加盟正式表明 NATO、週内申請へ|全国のニュース|富山新聞 (hokkoku.co.jp)

大統領が「原因はお前だ。鏡を見ろ」と言えば、来日したマリン首相は「ロシアは信頼できない国」と切って捨てています。
より正確に言えば、「信頼できない国」とは隣国をネオナチ呼ばわりして侵攻した国。
大量の民間人を拷問に賭けて殺戮した国。
街々を灰塵にせしめ、世界の非難を浴びると逆ギレして核で世界を脅迫する国。
プーチンという独裁者を戴く国が信用できないのです。
こんな人物が核のボタンを握り、人類絶滅への鍵を握ることに対する、いいようもない絶望感が世界に満ち溢れています。
ロシア国民は、責任を持って自らが選んだプーチンという最悪の独裁者を倒してもらわねばなりません。
かの国の民がプーチン倒さない限り、ロシアは誰からも信頼される国に戻ることはないでしょう。
ロシアという国は消せませんが、プーチンは消せるのです。

さて、そのプーチンが危ないという噂が出てきています。
危ないプーチンではなく、プーチンが危ないのです。
先月末、英国の大衆紙デイリー・メイルとザ・サン、ザ・ミラーが揃ってプーチンが癌にかかったという報道を出しました。
なにぶん飛ばしが多い英国大衆紙ですから、そうならいいねぇ程度で眺めていたのですが、どうも一定の事実である可能性が出てきました。
これら三紙の情報のネタ元は、ロシアのSNS「テレグラム・チャンネル」のGeneral SVRという軍事問題のサイトです。
General SVRはもちろんハンドルネームですが、SVRはロシア3大情報機関の一つロシア対外情報庁のことですから、そこの将官と名乗っているわけです。

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ソフトバンク社員が逮捕…ロシアスパイの籠絡テクニック | Smart FLASH/スマフラ[光文社週刊誌] (smart-flash.jp)

ビクトル・ミハイロヴィッチが運営していると噂されていますが、怪しいものです。
ただしこのGeneral SVRは、すでに1年半前からプーチンが癌であることを公表しており、継続的に情報をアップしていることから、西側から注目されているサイトです。

General SVRの情報をまとめると、プーチンは胃ガンが進行して医師団から手術を強く勧められ、当初4月後半に予定していたが延期され、5月9日の戦勝記念日が終わってから手術するという筋立てでした。
また別情報では、外国にいるあるオリガルヒが会話の中でプーチンは「血液のガン」だということを言っていたそうです。
こちらのソースは英国の高級紙であるザ ・タイムスです。
こちらも間接情報なのが気になりますが、特定の病名が登場しています。

「血液のガン」とは白血病か、悪性リンパ腫を指しますからおだやかではありません。
専門医の左門新氏によれば

「『血液がん』は主に白血病や悪性リンパ腫などです。がん化した血液細胞を消滅させる薬を投与する化学療法が一般的で、手術が必要というわけではありません。
ただ、薬でもがん細胞の増殖を抑えられなかったり、再発したりした場合は、より強力な薬を用いることになるので、その薬の影響でなくなってしまう正常な骨髄細胞を補充するために、骨髄移植を行う場合があります。高齢者の血液がんは悪性リンパ腫が多い傾向です」
(元WHO専門委員 左門新)

プーチンは今年70歳の高齢ですから、悪性リンパ腫の可能性が大きいといえるでしょう。
またソースは明らかにされていませんが、英調査報道グループ「べリングキャット」の調査員であるクリスト・グロゼフという人物によれば、ロシア連邦保安局(FSB)は地方長官に「大統領が余命数カ月であるとの臆測は無視するように」と通達を出したそうです。
実際、プーチン氏の出先には3人の医師が随行し、うち1人はがん専門医だという情報も伝わっています。
前出の左門氏によれば、医師の随行する理由は化学療法を投与するためだろうとのことです。

5年生存率は白血病が8~9割、悪性リンパ腫が6~8割だそうで、今日明日ポックリいくわけではありません。
ただし、どうやら近々に手術をするという情報が入ってきました。
これも確認をとりようがない未確認情報です。
申し訳ありませんが、クレムリンや中南海の奥の院に鎮座する指導者の健康状態については、こういった不確定な情報を積み上げて手探りするしかないのです。

「General SVRは、手術に関して、安全上の理由から、日程は確定していないものの、時間は「午前1時から2時までの夜間に開始される」としている。執刀医は全員、「複数段階のチェックをパスしたロシア人」で、「今晩から勤務に入った」と伝えた。医師らは「すぐにでも」手術を行うよう推奨しているという。
なおGeneral SVRは、ロシア外国諜報機関に所属していたビクトル・ミハイロヴィッチ(Viktor Mikhailovich)中尉(仮名)が運営していると噂されている。
プーチン氏の健康に関して、ロシアの調査報道機関「The Proect」は先月、プーチン氏が近年、がん治療の専門医エフゲニー・セリバーノフ(Evgeny Selivanov)氏の診察を35回以上受けていたと報じている」
(5月13日 Mashup)
プーチン大統領が手術?「影武者」使用の可能性も - Mashup Reporter

この情報は、プーチンが化学療法を受けているおそくらは主治医のエフゲニー・セリパーノフという名前まで特定されています。
General SVRは1年半前からプーチンは悪性リンパ腫に罹っていると伝えていることから、おそらくこの時期に彼は絶対の信頼を置いていたはずの自らの肉体の不調を知って、仕事の総仕上げとしてウクライナ侵略を考え始めたのかもしれません。
もちろん、2014年のクリミア侵攻からの延長線上ですが、最終的な決断を下したのはこのあたりかもしれません。

しかし、化学療法ではどうにもならず開腹手術が必要なまでに悪化したのが、皮肉にも総仕上げであるはずのクリミア侵攻前後だったようです。
そして相次ぐロシア軍の敗北により、いっそう肉体は耐えきれない苦痛によって悲鳴を上げ続け、まともな判断も下せない状況に立ち至ったのかもしれません。
一刻も早く手術をしろと主治医は何度も意見したはずですが、タイミングを失してしまい、「戦勝記念日」で一区切りし、短期の手術をすると決心したとも考えられます。
前にもアップしたことがある戦勝記念日の時のプーチンの写真ですが、なるほどこれは病んでいる老人の顔です。

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BBC

独裁者特有の苦悩は、、手術の間に寝首をかかれないか、ということです。
おそらく、今のプーチンは周囲の誰も信用していないでしょう。
しかし、彼が握りしめている軍事指揮権を手術中は手放さねばならない、術後も普通なら数週間は入院していろと言われるところです。
この権力の空白をどうするのか、プーチンは「戦勝式典」で見せたように、厭世的気分に襲われたことでしょう。

本来ならば、ロシア連邦憲法は、大統領が職務を遂行できなくなった場合の大統領代行者は首相ですが、現首相のミハイル・ミシュスチンはただの技術官僚であって、軍事にはまるで疎い人間で、とてもではないが戦争指導など任せられないと候補から外されたようです。
そもそも彼は無害な人間で、トップを狙う野心がないから首相にしてやっただけの男にすぎないのです。

そこで出てきたのが、頼りになるのは同じレーニングラード出身で、古巣のKGB派閥で元FSB長官にしてロシア連邦安全保障会議書記のニコライ・パトルシェフだったようです。
この二人が最近2時間も面談していたという情報もあるようです。

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ニコライ・バトルシェフ元FSB長官
ロシア安全保障会議書記、「米は生物兵器を開発している」 - Pars Today

バトルシェフはプーチンの最側近でプーチンに意見できる3人のひとりです。
防衛省防衛研究所の兵頭慎治氏は、バトルシェフについてこのように述べています。

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テレ朝
ロシア軍“士気低下”も…注目はプーチン氏に意見できる『3人組』専門家解説|テレ朝news-テレビ朝日のニュースサイト (tv-asahi.co.jp)

「ロシアのプーチン大統領の側近として“レニングラード3人組”という人たちが存在します。安全保障会議書記のニコライ・パトルシェフ氏、連邦保安局長官のアレクサンドル・ボルトニコフ氏、対外情報局長官のセルゲイ・ナルイシキン氏の3人は、レニングラードのKGB時代からプーチン氏と一緒に仕事し、忠誠を誓ってきた人でもあります。
なかでもキーパーソンなのは、安全保障会議書記のパトルシェフ氏です。KGB時代のプーチン氏の師匠のような人物で、プーチン大統領が全幅の信頼を置く唯一の人物とも言われます。
10年近く国内治安を担当する大臣をやった後、安全保障会議書記になりました。プーチン大統領が決定を下す、色々な情報をプーチン大統領に上げる場合に、必ずパトルシェフ氏を通じて上げることになりますので、今回の軍事侵攻においても非常に重要な役割を果たした人物だとみています」
(兵頭慎治 テレ朝3月28日)

