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2021年11月27日 (土)

ドイツ 新政権、核兵器禁止条約へ参加

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ドイツの新政権が、核兵器禁止条約会議にオブザーバー参加するそうです。やれやれ。
朝日と毎日、NHKが報じましたが、まるで核兵器禁止条約への参加を拒んでいる日本が世界の孤児のような書きっぷりです。

「9月のドイツ総選挙で第1党となった中道左派・社会民主党など3党は24日、新たな連立政権樹立で合意した。12月上旬にも社民党のオラフ・ショルツ副首相兼財務相(63)が正式に新首相に選出される。連立合意文書には、核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加が盛り込まれた。参加表明は主要7カ国(G7)で初。同様に米国の「核の傘」に依存し、オブザーバー参加に慎重な日本への圧力にもなりそうだ。(略)
3党はこのほか、石炭火力発電所を2038年までに全廃するとしたメルケル政権の決定について、「理想的には30年」に前倒しすると表明。気候変動対策と経済政策を担う省庁の新設も盛り込まれた」(毎日2021年11月26日)
ドイツ新政権「核軍縮に主導的役割」 核禁条約オブザーバー参加へ | 毎日新聞 (mainichi.jp)

左派政権となるやいなや、非核と脱原発と大麻のフルセットです。
あまりの「らしさ」にため息が出ます。

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NHK

なかなかメルケル後継政権ができなかったために、このドイツ新政権は、赤(ドイツ社会民主同)と緑(緑の党)と黄色(自由民主党)をかき混ぜたような気色の悪い色の連合政権となりました。
3党が合意した連立協定は177頁にもおよぶ膨大なもので、「自由、正義、持続可能性の為の同盟」と称しています。
連立合意の柱は、お約束の再生可能なエネルギーの拡大、またも出ました最低賃金の引き上げが並び、そして合意の中には成人への大麻解禁、そしてこの核兵器禁止条約への参加が入っています。

それにしても大麻解禁ですか・・・。
ドイツを麻薬天国のオランダのようにする気らしい。
ヨーロッパ中から麻薬に群がるマフィアが集まってたいへんなことになりますよ。

緑の党が入った以上、環境保護はトップ課題で2045年までにカーボンニュートラルを達成するために、30年に石炭を段階的に廃止するするそうです。
このへんは米国民主党も言っていることなので、特に驚きはありません。

やや驚いたのは、安全保障の分野に左派色を強く出したことです。
欧米では、内政には左派色を出しても、外国と関わりのある外交・安全保障の分野は前政権から引き継ぐのが暗黙の掟ですが、ドイツ左派政権は違うようです。
それが核兵器禁止条約への参加です。
今はオブザーバー参加と言っていますが、時間をおかずに条約に本格参加することでしょう。

国内で大麻を合法化しようと、石炭を廃止に追い込もうと、馬鹿だなぁと思いはするもののドイツの国内問題にすぎませんが、NATOという集団安保体制の中の重要な一角を占めるドイツがこのようなことに走ることは、たいへんな迷惑を地域に与えるでしょう。
毒にもクスリにもならないどころか、真の核軍縮の道を妨害し、 世界の核バランスを崩壊させる危険性があるからです。

しかもタイミングが最悪です。
現在のヨーロッパ情勢は、ロシアがウクライナに進攻の気配を見せ、高い緊張下にあります。

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ロシア軍がウクライナ侵攻検討か、米が欧州同盟国に警告

ロシアがウクライナに再び手をだそうとしているのは、ウクライナがNATOに加盟したことを、直接の脅威と判断しているからです。
ロシアは、「これ以上国境を接する国がNATOに加盟することを容認できない」と主張していますが、欧米はロシアの意向を無視してウクライナとジョージア(旧グルジア)との関係強化に乗り出しています。
NATOは9月末にウクライナと合同で大規模な軍事演習「RAPIDTRIDENT 2021」を実施し、米国のオースティン国防長官は10月にジョージアを訪問して2ヶ国間の安全保障協定を締結するなど着々と関係強化を進めようとしています。

このような動きに反発してロシアはベラルーシとの国境に近いエリニァの郊外に戦車、装甲車、自走砲など含む地上部隊を集結させ、NATO加盟国の軍が演習を終えて帰国するタイミングを狙い南下を開始しました。
いまもなお、首都キエフに近いウクライナ北部の国境沿いに推定9万人の兵力を展開させていると見られています。

既に米国の情報機関を統括するヘインズ国家情報長官は、NATO加盟国に対してロシアのウクライナ侵攻に関する可能性を警告したと報じられ、米国の政府関係者は米メディアの取材に対して「天候にも左右されるが、西側諸国の介入がなければ数週間の内にロシアのウクライナ侵攻が開始される可能性がある」としています。
早ければ、12月にもロシアのウクライナ進攻が現実になるかもしれません。
米情報機関は、今回は前回と違って、「ロシア軍は実際に首都キエフもしくはウクライナ東部ドンバス地方への侵攻準備である可能性が高い」と警告しています。

一方イラク、シリア、イエメンなどからの数千人単位の難民がベラルーシ経由でEU域内に入国しようとポーランド国境に殺到しています。
これはドイツに越境したいからです。
ドイツが狙われるのは、メルケルが難民に大甘なことを知っているからですが、それに輪をかけた大甘の左翼政権が誕生したのですから、減ることはないでしょう。

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ドイツで越境者拘束が急増、「難民危機」再来の懸念…経由する

これは自然に起きたものではなく、ロシアやベラルーシが意図的に誘導した結果で、ウクライナに進攻した場合、NATOの対応を分散させて遅らせるためだと言われています。

【モスクワ=小野田雄一】ロシアがウクライナとの国境付近に9万人とされる大規模な軍部隊を集結させ、一帯での軍事的緊張が高まっている。北大西洋条約機構(NATO)は、ロシアがウクライナ侵攻に踏み切る恐れもあるとみて警戒を強めている。露専門家は軍の動きについて、NATOによるウクライナ支援に対抗する示威行動ではないかと分析している。
ウクライナ国防省は11月2日、同国国境に近い露西部スモレンスク州に9万人規模の露軍部隊が集められていると発表。ブリンケン米国務長官やNATOのストルテンベルグ事務総長も今月中旬、ロシアの「異常な兵力増強」を指摘した。
米ブルームバーグ通信は21日、米情報機関がロシアの侵攻ルートを想定した地図を同盟国と共有したと報道。米軍事メディア「ミリタリー・タイムズ」も同日、「ロシアは来年1~2月の侵攻を準備している」とするウクライナ軍情報部門トップの見解を伝えた」(産経11月27日)

ロシアは核兵器禁止条約をNATO分断に利用しようとしており、まんまと新政権はそれに乗ったということになります。
こういう情勢下で、NATOの主軸であるドイツを左翼連合政権に手渡してしまったメルケルの不手際が改めて問われることになります。
いずれにしても、ロシアがウクライナに進攻した場合、いかなる対応をとるのかが、新政権の最初の試金石となります。

さて、よもや左翼新政権のお歴々が知らなかったということはないはずですが、実はドイツはとっくに「核武装」しています。
それがニュークリアシェアリングです。
これは米国の許可の下にNATO各国軍が核兵器を保有し、有事においては当該国がそれを使用するシステムのことです。
ですから、このニュークリアシェアリングの協定に基づいて、ドイツ国内には核兵器が保管されており、ドイツ連邦空軍が核攻撃を遂行します。

もちろん、有事の際も、一国はもちろん、NATO全体が了承しても、米国が拒否権を行使できます。
下図は核兵器の拡散状況を示す図ですが、赤が核保有国、青色がNPT加盟国、そしてオレンジ色がニュークリアシェアリング国です。
ドイツがオレンジ色に塗られていることにご注目下さい。

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核兵器拡散状況 Wikipedia

ニュークリアシェアリング国が核兵器禁止条約に入るの入らないのと言っても、なにをおっしゃるウサギさん、もうとっくに準核保有国じゃないですか。
上図に核兵器禁止条約締結国をかぶせてみましょう。

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NHK

なんのことはない、核兵器禁止条約締結国と言っても、元々核兵器とは無関係な国々ばかりにすぎないことがお分かりになるでしょう。
ありていにいえば、核の脅威を与える国が存在しない幸せな諸国ばかりです。
このような国がいくら核兵器禁止する、と言ったところで現実の効果はゼロです。
いわばよく自治体の役場の前に建っている「非核宣言都市」の看板みたいなものです。
その自治体が密かに核兵器のひとつももっているなら有意義でしょうが、わきゃないのでただの絵空事です。
ただ嫌なのは、こんな看板を立てた当人たち(共産統系「平和団体」ですが)は、自分が世界の非核化に役立っていると勘違いしていることです。
核兵器禁止条約も、この「非核宣伝都市」とイイ勝負です。

言うのも愚かですが、核兵器を本気で禁止するためには、核保有国が核軍縮をするしかありません。
特にいかなる核軍縮の枠組みにも入ろうとしない国である中国を参加させねばなりません。

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世界の核兵器保有数(2019年1月時点) | 国際平和拠点ひろしま

新START(新戦略兵器削減条約)にすら入らない中国の参加なき核兵器禁止条約など、ほんとうの核兵器全廃への道を閉ざす有害無益な存在にすぎません。
上図の国際平和拠点ひろしまが作成した図では公表された50発としていますが、これは米国防総省の300発の6分の1にすぎません。
どうしてこう大きな差がでるのかといえば、米露は相互査察によって確認された正確な数字であるのに対して、中国の数は中国の公表数字でしかないからです。
つまり核軍縮するための基礎数字自体が、中国においては闇の中です。

こんな保有核の数すら不明な国が隣にいて、しかもその国はわが国を標的にしている以上、わが国が核兵器禁止条約などというお遊びに参加することは絶対にありえません。
数百発の中国の核ミサイルで狙われているわが国と、のほほんとしていられる国とは本質的に違うのです。
※関連記事『中国は新戦略兵器削減条約に参加しろ』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2021/11/post-6084ae.html

とまれドイツ新政権におかれましては、新たに自国で核兵器を開発する必要がない以上、そんなに核兵器禁止条約に入りたければ、とっととドイツ国内から核兵器を撤去させることから始めて下さい。
ちなみに新政権はご承知のことと思いますが、ドイツはロシアの核ミサイルの最優先攻撃目標ですので念のため。
ドイツがNATO主要国である以上、他の加盟国からどのような批判を受けるか知ることです。

ただし、ショルツ政権の名誉のために付け加えると、欧米左翼は人権には等しく厳しい対応をしめします。
中国や北朝鮮の人権は見て見ぬふりをするどこかの国のリベラルとは違って、中国の人権や香港の民主主義弾圧については厳しい批判を加えています。
また、台湾の国際機関参加を後押しするそうです。
この点、メルケルや岸田よりよほどましです。

2021年11月26日 (金)

デニー知事不承認、二度目はみじめな笑劇として

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沖縄県が、また国の辺野古移設建設の一部変更に対して不承認としたそうです。
まだ「新基地」なんて書いているのですか、この新聞。
正確には、危険な都市部から撤去して、安全な地域への縮小移設です。
さすがに本土の左翼メディアも、こんな表現は使いませんよ。

