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2020年8月13日 (木)

今年の北戴河会議、長老から匙を投げられた習

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そういえば中国共産党が年に一回、党長老と現役執行部を集めて開いてきた北戴河(ほくたいが)会議が、いつのまにか始まっていて、終わっていました。
まぁ、やったこと自体を多くの中国国民も知らないうちに、始まって終わってしまっていたようなので、このような北戴河会議は初めてです。
香港で国安法の初めての執行、それも民主活動家の強権逮捕をしながらの時期ですから、なにか関係があるのかと思ってしまいますが、どうなんでしょうか。

北戴河は海岸の避暑地で共産党のエライさんたちの別荘も多くあるようで、日本流にいえばスイカとウチワ片手に血みどろの権力闘争をするという、いかにも中国の宮廷政治らしい催しでした。

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産経 北戴河

去年はまだ朱鎔基ら長老組が習にこぞって「10の質問書」をつきつけました。いまになって見るとなかなか渋いものではあります。

●2019年の北戴河会議における長老組の「10の質問」
① 香港問題は最終的にどういう決着をつけるのか?
② 中国経済はこのまま下降していくのか。中国共産党は来年もあるのか?
③ 高圧的な統治のやり方で、中国社会を、中国共産党は来年も支えることができるのか?
④ 米中関係がこのままで、中国共産党は来年まで乗り切れるのか?
⑤ もし、新疆やチベットの少数民族の人民が、突然全員でデモを起こしたら、中共は再度、鎮圧できるのか?どのように解決するつもりか?全員捕まえるつもりか?
⑥ 中国共産党内部の人々は誰もが自分の身の危険を感じている。党内でネガティブな意見を引き起こし、海外勢力の影響もうけたとき、中国でもし、内部性の動乱や暴乱が起きたらどのように解決するのか?
⑦ 中国共産党はこのままインターネットやソーシャルメディアをコントロールできるのか?
⑧ 中国の財政赤字と外債が、もしダブルではじけたら、どういう結果になるのか?
⑨ 米国をリーダーとした西側社会が、もし中国に対して海外に所有する国家資産を違法資産と見なして、封鎖したら、どう対応すべきなのか?
⑩ 中国共産党の現在の国家安全委員会制度が、実質、政治局や政治局常務委員を排除するものだとしたら、このモデル(集団指導体制)は継続していくのか?

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日経ビジネス 習近平・国家主席(左)と、江沢民・元国家主席(中央)、胡錦濤・元国家主席

この「10の質問」は、長老たちが「来年はまだ共産党体制は続いているのか?来年、北戴河会議でまた我々は会えるのか?」と習近平に詰め寄ったものでした。
もうすでに答えが出ていますね。対応して見ていきます。

①香港問題対応は強権的に国安法を強硬成立させて、早速民主活動家の根こそぎ逮捕を開始しています。まさに強権支配。
②政治的孤立をする中国にとって唯一の頼みは経済のはずですが、これも失速は明らかです。米国の制裁と新型コロナが相乗して、おそらく大幅なマイナス成長に陥るはずです。
③国際社会の声に一切耳を貸さず、香港市民の自由を強奪したツケは大きいはずです。
④米中関係は戦争前夜です。米国は中国を敵国指定しました。いつ何どき戦端が開かれてもおかしくはありません。
⑤ウィグルの強制収容所が西側に曝露されて、国際社会は香港と一体のものとして認識し始めました。
⑥新型コロナにおいて、中国各地に暴動が発生しました。これで景気が悪化すれば民衆暴動はいっそう再燃することでしょう。
⑦中国が狙ったファーウェイによる世界のネット支配が裏目に出て、中国流ネット管理が不可能になりました。
⑧一帯一路でカードローンよろしく借りさせたアフリカ諸国への負債が、一斉に新型コロナで焼けつき巨額の不良債権化しています。
⑨米国による海外試算凍結は、すでに一部米国で実施されており、今後全面的な資産凍結に進むと思われます。
⑩すでに集団指導体制という建前を習は放棄しており、永世国家主席となるつもりです。

このように習近平のITと一帯一路戦略、そして海洋大国をめざした南シナ支配は、ことごとく壁にぶつかり、ガラガラと音をたてて崩壊しようとしています。
そして新型コロナの隠蔽も世界に知れ渡ってしまい、いまや世界一の嫌われ者、いや自由主義世界共通の敵とみなされるまでになってしまいました
これは胡錦濤や朱鎔基ら旧執行部がとった米国との平和共存路線とは根本的にあいいれないもので、それ故彼ら長老たちは去年の北戴河会議で必死に諫めたのですが、習は聞く耳をもちませんでした。

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産経

というわけで、集団指導体制の名残のような北戴河会議なんぞ、主催者である習も形骸化したとみており、長老組もまたばかばかしくってやってられんわ、勝手に潰れさらせ、と考え始めたようです。
一方現役執行部のほうもしらけきっていて、政治局常務委員7人全員が揃ったのは8日のたった一日だけだっのようですから、長老・現役双方共もう意見のすり合わせには関心がなくなってしまったようです。

「中国共産の指導部や長老らが中国河北省の避暑地に集まり、重要事項を協議する非公式会議「北戴河会議」が5日までに始まったもようだ。米国との対立激化や新コロナウイルスによる経済的打撃といった内憂外患への対応を協議する見通し。
習近平国家主席は新型コロナの影響を名目に会議を中止し、習氏に不満を持つ長老らから政権運営への批判を受けるのを回避することもできた。あえて開催に踏み切ったのは、党をまとめる自らの権力基盤は揺るがないとの自信の表れといえそうだ」(産経8月5日)

https://news.yahoo.co.jp/articles/a8235eadfecf41c3ec757ea7e2c1980b4a1defc5

習からすればうるさい長老どもが来なくてセーセーした、いちおうやったことだけにして秋の党中央委員会爽快を乗りきるぞ、というところでしょう。
ですから、産経記事のように習から見れば、「権力基盤は揺るがない」ともいえるわけです。
江沢民派にしろ共青団派にしろもはや既に壊滅状態で、党内パワーバランスはすでに崩れており、習一強体制が完成したから、もう誰もなんとも言わないという見方です。

その見方にも一理ありますが、長老組は、誰が考えても米国と正面衝突するに決まっている香港国安法の強行採決などはしてほしくはなかったことでしょう。
しかしそれを言い出す元気もなく、そもそも習と話し合ったところで言うことをハイそうですか、と聞くタマじゃないことはとことんわかってきています。
ならば、あえて渦中の栗を拾うようなまねはせずに、共産党支配全体が危なくなってトバッチリを食うようなら顔を出そうか、といったところが真相じゃないでしょうか。

米政府系ラジオRFA( ラジオ・フリー・アジア)はこう伝えたそうです。

「RFAの取材によると、中国の体制内知識人の中には、こんな見方もある。
過去一年、思いもやらない事件が相次ぎ発生した。数か月前は、米中貿易交渉がまだ存在していた。突然ポンペオが盟友とともに民主固化連盟を結成して共同で中国に対抗すると言い出した。みんな北戴河会議で、中共の権力に改変が起きることを期待してた。
北戴河会議で、党内各派閥は、工場の倒産や失業問題、経済衰退などの責任をとうて、最高指導部の人事入れ変えを求めていた。
北戴河会議の進行は非常に厳格化に管理されるようになり、参加者は非常に慎重になり、発言を自主規制するようになっている。ほとんどだれも発言しなくなり、盛り上がりに欠ける会議になった。もちろん、内心に思うところは多々あるが、もはや北戴河会議に(人事や体制改変などを起こす)パワーはなく、そういった可能性は低い」
福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)No.138 2020年8月11日

通常はこの北戴河会議で、党中央委員会総会をにらんで次の執行部人事を決めねばならないのですが、党内は無風。
米中戦争すら予想される状況で、好んでチャイナ7なんぞになって泥を被りたくはない、というところではないでしょうか。
いずれにしても、習は急速に「裸の王様」化しているようです。

 

扉写真 バナナです。ちょっとわかんないでしょう。

 

2020年8月12日 (水)

周庭とジミーライ、国安法で逮捕される

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周庭(アグネスチョウ)と蘋果(ひんか・りんご)日報オーナーの黎智英(れい ちえい・ ジミーライ)が逮捕されました。国安法違反の容疑です。
ふたりとも翌日に保釈されました。
彼女の保釈金は、20万香港ドル(270万円)で、パスポートは押収されたそうです。

「香港共同】香港メディアによると、香港国家安全維持法(国安法)違反の容疑で10日に逮捕された香港の民主活動家、周庭氏が11日夜、保釈された。周氏は保釈された警察署の外で記者団の取材に応じ「これまで香港の社会運動に参加してきて4回逮捕されたが、最も怖かった。起訴されるのかどうか分からないが、パスポート(旅券)も没収された」などと語った。  香港紙、蘋果日報のグループ創始者で民主派の黎智英氏も保釈された。  周氏は、外国政府に香港への制裁を訴えていたとして、外国勢力との結託により国家の安全に危害を加えた罪を犯した疑いがかけられたという」(共同8月12日)

周の容疑は国安法の「分離主義煽動」だそうです。

「周氏の公式フェイスブック(Facebook)アカウントは「アグネス・チョウが国安法により、『分離主義を扇動』したとして逮捕されたことが今確認された」と発表。警察筋はAFPに対し、国家の安全をめぐる捜査で10日に逮捕された10人のうちの一人が周氏だったことを認めた」(AFP8月10日)

このアグネスとジミーライの逮捕時に民主活動家10名も同時に逮捕されており、彼らはいまだ保釈されていないようです。
現代の国家において、集会参加を呼びかけただけで治安法で逮捕されるということ自体が、極めて異常、いや世界においては法治が崩壊した国家でなければありえないような所業です。
世界はこれを許してはなりません。

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周庭(アグネスチョウ) AFP

アグネスの容疑事実は公開されていませんが、なにが国安法に抵触したのかさえわかりません。
なぜならばアグネスは、8月5日の集会煽動罪に問われた公判以降ほとんど公的発言はしておらず、わずかの発言も極めて慎重におこなっていたからです。

