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2025年7月11日 (金)

ドイツは本気だ

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ドイツ連邦軍は本格的に復活しようとしています。
それもハンパではなく、一気にポーランド一国規模の増強を図ろうとしています。
レオパルト2A8戦車とボクサー歩兵戦闘車を計3500輌も調達しようというのですから、さすがに驚きました。

「ドイツは、最大2500両の装甲戦闘車両と最大1000両の主力戦車の購入を検討している。事情に詳しい関係者が明らかにした。対ロシアの抑止力として、北大西洋条約機構(NATO)の新部隊創設に向けた欧州共同の取り組みの一環になるという。
NATOはドイツに対し、10年以内に最大7個の戦闘旅団をNATOに送るよう求めている。匿名を条件に述べた関係者によれば、今回の購入が承認された場合、装甲車両および戦車はこうした部隊向けに装備される見通しだ。(略)
関係者によると、購入規模は最大250億ユーロ(約4兆2500億円)に上る可能性がある。ただし、達交渉はまだ進行中であり、最終金額はこれより少なくなる可能性もあるという。
注文は今後数カ月以内に確定し、年末までには議会が承認する見通しだと、関係者は述べた。 
ロイター通信が詳しい関係者の話を基に報じたところによれば、ピストリウス国防相は、現在10万人いる訓練を終了した予備役を倍増させることを目指しており、任意による6カ月間の兵役プログラムを導入する法案を8月末までに可決させたい考えだ」
(ブルームバーク2025年7月4日)
ドイツ、250億ユーロ規模の戦車発注を準備-NATO部隊強化へ - Bloomberg

ロシアはウクライナ戦争に勝利した場合、時をおかずに領土を接するエストニア、ラトビア、フィンランド、ポーランドなどの近隣国に侵攻する可能性が高いとNATOは見ています。
それも消耗したロシア軍の再編が終了次第、時をおかずに実施されます。
おそらく4年以内とNATOは考えているようです。
あまり時間を置くと、NATO軍が強化されてしまうためです。

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NHK

そのような状況が起きた場合、NATO軍は東欧の戦線に緊急展開するはずです。
その主力となるのがドイツ連邦軍です。
つい先日、ドイツ連邦軍が先行してリトアニアに投入されています。

「ウクライナ侵攻を続けるロシアへの警戒感がヨーロッパで高まる中、ロシアと国境を接するバルト三国のリトアニアではドイツ軍による駐留が始まりました。
ドイツ軍が単独で外国に部隊を常駐させるのは、第2次世界大戦後初めてです。
NATO=北大西洋条約機構は、ウクライナ侵攻を続けるロシアに備えて加盟国の防衛強化を進めていて、ロシアの飛び地カリーニングラードやその同盟国ベラルーシと接するリトアニアには、ドイツ軍が主力戦車「レオパルト2」などの部隊を配備し、5000人規模が駐留する計画です。
その部隊の発足式が22日に首都ビリニュスで開かれ、ドイツのメルツ首相がおよそ800人の兵士を前に「われわれは責任を自覚している。NATOはドイツを頼ることができる」と述べました」
(NHK2025年5月23日)
ドイツ軍 リトアニアに駐留開始 単独で外国に部隊常駐は第2次世界大戦後初 | NHK | ドイツ

また後方の兵站基地となるドイツや英国、フランスなどに対して、ミサイル攻撃やテロ攻撃が仕掛けられると想定されます。
これに対応して、国内の治安維持も飛躍的に強化されようとしています。
ドイツが手本にしたのはイスラエルです。

「欧州では安全保障のリスクが高まっているため準軍事組織の活用に注目が集まり、ドイツの国民保護災害支援庁も有事を想定した準備や訓練を開始、ドブリント内務相も「イスラエルの経験から民間防衛の在り方、弾道ミサイルやドローンがもたらす脅威への対処方法を学びたい」と表明した」
Innenminister Dobrindt möchte mit Israel die Cyberabwehr stärken | tagesschau.de 

具体的には、英国が進めているホーム・ガード(民兵組織)です。

それにしても、時代が変わったとつくづく思いますね。
日本を半世紀以上支配してきた「専守防衛」思想と酷似したものが、ヨーロッパにもありました。
それが「メルケル軍縮」です。
世界の国防費推移を見てみましょう。
日本がいかに対GDP比て低位かお分かりになるでしょうが、ドイツはNATOの中でも群を抜いて低位です。
次にその推移を見ます。

↑ 軍事費の対GDP比(2020年時点の米ドル換算で軍事費上位6~10位の国) 

諸外国の軍事費・対GDP動向をさぐる(2021年公開版)(不破雷蔵) - 個人 - Yahoo!ニュース

赤線がドイツ、紫色が日本ですが、ものの見事にペタンコのゼロ成長だとお分かりになるでしょう。
ドイツなど、自国の防衛と密接に関わるはずの2014年のクリミア侵攻があっても、ビクリともしなかったのですから相当なものです。

メルケル政権は、ロシアとは共存共栄時代に入った、経済的にも統合化が進んでいる、その象徴がノルドストリームだと考えていたのです。
そしてメルケルは、欧州で戦争は二度と起こらない、という願望と現実を混同した認識に基づいて、安全保障政策を進めてしまいました。
ですからメルケルは、ドイツ軍はNATO即応部隊や国際的なミッションに派遣される部隊だけてよい、国防は必要最低限でよいと考えていました。

かくして、ドイツ軍はメルケルによって徹底的に防衛費を削りまくられた結果、NATO諸国最弱なまでに転落していました。

「ドイツ議会の防衛委員会議長、ハンス・ピーター・バーテルス氏はドイツ海軍について「かつて無いほど小さくなってしまった、海軍は15隻のフリゲート艦を保有しているはずだったのに、7隻を廃止し、新たに4隻しか導入予定がない」と語り、ドイツ海軍の艦艇不足に警告を発した。(略バーテルス氏はさらに、陸軍が運用している53機の攻撃ヘリ「PAH-2(ティーガー)」についても言及し、特定のボルトに欠陥があるため飛行を中断している同機について、徹底的なチェックを行いボルトの交換を行う必要性を指摘した。
さらにドイツ空軍参謀総長が空軍の現状について発言し、空軍機はスペアパーツの不足にため地上に留め置かれているか、メンテナンスのため工場に送られているとし、ドイツ空軍の状況が良くない事を認めた。