「米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡って、沖縄防衛局が県に申請していた埋め立て予定地の大浦湾にある軟弱地盤改良工事など設計変更について、沖縄県は24日までに不承認とする方針を固めた。玉城デニー知事が25日にも表明する見通し。
 県は不承認の根拠として、埋め立て予定海域の軟弱地盤が最も深い水面下の約90メートルに達する地点について、直接試験したデータを採用していない問題点などを挙げる方針だ。
 沖縄防衛局は県の不承認を無効化しようと、行政不服審査法に基づく審査請求など対抗措置を取るとみられる。その後、県は対抗措置の違法性を訴え、法廷闘争に移行する見通しだ」(琉球新報11月24日)
 沖縄県、辺野古新基地の設計変更不承認へ 知事きょうにも表明 - 琉球新報

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沖縄・辺野古埋め立て 政府の計画変更 玉城県知事が不承認の方針|TBS NEWS

お約束の歌舞伎です。イヨーっと眼をむいて大見得を切ってみせただけのことです。
残念ですが、客席はシラけ切って弁当などつついていますがね。
だって、本気でやる気がありませんから。

反対してみせないと、支持団体から叱られるからやっている感を出しているだけだと誰も知っています。
かつて翁長氏のように、最高裁まで争ってやろうなんて気はさらさらありません。
第一、そんなことをしたら、どれだけカネがかかるかわからないようなこのコロナ復興期に損なことくらい、利に聡いデニー氏もわかっています。

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玉城・沖縄知事、政府の設計変更を不承認へ 辺野古移設めぐり:朝日

一方、受ける本土政府はといえば、かつての翁長氏と違って、まったくデニー知事など相手にしていません。
そもそも本土政府は、口とは裏腹にまったく急いではいないのです。
政府はとうに20年代の完成を捨てていますから、淡々ダラダラと工事を進めればいいだけのことです。
裁判沙汰の蒸し返しは起きるでしょうが、そんなことはみっちりと翁長時代にやって免疫対処療法が確立しています。

これが米国がさっさと移転先を作ってくれ、とせかしているなら話は別ですが、ところが米軍は普天間に居続けるのがベストだと思っています。
今の普天間飛行場には必要なすべての施設が揃っていますし、あんな海岸ぷちに中途半端なものを作られるより、長い滑走路がある内陸の今の場所のほうがなんぼかましです。
軍事的に移設する合理性がまったくなかったのですから、当然です。
ですから、政府はやってる感があるくらいに進めばよいのであって、まったく焦っていません。
言ってはナンですが、左翼陣営が頑強に対決案件にしてしまったために、引くに引けないアリバイ工事のようなものなのです。
台湾有事が叫ばれている状況で、その最前線基地を引っ越ししてどうしますか。
つまり反対する側も本気ではなく、受ける本土政府も上の空、米軍は我関せず、という三すくみの狭間に落ちてしまったのがこの移設問題というわけです。

ところで私は思い出すともなく、翁長前知事を思い出してしまいました。

「ヘーゲルはどこかで、すべての偉大な世界史的な事実と世界史的人物はいわば二度現れる、と述べている。彼はこう付け加えるのを忘れた。一度目は偉大な悲劇として、二度目はみじめな笑劇として」(マルクス『ブリュメールの18日』 )

「歴史上偉大な人物」かどうか知りませんが、少なくとも最初に国を相手どって移設計画の不承認をした故翁長氏には、一種の「凄み」のようなものがあったのは事実です。
私は徹頭徹尾、翁長氏の批判者でしたが、この矛盾の塊のような翁長雄志という人物に「惹かれる」ものがあります。
沖縄の矛盾そのものを体現していたように見えたからです。
骨の髄まで利権にまみれてきた地方政治家が、知事になりそこねた怒りと失望のあまり左翼陣営に寝返り、ありとあらぬる奸智を駆使してかつての味方を撃つ姿は壮絶ですらありました。
ですから、私はほとんど1年以上に渡って、ほぼ毎日腰を据えて翁長氏を真正面から批判したものです。
翁長氏の突然の死に際しては、喪失感さえありました。

今のデニー氏など、逆立ちしてもそんな迫力はありません。
日なたのコーラです。気が抜けてうすら甘いだけ。
あの耐え難い軽さはどうにかならないのでしょうか。

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それはさておき、翁長氏が承認取消をした時にでき上がった構図は、呆れるほど極度に単純化されたものでした。
「米国に追随し横暴な政府」が悪玉、英雄翁長知事と「戦う沖縄民衆」が正義という陳腐な図式です。 
まるで勧善懲悪の時代劇さながらで、
昔懐かしき「抑圧者vs被抑圧者」というマルクス主義史観が、ことこの沖縄ではまだ生きているのです。 
本土メディアはNHKから民放まで全部このパターンで報道しました。

では、どうして本土メディアは翁長氏をここまで英雄視したのでしょうか。
それは移設の指揮官である翁長氏が、あろうことか立場を逆転させた衝撃があったからです。

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沖縄と沖縄人の誇りのために闘った政治家・翁長雄志氏 その生きざまを

当時の翁長氏は、仲井真氏の右腕でした。
仲井真氏の後継者は衆目の一致するところ翁長氏以外ありえませんでした。 
なぜなら翁長氏
こそが、2006年に稲嶺知事の下で始まった辺野古移設現行案の沖縄側の責任者だったからです。  
当時の翁長氏の発言が残っています。

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「飛行場移設について、解決に向けての作業が大詰めに来ていることがこれでうかがわれます。よって、県議会においても、普天間飛行場の返還について1日も早く実現させるべき県議会の意志を示すものであります」 (平成11年(1999年)の第6回県議会定例会)

実務と細かい各方面との妥協を取り付けたのは、調整能力に長けた翁長氏でした。 
第2期仲井真知事の選対責任者も彼でしたし、県連幹事長として仲井真県政の右腕を務めていたのも余人ならぬ翁長氏です。
つまりは辺野古移設問題の裏の裏まで知り尽くしていたのが、他ならぬこの翁長氏だったのです。
たぶんここで奇妙人が出現しなければ、翁長氏はそのまま島の保守のボスとして君臨することが約束されていたはずです。

この奇妙人こそ鳩山元首相でした。

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  newspicks.com  

彼の掲げた「最低でも県外」という方針は無残に失敗したのですが、挫折したが故に異様な夢を県民に与えてしまいました。
それは移設阻止が実現可能性があるのかもしれない、という淡い空想です。
彼が与えた日米同盟への打撃は、速やかに修復されましたが、最も深い影響はこの空想が根強く県民の心に染み込んでしまったことです。

この後、自民党も仲井真氏も移設容認を口にすることすら不可能になります。
仲井真氏がとったのは徹底したあいまい戦術でした。
本音は容認であるにもかかわらず、本土政府には「移設反対」の建前だけしゃべって、どんどん政府にチップを積み上げさせるのです。
民主党政権に対して「この問題を収拾したければ色をつけろ。さもないと移設なんかできないぞ」と凄んで見せたわけで、いわば瀬戸際戦術です。
この時、本土とのダーティな交渉をしたのも翁長氏でした。

この車輪の両輪のような両人の関係に亀裂が生じたのは、仲井真氏が本来の主張通りの移設容認を埋め立て承認によって明らかにした時から始まります。 

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この時に起きた沖縄マスコミや、本土メディア、テレビなどのバッシングは凄まじいものでした。  
「裏切り者」「公約違反」といった罵詈雑言が連日沖縄マスコミの紙面を埋め尽くし、承認会見の翌日の沖タイ紙面など「金で沖縄を売った」です。
当時の沖タイや琉新は、新聞なんて可愛いものじゃありません。実に6面を潰して仲井真批判一色でした。

仲井真氏の容認路線は、仲井真県政の既定路線であったわけで、鳩山氏によるねじれを元に修正したにすぎなかっただけですが、裏切り者と指弾されました。
仲井真氏は、移設承認会見を前にして過度な重圧のために病んでいき、75歳という高齢と脳梗塞、急性胆嚢炎という病歴は、彼がなにを背負ってきたのか、なにに対して責任を取ろうとしたのかかがわかります。
3期目は誰が見ても不可能でした。

この時です、翁長氏が裏切りを決意したのは。
彼はこのまま移設反対の旗を掲げてあいまい戦術を続け、徹底的に本土から見返りをむしり取るべきだと考えました。
それをするのは仲井真氏から禅譲を受けた自分だと信じていました。
しかしそうはなりませんでした。
ありとあらゆる妥協のメニューは始まったばかりで、どうしてここで手打ちするのか、しかもそのために四面楚歌になったじゃないか、馬鹿め、これが翁長氏の内心だったのかもしれません。

いったん裏切りを決めた翁長氏は「見事」でした。
今まで仲井真氏の右腕でであったことなどすっかり忘れたかのように、仲井真氏をリンチする者たちの輪に入って、「それ吊るせ、奴をもっと高く吊るせ!」と叫んでいるのです。
 
吐き気のする光景でした。正義の名の下に、病み上がりの知事を連日のように県議会に呼びつけて糾弾するのが続くのですから。まさにリンチ。

そしてここで知事を守るべき自民党県連まで寝返りの環に加わりました。
当時の自民沖縄県連や国会議員は、県民の「県外移設」という同調圧力に耐えきれなかったのです。
特に翁長親衛隊とでもいうべき那覇市自民党市議団の
新風会は、翁長氏の指揮の基に、保守陣営を強力に切り崩していきます。
当時を知る自民党議員は、「自民党というだけで悪玉扱いだった」と回顧しています。 

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そして翁長氏は一躍島の英雄として念願の知事となり、移設反対闘争を継続するのですが、その少し前に彼が言った言葉が残っています。

「振興策を利益誘導だというなら、お互い覚悟を決めましょうよ。沖縄に経済援助なんかいらない。税制の優遇措置もなくしてください。そのかわり、基地は返してください。国土の面積0.6%の沖縄で在日米軍基地の74%を引き受ける必要は、さらさらない。いったい沖縄が日本に甘えているんですか。それとも日本が沖縄に甘えているんですか」
(朝日2012年11月24日)
http://www.geocities.jp/oohira181/onaga_okinawa.htm

今聞いても、惚れ惚れするような啖呵です。
今のデニー氏にはとてもじゃないが、こんな台詞は言えないでしょうし、言ったとしても一笑に付されるだけのことです。
権力の泥にもっともまみれてきた翁長氏が言ったからこそ迫力があったです。
それにしても、よもや翁長氏の口から「沖縄に経済援助なんかいらない。優遇措置も失くしてください」という言葉を聞くとは思いもしませんでした。
だって翁長氏がしてきたことは、一貫して基地を交渉材料にして、いかに本土政府を自動現金支払機にするかという駆け引きでしたからね。
彼の那覇市長としてやった実績は、那覇軍港移設に伴う港湾整備や、那覇空港拡張といった大規模工事でしたが、これは「新基地」ではないのでしょうか。
この予算を出したのは沖縄県だったとでもいうのでしょうか。
翁長氏
自慢の首里正殿の復旧すら全部本土政府がやったことで、県はおんぶにダッコだったために、管理不充分で燃やしてしまいました。

とまれ、翁長氏には「カネなんかいらない」と言うだけの「凄み」がありました。
そして彼の背後には、奇妙人の見させてくれた「夢」があったのです。
今、それらすべてがありません。

承認を巡ってはすったもんたの末に最高裁まで行った承認問題も確定判決が出ています。
ですから行政的手続きとしては、もうこれ以上どうにもなりません。
そしてなにより、島民がシラけきっています。
全野党共闘のモデルだった「オール沖縄」は脱退が相次ぎ、今や名ばかりです。
先日の衆院選では、共産党がむき出しになっていることを嫌われて2選挙区を落としました。

