北朝鮮に対する米国内の二つの考え方

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今、北朝鮮情勢の判断をめぐって、微妙に保守論客の意見が別れつつあるのは、皆さまもお気づきかと思います。 

①すぐに軍事オプションが勃発するだろう派・・・上念司氏
②来春以降になるだろう派・・・末延吉正氏、長谷川幸洋氏、藤井厳喜氏、高橋洋一氏、山口敬之氏
 

上念さんは、やや過敏に米軍の、特に空母の動向に反応しすぎる傾向がありますので、失礼ながら割り引いて聞くべきでしょう。 

さて、私はといえば、申し訳ありませんが「わからない派」です。 

少なくとも、メディアが無責任に流しているような北朝鮮の先制攻撃はありえません。 

おそらく狙って来るとすれば、米国の地球半分の軍事行動の根拠地である横須賀軍港にたいする中距離弾道ミサイルによる核攻撃でしょうが、それをした瞬間、正恩はゲームオーバーです。 

これは米国の全面核報復の対象になることによって、本来の正恩の目的だったはずの「南北統一」の目標が消滅してしまうからです。 

そもそも、統一するもなにも北朝鮮という国が存続するかどうかさえわからなくなります。 

正恩くん、米国を甘くみないほうがよろしい。あの国は普段は口だけですが、ほんとうに殴られたらその十倍でなぐり返してくる国ですよ。
Photo_6ティラーソンとマティス

私がわからないと言ったのは、現在、米国内で二つの考え方が対立しているからです。その力関係次第なのです。
 

北朝鮮に対する対応の分裂のひとつは、私が「国務省派」と呼んでいる米朝協議派です。 

ティラーソン国務長官がその代表的な人物だと思われますが、米国は軍事的威嚇を自制して、軍事行動は極力避け米朝がテーブルを持つべきだという意見の人たちです。 

先日の記事で書いたバックチャンネルを、ほんとうの交渉の舞台に格上げしようという考えです。 

北朝鮮の核については、いきなり放棄しろから始めるとなんの協議もできないので、とまれ今は核実験や弾道ミサイル実験を凍結してくれれば応相談という立場です。 

この立場には、口にこそ出しませんが、北朝鮮の核を容認してもいいという含みがあります。 

これに対して、私が「NSC派」と呼んでいるマクマスター大統領補佐官やマシュー・ポッティンジャーNSCアジア担当上級部長などがいます。 

Photo_5マクマスター大統領補佐官

マクマスターは8月13日、ABCテレビのインタビューでこう述べています。

「北朝鮮は自国民に対し口にしがたいほど残虐で、近隣諸国にも脅威を与え続けているので、古典的な抑止論は通用しない。」

また この発言が米国内の安全保障専門家が相手国の国内政治は核抑止とは関係がないという批判にたいしてもこう答えています。 

9月18日、ニューヨーカー誌とのインタビューの発言です。

「ソ連より北朝鮮を抑止するほうが難しい。それは北朝鮮の言動は、米国を威嚇して同盟国・韓国を放棄させ、おそらく第二次朝鮮戦争への道を開く意図を示しているからだ。」

Photo_4ポッティンジャーNSCアジア担当上級部長

一方、ボッティンジャーはウォールストリートジャーナル紙の中国特派員だった時に、環境汚染を続ける工場に抗議する住民を取材して当局に逮捕されたという肝っ玉履歴を持った人物です。

http://www.news-postseven.com/archives/20170225_494740.html

提灯記事を書くのが北京特派員の仕事だと思っている、どこぞの国の大手紙は味噌汁で顔を洗いなさい。

ティラーソンやマティスが東アジアを熟知しているとは言い難いのに対して、ボッティンジャーは中国語にも堪能でアジアをよく知悉する人物です。知日派だとも言われています。 

ボッティンジャーは5月2日、笹川平和財団が米国でひらいた安全保障フォーラムではこう述べています。

「北朝鮮は数十年前から通常戦力で米軍の進攻を抑止できているので、この目的だけでは核開発を説明できない。
そして、北朝鮮にとって核兵器は在韓米軍撤退、米韓同盟解消、朝鮮半島の統一といった、他の目的のために米韓を脅迫する手段である。」

このように「NSC派」は、北朝鮮の目的を米国を核による威嚇ですくませて、韓国で熟しかけている親北派を使って統一を果たすことだと見抜いています。 

クリストファー・ヒル元東アジア・太平洋担当国務次官補は悪名高い、北朝鮮宥和派でしたが、昨今はこのようなことを言い出して驚かせています。 

6月20日のヒルの発言です。

「北朝鮮の狙いは、米国をパートナーの韓国から切り離し、金正恩の条件で朝鮮半島を統一できるようにすることだ。」

どうしたんだ、ヒルさん。蛭とまでいわれたあなたが、いきなりまともになるなよ(笑い)。

整理しておきましょう。 

まずは、北朝鮮の核開発の目的に関する「国務省派」の考えはこうです。 

①北朝鮮が在韓米軍撤退を求めるのは米軍の進攻を恐れているからであり、自衛的な性格だ。彼らの真の目的は体制護持である。
②したがって、ミサイル防衛を強化しながら、北朝鮮との具体的協議に臨み、体制護持をカードにして譲歩を引き出せばよい。
③米国は韓国から段階的に在韓米軍を撤退させていっても、朝鮮半島の安定は保たれるだろう。

一方、NSC派はこう考えています。 

①北朝鮮は金日成以来の南北統一イデオロギーを堅持している。
②その南北統一イデオロギーとは、「朝鮮民族は純血であるがゆえに高潔であり、したがって、親のようなひとりの指導者の下でなければ、悪に満ちた世界で生きていくことができない」というウルトラ・ナショナリズムと人種的優越主義である。
③したがって、米国が体制護持を提案しても、それを米国が北朝鮮の南北統一路線を容認したと解釈される可能性がある。
④その場合、朝鮮半島は極めて不安定になる。

どちらの判断が妥当なのかという判断はお任せします。

ただし、現在の米国政界では国務省派が圧倒的で、議会でも圧倒的です。

そしてトランプの国内基盤は不安定で、NSC派はいまだ少数です。 

ですから、米国は煮え切らないのです。

 

 

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スリーパー・セルはそこにいる

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ふゆみさんがおっしゃるように、スリーパー・セルの活動は当然あるでしょう。スリーパー・セルとは直訳すれば休眠細胞のことですが、テレビドラマにもなったみたいですね。 

豪邸に住みレクサスに乗ったセレブ夫婦が、実は秘密破壊工作員だったというお話です。 

Photo

 潜伏破壊工作員、あるいは潜伏テロリストといったところです。 

あたりまえですが国籍も持ち、いつもは表面上まったく一般市民と同じ暮らしをしているわけで、社会的地位もあったりします。 

日本人の私たちには、どこかお話の世界のように感じますが、実在します。

実際に旧ソ連はかつての冷戦期に、多くのスリーパー・セルを米国や欧州に埋め込んでいました。 

彼らはいわゆるスパイではありませんから、諜報活動にはタッチしませんので、FBIなどのスパイ・ハンターの眼にも止まりにくいというやっかいな存在です。 

その上に「セル」、つまり細胞と呼ばれるくらいに独立して潜伏しているために、他にどのような同類のスリーパー・セルがいるのか、当人たちにも知らされていないわけです。 

ですから仮にひとりが捕まっても、芋づる式に組織が壊滅することはありません。 

では彼らはいったい何のためにスリープしているのでしょうか。それは有事の際の破壊工作です。 

いっそうお話じみてくるので恐縮ですが、事実旧ソ連のスリーパー・セルの実態は一部が冷戦後に解明されていますが、彼らの任務は米国内の軍事基地、道路、通信、港湾、空港などの生活インフラの破壊、そしてエネルギー・インフラの破壊などであったとされています。 

