ジョセフ・ナイの北朝鮮収拾案は日本の味方か?

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ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授が、北朝鮮について興味深い発言をしています。

ナイは国際関係論や安全保障政策に関心を持つ者で、知らナイのはもぐりだと言われているほど高名な人物です。
ジョセフ・ナイ - Wikipedia 

民主党政権でカーターとクリントン政権時に2回ほど国務副次官を歴任し、1995年月には「ナイ・イニシアティヴ」(東アジア戦略構想)を提起して、日本の戦略的位置付けを決定しました。 

いわゆる「ジャパン・ハンドラーズ」のひとりです。

これは東アジアについて無知に等しかったクリントンに大きな影響を与え、1997年の日米ガイドラインに繋がっていきます。 

Photohttp://diamond.jp/articles/-/129316 

現在の日米関係は、このナイと彼と2回の「アーミテージ・リポ.ート」を作成したリチャード・アーミテージによって鋳型を作られたと言っても過言ではないでしょう。
リチャード・アーミテージ - Wikipedia 

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日本の大学における国際関係論の御大たちは、多かれ少なかれナイの影響を受けています。 

ナイはその著書『アメリカの世紀は終わらない』に現れているように、米国のパワーを議論の大前提にして論じるという特徴があります。 

斯界の碩学に対してまことに失礼ながら、私から見ればナイはひと時代前のイデオローグに見えます。 

それは揺らぎつつある米国の覇権(パックス・アメリカーナ)が未来永劫続くという楽観的見通しが、ナイには感じられるからです。

では今回、12月6日付のProject Syndicateに掲載された、ナイの北朝鮮収拾案を見てみましょう。
WEDGE Infinity1月17日http://wedge.ismedia.jp/articles/-/11619
出典:Joseph S. Nye ‘Understanding the North Korea Threat’(Project Syndicate, December 6, 2017)
https://www.project-syndicate.org/commentary/understanding-north-korea-threat-by-joseph-s--nye-2017-12
 

結論から先に言えば、事実上の北朝鮮核保有容認論です。 

ナイは北朝鮮をこのように評価しています。

「金正恩は正気であり向こう見ずではない。彼は米国と核戦争になれば、自分の支配は終わりになることをよく心得ている。次に、北朝鮮の核兵器の脅威は、米国にとって急に高まったわけではない」(WEDGE前掲)

その理由をこう述べています。

「以前から北朝鮮は、核爆弾を例えば貨物船で米国に届けることができたのである。第三に、北朝鮮は通常兵器だけでソウルを破壊できる。1994年、米国は北朝鮮の寧辺核燃料再処理施設を破壊しようとして、このことを認識したのである」」(WEDGE前掲)

う~ん、です。貨物船で米国に核によるテロ攻撃をするのと、火星15で弾道ミサイル攻撃を仕掛けるのを一緒にするのは次元の違うことを混同しています。 

テロという非対称の攻撃の枠内から、いまやICBMへと発展したことによる脅威の「進化」が問題なのです。 

つまり、北は米国と主観的には四つに組んだ対称的な関係、すなわち相互確証破壊関係を作ろうとしているのであって、北をISまがいのテロリストの範疇に入れてはいけないと思います。 

また、韓国についての分析が甘すぎます。 

「通常兵器だけでソウルを破壊できる」というロジックは、韓国自身がよく使う言い方で、これが故に米国はナイも触れている1994年の寧辺核燃料再処理施設爆撃を挫折させた原因でした。 

つまり、ソウルを人質にされたために、北の核施設攻撃は即米韓同盟の崩壊に繋がる危険が高いという考え方です。 

これは三浦瑠麗氏も同様に、「米韓同盟が瓦解する」ことを恐れて米国が攻撃できないとよく述べています。 

これについてナイも所属した戦略国際研究所(CSIS)のエドワード・ルトワックは、こうバッサリと切り捨てています。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/01/post-e3ab.html

「米軍当局は、そのソウルが「火の海」になりかねないと言う。だがソウルの無防備さはアメリカが攻撃しない理由にはならない。ソウルが無防備なのは韓国の自業自得である面が大きいからだ。韓国政府は過去40年にわたり、これらの防衛努力を一切行ってこなかった」(ニューズウィーク2018年1月9日)

ルトワックは「ソウル火の海」論は虚妄だと見ています。 

軍事的対抗手段もあるし、そもそも過大な脅威の煽りではないか、米国に到達するICBMを指を加えて眺めていいのかと、ルトワックは叫びます。 

O_iケリー首席補佐官(左)、マクマスター大統領補佐官(中央)、マティス国防長官の3人 Illustration by Michael Hoeweler2017年9月5日ニューズウィークhttps://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/09/post-8378.php

ナイはルトワックにこう答えるでしょう。

「マクマスター国家安全保障問題担当大統領補佐官が言及している限定的な予防攻撃である。しかしこれは、エスカレートする危険性を持っている」((WEDGE前掲)

では、先制攻撃ではなく、従来の制裁強化の見通しはどうでしょうか。これについてもナイは暗い見通しを語っています。

「制裁は、北朝鮮の核開発を止められないでいる。中国は国境での混乱や米軍進攻を嫌って、食糧と燃料の完全禁輸をしていない」」(WEDGE前掲)

このナイの見通しは、国連安保理北朝鮮制裁委員会の専門家として活躍した、古川勝久氏の『北朝鮮核の資金源』にも詳述されています。 

北はいかにも「パルチザン国家」らしく、非合法ネットワークを通じて制裁をすりぬけることでしょう。 

実は中国は、米国に対して現実的解決手段として、freeze for a freeze方式(二重凍結)を提案しています。 

この二重凍結方式は、米国が米韓協同軍事演習をフリーズする代わりに、北も核開発をフリーズするというものです。 

習は訪中したトランプにこの方式を提案したようですが、不調に終わったようです。

「トランプ米大統領が、中国の習近平国家主席と北朝鮮核問題に対する解決策として「二重凍結(freeze for freeze)」は受け入れられないということで合意したことを明らかにした」(東亜日報2017年11月17日)
http://japanese.donga.com/Home/3/all/27/1129977/1

ナイの提案はこうです。

「冷戦時のGRIT、つまりgradual reduction of international tension(漸次ガス抜き)である。米国は中国に対して、北朝鮮に軍を本格的に進めることはしないと約する一方、中国は米軍の活動を容認し、一方で経済・政治的圧力を北朝鮮にかけて直近の脅威を凍結させるのである。
そのうえで、北朝鮮が韓国に対しておとなしくしていれば、米国は演習規模を縮小していく。北朝鮮が韓国との緊張緩和を受け入れれば、平和条約交渉を始めてもいい。
その時米国と中国は北朝鮮を実質的な核保有国として認めると同時に、将来は朝鮮半島を非核化することを共通の長期目標として確認する。
北朝鮮が合意を破れば、中国が食糧・燃料面での制裁を行う」(WEDGE前掲)

米国は先制攻撃はしないと北に約束して緊張を緩め、一方中国は米軍の軍事的存在を容認して経済的・政治的圧力をかけるということのようです。

そしてこのような「漸次的ガス抜き」をしたにもかかわらず、北が再度暴発することがあれば、中国が食料・燃料で締めつけるということです。

一見よくできたプランで、日本の識者にも同調する者が多く出そうな気がします。

しかしお分かりでしょうか。ナイのプランの主語はすべて「中国が」です。

私がナイは知日派であっても日本の友人ではないと感じるのは、こういうことを言うからです。 

ナイの案が実行に移された場合、東アジアの政治的イニシャチブは、中国が握ることになります。

米国は北を抑えてくれた代償に、中国に対してさまざまな妥協を支払うことになります。

たとえば、もっとも米国の腹が痛まない妥協は、尖閣や南シナ海において、中国の覇権を「容認」することです。

もちろん米国は、この中国の覇権の「容認」について文書化はしませんし、口頭での言質を与えることもないでしょう。

しかし「航行の自由作戦」は店ざらしになり、尖閣有事についてかつてオバマが与えたような安保条約第5条の範疇であるような言質は、二度と口にしなくなることでしょう。

そしてこの「ガス抜き」が成功したと見極めがつくと、米軍はグアムのラインにまで段階的に兵力をセットバック(後退)させていきます。

また、この「ガス抜き」の成功によって、米国との平和条約交渉が開始されるでしょう。

平和条約交渉中は、一切の制裁やましてや軍事攻撃は封印されますから、これにより北はかつてない「自由」を味わうはずです。

一方、韓国のムン政権はこの平和条約締結をもって、「南北の新たな政治体制」を提案するでしょう。

ムンが言わなくとも、北が言います。要は、「高麗連邦」への現実的始動です。

この「高麗連邦」は、核兵器を持ちロシア以上の経済規模を持つ反日バイアスの強烈な国家となるでしょう。

この「高麗連邦」は核保国な以上、もはや米韓同盟は不要です。

したがって、早いか遅いかの差があっても、米韓同盟は解消される運命にあることになります。

このようにナイの案によって、日本が救われることはまったくありません。

むしろ中国の覇権容認と、核を持った統一朝鮮、そして米国の後退という三重の苦難が待ち構えているだけです。

このWEDGEの記事の中で、岡崎研究所が指摘する未来図は、大いにありそうですので、警戒せねばなりません。

「いずれにしてもトランプ政権は、今のシリアで見られるように、自分は身を引いた上で紛争解決を周辺国に丸投げし、折を見て彼らの交渉結果に介入して、周辺国との二国間問題を自分に有利に解決するための交渉の具にしようとする傾向があります。
その際、同盟国は振り回されるかもしれません。日本は、この北朝鮮の核ミサイル問題でも、梯子を外されることのないよう、気をつけていく必要があります」
(WEDGE前掲)