こんな中で承認拒否と言えばなんとなく勇ましそうですが、昔の熱はミジンも残っていません。
翁長氏が辿ったような道は辿りたくても辿れないのは、「オール沖縄」ですらよくわかっているはずです。

このようにただの二度目の「みじめな笑劇」にすぎないのです。

 

2021年11月25日 (木)

トランプの置き土産、パウエル再任の意味

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世界が注目していた米国FRB議長に、ジェローム・パウエルが再任されました。

「バイデン米大統領は連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長にパウエル現議長を再指名し、ブレイナード理事を副議長に昇格させる人事を行った。米国が約30年ぶりの高インフレに見舞われ、新型コロナウイルス感染拡大の影響が長引く中で、金融当局の一貫性を重視した。
ホワイトハウスが22日に人事を発表した。バイデン政権は、米経済がコロナ禍から抜け出すのに尽力してきたパウエル氏に報いると同時に、消費者物価の急上昇から景気回復を守る任務を同氏に委ねた。
また、前任の大統領が起用したFRB議長を続投させるという慣例の復活も、今回の人事は意味する。共和党員であるパウエル氏については、上院での承認が円滑に進む公算が大きい。ただ、民主党進歩派は失望しているかもしれない。パウエル氏は1期目の指名公聴会では賛成84票、反対13票で承認された」
(ブルームバーク2021年11月22日)

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ジェローム・パウエル議長
バイデン米大統領、FRB議長にパウエル氏を再任(CNN.co.j

FRBは米国の中央銀行で、金融政策の司令塔です。
FRB議長の金融政策のさじ加減一つで、世界経済が大きく左右されるといっても過言ではありません。
そしてこのFRB議長という要職にトランプが選んだのが、パウエルでした。
パウエルは生粋のリパブリカン(共和党員)で、グリーンニューディールや大規模な財政支出に否定的な態度を示していました。

ですからとうぜんのこととしてグリーンニューディールを主張する民主党左派からは強い反対の声が上がっていたために、バイデンの態度が注目されたわけです。
公聴会の結果は、賛成84票 反対13票という結果で、民主党内の勢力図そのままが投影されてしまいました。
民主党左派は、声は大きいものの議会全体では13%、民主党内では3割ていどの勢力だということがわかってしまいました。

ただし現在の米国下院は定数435で  民主党 (221) 共和党 (213)とわずか8議席の差で拮抗している状態にあり、対決法案が出た場合、キャスティグボートを握るのはこの民主党左派となる可能性があります。
ですから少数派であっても大きな発言力を持っていたわけで、バイデンは本来は中間派でありながら、左派の主張を大きく取り入れた予算案を作りました。

ところが先日記事にしたとおり、この予算案は左派の奮闘努力のかいもなくグリーンニューディールの部分は切り分けられて後回しにされてしまいました。
ここで大勢は決まってしまい、パウエル再任の道が大きく拓けたわけです。 
パウエルがやってきたのは、0~4%程度のマイルドなインフレを意図的に実現するための金融緩和政策でした。
このリフレ政策は主要国の金融政策のゴールデン・スタンダードとなり、わが国の安倍-黒田がとった金融政策の原型です。

よくアベノミクスについて常識はずれというようなことを言う人がいますが、とんでもないデマです。
これこそ世界の中央銀行が景気拡大のためにどこもやっていることで、その総本山がFRB議長のパウエルでした。

今回、問題を複雑にしたのは、コロナ後の経済情勢に予想を超えたことが起きたことです。
なんと米国のインフレが6%にまで高進してしまったのです。
しかも景気過熱によるインフレ高進ではなく、原材料・人件費高騰によるコストプッシュ型インフレですから始末に悪い。
景気が温まってインフレが高進するなら、教科書どおり段階的金融引き締め(テーパリング)をして冷やせばよいのですか、原料コスト圧迫型だとそういうわけにはいかないからです。

「パウエル議長の2期目は、1期目とは大きく異なるものになる。経済は回復しつつあるが、インフレは高進し、新型コロナ感染件数は高止まりしている。サプライチェーンの制約も強い不透明感につながっている。
 こうした状況は、パウエル議長の主導で米金融当局が2020年に公表した新たな戦略に課題を突き付けている。
この戦略の下、当局は従来ペース以上の景気拡大を容認し、それによって雇用と賃金を押し上げることを狙っていた。特に、社会的に取り残された労働者や少数派に恩恵が及ぶことを意図していた。
しかし物価の高騰を受け、米金融当局の引き締め策が後手に回っており、昨年打ち出した金融政策の新たなフレームワークが現在の環境にそぐわなくなっているとの批判も招いている」(ブルームバーク前掲)

米国の場合、コロナ失業に対する手当てが過剰すぎて、職に戻らなくなった労働者が増えて労働力不足になり、コロナで痛んだサプライチェーンによる部品供給の停滞、そして極めつけはカーボンニュートラルによる原油高が追い打ちをかけました。
供給不足によって米国のインフレ率はみるみる6%超え、数字だけ見ればとうに金融引き締めのブレーキをかけねばならない時期なことは明らかでした。

実際、パウエルもこんなことが起きる前までは、金融緩和のアクセルから足を離すからねという金融引き締め(テーパリング)信号を何度か市場に送り続けていたのですが、現在のインフレ高進はあくまでも原材料の上昇に寄るものです。
金利を上げてしまったら、一気に実体経済まで打撃を与えてしまいかねません。
だから、だましだまし、景気動向を冷静に観察しながら、市場と会話しつつ金融政策を操作できる老練なパウエルが再任されたわけです。
まことに賢明な人選でした。
金融タカ派といわれる金融引き締め派が議長になっていたら、たいへんなことになっていました。

さて、パウエルが渋いプレゼントを米国民にしていたことが、先日わかりました。
それはなんと、パウエルはカーボンニュートラルによって衰退を宿命づけられたかに見えたエネルギー部門へ救済の手を差し伸べていたのです。

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WSJ

「石燃料へ資金流入が加速、FRBコロナ救済策で
石油・ガス企業の社債発行が過去最高、FRBの利下げと社債買い入れ追い風に
環境にやさしい政策を推進する非営利の研究・ロビー活動団体ポジティブ・マネーのシニアエコノミスト、デービッド・バーメス氏は「化石燃料部門は長期的に衰退していることが分かっていたが、今はコロナ前より強くなっている」と述べた。
調査会社ディールロジックのデータによると、2020年に石油・ガス企業が発行した社債は過去最高の1988億ドル(約22兆6600億円) と、2013年に記録したそれまでの最高を372億ドル上回った。同セクターの債券発行額は20年間の平均の2倍以上となった。エネルギー価格が上昇している2021年も、発行額は引き続き増加している。
バーメス氏は「各社が生産を拡大したり、買収したりし、それが排出量の増加につながっていると言っても過言ではない」と話した。
FRBは2020年、財務省と納税者の資金に支えられた融資プログラムを立ち上げた。社債を購入するための二つの資金枠と、中小企業への直接融資用の信用枠が設置された。」(ウォールストリートジャーナル2021年11月22 日)
化石燃料へ資金流入が加速、FRBコロナ救済策で - WSJ

パウエルは、エネルギー産業への投資を促すための融資プログラムを作っていました。
この救済策は、石油・ガス産業の社債と中小の掘削業者への直接融資からできていて、再建発行額ベースでこの20年平均の2倍に達する大規模なものでした。
これによって石油・ガス企業が得た資金は過去最大の22兆6600億円に昇りました。
このパウエルの救済策で、今までジャンク債扱いだった石油・ガス関連企業は一気に蘇りました。

「FRBが行動を起こしてから数カ月で、ジャンク(投資不適格)級のエネルギー企業の借り入れコスト(国債との利回り差、いわゆるスプレッドで測定)は、過去最高から過去最低へと大きく振れた。
グリーン・アルファ・アドバイザーズのガービン・ジャブッシュ最高投資責任者(CIO)は、石油・ガス企業の社債はコロナ前には特に高リスクとみなされていたが、FRBの措置によって「通常であれば高リスク企業につきまとう危険性が全て取り除かれた」と話す。「FRBが後ろ盾についたことで、誰もがそうした債券にとびついた」という」(WSJ前掲)

またパウエル救済策を呼び水にして米国大手銀行も追随し、エネルギー企業に大規模な融資を行いました。

「米銀JPモルガン・チェースやシティグループ、ドイツ銀行など金融機関の幹部は、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の今月末の開幕に備えているが、その銀行業界は、グリーンプロジェクト向けとほぼ同額の資金を化石燃料関連事業に提供する手助けを今も続けている。
ブルームバーグの集計データによれば、金融機関は今年だけで石油・天然ガス・石炭セクター向けに総額4590億ドル(約52兆円)相当の社債発行と融資のアレンジを行った」
(ブルームバーク)

このFRBの融資と社債、そして銀行からの融資も含めると、実に4590億ドル(52兆円)もの巨額資金が石油・ガス企業に一気に流れ込んだと見られています。

現在の異常な原油高の原因は、本質的にはカーボンニュートラルという悪い夢に人類が囚われてしまったことにありますが、直接的には30年代で化石燃料廃止というCOPの方針によって、産油国やエネルギー産業が石油事業に投資することを止めてしまったことにあります。
そりゃそうでしょう。あと10数年後には化石燃料全廃という流れを作ってしまえば、そこに投資しようという奇特な人はいませんものね。

石油市場は、「石油の死」を予感してまるでお葬式状態でした。
石油関連株はジャンク債送りとなり、新規投資は途絶えていました。

「現在の石油市場のムードは、まるで「石油の死」を確信したかのような悲観さで満ち溢れています。
石油・ガス企業の株価は3月にOPEC減産合意決裂とCOVID-19の拡大で暴落したあと6月初めまで反発しましたが、その後現在まで下落が続き、3月の大底に迫る水準にあります。
一方、再生可能エネルギー銘柄はコロナショックから現在まで強い上昇傾向を継続しており、過去1年のリターンはナスダック総合指数を上回ります。
1928年から90年以上にわたりダウ工業株30種採用銘柄であったエクソン・モービルは今年8月をもって採用から外されました。
石油メジャーのBPは9月、化石燃料の需要が今後長期的に大幅に減少し、再生可能エネルギーシフトが大幅に進むことを予測するレポートを公表し、エコノミスト誌やフィナンシャル・タイムズは再エネシフトが今後急速に進むとの印象を与える大々的な記事を載せました。
石油の需要は二度と元には戻らず、再生可能エネルギーが化石燃料の市場を奪って独占するという雰囲気が蔓延しています」
(2020年10月12日『「ピークオイル」は需要減ではなく老朽化・投資不足による供給減を指すことになる』)
「ピークオイル」は需要減ではなく老朽化・投資不足による供給減を指すことになる (avocado-fes-thought.com)

そのために新たな原油掘削はことごとく中止となり、既存の掘削井戸すら老朽化で運転停止に追い込まれ、存続もままならない状況に追いやられていました。原油の供給量不足はここから来ています。
下図は石油掘削井戸(リグ)の稼働数推移です。