彼らは、有事において本国からの暗号指令ひとつで、あらかじめ定められた目標を淡々と破壊に向かいます。 

ある会社経営者は冷蔵庫からC4爆薬を取り出し、ある芸能プロダクション社長は犬小屋の下の密封コンテナから銃器とRPG7を取り出します。 

そうですね、オーム真理教のシナリオを思い出して下さい。

彼らの台本によれば、麻原教祖がゴーサインを出せば、信徒は働いている豚骨ラーメン店の冷蔵庫からサリンを取り出し、倉庫から自動小銃を教徒のコマンドに配って大規模テロをする手はずだったのです。

スリーパー・セルもまた同様に、武器類をゴルフバッグに詰めて、レクサスに乗り定められた目標に向かうことでしょう。

冷戦期のスリーパー・セルの日本における実態は公表されていませんが、わが国にも埋め込まれていたと考えるのが妥当でしょう。 

なぜなら、わが国は米軍の世界最大の策源地だからです。米軍は日本を根拠地にして、地球の半分の軍事力を展開しています。

日本は歴史的に朝鮮半島との交流が長いために、国内にはスリーパー・セルを潜伏させる諸条件は充分すぎるほど揃っています。 

名指しは避けたいのですが、朝鮮総連はかつて拉致事件において「土台人」と呼ばれる彼らの組織リソースを提供したことが分かっています。
土台人 - Wikipedia
 

北朝鮮が日本国内にスリーパー・セルを埋め込もうと考えた場合、この総連系リソースを使わないと考える方が不自然です。 

ただし、これは裏をとりようがない憶測だとお断りしますし、在日朝鮮人・韓国人一般をそのような眼で見るべきではありません。 

では、仮に日本にもスリーパー・セルが潜伏しているとして、なにが攻撃目標になるでしょうか。 

かつての冷戦期の旧ソ連のそれを参考にすれば、横須賀基地の攪乱もありえないことはないでしょうが、それ以上に危険度が高いのはなんの防備もないソフトターゲットです。 

空港・鉄道・道路・橋などの交通インフラ、火力発電所や水力発電、石油精製基地などのエネルギーインフラ。 

通信施設、電磁記録保管所などの電力・通信インフラが、最大のターゲットになります。

渋谷、新宿などの繁華街のテロもありえるでしょう。 

新幹線は防ぎようがないので、トンネルに差しかかるあたりで爆破された場合、大惨事になります。 

そして書くことも憂鬱ですが、なによりここをターゲットにされるともっとも困る施設が原発です。

Photo_2原子力関連施設警戒隊の訓練風景 

本来、原発がソフトターゲット(警備の薄い施設)であっては困るのですが、わが国では残念ながら1900人といわれる原子力関連施設警戒隊が警備しているに留まっています。
原子力関連施設警戒隊 - Wikipedia 

これでもかつてよりましで、2002年のFIFAワールドカップ以前はただの民間ガードマンでした。 

この原子力関連警戒隊はH&K機関拳銃などで武装しています。

また、「原子力発電所は自衛隊によって重要防護施設に指定されており、有事が発生する危険性が高くなった場合は内閣総理大臣の命令により中央即応集団もしくは方面総監が指定した部隊が出動し警備に当たる。」(ウィキ) 

上の写真は2013年5月11日に行われた原発警備訓練時の写真だろうと思われますが、2013年5月12日付けの産経新聞によれば、このような想定でした。

原発の正門にテロリスト三人を乗せた乗用車が猛スピードで接近。完全武装で待ち構える銃器対策部隊に手榴弾を投げ込むなど強行突破を試みて銃撃戦になる。

応援の指示を受けた千葉県警のSATを乗せたヘリが到着。

隊員がファストロープでテロリストの背後に降下、拳銃を乱射し抵抗するテロリスト二人にMP-5短機関銃で応戦し、肩を撃ち抜き取り押さえる。残る一人は抵抗を諦めて両手を上げる。

Photo_3

失礼ながら、想定が甘い。甘すぎます。

日本の警備陣は、国内の過激派か、それに毛が生えたような拳銃や小型爆弾ていどで武装するテロリスト程度しか想定していないのです。

日本警察特有の発想ですが、これでは重武装したスリーパー・セル集団の攻撃、それに呼応した北朝鮮特殊部隊をまったくブロックできません。

上の写真で警察犬が登場するのも、あくまでも逮捕するという司法行為が大前提になっているからてす。

ですから、テロリストが手榴弾を投げると、「武器を捨てなさい」などとのどかなことを警告しています。

これらは諸外国ではありえない対応で、爆弾を投げる者は、原発に限らず即時射殺されても文句はいえません。

スリーパー・セル、あるいは北朝鮮特殊部隊なら、警備陣にRPGを数発発射し、機関拳銃で数百発の弾をばらまきます。

おそらくSATていどの警備部隊では、警告を発する余裕すら与えられずに、瞬時にして全滅し、原発は短時間で占拠されることになります。警備犬など出る幕すらありません。

占拠された後になってから、自衛隊に防衛出動が下命され、特戦群(特殊作戦群SFGp)が投入されるでしょうが、占拠されてからでは遅すぎるのです。

それ以降は想像にお任せします。全電源ブラックアウトにするかもしれないし、作業員を楯にして立て籠もって警察と自衛隊を引きつけておくかもしれません。

いずれにしても、わが国は米軍の後方支援や難民対策どころの騒ぎではなくなることだけは確かです。

相手方が「戦争」を仕掛けてきているのに、平時の警察活動の延長で対処しようとするのどかな国。それがわが国です。 

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北朝鮮の緊張緩和は「稲刈り戦闘」のためかもしれない

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七面鳥さんのおっしゃるとおり、どこかで記事にした記憶がありますが、5月と8月に軍事的緊張を作ってしまうと飢餓を作ってしまうのです。 

5月は田植え、8月稲刈り。北朝鮮は田植え戦闘・稲刈り戦闘(「戦闘」が好きだね)とか称して軍や都市労働者まで動員しますから、ここで軍事動員かけると米の生産がボロボロになります。 

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上の写真がその「田植え戦闘」なるものですが、労働集約型と呼ぶのも馬鹿馬鹿しい動員ぶりで、こんなに単位面積に人を投入すればかえって荒れるんじゃないかと心配になるくらいです。 

ミサイル作るなら、田植機やトラクターを作れよと言いたくなりますが、言っても無駄か。 

それはさておいても、下級兵士が飢餓線上にあるとの報道はかねてから伝えられています。

「金正日政権は、軍隊を最優先にし、軍隊を中心に体制運営をして行こうという「先軍政治」を掲げていた。金正恩氏を後継者に決めた新体制も、この「先軍路線」の継承をするとしているが、肝心の兵士たちが飢えに苦しんでいる。
軍隊に栄養失調が蔓延しているというのは20年以上も前から指摘されてきたことであり、その証言と報告は枚挙にいとまがない。北朝鮮では「軍に入隊することは飢えること」というのが社会常識になっている。(略)
人民軍兵士たちを撮った写真を見ていただきたい。窪んだ目は虚ろで、焦点も定まらないように見える。頬骨は浮き出て、細い首で何とか支えている頭は、彼らには重過ぎるように見える。軍服はぶかぶかだ。何人かはすっかり虚脱してしまい、うつむいたまま全く動かない者もいる」

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2011年7月平安北道 キム・ドンチョル撮影 アジアプレス・ネットワーク http://www.asiapress.org/apn/author-list/ishimaru-jiro/1_85/

今回逃げてきた38度線部隊の北の兵士も30㎝の寄生虫持ちで、極度の貧栄養だったようです。

「患者の腹腔内糞便および寄生虫による汚染が非常に激しい状態であり、寄生虫感染の場合、致命的な合併症を誘発する場合があるとイ教授は診断した。
イ教授は患者の病歴が分からない状態とし、栄養も不足し未知の感染が存在する可能性を排除できないと注視している。」(
WoW!Korea11月15日)https://news.nifty.com/article/world/korea/12211-201472/