ちなみに、最後まで未確認で申し訳ありませんが、プーチンはバトルシェフには、「あなたはロシアの権力構造の中でただ一人信頼に足る友人だ。もし、手術後の経過が悪く国家行政に支障が出るようになったら行政権もあなたに一時的に委託するつもりだ」と言ったそうです。

このバトルシェフに代わっても変化を期待することはできませんが、プーチン独裁体制が大きく揺らぎ出したことだけは確かです。

 

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泣き崩れる救助隊員 ブチャにて
                      ウクライナに平和と独立を

 

 

2022年5月19日 (木)

ウクライナ参謀本部、マリウポリを防衛隊は全ての任務を達成した

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ウクライナ軍参謀本部は5月16日、「マリウポリを防衛する部隊は司令部が要求した全ての任務を達成した」と発表し、守備部隊の指揮官に兵士の命を救うよう命じたようです。
この命令によって、アゾフスタルに立て籠もった守備隊は任務を解かれて降伏することになります。

「ウクライナ軍は5月17日未明、アゾフスターリ製鉄所Azovstal plant(Azovstal steelworks)を防衛する守備隊の任務を終了したと表明。声明で「マリウポリ守備隊は戦闘任務を遂行した」とし、守備隊を「われわれの時代の英雄」とたたえたほか、製鉄所に残る部隊の指揮官に兵士救出を命じた。マリウポリMariupolでウクライナ側の最後の抵抗拠点となっていたアゾフスターリ製鉄所から全ての兵士を退避させるために取り組んでいると発表した。数カ月にわたり激しい戦闘が続いたが、ロシア軍が同市を完全に支配することになるとみられ、ウクライナにとって大きな敗北を意味する。
ここ数週間に民間人は脱出。16日夜には負傷したウクライナ兵53人がロシア支配下にある南東部ノボアゾフスクの病院に搬送された。さらに211人の兵士が、親ロシア派勢力が支配するオレニフカの町に移送された。退避した兵士は全員、捕虜交換の対象になるという。まだ製鉄所に何人の兵士が残っているのかは不明だが、約600人が立てこもっていたとみられている。ウクライナ軍は残りの兵士救出に取り組んでいるとした」
(ロイター5月17日)
マリウポリ、ロ軍が全域掌握へ 製鉄所からウクライナ兵退避 | Reuters

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時事

ゼレンスキーがコメントを出しています。

「ゼレンスキー氏は16日の動画メッセージで「英雄が生きていてくれることが必要だ」と強調。要衝の陥落はもはや時間の問題で、投降を認めてもアゾフ大隊に同情的な国民の理解を得られると踏んだとみられる」
(時事5月18日)

また、ウクライナのメディアはこのように述べています。

「守備隊「マリウポリ」は任務を果たし、命を救うよう命じられた - 参謀本部
ウクライナ軍の参謀総長は、守備隊「マリウポリ」が割り当てられた戦闘任務を果たし、部隊の司令官は人員の命を救うよう命じられたと述べた。
参謀本部:「守備隊「マリウポリ」は割り当てられた戦闘任務を果たしました。軍最高司令部はアゾフスタールに駐留する部隊の司令官に、守備隊員の命を救うよう命じた。封鎖されたウクライナの守備隊を救出する作戦が進行中である。

参謀本部は、月曜日に重傷を負った53人の軍人の避難が始まったと報告した。彼らはノヴォアゾフスク(CADR「ドネツク人民共和補国」)の領土)の医療機関に連れて行かれた。
人道的回廊を通って別の211人の防衛隊員がイェレニフカに避難し、その後、交換手続きを通じてウクライナが支配する地域に戻った」と報告書は述べている。
アゾフスタルの領土に残っている守備隊を救出するための措置が、今も継続されていることに留意されたい。
一方、アンナ・マルヤール国防副大臣は、国防省、ウクライナ国軍、国家警備隊と共に、国境警備隊はアゾフスタル鉄鋼工場の領土に封鎖されたマリウポリの防衛隊を救出する作戦を開始したと述べた」
(ウクライナ・プラウダ5月17日)
Гарнизон “Мариуполь” выполнил задачу, приказано сохранить жизнь – Генштаб

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守備隊「マリウポリ」は命じた任務を果たしました - 参謀本部|ウクライナ・プラウダ (pravda.com.ua)

すでにアゾフスタル製鉄所に閉じ込められていた民間人は退避を完了しており、今回一刻も早く治療を受ける必要があった守備隊の重傷者56人もノボアゾフスク(ロシア軍占領下)にある病院に移送されました。
また、さらに211人の兵士がドネツク州の同じくロシア軍,占領下のオレニフカに移動しました。
ウクライナ参謀本部は、守備隊員は捕虜交換手続きを経てウクライナ軍支配地域に戻ると言っていますが、それにロシア側が応じるかは不明です。

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時事

両国間で合意が成立したのは、アゾフスタル製鉄所に閉じ込められていた守備隊の推定500~-600人の負傷者の退避のみで、負傷していない将兵の扱いはよくわかりません。
おそらくオレニフカに移動した211人の兵士というのも、重傷者以外の負傷者を指していると考えられており、参謀本部が「兵士の命を救え」という言い方をしているところから、いまだたぶん半数以上の兵士たちがアゾフスタル製鉄所地下に残っていると考えられます。
これら残留していると思われる兵士らの一部は、製鉄所内の瓦礫に埋まったままになっているとも考えられ、救出作業を急がねばなりません。

最大の問題は、相手が国際法無視の常連であるロシア軍であることです。
ロシアは、守備隊主力のアゾフ連隊をネオナチのテロリストで尋問すると言っています。
これは非常に危険な言い方で、ロシアは戦時捕虜の扱いを定めたジュネーブ条約の遵守義務ではないと言っているわけです。

投降したアゾフ連隊の兵士に対しての拷問、銃殺、強制収容所への流刑が心配されます。

「ウクライナ側は今後、ロシア兵の捕虜と交換を行いたい考えだが、ロシアの下院議長は、製鉄所の兵士について、「戦争犯罪人であり、裁判にかけるべき」として、否定的な考えを示したほか、ロシア捜査委員会は、刑事事件の一環として、兵士を尋問する予定だとしている。
またロシア検察庁は、ウクライナのアゾフ大隊を「テロ組織」と認定するよう最高裁に要請するなど、兵士らの帰還は厳しい状況」
(FNN5月18日)

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日本のメディアは単純に「降伏した」「敗北」という表現を使っていますが、ウクライナ参謀本部はこのような言い方をしていることに注意してください。

「マリウポリを防衛した兵士のお陰で予備役編成や国際社会からの支援を受けとる貴重な時間を得ることが出来た。彼らは司令部が要求した全ての任務を達成したが我々にアゾフスタルの封鎖を解く力はない。今重要なのは彼らの命を救うことだ」

これは単に負け惜しみで言っているのではなく、マウリポリ守備隊に与えられた命令が南東部に侵攻してきたロシア軍1万数千をを一日でも長く足止めし東部戦線に合流させないこと、そして今欧米、特に米国から急送されているM777・155ミリ榴弾砲を前線に届ける貴重な時間を稼ぎ出すことが任務であったと思われます。

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BBC

BBCはアゾフスタル要塞で戦い続ける守備隊をこう評しました。
「現代のカレー守備隊だ。とてつもなく勇敢だが、恐ろしい」
カレー守備隊とはこのような意味です。

「第二次世界大戦初期の1940年5月、フランスのダンケルクから撤退する英仏軍を助けるために、近くのカレーでドイツ軍の攻撃を英・仏・ベルギーの混合部隊が犠牲を覚悟で戦った「カレーの包囲戦」のことだ。
この時ウィンストン・チャーチル英首相は、カレーの英国軍司令官にこう打電したという。
「貴官らが存続している1時間、1時間がBEF(英海外派遣軍)にとって最大の支援になっている。したがって政府は貴官らに引き続き戦闘を継続してもらうことを決定した。貴官らの置かれた崇高な立場に限りない尊敬の念を送るものである。撤退は行わない(くりかえす「行わない」)。また撤退のための船舶はドーバーへ引き返させることとした」
この命令に従ってカレーの混合部隊がドイツの装甲師団の猛攻に耐えている間に、ダンケルクから33万人の英国とフランス兵が撤退することができたが、混合部隊は戦死者300人、負傷者200人を出し3500人が捕虜となった」
(木村太郎4月25日)

その成果の一端は、5月8日にドネツ川を渡河しようとした1個BTG(ロシア軍の戦術単位)を砲撃によって全滅に追い込んだことにも見てとれます。
この時、驚異的な精度でロシア軍の頭上に降り注いだのが、この米国製の榴弾だったようです。
今後東部戦線では、正規軍同士の会戦型戦闘が行われる可能性が高く、榴弾砲、装甲車両、戦車などの絶対数が足りないウクラナ軍はそれを送って貰う時間を稼ぎだす必要がありました。 