彼女はデモシストも離脱し、公判では起訴事実を認め、その後の発言もこのような抑制が効いたものでした。

「香港の民主化を求めることは難しいと思うが、信念をもって戦っていきたい」

この発言が「外国勢力との結託」を意味し、「犯罪」を形成するなら、世界に無実の人間などいなくなります。
また、彼女は「外国勢力との結託」に問われることを恐れて、路上での短いコメント以外、彼女は海外メディアとの接触すら絶っていました。
すべて国安法容疑による逮捕を回避するためです。
彼女は保釈後「こんなに恐怖に感じたことはない」と述べていたように、恐ろしいまでの恐怖を感じていたはずです。

というのは、今までの逮捕は香港行政庁の主権の範囲内でしたが、今回は中国そのものが主体だからです。
この香港警察さえ、逮捕した女性デモ参加者に対してのレイプ・妊娠事件が発生するなど、陰惨な収容体制が問題となっており、今回は中国本土への移送という最悪の事態も予想されていたからです。
いったん大陸に移送されれば、人権はおろか、いつ密かに消されても誰にもわからなくなります。

中国が国安法で適用を意図するのは第20条です。

●国安法第20条
国家分裂、国家統一破壊の組織、計画、実施に参与したいかなる者も、武力を使用、あるいは武力を使用すると脅したか否かにかかわらず、すなわち犯罪である。
一) 香港または中華人民共和国のその他の部分を中国人民共和国から分離させようとすること。
二) 香港または中華人民共和国のその他の部分の法的地位を不当に変更すること。
三)  香港または中華人民共和国の一部を外国統治下に移すこと。
 前項の罪を犯した者は、その主犯、あるいは重大な罪の場合、無期懲役又は十年以上の懲役、積極的に参与した者は三年以上十年以下の懲役に、それ以外は三年以下の懲役、拘留又は行動制限におかれる。

この第20条は恐ろしく恣意的な法律で、「武力を使用、あるいは武力を使用すると脅したか否かにかかわらず、すなわち犯罪である」とある以上、実力行動をとるかとらないかにかかわらず、当局が「参与した」と認定すればすべて「犯罪」とみなされます。
どう「参与」を認定するかは当局のサジ加減ひとつ。コイツを潰したいと思えばいかなる言動でも、いや言動すらなくても逮捕監禁が可能という恐るべき「法律」なのです。

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ジョシュア・ウォン(黄之鋒)ウィキ

一方、アグネスと同じ容疑で公判にかけられていたジョシュア・ウォン(黄之鋒・こうしほう)と林朗彦は、起訴事実を認めず徹底抗戦の構えをみせていました。
彼らは非妥協で戦う意志を示しており、発言もまた今までどおりの戦闘的なそれを貫いています。
しかし、黄之鋒は逮捕されていません。

民主化運動内部は定まった役職はあえて設けていませんでしたが、ジョシュアが事実上のリーダー格だとみられており、アグネスはいわばスポークスパーソン役でした。
そして、彼らを支えて反骨の中国批判を展開していたのが、蘋果日報オーナーのジミーライ(黎智英)です。
今回ジミーライは逮捕されており、保釈はされていないようです。

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蘋果日報のジミーライ(黎智英)は反骨精神の塊のような男で、中国に手なずけられた香港言論界で歯に衣を着せぬ直言をしていたことで知られています。
今回、彼のネクストメディアまでが家宅捜索の対象となっていることは、今後の香港を見る上で極めて危険な兆しです。

「今年71歳のジミー・ライは長らく北京から目の敵にされてきたメディア人。香港の民主派政党や雨傘運動、時代革命運動の資金面も支援していた、と言われている。2014年の雨傘運動のときは、ジミー・ライは民主派各団体に4000万香港ドルを寄付したりしていた。
米国の政界とコネクションが太く、2019年7月にはペンス副大統領、ポンペオ国務長官と直接面会し、香港の状況を訴えていた。(略)
ジミー・ライは昨年、中央政法委員会から「禍港四人組」(香港に禍をもたらす4人、ジミー・ライ、李柱銘、陳方安生、何俊仁)と批判された筆頭であった」
(福島香織福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.137 2020年8月10日)

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東京

珍しく中国びいきの東京新聞ですらこの家宅捜索を報じています。

「同日午前10時ごろ、本社の家宅捜索に訪れた警察官は200人。編集局のフロアをテープで封鎖し、逮捕した黎氏を同行して捜査した。蘋果日報は緊張感が漂う捜査の様子をネットを通じて生中継。「新聞社に将来があるかどうか、今は分からない」。黎氏は中継するカメラに向かって報道の自由に対する懸念を吐露した。
香港メディアによると、警察の捜査令状では報道関連の資料までは捜査対象に含まれていなかった。ただ蘋果日報の労働組合は、多くの警察官が記者の資料を閲覧したと指摘し、「明らかに報道機関の権益を侵犯している」と批判した。香港記者協会も記者個人の物品や取材資料にまで捜査が及んだことを問題視。「情報源が守れず、メディアの権力監視の機能をそぎ落とすものだ」と、捜査の法的根拠を示すよう求めた」(東京8月11日)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/48207

日本のメディアの諸氏よ、これが正真正銘の言論弾圧です。
官房長官会見で発言を独占しようとして制止されたくらいで「言論弾圧だ」なんてギャーギャーいいなさんな。
オーナーが何をしていようと、その報道機関までもが家宅捜索をされることなど自由主義社会では絶対にありえないことです。
もちろん香港ですら、このようなことはいままでなされたことはなかったし、いかに中国流儀が今や香港を濃厚に覆い尽くそうとしていることがわかります。
その意味で、ジミーライの逮捕は、香港の中国化の分水嶺となるはずです。

ではなぜ、同じ民主運動家のアグネスチョオ、ジュシュア・ウォン、ジミーライの3人に対して、中国当局の対応が微妙に別れたのでしょうか。
これは中国が民衆弾圧をする場合によくやる手口をそのまま踏襲しただけです。

まず、ジョシュア・ウォンを最初に逮捕しなかったのは、彼のようなリーダーを最初に逮捕してしまうと、国際社会が中国制裁で完全に一致してしまうからです。
米国は香港人権法についで更に協力な制裁を化すことに、共和・民主の差はないと言われています。
バイデンですら、トランプ陣営からパンダハガーといわれないために厳しい制裁案を公表しているように、今回ジョシュアが逮捕されれば、米国は徹底的に中国・香港制裁に踏み切ることでしょう。

腰が引けていた欧州各国も沈黙していることが難しくなるはずで、ジョシュアウォンをノーベル平和賞候補にという声があがってもいささかもおかしくはありません。
その場合、ノーベル平和賞受賞者である劉暁波(りゅうぎょうは)を継ぐ人物の新たな誕生になりかねません。

またジョシュア・ウォンは、国案法で逮捕されれば、彼の最大の武器である言論で、ありとあらゆる機会をとらえて中国・香港政府を批判し尽くすことでしょう。
その場合、公判は彼の中国批判の演説会となります。
このような危険性があるショシュアウォンの逮捕は手控えたということです。

そしてアグネスチョウを最初に逮捕したのは、彼女が疲れていたからです。
アグネスはごく普通のまっとうな正義感を持った女の子です。
日本のアイドルやアニメが好きなただの愛くるしい女の子、ユーチューブで「おかえりなさいませ」とはしゃいでみせる、それが彼女の素顔なのです。

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「周庭は自分が「女神」と呼ばれることを好きじゃない、と話していた。それでも、外国メディアに露出して、主張を訴えることが香港のためになるならば、と甘んじて「女神」というシンボル的役割を引き受けてきたのだ。」(福島前掲)

あなたがもしアグネスのような20そこそこの若者で、中国国家が全体重を乗せて弾圧しようとしてきた状況で、正気でいられるでしょうか。
彼女の家族も危ないことは早く止めるようにと説得を続けてきたようです。
アグネスは「民主化の女神」ともてはやされるのも迷惑だったでしょうし、まるで国事犯のような扱いを当局から受けることもたまらない苦痛だったことでしょう。

そんな彼女を最初に逮捕し、メディアのフラッシュの砲列の下を後ろ手に縛って車に乗せるという無惨なことをしてみせ、翌日に保釈してみせる。
それはまさに威嚇であり、当局の温情がいかに深いのかと懐を誇示してみせたのです。
多くの彼女と同年代の香港の若者たちに、お前らが調子づくとこのの女神様と同じめにあうぞ、お前らが彼女をこうさせたんだ、という恫喝しつつ、言うことさえ聞けば温情のひとつももあるのだという融和です。
一日で保釈させたのは、立件できるような容疑など初めからなかったということであり、アグネスが取り調べで全面自供したのかもしれないという不信感を運動内部にバラ撒いて分断することだったと思われます。
反吐がでるほど汚らしい全体主義者だけがとりうる手口です。

三人目のジミーライについては説明する必要はないでしょう。
彼のもっていた言論の力を削ぎ、香港言論界を中国共産党賛美一色の世界にするために、ジミーライの存在は目の上のたんこぶだったのです。
また彼の米国政界コネクションも目障りだったはずです。
このまま彼を放置しておけば、米国に香港内部の情報がだだ漏れとなる、そう中国当局は思ったことでしょう。

この3氏の今後ですが、あくまでも保釈であって、いつ何時気が変わって再逮捕に踏み切るかもしれません
いわば執行猶予のようなもので、この間彼らの動きは制限されます。
またパスポートをとりあげられているために、英国や米国に亡命することもできません。
中国相手にそもそも論を言うことが虚しいのですが、パスポートをとりあげるというのはゴーンのような裁判中の逃亡を防ぐためであって、一回の逮捕くらいで取り上げるということはありえません。

かりに彼らが米英に亡命をするとなると、大使館(領事館)あるいは情報機関が指定するセーフハウスにに逃げ込んで保護を求めるという方法があります。
ジミーライは米国のインテリジェンス機関とも付き合いがあるようですから、その気になればできない相談ではありません。
ただこの方法を選ぶとなると、いまだ抵抗運動が続いている香港民主化運動はリーダー、アイコン、スポンサーの三つを同時に失う事になってしまうことになります。
これが痛手であることは間違いないことです。
海外からの呼びかけも意味があることですが、現地で戦うことととは重みが違って来るのは避けられないことだからです。
一方受け入れる英国もそこまで彼らを守り通していけるか、米国はともかく英国の決意が問われてています。