そのため昨年、ドイツ空軍875人のパイロット中、NATOが定めた年間最低訓練時間(180時間)をクリアしたのは512人だけで、363人がこの基準をクリア出来ず、この状況に不満を抱いた、少なくない数のパイロットが空軍を去っていった。
今年2月に提出された報告書によれば、昨年、ドイツ空軍のタイフーンは128機のうち39機、トーネードは93機のうち26機しか運用が出来ない状態で、残りの機体は地上から離れることが出来ず、これは主にスペアパーツの供給不足が原因らしい」

(フランクフルターアルゲマイネ 2019年

国際ミッョンに派遣された戦車や歩兵戦闘車9台全部が動かず、ウクライナに供与を約束した対空火器の弾薬がない、といったとんだ恥さらしの存在になってしまったのです。
いまやプーマ装甲歩兵戦闘車を装備する部隊では、まともな訓練さえできず、「一般的な乗用車を使え」という指令さえでています。
歩兵戦闘車に見立ててワーゲンのバンから乗り降りして、その気になっているようです。

それがわずか5、6年のうちに戦闘車両を数千台増産する体制を急ピッチで作ろうというのですから、変われば変わったものです。

2025年7月10日 (木)

NATO、ヨーロッパとアジアは連動している

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ウクライナがNATO加盟を悲願としていた理由は、ひとえにその条約第5条の自動参戦条項にありました。
その加盟国はほぼすべてのヨーロッパ諸国に拡がり、大西洋を隔ててカナダ、米国、そしてトルコまでを含んだ32カ国は、共同防衛の誓約に署名しています。
つまり加盟すれば、一つの加盟国に対する攻撃は、全ての加盟国の反撃を得られることになります。
そしてなによりも、圧倒的に強力な米国を引き込めるのです。

しかし一方、冷戦が終結し、主敵だったソ連は崩壊し、ロシアは著しく弱体化したために、加盟各国は弛緩しました。
エドワード・ルトワックは、ゼレンスキーがNATOに入らないと発言したことについて、こんな皮肉を言っています。

「そもそもNATOに参加するという事は麻薬に手をだすようなもの、いわば実際に運動したり規則正しい食生活をおくるなどして身体の健康を守るのではなく、なにもせずに健康になれると錯覚するようなものだ。
もちろん、そんな錠剤を飲んだところで、健康になれるわけはない」
(エドワード・ルトワック hanada2022年6月号)

メルケル率いるドイツは反戦少年から抜けきらない子どものような国で、開戦冒頭には枕5千個を平気で送りつけてキーウ市長に怒鳴りまくられると、われわれは戦争当事者には軍事物資を送れない決まりなのだとうそぶいていました。
そしてやっと緑の党(!)の突き上げで本格的武器援助が始まって、戦車や自走式対空砲を送る段になったのはいいものの、今度は保管庫の扉を開けてビックリ、大部分が保管状態が劣悪で使い物にならなかったという恥の上塗りを演じています。

ルトワックは、プーチンが開戦に踏み切った理由のひとつに、このドイツのグニャグニャ体質を知り尽くしていたことを上げているほどです。
彼らがシャッキリとしていて、ウクライナを守ることは「自由で開かれたヨーロッパ」を守ることだとわかっていれば、よもや上空を飛ぶ許可を求めた英国の支援物資を積んだ航空機の通過を拒否することなどしなかったでしょう。

これが大きく変化したのは、いうまでもなく、ロシアがウクライナ全土を全力で侵略し始めたからです。
戦争が過去のことではなく、「今そこにある危機」でした。
プーチンは本気でウクライナ全土を支配しようとしており、それが成功すれば次はエストニアかフィンランド、あるいはポーランドといった隣接国の侵略にとりかかることでしょう。

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「トランプ氏の認知機能の低下は加速している」識者 奇妙な言動にインタビューのキャンセルも 米大統領選(飯塚真紀子) - エキスパート - Yahoo!ニュース

そしてもうひとつの原因は、米国の変質でした。
トランプのNATO懐疑は筋金入りで、ほとんど憎悪と呼んでいいほど進行した病でした。
このトランプのNATOへの怒りは、脱退を匂わせるところまで進んでおり、NATOは深刻に「米国なきヨーロッパ防衛」を考えざるを得ませんでした。

NATOが作られてから76年間、アメリカは同盟を機能させる装備、兵站、核兵器、情報のすべてを提供し、大規模な在欧米軍を駐留させてきました。
もはやこれはあたりまえの空気のようなもので、ヨーロッパ諸国は「米国の存在」を微塵も疑おうとはしなかったのです。
ところがトランプはこれを根底から崩したのです。
トランプは米国の防衛にNATOがでなにをしてくれているんだ、巨額の費用を支払ってヨーロッパ防衛をしているのはオレたち米国じゃないかと、例の悪党ヅラで叫びました。
ニューヨークタイムズはこう書いています。

「しかし、トランプは長い間NATO懐疑論者だった。彼はNATOを、アメリカ合州国の財政的浪費として激しく非難し、彼の最初の任期中に、何度か、彼自身、NATOから撤退すると脅したと報じられた。最近、彼はNATO諸国が自国の防衛にもっと多くの費用を払うよう要求し、ロシアが加盟国を侵略した場合、アメリカ合州国がヨーロッパの支援に来るかどうか疑問を呈している
インタビュー:NATOのマーク・ルッテ長官は、トランプ大統領は「すべての賞賛に値する」と考えている - ニューヨーク・タイムズ

つまりNATOは内外から、上品な仲良し倶楽部であり続けることはできず、ほんものの軍事同盟に変身することが求められたのです。
この困難な時期にNATO事務総長となったのは、14年間もオランダの首相を経験してきたマルク・ルッテでした。

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NATO新総長にルッテ氏が就任 ロシアの核脅威は差し迫ってはいないと - BBCニュース

「習主席が台湾への攻撃を決断した場合、彼はまずジュニアパートナーであるロシアのウラジーミル・プーチンに電話し、欧州を忙しくするためにNATO領域への攻撃を要請する可能性に言及した 。
ルッテは、「事態はそのように進展するだろう。そして、彼らを抑止するためには、私たちには2つのすべきことがある。1つ目は、NATOが集団的に非常に強力とならねばならず、ロシアがそのようなことを決してできないようにすることだ。

2つ目は、インド太平洋地域と一緒に作業することだ。これはトランプ大統領が非常に積極的に推進していることだ。なぜなら、私たちは密接な相互関係を持っており、NATOとインド太平洋地域の間で防衛産業やイノベーションに関して一緒に作業しているからだ」と述べた」
(NYT前掲)