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「シェールエネルギーは一つの油井から採掘できる原油量が少なく、生産量を増やすためには次々と新しい油井を掘る必要があるため、設備投資の低迷が続くとそう時間が経たないうちに生産量は減っていってしまいます。
カナダのリグ稼働数は7月に大底を打ち、COVID-19拡大前の水準に戻りつつあります。
しかし米国のリグ稼働数は今年8月に大底に達した後、多少の回復はしたもののいまだに大底付近にあることに変わりありません。少なくとも今年いっぱいは生産量が大きく回復することはありません」(同上 図も同じ)

ですから、いくらバイデンが産油国に増産をするように頭を下げてもガン無視され、米国内の石油・ガス・シェール業者からすらなにを今さらと言われてしまったのです。

このような状況を変えるには、エネルギー業界への投資を再活性化するしかありません。
民間の投資が低調ならば、国が替わってカネを出さねばならなかったはずですが、グリーンニューディールを唱えて大統領の椅子に座ったバイデンにできるはずもなく、パウエルが替わってそれを静かに実行していたのです。

前述のようにパウエルFRBは融資の後ろ楯となるだけではなく、中小経営の苦しい業者に直接融資をしました。
これらの資金は欠乏しかかった運転資金の補填だけに止まらず、新たな油田やガス田、シェールガスの開発、老朽化した設備の更新などに充てられていることでしょう。
燃え盛っていた石油高の業火は、ここで一服するかもしれません。

バイデンが石油の国家備蓄放出を各国に促していますが、国家備蓄放出といってもたった3日分ですから、バイデンのやってる感を見せるためのポーズにすぎませんから、効果が限定的なことは初めからわかりきっています。
世界各国も協調して備蓄放出をするようです。

そんな彌縫策よりバイデンがするべきは、カーボンニュートラルからの離脱です。ま、彼には200%むり。
トランプなら初めからノーカーボンなどという罠にはまらなかったでしょうが。

というわけで、こんな備蓄放出などというショボイ政策より、はるかに原油高に効くのは、パウエルのこのエネルギー部門への救済政策なはずです。
備蓄放出すら言われてするようなもっとショボイ政府もありますが、どうにかなりませんか、岸田氏のこの鈍さ。
とまれ、トランプの置き土産であるパウエルが、民を救ういい仕事をしてくれました。


 

2021年11月24日 (水)

日本は自由主義陣営の外交的ボイコットに連携を

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中国というところは、よく人が失踪する土地のようです。
有名な失踪事件としては、中国に批判的な本を出したとして銅鑼湾書店主が、「何者」かによって拉致されたことがあります。

「香港で拉致され中国本土で8カ月にわたり拘束されていた「銅鑼湾書店」の林栄基店長(61)は16日夜、香港で会見し、自殺しないよう歯ブラシも自由に使えなかったなど、24時間の監視下にあった拘束状況を赤裸々に語った。
香港で中国政府に批判的な本を扱う「銅鑼湾書店」の店長など関係者5人が昨年10月以降、相次ぎ失踪。親会社の桂民海氏はまだ拘束中だ。事件は中国が香港の表現の自由に介入している証拠だと、香港で強い危機感をもって注目された。
林氏は昨年10月24日、恋人に会うためいつものように広東省に渡ったところ、深圳市で拘束されたという。翌朝、手錠と目隠しをされた状態で電車で東部の寧波市に連行され、そこで3月まで拘束され尋問された」(BBC2016年6月17日)
https://www.bbc.com/japanese/36557277

では、この香港の民主派書店関係者5名の拉致を実行したのは誰だったのでしょうか。

「林氏は確かなことは分からないが、自分は政府の「特別捜査チーム」に拘束されていたと話した。動かすには中央政府幹部の承認が必要な政府横断的な特別精鋭組織で、その成立は文化大革命までさかのぼるという。当時は毛沢東と対立して失脚した劉少奇など、中国共産党幹部の捜査に使われたとされる」(BBC前掲)

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銅鑼湾書店 林栄基
書店店長の「平凡な香港人」が語る自由の重み | 中国・台湾 | 東洋

林氏を拘束し、軟禁し脅迫したのは共産党中央の承認を得た特別チームだったと、林は見ているようです。
実は、このような失踪者は中国で大勢存在します。
その中で群を抜いて多いのがウイグルと香港で、この数年多くが忽然と姿を消しています。
ウィグル族の失踪は、その全貌すらつかめぬほど膨大な数に登ります。
その多くは、その後何年も連絡もつかないまま、闇に消えてしまったケースが多く、民主派弁護士の高智晟氏のように生死すら不明のケースも多数存在します。

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高智晟弁護士、行方不明になって4年 妻「生死を問わず諦めない

「中国の著名人権弁護士である高智晟氏が失踪してから4年が経過した。米国で亡命生活を送っている妻の耿和さんは、13日の声明で、夫は良心を貫く弁護士であり、生死にかかわらず中国共産党(以下、中共)に夫の所在確認を求め続けると述べている。
ツイッターで公開されたこの声明の中で、耿さんは、夫が拉致されてから4年間音信不通で、夫が生きているという情報もなかったという。「この16年間、私たち家族は世界で最も暗く、最も恥知らずな政権である中共によって引き裂かれてきた」と語った」(大紀元2021年8月17日)

また昨今では民主化活動家に限らず、、中国共産党政府の気に食わない者、あるいは不利なことをしそうな者は片端から「失踪」しています。
武漢ウィルス研究所の主任研究員で、COVID19の謎を最も知り得る立場にあった主任研究員の石正麗も忽然と姿を消したままとなっています。
石の場合、無事だという言葉は伝えられているもののその姿を現しませんし、他の研究所の研究員の消息もつかめていません。

重慶現地で新型肺炎流行の中心地からの悲惨な映像を発信していた方斌と民主派ジャーナリストの陳秋実は、拉致されて行方不明になっていました。

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陳秋実 中国・武漢で行方不明になったジャーナリスト、「国の監視下に」 友人が明かす - BBCニュース

「2人は姿を消す前に、武漢で何十本もの動画を撮影してインターネットに流した。新型肺炎流行の中心地からの悲惨な映像だ。病院の外に続く長い列、衰弱している患者、悲しむ家族たち――。
その映像が特に衝撃的だったのは、それが中国の内側から発せられたものだったからだ。中国では政権を少し批判しただけの内容でも、すぐにインターネットから削除され、それを公開した者はたいてい罰せられる」(東経2020年2月22日)

2018年には有名女優の一人、ファン・ビンビン(范冰冰)が約4カ月にわたって行方をくらまし、安否が危ぶまれ、この失踪も中国共産党大物王岐山国家副主席との関係だとされています。

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中国の女優ファン・ビンビンと王岐山国家副主席

「デイリー・メールによると、マイルス・クウォック(Miles Kwok)という名前でも知られる郭文貴氏は2017年、少なくとも2本の動画をインターネットにアップし、ファン・ビンビンさんが長きにわたって王国家副主席と不倫関係にあると告発した。郭氏はまた、ファンさんが賄賂を渡すことで、経済的な恩恵を受けていたと指摘したという」(ビジネスインサイダー2018年9月7日)

この失踪は中国政府からエンターテインメント業界全体に対して示された、「警告」だと考えられています。

また財界でも、昨年、中国の電子商取引大手アリババ・グループの創業者で富豪のジャック・マー(馬雲)が、3カ月近く消息不明になっています。

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ジャック・マーだけではない、中国から「消えた富豪」たち

マーの場合、習の第2文革路線による経済界への締めつけの生贄とされたと見られています。
マーは政府当局の経済運営に対して批判しており、拉致はこれに対する「警告」だというわけです。
この他にも失踪した富豪はかなりいるようです。

「マー以外にも、中国共産党を批判して公の場からしばらく姿を消したビリオネアは複数存在する。2015年12月には、大手コングロマリット「復星国際(Fosun International)」の創業者兼会長である郭広昌(Guo Guangchang)が消息を絶ち、ソーシャルメディアには、郭が上海の空港で警察に連行されたという目撃談が投稿された」(フォーブス2021年1月9日)

彼ら失踪者に共通するのは共産党を批判するか、共産党の暗部を知ってしまってそれを社会的に告発しようとした、あるいは当局の方針と異なったことです。
彼らは数カ月後にはどこからともなく姿を現しますが、以後はアリババのマーのように拉致の脅迫に屈してひどくおとなしくなってしまうようです。

今回、失踪した彭帥(ほう・すい)さんは、共産党の大物である張高麗元副首相と不倫関係にあったとツイッターに投稿した後、姿を消しました。
このような多くの無辜の人たちの拉致失踪事件の流れのなかで、今回の事件を見ねばなりません。

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中国でテニス選手の彭帥が、元副首相の張高麗から性的暴行を受けたと微 ...

彼女は中国を代表するテニスプイヤーですが、張から性的暴行を受けて、その後に愛人となったと告発していました。
まさにMeTooそのものの事件で、これが事実なら張は強姦、ないしは準強姦罪を問われねばなりません。
このツイートは十数分後に削除され、彭帥さんも失踪してしまいました。
消された彭帥さんのツイート全訳はこちらからどうぞ。
ツイートといってもそうとうな長文で、関係について詳しく書いてあります。
※近藤大介『〈全訳掲載〉中国有名テニス選手が暴露、前副首相との不倫の来歴』
https://news.livedoor.com/article/detail/21138465/

それがなんと突如としてリモートで出現したというのですから、なんともかとも。
それも、今まで彭さんの行方を探していた国際女子テニス連盟との電話会談ではなく、この事件とはまったく無関係なはずのIOCのバッハ会長との間でしたから、さらに紛糾することになります。

「国際オリンピック委員会(IOC)で古参のパウンド委員(カナダ)は、中国共産党最高指導部メンバーだった張高麗(ちょう・こうらい)元副首相と不倫関係にあったと告白した女子テニス選手の彭帥(ほう・すい)さんの安否が懸念されている問題について、IOCが中国に厳しい姿勢で臨む可能性が出てくるとの見解を示した。ロイター通信が19日、伝えた。
来年2月に北京冬季五輪が控える中でスポーツ界でも中国の人権問題に関して、危機意識が高まっている。
パウンド氏は「この件が良識ある方法で早急に解決されなければ、制御不能になるかもしれない」と指摘した上で「五輪の中止にまで(事態が)悪化するとは思えないが、分からない」と述べた」(共同

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IOCバッハ会長が彭帥選手とテレビ電話で無事を確認。北京五輪を控え

このバッハとのリモート会談には疑問が数々あります。
ブルームバークはこのような声を紹介しています。

「中国の女子プロテニス選手、彭帥さんが張高麗元副首相との長年の性的関係を告白してから消息不明になっていた約2週間、国連やホワイトハウス、女子テニス協会、一部の有名スポーツ選手は彭さんの安否に懸念を表明していた。そして、身の安全を主張する中国当局の公式見解には懐疑的だった。
一方、来年2月に北京冬季五輪の開催を控える国際オリンピック委員会(IOC)は違ったようだ。IOCは21日、バッハ会長と彭さんによる約30分間のビデオ通話を行い、中国側の主張を支えた。ビデオ通話にはIOCアスリート委員会のエンマ・テルホ委員長と中国のIOC委員を務める李玲蔚氏も同席した。
しかしIOCは、重要な懸念事項については言及しなかった。なぜ他の人は彭さんと連絡が取れないのか、彭さんは自由に移動できるのか、なぜ自身のソーシャルメディア「微博(ウェイボ)」のアカウントに投稿しないのか、なぜ独立系メディアとは話そうとしないのか、などだ」
(ブルームバーク11月23日)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-11-22/R2Z6F3DWLU6B01