38度線にはそれなりにエリート部隊をはりつけているはずで、相当に兵士の飢餓も進行しているとみたほうがいいようです。 

軍隊には優先して補給を与えているはずですが、核武装とミサイル部隊の一点豪華主義政策によって、一般のロジ自体が崩壊してしまっているようです。 

正恩が8月から9月にかけて民生重視路線に切り換えたのは、米国との絡みもさることながら、「稲刈り戦闘」をせねばならない、文字通りの背に腹はかえられない事情があったのかもしれません。

思えば、正恩は焦りすぎています。このようにわずか1年間で超大国との関係を極端に悪化させてしまえば、当然その副作用はきます。

れはまず国内経済の破綻、なかでも長年の宿痾であった農業生産の崩壊から開始されるでしょう。

当初はボディブローのように効き、やがて死病になるかもしれません。

私は安国寺恵瓊が本能寺の10年前に予言したという、この言葉を思い出してしまいました。

「候て後、高ころびにあおのけにころばれ候ずると見え申候」

米国は正恩のペースにはまって焦る必要はありません。

なぜ正恩が過激なのか、その理由をかんがえることです。

それは北朝鮮という失敗国家に余裕がないからです。

金がない、食料がない、そして石油もない。それゆえ、時間がない、体力がないのです。

だから1年間という短期で、「核保有国」を宣言せねばならないのです。

きっちりと同盟を固めて十重二十重の経済封鎖が完了すれば、自ずとかの国は核を抱えたまま枯れ死にするでしょう。

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北朝鮮の核施設破壊のためは地上部隊を投入するしかない

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もう少し北朝鮮情勢について書いていきます。 

日本ではえてして航空機や巡航ミサイルによる空爆で、決着がつくと思っている人が相当います。 

保守系論客でもいまだに数千発のミサイルが、瞬時にして北朝鮮核施設を破壊し去るだろうと言う人もいます。 

これが外科的精密攻撃(サージカル・ストライク)過信症候群と私が呼ぶものです。

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 この春あたりまで私もありえると思っていましたが、残念ですがいまや私は考えを変えました。 

米国は軍事圧力をかける場合、空母打撃群やB!Bを飛ばしたりするといった方法を好みますから、「そうか空爆で済むんだなぁ、日本への影響は最小に留まる」と日本人はぼんやりと考えてしまいそうになります。 

たぶんこのサージカルストライクを前面に出すことで、戦争の影響を軽く見せようという意識的な印象操作はあると思います。 

もちろん米軍はプロですから、こんな空爆で全部カタがつくなどとはまったく考えていません。 

いままで空爆だけで決着した戦争は皆無なのです。 

湾岸戦争、イラク戦争、ボスニア・ヘルツゴビナ紛争、アフガン、イラク、ことごとく地上部隊を派遣せねば終わらず、派遣すれば泥沼化するということの繰り返しを、米国は経験してきています。 

さてトランプのアジア歴訪と前後して、ペンタゴンは議会の軍事行動の選択肢についての質問趣意書に回答を送りました。

答えたのは、マティス国防長官に替わって部下のデユモント少将(統幕副議長)です。文書自体は機密指定ですが、フロリダ州の「タンパ・ベイ・タイムズ」とワシントンポストが報じています。

 「核兵器ならびに核設備の完全破壊には地上軍の投入が必要となる」

またワシントンポスト(11月4日)、”Securing North Korean nuclear sites would require a ground invasion, Pentagon says”(「北朝鮮の核施設を確保するには地上侵攻が必要だとペンタゴンは言う」という記事を流しています。

”The Pentagon report is clearly stating that attacking North Korea is not viable because of the entrenched and dispersed nature of their nuclear deterrent.
Read between the lines: "Not possible to neutralise the DPRK nuclear deterrent by air and missile strikes alone."
 

(仮訳)「ペンタゴン・レポートでは、核戦力が分散しているため、北朝鮮攻撃は実行可能ではないということが明らかになっている。
『北朝鮮の核抑止力を空爆とミサイルで無力化することは不可能だ』」

ここでペンタゴンは明解に空爆とミサイルでは、核施設を破壊できないと断言しています。 

では、どうするとペンタゴンは言っているのでしょうか?

”The only way to locate and secure all of North Korea’s nuclear weapons sites “with complete certainty” is through an invasion of ground forces, and in the event of conflict, Pyongyang could use biological and chemical weapons, the Pentagon told lawmakers in a new, blunt assessment of what war on the Korean Peninsula might look like.”

(仮訳)「北朝鮮のすべての核兵器の位置を『完全かつ確実』に把握して確保するための唯一の方法は、地上軍の侵攻であるが、ピョンヤンが侵攻部隊に対して生物化学兵器を使用することができることが、ペンタゴンの判断を遅らせていると議員に語った。」

これは軍事専門家が常識として経験してきたことを、改めて表明したものにすぎません。 

結論から言えば、米軍は北朝鮮の核施設を壊滅させるためには、大規模な地上兵力を北朝鮮領内に投入する必要があります。 Photo_3その理由は、北朝鮮の核施設は地下や山中に巧妙に隠蔽されているためです。 

その多くは衛星の偵察によって確認されていますが、把握されていない施設もあるでしょうから、それをまさに文字通りひとつひとつ潰していかねばなりません。 

この進攻部隊に対して、北朝鮮が生物化学兵器を使う可能性すらあるとペンタゴン・ペーパーは述べています。 

つまり、弾道ミサイルを発射前に潰すのは至難の業だという事実を覚えて下さい。

たとえば、湾岸戦争時の「スカッド狩り」が参考になるでしょう。 

当時米国は素早くイラク上空の航空優勢を確保し、延べ数千機の作戦機を惜しげもなく投入しました。 

米軍は空爆用の戦闘機を空中に待機させながら、対地用早期警戒管制機「E-8ジョイントスターズ」で地上をくまなく監視し、スカッドを搭載した移動式弾道ミサイル発射機(TEL)を発見次第に容赦なく空爆しました。 

また同時に英米軍は大量の特殊部隊を、イラク領内に潜入させています。

Photo_2スカッド・ハンターで投入されたデルタプォース 

にもかかわらず、イラクのミサイル発射を押さえきることはできなかったのです。 

結局、イスラエルに向けて発射されたスカッドは約40発、サウジアラビアやバーレーンなどに向けて撃たれたものまで含めると約90発が発射に成功しています。 

砂漠のように平坦な砂漠で監視しやすいイラクですら、この有様なのです。 

ましてや山岳地帯が多い北朝鮮の国土では、至難を極めることが容易に想像できます。

20061212_northkorea_2
次に見ておかねばならないことは、北朝鮮人民軍は自由主義社会の軍隊と根本的に違う性格を持っているということです。 

独裁国家の軍隊は、独裁者とその少数の側近のみが指揮権を握っている「独裁者の軍隊」なのです。 

部隊には政治委員がくまなく配属され、指揮官以上の権力を持っています。 

また部隊と部隊の横の繋がりは、独裁者へのクーデターを起こす可能性があるために厳しく禁じられています。

このような「独裁者の軍隊」は、指揮系統から分断されても活動を継続できます。 

ですから、米軍が最初に標的にするであろう指揮・通信司令部や指揮系統を破壊されても、与えられた任務を続行し続けることでしょう。 

通常の軍隊はここで現場部隊はどう活動すべきか、上級司令部に問い合わせるために混乱するでしょうが、こと北朝鮮人民軍はそのようなことはありません。 

黙々と、彼らは規定の作戦計画を実行するだけなのです。 

仮に初期に米軍が正恩の「斬首作戦」に成功し、それを世界に発表したとしても、現場部隊はそれを無視し、規定の作戦遂行に全力を尽くすでしょう。 

あるいは、私は人民軍現場部隊は、万が一正恩が殺された場合は、その報復プログラムを実施することを命じられているとさえ思っています。

このように北朝鮮軍は頭脳をつぶされても、手足だけが自律的に生き残る構造になっている異形の軍隊なのです。

そうである以上、軍事オプションは仮に現実に実行するとなると、米国が経験するもっとも困難、かつ長期に渡る戦争になると予想されます。 

この文脈で、中国が米国の空爆は容認するが、地上軍の侵攻は容認しないと条件をつけている意味をかんがえるべきなのです。

 