 正直、私はこの岡崎研の見立てがもっとも現実性があると思っております。

  

 

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ムンジェイン氏のセ・ラヴィ感

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平昌五輪に出る出ない、かと思えば合同選手団の入場行進だそうで、まぁ勝手にやって下さい。

と、突き放すところですが、アイスホッケーの合同チームまで踏み込むとそういうわけにはいきません。

「アイスホッケー女子の合同チーム編成は、韓国代表チームの監督や選手たちとの十分な相談なしに進められている。韓国選手の出場機会に影響が出るため、チーム関係者からは反発が出ている。また、今月9~10日に実施された韓国SBSテレビの世論調査でも「無理して合同チームを作る必要はない」との回答が72.2%と多数を占めた」(毎日1月17日)

韓国国民の7割が反対なのはあたりまえです。

合同入場行進や北が元々持っていたアイスダンス枠などまでなら、これも広い心でよしとしましょう。

しかし、アイスホッケー女子の枠は韓国という主権国家に与えられたものにもかかわらず、隣の別の主権国家と「合同チーム」にできると思うほうが異常です。しかも土壇場で!

主催国にはそのような権限はありません。すでに対戦国のスイス五輪委員会から抗議が出ていますが、ムン・ジェインはノーテンキにもこう言っているようです。

「韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は17日、五輪参加選手を激励する席で「もし合同入場や合同チーム編成ができれば、単純に北朝鮮が参加するという以上に、南北関係を発展させる良い端緒になる」と強い期待感を示しており、結局は政治判断で押し切った形だ」

国際競技大会と、あなた方の国の「南北関係の発展」はなんの関係もありません。IOCはこんな主催国の大会私物化を認めるべきではありません。

さて、北の戦略にはいささかの変更もありません。

激しくすり寄るムン政権に対して、北は一にも二にも、ひたすら核武装の完成一直線です。潔いばかりのひたむきさ、と思わず褒めたくなってしまうほどです。

北は五輪の雪解けムードの裏で、淡々とICBMの最後の仕上げプロセスに取りかかっています。

目標としては、今年9月に予定されている北の建国70周年あたりでしょうか。ここまでに懸案の大気圏再突入技術を完成させねばなりません。

そのためには従来の高角度で真上に上げるようなロフテッド軌道では不十分で、一般の通常軌道による実験が必須です。核実験もまだ数回はせねばならないでしょう。

そのために、今しばらくの時間が必要です。

ここで融和カードが登場します。

今までムンがいかに猫なで声をだそうと返事ひとつしなかったので、これはずいぶんと効いたようです。

ムンは去年の10月には米国に媚びて「大量報復作戦」だの「斬首作戦部隊結成」などと吹聴していました。

それがひとたび北から「太陽政策」をされるいなや、一転して今度は「斬首」対象の指導者の国と合同チームまで作ろうというわけです(笑)。たいしたもんです。

フツーは恥ずかしくってできません。

Koreamoon
既に当選前から、ムンはこう述べていました。http://japanese.yonhapnews.co.kr/Politics2/2017/04/28/0900000000AJP20170428001500882.HTML

「『共に民主党』の文在寅(ムン・ジェイン)候補は、北朝鮮との関係改善・対話を非核化と並行して進めるという姿勢だ。
こうした方針の下、昨年2月に韓国政府が北朝鮮への独自制裁として操業を停止した南北経済協力事業、開城工業団地の操業再開や南北間のメディア・社会文化交流の活性化といった公約を掲げる」
(韓国聯合通信2017年4月28日)

北との関係改善と非核化のための圧力がどうムンの中で整合しているのか知りませんが、まぁ野党党首が言うだけなのはタダですからね。

そしてこのムンの親北姿勢を見抜いて(というよりもムンそもそも北が植え込んだ勢力を基盤にした政権ですが)、北が仕掛けたのが融和カードです。

北は「統一五輪」と南北会談実現という、ムン・ジェインにとっては目がくらむほどおいしい餌を与えました。

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ご存じのように、この2年ぶりの南北会談は北の完勝でした。

北は統一五輪という幻想で韓国を酔わしましたが、北の持ち出しは五輪選手団、応援団、高官級代表団の派遣程度です。

Photo_32006年2月、トリノ冬季五輪の開会式で、統一旗を先頭に合同で入場行進する韓国と北朝鮮の選手団(共同)

一方、おずおずと韓国側が持ち出した非核化の要求などは一蹴され合意どころではありませんでした。

そりゃそうです。「北との対話」である南北会談を実現してやって、しかも「関係改善」の証である選手団派遣までしてやったのですから、非核化?ふんってなものでしょう。

それどころか「南北関係のすべての問題はわが民族が当事者として解決する」という万能の御札までに北はせしめました。

おそらく米国が五輪後まで延期した米韓合同軍事演習の無期延期、つまりは中止まで要求し、危うく韓国は飲みかかったのではないでしょうか。

今後何回か南北会談が開かれますが、ムンは選挙前に公約していたとおり、「独自制裁として操業を停止した南北経済協力事業、開城工業団地の操業再開や南北間のメディア・社会文化交流の活性化」(前掲)を実施すると思われます。

なんのことはない、この平昌五輪とは北が準備した「美女軍団」と「モランボン楽団」のためのプロパガンダ・ショーみたいなものですが、さぞかし日本のワイドショーは熱狂することでしょう。3

それにしても、もっとも選んではならないムン・ジェインという人物を大統領に座らせた国の、それも雪も降らない場所で、危険な戦場になりかねないこの時期に、なにもよりによってオリンピックをやるか、です。

VAN(←知らないでしょう)世代の言い方を使えば、Time(時間)、Place(場所)、Occasion(場面)、全部ゾロメで最悪。

安倍さんを行かせるですって?ご冗談でしょう。

まさにC'est la vie(セ・ラヴィ)。人の運命なんてこんなもんさ、なのかもしれません。

ああ、いかん、コリアをウォッチしていると、ついいつもこんな気分になってしまいます。

 

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尖閣接続水域における中国原潜の「謎の浮上」を考える

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中国海軍潜水艦が尖閣の接続水域を潜行したまま通過し、その後に浮上して国旗を掲げるという異様な事件が発生しました。

「政府は12日、10~11日に尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の接続水域を潜没航行した潜水艦について、中国海軍所属であることを確認したと発表した。海上自衛隊の護衛艦が追尾していた潜水艦が12日、東シナ海の公海上で海面に浮上した際に中国国旗を掲げた。潜水艦が自衛隊艦を挑発する意図があった可能性もある」(産経1月12日)http://www.sankei.com/photo/daily/news/180112/dly1801120021-n1.html

これに対して中国外務省は「知らない」と答えています。

「【北京時事】中国外務省の陸慷報道局長は15日の記者会見で、沖縄県・尖閣諸島周辺の接続水域に進入した中国海軍の潜水艦について「把握していない」と確認を避けた」

ちなみに、全国紙は朝日をのぞいて1面トップ、朝日だけは3面扱い。ちなみに沖タイは社会面の最下段にチョボチョボと報じていたそうです。 

各紙の中国との距離感が如実に現れて苦笑します。 

それとさておき、沖タイにも配信しているはずの共同はこう書いています。

「「日本政府は12日、沖縄県・尖閣諸島周辺の接続水域を11日に潜った状態で航行した外国の潜水艦について、中国海軍所属と確認した。
潜水艦は12日に公海上で中国国旗を掲げて航行した。防衛省によると、中国潜水艦が尖閣の接続水域を航行したのは初めて。
杉山晋輔外務事務次官は中国の程永華駐日大使に電話で『新たな形での一方的な現状変更だ』と厳重抗議した」(12日付共同通信)」(1月11日共同) 