この「捨て石」となったのがマリウポリ守備隊です。
彼らの合い言葉は、「我々は捨て石だが、犬死にではない」だったと聞きます。
アゾフスタル製鉄所とそこて戦った兵士らは、後々の世まで記憶に残されるべきことでしょう。

ところで、ロシア軍は支配地域において選別作業を行っており、このマリウポリにおいても「フィルターキャンプ」で選別し、「好ましくない人間」は矯正収容所に送り込むことを続けています。

「アンドリュ・シチェンコ・マリウポリ市長顧問は11日、マリウポリ市民の内いわゆる「フィルター・キャンプ」におけるロシア軍の厳重審査を通過しなかった「好ましくない」人物最大3000人が、ドネツィク州の被占領下オレニウカ町の元矯正収容所にて拘束されていると伝えた。
アンドリュシチェンコ氏は、「フィルタリングを通過しなかった者、マリウポリ近郊のフィルター・キャンプで『好ましくない』と認定された者は皆、ドネツィク州オレニウカ町(2014年から被占領下)の元第52矯正収容所へと送られている。(中略)拘束環境はこうだ。牢屋や満杯。計画時の収容所の限界収容数は850人だったが、目撃者によれば、現在そこには最大3000人が拘束されている。主にマリウポリ市とマリウポリ地区からの者だ」と伝えた。
同氏はさらに、オレニウカのその収容所はウクライナの軍人用ではなく、軍人の親族、元治安機関職員、活動家、記者や、愛国的なタトゥーをしている、などのロシア側が単に疑いを抱いただけの人物が拘束されていると説明した。拘束期間は最短で36日だという」
(ウクライナ・フォーラム5月17日)
マリウポリ市当局、露軍の「審査」を通過しなかった約3000人の収容先を報告 (ukrinform.jp)

この矯正収容所はの条件は非人道的で、すし詰めされて、横になることもできない状況のようです。

「加えて同氏は、「場所は人でいっぱいであり、横になることもできない。立ち続けるか、うずくまらねばならない。1日の水は、ボトル1本を10人で分ける。食べ物は毎日は出ない。トイレは1日1回。外へ出歩くことは認められていない。
何時間もの尋問、拷問、殺害の脅しと、協力の強制が伴う。運が良ければ、36日で解放されるが、何らかの紙に署名を強制される。どんな紙かは、目撃者は説明できていない。ただし、『協力』に関するものだと推測できる」と説明した」
(ウクライナフォーラム前掲)

ロシアの尋問の後に、相当数の市民が「行方不明」となっています。

シチェンコ市長は「ロシアが欧州の中心地に作り出した21世紀の真の強制収容所だ」と述べていますが、国際機関はマリウポリなどのロシア軍占領地に対して早急に実態調査をし、住民保護をするべきです。

 

 

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アゾフスタリ製鉄所地下の民間人たち。子どもが多数含まれていた。
ウクライナに平和と独立を

 

 

2022年5月18日 (水)

デニー知事建議書を出す

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返還50周年について私がなにも書かなかったので、いくつかのメールとコメントををいただきました。
なんでお前は、書かないのかと。
なぜ書きたくなかったのかといえば、この式典がまるで「偽善の祭典」のように見えたからです。

結論から言いましょう。
ウクライナは米欧の力を渇望して得られませんでした。
仮にNATO参加が認められていれば、ロシアは侵略するの止めたことでしょう。
武器支援がもっと早い戦争前に行われていたならば、ここまで悲惨なことにはならなかったはずです。
ウクライナに仮に米軍基地があれば、きわめて強い抑止の力になったはずでした。

また外交の力だけで侵略を防げるという説が流布しているようですが、妄想にすぎません。
ゼレンスキーは、むしろロシアと融和して切りぬけようとしました。
そのために米国からもたらされるロシアの侵略準備を信じてはいなかったようです。
これが緒戦のウクライナ軍の失敗につながります。
元空将の織田邦男氏はこう述べています。

「これはウォロディミル・ゼレンスキー大統領の責任が大きい。ゼレンスキー氏は、2021年11月から米国がリークする貴重なロシア侵攻情報を信じようとしなかった。
2月14日の時点でも「(米国は)誇張しすぎ」「すべての問題に交渉のみで対処する」と述べていた。予備役動員を命じたのも侵攻2日前である。
レズニコフ国防大臣は「侵攻寸前との発言は不適切」とまで言っていた。トップがこういう状況だから、空軍も即応態勢を上げないまま、ロシアの奇襲を受けた」
(織田邦男5月16日)
空自元最高幹部が解説、ロシアが制空権を取れない驚くべき理由 今後の戦況はウクライナ西部での制空権がカギ握る| JBpress 

外交の基礎は情報力です。
ところが日本は情報機関さえもたず、スパイ防止法すらない情報軽視国家ですから、これで外交で侵略を阻止できるはずもありません。
日本がウクライナにならないためには、米国の力が必須で必要なのです。
まだわからないのでしょうか、ウクライナは「9条の国」、専守防衛の国だから攻撃を受けたのです。
ウクライナ戦争ほど、私たち日本人に対して、どうしてお前はそう眠れるのだ、と問うているものはありませんでした。
その意味で、ウクライナ戦争は戦後日本人の価値観の根幹につながるものだったのです。

ところがここに真空地帯があります。
それは沖縄です。

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「平和で豊かな沖縄」へ/デニー知事、新たな建議書/辺野古新基地断念求める (jcp.or.jp)

この50周年に寄せた県の建議書なるものがあります。
地方自治体が政府に「建議書」を出すということ自体、かつての1971年、琉球政府屋良首席の沖縄返還を要望する「建議書」に、自らを重ねたのでしょう。

「沖縄の本土復帰を翌年に控えた1971年11月17日、琉球政府(後の沖縄県)トップの屋良朝苗(やらちょうびょう)主席は米国統治下にあった沖縄から東京へと向かっていた。その手にあったのは復帰に対する要望をまとめた132ページの「建議書」。そこには、住民約9万4000人(推計)が犠牲となった45年の沖縄戦を経て、米国統治による人権抑圧に苦しんできた沖縄の人たちが求める復帰の「理想」がつづられていた」
(2021年11月23日)
「へいりの様に踏みにじられた」建議書 沖縄復帰50年、変わらぬ願い | 毎日新聞 (mainichi.jp)

現県知事の建議書は、このように述べています。 

 「沖縄県としては、軍事力の増強による抑止力の強化がかえって地域の緊張を高め、意図しない形で発生した武力衝突等がエスカレートすることにより本格的な軍事紛争に繋がる事態となることを懸念しており、ましてや米軍基地が集中しているがゆえに沖縄が攻撃目標とされるような事態は決してあってはならないと考えております。 
本年2月に勃発したロシアによるウクライナ侵攻で、ウクライナの国民に甚大な犠牲が生じ、美しい街並みや空港、道路等の重要なインフラが徹底的に破壊されていく状況は、77年前の沖縄における住民を巻き込んだ悲惨な地上戦の記憶を呼び起こすものであり、これが過去のことではなく、今、現実に起こっている事態であることに例えようのない衝撃を受けるとともに、沖縄を取り巻くアジア太平洋地域の今後の情勢等について重大な危機感を持たざるを得ません」

おいおい逆でしょうが。
本気でこんなことを言っているとすれば、なにをこの2か月間見てきたのか。
ウクライナは「米軍基地が集中しているがゆえに攻撃目標とされた」と本気で思っていたとすれば、そうとうにレアな人です。
まったく逆に、ロシアはウクライナに「米軍基地がなかった」から攻撃できたのです。
NATO加盟を憲法にまで書き込んで強く求めていたのはどこの国だったか、白黒を逆に言ってはいけない。

NATOとは、ロシアを主敵と定めた米欧軍事同盟のことです。
とうぜんNATOに加盟すれば「米軍基地のある平和な国」となることが可能だから、ウクライナは加盟を切望したのではありませんか。

「トラップ」という軍事・外交上の概念をご存じでしょうか。
これは文字どおり罠のことで、その国、ないしは地域に踏み込むと自動的にその国以外を参戦させてしまうが故に自重するという抑止の仕組みのことです。
典型的な例としては、かつて38度線とソウルの間に配置されていた米陸軍第2師団がそうでした。
北朝鮮が南侵しようとすれば、かならず米軍基地にぶつかり、世界最強の米国を相手にせざるをえなくなる、だから南侵は出来ないというわけです。

沖縄の米軍基地も同じ「トラップ」機能を持たされていました。
米国からすれば、なにもこんな中国の弾道ミサイルの射程距離内に基地を置く必要はないのです。
のほほんとミサイルが届かない安全圏内のグアムで昼寝していればいい。
ところが危険を承知で、沖縄にまで基地を置き、有事即応部隊の海兵隊とアジア最大の空軍基地まで配備しているのは、沖縄を攻撃すれば米軍を相手にせざるをえなくなる「トラップ」役を自ら買ってでているともいえるのです。
したがって常に米国内でもそんな危険な場所から引っ込めろという声がでるのですが、頑としてそれを拒否して沖縄に駐留しているのは信頼の証だからです。
米軍が沖縄から出て行ければ、日本の軍事力では支えきらずに、東シナ海はたちまち中国の内海となり、沖縄は赤い海に浮く孤島となるでしょう。