ここで注意を喚起したいのは、ルッテが、もし習近平中国国家主席が台湾への攻撃を決断した場合、彼はまずパートナーであるロシアのプーチンに電話し、欧州方面に注意を引きつけためにNATO領域への攻撃を要請する可能性化あるとしていることです。
そしてルッテは、こうも言っています。

「トランプ大統領が米国が強く安全であり続けるためには、ヨーロッパの安全保障と一体化し、インド太平洋を安全に保つために協力することが必要であることを強く認識しているという事実に自信を持っている」
(NYT前掲)

ルッテはトランプがヨーロッパとインド・太平洋の安全に責任を持っていると信頼を寄せ、そのうえに立ってトランプの要求である防衛費5%を加盟国が達成することを求めています。
この流れで、フランスを除くNATO指導部は、日本のNATO加盟を望んでいるようです。
英海軍の空母「プリンスオブウェルズ」がこの夏に来日しますが、その背景にはこのようなNATOの世界認識の大転換があったのです。

 

 

2025年7月 9日 (水)

関税交渉大失敗

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ご存じのようにトランプが関税通告してきました。
それも正式に通告するより先にSNSにリークし、しかも1%だけ税率を上げるという隠し味つきです。
それも猶予があって8月1日がホントの期限だそうです。なんだかなぁ。

「トランプ米大統領は7日、予告していた関税通告の第1弾を発表した。公表された書簡によると、8月1日から適用する関税率は日本と韓国、マレーシア、カザフスタン、チュニジアが25%、南アフリカ共和国が30%、ラオスとミャンマーが40%とされた。
主要輸出国である日韓などは、市場開放や米国での生産拡大を通じて、追加関税の発動回避に向けた3週間の猶予が与えられた形となる。
上乗せ関税の一時停止措置が期限を迎える9日を前に、これら各国はトランプ氏が予告していた関税書簡を米国の貿易相手国・地域の中で最初に受け取った」
(ブルームバーク2025年7月8日)
トランプ大統領が関税通知、韓国25%やラオス40%など-EU予定なし - Bloomberg

もういまさらゲル氏がどーのとか言っても仕方がありません。
こちらの関税交渉がダメダメだったのは何度も書いてきましたが、トランプに妥結する気がいささかもないのですから致し方ありません。
空港で泣きながらアポ取っていた赤沢さんのせいじゃありませんよ。

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驚き、怒り、そして魅了される 被写体としてみたトランプ大統領(上):朝日新聞GLOBE+

そもそもゲル氏の退陣は政界は皆折り込み済みのことで、参院選で大勝なんてありえない以上、中継ぎとしてのゲル氏の役割は既に終わっています。
次の首相が誰になるのかはわかりませんが、赤沢さん流の飛び込み交渉ではラチがあかないことがわかりました。
茂木さんのように、米国にパイプがあって英語で喧嘩できる知米派実務派でなければ務まりません。
また外相も同様で、ニタニタ笑って親中派ではどーにもなりません。
今回の関税交渉の途中で飛び出したフェンタニル事件は、米政府の重大な日本への警告だと理解できないようだから、関税交渉でも負けるのです。

トランプに関しては、平常飛行です。
いつもビッグマウスで世界相手に喧嘩を売って、しかし直前にビビる。
先日イランの核施設爆撃が効いたのは、いつものTACO(Trump Always Chickens Out )じゃなかったからです。
当人はこれで気をよくしているでしょうが、自分が始めた世界関税戦争はいっかな終わりが見えません。
だからダラダラと交渉期限を伸ばしているのです。
今回も各国との関税交渉の期限を7月9日から8月1日に延期したのですから、各国は例によっていつものTACOね、と冷やかに見ています。

だって日本だけが妥結しないというなら話は別ですが、世界で妥結したのは貿易赤字がそもそもない英国くらいで、後の諸国はなにも決まっていないんですよ。
EUと中国なんて絶対に妥結しないでしょうしね。
それでも予定どおり関税を上げたら、債権市場と為替市場でエライ目に合うのはじぶんのほうです。
財務長官がトランプを殴ってでもやらせないでしょう。

 

 

2025年7月 8日 (火)

石破さん、ならばNATO会議を欠席しなさんな

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ゲル氏は、元々は国防族でした。しかもビンビンの理論派。
今のうすぼんやりしたイメージとはだいぶ違いますが、若い頃は言っていることは先鋭で、たぶん自分が自民党で一番ツンツンだと思っていたはずです。
国防族としては集団的自衛権を肯定し、中国への警戒を唱えていました。
ですから壮年期には、安倍氏もひょっとしてこの男は同志ではないかと錯覚したようです。
ちなみに農政にも詳しく、こちらも自由化派でした。
ですから、山下一仁氏の本の愛読者だったとか。

改憲についても9条2項の削除という原理主義を貫いて、そこから現実主義の安倍氏を批判していたくらいです。
ですから総裁選では、中谷氏、小野寺氏といった防衛大臣経験者や、ヒゲの隊長こと佐藤氏など国防族が支持に走ったようです。
この人たちは、皆それぞれ石破政権で要職に就きます。

このように考えると、石破さんにはそれなりにやりたいことはあったのでしょうな。
しかし、この人物は政治家として致命的欠陥がありました。
大きくは歴史観や国家観がうすら甘いリベラルだったということです。
また陰キャラヒッキーで、語り合える友や同志が不在です。
その結果、当然のこととして党内泡沫派閥に甘んじていました。
だから気楽な評論家をして、メディアの中で「なってほしい首相候補1位」でいればよかったのです。
それが激変したのは、岸田氏が後継を「国民的人気ナンバーワン」にして反安倍の石破氏に定めたことです。

かくてゲル氏の実行力が問われることになってしまいました。

ところで今、参院選の真っ最中ですが、政党選択について最低限クリアしておかねばならないハードルのようなものが3ツあります。

①台湾防衛を日本の安全保障を一体のものとして考える。
②ウクライナ支援を日本の安全保障と一体のものとして考える。
③エネルギー問題をリアリズムで考える。

台湾、ウクライナ、そして原発で綿菓子のようなことを言っている政党は国政政党たりえませんから、ご自分の支持政党がなんと主張しているか調べてみて下さい。
自民は腐っても鯛とはよく言ったもんで、3点ともになんとか低いレベルでクリアしています。
ただし、どれもこれも安倍氏の遺産がまだ残っているからで、実態は口先だけのお題目といった場合が多々あります。