 これが浮上して五星紅旗を掲げる中国潜水艦です。 

Photo産経1月12日より引用 自衛艦撮影 

軍事常識では考えにくいことに、中国潜水艦は堂々と追尾をしていた自衛艦の正面にプハーと浮上してみせたわけですから、ありえない行動です。

藤田幸生元海上幕僚長は、Facebookにこのようにコメントしています。https://www.facebook.com/search/top/?q=%E8%97%A4%E7%94%B0%E5%B9%B8%E7%94%9F&init=public

「私は、『潜水艦乗り』ではない。海中から、敵潜水艦を探し出して、これを沈める対潜ヘリのパイロットであった。このような写真は、あまり観たことがない!
 海軍の世界では、こんな写真を撮られるのは、『完全な敗北、白旗を掲げた、両手を挙げた潜水艦』を意味するのである。
(中略)
海軍では、常識的にこんなことはしない。  潜水艦は、『隠密』』が、生命である。何処に居て、何をしているか、『解らない、分らない、判らない』ことが、『潜水艦の特技、特徴、強み』であり、『海の忍者』と言われる所以である」

軍事常識としては、参りました。勘弁してくださいとしか取りようがないふるまいを中国原潜はしてみせたわけです。

小原凡司(元駐中国防衛駐在官・元海自第21航空隊司令)氏は、「ザ・ボイス」 (1月16日)の中でやはりこの浮上を最大の謎だとしています。

なお小原氏も対潜作戦の専門家です。 

浮上してみせたことでこの潜水艦が「商」(Shang)093D級新型原潜であることが露呈されてしまいました。
093型原子力潜水艦 - Wikipedia

この「商」級原潜はピカピカの新型で、つい先だって実戦配備ばかりのものです。

「商」級は「漢」級の後継として開発された攻撃型原潜で、核を積んだ弾道ミサイル(SLBM)は搭載できないものの、巡航ミサイルの搭載は可能です。

Shanghttp://sp.yomiuri.co.jp/politics/20180113-OYT1T50109.html

よりによって、このお宝の音紋を海自によって完全に採集されてしまいました。
音紋 - 航空軍事用語辞典++ - MASDF

船舶は皆、人間の指紋と同じようにスクリュー・エンジン・船体の振動などに固有の特徴を持っています。

面白いことに同じ型式の艦艇でも、それぞれ別の固有の音紋をだすそうですから、どの艦にどの音を出すかで、なんという艦種の何番艦と特定できてしまいます。

ですから以後、「この音紋を出したから、ああ、あの時の白旗原潜だね」と固有識別されてしまうことになりました。

そのうえそのまま潜行し続ければよいものを、わざわざ自衛艦の目前に浮上してみせるサービスをして写真まで提供してしまいました。

隠密性を最大の武器とする潜水艦にとって、どこからどう考えても命取りです。

とうぜん海自は米海軍と情報共有していますから、これで中国自慢の新型原潜は半ば中古と化してしまったわけです。

これでは艦長解任、降格ものの大失態ですが、ではなぜこのような軍事常識を逸脱したのでしょうか。

原潜は数カ月に一回の浮上で済みますので、接続水域を抜けて自分の母港周辺で浮上することもできたはずです。
原子力潜水艦 - Wikipedia 

にもかかわらず、完全に補足されて追尾している自衛艦(たぶん哨戒機も追尾ししていたと思われますが)の前を選んで、なぜ浮上したのでしょうか。

この回答のひとつが、先述した藤田元海幕長の「降伏」説です。参りました。もう追いかけないで下さい、音紋も艦影も献上します、ごめんなさい、というわけです。

この「商」級は「漢」級の欠点だった海中での静粛性を改良したのが特徴でしたが、海自にたちまち補足され、徹頭徹尾追いかけ回されてしまいました。

海自のASW(対潜水艦戦)能力の高さが、世界トップクラスだということがあらためて証明されたことになりました。

一方小原氏は、わからないとしながらも、「事故」の可能性を示唆しています。艦内システムになんらかの異常が発生し、浮上せねばならない緊急事態だったことはありえることです。

いずれにしても、ではこの「謎の浮上」を中国共産党中央軍事委員会は許可したのでしょうか。

よくこのような事件があると、メディアには「潜水艦艦長の個人的暴走で、習は後から知った」というようなことを言う訳知りが出てきますが、ありえないことです。

中国の各級部隊、あるいは艦船にはすべて例外なく部隊指揮官と同格の政治委員が配置されています。

2人の指揮官がいるというのが共産体制の軍の特徴ですが、同格と言いながらも、実際は政治委員の承認なしに、あのような「謎の浮上」はぜったいに不可能です。

ならば降伏したのか、事故なのか、あるいは予定の行動だったか、です。

小川和久氏は『ニュースを疑え』(2018年1月15日号)で、もうひとつの可能性についてこう述べています。 

小川氏は新年早々おこなわれた、前例のない軍事演習が背景にあるとみています。

新年早々、人民日報は大規模な軍事演習が行われたことを伝えています。

「習近平中共中央総書記(国家主席、中央軍事委員会主席)は3日午前10時、中央軍事委員会が盛大に開催した2018年訓練開始動員大会で全軍に訓令を出し、第19回党大会精神と新時代の党の軍事力強化思想を貫徹実行し、実戦的軍事訓練を全面的に強化し、勝利能力を全面的に高めるよう呼びかけた」(1月4日付人民日報日本語版) 

軍事演習をするのは、もちろん練度を高めるためもありますが、同時に政治的なデモンストレーションでもあります。

今回の新年の中国による大規模軍事演習は朝鮮半島情勢に対してのものであると同時に、このような政治的意図が隠されていると小川氏は見ます。

「中国共産党の頭痛のタネは経済格差の固定化などに対する国民の不満です。それが日本に対する「弱腰批判」という形でぶつけられ、政権基盤を揺るがすことが最も困るのです。
これに対しては、常に「弱腰ではない」ということを示し続けることが有効な対策です。そこで尖閣諸島周辺海域で日本の領海を侵犯するような行動を公船(巡視船)にとらせたり、東シナ海で海上自衛隊の護衛艦に火器管制レーダーを照射したりといった事態を、意図的に引き起こすことになります。紛争が起きないぎりぎりのところでニュースになるような動きをとり続け、そのニュースを通じて「日本に対して弱腰ではない」ことを中国国民に伝え続けるという手法です。
今回の潜水艦の行動と前例のない新年早々の軍事演習は、中国が日本に対しても、そして米国に対しても「弱腰ではない」ことを示すことに主眼が置かれていたと受け止めてよいでしょう」(『ニュースを疑え』前掲)

つまり中共中央軍事委は、あらかじめ「日本の駆逐艦や哨戒機に追い詰められた場合、公海に出たらすぐに浮上し、国旗を掲げよ。そうすれば攻撃される可能性は低くなる」(前掲)と艦長に命じたということになります。

世界の海軍の常識では、追尾されて浮上し国旗を掲げたら惨敗ですが、中国国民はそんなことはわかりっこありませんから、「おお、なんと凛々しく小日本と戦ったことよ。尖閣に翻る五星紅旗よぉ」と感涙にむせいだことでしょう(苦笑)。

これは一見、習が今進めている日本との関係改善と矛盾するようですが、日本側には浮上して国旗を掲げることで「参りました」と屈辱的意志表示をしてあるわけですから、これは国内向けの「やってる感」を見せるためですのでひとつよろしく、ということなのかもしれません。.

このようにひとつの事件においても、観点によって分析がさまざまあります。

私には降伏説、事故説、政治的思惑説のいずれが正しいのかわかりません。

しかし、尖閣を舞台にしてこのような虚々実々のやりとりが繰り広げられているということを、念頭において見ていかねばならないことは確かなことです。

まぁ、沖タイのように、自分の県で起きたことにもかかわらず、「県民には見えません、教えません」というのが論外だということは言うまでもないことですが。

 

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中国海警また領海侵犯繰り返す

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私たちの目が朝鮮半島に向いているとき、中国がまたまた侵犯行為をしました。 

4日には中国海警、11日には領海に繋がる接続海域に中国海軍の潜水艦が潜行したまま通過するという事件が起きました。

この潜水艦の危うい挑発行動について、中国の報道官はこう言ってのけています。

中国外務省の報道官は潜水艦に関する回答は避けつつ「日本には島の問題でもめごとを起こすのをやめるよう求める」と述べて、あくまで日本側の対応に問題があるとの姿勢を示しました。(NHK1月15日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180115/k10011289921000.html?utm_int=news-new_contents_list-items_005

まぁ、たいした心臓です。

いまや恒常的に中国海警が日本の海保に対して、「退去せよ。ここは中国の領海である」と警告をしながら侵犯していますが、こんどは「日本は揉め事を起こすな」ですか。毒気に当てられそうです。

