目に余る自民党指導部のコウモリ外交
凡庸な政治家がふたつの争う勢力にはさまれた場合、どうするでしょうか。
どちらがわが国の国益かということを考えずに、このふたつの国をどうなだめるのかと発想するでしょう。
そしてどちらにも媚を売り、折衷案をひねり出します。
その結果、どちらの側も満足せず、誰もこんな国を信用せずに、結果どちらも失敗します。
ゲル首相が就任式後にワシントン詣でをする一方で、森山幹事長は中国共産党詣でをしました。
矛盾したことだとは思っていないようです。
「自民・公明両党の幹事長らは、7年ぶりとなる中国共産党との政党間交流「日中与党交流協議会」などに臨むため、13日から中国を訪問しています。
自民党の森山幹事長と公明党の西田幹事長ら12人の訪問団は、日本時間の13日午後1時前、中国に到着しました。
13日から3日間の日程で北京に滞在し、14日は2018年以来、7年ぶりに再開される中国共産党との政党間交流「日中与党交流協議会」に出席します。
この中では、
▽日本産水産物の早期の輸入再開や
▽拘束されている日本人の解放など
懸案事項について日本の立場を伝えるほか、
▽弾道ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮への対応や
▽両国間の交流の促進などについて意見を交わす見通しです」
(NHK1月15日)
自民党・公明党の幹事長が中国訪問 7年ぶりに中国共産党と与党交流へ 「日中与党交流協議会」に出席 | NHK | 日中関係
「【北京時事】自民党の森山裕、公明党の西田実仁両幹事長らは15日、中国・北京の人民大会堂で李強首相と会談した。石破茂首相から習近平国家主席に宛てた親書を手交。石破氏が早期訪中に意欲を示していることを踏まえ、李氏は「都合の良いときに訪問していただきたい」と歓迎する意向を表明した。要人を含む日中間の人的交流や経済交流の重要性も確認した」
(時事1月15日)
中国首相、石破氏訪中を歓迎=「都合良いときに」自公幹部へ伝達|ニフティニュース
中国に輸入規制撤廃要求 自民森山氏 「成果が必要」 李首相ときょう会談 | 沖縄タイムス+プラス
外務省は森山氏にナニを教えてやっているのでしょうか。
森山氏が会談をするだけではなく、一歩踏み込んで基調講演までしている中国共産党対外連絡部は中国共産党の対外工作機関ですよ。
ドイツの連邦憲法擁護庁によれば、対外連絡部とは、党中央委員会の直属機関として、外国の影響力のある人物を取り込み、中共に有利な発言や行動を促す役割で作られた機関で、外国において中国共産党の政治的目標に賛同する人的ネットワークの構築を目指しています。
こういう相手と協議会を開き、自民党と公明党の幹事長という政権与党のトップらが、「日中関係を進展させるには具体的な成果が求められる」と強調したわけです。
対外連絡部だけではなく、外交トップの王毅相手にも同じことを言っています。
「王毅外相は「両国は一衣帯水の近隣どうしであり、各分野で協力を強めていくべきだ。両国の与党は重い責任を共有して担っている」と述べました。
これに対し、森山氏は「去年11月の日中首脳会談で示された大きな方向性をもとに、課題と懸案を1つでも多く減らし、目に見える形で協力や連携を具体化し、日中関係が発展してよかったと両国の国民が実感できるよう、共に努力したい」と応じました。
また、西田氏は、政党間交流の「日中与党交流協議会」を、次回はことし秋に日本で開催することを明らかにしたうえで「関係改善の勢いを加速していくことが、私たちに課せられた大きな責任と使命だ」と述べました」
(NHK1月14日)
自民 森山幹事長と中国 王毅外相が会談 “目に見える形で協力や連携を” | NHK | 日中関係
公明党の西田氏がいう「今秋にこの日中与党協議会を日本で開きたい」というのは、おそらく公明党や自民党親中派が画策している習近平の訪日のことでしょう。
習が、まだ首席になる前の民主党政権時に訪日したときには、小澤氏が横車を押して天皇陛下と会見させましたが、これでまた日中蜜月を演出したいのでしょう。
中国との戦いを一番に掲げたトランプの就任式1週間前に、その中国共産党と協議会をやって「関係改善に具体的に進もう」と叫ぶのですから、もうトランプからすればケンカ売ってんのか、上等だという気分になるでしょうな。
そのうえこの森山御大は、こんな言わずもがなのことまで言ってしまっています。
「自民党の森山裕幹事長は8日、熊本市での自民県連会合で、国際情勢に関し「世界が内向きになりつつある。内向きのチャンピオンは、間もなく就任するトランプ次期米大統領だ。非常に方向性が気になる」と述べた。米国第一を掲げるトランプ氏の動向を注視する考えを示した。
同時に「世界の国々としっかりと協調し、わが国の発展を果たさなければならない」と語った」
(日経1月8日)
トランプ氏は「内向きのチャンピオン」 自民党・森山氏 - 日本経済新聞
米国大統領を「内向きのチャンピオン」と揶揄し、「世界の国々としっかり協調する」と言った直後にでかけたのが、中国共産党との協議会ですから、「誰と協調する」のかは一目瞭然です。
森山氏は、日本は中国とよろしくやっていく、「内向きのトランプ」を包囲していく、と大ぴらに宣言したことになります。