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フィンランド、NATO加盟申請に向け始動-スウェーデンも追随か - Bloomberg

フィンランドやスウエーデンのケースを考えてみましょう。
この北欧二国は、「軍事紛争に繋がる」危険をもった米軍基地を追放して、「基地のない平和な国」を作るためにNATO加盟を急いでいるのでしょうか。
逆です。北欧二国は、米軍基地に来るように要請しているのです。
この両国共に戦後左翼の憧れの「永世中立国」だったはずですが、なぜ中立政策を廃棄してNATO加盟を決定したのか。
1国だけの力には限界があり、侵略の意図をもったならず者国家に侵略されるからです。
まるでウクライナのように。
だから自国の軍事予算を増額し、徴兵制を復活させ、集団安保体制を選択したのです。

ちなみに、この決定をした北欧2国の政権は社会民主主義政党です。
スウエーデンなどこれほど左の政権が生まれたのは初めてだとまでいわれましたが、彼ら北欧リベラル政権が選んだ安全保障政策は軍事予算増額と徴兵制,そしてNATO加盟でした。
素晴らしいリアリズムです。 日本なら極右扱いされるかもしれませんね。
こういうイデオロギーに曇らない安全保障政策を持っているから、左翼でも政権を取れるのです。
デニー知事が沖縄戦と重ねてウクライナを見ることまでは正しいのですから、もう少しイデオロギーに曇らない眼でみたらいかがでしょうか。


 

2022年5月17日 (火)

ウクライナ戦争は世界食料危機をもたらす

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今回のウクライナ戦争は、世界の食糧供給にメガトン級の衝撃を与えました。
私たち日本人にはまだまだそのほんとう の衝撃波は届いていないのですが、最初の波は既に中東とアフリカを襲っています。
理由はひとつで、ウクライナ戦争の結果、小麦、トウモロコシ、ひまわり油の供給が激減してしまったからです。

世界の食料価格は、過去最高のペースで上昇し続けています。

「世界の食料価格は2月に過去最高に達した。ロシアのウクライナ侵攻で農産物貿易に混乱が生じており、食料コストは今後さらに上昇する公算が大きい。  国連食糧農業機関(FAO)が算出する世界食料価格指数は侵攻前ですでに2011年に記録したピークの近くにあった。侵攻後、世界的な穀倉地帯として知られる黒海地域からの輸出は混乱に陥った。穀物や植物油の価格は過去最高もしくは数年ぶり高値に跳ね上がり、消費者と政府に一層のインフレ圧力をもたらしている。飢餓が世界的に悪化する恐れもある」
(ブルームバーク3月5日)

下図はFAO(国連世界食糧機構)が出した世界市場の食料価格指数ですが、2月に4%近く上昇しました。
既にウクライナ戦争前から食品コストは2020年半ば以降で50%余り上昇していたところに、今回のウクライナ戦争が追い打ちをかけた形になりました。
食品価格上昇は小麦だけには止まらず、ウクライナが世界最大のひまわり油生産地だったために、植物油の価格までもが高騰した影響が大きいようです。

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https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-03-04/R88FNZDWX2PT01

原因はロシアが世界第2位のウクライナの穀物輸出を、海上封鎖によって止めてしまったからです。
そして穀物輸出第3位が当の原因を作ったロシアです。
下図をご覧いただくと、米国はブッチギリですから別にするとして、二位三位が今回の被侵略国と侵略国だということが判ると思います。

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朝日gloveプラス

ロシアとウクライナは欧州を支える穀倉地帯です。
ふたつの国が輸出している食糧は、世界で消費されるカロリーの実に12%を占め(国際食糧政策研究所による)、世界の穀物市場において小麦の約30%、トウモロコシの約20%、ひまわり油の80%以上の原産国は、ロシアとウクライナです。

この両国がウクライナ戦争で大打撃を被ってしまいました。
食糧経済の専門家の比喩を使えば、米国地図からアイオワ州とイリノイ州の二大穀倉地帯がいきなり消滅したようなものだそうです。
下図はウクライナのトウモロコシ生産地域の分布図で、2022年3月末時点のロシアの支配地域、侵攻地域(点の分布)を重ねたものです。

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https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-04-05/R9VC65T0G1LF01

「ウクライナの農場地帯では、秋の収穫期から倉庫に蓄えられ出荷を待つトウモロコシが合計1500万トンに上る。
その半分程度は外国に輸出されるはずだったが、買い手への引き渡しは難しさを増している。およそ1200億ドル(約14兆7500億円)の規模を持つ世界の穀物取引で、ウクライナとロシアは合わせて約4分の1を占める。両国からの供給の乱れは、すでに問題化していたサプライチェーンの障害や運賃の高騰、異常気象などと相まって、世界が食糧難に陥るとの見通しを強めている」
(ブルームバーク4月6日)

ウクライナ南部のアゾフ海の輸出港がロシア軍に押えられ、かろじて占領を免れたオデーサですら沖合をロシア海軍に封鎖されているために使用不可能な状態です。
穀物輸送船を運営する船会社は、安全のためにアゾフ海沿岸の港には入港することを拒んでいます。
これは仮にこの海上封鎖が解けても、ロシアが敷設した機雷などの危険があるために、安全を確認するために相当の時間を要するはずです。
これによって昨年秋に収穫されて保管されていた小麦などの出荷が、不可能となりました。

下写真はマリウポリ港の穀物積み出しの風景です。
いまだにウクライナ軍が頑強な抵抗を続けるアゾフスタル製鉄所のすぐ横にあり、現時点ではロシア軍が支配しています。

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A cargo ship at the Port of Mariupol, loaded with grain destined for Turkey, in the month before Russia’s invasion of Ukraine
ブルームバーク

鉄道による内陸からの輸出ルートもあるにはありますが、ウクライナの鉄路はソ連式の広軌なために、積みかえねばなりません。

そしてさらに、この保管してある穀物は、ロシア軍が生活インフラを集中的に破壊しまくったために電気が供給できず、貯蔵庫内の換気システムや温度調節システムがダウンしている状況です。
これからの夏の高温に向けて品質が非常に不安です。
いったん腐敗やカビが部分的にでも始まると、瞬く間にサイロ全体に及ぶからです。
下写真は、2018年に撮影されたウクライナ・ユージヌイの穀物ターミナル倉庫内のトウモロコシですが、このような大規模穀物貯蔵施設は電気を切られた場合、その維持が死活問題となります。

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ブルームバーク

また国土が戦場となってしまったために、畑で働く農家や農業労働者が圧倒的に不足しています。
労働力だけではなく、トラクターやコンバインの燃料も不足しているために播種や刈り取りができません。

肥料も世界最大のカリ肥料輸出国が、こともあろうにロシアのために、供給がストップして、今後も見通せない状況です。
全世界のカリウム生産の20%を占めるロシアの輸出が困難になれば、価格がさらに上昇することは間違いありません。
この肥料の価格高騰の影響は、日本も含む世界中のあらゆる農業地域に及ぶでしょう。

ウクライナ農業としては、ここでどのように判断するのか、頭を悩ませていることでしょう。

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日経

一方、穀物輸出第3位ロシアも散々です。
自業自得で同情するに値しませんが、ロシア船籍の船舶はヨーロッパ各地で入港を禁じられているために禁輸状態です。
ロシアの輸出食糧は、パンの材料となる小麦が占めています。

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朝日globalプラス

穀物輸出は影響が大きいためにまだ制裁対象ではありませんが、欧米の銀行はロシアと関わる貿易業者への融資を渋っています。
欧米諸国の政府に罰金を科されたり、ロイズが保険を渋ったりすることを恐れているからです。
ですから、貿易業者はロシア貿易には近づきたがりません。
つまり貿易業者がいみじくも言うように、ウクライナは「手が届かない」のに対し、ロシアは「手が出せない」状況、というわけです。

一方ウクライナの穀物は小麦とトウモロコシが主力ですが、ウクライナは旧ソ連域内の輸出からEU向け輸出にシフトしています。
せっかくヨーロッパで販路を伸ばしたところで、今回の侵略に合ってしまい、ウクライナの農業生産者は地団駄踏んでいることでしょう。

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朝日globalプラス

そしてこの両国にとって、ヨーロッパに次ぐ販路が、実は中東でした。
世界人口のうち8億人が黒海地域からの小麦に依存しているために、低価格のロシア、ウクライナ産穀物に依存してきた中東や、トルコ、エジプト、アジアの一部の国々の食糧事情を直撃することでしょう。
特に、依存度が高いシリアやレバノンでは、ウクライナ産小麦が半数を占め、その上にひまわり油、大豆までもがウクライナに頼っていました。
このような国はまだまだ多く、これらの国から食糧パニックが開始されるはずです。