ゲル氏がその典型で、最近旗色が悪いのを知ってか.保守層目当てにこんなことを言っています。

「石破茂首相は6日、参院選の応援で入った横浜市での街頭演説で、覇権主義的行動を強める中国に関し「ものすごい勢いで軍拡を進めている。台湾の辺りに航空母艦を配置している」と訴え、危機感を示した。ウクライナに侵攻するロシアを支えているのは中国だとして批判した。
ウクライナ侵攻や中東情勢がアジアの安全保障に連動していると認識しなければいけないと強調。「安全保障に取り組み、日本の独立と平和を守るのが自民党の役割だ」と述べた」
(共同7月7日)
石破首相、中国軍拡に危機感 街頭演説「台湾周辺に空母配置」

たぶん、頭ではこの人わかっているのです。
しかしリベラルの岸田氏の雇われマダムの哀しさで、主導権を党内頑固派親中派に支配されていて、手も足も出ません。
いえ、少しは頑張ってはいることを見てやらにゃ気の毒です。
東南アジア外交、特にフィリピンと準同盟関係を強化したのは評価できます。

フィリピンはほとんど海軍なき国ですから、いままで南太平洋海域で中国に浸食されっぱなしでした。
ですから中古護衛艦である「もがみ」型を順次供与するというのはパチパチです。

「日本とフィリピン両政府が、海上自衛隊の中古護衛艦を輸出する方向で一致していたことが、わかった。中古護衛艦の輸出が実現すれば、初の事例になるとみられる。護衛艦の輸出を通じて比軍との相互運用性の向上を図り、一方的な海洋進出を進める中国への抑止力・対処力を共同で強化していく狙いがある。
複数の日本政府関係者が明らかにした。中谷防衛相とギルベルト・テオドロ比国防相が6月上旬にシンガポールで会談した際に中古護衛艦の輸出について確認した。輸出は海自の「あぶくま型」護衛艦6隻が想定されている。「あぶくま型」は就役から30年以上が経過し、自衛隊員のなり手不足から省人化した新型艦に切り替える必要があるため、順次退役する方向となっていた」
(読売7月6日)
フィリピンに護衛艦を輸出へ、中国への抑止力強化に初の事例…中古の「あぶくま型」全6隻 : 読売新聞

「もがみ」型は本来は輸出禁止にひっかかるようですが(くだらん)、レーダーを「共同開発」したことにしてクリアするとか。
褒められた方法ではありませんが、法解釈で乗り越えるという方法ですね。
ゲル氏が在野だったなら、得意のしたり顔でチクリチクリと説教を垂れたことでしょう。
こういう現実対応は練れてきた、といっていいんでしょうね。(たぶん)

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「何もしないと言ってない」石破首相、誕生日にイラっ…予算委で注意受ける | カナロコ by 神奈川新聞

しかしやはりやっちまった大失敗は、せっかく招待にあずかったNATO首脳会議を欠席したことです。
それも今の世界の政治的関心事のど真ん中であるイランの核開発についての欠席ですから、傷は大きい。

「石破総理大臣はNATO=北大西洋条約機構の首脳会議に出席するため24日から3日間の日程でオランダ・ハーグを訪れる予定でした。
複数の政府関係者によりますと、石破総理大臣はアメリカがイランの核施設を攻撃するなど中東情勢が緊迫していることなどを踏まえ、会議への出席を取りやめオランダ訪問を見送る方向で調整に入りました。
岩屋外務大臣が会議に代理出席することを検討しているということです。
アメリカのトランプ大統領も欠席する可能性があるほか、日本と同様にパートナー国として招待されていた韓国のイ・ジェミョン大統領も欠席するということで、こうした状況も勘案し判断したものとみられます」
(NHK6月23日)
石破首相 NATO首脳会議への出席取りやめる方向で調整 | NHK | NATO

なにが「勘案して」だ。NHKは韓国のイ・ジェミョンが欠席するからなんて馬鹿なことを言っていますが、あんな極左大統領と一緒の判断をしてどーする。
原因は例の「伝統的な友好国イラン」に配慮するあまり、イスラエルの原子力施設攻撃を最大級の表現を使って非難してしまったからです。
しかもこの基調はゲル氏直々の指示だったとか。

石破茂首相は13日夜、首相官邸で記者団に「平和的解決に向けた外交努力が継続している中、軍事的手段が用いられたことは到底許容できない」と指摘。「極めて遺憾で強く非難する」と強調した。
イランによる報復攻撃については「事態をエスカレートさせる、いかなる行動も慎まねばならない。強く非難する」と述べ、関係各国に自制を強く求めた。「G7で日本の立場を明確に述べ、沈静化に向け、関係国で連携して対応する」と語った」
(時事6月13日)
日本政府、イスラエルを非難 中東不安定化を懸念:時事ドットコム

いつもは旗幟を鮮明にせずにモゴモゴ言っているわが国らしくもなく、「強く非難」しちゃったのです。
しかし、国際社会の受け取り方は真逆でした。
IAEAはイランが6回も協議を蹴り、トランプが設定した2カ月間の猶予期間が切れた翌日に核施設での作業を開始し、フォルドゥの核施設の遠心分離機の新型との交換と増設も行ったことを強く非難決議を可決していたのです。
ですからイスラエルのライジング・ライオン作戦にも、日本の論調のように国連憲章の字面だけ読んで国際法違反だという非難はまったくなく、その直後のG7サミットの共同声明でも支持の姿勢を鮮明にしました。

では、ゲル首相は「G7で明確に日本の立場を述べ」たのかというと、単に黙っていた「だけ」です。
会議の間は沈黙して署名し、帰国してドッチが日本の姿勢なんだと共産党に問われると、最初の岩屋外相が出した非難声明のほうですとおずおずと答えています。
国際社会を欺いたわけで、相当に恥ずかしい。

これで済めばまだ傷は浅かったのですが、なんと米国までもがまさかのだめ押し空爆をしてしまったのですから、さぁ困った。
従来からの「イランは日本の伝統的友好国」というスットコドッコイの外交方針と、日米同盟命の国是が真正面からぶつかってしまったのです。
さらには、NATO首脳会合ではイラン空爆の支持を打ち出されるのは必至ですから、もうゲル氏は恐怖に縮み上がってしまったようです。
本来は予定されていたトランプ大魔神と関税でトップ交渉をすべきなのにこちらからキャンセル。
だってやればまず間違いなくこのいちばん触れられたくない空爆問題がテーブルに乗ってしまうからでしょう。
で、いっそ全部欠席。あんた子供か。