 

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米朝会談の可能性が浮上

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私は、北朝鮮の思惑と、米国国務省派の思惑が奇妙な一致をする可能性があると思っています。

米紙ワシントン・ポスト電子版(11月9日)が、このような記事を乗せていると共同が伝えています。

「国務省のジョセフ・ユン北朝鮮担当特別代表が、北朝鮮が核・ミサイルの実験を60日間凍結すれば、米朝対話に応じる考えを10月末に示していたと報じた。米政府当局者はティラーソン国務長官の考えと一致すると指摘している。
北朝鮮が最後に実験したのは9月15日。北海道上空を通過する弾道ミサイルを発射した。
ただ『60日』は北朝鮮側から凍結の意思表示を受けてから数え始めることにしており、北朝鮮側の連絡を待っているという。」(太字引用者)

ユン特別代表とは、下の写真で植村隆元記者のような風貌をした人物です。

Photo

彼は60日間正恩がおとなしくしていれば、交渉に乗ってやってもいいというわけです。弾道ミサイル発射や核実験の凍結が条件だということです。

ここでユン特別代表はあくまで核武装にまつわる「実験の凍結」だけを交渉のテーブル作りの条件にしていて、従来の米国の基本方針だったはずの核放棄は口にしていません。

そしてこれはユンの個人的な考えではなく、国務省上層部とティラーソンの考えと一致しているとWPは書いています。

それに呼応したかのように、この間、正恩は約2カ月間に渡って奇妙な沈黙を続けています。

口撃はあいかわらず、「史上最高の超強硬対応措置の断行を慎重に考慮する」とか、「日本列島を沈める」などと過激なマッドマンセオリーを貫いているようですが、行動は抑制されています。

平壌の街が平穏だという報道はしばしばされており、正恩はしばらく行っていなかった地方の農村に視察旅行をしているようです。

Photo_2http://app.yonhapnews.co.kr/yna/basic/articleJapan...

また民生品である、靴や化粧品工場の「指導」に出かけたとの動静もあります。 

もっとも緊張が高まったこの春にはまったく民生関係の視察をしていなかったので、意識的に農業や経済を重視している姿勢を見せようとしているように思えます。

またこの10月7日には、朝鮮労働党大会が開催されました。

「北朝鮮が7日の朝鮮労働党中央委員会総会で指導部の大幅な人事を断行したことについて、国連制裁など包囲網が狭まる中、外交・経済の立て直しを急ぐ狙いとの分析が韓国で出ている。」(読売10月12日)

意外なことに、ここで新たに政治局員に抜擢されたのは、李容浩外相や、経済の専門家とみられている太宗秀氏ら9人でした。

そもそももっとも緊張が高まったこの3月などは、正恩は「斬首」を恐れて米韓軍事演習時期の14日間は消息不明でした。

そして隠れ家から、弾道ミサイル実験を頻繁に命じるようになります。

そしてこの2カ月間、北朝鮮は軍事的挑発を手控えて、経済重視、民生重視の顔を見せています。

この現象をどのように捉えるべきでしょうか。

いくつか可能性が考えられます。

まず第1に、北朝鮮が核武装化に当たって、なんらかの技術的障害にぶつかったケースです。

具体的には、核実験場の崩落事故によって核実験が一定期間できなくなったとも考えられます。

あるいは再突入技術や、弾頭の小型化が未達成で、なんらかの技術的ネックを抱えているのかもしれません。

第2の可能性としては、逆に北朝鮮の言い分のように「核保有計画が完了した」場合です。

にわかには信じられませんが、彼らはこう述べています。

「われわれの国家核戦力の建設は既に、最終完成のための目標が全て達成された段階にある」(10月28日 「労働新聞」) 

そして第3に、経済制裁が効いているか、あるいは効きつつあるのかもしれません。

特に米国が近々に出すと言われているテロ支援国家指定は、北朝鮮の大きな財源であるブラックマネーまで含めて凍結される可能性があります。

これらいずれもありそうでいて、なさそうでもあります。決定的な情報が不足しているからです。

ですから、彼らがわずかに国際社会に出している細いアンテナである秘密交渉テーブルでの言動が重要なのです。

いずれにしても、この方針転換の意志が秘密交渉の場で、米国側に直接伝えられた可能性があります。

そして米国務省派は、それを慎重に見極めながら、まんざらでもないというところでしょうか。

ユン代表は、北朝鮮が「対話に乗るという意思表示をしてから60日間」という言い方をしているので、もし北朝鮮が公式に「対話」を宣言すれば、それを起点にして2カ月以内に米朝会談が開かれる可能性もでてきました。

とまれ、私たちは「軍事攻撃があるはずだ」、逆に「対話しかない」と予見を持って情勢をながめないようにしたほうがよさそうです。

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北朝鮮が秘密交渉テーブルで主張していることとは

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ティラーソンとトランプの間に対北政策の齟齬があるのかということを問われれば、私は微妙ですが「ある」と考えています。 

問題となったのは、ティラーソンの8月7日の発言です。

「米国務長官は7日、北朝鮮が一連のミサイル発射実験を中止すれば米国は北朝鮮と話し合いをする用意があると述べ、対話のドアは開かれているとの姿勢を示した。 」(ロイター8月7日)

これは国連の8月5日の制裁決議を踏まえてのものです。

「アメリカ政府は北朝鮮の政権交代を目指さず、政権崩壊も求めない。朝鮮半島再統一の加速は求めず、38度線の北に米軍を派遣する口実も求めていない」と述べた上で、「アメリカが対話を望んでいるということを、北朝鮮がいつか理解することを望む」(ニューズウィーク日本版8月4日)

いままで具体的に「対話の条件」を言ってこなかったために、驚きをもってうけとられ、米国有力メディアは一斉に、「アメリカが対話のドアを開けた」との見方を伝えました。 

Photo_2
これに対しての北朝鮮の反応ですが、直接の言明はないものの、まぁ、想定内です。

「これについて北朝鮮からの直接的な反応はないものの、米国が攻撃を仕掛ければ、北朝鮮は米国を「ひどい目に遭わせる」と表明。北朝鮮は、米国が北朝鮮への敵対的な政策を維持する限り、核開発プログラムを交渉のテーブルに乗せることはないとのこれまでの姿勢を改めて示した。ただどのような行動をとるのか具体的には言及しなかった。」(同上)

「ニューズウィーク日本版」(8月4日)は、遠藤誉氏の論説を掲載しています。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/08/post-8131.php 

ここで注目されるのは、遠藤氏が米朝が「2トラック外交」をしているということを明らかにしたことです。 

遠藤氏のソースは2016年8月28日、ワシントンポストは「Inside the secret U.S.-North Korea 'Track 2' diplomacy(米朝秘密トラック2外交)」です。 

この記事でワシントンポストは、水面下において米朝が頻繁に接触している事実を暴露しました。 

ただしお含みおき願いたいのは、このWPの記事が2016年月というオバマ政権末期に書かれたものだということです。 

おそらく現在でも国務省が継続しているでしょうが、トランプがこれに重きを置いているのかははなはだ疑わしいと思えることです。

それはさておき、トランプ就任は2017年1月ですから、既に彼が就任する以前から国務省サイドではこのような「2トラック外交」をしていたことになります。 

ではその内容ですが、このようなものであったと、遠藤氏は述べています。 

「ワシントンポストの情報によれば、2011年に金正恩政権が誕生して以来、平壌(ピョンヤン)(=北朝鮮)は一連の「トラック2外交」を通してワシントンと連携を保ち続けているとのこと。
「トラック2外交」であるにもかかわらず、北朝鮮は常にハイレベルの外交官をこういった会議に派遣してきた。
アメリカ側の参加者はすべて元政府高官か朝鮮半島問題や核問題の専門家たち。その意味では北朝鮮の方が力を入れているということができる。
会談場所は主としてベルリンかシンガポールで、北京ということもあった。」