さて、気を取り直して事実を洗っていきます。

新年早々の1月4日に、尖閣諸島領海に中国海警が領海侵犯をしました。

「海上保安庁によると、4日午前10時10分ごろ、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海に中国海警局の船4隻が相次いで侵入した。約1時間40分航行し、領海外側の接続水域へ出た。中国公船の領海侵入が確認されたのは昨年12月26日以来で、今年初めて」
(産経2018年1月4日)

http://www.sankei.com/world/news/170104/wor1701040040-n1.html

この中国公船による領海侵犯行為は、恒常化しています。

「海上保安庁によると、日本政府が尖閣諸島を国有化した平成24年9月以降、中国公船による領海侵入日数は21日で200日に達し、延べ647隻を確認。(略)
尖閣周辺での中国公船の領海侵入パターンは月に3日、1日2時間程度が中心。ただ、昨年8月に多数の中国漁船に乗じて領海侵入を繰り返した後は態勢を3隻から4隻に増強した。常態的に活動し、既成事実化する狙いがあるとみられる。
海保は大型巡視船14隻相当の規模で尖閣領海警備専従体制を運用。数的優位を保ちながら警戒をしている。」(産経2017年9月21日)

http://www.sankei.com/politics/news/170921/plt1709210061-n1.html

Ah2016年6月11日の尖閣水域における領海侵犯の模様。手前が中国海警。ぴったりと第11管区の海保がよりそっているのがわかる。 

中国海警は英語名でChina Coast Guardと称していますが、国際社会のコーストガード、つまりわが国の海上保安庁(海保)とは大きく異なった性格を持っています。
中国海警局 - Wikipedia

そもそもコーストガード の任務はこの3ツです。

  1. 密輸船・密漁船等の犯罪船舶の取締
  2. 領海内を航行中の船内における一般的刑事事件の捜査
  3. 航路における船舶交通の監視と取締等 

ところが、中国海警はこのうち3番目のうち海上交通安全監視や海上救助業務が任務外となっています。 

ですから、中国海警には海上遭難救助の任務は付与されておらず、海保の誇る海猿のような人命救助のエキスパートもいないことになります。 

また海上での危険な航行の取り締まりや、海難事故への対応も本来任務とはされていません。 

では一体何をする組織かといえば、海警局が海監、漁政、辺防海警、海関などを統合して2013年に誕生した組織であることから窺い知れます。 

さて2013年という年で、なにかピンっときませんか。

そうです、2012年9月に民主党野田政権が尖閣国有化をした年の翌年です。 

中国海警は、この国有化により一挙に「係争地」(※)化した尖閣を、中国領にするいわばサラミスライシングのナイフ役として誕生しました。 
※日本政府は日中に領土紛争は存在しないという立場をとっているために、「係争地」として認めていません。

サラミスライシングとは、サラミソーセージを薄~くヒラヒラと切り取っていく中国の狡猾な手法を指します。 

わーっと厚切りすれば正当な所有者が怒りだしますが、少しずつ相手の対応を見ながらやるのですなぁ。

相手が黙っていればしめたと大きく切り、抗議すればしばらく控えて様子をうかがい、またほとぼりが覚めた頃に再開するというわけで、大国のやるこっちゃないと思いますが、これが中国の伝統芸です。 

南シナ海がいまやこの戦法で、中国支配下の内海と化そうとしているのはご承知のとおりです。 

このように中国海警察は、ひたすら中国の主張する領海を守るためだけに存在に特化した実力組織なのです。 

そして第2に、中国海警局は中国の軍事組織の中枢である中央軍事委員会に所属しています。

ちなみに中央軍事委の委員長は習近平氏です。

中海警は従来までは公安(日本の警察に相当)に属していましたが、いまや公然と中央軍事委員会の指揮下にあります。

「沖縄県・尖閣諸島がある東シナ海などで監視活動を行っている中国海警局(海上保安庁に相当)が、中国軍の指導機関・中央軍事委員会の指揮下に移されるとの観測が浮上している。
海警局の母体の一つである武装警察部隊(武警)が1日から中央軍事委直属に改編されたことに伴うもので、同局公船による尖閣周辺での「パトロール」が「準軍事行動」(香港紙)に位置づけられるとの見方も出ている。
海警局の母体の一つである武装警察部隊(武警)が1日から中央軍事委直属に改編されたことに伴うもので、同局公船による尖閣周辺での「パトロール」が「準軍事行動」(香港紙)に位置づけられるとの見方も出ている」
(読売2018年1月14日)

http://news.livedoor.com/article/detail/14156834/

確かに諸外国においてもコーストガードは、準軍隊と位置づけられていますが、軍の指揮下にはありません。 

ですから、米国の沿岸警備隊も有事においては軍事的な任務に就くことが定められ、交戦資格を持っていますし、軍人資格を持つ者も大勢いますが、国土安全保障省の指揮下にあります。
アメリカ沿岸警備隊 - Wikipedia

Mig米国沿岸警備隊

ではなぜコーストガードが、「海軍もどき」であってはいけないのでしょうか。 

その理由は、コーストガードはいわば大人の知恵の産物だからです。 

戦前には日本にコーストガードのような組織自体がありませんでした。領海警備は海軍の仕事だったからです。

海上保安庁は戦後生まれ生まれで、海自より先に誕生しています。
海上保安庁 - Wikipedia 

国際社会で領海警備を海軍がしない理由は、いきなり領海をめぐって軍同士がバンパチ始めるリスクを消すためです。

コーストガードは準軍隊といっても平時は海の警察ですから、お互いに似た性格の者同士が対立しても、戦争にはなりにくいわけです。

ところが、方や軍事組織の指揮下にあった場合、<警察vs海軍もどき>というような非対称な関係が生まれます。

たとえば、中国海警が中央軍事委員会の指令によって領海侵犯を繰り返した場合、それはわが国にとって「中国軍が領海侵犯した」と同義になるからです。

日本ではまったく騒がれていませんが、これはたいへんに危険な兆候です。

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この間、中国海警の重武装化が急激に進み、艦艇は海軍のフリゲート艦を白く塗り替えただけで、艦載砲はそのまま残されているのが確認されています。

海保の武装はあくまでも警告射撃のために積んでいるのですが、中国海警の艦載砲は「実戦」を想定しているようなきな臭さが漂っています。

接続水域に潜行した中国潜水艦については、次回にします。

 

 

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奥茂治氏への誹謗に答えて

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先日来、奥氏や篠原氏に対して、「スキャンダル」を上げつらうことで批判した気になっているイヤーな流れがあったので雑感として記事にしました。 

原則として私は、個人の来歴には干渉しないことにしています。

本来、言えば言った人間の品下りぶりが暴露されてしまうたぐいのことだと考えているからです。 

しかし、こうも執拗に奥氏を中傷したい者がいるとなると、情報は情報としておさえておくべきだと思ったところ、事情をよく知るHN「横須賀ヨーコ」氏からコメントを頂戴しましたので、記事として転載させていただきます。

いわゆる奥茂治氏の「スキャンダル」とは、この2点です。

①水商売を経営していた
②富士通を恐喝した

①は奥氏の品性を貶めることで、「右翼業界」のなかで一旗あげるためにしたという理由付けに利用されています。

※追記 奥氏の「水商売」については「ゴシップ」ではないかという指摘がありました。確かにそうですし何ら問題がないことですが、奥氏批判派はこのことも含めて印象誘導の対象にしていますのであえて取り上げました。

②は恐喝をするような犯罪者だという人格への誹謗です。

これらは、根拠を明らかにすることなく、ネットで無責任に拡散し、あたかも事実であるかのにように定着しようとしています。 

公人はその限りではありませんが、一市民の個人情報は無責任に拡散されてよいものではありません。

やむを得ず言及せざるをえない場合でも、慎重に裏を取るべきです。

ところが奥氏の批判者たちは、このどこで拾ってきたかわからないようなあやふやな情報をあたかも「事実」のように持ち回り、奥氏の行動そのものまで安易に否定する材料として使っています。

実に粗雑かつ卑劣なふるまいです。

これについて、「横須賀ヨーコ」氏から、的確な情報を提供いただきましたことに感謝します。

読みやすくするために、小見出しを加え、最低限の編集を加えました。 

追記

ちなみに奥茂治著『卑怯なり!富士通』(2007年2月刊・自費出版)に収録された最終的な和解文(平成17年2月11日)にはこうあります。

①被告奥茂治らからの恐喝 事実はない。
②原告富士通は被告奥茂治に訴訟により勾留されたことに対する遺憾の意を表明する。
③原告富士通は訴訟を放棄する。
④相互に和解条項に定める以外のものは放棄する。