とまぁ、こういうわけでNATO首脳会議というまたとない席で、「アジアは第2のウクライナである」、「台湾防衛を西側全体のテーマとしよう」という主張をしてくることができませんでしたとさ。
おまけに、事前の日程調整もしないで送り出してきた赤沢氏の関税交渉はなんの成果もなく大失敗。
トップ交渉もできないまま、昨日25%かけるという通告を受けてしまいました。
無為無策を地で行ったようなものでした。
だいぶくたびれておいでのようですから、参院選で楽になっちゃいなさい。

 

2025年7月 7日 (月)

妙案・バンカーバスター・シェアリング

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先日のイランの核施設空爆が、地下90㍍の遠心分離機にヒットしたか失敗したかで意見が割れています。
トランプは完全に破壊した、と言っています。

「ドナルド・トランプ米大統領は21日夜(日本時間22日午前)、アメリカ軍がイラン国内3カ所の核施設を空爆したと発表した。ホワイトハウスでのテレビ演説では、「イランの主要な核濃縮施設は、完全かつ徹底的に抹消された」と述べた」
(BBC6月22日)

トランプ氏、米軍がイランの核施設3カ所を爆撃し破壊と発表 フォルドなど - BBCニュース

例によってトランプは話を盛っていますね。
後の衛星写真でもそこまでは結論づけられないはずで、結局現地調査するしかないのです。

一方イランは、ぜんぜん壊れていないゾと息巻いています。


「イランの最高指導者アリ・ハメネイ師は26日、イスラエルとの停戦が24日に合意されてから初めて公に演説し、アメリカはイランの核施設への攻撃で「何の目的も果たせなかった」と主張した。
テレビ演説でハメネイ師は、アメリカの攻撃はイランの核開発計画を中断させることにおいて、「何ら重要なことを成し遂げ」なかったと述べた」(BBC6月27日)
アメリカは「何も果たせなかった」、米軍の核施設攻撃についてイラン最高指導者 - BBCニュース

こちらももちろん吹かしで、本当になんの損害もないなら、あれほどあっさりと米国への抵抗を終了するわけがありません。
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AP
米国の情報機関もふたとおり出ています。
「初めに国防総省傘下の情報機関「国防情報局(DIA)」が、被害は限定的だった可能性があるとの初期評価をまとめていた。トランプ米大統領は25日、オランダ・ハーグでの記者会見で、DIAの分析は攻撃直後の「推測」にすぎないと反論し、「核施設は完全に破壊された」と主張している」
(ロイター6月25日)
イラン核計画「中核部分は破壊されず」、米情報機関が分析=関係筋 | ロイター
CIAは、これを否定し、「主要な施設は破壊した」としています。
「米中央情報局(CIA)のジョン・ラトクリフ長官は25日の声明で、米軍が22日未明に行ったイランの核施設に対する攻撃について、「複数の主要な施設が破壊され、再建には数年を要する」との認識を示した。イラン政府報道官も26日、核施設に「深刻な損傷を受けた」と本紙に認めた」
(読売6月25日)
爆撃したイラン核施設、CIA長官「再建に数年」…イラン政府報道官も「深刻な損傷受けた」 : 読売新聞
中をとるわけじゃないでしょうが、IAEAのグロッシ事務局長は、「深刻な損害を受けたものの完全な損害ではない」との見方を示しています。
ま、たぶんこのあたりが正確なところではないかな。

実際のところ、「分からない」というのがもっとも正直な答えで、共にバンカーバスターの破壊しうる深度が60㍍だから90㍍の施設に届いた届かないのという議論をしているだけのことです。

では、下写真の核濃縮施設に繋がるアクセストンネルを破壊されてしまったらどうなんでしょう。
たぶん無傷なはずがなく、このお宝の濃縮施設は地下90㍍のコンクリートの瓦礫の下に埋もれてしまい再利用するのは相当に困難なはずです。
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しかし、核兵器という存在が「政治的な武器」である以上、イランは濃縮施設が破壊されない以上「保有しているぞ」ということを、今後も政治的な武器に使い続けるはずです。
したがって、結論はある意味簡単なのです。
持とうとまたイランが画策したら同じように破壊すればいいだけのことです。
どうやって?
もちろん地上兵力を投入できないし、ただの空爆では地表施設しか破壊できませんから、バンカーバスターを使う以外方法はありません。
しかしそのバンカーバスターは13.6tもあるので、重量的にイスラエルが保有する戦闘機クラスでは持ち上がりません。
世界で唯一これを2発積んで投下できるのは米国のB-2しかない、ここがネックだったわけです。
つまりバンカーバスターと爆撃機はワンセットなわけです。
イスラエルは米国が売ってもいいというなら、カネをかき集めてでも買うでしょうが、米国がB-2のような軍事機密の塊をイスラエルに売ることはありえません。
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これを解決する方法がひとつあることを、飯山陽氏が紹介しています。
核シェアリングの方法を応用するのです。
すでにこれは米国でジョシュ・ゴットハイマー下院議員(ジャージー州選出、DN)とマイク・ローラー下院議員(ニューヨーク州選出、RN)がすでに超党派法案「バンカーバスター法案」として議会に提出してあります。
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ジョシュ・ゴットハイマー下院議員
「「ワシントンD.C.- 本日、2025年7月2日、ジョシュ・ゴットハイマー下院議員(NJ-5)とマイク・ローラー下院議員(NY-17)は、超党派のバンカーバスター法(Bunker Buster Act)を提出し、大統領がイランの地下核インフラを破壊するために、大規模兵器貫通装置(MOP)または「バンカーバスター」爆弾とそれを配備するために必要な航空機を提供することで、イスラエルの防衛を支援する権限を与える法律を提出しました。イスラエルにこの能力を装備することは、イランの核兵器への道筋をなくすことにより、アメリカの国家安全保障を直接強化する」
リリース:ゴットハイマー、ローラーは、イランの継続的な核の脅威に対してイスラエルを装備し、米国の国家安全保障を強化するために超党派のバンカーバスター法を導入
ちなみにジョシュ・ゴットハイマー下院議員はニュージャージー州選出の民主党議員で、ディープシーク排除の先頭にたった人物です。
マイク・ローラー下院議員は、ニューヨーク州選出の共和党ですから面白いですね。
バンカーバスターとB-2を分けてしまって、いざという時に合体させるという手品です。
こんなことが実現していたら、イランにとってこの上もない抑止力として作用するでしょう。
米国にとっては、彼らがもっとも恐れる中東への軍事介入の深入りが防げるわけです。
一聴に値する案にみえますが、いかがでしょうか。

 

2025年7月 6日 (日)