少し説明を付け加えれば、「トラック2外交」とは、外見上は緊張関係のある両国関係を打開するために、正面ドア以外に、もう一つの秘密のドアを作っておく外交手法です。 

俗にいう「水面下の交渉」ですが、正面ドア(トラック1外交・Track 1 Diplomacy)が、国務省の外交官や政治家によることに対して、秘密のドア(トラック2外交・Track 2 Diplomacy)は引退した政治家、軍人、学者などが私的な肩書で接触することを指します。 

北朝鮮はこの「秘密のドア」がことのほか好きなようで、米国が引退した政治家や学者を派遣したのに対して、「北朝鮮は常にハイレベルの外交官をこういった会議に派遣してきた」(前掲)そうです。 

このハイレベルの高官とは、北朝鮮外務省の北米副局長だった崔善姫(チェ・ソンヒ)などであると推測されます。 

Photo_3崔善姫北米副局長

ちなみに神保謙氏によれば、彼ら北朝鮮の外交関係者の多くは米国留学組であり、英語が堪能なことはむろんで、物腰も大変に洗練されおり、米国外交にも精通しているそうです。
 

「エリンギ政権」だなどと侮る人がいますが、こういうバックドア・トラックでは微妙な交渉も継続できるのが北朝鮮のもうひとつの顔なのです。 

興味深いのはこの部分です。

「米韓研究所の核問題研究家であるJoel Wit(ジョエル・ウィット)氏は「北朝鮮は主に停戦協定を平和条約に持っていくことに強い関心を持っている。彼らは核兵器計画を、平和条約を交渉する中で検討することを願っている」と言う。
2016年2月にベルリンで開催された「トラック2外交」に参加し、北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)氏(同年5月から外相)と話し合ったウィット氏は、「ピョンヤンは対話を受け入れるシグナルを出している」と述べている。」(前掲 太字引用者)

また具体的に核について、北朝鮮はこう述べています。

「2016年6月には北京で北東アジア協力対話に関する米朝の非公開会議があり、北朝鮮の代表として出席した北朝鮮外務省の北米副局長だった崔善姫(チェ・ソンヒ)氏(2017年から局長)は「ピョンヤンは現有の核資産を放棄することはないが、しかし今後継続して核装備を拡充していくことに関しては話し合いの余地がある」と述べている。」(前掲)

つまり、北朝鮮は現行の朝鮮戦争の停戦協定をさらに一歩進めて、正式な平和条約に発展させる協議を行い、その場で核についても「対話」しようじゃないか、ということのようです。 

この「平和条約」は、日本でリベラル人士が手放しで喜びそうな表現ですが、隠された意味は二つあります。 

ひとつは、はっきりと北朝鮮は秘密チャンネルにおいても「核を手放す気はないが、今後核装備の充実は考慮してもいい」という言い方をしていることです。 

米国に届くICBM開発は寸止めしてもいいが、開発済の中距離弾道ミサイルは保持し続けるということです。 

わが国はその射程にすっぽり入っていますから、今後北朝鮮の核の脅威の傘の下で永久に暮らし続けよ、という意味となります。 

逆に言えば、米国の核の傘はこれを防ぎ得ないほど無力であったということの告白ともなりますから、日米同盟は分断されることになります。 

第2に、米韓軍事同盟を根拠とする在韓米軍は、北朝鮮側から停戦協定違反の疑義をもたれていることです。 ※追記で「誰から疑義をもたれているのか」の主語を挿入しました。

北朝鮮は、中国と安保条約を結んでいますが、中国軍を駐留させてはいません。 

これを根拠として、北朝鮮は金日成時代から一貫して、「朝鮮半島からの一切の外国軍隊の撤退」を主張してきました。

したがって北朝鮮の思惑どおり「平和条約」を締結すれば、在韓米軍は撤退せざるをえないことになります。

この秘密チャンネルの北朝鮮のオファーを米国が呑むと、スーザン・ライスの言ったとおりの「核凍結」という美名の下で、現況の核保有を認めた形で状況を固定化することにつながっていきます。

このふたつの状況が東アジアに現出するなら、北朝鮮は東アジア全域を射程にした核ミサイルを保有しつづけたままで、日米同盟は分断されて弱体化し、在韓米軍はグアムの線まで撤退することになります。

韓国はこのような状況の中で、ムン主導で高麗連邦構想を現実のものとしていくでしょう。

端的にそれは、「核を持った赤い朝鮮半島」の出現です。 

私はティラーソンが、この伝統的な国務省の「戦略的忍耐」外交に回帰する傾向があると感じています。

トランプはあくまでも「核放棄こそが唯一の交渉の条件」としていますから、ティラーソンの解任騒動も考え合わせると、微妙に両者の考えはズレ始めていることは確かなのかもしれません。

 

 

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日曜写真館 花よりひょうたん

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いつも花ばかりなので、たまにはカボチャなどとおもいましたが、ヒョウタンでした(すいません)。

巨大ピーナッツに見えるのはひょうたん。ズッキーニはカボチャの仲間です。

今日はひさしぶりの日曜日。北の核など忘れて、まったりと司馬遼太郎漬けになるつもりです。

司馬ワールドから帰ってくると、トランプも安倍も習やムンすら歴史上の人物に見えてくるから不思議ですね。

あ、そうそう今日は九州場所の初日です。楽しくつらい15日間の始まり。

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習が仕組んだ「乾隆帝コード」

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中国というのは面白いですなぁ。 

仕掛けをいろいろと仕組んで、大舞台を楽しませていただけます。もちろん、トランプ訪中のことです。 

悪く言えば陰湿、よく言ってあげればメタファー(暗喩)ですから、ほとんど報じられないままです。 

今回、習が仕組んだのは「乾隆帝コード」です。

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まず学習が初めにトランプを連れていったのが紫禁城です。上の写真は、皇帝が臣下を侍らせた太和殿前の広場で撮影されています。 

下の映画『ラストエンペラー』にも登場しましたので、ご記憶の方も多いでしょう。 

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この太和殿こそ、世界の中心を意味する「中華」の、そのまた中華。中国皇帝が、世界の真ん中で権力を叫んだ場所です。 

習はここを貸し切りました。こんなまねが今の中国で出来るのは、彼しかいないでしょう。

最初のお茶は宝蘊楼でした。ここは皇帝の宝物殿です。

午後5時30分からは、紫禁城内の王室公演施設である暢音閣で京劇公演を観覧。ここも皇帝専用の劇場でした。

そこでやった出し物は、毛沢東主義者の習なら『革命的京劇・白毛女』でもやるかとおもいきや、唐の玄宗と楊貴妃の悲恋『貴妃吹奏』だったようです。

ついで晩餐会は建福宮で行われました。ここは清の前世紀の皇帝である乾隆帝が鎮座していた王宮です。

というわけで、習のおもてなしはコテコテの皇帝尽くしですが、この紫禁城で最長の支配者だったのが乾隆帝でした。

乾隆帝は在位と退位した後の太上皇帝だった時期を合わせると、実に64年間に渡って、中華帝国の主人でしたが、これは中国皇帝として最長の支配期間となります。

その間、10数回の遠征に成功し、最大の版図を築き上げました。

さて、習が自分を何になぞらえているのか見えてきましたね。

いうまでもありません。中国皇帝、それも乾隆帝です。

ところで、この紫禁城に招かれた外国首脳は、中華人民共和国建国以来最初です。

これが「乾隆帝コード」(暗号)です。中国の隠された意志だとお考えくださってもいいでしょう。

ところでかつて習は、前にも一度米国にこの皇帝コードをしかけたことかあります。

それは2014年3月のことです。

この時、ミシェル・オバマは娘を連れて中国に訪問しました。もちろん中国の招きがあったことはいうまでもありません。それが上の写真です。

当時、オバマは核セキュリティ・サミットで、習になんとかプーチン批判に加わってくれることを懇願していました。

習はムニャムニャといいながらこう誘います。

「あ、そうそう大統領夫人は私が訪米した時にいらっしゃらなかったですね。どうですか、娘さんと一緒に中国においでになりませんか」

もちろん憶測ですが、これに似たことを言われたのは確かでしょう。

さて、これはどのような「皇帝コード」でしょうか。

中国の外交当局者は苦笑いしながら、こう言ったそうです。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/post-6fdb.html