 

 

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オレストさんがアゾフスタリでカールシュ・オーケストラの曲「ステファニヤ」を歌っている。

ウクライナに平和と独立を

2022年5月16日 (月)

なぜウクライナで、ロシア軍は穀物を強奪するのか

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ロシア軍はナンでも盗みます。もはや軍隊というより組織窃盗団。
占領した街は、泥棒共の狩場です。
民家に押し入ってカメラや貴金属はあたりまえ、、人気盗品はアイフォーンで、ベラルーシに持ち込んだり、アホウはネットオークションにかけたり。
こんな危ないもの盗んでどーするんだというのが、チョルノービリ(チェリノブイリ)原発から盗んだ放射性物質。

「ウクライナ当局は10日、同国に侵攻したロシア軍が一時占拠したチョルノービリ原子力発電所の研究所から放射性物質を盗み出したと明らかにした。一方、首都キーウ周辺ではこれまでに1200人超の遺体が見つかっており、当局は戦争犯罪について調査していると述べた」
(BBC4月10日)
ロシア軍が放射性物質略奪か、キーウ州では1200人超の遺体 - BBCニュース

かつての大戦末期、ドイツに侵攻したソ連軍の非道ぶりはすさまじく、民家、商店は当たり前、避難民まで餌食にして、残虐非道の極みを尽くしました。

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人類史上最悪…犠牲者3000万人「独ソ戦」で出現した、この世の地獄(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社(3/4) (ismedia.jp)

「前線のソ連軍将兵の蛮行も、その残虐さに引けを取るものではなかった。ソ連軍将兵は敵意と復讐心のままに、略奪や暴行を繰り広げたのである。
「ソ連軍の政治教育機関は、そうした行為を抑制するどころか、むしろ煽りました。ソ連軍機関紙『赤い星』にはこのように書かれています。
『もし、あなたがドイツ人一人を殺したら、つぎの一人を殺せ。ドイツ人の死体に勝る楽しみはないのだ』」
やられたらやり返す、そこにあるのは、剥き出しの憎悪だ。ソ連兵青年将校が見た戦場の証言を聞こう。
「女たち、母親やその子たちが、道路の左右に横たわっていた。それぞれの前に、ズボンを下げた兵隊の群れが騒々しく立っていた」「血を流し、意識を失った女たちを一ヵ所に寄せ集めた。そして、わが兵士たちは、子を守ろうとする女たちを撃ち殺した」
(大木毅『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』)

これが先日の「戦勝記念日」に、プーチンがまるで人類の偉業のように讃えた「大祖国戦争」の現実の姿です。
チェチェン、シリア、そしてウクライナ。
いくら時代が替わろうと、近代装備をまとっていようとも、このロシア軍の残虐な中身はまったく変わらないようです。

このウクライナ戦争の強奪が悪質なのは、それが組織的犯罪であることです。
農家からは大型ハーベスターを盗み、さらには小麦、向日葵の種などの農産品を盗んだそうです。
よその国の兵隊も補給がないと裏庭から鶏をくすねて来る、今日のパンに焼くために小麦を盗む、といった非行をはたらきますが、ロシア軍が違うのは軍上層部がからんだ組織強奪犯罪であること、そしてその非行が罰せられないことです。
いやそれどころか司令部から推奨され、ブチャ虐殺に手を下した部隊など「親衛」という名誉称号すら事件後に得ているほどです。

ところで考えてみればわかりますが、一口に70万トンの穀物といっても大変な量です。
国連WFP(世界食糧計画」が、2014年に南スーダンで実施した食糧支援計画は20万トン規模でしたが、備蓄のためのサイロを作り、送り出し拠点を作り、膨大な数のトラックを準備し、道路を整備し、中継基地を作ってやりきったようです。
2国間をつなぐ穀物 | World Food Programme (wfp.org)

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WFP

今回、ウクライナから略奪したという穀物は戦場を運ぶわけですから、とうぜん巨大なコンボイを作って警備部隊を張り付けて運搬したのでしょうが、武器弾薬、兵士の食糧まで枯渇しているといわれるロシア軍に、そんなことをする余力がよくあったものです。
こんなことをするためには、方面軍司令部からの命令がなければ出来ないことてす。

さすがに見かねた国連が警告を発しました。

「ジュネーブ共同】国連食糧農業機関(FAO)当局者は6日の記者会見で、ロシア軍が侵攻したウクライナから約70万トンの穀物を略奪した可能性を指摘した。「トラックで穀物をロシアに運び入れている事例を確認している」と述べ、トラクターなどの「農業機械も盗んでいる」とした。
 またロシア軍による海上封鎖で黒海沿岸の港湾施設が使用できないことにより、船舶を利用した穀物輸出ができない状態になっていると指摘。世界的な穀物の供給悪化と価格高騰に拍車がかかることに懸念を示した」
(5月3日共同)
ttps://news.yahoo.co.jp/articles/38ae925d4d50dcc9afa38e3e948d619554af3b3a

まぁ、FAO如きがなにを言おうと知ったこっちゃないのがロシアですから、今後も占領が続く限り盗みまくるでしょう。
北部ハルキウでも大規模な穀物強奪が起きたという報道がありますが、最大の被害例は南部のサポリージャです。   

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読売

穀物輸送の中継地となったと思われるヘルソン州の村からも、穀物1500トンがクリミア半島に持ち去られています。
これがただの兵隊の出来心ではないのは、現地消費しているのではなく流通させていることです。
どうやらロシア軍は盗んだ小麦をクリミア半島に持ちこんでいるようです。
上図で、強奪が発覚したサポリージャとクリミアを制するヘルソン、そしてクリミア半島の位置関係をご確認下さい。
サポリージャ→ヘルソン→クリミアという占領地ルートを使ったのでしょう。

「ウクライナ国防省は)ロシアのトラックの車列がロシア軍の保護の下、ザポリージャ州エネルホダルを出発したと主張。車列の最終的な行き先はクリミア半島だと指摘した」
(CNN5月11日)

おそらくウクライナはドローンで車列を追跡したのでしょうが、それがクリミアの彼らが「領土」と主張する地域に運びこまれているのが判ったようです。
つまりこれはただの強奪ではなく、「占領地軍政」の一環であり、彼らの「戦争経済」の一部なのです。

「米政府系「ラジオ自由」によると、ロシア軍はヘルソン州を3月に制圧すると穀物や野菜を強制的に取り立て、2014年に併合したクリミア半島に運び出した。ヘルソンの農作物をクリミアの商店に格安で流通させ、ロシア側のインフレを抑える狙いだという。
 ロシアがクリミア半島に創設した「クリミア共和国」政府は「農作物の安定供給は、ヘルソンの人々との経済協力のたまもの」と主張。ウクライナメディアによると、ロシア側はヘルソン州で通貨としてロシア・ルーブルを広めており、農作物収奪を通じてヘルソン州とクリミアを経済的に一体化させる思惑もある。
 一方、ロシア中部クラスノヤルスク地方の議会は4月27日、シベリアの食糧不足解決に向け、ヘルソン産の農作物を収用するとウェブ上で発表したが、ウクライナで批判が高まった後、「サイバー攻撃を受けたことによる偽情報」として取り消した。
 ウクライナ・ベラルーシ系の有力メディア「ゼルカロ」は、ロシア政府による食糧収奪は、スターリン体制が1930年代にウクライナで起こした大飢饉を思わせると論評。「ウクライナからパンを奪う行為は惨劇を生む」と訴えた」
(東京 2022年5月1日)

送り先がクリミア半島であることに注目してください。
2014年の第1次ウクライナ侵略の際に簒奪されたクリミア半島は、農業不毛の土地でした。
クリミアは掘っても海水まじりの水しか出ないため、淡水需要の85%までをウクライナのヘルソンから送られて生きていました。
併合前までクリミア半島には、本土から北クリミア運河を通じて淡水が供給されていましたが、今は止められています。

併合後は、半島内に23カ所ある貯水池でかろじて淡水需要をまかなってきましたが、一昨年は降雨・降雪量が少なく、貯水量が危機的水準です。
困ったロシアは、地質調査会社が淡水を求めて、巨額の投資をしてアゾフ海沿岸海底の探査作業にまで手を出しているほどです。
当然、水がないような地域で農業が盛んなはずもなく、食料、水、そして電気までもがロシアから送られてきました。
おそらく黒海の制海権を握る半島突端のセバストポリ軍港がなければ、ロシアはこんな不毛の地に触手を伸ばさなかったでしょう。
だから、クリミア半島付け根にあって死活を握る要衝ヘルソンを、ロシア軍は喉から手がでるほど欲しいのです。
今、住民投票をして、ドネツクなどのように「ヘ人共」を作るべく動いていますが、ここをなにがなんでもロシアの領土として確定させてしまいたいようです。
もちろん先日見たように、国際法ではそんなものは認められませんが。