日曜写真館 鉄線花憂きこと去れば咲きにけり

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鉄線花くれまちす月曜日火曜日 阿部完市

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鉄線花数へて今日も始まりぬ 池口美奈子

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蔓はなれ月にうかべり鉄線花 水原秋櫻子

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鉄線花に恋をあらそふ如く寄る 赤松[ケイ]子

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ひとり居の朝やうち向ふ鉄線花 水原秋桜子

 

 

2025年7月 5日 (土)

実は「アポなし飛び込み営業」させられていた赤沢さん

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これはビックリ。赤沢さんは「飛び込み影響」だったことがバレました。
ブルームバークの記事です。

「米国の関税措置を巡る日米交渉は、トランプ大統領が対日姿勢を硬化させたことで暗雲が一段と漂っている。上乗せ関税の一時停止期限となる9日まで残り1週間。赤沢亮正経済再生担当相は協議日程を確定させないまま訪米する「押し掛け外交」を重ねてきたが、目立った成果は得られていない。
赤沢氏は訪米の際、事前に約束を取り付けていない場合が多いと明かす。1日の閣議後会見では、羽田空港を離陸する時点で会談日程が確定していないのがほとんどだとした上で、毎回カウンターパートの閣僚とは会えているため「押し掛け成功率100%」だと強調した」
(ブルームバーク7月1日)
トランプ氏の強硬姿勢に揺れる日米交渉、「アポなし外交」成果見えず - Bloomberg

フォーブスはゲル政権を交渉上手と評していたので、それなりに手を打っているのかと思いきや、中身ナッシング。
フォーブスはこの中身がないことを、石破政権の「予想だにしない抵抗」と持ち上げていますが、買いかぶりもいいところです。
ただ呆然としていただけ。

「現職の石破茂首相は、はるかに従順ではないことが明らかになった。トランプが切望する勝利を、なかなかその手に掴ませようとはしない。トランプの大統領就任から本記事執筆時点で159日が経過したが、注目に値する貿易協定はまだ1つも締結できていない。政権側は90日間で90件締結すると大口を叩いたにもかかわらずだ。(略)
トランプは日本という籠にずいぶんたくさんの卵を入れたようだ。石破政権は交渉を長引かせ、トランプワールド(トランプ政権関係者や側近ら)が予想だにしなかった方法で抵抗している」
(フォーブス7月2日)
トランプ大統領の「交渉術」 アジア諸国には通用せず(Forbes JAPAN) - Yahoo!ニュース

本気で「予想だにしない抵抗」をする気なら、しっかり赤沢氏に決済権限を持たせて、会談日時をあらかじめ設定して米国に送り込んだことでしょう。
しかしなぜかゲル氏は「本気ではなかった」ようで、赤沢氏になにひとつお土産を持たせることなく、しっかりした外交調整をするスタッフもつけないで訪米させたようです。
さすがに日程くらい調整しているもんだと思ってましたが、ナントこれも飛び込み。しかも7回全部がそのようだったようです。

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赤沢亮正「特使」ブルームバーク

ですからきっと赤沢氏は、空港から米財務省の代表電話に、「もしもし私、日本の特使のアカザワといいますが、ベッセントさんいらっしゃいます?」なんて入れていたようです。
まるで昭和時代の飛び込み営業そのままで、新人営業の度胸試しみたいですが、いちおうこれでも一国を代表する「特使」ですぜ。(涙)

今の日本社会においてさえ禁止されている行為で、米国のビジネス社会ではこんなことをしただけで交渉はあらかじめ失敗です。
通常の国家間交渉では、事務方が8割り方まで会談内容を作り込んでおき、時には共同声明の文言すら決まっているものなのです。
米国留学組の赤沢氏ならこんなこと知っていたでしょうから、さぞかし使えない上司の典型のようなゲルを恨んだことでしょうな。

おまけに交渉期間の間に、致命的ともいえる麻薬中継基地が名古屋にあると、米側が問題視し始めたのですから目も当てられません。
それについてかっかりと本国が対応してくれるならともかく、「しっかりやってマス」くらいの役人答弁を外務大臣がしてしまいました。
しっかりやってきたならなんでフェンタニルの材料がごっそりと輸出されているんだよ、と米国からねじ込まれているでしょう。

今回の関税は多岐な分野に渡るために、本来、官邸が主導して外務、経産、防衛などの関係省庁が緊密に連携してチームを作ってやるものなのに、全部赤沢氏任せ。
日程調整すらしてもらえない。ベッセントとの交渉材料となる「お土産」もくれない。
それどころか森山の親父ときたら「死んでも消費税は守ります」と叫ぶ有り様です。
おいおい交渉では、政府は個人消費を刺激してアメ車を買えるようになります、とやらにゃなんのに、これでは景気冷やしますといっているも同然です。
トランプが消費背税は関税だなと言っていたことを忘れちゃったようです。

それを真逆の方向のことを平気で与党のボスが言ってしまう。

防衛だって、NATOが5%と決めた会議をサボっておきながら、「これはわが国が自分で決めることだから」と無味乾燥なことを言ってしまう。
そんなことはあたりまえ、安倍氏がすでに買うことが決まっていたF-35を147機買いますとやったこととエライ違いです。
もう、はちゃめちゃ。交渉ごとは色気なんですよ。呼吸といってもいい。
あちらがなにを欲しているかを察知してお土産を用意する。逆に通したいことは明解に示して、後は相手との呼吸です。
たぶん百年たっても、修羅場をくぐったことがなく、ヒトの背中を撃つことだけのゲル氏には分からないてしょうね。

 

2025年7月 4日 (金)

その後のイラン国内状況

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その後のイラン国内の様子が伝わってきています。
まずは、対外的にはハメネイは、「勝利宣言」を発して爆撃で殺害された軍と革命防衛隊の幹部の追悼式を行いました。

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Mourners on Saturday in Tehran during a funeral procession for some of those killed in the recent war with Israel.Credit...Arash Khamooshi for The New York Times

「土曜日の朝、テヘランの革命広場に数千人が集まり、「ライオンのように」作戦中にイスラエルの攻撃で殺害された60人の上級軍司令官と核科学者を称える集団葬儀が行われた。
会葬者の中には、イランのマスード・ペゼシキアン大統領、アッバス・アラグチ外相、行方不明と思われていたコッズ部隊司令官エスマイル・カーニ、司法長官のゴラム・ホセイン・モフセニ・エジェイ、そしてイスラエルの攻撃で負傷して以来初めて出席したアヤトラ・ハメネイの上級顧問アリ・シャムハニがいた。イランのミサイルはステージ上で目立つように展示されていた。
式典では、デモ参加者たちは、国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長を起訴するよう求めた。 グロッシ氏は、米国のストライキ後、フォルドウの遠心分離機はもはや稼働していないと述べた。 多くの人がハメネイの写真を振り、反イスラエルと反アメリカのスローガンを唱えた」
粛清:アヤトラ政権は、イスラエルとの戦争後、数百人を逮捕し、反対意見を鎮圧

