トランプ式錬金術
トランプが、ガザの惨状に眼を閉ざして自分の企業の営業に奔走し、あまつさえカタールから巨額のお土産まで手渡されたことに国内で批判が強まっています。
汚職を監視する米民間団体のCREWは、「大統領の名を冠した企業が外国政府と直接取引することになり、深刻な利益相反をもたらす可能性がある」と指摘しました。当然ですな。
中東で提携する不動産開発企業の親会社はサウジ政府で、中東によくある王族企業ですし、カタールの事業も似たような政府系企業です。
これらのプリンス企業がトランプとその一族を下にも置かないおもてなしをするのは、米国からの相応の「見返り」を期待しているからだというのは小学生でもわかります。
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こうした批判に対し、キャロライン・レビット米大統領報道官は、「大統領はぜいたくな生活と不動産帝国を経営する人生を捨てて公務に就いた。実際には金銭的な損失を被った」と反論していますが、思わず苦笑してしまいます。
この人はまだトランプ幻想の信者なんですね。
今のトランプ政権はこんなゴマスリばかりで、本当に必要なはずのプロであるジョン・ボルトンやポンペオたちのような冷徹に国際情勢を透視できる人が皆無です。
彼ら1期の重要人物たちが残っていれば、プーチンとネタニヤフとの個人的関係に浸って、さんざん甘やかしたあげくウクライナとガザを解決不能の泥沼にしてしまうことはなかったことでしょう。
そもそもトランプは米国民にイメージさせているような「成功したビジネスマン」ではありません。
むしろトランプは倒産王です。
これらはカジノホテルです。大統領がカジノ王だというのもいかがなものかと思いますが、多くは倒産して破産申告しています。
1991年 トランプ・タージ・マハール(ニュージャージー州アトランティックシティ)
1992年 トランプ・プラザ・ホテル&カジノ(同)、トランプ・キャッスル・ホテル&カジノ(同)、プラザ・ホテル(ニューヨーク)
2004年 トランプ・ホテルズ&カジノ・リゾーツ
2009年 トランプ・エンターテインメンツ・リゾーツ
トランプはこれらの倒産について『ニューズウィーク』誌に「(債務減らしの道具として)破産法をうまく使っている」と発言しているそうです。
なかなか言える台詞ではありませんが、法律の抜け穴を使う、これがレビットが言うトランプが「ぜいたくな生活と不動産帝国を経営する人生」を得た秘密です。
「先に行われた第1回テレビ討論会で民主党候補のクリントン氏は、トランプ氏が税金を払っていないと攻撃した。これに対してトランプ氏は「自分が賢いからだ」と反論した。トランプ氏が所得税の支払いを免れたのだとしたら、損失による将来の課税所得の相殺を認めた「繰り越し損(NOL)」規定の活用が一つの道だ。米国の税法は有限責任会社、パートナーシップ、いわゆる「S法人」に対して不動産の減価償却や営業損失について個人としての所得申告を認めている」
(ロイター2016年10月4日)
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たとえば最初に出てくる1991年のアトランティックシティーのカジノ「タージマハル」は破産したものの、連邦破産法を巧妙に使って債務者である銀行に手を引かせて、出資者に債務を押しつけて納税負担を極小化させました。
「だがニューヨーク・タイムズがトランプのカジノ運営会社に関する規制当局の審査記録や裁判記録、証券取引委員会(SEC)への報告書を精査した結果、彼のカジノ事業は失敗の連続だったと言っても差し支えないことが判明した。アトランティックシティーのギャンブル産業は、長期的なビジネス環境の変化から低迷に陥った。自分のカジノ事業も同じだというのがトランプの言い分だが、実際には同市が不況に陥る前からトランプの事業はうまく行っていなかった」
(ニューヨークタイムス2016年6月17日)
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それでも4回も破産申告して、とうとう91年には自己破産寸前にまで追い込まれていました。
ここでやったのが自分の財産と事業損失をわけて処理する方法です。
元々トランプは事業には自分自身の懐からはほとんど出資せず、個人的な債務をカジノに回したり、給与やボーナスその他の名目で巨額の金を受け取って「ぜいたくな生活と不動産帝国」を満喫していました。
そしてトランプの経営失敗のつけは投資家などの人々に回していました。
「トランプ氏は事業経営で過去に4回破産申請している。最初の申請は1991年で、アトランティックシティーのカジノ「タージマハル」が破綻し、個人的に保証していた8億3200万ドルを負債として抱え込んだ。タージマハルは連邦破産法11条の適用を申請し、トランプ氏も自己破産の申請に追い込まれかねなかった。トランプ氏は債権者に債務の再編を許されたが、ヨットの「トランプ・プリンセス」を売却せえざるを得なかった。
以来トランプ氏は、富裕層が納税負担を最小化している手段を用い、事業の損失と自分自身を遮断する取り組みを強めた。選挙活動費に関する公開情報によると、トランプ氏が関わっている有限責任会社、法人、パートナーシップは564社に上る」
(ロイター前掲)
この手口を繰り返すことでトランプは、倒産をくりかえしながら自分の財産だけ増えていくという錬金術を編み出しました。
なんか自分で小政党を作っては潰し、そのつど政党助成金をポッポに入れてきた小沢某を想起させます。
これがトランプが自慢する「ディール」戸やらの中身で、これを繰り返して自分だけに利益がころがりこむように話を仕立て上げていったわけでした。
1期めはうるさ方が大勢いたためにできませんでしたが、2期めは茶坊主ばかりなのでやりたい放題です。
今回の中東歴訪も同じことです。
トランプはまず個人的人脈を構築します。
トランプに気に入られれば何もかもうまくいく、濡れ手に泡のチャンスだと思わせるのは自分のカジノホテル経営と一緒です。
だから門前市をなす勢いで中東の王族はトランプに貢ぎ物を献上したのです。
トランプ・オーガニゼーションをやらせている次男のエリックは、カタールで同国初の高級ゴルフリゾートを建設する計画を発表させ、UAEのドバイでは、地上350メートル、80階建て、2000万ドル(28億6000万円)の悪趣味な「トランプタワー」建設を大々的に発表させました。
ドバイのトランプタワー建設を853億円で発注、ナキール | 日経クロステック(xTECH)
またこれ以外にも、サウジを含む3か国で計6つの開発計画を進めています。
その見返りにトランプはカタールから4億ドル相当の金ぴかの「空とぶ王宮」を受領しました。
「民主党のチャック・シューマー上院院内総務はSNSで「カタール製エアフォースワンに乗ることが『アメリカファースト』なのか」と述べ、「単なる賄賂を超え、プレミアム級の外国の影響力行使だ」と批判した。民主党のアダム・シフ上院議員(カリフォルニア州)もSNSを通じて「明らかな外国収益禁止条項違反」であり、「露骨な腐敗だ」と一蹴した。
これに対し、ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は「外国からの贈り物は常に関連法を完全に遵守して受け入れられる」と反論した」
「断る方が馬鹿だろ」カタール製ジャンボ機贈与にトランプ開き直り…民主党は「露骨な賄賂」、「国辱」と猛反発!
このほかにも暗号資産疑惑も取り沙汰されています。
さすがにいままでトランプを支持してきたMAGA運動のメンツからも批判が出始めたようですが、遅いよ。
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