ところで、もうひとつの盗まれたウクライナ産穀物の行く先は、どうやらシリアのようです。

「(CNN) ウクライナ国防省の情報部門は11日までに、ロシア軍が占領地域で盗んだ穀物はすでに国外に送られているとの見方を示した。
同部門は「ウクライナから盗まれた穀物の大部分は、地中海を進むロシア船籍の乾貨物船の上にある」と主張した。行き先として最も可能性が高いのはシリアで、そこから他の中東諸国に密輸される可能性があるとしている。
同部門はまた、ロシアが引き続き、盗んだ食料をロシア連邦の領土や占領下のクリミア半島に運んでいるとの見方も示した」
(CNN5月11日)

ロシアがアゾフ海沿岸の占領を企む最大の理由は、ウクライナを内陸国にしてしまうことです。
ウクライナは、この南部地域に下図のように、主要な港であるマリウポリ、ベルジャーンシク、オデーサなどの積み出し港を持っています。

米軍は戦争勃発時から、ロシアはアゾフ海沿岸を占領するだろうと予測していました。
米全欧陸軍司令官だったベン・ホッジスはこう述べています。

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日経

「海岸線に攻撃を仕掛けて、ウクライナによる黒海やアゾフ海へのアクセスを遮断すればウクライナ経済に大打撃を与えられる。ウクライナ経済は農産品や鉄鉱石などの輸出に依存しているからだ。アゾフ海の港湾都市であるマリウポリやベルジャーンシク、黒海のオデッサに民間船がアクセスできなければウクライナ経済は崩壊する。それがロシアによる戦略的計画の一部だ」
(日経2022年2月12日)

現時点でオデーサを除き、ロシア軍は主要積み出し港すべてを押えています。
世界の穀物輸出量のうちロシア産とウクライナ産を合わせると小麦が約3割、トウモロコシは約2割を占めますが、これらの積み出し港が「ロシアの港」となり、アゾフ海が「ロシアの内海」と化した場合、穀物の海外輸出を国家財源とするウクライナは大打撃を被ります。
ポーランド経由の陸路もあるにはありますが、海運は一気に大量の穀物輸送ができるので、絶対に確保せねばなりません。

ウクライナ産穀物は輸出が不可能になっています。
ウクライナとロシアは、戦争前から世界有数の穀物生産国であり、そのうえその輸出先はヨーロッパより中東に多く輸出される特徴がありました。
これがウクライナの港をロシアが封鎖してしまったために輸出量が激減し、真っ先に干上がったのが中東、特に農業生産力が低いロシアの盟友であるシリアだったというわけです。
シリアだけではなく、中東や北アフリカ諸国を中心に軒並み食糧危機や物価高騰が爆発しています。
ロシアは世界規模の食料危機にまで火をつけてしまったのです。
ウクライナ戦争が与える世界食糧需給については次回に続けます。

 

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ロシア軍が壊した家にコウノトリが戻って来た、とウクライナの人々は喜んでいます。
ウクライナに平和と独立を

 

 

2022年5月15日 (日)

日曜写真館 つつましき夏のはじめや鉄線花

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花びらにアテネをのせて鉄線花 平井照敏

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鉄線の名は汝にこそ吾亦紅 鷹羽狩行

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おのが名を偽らず咲き鉄線花 鷹羽狩行

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鉄線花のむらさき自由自在かな 後藤比奈夫

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挫折後の藍あざやかなクレマチス 佐藤鬼房

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好きな花鉄線といひ案内する 高木晴子

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鉄線を愛しつゞけて為人 星野立子

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さゆらぎもせぬままに落ち鉄線花  鷹羽狩行

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鉄線花に紫衣の紫憑きにけり 後藤比奈夫

 

 

2022年5月14日 (土)

英国は北欧二国に核の傘を提供する

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迫りくるロシアの脅威を前にして、フィンランドとスウエーデンがNATO加盟の方向で揃いました。
NATO側にも特に大きな反対がないようなら、早ければ6月中に正式加盟となります。
とはいえ、学級委員会体質が抜けないNATOはスッタモンダが定番ですので1年くらいかかるかもしれません。
このブランクを埋めようというのが、ボリス・ジョンソンの北欧2国に対する安全保障協定の合意です。
この素早さがポリス外交の真骨頂ですが、これはウクライナ侵攻を阻止できなかったということに対する反省から生まれているのでしょう。

「イギリスは11日、スウェーデン、フィンランドの両国と安全保障協定に合意した。いずれかの国が攻撃を受けた場合、支援を行うという内容。
イギリスのボリス・ジョンソン首相は両国を訪れ、合意文書に署名した。両国をめぐっては、北大西洋条約機構(NATO)への加盟に関する議論が起きている。
協定には、イギリスが危機に置かれた際、フィンランドとスウェーデンが支援することも明記されている。
ただ、この協定は法的または自動的な安全保障に関するものではなく、要請があればイギリスが支援に向かうことを政治的に宣言するという位置づけだ
」(BBC5月12日)
英国、フィンランド・スウェーデンと安全保障強化で合意 - BBCニュース

要点を整理してみます。
ポイントの第1は、この北欧2国との安保協定が双務的なものだということです。
つまりいずれかの国が攻撃を受けた場合、相互に支援を行うという内容で、これは日米安保が安保法制で半歩前進したとはいえ片務的であることと対照的です。
わが国はせいぜいが、米艦艇を海自が守る程度のことしかできないのに対して、北欧2国は相互安全保障協定(mutual security agreements)であって、北欧2国にも英国防衛の義務を持たせています。
ちなみに、今回のagreementsは「協定」とも「合意」とも和訳します。合意のほうが柔らかい印象ですが、原文では同じです。

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英首相、スウェーデンとの安保合意文書に署名 - イザ! (iza.ne.jp)

第2に、これはNATO第5条のような自動参戦条項をもたず、要請に基づいての相互防衛義務です。

「ただ、この協定は法的または自動的な安全保障に関するものではなく、要請があればイギリスが支援に向かうことを政治的に宣言するという位置づけだ。
ジョンソン氏とスウェーデンのマグダレナ・アンデション首相は、ロシアがウクライナを侵攻している現状において、協力は「いっそう重要」だと述べた。
ジョンソン氏は、「もしスウェーデンが攻撃され、イギリスに支援を求めたら、私たちはそれを提供するだろう」とした。
ロシアがスウェーデンを攻撃した場合、イギリスはどう対応するのか明確にするようBBCが求めると、ジョンソン氏は、今回の協定によって「相手国からの要請があれば支援に向かう」ことになると述べた」
(BBC前掲)

「支援」の中身については英国は明確にしていませんが、それは当然でしょう。
手の内を見せる必要はないし、それはロシアの出方次第だからです。
航空機や陸上の随時派遣から核による反撃までいくとおりもあるからです。

明示されていませんが、とうぜん英国が提供する「安全保障」には核兵器も含まれているはずです。
英国は、SLBM(水中発射弾道ミサイル)を搭載した複数の潜水艦の運用を中心とした核戦力を有しています。

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イギリス最新の原子力潜水艦「アンソン」進水 就役は2022年以降の予定 | 乗りものニュース (trafficnews.jp)

この英海軍戦略原潜は、自国に接した北海、バルト海、フィンランド近辺までパトロールし、常に英国の核の傘にこの北欧2国を置くことになるはずです。
北欧二国にとっては、自国の危機に際して、協定に基づいて英国の核の傘による核抑止を用いることができることになります。
これはNPT条約で合法核保有国の傘を延長したもので、条約非核国のニュークリア・シェアリング政策の亜種かもしれません。

一方、英国にとっては、自国の核の傘を、ヨーロッパ全域の核の傘にまで拡げる最初の一歩となるわけです。
これはフランスからオーストラリアの原潜製造を横取りよろしく持っていった、アングロサクソン同盟の世界戦略と関わりがあるかもしれません。

第3に、この安保協定の位置づけが、ロシア、中国の自由主義陣営への脅威に対抗するためのものであることです。
いうまでもなく、北欧2国のこの行動は、「プーチンの戦争」に触発されたものです。
このウクライナ侵略が明示してしまったのは、戦争は現代でも突如として、かつ理不尽に始まりうる、そしてそれは核の脅迫を伴うという現実でした。
そして米欧は、プーチンの核の脅迫に対してなす術がなかったわけです。

いくらなんでも21世紀の世の中に19世紀のロシア帝国のようなマネはすまい、という常識が見事に覆ったのが今回の事態でした。
ところがヨーロッパ主要国は、ロシアを共通の脅威だとする認識すら薄れていました。
ルトワックが辛辣に評するように「NATOは麻薬」、あるいは安眠できるための睡眠薬と化していたからです。
「ヨーパの盟主」を気取るドイツなど、ロシアに対する警戒感を完全に忘れ、軍備を削り続け、気がつけば陸軍の動く戦車がヒイフーミー、ロシアに対するエネルギー依存度がベッタリ5割以上というていたらくでした。