まず、彭さんがテレビ会談した相手になぜIOCが選ばれたのでしょうか。
彭さんはテニス選手であって、冬季五輪には無関係なのに,なぜバッハがしゃしゃりでてきたのか解せません。
そうでなくてもこの人物は、東京五輪の際には朝鮮半島南北統一チームをつくらせようと画策し、森会長から拒否されたこともある人物です。
元来政治的な動きが好きなバッハが、冬季五輪の開催国である中国となんらかの意思疎通があって、このテレビ会談を実現させたのは、まず間違いないところです。

「北京五輪開催まで70日余りとなった今、IOCの声明は彭さんの状況についての疑問を増しただけでなく、五輪の経済的な実行可能性を守ることが最優先というIOCに対する評判を裏打ちした格好だ。
米パシフィック大学のジュールズ・ボイコフ教授(政治学)は「IOCは中国との協力については長らく、故意にだまされやすいところを見せてきた」と指摘。五輪に関する著書4冊を執筆した同教授は「IOCは基本的に開催国に敬意を払い過ぎている。中国で起きていることに関する難しい真実を持ち出した市民を消すという長年の実績がある国に対してだ」と語った」(ブルームバーク前掲)

また、環球時報が奇妙な動画をツイートしていますが、不必要に日別を言わせるなと嘘臭いシロモノです。
中国外務省の「戦狼」外交官こと趙立堅はこんなことを言っています。

「【北京時事】中国外務省の趙立堅副報道局長は23日の記者会見で女子プロテニス選手、彭帥さん(35)の状況をめぐり海外で懸念表明などの反応が相次いでいることに対し、「一部の人たちに悪意のある宣伝をやめるよう望む。政治問題化してはならない」と主張した」(時事11月24日)

当然のこととして誰もこんな中国の小細工など信用せずに、かえって中国に対する疑惑を決定づけることになってしまいました。

【ロンドン=板東和正】中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区の人権問題をめぐり、中国政府の制裁対象となった英保守党のイアン・ダンカンスミス元党首が産経新聞のオンライン取材に応じた。同氏は来年2月の北京冬季五輪について「法の支配や人権を支持していない中国に、国際的なスポーツの祭典を(開催する権利を)与えるべきではない」と指摘。日米欧などは北京五輪に首脳や政府使節団を送らない「外交的ボイコット」を連携して実施するべきとの考えを示した。
ダンカンスミス氏は2020年6月、日米欧などの議員らが中国政府による人権侵害などを監視する「対中政策に関する列国議会連盟」(IPAC)の設立を主導。IPACの加盟国は欧米を中心に約20カ国にのぼり、米共和党のマルコ・ルビオ上院議員や中谷元・元防衛相ら各国の対中強硬派が参加している」
(産経11月23日)

また、米国はメディアが大きく取り上げ、バイデンも外交的ボイコットの実施を検討していると表明しました。

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米 ペロシ下院議長 北京五輪「外交的ボイコットを」(2021年5月20日

「ジョー・バイデン米大統領は18日、中国・北京で来年2月に開かれる2022年冬季オリンピックを、アメリカが外交的にボイコットすることを検討していると述べた。
外交的ボイコットは、政府関係者をオリンピックに派遣しないことを意味する。
バイデン氏はこの日、メキシコとカナダの首脳らとの協議を前に、「それが今検討していることだ」記者団に語った。
アメリカでは与野党の議員が共に、中国の人権侵害に対する抗議を示すとして、外交的ボイコットを求めている。(略)
米上院では先月、政府代表団の北京冬季五輪への参加のために国務省の予算を使うことを禁止する修正法案を、議員らが提出した。
与党・民主党の最有力者であるナンシー・ペロシ下院議長は、北京冬季五輪の外交的ボイコットを要求している。同五輪に参加する米指導者は「道徳面での権威」を失うだろうとしている。
共和党のトム・コットン上院議員は18日、「集団虐殺オリンピック」の外交的ボイコットでは「弱すぎるし、遅すぎる」と主張。すべての選手や関係者、米スポンサー企業らを含めた完全なボイコットが必要だとした。
ドナルド・トランプ前大統領の政権で国連大使を務めたニッキー・ヘイリー氏も、全面的なボイコットを呼びかけている 」
(BBC2021年11月19日)

おそらく英国、欧州連合(EU)などを加えた自由主義陣営各国は、揃って外交的ボイコットを実施すると見られています。
トランプならば外交的ボイコットではなく、全体のボイコットをしていたはずですが、バイデンは腰が引けています。

バイデンは習との直接会談でもこのことを問いたださそうとせず、「古い友人」という不名誉な勲章すらもらってしまいました。
しかし今や、バイデンの思惑を超えて、北京五輪への抗議の声は、国際社会に充満しています。
自由主義国家群は、揃って外交的ボイコット、いやその先の完全ボイコットまで発展しかねない様相です。
なぜならこの彭帥さん事件は、民主主義の根幹にある価値観を問う問題だからです。

中国共産党は、中国共産党政権を批判することは、とりもなおさず中国を批判することだと見なし、中国共産党=中国という姿勢を保ってきました。
その結果、現政権を批判する声は、「反中国」「反民族」というレッテルを張られ、そして時には銅鑼湾書店やこの女子テニス選手のように失踪という目に遭遇してきました。

それにしても、政府の要人に不利なことを発言しただけで失踪してしまう国家で行われる「平和の祭典」とはなんなのでしょうか。
岸田氏と林氏は、この問題が問うている本質がなんなのか、自らに問うてみることです。
王毅は林外相に訪中を要請しましたが、それは自由主義陣営の最も弱い環だと日本が思われているからです。
こんなあからさまな分断工作に乗るほど馬鹿だとは信じたくはありませんが、道は限られています。
かつての自民党のように「中国の古い友人」に戻るのか、毅然として自由主義国の友邦と共に民主主義のために戦うのか、選択肢はふたつしかありません。

 

2021年11月23日 (火)

オールド自民党が蘇ったのか?

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おーい、岸田さーん、そっちへいったらダメだよ~。
今日は、環境運動家と中国の隠微な関係について書くつもりでしたが、こちらを先に。

岸田政権の意識下に眠っていた「オールド自民党」の地金が早くも目を覚まそうとしているようです。
私がここで「オールド自民党の地金」と呼ぶのは、相手国と対立関係に入りそうになると、原則を放棄してズルズルと相手におもねり、国益に反する妥協点を自ら差し出してしまうような外交姿勢です。
自民党は、冷戦期から一貫してこのような強きになびき、弱きに安んじてしまうあいまい外交を得意としてきました。

相手国と対立軸が出来そうになると、自分から相手にすり寄る妥協案を作ってしまい、それをあらかじめ落とし所にするような卑しい習性は、特に中韓相手にいかんなく発揮されましした。
それは初めは贖罪意識から始まり、やがて利権に結びつきました。
特にリベラル左翼が党執行部を握った前世紀最後の10年間は、河野談話など後々禍根を残す妥協を積み上げた結果、かえって中韓に自民は居丈高にふるまえば必ず妥協してくるという誤った認識を与えてしまいました。
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ハーバート・マクマスター 中央
先日、韓国を訪れた元ホワイトハウス国家安全保障補佐官のマクマスターはこう述べたそうです。

「マクマスター氏が軍将軍出身で直説話法に慣れているといっても、元ホワイトハウス高官が韓国政府の北朝鮮へのアプローチ法を公開批判したのは異例だ。
これは任期末の文政府の対北政策に対する米国一般の見解を示しているという観測だ。
マクマスター氏はこの日、「北朝鮮を交渉に参加させるために譲歩し、交渉が進んで挫折感または脱力で成功の見込みがないのに譲歩に譲歩を繰り返したあげく非常に弱い合意に到達する。
北朝鮮は経済的な見返りを取りまとめると同時に合意に違反し、再び挑発→譲歩→合意の違反サイクルを始める」として批判の根拠を説明した」(中央日報2021年10月16日)

このような北への際限のない宥和姿勢をマクマスターは「狂気の沙汰」と呼んだとのこと。
米国人でなければ、こんな率直な物言いはしません。
かつてルトワックは北のミサイルの射程内にソウルがあると言って言を左右する韓国に、「ならばさっさとソウルを引き払って中部に移転させろ」と直言したそうですが、マクマスターもさぞかしウップンが溜まっていたのでしょうね。
韓国が、このような米国人の直言を友情溢れるアドバイスだと感じなければ国を滅ぼします。

同じように「譲歩し、交渉が進んで挫折感または脱力で成功の見込みがないのに譲歩に譲歩を繰り返したあげく非常に弱い合意に到達する」ことを、韓国と中国に対してやってきたのがわが国です。
韓国が日本に対する竹島、慰安婦問題、日本企業への補償請求等々、あらゆる場面で同じことを繰り返し、同じ成果を期待するようになったその理由は日本のこの「狂気の沙汰」の外交姿勢にあるのです。
それにしても、韓国は北にシッポを振り、その北は中国に頭が上がらない、わが国といえはこんな韓国にいいように引き回されて、常に譲歩を繰り返してきたとすると、なんだ日本は東アジアの食物連鎖最下位ではありませんか。

さて、韓国側は岸田政権で、再びこの宥和外交が戻って来ると信じているようです。
韓日議員連盟傘下の「朝鮮通信使委員会」所属の韓国国会議員らは、11月18日に訪日し、東京で日本側の日韓議連に面会し、「日本では岸田文雄内閣が発足し、韓国では来年春に新政権がスタートする」とし「新しい酒は新しい革袋に盛れというが、新政権発足の機会を両国が賢く活用する必要がある」と述べたそうです。
そして日韓議員サッカー大会をするのだとか。もう呆れてものが言えません。
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聯合
「鄭氏は超党派でつくる韓日議員連盟の朝鮮通信使委員会の委員長で、同委に所属する与野党の議員5人を率いて16日から20日の日程で訪日している。
鄭氏が日韓議員連盟の会長代行で元衆院副議長の衛藤征士郎氏に大会の開催を提案したところ、快諾されたという。
 W杯の韓日大会の開会式が行われたソウルワールドカップ競技場と、閉会式が行われた横浜国際競技場を使ってホームアンドアウェー方式により、来年の春と秋の開催を推進するという。
鄭氏は昨年5月から「国会議員サッカー連盟」の会長を務めており、同連盟には現在、与野党の議員60人が所属している」(聯合11月17日)
こんな愚かな「親善」外交が中韓との関係をいっそうこじらせ、日米関係を不安定にさせてしまっていたのは、ご承知のとおりです。
このオールド自民党のDNAは宏池会系に強く温存され、世上では岸田氏も安倍外交からの脱却を狙っているとささやかれていました。
私はといえば、岸田氏については出自で見ずに、是々非々で判断することに決めていましたから、お手並み拝見といったところでした。
まぁ岸田氏は安倍氏の外相として5年外交を支えた人だというのが保険だと思っていたんですがね。
ところが、いきなりやって頂いたようです。
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産経 林芳正外相