ここで注目なのは、この官製デモで反IAEAのスローガンが叫ばれていることです。
この意味は、ひとつにIAEAのグロッシが、核施設は稼働していないと言っことに対してハメネイがこう言って反発しているからです。

「イランの最高指導者ハメネイ師は26日、テレビ演説でイスラエルに勝利したと宣言した。「米国はイランの核施設を攻撃したが大きな成果はなかった」とも語った。イランとイスラエルの停戦後、ハメネイ師が公に発言するのは初めて」
(日経6月26日)
イラン最高指導者ハメネイ師が「勝利」宣言 停戦後初の演説 - 日本経済新聞

そしてもうひとつは、今後もIAEAが求める現地査察に対して拒否するつもりのようです。

イランは、このイスラエルと米国の空爆作戦は、イラン国内の内通者によるものと考えて、大規模な粛清をおこなっています。

「イスラエルとの最近の軍事衝突をめぐり、イラン当局が、イスラエルの諜報機関との関わりが疑われる人物を相次いで逮捕・処刑している。
イラン当局は、イランの保安機関にイスラエルの諜報員がかつてないほど浸透していたと主張している。
それらの人物らからイスラエルに提供された情報が、この紛争におけるイラン軍高官らの殺害に寄与したと、イラン当局は考えている。イスラエルの13日の攻撃では、イラン革命防衛隊(IRGC)のホセイン・サラミ総司令官や、複数の科学者らが殺害された。イランはこの攻撃を、イスラエルの諜報機関モサドによるイラン国内での工作活動の結果だとみている」
(BBC6月27日)
イランで逮捕・処刑相次ぐ イスラエルのためスパイ活動と - BBCニュース

これらの逮捕者は、イランが見せしめとしてやる公開処刑される可能性があります。

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イラン政府、21人を公開絞首刑 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

イランには、今もまだ約9000人のユダヤ人が住んでいる。イスラエル以外の中東諸国では最大のユダヤ人コミュニティが存在しますが、やはり集中的に弾圧を受けているようです。

「イラン当局は、イスラエルとのつながりを問うために少なくとも35人のユダヤ人を召喚したと、人権団体が土曜日に報じたところによると、数人のユダヤ人コミュニティの指導者がイスラエルとのつながりの疑いで逮捕されたという未確認の報告がある中で、イスラエルとのつながりについての彼らのつながりについて尋問された。
イラン当局は、イスラエルが6月13日にイスラム共和国の核開発計画に対して開始した戦争の後、イスラエルと関係があると疑う人物を取り締まってきた。それ以来、700人以上が逮捕されたと、イランのファールス通信が木曜日に報じた」
(タイムズオブイスラエル2025年6月29日 )
数十人のイラン系ユダヤ人がイスラエルとの関係の疑いで尋問のために召喚されたと述べる |イスラエルの時代

この動きが、「ユダヤ人狩り」に及ばないことを祈ります。
その場合、イスラエルはこれを座視することはないでしょう。

このようなやり方では、イランの真の再生がないのは言うまでもありません。
いまの極端なイマーム支配を止め、国民から選ばれた内閣が統治し、革命防衛隊を縮小改組して国軍に一本化し、国民を縛りつけている宗教的抑圧を止め、イスラエルとも国交を回復する、とまぁやり始めたらきりがありませんが、民主化しか生き残る道はないのです。

なお、この国内状況から、トランプはイランに対しての制裁を緩和する措置を中止しました。

 

 

2025年7月 3日 (木)

日米交渉が破綻したわけ

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日米関税交渉が挫折してしまいました。
トランプ御大のストレートなお怒りの声。

「トランプ米大統領は1日、適用を一時停止している上乗せ関税について、今月9日の猶予期限を延長する考えはないと明言した。また、日本との通商合意がまとまる可能性は低いとの認識を示した。
トランプ氏は大統領専用機エアフォースワンの機内で、猶予期限を延長する意向かとの記者団の質問に、「いや、猶予は考えていない」と答え、「多くの国に書簡を送ることになるだろう」と述べた。
日本については、「極めて大きな貿易赤字を抱えているため、30%や35%、あるいはわれわれが決める数字」の関税を課すことになるだろうと言明。 「合意に至るかどうか分からない。日本と合意できると思えない。彼らは非常に手ごわい」と述べた。
トランプ氏は1日、米国産コメの輸入を受け入れていないとして日本への批判を強めた。自動車貿易についても不公平だと指摘していた。
大統領は4月に日本からの輸入品への24%の上乗せ関税を発表したが、90日間の交渉期間中は一律10%の基本税率にとどめている」
(ブルームバーク7月2日)
トランプ氏、日本との合意困難と言明-「30%や35%」の高関税賦課も - Bloomberg

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ブルームバーク

他にも、自分のSNSに、「日本はわれわれのコメを受け取ろうとしない。深刻なコメ不足となっているのにだ」とか、「米国の車を買わない」などと言っていました。
いや、コメは買ってるって、「ミニマムアクセス」という制度があって、無関税で米国米を直近で年間34万トン余りの輸入しているがね、などと言ってももはや無駄。
ここで、いやコメは自由化すると言えば話は別ですが、JAは許してくれないでしょうからできない。
やっぱりコメをターゲットにしたのですよ。

これは赤沢さんのせいじゃありませんよ。
赤沢さんを子供のお使いにしてしまったゲルの責任です。
そりゃそうでしょう。ゲルは赤沢さんに決裁権を持たないでワシントンに送り出したのです。
それも7回も送っても、なんの決断もしないから、もうトランプはおろか窓口だったベッセントですら会ってくれません。
たぶん米国は、赤沢さんの正体が、「特使」などというもっともらしいもんじゃなくて、ただの小僧のお使いだとバレてしまって、プッツンしたのですよ。
トランプは、このグダグダ感に腹をたてたのでしょうね。

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参院選の争点は「政治とカネ」ではない リベラル派は決して自民に投票せず、保守票減らす 阿比留瑠比の極言御免 - 産経ニュース