それをよく現したのが、2022年1月21日の、ドイツ海軍総監のシェーンバッハが、シンクタンクの会合で言ったこの台詞です。
彼は、当時ウクライナ国境に集結する19万のロシア軍の脅威を知りながら、こう言ってのけたのです。

「プーチン氏が本当に求めているのは敬意だ。敬意を払うのは低コスト、いやノーコストだ。彼が本当に要求している、おそらくそれに値する敬意を与えるのは簡単なことだ」と発言した。
クリミア半島は消滅し、二度と戻ってくることはない、これは事実だ」

これがメルケル・ドイツの本音です。
武装解除をするだけでは済まずに、むしろロシアの意向に喜んで忖度していたわけです。

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プーチン大統領とメルケル首相、露国境を横断したウクライナ海軍の艦艇3隻を巡る事案を論議 - 2018年11月27日, Sputnik 日本 (sputniknews.com)

もう一方のNATOの盟主フランスは、会って話せば説得できるとばかりに毎日プーチンに電話を入れたそうですが、プーチンを止めることができなかったばかりか、自由主義陣営の分断に手を貸しただけに終わりました。
マクロンの大統領選のにおける対抗馬のマリー・ルペンに至っては、根からのプーチン好きなうえに、NATO脱退を唱えるのですから外交感覚を疑います。
今回の侵略を見ても日本のヒダリの方々は、「外交力で解決しろ」などと言っていますが、どこまで寝ぼけているのか。

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マクロンがプーチンと対面で会談 ウクライナ問題「向こう数日間が正念場」|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)

それはさておき、これら独仏の対応に共通するのは、米国とその盟友英国に対する根深い反感です。
この反米意識は、ファーレフトからファーライトまで共通しているのですから、困ったものです。
しかもトランプはそれを増幅させてしまいました。

一方、米英とファイブアイズの動きは敏速でした。

「イギリスは急遽、対戦車兵器をウクライナに供与し、訓練要員として約100人を派遣。カナダも小規模な特殊部隊をキエフに配備した。両国ともアングロサクソン5カ国のスパイ同盟「ファイブアイズ」のメンバーだ。それに対してドイツは自らの武器供与を拒否した上、バルト三国のエストニアがドイツ製の武器をウクライナに供与することまで許さなかった。
そればかりか対戦車兵器を運ぶイギリスの軍用機はドイツ領空を飛べず、迂回ルートを取らざるを得なかったのだ。
ドイツ政府はロシアを国際金融決済システム(SWIFT)から切り離す金融制裁は欧州にも破壊的な影響を与えるため考えられないと独メディアに説明し、アメリカを激怒させた」
(ニューズウィーク1月23日)
ウクライナ危機で分断される欧州 米と連携強める英 宥和政策の独 独自外交唱える仏|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)

米英は、昨年段階から緻密な情報戦をロシアに対して仕掛けていました。
宮家邦彦氏のまとめによれば、このような動きでした。
米国は2014年のクリミア侵攻以来、次はウクライナ全土に対して侵攻するだろうと予測していたようです。
そして自由主義陣営に対して、ロシア軍の動向を膨大な情報から抽出して警報を鳴らし続けていました。

侵攻10か月前の2021年4月には、早くも国防総省報道官はウクライナ国境付近の露軍の規模が拡大と指摘し、翌月5月にはブリンケン国務長官が「ロシアの脅威に懸念」を表明しています。
10月には、国務・国防の両長官がウクライナを直接訪問し、米国の支援を約束しました。
どこよりも早い対応で、11月には国防総省がウクライナ国境付近の露軍の「異常な活動」に再三警告を発し、この時点でウクライナへの軍事顧問派遣や武器など装備品の新たな供与を開始し始めています。
もちろんこの情報構築は、英国情報機関も協力しており、おそらくこの去年11月の時点で、米国と英国はロシアのウクライナ侵攻は時間の問題だと見ていたはずです。

そして軍事援助だけではなく12月にはバイデンが、ロシアが侵攻すれば強力な経済的措置で対応する、と警告しました。
これは後に、「金融の核爆弾」と呼ばれるようなSWIFT規制などで現実のものとなります。

今年に入って1月には、国防総省がロシアがウクライナ侵攻の口実を作る偽旗作戦をすると警告しました。
同月には、大統領報道官も「いつ攻撃が開始されてもおかしくない」とまで言い切っています。
この侵攻間近という情報は、当該国のウクライナはもとよりNATO諸国、日本、中国にも伝えられたといわれています。
驚いた中国は、訪中したプーチンに、侵攻は北京冬季五輪後とパラリンピックの間に済ませてくれと懇願したのかもしれません。
プーチンはショイグのいうとおり、4日間でキエフを落としてみせると豪語したのでしょう。

今年2月時点で、11日にはウクライナ滞在米国人に48時間以内の退避を求め、そして18日にはバイデン自身が、「プーチンは侵攻を決断したと確信している」とまで断言しました。
開戦日まで明確にするというのは異例でしたが、1週間遅れで見事に的中します。
開戦後も、ロシア軍の部隊編成、指揮官名、装備、戦闘能力、補給状況、士気に至るまで詳細な動向を連日発信し続けています。
あらためてアングロサクソンの情報能力の高さに驚嘆します。
昨年、空母クイーンエリザベスが来日し、第2次日英同盟が話題に登りましたが、思えば彼らの有する世界最高水準の情報能力こそが、同盟で得られる最大の贈り物なのかもしれません。

プーチンの誤算は、侵攻のみならず余りに安易に核の脅迫をしてしまったことです。
確かに自由主義陣営はたたらを踏みました。
飛行禁止区域の設定は、当のジョンソンすら拒んだのです。

核を使うぞ、という脅迫はそれほど強烈だったのです。
しかしこの核の脅迫がバラバラだったNATOを団結させてしまったのですから、皮肉なものです。

ロシアの核による脅迫をはねのけるためには、集団安保体制を作り、その中に対抗核戦力を位置づけるというNATOの防衛構想の原点に戻るしかないわけです。
それすらもNATO学級委員会ではなかなか定まらないのだから、英国が個別にハブとなってスポークとなる国々とハブ&スポーク的安保協定を作って「核の傘」を差し伸べていくということです。
当然その主導権は独仏ではなく、英国が握りますが、なにか文句があるんですか、という宣言です。

さっそくロシアが猛反発しているようですが、これにどのように対抗するかが英国の差し伸べた安全保障協定の最初の試金石になります。

 

※今日はほぼ完成した瞬間、PCがフリーズしてパー。なんせうちのPCはWindows7ですぜ(泣き笑い)。
前に故障してPC屋にもちこんだら、若い店員にへぇー、7っすかって言われたというもんです。
買い換えたいんですが、親指キイボードはもう生産停止しているんで、どうにもなりません。
このジサマPCは起きてくれない、年中死んだふり。いきなり怒りだす。
2時間かかった原稿を消されるとショックですわな。(号泣)
気を取り直て全面書き直したら、今度は脱字、誤字のテンコ盛りとなりました。
訂正しまくっています。すいません。

 

 

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ウクライナに平和と独立を

 

2022年5月13日 (金)

ハルキウでロシア軍は国境まで押し戻された

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プーチンが「戦勝記念日」であれほど騒いでいたドネツク地域で、ロシア侵攻軍が国境まで10㎞の地点まで押し返されつつあります。

「ロシアによるウクライナ侵攻で、ウクライナ軍は11日、東部ハリコフ州で攻勢を続けた。
州都ハリコフの東方にあるドネツ川沿いにまで露軍を押し返し、露側の補給路を絶つことを視野に入れつつあるという。ロシア国境から数キロの地点まで露軍を後退させており、ハリコフ方面でのウクライナ側の反攻作戦が成功しつつある。ロイター通信は「戦争の状況が変化した可能性がある」と報じた」
(産経5月12日)
ウクライナ軍 ハリコフ州で攻勢続ける 露軍の補給路遮断も視野に - 産経ニュース (sankei.com)

ロシア軍は北東部ハルキウ(ハリコフ)で数千人規模の地上部隊を展開していますが、ウクライナ軍がロシア軍をハルキウから東に押し戻しています。
ロシア軍はハルキウを制圧し、東部ドンバス地方のウクライナ軍を包囲殲滅する狙いだったとみられていますが、成功するどころか押し返されているようです。
ウクライナ軍はハルキウ州で全面的な反撃を開始しており、いくつかの村落を奪還しボルチャンスクに近郊に迫っているようです。
ただし、ウクライナ軍がボルチャンスクに向かうためには、ドネツ川を渡河する必要があるので渡河できるかが重要になります。
ロシア軍はドネツ川で大損害を蒙ったようです。