たしかにその予兆はありました。
人もあろうに日中議連会長の林芳正氏を外相に据えた段階で、おいおいこんな露骨な中国へのすり寄りをするのかい、と誰しも思ったでしょうが、次に出てきたのが人権法案に対しての消極的、いや有体に言ってやる気ナッシングという岸田氏のこの姿勢でした。
「岸田首相は『日本版マグニツキー法』の制定を当面見送る方針を固めた」「外為法など既存の法律を活用し、資産凍結や入国制限を可能とする方策を検討する。対中外交の選択肢をより多く残しておく狙い」「新法制定で中国を過度に刺激するのを避ける」「岸田政権の姿勢に欧米各国の理解が得られるかも焦点」(共同11月16日)
習を「神」と戴く中国共産党政権による人権弾圧は、100万人以上のウイグル人を強制収容所に送り込み、ウィグル族を抹殺するところまで進行しています。
チベット人やモンゴル人も同じく人権侵害に苦しみ、香港からは自由と民主主義が一掃されました。
欧米が五輪の外交的ボイコットという制裁に踏み切る中、わが国だけが中国擁護に回ったと思われても致し方ないことです。

このフニャニャけた岸田政権と対照的に、時を同じくしてオーストラリアはこのような態度を鮮明にしました。

「【シンガポール=森浩】オーストラリアが台湾有事の際、米国と共同歩調をとる姿勢を示した。豪州は米英と安全保障協力の枠組み「AUKUS(オーカス)」を創設するなど、中国を念頭にインド太平洋地域の安定に関与する姿勢を強めている。
国内には対中融和論もある中、台湾への軍事行動を座視しない姿勢を鮮明にし、中国の動きを牽制(けんせい)した形だ。
ダットン国防相は12日付の地元紙オーストラリアン(電子版)のインタビューで、米国が台湾防衛のために軍を投入した場合、同盟国である豪州がその軍事行動に参加しないことは「考えられない」と述べた。
「高いレベルの準備と、より大きな抑止力を確保する必要がある」とも話し、中国への対抗を念頭に軍備増強を進める意向も示した」(産経2021年11月18日)
豪州、台湾有事なら米国支援 中国を牽制 - 産経ニュース (sankei.com)

方やオーストラリアが、中国が台湾に進攻すれば米軍と共に戦うと明言しているという時に、わが国は外相が中国に友好の旅にご出発ですか。
私は絶望的に呆れました。話が違うじゃないですか、岸田さん。
岸田氏は総裁選で日本版マグニツキー法に賛成する姿勢を示し、人権担当首相補佐官まで設置すると踏み込んだ公約をしていたはずです。
中国に毅然とした態度を取ると言った口がまだ乾かないうちにこれですか。

「人権外交議連の副会長を務める自民党の山田宏参院議員は「日本政府が示すべきは、中国の人権弾圧に対する『明確な姿勢』だ。欧米と共通する『自由』『民主』『人権』といった価値観に基づき、行動しなければならない。共同通信は『外為法など既存の法律を活用して…』と報じていたが、日本には『人権』で横軸を入れてペナルティーを科す法律はない。既存の法律での対応とは似て非なるものだ。中谷氏も補佐官になった以上、法整備に向けて努力してほしい」と強調した」(ZAKZAK11月18日)

人権法の補佐官にいままで人権法議連会長の中谷元氏を当てたときには、私はてっきり今秋国会で通すのだとばかり思っていましたが、その中谷氏もこのザマです。

「第2次内閣発足を受けた10日の記者会見では、新法制定について「超党派の議論も続いている」と明言を避けた。中谷氏も15日のBS日テレ番組で「(新法制定は)簡単にはいかない」と慎重な姿勢を示していた」(ZAKZAK前掲)

はっ、やる気ないね、中谷さん。
「超党派の議論」ウンヌンじゃなくて、林外相、いや岸田首相本人からストップがかかったんじゃありませんか。
なんですって、「対中外交の選択肢をより多く残しておく狙い」ですって、ご冗談を。
人権法こそ、対中、対北外交に「新しい選択肢」を与えるものであって、話が逆です。
結局、本音は「新法制定で中国を過度に刺激するのを避ける」ってことでしょう。
出ましたね、強きに弱く、媚びへつらうという宏池会体質が。

そしてとうとうこんなことを林外相は言い始めました。
「林芳正外相は21日、フジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」(日曜午前7時30分)に出演し、中国の王毅国務委員兼外相から中国訪問の要請があったことを明らかにした。
18日に電話会談した際に、招待されたという。
具体的な日程については「現段階でまだ何も決まってない」と述べた。
外務省幹部はFNNの取材に林外相の訪中について検討に入ったことを明らかにした」
(FNN11月18日)
林外相は訪中を検討しているということですが、台湾進攻が現実のこととしてあるこの時期に、最初の訪問国に中国を選ぶというのがいかなる外交的シグナルか子供でもわかりそうなものを。
もし仮にこんなことを実行するなら、私はオールド自民党が蘇ったと判断せざるを得なくなります。

 

 

2021年11月22日 (月)

中国を問わないCOPは無意味だ

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今度のCOP26を見ていて、やれやれと思われたのは私だけではないでしょう。
CO2人為説が正しいのかどうかは、とりあえず置きます。そこにこだわると先に進みませんので。
問題は仮に世界宣言を出したとしても、かんじんのこの会議に世界の政府を招集した目的であるCO2は削減できないからです。

理由は知れたこと。
最大のCO2排出国が我関せずでいられるような会議だったからです。
中国は掛け値なしに世界最大のCO2排出国です。
ですから中国がCO2を抑制さえすれば、なにも世界の政府が自国の経済を破壊しかねない取り決めをする必要などそもそもなかったからです。

データーを押えておきましょう。
まず中国は世界のCO2排出量の3分1を占める巨大排出国です。

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トップは中国、世界の3割近く…世界の二酸化炭素排出量の実情を

環境NGOはわずか排出量比率3.2%の日本や、1.2%のオーストラリアに化石大賞を与えて悦に言っていましたが、なにを見てそういっているのやら。
日本がいくら2030年までに26%減らして、そのために日本が常に大停電の脅威にさらされ続けたとしても、世界全体のCO2はこれっぽっちも減らないのです。

そして中国は世界一の石炭依存大国です。
中国のエネルギー源比率((2019年現在)で、石炭は57.7%、発電ベース比率で62.1%です。
これだけ石炭に傾斜したエネルギー源を持つ国は、インドを除いては世界にはありません。

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主要国の一次エネルギー消費構成と自給率|データ集|一般社団法人

上図の黄色が石炭です。中国は下から3番目にあるのでよく見て下さい。
圧倒的に世界一の石炭依存度で、わが国の3倍に達しているのがわかりますね。

またエネルギー消費の増加率においても世界一です。

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世界のエネルギー消費量上位10カ国 堀井伸浩氏による

中国と米国が圧倒的な消費量で、米中のエネルギー消費だけで世界全体の4割を消費しています。

「折れ線で示したのは2000年時点での消費量の合計であるが、棒グラフと比較してみることで、中国の2000年代のエネルギー消費量の急増ぶりが際立っていることが理解できる。中国はこの10年間で、ド イツ以下、2010年時点の世界の第5位から第10位の国々のエネルギー消費量を足し合わせた量とほぼ匹敵するエネルギーの消費を増加させることとなったのである。中国はまさに、この2010年にアメリカを抜いて世界最大のエネルギー消費国となった」
(堀井伸浩『2000年代に進んだ中国エネルギー問題の構造変化』
産業経済論から中国のエネルギー問題の深層を照らす(その1)2000年代に進んだ中国エネルギー問題の構造変化

ちなみにわが国はインドの下で第5位です。
この10年間、先進自由主義諸国はエネルギー低消費型産業構造に転換しましたが、中国はエネルギー大量消費型の産業構造のまま経済成長を続けた結果が、これです。
すでに10年前の2010年には中国は米国を抜いて世界最大のエネルギー大量消費国となっています。

とうぜんのことながら、輝く石炭輸入世界一です。

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中国石炭輸入推移 同上

「近年、更に大きな変化があった。主要エネルギーである石炭についても、中国は輸入を急増させているのだ。
(上図のように)2009年に石炭の輸入量は突如急増し、2010年も引き続き増加している。2 011年には中国の石炭輸入量は1億8240万トンとなり、長年、世界最大の石炭輸入国であった日本の1億7522万トンを上回り、世界最大の石炭輸入国となった」
(堀井前掲) 

ですから、CO2排出問題とは中国問題であり、中国の規制を問わないCOPなどいくら開いても無意味なのです。
オーストラリアが石炭を輸出しているから化石大賞なら、それを買っているほうを問わないでどうなるのでしょうか。
いずれにしても、中国を度外視したCOPなど、たとえ何百回何千回開いても無意味なのです。

ところが、唾を吐きかけられたわが国やオーストラリアと違って、中国の評価は環境NGOにはすこぶるよいようです。
いやそれどころか、こう環境活動家らは中国を褒めたたえています。

「例えばグリーンピースは「持続可能性を優先したことは、世界における中国の遺産を確固としたものにするであろう」と述べた。世界自然保護基金(WWF)は、「習主席が発表した新たな目標は、世界の温暖化対策を一層強化することについての、中国の揺るぎない支持と断固とした措置を反映している」と述べた。天然資源保護評議会(NRDC)のバーバラ・フィナモア氏は『中国は地球を救うか』と題した本を執筆して中国の環境対策を賞賛した」
(パトリシア・アダムス『紅と緑・中国の使える愚か者』
https://www.thegwpf.org/content/uploads/2020/12/Green-reds.pdf

そしてアダムスはこうも述べています。

「環境NGOは中国での活動を許されている。だが共産党政府は、彼らの中国での活動を監視し、コントロールをする権限があり、環境運動が政府への批判や民主化運動に転じることを阻止している。
 環境運動家は、中国が「地球を救うという大義」を掲げさえすれば、南シナ海での中国の侵略や本土での人権侵害に目をつむってしまっている。
諸外国から非難を浴び続けている中国にとって、環境運動家が好意的であり賞賛を惜しまないことは、貴重な外交的得点になっている。環境運動家は、共産党の応援団となっており、その危険性から注意をそらすのに役立ってしまっている。だからこそ、中国は欧米の環境運動家を喜んで受け入れている」(アダムス前掲)

 この中国に大甘どころか、いまや翼賛集団と化した環境NGOが大きな影響力を持っているのがこの気象変動の分野なのです。
これは同じNGOでもアムネスティなど人権運動家が中国国内の活動を禁じられているのとは大きな違いです。
そう考えると、中国が敵視する日本やオーストラリアになぜ化石大賞を送る一方で、中国を礼賛したのかのかそのワケが見えてくるようです。
これについては次回に続けます。

 

2021年11月21日 (日)

日曜写真館 川水は海へ天へと 雷雨へと

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風が沁むから 抱き合う 波止場の突端です 伊丹三樹彦

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繋ぐ 下ろす 担ぐ 運ぶ みな東風の波止場 伊丹三樹彦

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老移民 波止場の寒の水を飲む 伊丹三樹彦

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杖の古老曰く 島を出るため波止場はある 伊丹三樹彦

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目が合うて波止につきくる羽抜鳥 小関 芳江

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上衣棄てた球勢 波止場のミット音 伊丹三樹彦

 

伊丹三樹彦と山頭火にはまっています。
二人とも私のヘボ写真に対応してくれませんので、ひとつお許しを

 

2021年11月20日 (土)

まだ言っているのか、沈むツバル

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連日グラフ漬けですいませんでした。
気象変動はグラフなしでは説明できないもので。
とりあえず今日が最後になります。