「パンダ外交というより、古代中国で頻発していた『人質外交』のように受けとめている。春秋戦国時代の中国においては、王や諸侯が隣国に自らの子供を預けることが行われた。『もしわが国が裏切ったら自分の子供を殺しても構わない』というわけだ。
今回、オバマ大統領は中国に対して、まさに『人質外交』のカードを切ってきた。これはオバマ大統領からの『中国との友好関係構築は本気だ』という強いメッセージと受けとめた。」(近藤大介氏による)

習は今回のトランプの紫禁城訪問に、二つの「皇帝コード」を仕込みました。

ひとつは、米国「皇帝」ですら自分の徳を慕ってやってくる。

今ひとつは、自分は乾隆帝のように死ぬまで「赤い皇帝」として中国を支配する気だ。

ちなみに、米中首脳会談自体は中身が乏しかったようですが、この場で習が言ったのはまたぞろこのようなことのようです。

「太平洋には中国と米国を受け入れる十分な空間がある」。
http://www.sankei.com/world/news/171110/wor1711100007-n1.html 

これはかつて大航海時代のスペインとポルトガルよろしく、太平洋を二分割しようという意味です。

もろちろんこれに乗ると、南シナ海、東シナ海はおろか、ハワイ近海まで中国の内海となります。

つまりは、紫禁城で飯を食わせて、世界を二分しようぜ、というわけです。気宇壮大というか、なんともかとも。

今の情勢で、北朝鮮に眼を奪われるのも致し方ありませんが、中国が北朝鮮に具体的に介入するということの裏には必ず、朝鮮半島を自国の支配下におこうとする意志があることをお忘れなく。

なにせ、米国大統領に「乾隆帝コード」を仕掛ける国ですからね。

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自ら詰んでしまったムン・ジェイン

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朝鮮日報は韓国新聞界で最大部数を誇る新聞ですが、11月6日付け社説で、こんな嘆き節を漏らしています。http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/11/06/2017110600955.html

「トランプ大統領が韓国にやって来る7日からの2日間には100件以上に上る集会の届けが行われているが、そのほとんどがトランプ大統領の来韓に反対する反米的なものばかりだ。
米国なしに朝鮮人民軍の動向さえ把握できず、また長射程砲による攻撃もまともに防げない国で、これほど見境のない動きが国民の間から出てきているのだ。
これはこの国の国民が勇敢だからなのか、あるいは愚かなだけなのか、もはや分からなくなってしまった。」
 

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上の写真はその反米デモの折りのものですが、星条旗を燃やしています。首脳が訪問する時に、最高にフレンドリーな接遇ですな。 

同盟国の国旗をやたらに燃やすと、同盟解消の理由にされかねませんよ。 

さて朝鮮日報はこの社説で、韓国特有の「なんでも日本と比較しないと気が済まない」癖を全開にしています。 

トランプ訪日が見せつけた、日米関係がかつてない緊密な状態にあることが朝鮮日報には、かなりショックだったと見えて、社説はこう繋げています。

「今、世界で米国の力を最もうまく活用すべき国は日本ではなく韓国だ。
まず何よりも北朝鮮の核問題を実際に解決できる国は米国以外にない。また東アジアで厳しい緊張状態が続く中、韓国を覇権欲なしに守ってくれる国も米国だけだ。ところが日米両国は米英関係を思わせるほど最高の親密さをアピールしているのに対し、韓米関係は非常に形式的で儀礼的なものへと変わりつつある。」

「米国の力をもっともうまく利用すべきは国は、日本でなく韓国だ」ですか。なにをいまさらですが、気がついただけでもえらい。

韓国は既に米国外交にとって不良債権なのですから。 

ムン・ジェインには外交方針らしいものはありません。口では「バランサー外交」と言っているようですが、それは下の写真のような状態を示しているだけです。 

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まことに米中韓の関係が、如実に現れてしまった興味深いワンショットです。

これは今年のG20会合のコンサート会場で撮られたものですが、トランプはムンから握手を求められてもシカトしています。

すり寄るムンに露骨に不快感を現すトランプ、それを冷やかな眼で見る習、まさに現在の韓国を象徴するような画像です。 

実はこの時期、ムンはパク・クネ時代に冷えきった中国とよりを戻そうと涙ぐましい奮闘努力をしていました。 

しこった原因は、例の戦域高高度防衛ミサイル(THAAD)導入を巡る中国の激怒です。

韓国国内でも、THAADの導入を巡って、地元の星州で反対運動が起きていました。 

反対派の言い分は、BBCJapan(2017年11月8日)でご覧いただけます。
http://www.bbc.com/japanese/video-41896434  

この星州での反対派の運動は猛烈に既視感のあるもので、2枚同時に並べます。どちらがどちらか、一瞬間違うほどです。

集会のスタイルだけではなく、言い分までそっくりです。

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反対派の言い分は、韓国内で「従北派」と呼ばれる親北朝鮮派の言い分とまったく一緒で、「米国の介入反対」というものです。

つまりは、在韓米軍撤退、米韓同盟廃棄ということで、これを実行すればどの国がもっとも喜ぶか考えなくとも分かりますね。

この従北派の主張に媚びを売ったムン政権に対して、米国は突き放しました。

「どうぞご随に。在韓米軍は規模縮小して、有事統制権などはお返しします。次は撤兵ですかな」ということをほのめかしたたために、今度はムンは慌てて引き止めに入るという蛇行運転ぶりでした。

結局、右往左往したあげく、本来4基でチームを作らねばならないTHAADがその半分に減らされたままという中途半端な状況で頓挫したままです。

この完全撤去ではなく、半分にするというあたりが、いかにもですね。米国にも媚びを売り、中国にも媚びを売る忙しさ。自らが招いたこととはいえ、ご苦労さん。

そしてトランプ訪韓前に、いわずもがなのことまでムンは口走っていました。

日本との慰安婦問題を楯にして、「日韓は軍事同盟ではない」という発言です。

これは後述しますが、ムンが中国との関係修復の3条件のひとつとして呑んだもののひとつです。

「韓国の聯合ニュースは5日、9月の米ニューヨークでの日米韓首脳会談の際、韓国の文在寅大統領が「米国と韓国は(軍事)同盟を結んでいるが、日本は同盟相手ではない」と発言したと報じた。韓国大統領府高官の話として伝えた。トランプ米大統領は「理解する」と応じたという。安倍晋三首相の反応は報じていない。」(産経11月6日)
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/171106/soc1711060020-n1.html

このトランプの「理解する」の意味を誤解しないで下さい。

れはムンがそういう考えだということを「理解した」という意味で、よく外交上使われる表現です。

もちろん「それでOK」という意味ではありません。

そもそもこの日韓慰安婦合意は、北朝鮮との緊張が高まる中、三国の連携に危機感をもった米国が仲介して結ばせたものです。

ご存じのとおり、韓国はこの合意をまったく無視していますが、今度もまた慰安婦問題を理由にして米韓日の結束もないと言ってしまうあたり、さすがです。

もちろん今回の晩餐会のサプライズゲストの元慰安婦にハグさせたのは、この流れで見なければわかりません。

下の写真を見ると、ムンとイ・ヨンスはあらかじめハグのシナリオがあったようですね。

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「安倍に一泡吹かせる」(中央日報)ということより、なぜ韓国は米韓日の結束ができないか、それは全部日本が悪いからだと、米国に向けてアピールしているのです。