かといって、凡庸なる自民党領袖たちは米国と手切れになる気はいささかもないようで、就任式に絡めて訪米し、虫がいいことには日米首脳会談をしたいと言っています。
「石破茂首相は2月前半にワシントンを訪問し、1月20日に就任するトランプ次期米大統領と初の首脳会談を開く方向で最終調整する。日米同盟の重要性を新政権との間で確認する。経済や安全保障分野で協力の具体策を話し合う。
2月8、9日の週末や前後の日を使い訪米するのが有力。
(日経1月12日)
石破首相の訪米、2月前半で最終調整 トランプ氏と会談 - 日本経済新聞
へぇ、それでも会うんだぁ、鉄面皮なことよと妙に感心してしまいますが、ナニを話すの、ナニをしたいの、どうして今トランプと合わねばならないのと頭がクルクルしてしまいます。
「日米同盟の重要性の確認」なんて、毎回大統領が代わるごとにやってきていて、そのつど「尖閣は日米安保第5条の範囲内」というご託宣を頂戴して「外交成果」としています。
今やるなら、ぜひゲル首相の持論である「日米安保の双務的発展」をかますべきでしょう。
「米国が内向きチャンンピオンだ」などと泣き言を言っていないで、わが国は米国の世界戦略にの絶対的同志だということをじぶんの言葉で言ってきなさい。
そうすればトランプがゲル氏を見る目が、多少なりとも違ってくるはずです。
【 画像3/4枚 】岩屋外相が訪中し李強首相、王毅外相と相次ぎ会談 歩み寄りの機運:朝日新聞デジタル
とまれ、ゲル政権中枢の岩屋外相と自民党森山幹事長は、露骨な中国との無節操な融和に動いてしまいました。
岩屋氏が王剛と取り交わしたことにはこのようなものが含まれています。
「第2回日中ハイレベル人的・文化交流対話
(7) 日本側から、日中外務報道官協議の早期開催に期待を示すとともに、双方は、民間主催のメディア交流を再活性化させることを確認しました。
第2回日中ハイレベル人的・文化交流対話|外務省
ところが同じ7節の中国版にはこうあると山口敬之氏が指摘しています。
たぶんこちらがオリジナルで、これで合意してしまっているはずです。
下線部分がなぜか日本版には欠落しています。よほど日本人には秘密にしたかったのでしょう。
七是加强媒体、智库交流合作,在双边关系中发挥积极作用,着力改善民意和舆论环境。支持双方开展新媒体交流合作,鼓励两国正能量网络创作者相互交流。
メディアやシンクタンク間の交流と協力を強化し、二国間関係において積極的な役割を果たし、世論や国民感情の環境改善に努めることです。双方が新しいメディア交流と協力を展開することを支援し、両国のポジティブなエネルギーを持つネットワーク創作者が相互に交流することを奨励します
これは政府が中国に対して「世論や国民感情の環境改善に努める」、すなわち親中的な発言を強化するという意味にとれます。
このようなことが、言論の自由が確立したわが国でできるものかどうかかんがえなくてもわかるはずです。
それとも岩屋氏は、政府による中国礼賛の言論統制や検閲を肯定したいのでしょうか。
かつての日中国交回復時には、それに近いメディアの「空気」が存在しましたが、またあれを繰り返したいようです。
だからあえて日本版から削除したのでしょう。
それも時をわきまえずに、中国を主敵とするトランプ就任1週間前ですからケンカを売ったも同然です。
仮にご両人がそうおもわなかったら、逆にその鈍さに感心するばかりです。
こんなゲル氏の訪米の「地ならし」をしてしまうと、たぶんトランプは貿易や安全保障で高いハードルを与えて来ることでしょう。
トランプがやらなくてもイーロン・マスクがやります。
いったん敵認定されてしまえば、いくらと同盟国だからといっても情け容赦なく叩きまくります。
カナダのトルドーはトランプとの対談で絶望し辞任に追い込まれましたし、同じ北米のメキシコも対中戦略を大きく転換することを余儀なくされました。
これは北米自由貿易協定(NAFTA)を抜け穴にして、中国がメキシコやカナダからEVを米国へ入れようと画策しているからです。
パナマやグリーンランドで、非常識に見えるようなことを言っているのも一緒です。
ここが米国にとって安全保障上きわめて重要な地域だから、牽制しているのです。
英労働党政権やドイツ社民党政権も、イーロンマスクの標的になっています。
次に標的にされるのはわが国だと心することです。
その前兆は、別記事にする予定ですが、日本製鉄のUSスチール買収計画についても露になっています。
ここにきてバイデンもトランプも買収阻止を言い出し、とうとう買収で日鉄よりはるかに低い額しか提示できなかった米鉄鋼2位のクリーブランド・クリフスが割り込んできました。
このクリーブランドクリフスのゴンカルベスCEOは、言うに事欠いて「日本は中国より悪だ」「1945年以来、学んでいない」など頭のネジが飛んだような発言をしています。
これでは40年前の1980年代の日米貿易摩擦時代の蒸し返しで、たぶんゴンカルベスはトランプの意を汲んでしゃべっています。
この危機感もなく、こともあろうにトランプ会談の前に訪中して、中国共産党と握手してくるなんて、想像絶する凡庸さです。
なんか既視感があるなと思ったら、あ、そうそうムン・ジェインが似たことをしていましたっけね。
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