いずれにしてもアグネスは既に有罪判決を受けており、12月に量刑が定まりますから、即時執行の場合、年末で彼女は収監される可能性が高いのです。
彼女には残された時間はわずかしかありません。
このように国際社会が有効な救援の手を差し伸べないかぎり、彼らの未来は定まっているのです。

ところでこんな中国共産党の唾棄すべき思惑に対して、当の香港市民はどのように受けとめたでしょうか。

「香港市民が、蘋果日報やジミー・ライの逮捕にどのような感情をもっているかは、その日のネクストメディアの株価にも表れているのではないか。確かにネクストメディア株は午前中一時期16%も暴落した、午後には大量に資金が入り、一度は市場開始時の3倍に跳ね上がり、終値は2倍だった」(福島前掲)

ちなみに中国はこんなことを言っています

中国外務省の趙立堅(ちょう・りつけん)報道官は11日の記者会見で、香港の民主活動家、周庭アグネス・チョウ)氏らの逮捕に日本の菅義偉(すが・よしひで)官房長官が懸念を示したことについて「香港については中国の内政であり、いかなる外部勢力の干渉も許さない」と反発した。その上で「現実をしっかりと認識し、干渉をやめるよう強く促す」と述べ、日本を牽制した。
香港国家安全維持法(国安法)施行で報道の自由が抑圧されているという懸念に対しては、「香港は法治社会であり、いかなる人間も特権はない。法を犯しさえしなければ何の心配もない」と正当化した」(産経8月11日)

 わ、はは、論評の値打ちもない。
逮捕に際してその罪状も示さず、そもそも国安法自体が国外における反中発言についても取り締まり対象だと言っているではありませんか。
いかなる国内法も属地主義が大前提で、他国主権を冒すことができない、これが近代刑法のイロハのイです。
それを世界まで処罰対象を拡げておいて、なにが法治、なにが内政干渉だつうの。豆腐の角に頭をぶつけて死んでしまえ。

最後にわが日本ですが、情けないくらい無力です。
自民党の古株に蔓延する恐中病は、今回の習訪日の失敗で、深まりこそすれ薄まったようには見えません。
安倍氏もかつての鋭気を失い、彼らに迎合しているかにみえる中で、習訪日に反対した若手の議員の皆さん、ぜひまた立ち上がっていただきたいものです。

そして、ジョシュア・ウォンとアグネス・チャウ、そしてジミー・ライの3人をノーベル平和賞候補に!
香港を救え!

 

 

2020年8月11日 (火)

小泉ジュニア、低炭素火力の輸出を規制

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小泉ジュニアがまたまた素っ頓狂なことを言い出しました。
就任以来ろくなことはしていませんが、あのセクシー発言やレジ袋廃止などをみていると、このひとはただの大向こう狙いのポピュリストにしか見えません。
パパ譲りの勝負勘でもあれば政治家としては救われるんですが、菅さん経由で二階なんかに接近していたら先が見えていますよ。ま、どうでもいいか。

今回は低炭素石炭火力輸出に制限をかけるとのことです。

「小泉進次郎環境相は26日の閣議後記者会見で、温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)排出量が多い石炭火力発電所の輸出支援政策見直しについて触れ、相手国で脱炭素への移行が促進されることを輸出要件に含めるべきだとの考えを表明した。政府が6月にも策定する「インフラシステム輸出戦略」の基本方針に盛り込むことを目指す。
この日環境省の有識者検討会が、脱炭素化に政策転換するよう輸出相手国を支援する重要性などを指摘した報告書を取りまとめたのを踏まえ、環境省として新たな方針を示した。小泉氏は、石炭火力は新設後約50年稼働するため相手国のCO2排出量を固定化するほか、投資に見合った資金の回収ができなくなるリスクがあると指摘。「長期的なリスク評価が必要だ。ビジネス最優先で、売れるから売るというだけではだめだ」と述べた」(毎日5月26日)

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愚かな発言です。どうして最も実効性のある低炭素排出火力の世界への普及を止めてしまうのでしょうか。
日本の石炭火力は、環境団体にワーワーいわれるまでもなくその発電の大部分を支えています。
なぜって?そりゃ原子力止めりゃあ、そうなりますよ。
思いつきで全原発を止めてしまったカンって変人奇人狂人のせいですが、それは置くとして、国のエネルギー基幹を担う電力会社は3.11以降石炭火力を中心にせざるをえませんでした。

当初は運用を休止していたポンコツ火力を泣く泣く動かしていたのですが、今や火力の多くは新型の低炭素排出火力に置き換わりつつあります。
このことで日本は、火力=炭酸ガス排出の元凶という批判を回避し、かつ、飛躍的に発電効率を高めることに成功したのです。

こういういいことはどんどん世界に宣伝すべきなのに、ジュニア大臣ときたら欧米の環境NGOがかっこいいと思っているらしくハナからやる気なしです。
そのために、いまでも世界一の炭素排出国であるかのようないわれのないバッシングを受けています。

「火力発電は、燃料を燃やしてつくった水蒸気で蒸気タービンを回し電気をつくるしくみですが、もし効率をアップできれば、燃料使用量の削減、ひいてはCO2排出量の削減につながります。そこで、高効率化に向けたさまざまな技術開発が行われています。下記は、すでに各発電所で導入されている最新鋭の方式です」(資源エネルギー庁)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/ondankashoene/co2sakugen.html#topic02

こうして3.11以降日本は火力を低炭素化・効率化に必死に取り組んでいったのですが、その新技術はこのようなものでした。

●超々臨界圧発電方式(USC)
燃料を燃やして蒸気をつくる際に、極限まで高温、高圧にして蒸気タービンを回すシステム
●コンバインド・サイクル発電
高温のガスを燃やしてまずガスタービンを回し、その排ガスの熱を再利用して蒸気をつくることで蒸気タービンも回すシステム
●石炭ガス化複合発電(IGCC)
コンバインド・サイクル発電でガスタービンを回すのに使われる「高温ガス」を、石炭をガス化して作るシステム

そして、気がつけばこの低炭素化・効率化の新技術は飛び抜けて世界最高水準になっていました。

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資源エネルギー庁

たとえば、上図をみていただければ、同じ石炭火力発電といってもインドや米中のそれと比較すると4割以下の炭素排出量となっているのがわかります。
日本はひとことで化石依存と言いながらも、炭素排出の少ないLNG火力(グラフ右端)の比重を高め、新型の低炭素型に置き換えながら、従来型の旧式石炭火力を削減し続けています。

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資源エネルギー庁

そこで問題となるのは火力発電プラントの建設コストですが、これはマスで作ることによってコストを押えていくしかありません。
しかし、国内の電力会社は3.11以降原発が止まったために厳しい経営状況で、海外に活路を見いだすのはしごく当然のことでした。
一方この優れた低炭素火力の輸出は、世界の炭素排出大国であるインドや中国にとっても福音となると見込まれていました。

だって下図のように、世界の約3割の炭酸ガスは中国がボンボン出しているんですからね。
中国では、新型コロナで生産が止まった時、いきなり炭素量が減って、空がきれいになったってくらいなもんです。
日本なんぞ炭素排出量の世界に占める割合は3.6%にすぎません。
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国際エネルギー機関(IEA)の調べによれば、火力発電は新興国を中心にして、今後も重要な発電方法のひとつであり続けることが見込まれています。
石炭火力発電については、欧米では今後減っていくとされていますが、ドイツなどでは有力な炭鉱を抱えていて完全には削減しきれないようです。
またインドや中国、東南アジア諸国はモーレツな経済発展を続けている真っ最中ですから、石炭火力を止めてしまうことは不可能です。
ですから、LNGや石炭火力発電は、今後とも増えこそすれ減ることは考えにくいのです。

中国はいかにも中国らしく一気に原発を増設しようとしていますが、お願い止めて、メイドインチャイナの原発なんか日本の近くに建てるの。
というわけで、今後数十年のスパンでは、世界の化石燃料依存は変化しようがないし、ならばその低炭素化を進めるしか方法はないのはわかりきった話です。

ながながと説明してしまいましたが、こんな常識的なことが判っていないのが小泉ジュニアです。
このひとはたしかパパゆずりで反原発がお好きなようですから、原発を完全停止したまま火力発電を削減したら、日本のエネルギーがどのようになるのかちっとは考えてからにしていただきたいものです。
特に世界の石炭火力を4割も削減できる日本の高度技術はジャンジャンと海外輸出すべきなのです。

それをジュニアときたら、カッコつけてから「ビジネス最優先で、売れるから売るというだけではだめだ」(毎日前掲)なんて言っているんですから、脳みそが足りない。
日本の高度火力発電技術を海外輸出するのは、たんにビジネスではなく(もちろんビジネスとして成立しなければ話になりませんが)、世界の炭酸ガス排出量をおそらく小規模国家の一国分ていど削減することが可能なのです。
そしてそれは単に環境的な影響だけではなく、経済にどのような影響を与えるのかというバランスも必要でしょう。

ところがジュニアときたら、こういう巨視的な目で見れないのです。
今まで大向こう狙いのパーフォーマンスだけで生きてきた政治家のつらさで、世界の環境NGOが海洋プラスチックと言えば、国内事情もろくスッポ考えもしないですぐに従ってしまうし、石炭火力が日本は多いとコップで叱られれば、すぐに屁垂れて石炭火力なんか止めちまえと言いかねないご仁です。
さすがそこまてはできないので(やったら経産省がただおきませんから)、せめて海外環境NGOに怒られないように輸出は止めた、それは化石燃料発電の固定化に繋がるからだぁ、と大見得をきったというわけです。

あのね、ジュニア。あなたがコップの時に横にいた女性が誰だか知っています?
クリスティーナ・フィグレスという環境運動家です。

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クリスティーナ フィグレスと小泉ジュニア。「ボク、セクシー?」なんて言って いるんだろうか。

このフィグレスは有名な環境運動家です。別名環境マフィア。
たとえば環境ビジネスのこんな記事に登場します。

「パリ協定をまとめた国連気候変動枠条約(UNFCCC)前事務局長のクリスティーナ・フィゲレス氏は、国連支援の責任投資原則(PRI)の署名機関に対して、保有資産の1%を2020年までに再生可能エネルギーやクリーンエネルギー投資に振り向けることを公約するよう要請した。現在のPRI署名機関の総資産額は70兆㌦なので、要請額は7000億㌦(約79兆円)になる。署名機関が署名に見合う行動をとれるかどうか。
 フィゲレス氏は、昨年7月にUNFCCCを退任後、パリ協定の達成を推進するための非営利団体、Mission 2020 initiativeの議長を務めている。このほどPRIがベルリンで開いた年次総会で演説、PRIの署名機関に呼び掛けた」(2017年9月28日 環境金融研究機構)
http://rief-jp.org/ct6/73122

このようにフィゲレスは、国連気候変動枠組み条約前事務局長という立場で、国連支援ビジネスに対して1%を再エネやグリーン投資に回すように勧告しています。
この金額だけで実に79兆円。いかにおいしいビジネスかわかるでしょう。

しかもフィゲレスは、自分自身「ミッション2020イニシャチブ」という民間団体もやっていて、その排出権ビジネスにも関わっています。
実はその団体がやっていることのひとつは炭素排出権売買です。

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排出量取引制度(キャップ&トレード)とは? – NPO法人 国際環境経済 ...