ご覧のように、奥氏の勝訴による和解です。
なお謝罪広告は、和解条項④によりされていません。

                                           ~~~~~~

Oku_shigeharuhttp://blogos.com/article/232577/

①奥氏の「水商売」について

奥茂治さんの水商売のお話が出ているので、私の知っているエピソードを。 

奥さんは、自衛官退官後に沖縄で初の日本式キャバレーの経営をなさいますが、その店で働く女性従業員のための託児所を開設したそうです。 

1日100円の保育料を払えば、子どもを預けながら働くことができるというものです。 

今の基準でいえば、認可外保育所ということになるのでしょうが、まだ70年代のその時代になかなか思いつくことではないでしょう。 

その託児所で保育を担当されていた方の知人に朝鮮半島出身の方おられ、その方が1975年に共同通信など日本のマスコミを通じて従軍慰安婦であったことが明らかになったペ・ポンギさんです。
※編者注 この女性は、ペ・ポンギさんというお名前で「最初に名乗り出た慰安婦」として知られています。http://japan.hani.co.kr/arti/politics/21570.html 

彼女はハングルも日本語も読み書きが不自由だったため特別在留許可の手続きが上手くできずにいたところ、支援する方々の嘆願により特別在留が許可されるのですが、後年ぺさんについて奥茂治さんが調べ直しました。 

すると、報道等で伝えられている多くの事実が歪曲されていること、事実と違うことに気づきました。 

また吉田清治の主張や行動なども詳しく調べ直した結果、「従軍慰安婦問題」が、特定の政治勢力によって火を付けられ、それをバックアップした朝日新聞の報道を拠り所に拡散していったことを突き止めるに至ったというのが、今回の奥さんの行動の根柢にあるものだと思います。 

奥茂治さんの活動というのは、決してマスコミや時勢に乗ったものではなく、また名誉欲に惑わされることもなく、ご自身が疑問に思った問題を解決することから始まった地道なものなのではないでしょうか。 

信念の方だと思います。

②富士通「恐喝」事件のデマについて 

また、コメントの中で事実でないことが書かれているので、指摘しておきます。 

「奥茂治氏って昔、防衛庁データ流出事件で富士通を恐喝した人ですよね。 色々言い訳しているようですが公判で恐喝未遂の起訴事実も認めています」 

これは事実誤認です。事実は、富士通側の誤認による虚偽告訴です。 

奥茂治氏は、嫌疑不十分で不起訴となりました。 

このコメントの「公判で恐喝未遂の起訴事実も認めています」というのは、まったくのデマです。 

不起訴ですから、公判は行われていません。 

※編者注 起訴には3種るあります。起訴(正式起訴)、略式起訴、不起訴です。不起訴とは、字の如く「起訴にならない」処分であり、裁判手続きが一切行われないのはもちろんのこと、前科も付くことはありません。 

行われてもいない公判の話など、取り合うまでもなく、100%嘘だと誰でもわかるでしょう。 

その後、、富士通の虚偽告訴で不利益を被り、警察、検察に間違った情報を出したとして、同社を相手に、謝罪広告と計4200万円の損害賠償を求める訴訟を起こしました。 

それについては、富士通側が謝罪広告を出すことで和解が成立しています。 

また、奥茂治氏が損害賠償金4200万円を受け取った事実はありません。

[追記]

横須賀ヨーコさんのコメントです。

逮捕された人たちは、データの売却先が上手く見つからなかったため、かなり多くの人に話を持ちかけて、その過程で週刊誌やマスコミ等にも「富士通の管理体制のずさんさ」を吹聴して回っています。

それがウィリーさんの引用記事に出てくる「当時、被告の一人であるエンジニアは、本誌の取材に対して」の部分ですね。

売り込み先を手広く探すうちに、奥さんの耳にも入ったということで、有罪判決の3人と特に繋がりはないと思います。

富士通への訴訟は、「恐喝の意図はなかった」と互いに認め合うことで和解しています。

奥さんの名誉が十分に回復されたとはとても思えませんが、「裁判(の費用)が個人の限界だった」と奥さんご本人がどこかで語っておられました。

先ほど私は「謝罪広告を出すことで和解成立」とコメントしてしまいましたが、広告は出されていないようですね、失礼しました。 

 

 

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日曜雑感 昨日のコメントについての感想など

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あまり嬉しくないかんじで、昨日の記事は盛り上がったようで、なんともかとも。

山路さんに言いたいことをほとんど書かれてしまったので(笑い)、私からも少しだけ。

これだけの数のコメントが来ていながら、まともな奥氏への論評が常連さんたち以外まったくないことに逆に驚きを感じます。

このブログは来るもの拒まずですが、侮辱的表現、あるいは差別的言辞はブロックしています。(侮辱的表現があったひとつのコメントは削除しました)

ですから、汚い言葉づかいをすると、自分の主張が増幅できると錯覚するような人は左右を問わず来ないほうがいいでしょう。

また、今回特に目立った個人に対する誹謗は認めません。

批判したい対象の人物や団体が、「魑魅魍魎」だからどーした、「○○団体がバックにいる」からこーした、はたまた「安倍を批判した」からどーのなどという週刊誌的書き込みは認めていません。

なぜなら今回取り上げた奥氏の行動とは、本質的になんの関係もないことだからです。

それを言い始めたらキリがありません。

たとえば都知事選に出た左派ジャーナリストのT氏は、過去の女性に対する性犯罪まがいの行為を書き立てられましたが、そこに問題があるのではなく、彼の掲げた思想や政策が問題でした。

日本会議の研究』というベストセラーを持ち、森友問題に籠池氏の代理人よろしく頻繁に登場したS氏も、性的スキャンダルに襲われましたが。

しかしそれが問題ではなく、本の内容やしばき隊という暴力集団の幹部だったこと、あるいは籠池氏とのかかわりがうろんなのです。

Y氏という女性有名政治家は不倫報道で民進党を去らざるをえませんでしたが、それは公人というポジションが問題視されたのです。

ちなみに、私は別に大人が不倫しようがしまいが、問題ないと思っていますが、彼女の議員としての発言が問題なのです。

身体検査に合格しないと、行動と論理を見れない皆さんにあえて聞きます。

私たちは政党の候補選びをしている選対ではありません。

私はその人の行動と論理を見極めたいと考えているのであって、清廉潔白な人選びをしているんではありません。

「スキャンダルがある奴の言うことなど嘘八百だ」で一蹴する発想自体が、知的頽廃だと思います。

立場が違っても聞くべき有意な言説は多くありますし、逆に立場は似ていても聞くに堪えないことを言う者もいるからです。

あくまでも発言した行動と論理によって判断されるべきです。

私の基本姿勢はその人物の行動と論理、そのなかで表出された言葉を大事にすることです。

まずは行動と論理を見た後に、さらに深堀りする必要があればその人の来歴を検証します。その逆ではありません。

今回来たコメントの多くは、行動と論理をまったくスルーして、その人物の来歴だけしか関心がないようです。

今回はこの一件となんの関係もない、三橋氏のDV事件、高橋氏や篠原氏の「スキャンダル」まで引き合いに出てきたのには失笑しました。まさに周辺爆撃です。

三橋氏が反安倍によって言論を封じられたなんて言っていましたが、あいかわらずランキング1位ですし、封じられる気配もありませんしねぇ。

彼がU氏のように「国策捜査」だみたなことを言い出さず、率直に謝罪し、言論活動に戻ったことはいいことでした。

それはさておき、なんでも安倍氏と結びつけるのは、幻視幻聴のたぐいです。耳鼻科にどうぞ。

このての言説は、子供の喧嘩で「お前のカァちゃん出ベソ」というようなもんで、母親が出ベソだろうと、当人とは関係ありません。

それともういいかげん、統一協会やハッピーサイエンスを背後関係の引き合いにするのは止めて頂けませんか。本土で彼らの影響力はミニマムです。

素朴にお聞きしたい。これで批判という営為をしたことになるのでしょうか?