毎度のことですが、韓国は内政の混乱の責任逃れを、無関係な日本の責任論に転化し、被害者ヅラして乗り切ろうとします。

その結果、状況が好転するどころか、いっそう状況をこじらせる悪循環に陥ります。

ムンは自称「バランサー外交」を唱えていますが、それを発案したのは盧武鉉時代の秘書室長だったムンでした。

ムンはこんなことを述べています。

「米国との関係を重視しながら中国との関係も一層堅固にするバランスのよい外交を目指したい」

東アジア共同体という意味不明の構想をぶちあげ、普天間移設問題をちゃぶ台返しをして日米同盟に打撃を与えた某国首相によく似ています。

そういえば、ムンはハト氏にそっくりですな。

この男はそれを実践し、中国の要求を丸呑みして関係修復にこぎつけるという「成果」を上げます。

中韓合意は以下です。

①米国の弾道ミサイル防衛システムに参加しない。
②日米韓の安全保障協力を軍事同盟に発展させない。
③THAADの追加配備はしない。

この内容をもう一歩進めると、有事統制権の韓国軍への移譲、在韓米軍の撤去という中国の大目標に到達する一歩手前です。

つまりは韓国はもうアッチの陣営の国なのね、という理解でいいのかと言えばそうでもないところが、さすがムン、やっぱりムンです。

ムンはトランプ訪韓を控えて、今度は逆に舵を切って防衛力の強化に向けてミサイル弾頭重量制限を解除することで合意してしまいました。

「米韓の「ミサイル指針」に基づき、韓国は射程800キロメートル、弾頭重量500キログラムまでのミサイルしか保有できない。ただ、北朝鮮の脅威増大に対応し、弾頭重量の制限を外した。両国首脳は9月にニューヨークで開く国連総会に合わせて会談することでも合意した。」(日経2017年9月5日)https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM04HBI_U7A900C1FF1000/

その上、原子力潜水艦と先端偵察機能の獲得・開発に向けた協議も直ちに開始するそうで、米国が売ってくれるかどうかは分かりませんが、今度は米国の力と軍事技術を借りたいということのようです。

あ~、頭がクルクルする。まさに東アジアの風見鶏。 

米韓会談でも、建前としてはムンは制裁強化といっていますが、ちょっと前に800万ドルの北朝鮮への人道援助を言ったばかりで、マティスが怒っていました。

今度は、トランプが米韓会議で、「必要であれば米国と同盟国のために比類なき戦力を投入する。北の独裁者に対してメッセージを伝える」と言ったのに対して、ムンは「いかなる場合でも朝鮮半島での武力行使は許されない。韓国の事前の了承を得ることなく軍事行動を起こしてはならない」と述べたそうです。

先ほどの中韓合意を合わせてみると、ムンが何を考えているのかよく分かるでしょう。

いつまで通用しますことやら。 

冒頭の朝鮮日報社説は、このようにムン政権に警告を鳴らしていますが、「何故こうなったのか」って言われても、そりゃあなた方韓国メディアが太鼓を叩いてパククネを引きずり降ろしたからでしょうって。

「このままだとトランプ大統領は北朝鮮問題で何か行動するときはまず安倍首相と相談するようになり、韓国とは完全に順序が入れ替わってしまうだろう。
これは安倍首相の一言が米国の対北朝鮮政策に大きな影響を及ぼすことを意味する。なに故このような状況になってしまったのか到底納得できない。」

いずれにしても、もう手遅れです。

 

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呪詛の「燃料」を欲しがる運動家たちに利用されたイ・ヨンス

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元慰安婦証言の多くに言えることですが、最初の証言が、数年後には変化し、さらに変化していくごとに過激になっていきます。

証言のゆらぎそのものは半世紀以上前のことでもあり、老齢もありますからありえることですが、イ・ヨンスの場合、もっとも重要な初発の部分であるはずの「なぜ慰安婦になったのか」という出発点が変化しているのです。

李容洙 - Wikipedia 

なぜここが重要かといえば、この慰安婦問題においては、「日本軍が朝鮮女性を狩り集めて慰安婦にした」という、国家、あるいは軍の直接関与が指摘されたからです。

もう少しこまかく言えば、当時日本の統治下にあった朝鮮で、日本が軍を使って戦時であっても平時の市民生活を営む朝鮮女性を拉致して慰み物にし続けたということです。

主語はあくまでも「日本」、ないしは「日本軍」が、です。

これがそこらの民間の売春斡旋業者の仕業なら、人間の住むところ古今東西ありとあらゆる場所にある、ありふれた話だったわけです。

これだけなら風俗斡旋のオジさんにダマされた気の毒な女性、以上でも以下でもありませんでした。

ところが、日本軍、つまりは日本政府という一国の政府が、当時「国内」だった朝鮮で婦女子に銃剣を突きつけてさらったとなると大違いです。

国内で軍を使って、兵隊用売春婦を徴用する国ということになります。

常識的に考えて、自分の国で兵隊用娼婦を銃剣をつきつけてまで募る国など考えられもしませんが、それがあったとしたのが、朝日新聞でした。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-319f.html

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朝日新聞は学徒動員の勤労挺身隊を、軍用慰安婦だと報道しました。

しかも、朝日は日本軍が暴力的に村に押し入って、木刀で女性を叩きながら連れ去ったと記事にしました。

ソースは後に朝日自身が詐話師と認めた吉田清治という男ですが、朝日は無検証でこの男の「証言」を大々的に広めたわけです。

もちろん根も葉もないでたらめで、学徒の勤労動員と、慰安婦はまったく別な存在で、意図的に混同したのです。

これが有名な慰安婦誤報です。いや、誤報というより捏造という名に値します。後に朝日は社長の謝罪にまで追い込まれます。

しかし、それに至る20数年間、日本は「軍を使って慰安婦を狩り集めた暴虐非道な国」という汚名をかぶることになります。

この濡れ衣はいまだ晴らされず、今に至っています。

これについては多くの記事を書いていますので、お暇でしたらお読み下さい。 
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-0aec.html

さて、イ・ヨンスの60代の証言です。長いですが、重要なので引用します。これがオリジナル証言です。

「1944年夏のある日、酒屋をやっていた友達(キムプンスン)のお母さんが「今のような苦しい生活をしている必要はないじゃないか。私の言うところに行けばご飯がたくさん食べられ、豊かな生活ができる」と言いました。
ですが私は「嫌だ」と言って飛び出て来ました。それから何日かたったある日の明け方、キムプンスンが私の家の窓をたたきながら「そうっと出ておいで」と小声で言いました。私は足音をしのばせてそろそろとプンスンが言う通りに出て行きました。母にも何も言わないで、そのままプンスンの後について行きました。(略)
行ってみると川のほとりで見かけた日本人の男の人が立っていました。その男の人は四十歳ちょっと前ぐらいに見えました。国民服に戦闘帽をかぶっていました。その人は私に包みを渡しながら、中にワンピースと革靴が入っていると言いました。(略)
それをもらって、幼心にどんなに嬉しかったかわかりません。もう他のことは考えもしないで即座について行くことにしました。大邱から私たちを連れて来た男が慰安所の経営者でした。」

この最初の証言には、慰安所に連れていった男が「慰安所を経営している男」だと書いてあります。 

軍や兵隊などどこにも登場しません。

イ・ヨンスは、「国民服に戦闘帽の男」から、「もっと豊かになれる、綺麗な服や靴が貰える」と言われて「もう他のことを考えないで即座について行ってしまった」のです。 

気の毒としかいいようがありませんが、イ・ヨンスは、このような若年の女性を売春業に誘惑する悪質売春業者に騙されて家出したのです。 

しかもこの初めの証言では、挺身隊対策協議会(挺対協)に対して行われたもので、日本は関与していませんので、オリジナル証言といってもいいでしょう。 

すくなくとも、イ・ヨンスが運動に関わる以前には、詐欺にあって売春業になったのだと言っていたことを記憶に留めて下さい。

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これが2000年代に入ると、彼女の立場が変化するに従って、証言も大きく変化します。

では、どのようにイ・ヨンスは変化したのでしょうか? 