「炭素の排出量に価格付けを行う「カーボンプライシング(Carbon Pricing)」の施策には、「排出量取引」と「炭素税」があります。「排出量取引」とは、個々の企業に排出枠(温室効果ガス排出量の限度:キャップ)が設定され、事業者は自らの排出量相当の排出枠を調達する義務を負います。
キャップが未達の場合は罰則があるのが一般的です。事業者が排出枠を調達する方法としては、①オークションによる政府からの購入、②政府からの無償割り当て、③他の事業者からの購入などがあります。事業者は、排出枠の売り買い(トレード)を行うことが可能で、需要と供給により、温室効果ガス(GHG)の価格が形成されます」(国際環境経済研究所)
http://ieei.or.jp/2016/09/special201608008/

簡単にいえば、排出権ビジネスとは、炭素の排出が少ない企業が、多く排出している企業に余った排出権枠を売り、その仲介コミッションを取る商売のことです。
低炭素化運動はこういう排出権ビジネスが絡んだ時に、純粋な環境運動家の手を離れて、腐臭を放ち始めたのです。

ですから、フィグレスにとっては、ジャンジャン炭素を出して貰わねば商売あがったりとなります。
炭素排出国ほどご贔屓筋ですからね。
それをニッポンが低炭素の火力発電を世界に輸出するですって、何言ってるの、営業妨害じゃなんいの、というのがフィデレスの本音です。

ジュニアのトリチウム水を出させないという発言の時にもそう思いましたが、脳味噌が軽いというか、アッチコッチからみられないのです。
関連記事『トリチウム水が「汚染水」だって?』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2019/09/post-229865.html

トリチウム水放出問題ならば、原発=放射能=悪みたいな簡単な公式が一回脳内で成立してしまうと、全部コレなんです。
いくら施設の貯水タンクが満杯だろうと、トリチウム水の海洋放出は条約で認められていようと、微量のトリチウムは危険だぁ、となってしまうようです。
一般ピープルなら反原発オバさんになるくらいで済みますが、あんた、政治家ですぜ。

この低炭素火力発電ならば、推進は固定化につながるなんてバカ言っていないで、さらに推進して高度化を計っていくしかないのです。
それも炭酸ガス問題は世界規模のことですから、輸出することで地球環境をよくしていくはずです。
それを環境NGOなんかの言いぶんをそのまま口移しで言って、悦にいっているんだから、まったくもう。
こんな近視眼ぶりでは、将来首相になるなんて夢のまた夢ですな。

長くなるので次回に続けますが、このグリーン産業こそバイデン陣営が夢中になっているものなのです。
それについては次回に。

 

 

 

2020年8月10日 (月)

なぜ核兵器禁止条約はうさん臭さいんだろうか?

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8月6日と9日は、日本人にとって特別な日です。
それは75年前のこの日、人類史上初めて広島と長崎が核攻撃を受けたことです。
※関連記事『1945年8月6日午前8時15分 広島市島病院上空』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-2d7d.html

上空580メートルで炸裂した原爆から照射されたガンマ線、中性子線を中心とする高エネルギーの放射線は、直下の人々の頭上に降り注ぎました。TNT換算で15キロトンでした。
その結果、当時の広島市の人口35万人(推定)のうち約半数に当たる9万から16万6千人が被爆後2カ月から4カ月以内に死亡したとされています。

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広島原爆資料館

米国は、大戦の後にくるであろう対ソ戦に備えて核兵器の実戦データを欲していました。
砂漠などの実験では原爆の威力が読みきれなかったからです。
ぜひ実際に市民が住む都市に落として、その威力を確認する必要がありました。
ただの政治的警告ならば、無人島でもよかったし、退避勧告をすればよかったのです。

投下された地点が広島・長崎だったのは、一方が海に向かって開かれており、三方が山でとざされている地形が、原爆の威力を高めることを知っていたからです。Photo
一切の事前通告なしに、その威力が実験でしか確かめられていない核兵器を使用する、まさに悪魔の所業です。

8月6日の当日、小倉は近隣の八幡製鉄への空襲の煙て視界が閉ざされており、広島は晴天でした。この瞬間、広島の運命は決まりました。
照準点は市内中心部にあるT字型の相生橋。午前8時15分に投下された原爆は、相生橋の南東約300メートルにある島病院の上空約600メートルでさく裂しました。
それは人々が、夏の暑い日差しの中で一日の平和を祈りながら職場や学校へ急いでいる時間でした。

オバマが広島演説で述べたように、母親は乏しい食料から精一杯の弁当を作り、14歳の少年を送り出しました。
そしてその少年は、学校への途上、数万度の高熱により炭化した柱に変わっていたのでした。

このように広島・長崎合わせて約21万人の犠牲者は、生きながらにして人体実験に供せられたのです。
これは非戦闘員の大量殺戮だけを目的とした明白な国際法違反、すなわち戦争犯罪です。
これを戦争犯罪と呼ばなければ、いったいなにを戦争犯罪と呼ぶのですか。

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毎日

さてこの日、広島・長崎ではあいも変わらない催しが行われました。

「米軍が長崎に原爆を投下してから75年となる9日、原水爆禁止長崎県民会議は長崎市の爆心地公園で核兵器廃絶を訴えて座り込みをし、約150人が参加した。被爆者たちは、日本政府が核兵器禁止条約に賛同せず、長崎を訪問した安倍晋三首相が長崎原爆資料館を今年も訪問しなかったことに怒りの声を上げた。
長崎の被爆者団体は、日本政府が核兵器禁止条約に署名・批准するよう繰り返し求めているが、政府は米国の核の傘に依存していることを理由に賛同していない。安倍首相はこの日の平和祈念式典でのあいさつでも核兵器禁止条約については触れず、「(核兵器の保有の有無などで)立場の異なる国々の橋渡しに努める」との従来の考えを述べただけだった。
 長崎で被爆した原水爆禁止日本国民会議の川野浩一議長(80)は「75年、核廃絶はなんでできないのか。首相は『橋渡しをする』と言うが何もしない。『米国の核の傘の下でぬくぬくと住んでいけばいい』という考えだ」と批判。参加者は原爆投下時刻の午前11時2分に合わせて黙とうした」(毎日8月9日)

いまさらのように被爆者たちが叫ぶのは、「核廃絶の願い」ですが、そのようなことは日本政府は戦後75年一貫して主張していることにすぎません。
その流れから1976年には核兵器不拡散条約(NPT)に加盟したはずです。

これ以上、今の日本国政府になにを求めようというのでしょうか。
どうやら長崎市長も口にしたように、核兵器禁止条約に加盟しないことをもって非核化に背を向けている日本、と言いたいようです。
それを毎日の記事のように、「米国の核の傘」に入っているから親分を批判できないという印象で批判しています。

半分は正しく、半分は正確ではありません。
日本が安全保障で米国の核の傘に入っているのは自明なことで、ならば中国の核の傘にでも入りますか、という択一問題なのです。
核を抑止するのは核しかありません。
核兵器を使う意志をためらわせるのは、人間の善意でもなければ、反核の理想でもなく、先制使用すれば自らも報復核攻撃を受けてしまう冷厳な事実からにすぎません。

たとえばあの韓国ですら、米韓同盟を廃棄すると自動的にその次の選択肢としてどこの核の傘にはいるのかが迫られることになります。
選択肢は二つ、北の核か、中国の核か、いずれかひとつです。
このように核の傘からの離脱という政治選択は、現今の国際政治体制の下では、別の国の提供する核の傘に入るか、自ら独自核武装するのか、ふたつにひとつしかないのです。

ですから仮に日本が核兵器禁止条約に加盟するとすれば、それは米国の核の傘から離脱し、中国の核の傘に入れてもらうか、独自核武装をするしか方法がありません。
前者は中国と軍事同盟を結ぶという意味ですから考慮にも値しませんが、後者については技術的にほぼ可能なこともあって常にそう主張する人たちもいますが、技術的にできてもそれをしたことによる政治的損失ははかり知れません。
米国と再び戦争をしたい人はどうぞ勝手に、ひとりでおやり下さい。まきこまれるのは御免です。
※関連記事『独自核武装はやってやれなくはないが、そう簡単なことではない』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2019/02/post-b0b9.html

ではなぜ日本はNPTを批准して、核兵器禁止条約を拒否しているのでしょうか。
理由は簡単です。
NPTだけが、現在の国際秩序の下で唯一有効な包括的国際法の要件を備えているからです。
それはNPTの紆余曲折を見れば理解できます。
NPTができたのはあんがい古く1969年7月1日のことです。
しかし採択こそなされましたが実効性はありませんでした。
なぜなら、安保理常任理事国(P5)のうち中仏が批准しておらず、彼らが加わるのはなんとそれから実に24年たった1992年のことだったからです。

ここまで遅れた理由は、採択当時中仏が充分な核兵器を揃えられておらず、その途上でNPTを批准すると核武装にブレーキがかかってしまうからでした。
悪い冗談のようですが、P5すべての国の核武装が完成して初めてNPTは実効性がある国際法となったのです。
これによりP5、別名「核倶楽部」は、核保有の特権の代わりにこれ以上の核拡散と核軍縮を条約上の義務とすることになったわけです。