とまれスキャンダルでしか言論を見れなくなったら、そうとうに寂しいことではありませんか。

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さて奥氏の行動は、大方の批判者たちが見落としていますが、韓国という国と民族への信頼があります。

奥氏は韓国に対して、「国の施設が嘘の碑文を使い続ければ、国際的な恥になりますよ」(産経1月11日以下同じ)と述べています。

そして、「韓国では慰安婦問題が吉田氏の嘘の証言から始まっていることが、ほとんど知られていない」、ということを重く見ています。

この思いがあるからこそ、「たとえ、実刑でも碑文の嘘が認定されれば、刑に服すつもりだった。その覚悟がなければ最初からやらない」という決意が生まれるわけです。

奥氏の発言には、右サイドにありがちなゼノフォビア(外国人嫌い)のかけらもありません。

だから私から見ても不毛だと思われる、韓国司法と延々と慰安婦問題についての議論をしたのです。

慰安婦問題を批判する人は、保守言論界には掃いて捨てるほどいます。

しかし、事実上の軟禁状態のなかで頑迷であると想像される韓国司法と、慰安婦をめぐって議論が出来る人が何人いるでしょうか。

まったくいませんでした。

これを売名行為のように言うコメントがありましたが、私はそのようにしか人間を見れない人を哀れみます。

人の熱はどこから来るのか、人の行いは魂のどの部分から発するのか、真正面から見て批判したいのなら、対置するに足る論理で立ち向かう覚悟で書くことです。

薄っぺらな週刊的興味で批判した気になっていては、肝心なことを見逃します。

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日曜写真館 湖に太陽が生まれた

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今回は珍しく画像処理をしてあります。まぁ、たまには。




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奥茂治氏に韓国司法の判決が下る

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奥茂治氏に韓国司法の判決が下りました。 

奥氏は韓国において、吉田清治の長男の依頼を受けて、吉田が作った虚偽の「謝罪碑」の盤面を張り替えたことにより勾留され続けていました。 

関連記事は山路氏の論考を中心にして、何本か掲載しております。 

事実経過や、その是非についてはかなり突っ込んだ議論をしておりますのでお読みください。 

「山路敬介氏寄稿 奥茂治氏 その人間と行動 その1・2・3」
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/07/post-7e73.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/07/post-d969.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/07/post-7331.html
山路敬介氏寄稿 「奥茂治氏の人間と行動」  皆様の意見もふくめ「感想戦」で
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/07/post-5340.html
奥茂治氏はテロリストではない
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2017/07/post-faaa.html 

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さて、韓国大田地裁天安(チョンナン)支部は、奥茂治氏に対して公用物損壊の罪を認めて、懲役6ヶ月執行猶予2年の判決を下しました。

奥氏は判決文を控訴する予定です。また刑事訴訟とは別に、奥氏側からの民事訴訟を起こすと述べられました。

Dtpuvg0uqaa5utb判決後の奥茂治氏

この判決を報じる産経(1月11日)です。http://www.sankei.com/world/news/180111/wor1801110031-n1.html

「『法治国家で司法手続きに従うのは当然のこと。刑に不服はない。重要なのは吉田清治氏の嘘が判決文に盛り込まれているかだ』
 奥茂治被告は11日の判決後、こう強調した。奥被告が謝罪碑の無断での書き換えに及び、出国禁止の長期化も覚悟して裁判に臨んだのは、慰安婦問題をめぐって日韓関係をこじらせた根本的な“嘘”を取り除きたいという思いからだった」

ではこの奥氏をが吉田の長男に依頼されて張り替えた韓国国立墓地内の「謝罪碑」とはいかなるものだったのでしょうか。

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吉田が書いた碑文の文面です。

「あなたは日本の侵略戦争のために徴用され強制されて
 強制労働の屈辱と苦難の中で 家族を想い 望郷の念も空しく
 尊い命を奪われました
 私は徴用と強制連行を実行発揮した日本人の一人として
 人道に反したその行為と精神を潔く反省して
 謹んで あなたに謝罪いたします
 老齢の私は死後も あなたの霊の前に拝跪して
 あなたの許しを請い続けます 合掌
   1983年12月15日
      元労務報國會徴用隊長 吉田清治」

吉田が広島県の「労務会の徴用隊長」だった事実はありませんし、そもそも朝鮮女性を狩り集める「徴用隊」があったという事実はありません。

肩書そのものが虚偽な上に、言っている内容はまったく史実とはかけ離れた創作でした。

これは晩年、吉田自身も「小説だった」と認めています。

ですからこの謝罪碑に書かれた、「徴用と強制連行を実行発揮した」ということはまったくの嘘偽りです。

吉田は全国各地で講演しただけではなく、韓国にわたり文字通り額を地面につけて土下座して行脚することを続けました。

この男はこれにより生活していた職業的詐話師でしたが、この嘘を朝日が30年間宣伝し続け世界に拡散しました。

かくしてこのひとりの職業的詐話師の嘘は、いまや動かすことができない史実と化しています。

その結果、日韓関係は修復不可能な打撃を受けました。

日韓合意はその収拾のために歩み寄って作られた条約でしたが、これもムン政権は廃棄したいようです。

この原因を作った吉田の長男は、このように意思表示されています。

「父が発信し続けた虚偽によって日韓両国民が不必要な対立をすることも、それが史実として世界に喧伝され続けることも、これ以上、私は耐えられません」(大高未貴 『父の謝罪碑を撤去します』) 

そして長男はこのように決意しました。

「吉田家は私の代で終わりますが、日本の皆様、そしてその子孫は後に遺されます。いったい私は吉田家最後の人間としてどうやって罪を償えばいいのでしょうか。今日に至るまでそのことをずっと考え続け、せめてもの罪滅ぼしに決断したことがあります」
「慰安婦像は彫像の権利問題もあり、一民間人が撤去することは事実上、不可能です。
 だが、父親が私費を投じて建てた謝罪碑であれば、遺族の権限で撤去することが可能なはずだと、長男は考えた」(前掲)

そして下の写真が、吉田の長男の依頼によって奥氏が現地に赴き張り替えた新盤面です。

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新たな碑文は、事実のみが簡潔に記されています。

「慰霊碑 吉田雄兎 日本国 福岡」

雄兎とは、吉田清治の本名です。

奥氏の尽力により、ここに肩書、碑文すべてが虚偽に満ちた「謝罪碑」はあるべき姿に戻ったのでした。

あくまでも、この謝罪碑は吉田家の所有になるもので、その盤面の張り替えについて長男には自由裁量権があるはずです。

韓国が持っているのはあくまで講演の管理権であって、ひとつひとつの石碑についての文面について干渉することは出来ないはずです。

にもかかわらず、韓国は奥氏200日にも及ぶ出国禁止を受けました。

これについて奥氏はこう述べています。

「苦にはならなかった。慰安婦問題をめぐる嘘を正すという目的があったので」。奥被告は、出国禁止措置により約200日に及んだ韓国生活をこう振り返った。「たとえ、実刑でも碑文の嘘が認定されれば、刑に服すつもりだった。その覚悟がなければ最初からやらない」とも語った」(産経前掲)

奥氏は一貫して、このように述べてきました。

「『国の施設が嘘の碑文を使い続ければ、国際的な恥になりますよ』ということ。韓国では、慰安婦問題が吉田氏の嘘の証言から始まっていることがほとんど知られていない」と説明した」(産経前掲)

なお韓国検察も、昨年12月の求刑において、「慰安婦問題を歪曲しようとし、韓日外交に摩擦を生じさせる行為」(産経前掲)として、吉田の証言について言及しているにもかかわらず、裁判所はその判断を避けたようです。

奥氏はこの判決によって帰国することが出来ましたが、氏のたったひとりの「歴史戦」はまだ終わっていません。

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ルトワック爺さんの刺激的提案

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『中国4・0』などで、いまや日本でもおなじみとなったエドワード・ルトワック(戦略国際問題研究所 CSIS・シニア・アドバイザー)がニューズウィーク(2018年1月9日)に、いささか刺激的な記事を寄稿しています。 

刺激的といえば、近著のタイトルからして『戦争にチャンスを与えよ』ですから、書名を聞いただけでウーマンの村本クンなどは失神するかもしれません。 

といって、彼を単純な好戦的人物だと思ったら大間違いです。 

まぁルックスも、いかにもいかにものマッチョですから、誤解を受けやすいというか、当人もその誤解を楽しんでいるふしもあります。 

下の写真で右がルトワック爺さんですが、軍人のほうがきゃしゃに見えます。 

実際、腕っぷしには自信があるそうで、ガキ時代には5人まとめてボコにしたなんて武勇伝があるそうです。 

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 ルーマニア系ユダヤ人で、イスラエルに移住し、第4次中東戦争の従軍歴があります。 

後にジョンズ・ポプキンズ大で博士号をとり、国防総省長官府に所属していました。 

ルトワックの真骨頂は、キレイゴトを徹底的に排して、リアリズムに徹するという思考型式です。 

ルトワックはこの『戦争に・・・』のなかで、欧米型民主主義の頭デッカチが、かえって中東に災厄をもたらしたと断じています。 

たとえばイラクです。独裁者フセインを排して民主主義を導入しようとした結果、スンニ派とシーア派の果てしなき宗教紛争の地獄の釜の蓋を開けてしまいました。 

あの頃、米国は「あれだけわが国に抵抗した日本でさえ、占領がうまくいって民主主義体制になったんだから、イラクなんか楽勝さ」なんて馬鹿なことを言っていました。 

日本ははるか前から民主主義ですぜ、と当時内心思った記憶がありますが、このような米国流の無知と善意が引き起こしたのが、「アラブの春」以降の地獄図絵です。 

イラクだけにとどまらず、米国はリビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ、パレスチナ、そしてシリアなどで、こんなことなら昔の独裁者が統治していたほうがましだった、と住民たち言われるような状況を生み出してしまいました。 