ルハーンシク州のセヴェロドネツィクに布陣するウクライナ軍を包囲するためロシア軍は今月8日、ドロニヴカ付近やベロゴロフカ付近でドネツ川の渡河を試みたがウクライナ軍(第80空中機動旅団の砲兵部隊など)に阻止され、50輌の戦車や装甲車輌、渡河機材の大部分を失い大隊全体に深刻な被害(1,000人~1,500人のロシア軍兵士が死亡した可能性があるらしい)を被ったと報じられている。
設置された舟橋が破壊される前にベロゴロフカ付近では「ロシア軍の一部(約80人)が対岸への上陸に成功した」と言われていたが、これもウクライナ軍に殲滅され、生き残ったロシア人は川を泳いで対岸に逃げたらしい」
(航空万能論5月13日)
ロシア軍の渡河作戦は大失敗、生き残ったロシア人も川を泳いで逃げる (grandfleet.info)

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ロシア軍はウクライナ橋を渡ろうとする「大隊全体を失う」|インディペンデント (independent.co.uk)

一方、州都ハルキウ周辺のロシア軍は塹壕を掘って防御陣地を構築して、ウクライナ軍と対峙しています。
また、イジューム方面ではロシア軍が軍を進めて、ウクライナ軍は後退しました。
まさにこちらで押すと、あちらが押し返すというシーソーゲームとなっています。

米国戦争研究所(ISW)はこのようなレボートを出しています。
要約部分だけ抜き出します。

「5月10日のウクライナ戦争戦況
・ウクライナのハルキウ北部での反攻はさらに進み、ロシア国境から10km圏内にまで迫っている可能性がある。
・ベラルーシ当局は、NATOと米国がベラルーシの国境を脅かしていると非難するレトリックをエスカレートさせているが、ベラルーシが戦争に参加する可能性は依然として低いままである。
・イジューム周辺でのロシアの作戦は依然として停滞している。
・ド人共とロシア軍は、マリウポリの廃墟の支配を強化するための取り組みを進めており、軍事装備を生産するための鉄鋼工場の再開を試みていると報じられるなどしている。
・ウクライナ東部のロシア軍はセベロドネツク地区を包囲する試みを続け、ポパスナからドネツク・ルハンスク行政区境まで到達したと報告された。
・ロシア軍とウクライナ軍は、南軸での目立った攻撃は行わなかった」
ロシアの攻撃キャンペーン評価、|5月10日戦争研究所 (understandingwar.org)

要衝のイジュームから州都ハルキウにかけての戦線で激戦が続いていますが、ここでウクライナ軍がロシア軍主力の2万、ないしは3万規模の部隊を包囲できれば戦況は大きくウクライナに傾きます。
ロシア軍もここを決戦場と覚悟したのか、防御陣地を作って守りに入っています。
ただし、ウクライナ軍の手元には、まだ西側の支援武器、特に戦車と装甲車両が充分に届いておらず、決定打に欠ける怨みがあります。

●戦争研究所の5月11日レポート

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ISW
●5月11日のウクライナ戦争戦況
・ロシア軍はセヴェロドネツク-ルビジネ-リシチャンスク地域のウクライナ軍陣地を包囲する努力を続けたが、確認された前進はしなかった。

・ロシア軍は、ポパスナを占領した後、スロビャンスクへの北の高速道路アクセスを確保するために、バフムートへの新たな前進を開始している可能性がある。
・ロシア軍は、西ヘルソン州での地位を固め、ムィコラーイウ州に押し込もうとしている。
・親ロシア派のメディアは、ウクライナ軍がこの重要な町のロシア部隊を遮断するために、イズユムの北40kmで反撃を行っている可能性があると報じたが、ISWは現時点でこれらの報告を確認することはできない。

ところで案の定、ロシア軍内部では指揮統制が崩壊の淵にあるようです。

「(CNN) 米国防総省高官は12日までに、ウクライナへ侵攻したロシア軍兵士や様々な階級の中堅将校内で司令部の進軍命令などを無視する動きを示す情報を入手していることを明らかにした。
中堅将校による命令への順守の拒絶は大隊レベルでも起きているともした。
これらの指揮系統の乱れは親ロシア派武装勢力が拠点を築くウクライナ東部ドンバス地域に配備されたロシア軍内で起きているとしたが、あくまで「仄聞(そくぶん)」段階の情報ともつけ加えた。
将校は命令に応じることを拒否、あるいは将校としての職務として当然視される命令への即座の対応を見せていないとした」
(CNN5月12日)
ウクライナ侵攻のロシア軍内で「命令無視」の動き、米国防総省高官(CNN.co.jp) - Yahoo!ニュース

そりゃあ、わけのわからない「プーチンの戦争」で部下を死なせたくないし、自分も死にたくないですよね。
特に下級指揮官は、陸上戦闘で下手な指揮をとって部下を沢山死なせると、弾が後ろから飛んでくるというのは古今東西よくあることです。
ベトナム戦争など、「大尉の墓場」なんて言われた時期があったそうです。
大尉は前線指揮官なので、狙撃兵らに真っ先に狙われるし、部下からも混戦の時に狙われたようです。
部下に撃たれて死にたくないから、指揮官は命令をサボタージュします。

元々ロシア軍は軍規が厳しいとはいえない軍隊でした。
対独戦におけるロシア兵の略奪・暴行のひどさは有名で、ドイツ人をして蛮族の侵入とまで言わしめたものでした。
また終戦後の満州引き上げにおいても、ロシア兵の日本人民間人への凄惨なまでの暴虐はいまでも語り継がれているほどです。
これはソ連崩壊時には全軍を覆い尽くす軍規の崩壊として現れました。

当時のロシア軍を取材した菊地征男氏はこのように述べています。

「軍事ジャーナリストの菊池征男氏は90年代に2回、ロシア軍の取材に成功した。その際、軍の内部で風紀が荒みきっているのを間近にしたという。
「軍律が緩んでいるというレベルの状況ではありませんでした。軍律が存在しないかのようなデタラメぶりで、あんな酷い軍隊は初めて見ました。
例えば、ウラジオストクの原潜を取材した時のことです。当時はソ連崩壊の直後で、ロシア海軍は水兵に満足な給与を払っていませんでした。住居を提供することもできず、水兵は潜水艦で寝泊まりしていました。そして勤務中でも、真っ昼間からウオツカをあおり、酔っ払っていたのです」
(デイリー新潮4月7日)
ロシア軍が残虐行為を行う単純な理由 専門家が証言する「緩みきったロシア兵」の振る舞い(デイリー新潮) - Yahoo!ニュース

ロシア軍が支配した地域に必ず見られる虐殺・レイプ・略奪、そしてドンチャ騒ぎをした酒宴の跡は、ロシア軍がいかなる軍隊なのか如実に物語っています。

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WSJ

「ロシア兵は子ども向け施設を占拠し、その入り口に塹壕(ざんごう)を掘った。地元の住民はロシア兵が去った後、そこで手を縛られた5人の遺体を見つけた。遺体には後頭部から銃撃された跡があった。別の潜伏地には、無線機器と文書が残されていた。
 ブチャの中心部では、スーパーマーケットだけでなく病院でも略奪を行ったロシア兵がいた。彼らはホストメリに設営した野戦病院で使うために、手術道具や備品を奪っていった」
(ウォールストリートジャーナル4月25日)
露軍「処刑場」と化したブチャの4階建てビル - WSJ

この開戦初期ですら軍規がたるんでいた軍隊が負け戦になって戦線が膠着してしまったらどうなるのか、想像するまでもありません。
ひょっとしたらロシア軍の戦死者が2万を超えた、というウクライナの発表のほうが事実に近いのかもしれません。

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こういう大量に戦死者がでているという噂は、いくら上が情報統制しても速やかに兵隊の間に拡がって拡散し続けます。
ロシアの兵隊の本音は、ウクライナ軍と生死をかけて戦うなんてマッピラ、さっさと略奪して国に帰りたい、でしょう。
負傷者は戦死者の4倍というのが経験則ですから、ざっくり8万。合わせて10万ですか。
19万の侵攻軍の半分強の損害となると、このドンバス攻勢がそろそろ最後になるかもしれません。

こうなったら、いくら将軍連が前線にでかけて将兵の尻を蹴飛ばしてもダメ。
かえって狙撃されて11名もの将官が戦死するという異常事態に陥っています。
参謀総長のゲラシモフまでもが、わざわざとネツクの前線に行って砲撃に合い死にかかったという噂は本当のようです。
「戦勝記念日」という軍最高のイベントにも出ないので、病院でうなっていたのでしょう。
ざまぁです。このゲラシモフとショイグだけは呪われろと思います。
こんな悪魔の戦争をプーチンと企画し実現した罪です。

この戦線が決壊すると、ロシア軍の戦略が根本から大きく崩壊し、東部戦線が全面崩壊する可能性もでてきました。
この東部戦線の崩壊は他の戦線にも波及するはずです。

 

 

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マリウポリのアゾフスタル要塞に立て籠もるアゾフ大隊の負傷兵
                              ウクライナに平和と独立を

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