ただし、だからといってNPTは無意味だということではなく、これをもって核管理の上の国際的枠組みが完成したことは確かです。
もしNPTがなければ、おそらく一国が核武装すればその隣国が対抗上核武装に走り、そのまた隣も核武装するという、いわゆる核の連鎖が世界各地で起きたことは疑い得ません。
たとえばイランとサウジ、アルゼンチンとブラジル、南アフリカ、リビア、そして核保有しているとみられるイスラエルなどはまちがいなく核武装を完了させたはずです。

現実にNPTがあっても、中国の政治的圧力に核が加わったことに恐怖したインドは核武装に走り、その敵対関係にある隣国パキスタンもまた核武装しました。
これらはNPT条約違反として厳しく制裁されましたが、いったん握った核というスーパーパワーを手放すことはありませんでした。
これは、NPTを脱退して核武装に邁進する北朝鮮をみればわかるでしょう。

いったん握った核は二度と手放さない、非核化の特効薬はないのです。
だから迂遠に見えても、今あるNPTの枠組みを弱めることなく、段階的な核軍縮の道を一歩一歩進むしか方法はありません。

ところが、この核兵器禁止条約は、この1992年にできたNPTの枠組みの外にもうひとつ別の枠組みを作ろうというものです。
これは日本のような非核国家を核の傘から引き剥がして分断させる役割をもたらします。
先ほど述べたように、日本が米国の核の傘から離脱して核兵器禁止条約に加入するとなれば、日米同盟はその根幹を揺るがされることになります。

現実に世界のさまざまな国に核の傘を提供しているのは米国であって、中国ではありません。
したがってこの核兵器禁止条約は、とりもなおさず米国の同盟諸国を分断、孤立させる効果をもたらします。
これが、今の米国と中国の対立局面においていかなる働きをするのか、かんがえないでも判ろうというものです。

たしかにNPTは矛盾多き存在です。
たとえば、先述したインド・パキスタンの核容認、そしてなにより北の核武装化、中国の核軍縮不参加などの問題をひとつひとつ具体的に批判し、改革していくべきです。
そのためにNPT条約に問題があるとすれば、第8条の改正手続きで漸進的改革をするべきではありませんか。
それをせずに、いきなりNPTを全否定するかのような新条約を対置すること自体に、なんらかの政治的意図があるように感じられてなりません。

そういえば、こぞって核兵器禁止条約を批准したアフリカ諸国は、中国の札束に頬を張られたような一帯一路の国々でしたし、日本で推進するのも共産党系か旧社会党系なのも偶然ではなさそうです。

 

 

 

2020年8月 9日 (日)

日曜写真館 二千年の風が解きたる蓮の花

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蓮の花天を指したる羅針盤  北大路南天

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二千年の風が解きたる蓮の花   神蔵器

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ひらかむと汀(みぎわ)へ傾ぐ紅蓮 大和田鏡子

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蓮の花無冠で生きるそれもよし 保坂加津夫


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白々と夜明けを待ちて匂ふ蓮  たんと




2020年8月 8日 (土)

今や米国にとっての「硫黄島」となった尖閣

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日本人が第2波が来た、とひとりで騒いでいる最中でも、世界は止まっているわけではありません。
有力政府系シンクタンクが、元第7艦隊司令官を交えた報告書で、 尖閣に日米統合機動展開部隊の設立を提言しました。
(高濱賛『米国、ついに尖閣防衛に積極関与へ』)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61561

ただし、あらかじめお断りしておきますが、ネットではこれを米政府の決定のようなニュアンスで報じていますが、早トチリです。
あくまでこれは米国政府系シンクタンクの報告書であって、米政府の決定そのものではありません。
米政府が政策決定プロセスに民間シンクタンクを用いるケースが多いのは確かですが、民間に一歩先んじた提言をさせてその反応を観察するアドバルーンとしてもよく使われますから、すわっ日米尖閣防衛常備部隊ができるんだと短絡しないで下さい。

米国は日本がこのレポートを読んで、どこまで真剣に独力で尖閣を防衛しようとしているのか、そしてなにを米国に求めて来るのか、ただの有事支援なのか、それとも大きな米中の戦略チェスボードの上で、米国と共にプレイヤーのひとりとして加わるきがあるのか、慎重に見極めようとしています。
このようなやり方をオープンソース手法といって、昨今ではCSIS(国際戦略研究所)の二階幹事長と補佐官を親中派として名指しにしたレポートが衝撃をあたえましたが、あれも同じで政府が公式に口にしにくいことをシンクタンクに言わして、日本政府の反応をみようとしたのです。

さてこの報告書を出したのは、米有力シンクタンク「ナショナル・ビュロー・オブ・アジアン・リサーチ」(NBR・全米アジア研究所)です。
このNBRと業務提携関係にあるのが日本の電通ですが、こう説明しています。

「米国の政策決定過程においてシンクタンクの役割は重要であり、公共政策の立案および社会課題の解決に向けた研究・提言をしているため、立法、行政、司法、メディアに続く“第5の権力”と呼ばれることもあります。日本のシンクタンクとの大きな違いは、非営利、独立系が多いということや、元閣僚・元政府高官の参画が非常に多いことなどが挙げられます」(電通『米国の対日政策に影響を与えるシンクタンク』)
https://dentsu-ho.com/articles/6713

そしてこのNBRは1000もある米国のシンクタンクの中でも、特に米国の対日経済政策について分析と提言をおこなっています。
NBRは今の政権には強い影響力をもっているるものの、それは裏返せば政権が替わると一緒に掃き溜めに捨てられる可能性もあるということになります。
この間、海兵隊の大改革である「戦力2030」などが相次いで出てくるのは、裏返せば来年1月にバイデンになった場合にでも、それまでに一定の既成事実をつくりたいのかもしれません。
バイデンになったら、今度はいきなり中国軍と米中機動展開軍だ、なんてなったら(いくらなんでもないでしょうが)シャレになりませんから。

それはさておき、このようなことを頭に置いた上で高濱氏が紹介したNBRの報告書"Navigating Contested Waters: U.S.-Japan Alliance Coordination in the East China Sea"(「紛争水域航行・東シナ海における日米同盟共同活動」)で提案されている内容をみていきます。
まずこの報告書には、複数の日米軍事専門家が加わっています。
座長としてはジョナソン・グリーナート退役海軍大将(元米第7艦隊司令官・米海軍作戦部長)という、米海軍軍重鎮を据えています。
彼が現場にいたときは横須賀にいたはずですから、海自との連携について最も熟知する立場にあり、更にワシントンに行ってからは作戦部長という要職に着いています。

興味深いのは、グリナートが現場にいた時がもっとも中国海軍と友好関係にあった時代で、当時米国は中国から共同訓練をしないかと持ちかけられています。

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http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2012-12/07/content_27345989_2.htm

上の写真は2012年7月6日、中国人民解放軍海軍の張永義副司令官が、当時米海軍作戦部長のジョナサン・グリナート大将と面談したときのもので、リムパック参加を相談したようです。
この時代、中国が経済発展すれば自動的に中間層が生まれて、その結果民主化が進んで国際社会になじんでいくだろうと米国は楽観していました。
このお気楽な楽観は当時のオバマ政権全体を覆うもので、安全保障補佐官のスーザンライスなどは「米中共同の世界秩序管理」を口にしていたほどです。
もちろんこんな甘い夢想は粉々に砕け散ったのですが、当時米国はこう言っていました。覚えていますか~、米国さん。

クリントンの駐日大使だったウォルター・モンデールとジャパンハンドラーのマイケルグリーンの尖閣についての発言。

「尖閣諸島が第三国に攻撃を受けても、米軍は防衛には当たらない」
「同盟国間であっても領土紛争には不介入・中立の立場をとる」

このような中国との蜜月時代を現場で体験したグリナートが、それから8年たって中国に対応する日米常設緊急展開部隊を作る提言をするとは。
いかにこの数年で中国が極端な軍拡に走って国際関係を緊張に陥れたのかわかって、感慨を覚えます。

このグリナートを座長にして、日米軍事専門家5人が行った円卓形式での議論をおこなっています。
日本側からも2名出席しており、武居智久(元海上幕僚長・退官後米海軍大学教授)と小谷哲男(日本国際問題研究所主任研究員)です。

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武居智久元海上幕僚長とNATO海軍司令官

おそらく武居氏は日本の立場を代弁するだけではなく、海軍大学教授という経歴からも日本人の中で最も米海軍を知悉する人物であることはまちがいありません。
グリナート元第7艦隊司令官が座長をする場に元海上幕僚長の彼が招かれたこと自体で、この報告書の立ち位置がわかるでしょう。

高濱氏の記事を要約します。
原文 https://www.nbr.org/wp-content/uploads/pdfs/publications/ap15-3_eastchinasea_rt_july2020.pdf#search=%27Navigating+Contested+Waters%3A+U.S.Japan+Alliance+Coordination+in+the+East+China+Sea%27

「中国は、尖閣諸島周辺で連日のように準軍事活動を続けることでこの紛争水域が自国の領海だとの主張をデモンストレーションしている。
また中国人民解放軍は、東シナ海およびその延長水域で『接近阻止・領域拒否』(A2/AD)能力強化を図っている。
なぜならば中国は2035年までには軍事力の近代化を達成し、21世紀中葉には世界最大級の軍事大国になることを目指しているからだ。
日本の海上保安庁は、尖閣諸島が日本の施政下にあることを今後も引き続き主張し、中国がこれに反発すれば当然武力衝突となり、中国海軍の出動といった事態を招くだろう。
その結果、尖閣諸島周辺をめぐる軍事衝突となる可能性は十分あり得る。
準軍事活動から軍事活動にエスカレートさせないためにも軍事バランスと抑止力は不可欠になってくる」(高濱前掲)

ポイントを私なりに整理します。

①尖閣水域で中国は準軍事活動を続けていて領土化を企んでいる。
②中国は東シナ海にA2/AD(接近阻・領域拒否)の軍事的バリケードを作ろうとしている。
③中国の最終目的は、巨大海軍国建設による世界の支配である。
④このまま状況が推移すれば軍事バランスが崩れて、日中は尖閣で軍事衝突に至るだろう。
⑤その場合、日本の勝機は先になればなるほど薄い。
⑥崩れかかっている尖閣諸島水域の軍事バランスを早急に正常に戻さねばならない。