私が言いたいことを一言で要約すれば、まだよく分かっていないことに勝手に結論をつけ、あまつさえ世界全体がひとつの方向に走り出すな、ということです。
地球気候システムはほとんど未知の分野であり、研究途上だということは科学者自身が認めていることです。
来週の天気予報もはずすのに、どうして100年後の地球の気候を予測できるのでしょうか。
雲の動きのメカニズムさえ解明しきれていない人類に、そんな能力はありません。

したがってすべて仮説です。それもなんどとなく言ってきたように、仮説には多数あります。
にもかかわらず、なぜかもっとも人類の生活に打撃を与えるCO2人為説という説だけを意図的に取り出して普遍的正義として、世界で脱炭素に走りました。
人類のもっとも古いエネルギー源の一つである石炭を全廃しようというのですから、行き過ぎも度いいところです。
国によって半分以上のエネルギー源を石炭に依存しているというのに、それを取り上げてしまうことがいかに恐ろしいことなのか。

ところで、かつて気象変動の証拠として取り上げられた現象の大部分は、その後の調査で否定されています。
結局、検証に耐えないプロパガンダだったの
です。
そのひとつにツバルがあります。
今回のCOP26でも、温暖化の被害者として登場したのが、またもやこのツバルでした。

石炭や石油などの化石燃料からの脱却が主要議題となる中、産油国のサウジやロシア、石炭産出国オーストラリアなども「針のむしろ」状態だった。国際環境NGO「CAN」は温暖化対策に後ろ向きな国に贈る「化石賞」をCOP26期間中に6回も受賞した豪州を「化石大賞」に選出した。
 水没の危機にある太平洋の島国ツバルのパエニウ財務相は、「ツバルは文字通り沈んでいる。行動が今すぐに必要だ」と涙ながらに各国代表団に訴えた。しかし、温暖化の影響を直接受ける国々の切実な呼び掛けも、こうした主要排出国の行動を大きく変化させるには至らなかった」(時事11月14日)

ツバル外相はひざまで海に漬かって演説をしました。

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「南太平洋の島国ツバルの外務大臣が、膝まで海に浸かりながらスピーチし、気候変動の緊急性を訴えた。
このスピーチは、イギリス・グラスゴーで開催中の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)のために、首都フナフティのフォンガファレ島で撮影された。
海抜が低いツバルは、地球温暖化の影響を最も大きく受けている国の一つで、海面上昇による水没の危機にさらされている。
この状況を伝えるために、スーツとネクタイ姿のサイモン・コフェ外相は、ズボンの裾を膝丈までまくり上げた状態で海の中の演台に立ち、各国のリーダーたちに語りかけた」(2021年11月9日ハフィントンポスト 上写真も同じ)
https://news.goo.ne.jp/article/huffingtonpost/world/huffingtonpost-6189c8c2e4b06de3eb79909b.html

さて地球温暖化説を唱えるIPCCは、北極やヒマラヤの氷河が溶けているだけではパンチに欠けると思ったのか、既に海水面上昇で南太平洋の島々が沈下して住めなくなっている、難民が沢山でるぞと叫びました。
この話は、やがてオランダは水没,東京も半分水没、バングラディシュ水没と、どんどんと尾ひれがついて膨らんでいきます。
その最初の人間の住む地域の水没の例としてIPCCが訴えたのが、「沈み行くツバル」でした。

いつの間にかツバルは、地球温暖化の悲劇のシンボルになっていたわけです。今でも環境省のHPには大きくツバルが乗っています。(※欄外に転載しました)
ほんとうに温暖化による海水面上昇によってツバルは沈んでいるのでしょうか?

結論から言いましょう。していません。上がったのは海面ではなく、逆にツバルのほうが珊瑚礁の圧壊で沈んだのです。

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South Pacific Sea Level and Climate Monitoring Project

まずは上図オーストラリア政府のSPSLCMP(南太平洋海面・気候モニタリングプロジェクト)のデーターをご覧頂きたいのですが、ツバルでは1mどころかわずか75㎜の海水面上昇しか計測されていません。
この記録は、ツバル近海のフナフチ環礁で1993年5月から2006年5月までの13年間の記録の累積の総計です。
つまり表の右から2番目のトレンド(傾向)の毎年の観測数値を13年間分足してみると75㎜となったというわけです。

1年間に75㎜だとすると、確かに危険な数字ですが、あくまでも13年間の総計です。1年にすると1㎝にも満たないわけです。
ですから、このデーターの見出しの書き方は、やや誤った印象を私たちに与えてしまいますので、ご注意のほどを。くどいですが13年間のトータルの数字です。

もうひとつグラフを出しましょう。下図はオーストラリア気象庁の公表データかあります。これは1993年からツバルの首都フナフチを測ってきた16年間のデータです。

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どう見ても横ばいです。これを見てどうしてツバル周辺海域で海水面上昇が発生したといえるのでしょうか。 

3枚目にハワイ大学の観測記録を載せておきましょう。下図は1977年から99年までの23年間の計測データですが、上昇は0.9㎜で1㎝にも満たない数値です。 
科学の世界では、複数の公的機関が10年以上の長期で継続して計測したデータが、一致して同じ結論を出した場合にはそれを有意として扱います。

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英文でTuvaluと検索するといくつかの英文の論文にヒットしますが、その中でサリー・バリューナス博士の「ツバルは沈んでいるのか?」という論文をご紹介します。 
この論文はふたつに分けられ、前半でツバルの海水面のデーターを見ています。そして後半はその原因を考えています。
博士は、ポセイドン観測衛星の記録から海水面は約10㎝落ちていると報告しています。
 

また1978年以来の潮位記録から、1997年~98年のエルニーニョ(4年に一回発生します)には約30㎝も潮位が落ちているそうです。 
このようにエルニーニョは、太平洋を取りまく島々の海流や気圧に大きな影響を与えている最大のものです。  
博士は、オーストラリアの潮位観測の責任者であるウオルフガンシェーファーさんの意見も取り上げています。
この中でシェファーさんは「海水面の上昇があるという観測データーはどこにもない」と断言しています。
どう考えても、13年間で最大58㎜、最小で0.9㎜ていどの海面上昇でひとつの島の沈下が引き起こされると 考えるほう無茶ではないでしょうか。 

さて、この1㎝にも満たない海面上昇で、いかに海抜1mのツバルといえど果たして海に沈むでしょうか?
考えるまでもなく、そのようなことはありえません。
ツバル沈降の主要な原因は隆起珊瑚礁の浸食なのです。
沖縄の八重山に行くと、同じ隆起珊瑚礁ですから、少しずつ削られていくのが目でみえる地点がいくつかあります。
これは別に隆起珊瑚礁のみならず、海岸淵の岩場に行ってみれば同じような浸食が見られます。
世界で年間70㎜ていどの浸食を受ける島などザラですから、このていどの島の沈下で沈むツバルのほうが特殊なのです。

ツバル沈降の原因について、大阪学院大学教授で、太平洋諸島地域研究所理事の小林泉先生は以下のように指摘しています。
このミクロネシアを知悉した小林先氏の意見は、私にもしごく妥当に思われます。

①日本より稠密な人口密度が、狭いツバルの、しかももろい隆起珊瑚礁を圧壊している。
②アメリカ型の生活スタイルの定着によりペットボトルなどのゴミの散乱など島の環境破壊が進んでいる。
③滑走路の水没は、かつての米軍のいいかげんな工事のためである。

また、この調査をした南太平洋海面・気候モニタリングプロジェクトのプロジェクト・マネージャーのフィリップ・ハル氏は、このような海水面上昇は10年ではまだ短く、20年以上といった長期の観測が必要であると語っています。
原因として、エルニーニョなどの異常気象を挙げています。

2002年のオーストラリア政府の発表によると、1978年~2001年の期間に、ハワイ大学とAustralian National Tidal Facility (NTF)の共同研究では、データーの欠損を認めつつ、ツバルの首都フナフチ環礁での海面上昇は約1㎜程度であり、危惧する必要はないという意見を出しています。

沈下面積が増えるツバルの皆さんには大変に言いづらいことですが、公平に見て、島民の苦難とは別に、その原因は地球温暖化にはないと思わざるを得ません。
こんなばかなことが起きたのでしょうか。それについて海水面研究の世界的権威であるストックホルム大学メルネル教授はこう言っています。

「第3次、第4次IPCC報告書には海水面上昇の専門家がひとりもいなかった。報告書を書いたのは、現地の観測者ではなく、ただのコンピュータ計算屋があらかじめ決まった南太平洋諸島水没モデルにあわせてモデルを作っただけだ」

なんのことはない、IPCCがもったいぶって出した報告書で、ツバル現地で計測していた人間はおろか、海水面の研究者すらいなかったのです。
まったくひどい話です。このような現場で長年観測をしてきた科学者の知見を無視して、コンピュータのモデル計算だけで済ますという悪しき体質がIPCCの気象屋にはあるようです。
そのために、局地観測者や海洋観測者の中はIPCCに強い不信感を持っている人が多いようです。

たとえば、オーロラ観測の第一人者であるアラスカ大学赤祖父俊一教授、海水面研究の第一人者ストックホルム大学メルネル教授は共に、地球温暖化説の強い批判者です。
IPCCはほんとうにツバルで観測したのではなく、世界の海水面上昇平均0.17mをツバルの標高から引いて騒いできたようです。

IPCCの初めに結論ありきのプロパガンダに使われたのが、ツバル水没なのです。

 

 

 

2021年11月19日 (金)

過去にも度々あった地球温暖化

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もう少し気象変動について続けます。
地球温暖化は特に珍しい現象ではなく、COP26が言うように産業革命から突然始まったわけでもありません。
たとえば、日本の古代縄文期、古代ローマ時代、そして中世など、人類がこの地球上に現れてからもなんどとなく気温上昇をみました。

下のグラフは国立極地研究所の採取したもので、上から過去170年間、中は過去千年間、下は過去4千年間年の温度変化データです。
気象観測データ(赤線)と観測と気候モデルから導出したデータ(黒線)を、氷床コアを使った温度復元データ(青線)と比較
したものです。  

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●国立極地研究所、グリーンランド過去4千年の温度復元(2015年1月

 極地研は上図の結果から、このように述べています。

「気温変動の長期傾向としては、過去4千年間で1.5℃程度の寒冷化傾向を見いだした。
過去十年間(西暦2000年から2010年まで)におけるグリーンランド氷床の頂上付近の平均気温は、過去千年の温度記録のなかで2度起こった特に気温の高い時期に匹敵することが判明した。
なお、それらの高温期は西暦1930-1940年代と西暦1140年代に発生している。
過去4千年間には、現在を上回る温暖期が繰り返し発生していることがわかった。
これらの結果から、最近十年間の平均気温は、過去4千年でみれば自然起源で変動しうる範囲に収まっている」(極地研前掲)

極地研は、「人為起源の温室効果ガスの放出により今後さらに温暖化が進行することが懸念されている」としなからも、過去千年に3回数十年の期間に渡って30度以上の期間があったとしています。
まず中央のグラフをご覧下さい。左から西暦1140年代頃(中世温暖期)、1930~1940年頃、そして現代2000年代の3つです。

さらに上段グラフを見ると、過去4千年まで時間を遡れば、紀元前にはたびたび30度を超える時期が存在しているのがわかります。
また下段グラフはいちばん直近の170年スパンの温度変化ですが、1930年代に30度を超えた期間があるものの1970年代には寒冷化の時期も存在します。