おそらく、60歳代(1900年代)までのイ・ヨンスは、自身が述べているように「顔を上げて歩けない。誰にも話せなかった」境遇で生きて来たのだと想像されます。

経済的にも、多くの元慰安婦とおなじように困窮していたと想像されます。

なぜなら富裕層になっていたなら、自身の過去は封印するからです。

ところが、「従軍慰安婦」運動によって、いきなり彼女は運動界の英雄に祭り上げられます。

「強制連行の生き証人」「日帝暴虐の語り部」という新しいポジションが彼女に与えられたのです。

しかも70歳代になってからです。以後、この「救済」にイ・ヨンスは忠実に従うことになります。

そこでは彼女は今までのように、「顔を上げて歩けなかった」どころか、多くの聴衆の前で悲劇のヒロインとしてふるまうことが出来るようになります。

そして、日本政府を糾弾してこのように叫びます。

「日本国の総理が私の前にひざまずいて公式謝罪し、賠償しなければならないし、そうすることが日本の子孫たちが平和に住めるようになる道だ。」

また、自分の証言に異論を唱える日本人に対してはこう言っています。

「犬同然なやつらよ、私は朝鮮の娘だ。お前らが踏み付けてからもお詫びしない理由は何か」「慰安婦を名乗る女性が死ぬことだけを待つ汚い人間たちの前で、私は絶対死なないでしょう。200年生きて、彼らの末路を私が見るつもりです。」
(「日本よ聞きなさい。強制慰安婦のお婆ちゃんの叫び」)

日韓合意以後も、さらにハイテンションでこう叫んでいます。

「慰安婦像を東京のど真ん中にも建て、その前を行き交う日本人が申し訳なかったと頭を下げるようにする。」

韓国人特有の火のような激しい言葉遣いは差し引くとしても、われわれ日本人には憎悪の火炎放射器で焼かれたような気分になります。

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このような発言を繰り返しながら、イ・ヨンスは「従軍慰安婦」運動の中心的運動家として韓国だけに止まらず、日本にも運動団体の招きでたびたび訪れ、米国にも訴えに出かけるようになります。 

そこでの証言は当初の、「詐欺に合って家出した」という部分が消え、日本軍による直接の強制連行が登場するようになります。 

また、レイプなどはあたりまえ、殴る蹴る、丸太で殴打する、メッタ切り、電気ショック、それによる流産などという悪夢のような血なまぐさい凄惨な描写が加わります。 

証言を拾っていきます。ほぼ似たようなものですから斜め読みしてくだすってかまいませんが、年齢の部分にご注意ください。

14、15、16と三種類あります。

・2002年6月26日、共産党機関紙「しんぶん赤旗」の証言
14歳で銃剣をつき付けられて連れてこられた」「拒むと殴られ、電気による拷問を受けて死にかけた」
 

・2004年12月4日、”12・4全国同開催「消せない記憶”集会での証言
「1944年、16歳の時に「軍服みたいな服を着た男」に連行され、台湾へ。移動中の船の中で、日本の兵隊たちに繰り返し強姦される。台湾では、日本軍「慰安婦」としての生活を3年間強制された。「慰安所」では1日に何人もの兵士の相手をさせられ、抵抗すると電線のようなもので電流を流されたり、丸太で叩かれたりの暴行を受けた。」
 

・2006年10月13日、”上田知事の「従軍慰安婦」否定発言を問う県民連絡会”集会後の記者会見での証言
15歳で韓国・大邱の家から軍人に拉致され、台湾まで連れ去られ、敗戦で解放されるまでの3年間も慰安婦をさせられた。」
 

・2007年2月23日日朝協会主催の「イ・ヨンスさんのお話を聞く会」の証言
「15歳のとき、小銃で脅され、大連から、台湾に連行され新竹海軍慰安所で特攻隊員の慰安婦とされた。」
 

・2007年3月1日、上田清司埼玉県知事と面談後の記者会見での証言
16歳のとき、台湾で特高に口を塞がれて連れて行かれた。」
 

・2007年4月28日、ハーバード大学で行った講演での証言
「16歳の時に強制連行され、2年間日本兵の慰安婦をさせられた」「日本兵に足をメッタ切りにされ、電気による拷問を受けた。」

以下この調子でほぼ毎年のように運動団体の招きで日本を訪れ、「強制連行の生き証人」として訴えるようになります。 

イ・ヨンスは日韓の運動家たちにとって、もっとも重用された元慰安婦であったことは疑い得ません。 

言い換えれば、運動家サイドの暗黙の要請に従って、イ・ヨンスは自身の証言を変質させたのです。

もっとも新しい2012年9月には、こう述べています。

2012年9月12日、”日本軍「慰安婦」問題の解決を求める市民の会”が主催した講演会の証言
「15歳のときに、自宅で寝ていたところを日本軍によって連行されました。帰りたいと言うと「言うことをきかなければ殺す」と脅され、軍靴や棒で顔や体に暴力を受けました。各地を日本軍とともに転々とし、17歳で父母の元に帰るも、「また捕まるのではないかと思うと、顔を上げて歩けない。誰にも話せなかった。」

この証言などは、「日本軍と転々とした」とありますが、台湾の中を「転々とした」のでしょうか。 

おそらく当時多く出ていた慰安婦証言の中で、南方や東南アジアの慰安所にいた者の証言に影響されたのだと思います。 

そもそも、イ・ヨンスが1944年10月に「強制連行」されて行ったという新竹の慰安所は1年前の1943年11月の新竹空襲で消失していました。

連れて行かれるもなにも、新竹に慰安所はなかったのです。

憶測の域を出ませんが、彼女がいたのは新竹、ないしは「船に日本兵が来た」とあるところから基隆、花蓮などの港近辺の売春施設にいた可能性もあるかもしれません。

どこに連れていかれたのか、ほんとうはそこでどのように暮らしていたのかは、いっさいの証拠が欠落したうえに、当人の証言が大きくブレるので真相はわかりません。

一方、運動団体側は、イ・ヨンスが過激な日本叩きをすることをほくそ笑んでいました。

本来、元慰安婦に同情し、その境涯を支援したいと思うなら、具体的に解決方法を探るべきです。やるべきことは山ほどあるでしょうに。

しかし、運動家の多くが欲していることは、具体的な改善でもなく反日運動でした。

そこに日本があるかぎり百年、千年先まで呪ってやる。だから、真実などくそくらえ。要るのは、呪うための「燃料」としての呪詛だけだ、というわけです。

つまりは、自分たちが政府を糾弾する「燃料」として、元慰安婦を政治利用しているにすぎないのです。

の意味で呪いの「燃料」だけを欲して、元慰安婦の境遇の改善を省みない挺対協に対して、イ・ヨンス自身がこう批判しているのは、まことにもっともなことなのです。

「当事者(元慰安婦)の意見も聞かず、日本との協議を拒否している」「日本が話し合おうといっているのに。会わずに問題が解決できようか」「なぜ自分たちの思うままにやるのか分からない。」
元慰安婦が支援団体「挺対協」批判 「当事者の意見聞かない」「事実と異なる証言集出した」 産経新聞

  • 1993年にソウル大学「挺身隊研究会」で元慰安婦聞き取り調査をおこなった、安秉直教授は2006年にこう述べています。
  • これを結びとします。
  • 「強制動員されたという一部の慰安婦経験者の証言はあるが、韓日とも客観的資料は一つもない」「無条件による強制によってそのようなことが起きたとは思えない。
    日本のケースは「自発性」であって、現在の韓国における私娼窟における慰安婦をなくすための研究を行うべきだ。
    共同調査を行った韓国挺身隊問題対策協議会は慰安婦のことを考えるより、日本との喧嘩を望んでいるだけであった。」

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