そしてここで出てくるのが、「日米統合機動展開部隊」常設構想です。
既に自衛隊は、尖閣諸島防衛のための陸海空3自衛隊を統合した常設の機動展開部隊を創設し、さらにはこの部隊と在沖海兵隊との連携強化する構想がありますが、米側はその一歩先の「日米統合機動展開部隊」常設構想を出したということになります。

今や、尖閣での日中軍事バランスは大きく傾こうとしています。
もはや海保では対応しきれない状況が生まれつつあります。
そして時を同じくして、米国は尖閣水域が実は米国世界戦略の要衝であると気がついたようです。
それは米海兵隊の大規模な再編「戦力2030」にあらわされています。

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関連記事 『海兵隊の新方針 沖縄に対艦ミサイル部隊を展開させる』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2020/07/post-1a5e66.html

要約すると

①戦車部隊の全廃・砲兵部隊・オスプレイ・水陸両用車両・F35Bの削減
②1万2000人削減
③ロケット部隊(HIMARS) を7隊から21隊に増強し、「海兵沿岸連隊」(MLR)を沖縄島しょう部に配備

このような海兵隊の今までの戦略・戦術の根本的見直しと並行して、海軍においても日米統合展開部隊が誕生する可能性が生まれてきました。
あるシンクタンクの識者は尖閣についてこのようなことを述べたそうです。

「米国が推進している『インド洋太平洋地域戦略』にとって尖閣諸島は太平洋戦争当時の硫黄島と同じだ」
(高濱賛前掲)

今や米国にとって尖閣は「硫黄島」だそうです。
硫黄島は大戦当時、首都爆撃で大手をかけたい米国にとって絶対にとらねばならない島でした。
戦史に刻まれる激戦が繰り広げられ、日本軍は守備兵力およそ2万人のうちの96%が戦死、もしくは行方不明となっています。
いまでも大部分の遺骨は遺族のもとに帰っていません。
一方で米軍も、死傷者数で日本軍を上回る損害を出しています。

このように米国が「硫黄島」と言う場合、いかなる損害を被っても絶対に押えねばならない軍事的要衝のシンボルの意味として使います。
そして今現代の米国にとっての「硫黄島」とは、他ならぬ尖閣なのです。
それは中国にとっても同じことです。



※関連記事『なぜ、中国は尖閣諸島を狙うのか』
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2020/07/post-16d947.html


 

2020年8月 7日 (金)

PCR検査万能主義を捨てろ

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昨日もまた、どこそこで「感染者」が出たとメディア大本営は血相を変えて叫んでいます。
まるで魔女狩りです。
あのね、PCR検査で出たといっても、昨日も書いたとおり、「曝露」なのか「感染」なのか、はたまた「発現」なのか明確に報道しなさいよ。
今日は「患者」と表記しましたが「発現」のほうが的確だと考えて修正しました。

昨日のおさらいですが、この三つの概念は区別されています。

・曝露・体内の細胞がウィルスに曝されること。
・感染・体内の細胞にウィルスが侵入すること。
・発現・発症すること。

ね、まったく違うでしょう。ヒトはウィルスに曝されても、皆んなが皆んな発症するわけではありません。
そりゃそうです。もしそうだったら、病原菌がどれだけ浮遊しているかわからない病院なんぞにいっただけで、即病気です。
ところがどっこい、ヒトはよくできているもんで簡単には病気になりません。
それは、体内にキラーT細胞という防御システムを持っているからで、この優れモノはウィルスが侵入してしまった細胞ごと破壊してしまいます。
ですから、かりに曝露から感染に至っても、それで発症、つまり患者になるわけじゃないのです。
これが新型コロナで無症状が極端に多い最大の理由です。

しかし、PCR検査はこのキラーT細胞が破壊したウィルスの残骸までも増幅して感知してしまいます。
また、日本疫学会も認めているように、採取する部位、発症からの時間などで変化します。

スゴイといえばスゴイし、そこまで頼んでいないよとも思いますが、すると判定は「陽性」です。
逆に、ウィルス採取する鼻や喉の粘膜にいない場合は陰性判定となります。
しかしこれはハズレだとわかりますね。

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まぁ、PCR検査の正確さというのはしょせんこの程度なのです。
PCR検査の診断特性は感度70%と考えられています。

「感度とは、今回の新型コロナウイルス感染の場合、本当に感染している人の中で、どのくらいの割合を診断できるか(感染の把握ができるか)?ということです。100人の真の感染者がいる場合、100人すべてを把握できれば、感度は、100%です」(日本疫学会)
https://jeaweb.jp/covid/qa/index.html#q1-1-1

「感度」なんていう言い方をするからわかりにくくなりますが、要するに「正確度」のことです。
正確度(感度)70%ということは、逆に偽陰性判定もあるわけです。

「感染から8日目(症状発現の3日後)に偽陰性割合が最も低くなり、その値が、20% (95%信頼区間:12% ― 30%)となることから、感度として一番よい値になるのが、感染から8日目(症状発現の3日後)の80%(95%信頼区間:70%-88%)となります」(日本疫学会前掲)

職場によって陰性証明を持ってこい、来なければオフィースにいれないぞ、なんて企業があるようですが、陰性判定されてホっとしても実は陽性だという可能性もあります。
陰性証明書を会社に出したら、数日置いた別な検査で実は陽性なんてこともありえるわけです。
採取する適期があって、ゴホゴホと咳き込み37.5度の熱が出てから3日以内だと陰性と判定される確率が高いからです。
偽陰性はある意味で偽陽性より罪作りですね
ほんとうは陽性ですからウィルスを周囲に放出し続けているんですが、当人も企業もかんせんしてない、陰性証明を持っているからで安心しちゃうんですよ。

これについて感染症医の西村秀一氏はこう言っています。

「検体採取の仕方がまずいと「ある」ものも「ない」ということになる。だからPCR検査をやって陰性だから安心だということにはならない。職場から「陰性の証明を持ってこいといわれた」という話があるが、そのときに陰性でも翌日に陽性になることもある。つまり、検査を受けた人にとって「陰性」という結果の使いみちはないんです。
ウイルスの死骸にたまたま触れて鼻をさわったというようなときも陽性になりうる。本当に陽性であっても、生きているウイルスではなく人に感染させない不活性ウイルスかもしれない」(西村秀一)『「PCR検査せよ」と叫ぶ人に知って欲しい問題』)
https://toyokeizai.net/articles/-/349635

と言う具合に、陰性判定の翌日に陽性と逆転する場合もあって、いわば当たるも八卦、当たらぬも八卦、といっちゃ失礼ですが、そのていどのものなのです。

またPCR検査は誰でもできるわけではありません。
今検査ができる技師を2万人体制にするなんて目標を掲げていますが、少なくとも新型コロナが流行っている間は無理です。

その理由は、PCR検査できる機械が足りないことです。
そもそもPCR検査は、遺伝子検査を行っている病院にしか検査機械がありません。
よく中国が簡易検査キットを量産してジャンジャン配布しているが、ということを言う人がいますが、検査の精度はほとんどコックリさん並のレベルで気休めにもなりません。
いやむしろそんな簡易キットで陽性判定を受けて、病院に駆け込まれるほうが混乱の原因になります。

また、PCR検査ができる専門技師が少数です。
これも理由は機械の少なさと一緒で、遺伝子検査という特殊な分野だからです。
いちおう遺伝子検査も臨床検査技師の領域ではあるのですが、病院によって遺伝子検査を取り扱っている病院もあればしていない病院もあり、臨床検査技師の資格があれば誰でもできるわけではありません。

というわけで、PCR検査は素人の想像以上に正確度が低く、かつできる検査技師も限られているのです。
これを知ってか知らずか、「PCRを国民全員にしろ。しないのは、アベの感染隠しだぁ。実はもう感染は蔓延しているんだぁぁぁ(エコーかけてね)」なんて喚いている人たちがいますが、迷惑な話です。

現実にメディアが言うように、国民皆PCRなんてことをやったら、3割の偽陽性と偽陰性がでてしまいますから、このようなことになります。
医師の南郷栄秀はこう試算しています。

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http://spell.umin.jp/thespellblog/?p=336

なんと偽陰性が8万4千700人、偽陽性が1万3千671人でてしまいます。
偽陽性の人たちは、容赦なく隔離施設行きですからたちまち刈り上げたホテルが満杯となります。

このようなことを知ってか知らずか、メディアは今日もまた「感染者急増。どこそこで1名。クラスター発生か!」なんて叫んでいるわけです。
まことに無知蒙昧。粗暴野卑。

 

2020年8月 6日 (木)

いつまでやっているんだ「第2波まつり」

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毎日メディアはなにをしているのかと思います。いえなに、あの「第2波祭り」のことです。
連日、テレビは朝から晩までこれだけ、おいおい少しは別なことをやってみたらどうよ、と言いたくもなりますが、ホント飽きないね、あの人ら。

山中伸弥教授まで引っぱり出して「厳重注意だから、元の生活には戻れない」って、山中さんは感染症については専門外ですから、そうとうに出すぎ、言い過ぎ。
小池「女帝」や西村担当相まで、お盆に帰るなとのたまうくらいですから、デニー知事なんぞ「沖縄を助けて下さい」なんて悲痛な声で訴える始末です。
※西川と打っていました。もちろん西村です。ご指摘ありがとうございます。
やるべき軽症者用ホテルの確保も怠って、いざとなると他人の善意にすがるんだから、まったくもう。
首里城の防火対策を杜撰にしておきながら、全焼すると真っ先に政府に泣きついたのといっしょです。

落ち着きなさい。これが第2波ならもうとっくに来ています。
しかもどうやらこの波はかつての3月頃にヨーロッパを襲ったものから弱毒化している気配さえあります。
この弱毒化については別稿に譲りますが、そうとでも考えないとこの重症患者の少なさが説明できなくなります。
感染拡大だ、何百人一日で出た、と報じられる場合、メディアが密かに隠している数字があります。

それが重症者数です。
毎日必要な情報を提供し続けている河野太郎防衛相のツイッターから引用します。
河野さんっていいね、歯切れよくて、頭脳明晰で、私ファンになりそう。
直近の8月4日と5日の感染拡大状況です。