フェンタニルにしてもそうですが、日本は米国に行く貨物で麻薬検査をしていなかったか、していても手ぬるかったのです。
米国はそれを知って激怒したのでしょう。
なんだカナダと一緒じゃないか、とね。
そこで日経に情報を漏らして警告を与えたのですが、とうぜんこのフェンタニルは、今同時並行している日米協議の対象になって当然です。
それもすさまじくネガティブな方向で。

にもかかわらず、岩屋外相の対応はこうです。

「岩屋毅外相は27日の記者会見で、米国へ合成麻薬「フェンタニル」を不正輸出する中国の組織が日本に拠点を持っている疑いがあるとの日本経済新聞の報道を受けて発言した。「日米関係、日米協議に与える影響は現段階であるとは考えていない」と語った」
(日経6月27日)
フェンタニル輸出の日本拠点「日米協議に影響なし」 岩屋外相 - 日本経済新聞

いや、ホントにそう思っているなら外相失格です。
カナダ、メキシコはフェンタニルで敵国扱いを受けており、2カ月の猶予つきで高関税をかけられたのですよ。
駐日大使はそれを分かっているからXに「日本と協力することで(フェンタニル原料である)前駆体物質の日本経由での積み替えや流通を防ぎ、両国の地域社会と家族を守ることができる」と投稿したのです。
岩屋氏には、というか今の政権は、この関税戦争が形を変えた麻薬撲滅戦争だと認識していないのです。

駐日大使が日経記事と同時にこう投稿した理由は、ほんとうはきちんと監視して摘発しろ、と怒鳴りたかったのでしょう。

たぶん日本は入って来る麻薬については検査をしていても、出て行く貨物には手ぬるい検査しかしていなかったのでしょう。
だからさっぱり本気度が見えない、「許可を得ない輸出入を絶対に許さないとの観点で適切に対応している」というおざなりな官僚的紋切り対応でお終いにしてしまったのです。
そして口にこそしませんでしたが、このフェンタニル問題がトランプの冒頭の交渉打ち切り発言につながったのかもしれません。

もうこうなりゃ、ゲルが出ていって包括合意した上で継続協議に持ち込むしかありません。
それすらもゲルの政治的寿命が参院選までのあとわずかしかないと米国は見てそうですから、たぶん会ってはくれないでしょうね。
辞めることが見えているヤツと協議しても意味ありませんから。

 

2025年7月 2日 (水)

イランなき中東世界

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米軍のイラン核施設攻撃が当たった、いや当たらなかったと諸説入り乱れていますが、ま、いいんです。
なんなら、またやりますから。
当面、イランは負けた、そして今後は中東の攪乱要因になりえない、ということがイスラエルと中東諸国の間の共通認識となればよいのです。
すべてはそれを見越して「戦後秩序」について協議をしています。
7月7日にトランプがイスラエルに飛んで、ネタニヤフとそれについて最後の詰をするでしょう。
内容的のリークがありました。

「イスラエルとイランの停戦合意を受けて、ドナルド・トランプ米大統領はイスラエルとパレスチナの戦争を終わらせる具体的な計画を持っているようだと、イスラエルの新聞が本日報じた。「イスラエル・ハヨム」ガゼタ・エクスプレス紙が報じたところによると、同紙は月曜日と火曜日にトランプ大統領、ネタニヤフ首相、ドレマー氏、マルコ・ルビオ氏の間で行われた会談に関する情報に基づいているという。
①ガザでの戦争は2週間以内に終結する。終結条件には、テロ組織ハマスに代わって、アラブ4カ国(エジプトとアラブ首長国連邦を含む)がガザ地区を統治することが含まれる。
②世界中のいくつかの国は、ガザからの移住を希望する多くの住民を受け入れるだろう。
③アブラハム協定が拡大され、シリア、サウジアラビア、アラブ諸国、イスラム諸国がイスラエルを承認し、正式な関係を確立する。
④ イスラエルは、パレスチナ自治政府の改革を条件に、「二国家」概念に従ってパレスチナとの紛争を将来的に解決する用意があることを表明する。
⑤米国はユダヤとサマリアにおけるイスラエルの主権の一部実施を認めるだろう」
(ガゼタエクスプレス 6月6日)
イスラエルの新聞が、トランプ・ネタニヤフ首相によるガザ戦争を2週間以内に停止する「計画」について報じた - 要点は以下の通り - ガゼータ・エクスプレス

要点は、ガザからのハマスの排除と人質解放。そしてUAE、エジプトなどのアラブ諸国によるガザの共同統治、サウジとシリアはイスラエルとの関係の正常化、そしてこのイスラエルとの関係正常化には大部分のアラブ諸国が追随するというアブラハム合意の実現、 です。
イスラエルは、これでガザを自らの占領という悪手をすることなくハマス追放を達成でき、ヨルダン川西岸の入植も国際的承認を得られることになります。

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結局は一人負け…「茶番劇」で終わった報復攻撃、再び毒入り“聖杯”をすすったイラン、トランプを引き入れたネタニヤフ  Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン)

つい数カ月前までは夢想でしたが、ここまでイランという「蛇の頭」が潰されてしまった以上、今なら可能です。
ハマスはわずかな残党が残っているだけで、ボスのイランが「降伏」してしまった瞬間に命脈は断たれました。
このままイスラエルの残党狩りにあえばすり潰されてしまうことでしょう。
ですから、今が人質完全解放するラストチャンスですから、残党の命乞いと引き換えに応じるでしょう。
ヨルダン川西岸地区には、パレスチナ自治政府が細々と生き長らえていますが、今の状況でナニかできる条件はありません。
せめて名前だけでも残しておいてくれと嘆願する、程度でしょう。

これでやっと平和が来るのか・・・。
テルアビブの証券市場はさっそく年来の高値をつけました。

「日曜日、アメリカがイランの核施設を攻撃した翌日、市場が好意的に反応したため、テルアビブ証券取引所(TASE)は史上最高値まで急騰した。テルアビブ125指数は1.3%上昇し、優良株のTA-35指数は取引序盤に1.2%上昇しました。
イスラエルの軍事的勢いと、テヘランでの政治的変化の可能性をめぐる憶測の高まりを背景に、投資家の信頼感は高まっている。この攻撃を受けて、TASEは2020年5月以来の最高の週を終え、TASEの指数に含まれる55の株価指数のうち38が史上最高値を記録しました」
イスラエル経済は、テルアビブの株が過去最高値に急上昇するとして戦争の恐怖に逆らう - Jewish News 

とまれ、平和が来るのはけっこうなことです。

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