このように見ると、極地研が言うように、「最近十年間の平均気温は、過去4千年でみれば自然起源で変動しうる範囲に収まっている 」というのが正直な事実で、地球の温度は上昇と下降を繰り返しているのです。
決してCOPが警告するように産業革命以降一本調子で上昇し続けているわけではありません。

では、CO2増大と気温上昇には相関関係があるのでしょうか?
そう、確かにあることはあります。
ただし、一般に流布されているように「CO2増大によって気温上昇が起きた」のではなく、その真逆のプロセスによって、ですが。 

今日もグラフばかりで恐縮ですが、次の図をご覧ください。 

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上図の破線がCO2です。実線が気温です。一見パラレルですが、よく見ると面白いことに気がつきませんか。
そうです、CO2の増大は気温上昇した「後」に発現しているのです。
 
この現象はちょうどサイダーを温めるとブクブクと炭酸の泡が出てくるように、海水面の温度上昇により海水に含まれていたCO2が空気中に放出されるからです。 

現在の気温ですとCO2放出が支配的ですが、0.6℃低下するとCO2濃度の上昇は止まるとの説もあります。 
ひとつつけ加えれば、CO2は自然界からも放出されており、人間活動由来なのは、そのうちたかだか3%でしかないのです。 
このように考えると、大気中の質量比0.054%にすぎないCO2が、その6倍もの0.330%の質量比をもち、5.3倍の温暖化効果をもつ水蒸気より温暖化効果があるというのは不自然ではないでしょうか。 

なんらかの原因で地球が温暖化した結果、海水温が上昇し膨大な水蒸気が発生し、それに伴ってCO2も放出されたと考えるのが素直だと思われます。 
また、そのCO2排出量のわずか3%ていどしか人間由来でないとすれば、人間活動由来のCO2「こそ」が地球温暖化の主犯であると決めつけるのは、あまりに飛躍がありすぎるように思えます。 

私は人為的炭酸ガスが増大していることは事実だと考えていますし、それが温暖化の一因となっていることも確かだろうと考えています。
また歯止めのない工業化が自然環境を破壊していることも事実だと思っています。
さらに
現在なにかしらの複合的原因で、地球温暖化が進行する時期に当たっていることも事実だと思います。
ここまではCO2人為説派と一緒です。

ただしここからが違うのですが、地球温暖化の原因と思われるのは、太陽黒点の変化などたぶん片手の指の数では足りないほど存在します。
たとえば、そのうち黒点の変化説はこのようなものです。

太陽の黒点の数はガリレオの時代から観測されています。黒点数と地球の気候に相関があることは以前から知られていました。
黒点数はおよそ11年の周期で変動していますが、17世紀のマウンダ―期とよばれている時代にはほとんど黒点がありませんでした。
下図の縦軸が太陽黒点数で、横軸が気温です。
縦軸が減少すると、気温も低下しているのがわかります。

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太陽黒点数の変動 「気候変動とエネルギー問題」深井有

この時期にはロンドンのテームズ河が冬に凍り、氷の上でスケートをする絵が残されています。19世紀初めにも黒点数の少ないダルトン期があり、それ以降現在まで黒点数は上昇傾向にあります。
黒点数の変動周期と地球の平均気温をプロットしたのが下図で、太陽黒点と地球気温はあきらかな
相関性を示しています。

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黒点数と平均気温の相関  深井前掲

つまり太陽の黒点が減り、その周期が伸びると地球は寒くなり、その反対は暖かくなるのです。
このような太陽黒点と地球気温の研究はいくつかあります。
下図は名古屋大学小川克郎名誉教授による、地球寒冷化を示す観測データです。

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尚業千、菅井径世、小川克郎『過去110年間の地球気温変化とCO2放出及び太陽活動との関係~NASA/GISS気温データベースによる』
Microsoft Word - 小川先生編集.doc (mottainaisociety.org)

 先入観なしにご覧ください。
あきらかに気温、気候の変化は太陽活動と相関しています。
単調な人為的CO2増加では説明が出来ません。
しかしこの太陽黒点の変動だけでも説明しきれず、宇宙線による変動説(スヴェンスマーク説) や地球規模の海流の変化など諸説があります。

頭を冷やしして視野を拡げましょう。
あと20年もたったら、なぜあのとき世界全体が狂ったようにひとつの方向に進んでしまったのか不思議にさえ思うことでしょう。
そして当時多様性、多様性と言いつつ、いかなる多様性も許さなかったのが、この気象変動だと気がつくかも知れません。

 

 

2021年11月18日 (木)

そうとうに怪しい人為的CO2主犯説

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CO2が地球温暖化の主原因だとする定説は、なにから生まれたと思いますか。
なんとこれが金星なのです。
分厚いガスが地表を覆って高温にしていると考えた人らが、そうだ地球温暖化の原因はこの温暖化効果ガスじャないかとひらめいちゃったんですね。
石炭の悲劇はこの瞬間から始まります。

温暖化効果ガスといっても何種類もありますが、そのうちの主犯と見なされたのが炭酸ガスでした。
ここで問題となるのは、この炭酸ガスの発生原因です。
自然由来なのか、それとも人間社会が生み出した経済活動によるものか、その原因によって対処方法が違うからです。

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アゴラ

炭酸ガスは人間活動が作り出したのだとするのが炭酸ガス人為説です。
これがどうしたことか圧倒的に支持されて、いまや誰も疑ってはならない絶対正義となっていることはご承知のとおりです。
今日はこれについて考えてみましょう。

去年、CO2が史上最高値だったのを知っていますか。
なんとコロナの真っ最中で世界経済が最低だったのにかかわらず、CO2だけは出るまくっていたことになります。

「ロンドン(CNN) 二酸化炭素(CO2)をはじめとする大気中の温室効果ガスの濃度は年々上昇を続け、昨年さらに観測史上最高値を更新したことが、世界気象機関(WMO)の新たな報告で明らかになった。
WMOが25日に発表した報告書によると、昨年のCO2濃度は産業革命前の149%を記録した。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で新たな排出量は一時的に減少したものの、大気中の濃度が過去10年間、次第に上昇してきた傾向に変化はみられなかった。」(CNN2021.10.27 )
CNN.co.jp : 大気中のCO2濃度、昨年も記録更新 世界気象機関の報告

これを炭酸ガス人為説の間違いの傍証のように言って射る人がいましたが、そうではありません。
こういう時間差が出るのは、CO2が海洋や植物に吸い込まれる自然界の緩衝作用が働いているからです。
植物や自然界がいったんCO2を吸収して一定時間ため込んでから吐き出すのです。

では、いったいどのくらいの時間かかって吸い込まれているのかは大事なポイントです。 
というのは、海洋や植物に吸収されるまでに長い時間がかかるのです。
つまり、今この世界にあるCO2は、ただいま現在のものではなく、過去に由来して蓄積しているのです。
この蓄積期間にも説がいろいろとあるようですが、最短で5年間、長いもので200年間という学者もいるそうです。
 

このCO2が自然界に吸収されるまでの期間を、「滞留時間」と呼びますが、これを最短の5年間ととると、モロに人間の活動によるという証明となります。
 一方200年ととると、人間活動との関係が微妙になります。 
というのは工業化のきっかけとなった産業革命が起きたのが18世紀半ばから19世紀だからで、人為説ならばそこから有意な気温上昇がなければならないはずですが、実は19世紀にはテムズような河が凍るような小氷河期が到来したこともあるのです。
また20世紀にも70年代には寒冷期が来ています。
その頃には氷河期がやってくると人類はおびえていたのをもう忘れたようです。

では、5年~15年間の短期滞留期間説を取るとすれば、CO2が気温上昇の疑惑の真犯人扱いですから、思い出されるのが、CO2と気温上昇がパラレルで上昇するという、マイケル・マンのホッケースティック曲線です。 
これは樹木の年輪の感覚から割り出した仮説です。

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これが地球温暖化を説明するのにつごうがいいことから、炭酸ガス主犯説の科学的根拠とされました。
しかしあいにく、このホッケースティック曲線には大きな誤りがありました。
最大の誤りは、上のグラフの右に見える19世紀以前の気温が単調に横ばいですが、現実の観測記録と大きく異なっています。
また10C世紀~14世紀の中世温暖期は無視され、19世紀の小氷河期もなかったことになっています。

実はそのことはいまやIPCCですら認めているのです。ただし小声ですが。

「だがIPCCの第5次評価報告書(2013年)の示した過去の温度のグラフでは、中世(1000年前後)の温度は、現在とあまり変わらない高さまで上がっている。
政策決定者向け要約
「北半球では、1983年から2012年の30年間は、過去1400年間で最も暖かかった可能性が高い」「幾つかの地域において、中世気候異常(950年から1250年)の内の数十年間は、20世紀末期と同じぐらい暖かかった(高い確信度)」となる。(略)
ホッケースティック曲線の発表の後、古気候を巡った論争が起きて、結局、IPCCはホッケースティック曲線の使用を止め、最新の第5次評価報告書では北半球において中世の温暖期(今のIPCCの言葉では中世気候異常と呼ばれているけれども)が存在したことが明記されている」(『中世は今ぐらい熱かった:IPCCの最新の知見』杉山大志IPCC第6次評価報告統括代表執筆者)

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上図のIPCC(2007) 第4次評価報告書においてはホッケースティック曲線は消滅しています。
つまり20世紀に入って特異な気温上昇が見られたという説は、科学的信憑性が低いとIPCC自身が認めているということになります。

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また上のグラフは、中世温暖期は地球規模で見ても、中世の温暖期は現在よりも暖かかったとする複数の温度再現研究結果をまとめたものです。
中国においても同様の中世温暖期があったことが記録に残っています。

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また、このホッケースティック曲線が衝撃を与えた20世紀からの極端な気温上昇の中にも、下図のように1940年から1980年まで続いた「寒冷期」が存在します。
そういえば思い出しました。1970年当時の世界の気象学会はどんな警鐘を鳴らしていたのでしょうか。「来る小氷河期に備えよ!」でしたっけね(苦笑)。
そのわずか20年後に真逆ですか、まさに「君子ハ豹変ス」の見本ですな。 

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それはさておき、上の地球の気温変化グラフに、下図のCO2の排出量グラフを 重ねてみましょう。1940年~1980年にかけて、大気中のCO2濃度に低下が見られたのでしょうか、下図をご覧ください。

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 一目瞭然ですね。1940年のCO2排出量は50億トン弱、1980年には180億トン弱、つまり3.6倍になっているにもかかわらず、実際には寒冷期が来ているのです。
これをどのように、CO2の増大が地球の気温上昇につながったと整合性をもって説明するのでしょうか。 

下は極地における氷床ボーリングによる二酸化炭素とメタンの資料ですが、左端の現代と2万3千年前を較べれば同じだとわかります。
さらには1万3千年、3万3千年前にも高い時代がみられます。

The Vostok Ice Core: Temperature, CO2 and CH4
http://euanmearns.com/the-vostok-ice-core-temperature-co2-and-ch4/
 

Vostok_temperature_co2

これらをバッサリ切って視野に入れない、いや議論すらさせないでは、あまりに非科学的というもんではありませんか。
にもかかわらずその原因を一面的に人為的炭酸ガスのみに求めていき、経済や社会生活に大きな打撃を与えかねない現在の信仰にも似た風潮には疑問をもたざるをえません。

現在のグリーンファンドなどは巨額な資金を運用しており、いまや世界経済にも影響を与えるまでになっています。彼らの野望とこの人為的炭酸ガス説は無縁とは考えにくいのです。

 

 

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