8月4日
国内感染者39858
 退院27197
 入院治療を要する者11347
  重症者88
 死亡1016
 確認中330

8月5日
国内感染者41129
 退院28028
 入院治療を要する者12055
 重症者104
 死亡1022
 確認中64

   感染者増加分・・・1271人
  入院を要する者増加分・・・708人
   重症者増加分・・・16人
    死亡増加分・・・・・6人
    退院増加分・・・831人

つまり確かに感染者数は一日で千人超えをして増えているように見えますが、重症者・死亡者はケタが違います。
重症者は16人増えたに過ぎず、死亡者に至ってはわずか6人だけしか増加していないということです。
しかも重症化するのは圧倒的に70歳台から80歳台で、この年齢層での死亡はこんなことがなければ寿命に紛れ込んでしまうていどの数字です。

同じコロナウィルス一家の季節性インフルエンザの関連死は新型コロナの10倍に達し、その症状も遥かに劇症だと言われています。
新型コロナより季節性インフルのほうがコワイというのも事実なのです。

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「感染者」が増えた理由ははっきりしています。
PCR検査数を増やしたからです。
よく厚労大臣や西村さんが言っているでしょう。あの人らがいうと言い訳がましく聞えるかもしれませんが、事実なんだから仕方がない。
そりゃ3倍4倍と検査を増やしたら、陽性も比例して増えますよ、ただそれだけのことです。
そしてここが肝心なことですが、今メディアが「感染者」と称しているのはただのPCR検査で陽性判定された者にすぎません。

重症者数は感染数の増加から遅れて来るという専門家がいますし、曝露と感染の違いを考慮すればそれはほんとうなのですが、では2週間ていどの経過観察の期間を置いて重症者が急増したかといえば、していないではありませんか。
たぶん考えられる理由は三つです。

①PCR検査を急激に増やしたから。
②ウィルスが高温に弱く、夏となって温度が急上昇したため。
③新型コロナが弱毒化したため。

②は秋になって感染が再爆発したらそうだとわかるでしょう。それまで待つしかありません。
③についてはさまざまな専門家が口にしていますが、まだ証拠が不十分です。そのうちこれについては書きます。

さて①のPCR検査数が増えたということですが、それにはこのPCR検査がなにをしているのか、知っておかねばなりません。
PCR検査は、要はウィルスの数を数えているのです。ちょうど放射能測定で測定器が放射性物質の数をカウントしていたのと一緒です。
そしてウィルスが少しでもあれば陽性判定を出します。
かなりの時間がかかって、検査の処理数にも限界があります。

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ここからが問題なのですが、ウィルスの数だけでは正確に状況を掴むことができません。
だってレベルがいくつかあるんですから。
ただウィルスが体内に侵入しただけの状況を「曝露」(ばくろ)と呼びます。
この意味は単に「ウィルスにさらされること」(大辞林)であって感染そのものではありません。
感染とは、「病原体が体内に侵入すること。特に、そのために種々の病態が起こること」(国語辞書)のことで、細胞内にウィルスが入ることです。

いいですか、この違い。
体内の細胞にウィルスが曝されることが「曝露」で、ウィルスが細胞内に侵入すれば「感染」です。
更に発症すれば「患者」です。
この違いを国やメディアが説明しないからおかしくなるのです。
政権を叩くことだけが仕事だと思ってるメディアはしかたないとして、どうして国が説明しないのかわかりません。

PCR検査は陰か陽の二分法で表示してしまいますから、曝露であろうと感染であろうと、あるいは患者だろうと、一括して「陽性」と判定してしまいます。
いわば利口なバカなのです。
ところが、現実には細胞内にウィルスが侵入してもそのまま発症に至るとは限りません。
というのは人体にはキラーT細胞という防御兵器があって、感染した細胞を丸ごと破壊できてしまいます。
このようにウィルスの増殖が阻止されることを「自然免疫」、あるいは自然治癒力と呼びます。
健康に気をつけてスポーツをしたり有害なものを控える、テレビを消して朝日は読まない、こんなストレスにならないような暮らしをしていれば免疫力が上がって、仮に曝露されても感染には至りません。
ですから、いくらウィルスに曝露されても、必ずしも「感染者」となるということはなく、その98%が自然治癒してしまいます。
これが新型コロナで無症状者・軽症者が9割以上を占める理由です。
しかしPCR検査の感度は日進月歩で上昇していて、感染拡大初期の春の頃とは格段に性能が向上しています。
性能が向上するのはけっこうですが、するとPCRは既にキラーT細胞が破壊したウィルスの残骸まで感知してしまうようになりました。
なんせ一個、2個のウィルスに曝露されでも、「はい、あなたは陽性者」と判定してしまうようになったんですから、いいのか悪いのか。
もちろんこんなていどの数では、細胞は「感染」しても自然免疫で破壊されてしまいます。
これをメディアはバカだから騒ぐのはわかりますが、行政や病院・保健所までただの「陽性者」を「感染者」だと言ってしまうから混乱が起きるのです。
こんな不毛なゼロリスク論はもうやめませんか。

 

 

2020年8月 5日 (水)

海保にできること、海自にできること

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昨日の記事の後半に、「中国はもっけの幸いと国際世論にうったえるでしょう」とバカデカイ文字で打ってありますが、ただの凡ミスです。
特にあのフレーズを強調したかったわけではありませんので元の大きさに戻しておきました(汗)。

finさんからのコメントですが、山路さんにお願いしてしまいましたが、コメントだけにとらわれず私からも。

「海保だけで対応できるとはとても思いません。物理的に向こうの方が圧倒的に上でしょう。だから日米共同訓練をやれと言う話ですが自衛隊も出せないのであれば米軍も出てくることだって容易にはできないのではないのですか?」

まず頭を整理してください。いくつかのことが日本のネット界ではゴッチャに議論する傾向があります。切り分けてみます。

①現時点における中国民間漁船が大挙襲来した場合の対処。
②同じく民間漁船が接続水域・領海に侵入した場合。
③中国公船・軍艦が接続水域・領海に侵入した場合。

①は日本の排他的経済水域(EEZ)に侵入した場合は排除しますが、北緯27度線以南の海域、つまり尖閣諸島周辺海域も含む海域は日中で棚上げにしてしまったために、まことに腹が立ちますが、中国漁船の活動を取り締まれません。
領海でありながら、他国の漁船に操業を許している今の日中漁業協定を改訂する必要があります。

次に②ですが、同じく日中漁業協定では、尖閣諸島周辺海域は「法令適用除外水域」に属しますから中国公船の取り締まり権限を否定していません。
したがって、領海であるにもかかわらず中国公船はが国の民間船にのみ警備活動をすることが可能です。
ただし、日本漁船に対してはそのような権限を中国に認めていないので、日本漁船に対する追い回しはあきらかな協定違反行為です。

③中国公船が接続水域・領海に入ろうと、それ自体は無害通航権によって保護されています。
しかしあくまでも「無害」の範疇であって、軍事的威嚇(艦載砲の旋回・艦載航空機の離発着・潜水艦の潜行したままの通過など)という「有害」行為は当該国への敵対行動として受け取られます。

このように日本が領海においても民間漁船の操業を容認し、公船の活動も許してしまうようなシロモノが日中漁業協定です。
まずこれの改訂交渉を本格化するべきですが、おそらく今の戦狼路線に邁進する中国は聞く耳を持たないはずです。
ですから日本が国内法でできる領海法を早急に作って、取り締まれる国内法整備をせねばならないのです。
国内法を作る場合、外交比例の原則に則って中国・台湾の領海法と同等のものを目指すべきです。

しかしいくら棚上げ水域だからと言って好き放題に接続水域や領海でのさばらせておくわけにはいかないので、海保がそのつど随伴して「ここは日本領海だ。判っているのか、バーロー」(こんな言葉使いはするわきゃありませんが)と警告して、出て行くまでピッタリと食いつきます。

中国は海警を人民解放軍の指揮下に置き、更に海軍のフリゲート艦まで白く塗って投入しています。
だから中国の海警なんて海軍と一緒だという人もいますが、半分は正しいのですが、半分は大げさです。
相手が船を白い沿岸警備隊の標準色に塗り、船腹にデカデカとチャイナコーストガードと書いてある以上、海保と同等のものとして対応せねばなりません。
実は
あれは海軍だぞ、海自を出せってふうにはいかないのです。

なおネットで「機関銃を中国海警は積んでいるぞ」なんて言っている人がいましたが、そんなもんなら日本も積んでいるって(笑)。
ただ海警艦艇の大きさが今や自衛艦クラスがザラとなって、小型の海保艦艇が手こずっているのは確かですが。

finさんが言うように「物理的には圧倒的に向こうが上」なのは事実ですが、だからと言ってこちらが自衛隊を出せば向こうも海軍を出してくるに決まっていますから、いたずらなエスカレーションを回避するために第11管区は死に物狂いで対応しているのです。
くりかえしますが、相手が海警なら海保対応を貫くしかないのです。

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手前が中国海警。接近寸前で警戒に当たっているのが日本の海保。このカラーリングはコーストガードの世界基準。

と、ここまでは昨日のおさらいですが、なぜ海保に領海警備をやってもらっているかということですが、これは戦後に戦争の反省から生まれた「知恵」なのです。
海保は海の警察ですから、法執行が任務です。
日本の法律に則って、自国民を守り、自国領土を防衛するのが仕事です。
なりゆきで外国ともやり合うこともないとはいえませんが、あくまでも国内の法の番人であってそれが主任務ではありません。
ですから海保にとって、領海警備は難しいぎりぎりのゾーンなのです。

一方自衛隊の主任務は、外国の軍事行動を抑止し、侵略を阻止することにあります。
ですからまずは海保が出て、相手側の海保の動きに対応します。
するとこちらの公船と相手国の公船とのつばぜり合いになりますから、公船は互いに緩衝帯となっているわけです。

原則として、海自が直接に他国の艦艇に対応することはありえません。
それは
いきなり海軍と海軍が領海警備をやるとなると戦闘に発展する場合があるからです。
他国公船との対応は一義的には海保が対応し、海自はそのバックアップに徹します。