Isterrorists
そしてとどのつまりISというモンスターを生み出し、テロリストを退治するためにロシアの中東介入を許すはめになっていきます。 

ルトワックは、イラクには介入するな、するなら今の世代が消えて新世代に替わる半世紀は駐屯する覚悟で介入しろと言っています。 

また、善意のNGOがテロリストにいいように利用され、紛争をいっそう血生臭くしたことも厳しく批判しています。 

今回のルトワックの、『南北会談で油断するな「アメリカは手遅れになる前に北を空爆せよ』(It's Time to Bomb North Korea)は、ネットでもお読みいただけます。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/01/post-9271.php?t=0 

これは米国 Foreign Policy に寄稿した『北朝鮮を爆撃する時がきた』と同じ趣旨のものですから、日本版向けではなく、おそらく米国NSCも読んでいるはずです。 

_99516848_hi0439278821南北会談 http://www.bbc.com/japanese/42630814

ルトワックはこのNWの寄稿をこう始めています。

「1月9日、韓国と北朝鮮による2年ぶりの南北高官級会談が行われているが、結果は今までと同じことになるだろう。北朝鮮の無法なふるまいに対し、韓国が多額の援助で報いるのはほぼ確実だ。
かくして、国連安保理がようやく合意した制裁強化は効力を失う。
一方の北朝鮮は、核弾頭を搭載した移動発射式の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を複数配備するという目標に向けて着実に歩みを進めていくだろう」

ルトワックは国際制裁が、韓国の裏切りによって破綻するだろうと予言しています。

いくら国連決議を積み上げようと、制裁強化を叫ぼうと、韓国がそれをいっさい無効にしてしまうと読んでいます。

このルトワックの寄稿は、1月9日の板門店で開かれた南北会談以前に書かれたものでしょうが、まさにルトワックの観測どおりとなりました。

韓国は北の冬季五輪への参加の見返りとして、「南北関係のすべての問題はわが民族が当事者として解決する」という凶悪なまでに間抜けな言質を与えてしまっています。

この条項は、国連制裁決議を韓国は破壊して、北の核ミサイル開発を間接に「支援」するという意思表示にほかなりません。

やや短絡的な言い方をお許し願えれば、ムン・ジェインは自由主義陣営に後ろ足で砂をかけて、北と一緒に「わが民族」の側に与すると宣言したに等しいわけです。

ルトワックはこのまま北の時間稼ぎを許せば、もう軍事的手段をとりようがない時期になると見ています。

それは過去の北の暴走に対して、米国がなすすべもなく「戦略的忍耐」という美名の不作為を重ねてきた結果として、現在のこじれきった状況があるからです。

「北朝鮮の過去6回の核実験はいずれも、アメリカにとって攻撃に踏み切る絶好のチャンスだった。
イスラエルが1981年にイラク、2007年にシリアの核関連施設を爆撃した時のように。いかなる兵器も持たせるべきでない危険な政権が、よりによって核兵器を保有するのを阻止するために、断固として攻撃すべきだった。
幸い、北朝鮮の核兵器を破壊する時間的余裕はまだある。米政府は先制攻撃をはなから否定するのではなく、真剣に考慮すべきだ」(NY前掲)

ルトワックが歯噛みするように、1994年のクリントン政権時には真剣に北の核施設空爆が検討されました。

「1994年の第1次北朝鮮核危機だ。北朝鮮は93年に核拡散防止条約(NPT)を脱退した後、核実験と弾道ミサイル「ノドン1号」発射を強行した。
94年3月に板門店(パンムンジョム)で開かれた南北特使交換実務者会談で北朝鮮代表の朴英洙(パク・ヨンス)祖国平和統一委員会副局長は「戦争が起こればソウルを火の海にする」と脅迫し、緊張を高めた。
これを受け、米クリントン政権は北朝鮮の核施設だけを除去する「精密爆撃」を準備した。しかし北朝鮮が報復に乗り出す場合、大量の長射程砲をソウルに発射するという韓国政府の懸念のため実行に移せなかった。
当時、韓米連合軍が首都圏北側に配備された北朝鮮軍の長射程砲を早期に除去できる案がなかったからだ」(中央日報2017年2月7日)

http://japanese.joins.com/article/506/225506.html 

2002年にもブッシュは北を「悪の枢軸」の一味と見なして攻撃を立案しましたが、中東情勢に足をとられて決断に至りませんでした。

そしてオバマは、悪名高き「戦略的忍耐」政策を取り、空爆そのものを封印してしまいます。

では、なにが米国の足かせとなったのでしょうか。

中央日報が述べるように、「北朝鮮が報復に乗り出す場合、大量の長射程砲をソウルに発射するという韓国政府の懸念のため実行に移せなかった」からです。

実はルトワック自身も関与して、韓国に口酸っぱくソウルからの首都移転を勧めたそうです。

米国側はジミー・カーター時代、韓国からの地上軍の撤退の代償に、アイアンドームというイスラエル製防空システムを安価で提供しようというオファーすらしましたが、韓国はぐだぐだと聞き耳を持たなかったそうです。

ルトワックはこのように言い切ります。

「米軍当局は、そのソウルが「火の海」になりかねないと言う。だがソウルの無防備さはアメリカが攻撃しない理由にはならない。ソウルが無防備なのは韓国の自業自得である面が大きいからだ」
「韓国政府は過去40年にわたり、これらの防衛努力を一切行ってこなかった。ソウル地区には「シェルター」が3257ヵ所あることになっているが、それらは地下商店街や地下鉄の駅、駐車場にすぎず、食料や水、医療用具やガスマスクなどの備蓄は一切ない。アイアンドームの導入についても、韓国はそのための資金をむしろ対日爆撃機に注ぎ込むことを優先する始末だ」(NW前掲)

ルトワック流に言わせれば、自分の首都すら守る意志がないくせに、日本を軍事攻撃する準備にだけ妙に熱 心な国は勝手にしろということです。

下の写真は去年6月15日に行われた竹島周辺を艦隊で通過する韓国海軍の訓練風景です。

もちろん、「訓練」と言う名の挑発行為です。

駆逐艦や海洋警察の巡視船など7隻と、P3C哨戒機やF15K戦闘機など海・空軍機4機を投入した大規模なものでした。
http://www.sankei.com/smp/world/news/170615/wor1706150023-s1.html

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わが国が冷静に対応したからいいようなものの(単にボケているだけですが)、国際常識では係争地でこんなまねをすれば開戦事由になりかねません。

この6月の前後は「週刊弾道ミサイル」といっていいような、北のミサイル実験が頻発していた頃です。 間違いなく、米韓でもっとも緊密に協力すべき時期でした。

しかしなぜこの時期に、「友好国」(笑)、いや米国をブリッジにして「準同盟国」(苦笑)ですらあるはずのわが国にこのようなことを仕掛けるのか理解に苦しみます。

おい、韓国さん、敵はあんたの目の前だよ。背中にはいないよ。

それはさておき、私も巷間伝えられるような、.北に「ソウルを火の海」とするような攻撃能力はないと思っています。

詳述は別の機会に譲りますが、北の通常兵器による攻撃能力はとうに錆び付いて陳腐化しており、ほとんど使い物にならないと考えられています。

先日、マティスがソウルへの反撃については対処方法があると発言しましたが、米軍はMOABなどを使って38度線に張りついた北の砲撃部隊は、短時間で制圧できると考えているようです。

また、もうひとつの理由である多数の目標を空爆せねばならないのではないか、という説についても、ルトワックはこう述べています。

「アメリカが北朝鮮に対する空爆を躊躇する理由として、成功が極めて困難だから、というのも説得力に欠けている。北朝鮮の核関連施設を破壊するには数千機の戦略爆撃機を出動させる必要があり不可能だ、というのだ。
しかし、北朝鮮にあるとされる核関連施設はせいぜい数十カ所で、そのほとんどはかなり小規模と見てほぼ間違いない。合理的な軍事作戦を実行するなら、何千回もの空爆はそもそも不要だ」(NW前掲)

この部分に関しては悩ましいですね。私は疑問符をつけておきます。

ただし、ルトワックが指摘するように、「今はまだ、北朝鮮には核弾頭を搭載したミサイルの移動式発射台が存在しない。叩くのは今のうちだ」(NW前掲)という判断にも一理あることは認めます。

最後に、ある意味最大の米国を躊躇させているのは、中国の判断です。

「アメリカが北朝鮮への空爆を躊躇する唯一の妥当な理由は、中国だろう。だがそれは別に、中国がアメリカに対抗して参戦してくるからではない。
中国がなんとしても北朝鮮を温存するという見方は、甚だしい時代錯誤だ。もちろん中国としては、北朝鮮の体制が崩壊し、北朝鮮との国境を流れる鴨緑江まで米軍が進出してくる事態を決して望まない。
だが戦争行為の常套手段である石油禁輸を含め、中国の習近平国家主席は国連安保理で採択された対北朝鮮経済制裁の強化を支持する姿勢を見せており、核問題をめぐって北朝鮮を見放し始めている。アメリカが北朝鮮の核関連施設を先制攻撃すれば中国が北朝鮮を助けに行く、という見方は的外れだ」(NW前掲)

これは私もそのとおりだと思います。

中国は既に北を自分に牙をむきかねない危険な存在として認識し始めており、米国が地上兵力さえ38度線以北に投入しなければ、北への空爆を容認するつもりだろうと思われます。

とまぁ、このような内容ですが、米国政府がこのルトワック提案を呑むかどうかははなはだ危ういと思われます。

おそらく、やんわりと拒否されるのではないでしょうか。

 

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ムン氏のあかんたれ感

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慰安婦合意の見直しと、南北会談が同時に起きました。 

本来はこのふたつのことは別次元の話なのですが、主役がなにぶん「あの人」なので、ひどく似た印象になります。 

前者では意味不明、後者においては致命的にも「南北関係のすべての問題はわが民族が当事者として解決する」という文言を丸飲みしてしまっています。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25489400Z00C18A1EA2000/ 

Photohttps://jp.sputniknews.com/politics/20180110445665...

こんな漠然としたどうにでも取れる条項をいったん飲んだら最後、北朝鮮は米国や国連の圧力が高まるたびにこの条項を持ち出すことでしょう。 

この条項は、朝鮮半島情勢に対する外国勢力の介入を許さないという以外にとりようがない性質です。 

いうまでもなく、北朝鮮の核は韓国にのみ照準されたものではなく、日本や米国にも刃を向けています。 

おそらく、北の核保有が認められることになれば、核の連鎖が生じることとなります。それはアジア全域に拡大し、世界の不安定な地域に飛び火するでしょう。 

それを「これは民族内部のことだから、オレらで解決しような」では、周辺国はたまったものではありません。 

そもそも韓国には解決能力はおろか、当事者意識すらありません。あればこんな事態にはならなかったはずですから、何いってんだかです。 

前の朝鮮戦争は、北朝鮮という軍事独裁国家が大国を戦争に巻き込む形で始まりました。

当時のスリーリンソ連は渋々、「キムがそこまで勝てると言うならと」是認してしまいます。

一方、毛沢東中国は当初は是認こそしたものの、派兵までするとは考えておらず、北が鴨緑江まで押し返され、このままだと旧満州にまで米国の手が伸びると判断して、やっと増援を送ったわけです。

中国にとって、建国したばかりの時期に、推定で約50万の戦死者と台湾の「解放」を断念せざるをえないという代償は痛かったはずです。

米国に至っては、なんの関心もなかった朝鮮半島で4万5千もの戦死者を出すはめになりました。

一方、韓国はイ・スンマン大統領が真っ先に逃亡するような当事者能力のなさで、たちたま釜山の一角に追い詰められるありさま。

仕方なしに、国際社会が国連軍全体で約35万といわれる犠牲を払って韓国を守らざるをえませんでした。

まぁこれも韓国にかかると、大国の代理戦争の狭間に泣くウリナラ(わが民族)というふうな妙にぬるい被害者史観に浸りたいようですが、国際社会を巻き込んだのは、あんたら「兄弟国家」だろうと考えるほうが妥当でしょう。

今回も同じ構図です。

北朝鮮の核の暴走をもっとも強く抑制せねばならない韓国がこのざまですから、日米や国際社会が力を貸しているのであって、それを「わが民族が当事者として解決する」とは、聞いて呆れます。

今後、オリンピックの出場などという安い見返りで得たこのカードを、北朝鮮は使い倒すことでしょう。 

たとえばケソン(開城)工業団地は、北朝鮮と韓国との軍事境界線付近に ある経済特別区ですが、この再開などうってつけです。 

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とうぜん国際社会が決めた制裁破りになりますが、北朝鮮から「すべてわが民族内部のこととして解決する」って約束したではないかと言われれば、はい、そのとおりでございますと言うしかなくなりました。 

米韓合同軍事演習などについて、この階段でも北朝鮮は延期されたことを評価し、さらに中止を求めたようですが、以後、南北和解の機運に敵対するのかと言われれば、はい、そのとおりでございますというしかなくないでしょう。 

馬鹿ですねぇ。こういう外交的白紙手形を瀬戸際外交の名手に与えてどうするのかと思いますが、これで米韓同盟の先は見えました。

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一方、このムン氏のあかんたれ感は、日韓合意にもあますところなく現れています。 

韓合意について、ムン・ジェイン(文在寅)大統領は新年年頭会見でこう述べています。 

「80年以上前に花の少女一人守ってくれなかった国が被害おばあさんたちに戻って深い傷を抱かれた。 国の存在理由をもう一度考えています。
韓日両国間の公式の合意をした事実は否定できません。 日本との関係をよくしていくことも非常に重要です。しかし、誤った結び目は解かなければなりません。 真実を無視したままで道を行くことはできません。 真実と正義という原則に戻っていきます」

文学的香り溢れるというと聞こえがいいですが、一国の統治者として何をいいたいのか、日本が憎いのはわかりますが、どう再び謝らせたいのか、その道筋がさっぱりわかりません。 

そもそも、日韓合意を廃棄したいのか、したくないのか、千々に乱れるムン氏の心はグチグチャなようです。 

ムン氏は、この記者会見で質問に答えてこんなことを述べています。 

「日本が自主的に真実を認め、謝罪しなければならない。しかしそのために政府間で行われた合意を破棄することはできない。被害者排除自体が間違いだった」 

「二国間条約は動かないから、日本に謝罪しろ」。なんだ、日本が自主的にもう一回、頭を下げて許しを乞えということですか(苦笑)。

ムン氏にはお気の毒ですが、締結されて、さらに議会で批准されてしまった二国間条約は動きません。 

メディアはTPPを持ち出して、「日本政府のいうように1ミリたりとも動かないでは解決しない。二国間合意はよく破られている。大人の対応を」などと言っているところが出ているようですが、TPPを米国議会は批准していません。

批准されていないから、トランプが署名を拒否できたのです。

一方、日韓合意は完全に終了しています。条約に両国政府が署名し、両国議会で批准され、合意に伴う支援として10億円を支払い済です。

完全にオシマイです。

Photo_2https://thepage.jp/detail/20151230-00000003-wordle...

事実、慰安婦の8割に達する47人中36人が、日本からの金を受け取っています。

ムン氏は「自主的に認めて謝罪しろ」といっていますが、何をいってんだか、とうにしています。

安倍首相の日韓合意における文言。 

「日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒やしがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明し、慰安婦問題を含め、日韓間の財産・請求権の問題は1965年の日韓請求権・経済協力協定で最終的かつ完全に解決済みとの我が国の立場に変わりないが、今回の合意により、慰安婦問題が『最終的かつ不可逆的に』解決されることを歓迎する」

そしてバククネ(朴槿恵)前大統領の発言。

「今次外相会談によって慰安婦問題に関し最終合意がなされたことを評価し新しい韓日関係を築くために互いに努力していきたい」 

日本は1965年の日韓条約は再交渉の余地なしという大前提に立った上で、慰安婦問題もまた「最終的、かつ不可逆的に解決」した証として、韓国政府の基金に対して10億円を支払い済みしたということです。

したがって、日本側としては10億円を払った時点で一切の日本側の義務は完了し、基金は韓国政府が管理することになったわけです。

ですから日本政府としては、韓国政府が「慰安婦を守れなかった国の意味」をかんがえるのも自由、慰安婦に渡した10億円を回収しようと、玄界灘に捨てようとどうぞご自由に、という立場です。

日本としては既に「謝罪」と金の支払いは済ませており、これ以上なんの「真実を認め」、「自主的に謝罪せねばならない」のか、まったく理解を超越します。

すべてが、ムン氏が慰安婦合意批判で当選し、それを覆すことを公約してしまったので、引くに引けない状況になってしまった韓国のお家の事情というだけのことです。

それは貴国の内政です。日本は韓国の内政に干渉できません。

というわけで、わが国のL・鳩山前首相にそっくりのL・ムン氏の苦闘はまだまだ続くのでありました。

それにしてもパククネ氏がまともに見えるような、ルーピー界の逸材が現れるとは、さすがに思いませんでしたね(笑)。

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