しかし、いきなり相手が軍艦を出してきたらどうでしょうか。
ここで冒頭のfinさんの質問になるわけですが、下の図は2016年6月の中国とロシア海軍の共同訓練の航跡図ですが、この時は日本の海自が追尾し続けています。
なぜかといえば、中国が海軍を接続水域・領海に侵犯させてきたからです。
おそらく接続水域に侵入する前から国際波長で警告し続けていたはずです。

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最近でも、奄美水域で中国海軍の原潜が潜行したまま接続水域を通航しようとしました。

「防衛省は20日、奄美大島鹿児島県)沖の日本の接続水域を他国の潜水艦が潜航したと発表した。国籍は公表していないが、政府関係者によると中国海軍のものとみられる。18日午後に接続水域に入り、20日午前には接続水域の外に出たことを確認したという。
接続水域は領海の外側12カイリ(約22キロ)の海域」(朝日6月21日)

「河野太郎防衛相は23日の記者会見で、18日に鹿児島・奄美大島沖の接続水域内を潜ったまま西進した外国潜水艦について、「中国のものだと推定している」と述べた。潜水艦の国籍や種類の情報は自衛隊の把握能力に関わるため、公表は異例だ。
河野氏は「尖閣諸島をはじめ、さまざまな情勢に鑑みて、潜水艦の国籍を公表すべきと判断した」と強調。接続水域の潜航自体に問題はないとの認識を示すとともに、「外務省から中国に対して『関心表明』は行っている。中国の意図を明確に推し量っていく必要がある」と指摘した。
潜水艦は横当島(同県)の西の接続水域外を西に進んだことが確認されている。河野氏によると、その後、中国方向に航行したという」
(アラブニュース6月23日)

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朝日

この時、海自はヘリ空母「かが」まで投入し、空と海上から徹底的に追尾し続けたようです。
この中国潜水艦は6月18日、太平洋から西に進んで、奄美大島の北東の接続水域に入り、領海と領海に挟まれた狭い接続水域を縫うように西に進み、20日午前に接続水域の外に出て、横当島(鹿児島県)西をさらに西に向かったと発表されています。

接続水域は潜水したままの通航が認められていますから、ギリギリを縫って航行したということになりますが、なめたまねをしてくれます。
たぶん海自のP3Cからはなんどとなくアクティブソナー(ピン)を打たれてていたはずで、生きた心地がしなかったことでしょう。
「かが」の対潜ヘリだけで片手の数は頭上にいたはずですから、まるで大名行列のようににぎやかな中国潜水艦の奄美の道行でした(笑)。
日本の潜水艦探知能力を調べに来たと言われていますが、世界一なのは海軍業界では有名な話で、いいかげんにしてほしいものです。

このように、侵入した水域が接続水域で、侵入したのが海軍艦艇の場合、海自がお相手します。
警察で手に余る場合は軍隊がというふうに、相手が海警なら海保、中国海軍なら海自という棲み分けです。

最後に、finさんもふれていた尖閣水域の日米共同訓練ですが、「日本が出てこれないようでは米軍もでてこれない」ということはありません。
私が書いたのは、あくまでも日常的警備の局面のことを言っているのであって、訓練は別です。
海自は尖閣水域で訓練やパトロールを続けていますが、あくまでも対応する主体が海保だというだけのことで、近隣の海域には必ずバックアップの海自艦艇が遊弋しているはずです。
ただこれを公表しないことで相手国に無駄な情報を与えず、しかも凄み(抑止)を効かせている、ということにすぎません。

訓練は独自にやっているはずで、在日米軍司令官が尖閣支援を明言した以上、謹んで日米共同訓練にまで格上げしてもなんの差し障りもないはずです。
後は政治的判断を待つだけのことで、遠からずやると思われます。
実施するなら、レーガン空母打撃群と自衛艦のコラボという壮観な眺めになるはずです。


 

2020年8月 4日 (火)

領海法がなくて、どうやって戦えというんだろう

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長すぎた梅雨が終りましたので、衣替えをいたしました。朝から何回か変えてすいません。涼しげなのがやっぱりいいか。

さて、中国が記録更新が止まったようですがこれはただの台風避難のようで、状況にはいささかの変化もありません。
その状況とは、中国が尖閣の島そのものをいったん置いて、先に尖閣水域を領海として既成事実化する意図です。

この8月16日には、中国が勝手に設けた禁漁期間開けということで、尖閣諸島周辺の漁を解禁しますが、中国当局は漁師らに尖閣諸島に近付かないよう指示したことが分かりました。 
2年前には中国の漁船300隻ほどが尖閣諸島周辺に押し寄せ、大変な事態となったことを受けて、菅官房長官の弁です。

「沖縄県の尖閣諸島周辺海域で、中国側の活動が活発化していることに関連し、菅官房長官は、過去に中国が設けている禁漁期間のあと、中国海警局の船が漁船とともに、日本の領海に侵入したことを踏まえ、ことしも動向を注視し対応に万全を期す考えを示しました。
沖縄県の尖閣諸島周辺海域では、日本と中国の漁業協定に基づき、中国の漁船は日本の領海の外で操業することは認められていますが、4年前の平成28年8月に、中国政府が独自に設けている禁漁期間が終わったあと、中国海警局の船が多くの漁船とともに日本の領海に侵入し、緊張が高まりました(NHK8月3日)

中国は日本政府の抗議に対して、「日本にはその資格がない」と一蹴しました。
まぁこのていどは言うでしょうな、彼らにすれば尖閣水域は既に「中国領海」だからで、日本の漁船が違法操業しているという認識だからです。
だから、日本漁船を取り締まるべく執拗に追尾し、やがて機関銃を発砲することでしょう。

こう言うとき沖縄県になにかを求めても無駄です。
デニー氏は日本漁民を叱りつけたことはあっても、中国海警察に抗議したことは一回もないという実にとほほな人物なのです。

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尖閣諸島に出漁した仲間均市議の漁船を追尾する中国公船「海警1501」=5月24日午前(仲間市議提供)

「尖閣諸島で領海侵入を繰り返す中国公船に関し、玉城デニー知事が「中国公船がパトロールしているので、故意に刺激するようなことは控えなければならない」と述べたことに、1日、八重山の漁業者らから「領海内で漁をすることの何が悪いのか」と反発の声が上がった。尖閣問題だけでなく、台湾との「日台漁業協定(取り決め)」などで、離島の漁業者が被害を受けているとの指摘もあった。」(八重山日報2019年6月2日)
http://www.yaeyama-nippo.co.jp/archives/7292

おそらくこの16日には、中国福建省の漁港からは600隻ともいわれる大漁船団が尖閣に登場することでしょう。

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中国漁船団を甘く見てはいけません。中国はこのような漁船団を準軍事的集団として考えています。
かならず司令船が随伴して指揮をとり、海上民兵という兵隊も多く乗っているはずです。
銃火器は持っていないと考えるほうがのどかでしょう。

では、日本側に何ができるでしょうか。
たしかに尖閣諸島周辺海域は、日本の領海であることは間違いありません。
領海に他国の船舶が侵入した場合、直ちに「領海侵犯」事案として実力で排除できるのかといえば、できません。
実は実力で排除できるのは、海警のような公船か中国海軍の軍艦だけなのです。

領海侵犯が成立するためには、以下の条件が成立せねばなりません。

①侵入した船舶が、政府公船・軍艦であること。
民間船の侵入は、単なる不法入国の範疇だから扱いが別枠。
②侵入した外国公船が国際海洋法の無害通航権を犯した場合。
無害通航に当たらないと領海国が判断した場合のみ、初めて排除宣言が可能。

 

民間船が日本の漁場を犯した場合、指をくわえてみていろということなのかといえば違います。

ただし、それは日本のEEZ(排他的経済水域)で違法操業した場合に限ります。
日本と中国は日中漁業協定を結んでいます。実に細かく水域がゾーニングされているのでご注意ください。
日中漁業協定 - Wikipedia

 

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宮古毎日

1997年の日中漁業協定によって、他国のEEZ内で操業する場合には、相手国の許可が必要です。
中国漁船が日本のEEZで操業するなら、日本の許可が必要です。
ややっこしいのは、日中漁業協定で棚上げとなっている
北緯27度線以南の海域です。
この27度以南の水域は日中漁業協定第6条(b)によってどちらの権益に属するのか決まっていないのです。
この領有権が明確にされていない水域に尖閣が入っているのです。ああ、ややっこしい。

つまり、日中漁業協定はこの尖閣を暫定水域としてしまうことで、事実上中国の操業を認めてしまっているのです。
領海において外国漁船に操業を許容するという主権放棄がいまになって響いています。

「現行の日中漁業協定は、北緯27度以南の東シナ海の日本EEZについて棚上げしており、この海域で中国が自国漁船を取り締まる権利を否定していない。中国の漁業監視船は、これを根拠に行動することができる。
日本政府はこの海域を「EZ漁業法特例対象海域」に指定し、中国漁船に対して漁業関係法令を適用していない。中国漁船もまた、これを根拠として操業している。
日本国民として非常に残念なことだが、中国政府には「自国の漁業監視船の活動を日本が容認している」と主張するだけの根拠がある、と考えるのが国際法的にも自然なのである」(静岡県立大学助教・西恭之)

中国はこのような日本の弱腰をあらかじめ計算していますから、2016年のように北緯27度以南の尖閣水域にまで大挙して漁船を入れてきて、協定の棚上げを一方的に破っています。

要するに、尖閣諸島の領有問題を臭いものに蓋をしたかった日本政府が、この海域を「法令適用除外水域」とするという愚挙をしたために、自分で自分の首を締めてしまったということです。

実は憂鬱になるのですが、日本の対応はむしろ後退しています。
たとえば政府の白書類にしても、その間、以下のように中途半端な記述を続けています。
静岡県立大学助教・西恭之氏によれば

「水産庁はと言えば、日中漁業協定発効(2000年6月)後の水産白書は、北緯27度以南の海域の棚上げに触れていない。
水産庁は「日中漁業協定の概要」(2010年11月)に「北緯27度以南の東海の協定水域及び東海より南の東経125度30分以西の協定水域(南海の中国の排他的経済水域を除く)においては、既存の漁業秩序を維持する」と記しているものの、「既存の漁業秩序」とは、旧漁業協定時代と同様に旗国が漁船を取り締まる(中国漁船なら中国側が、日本漁船なら日本側が取り締まる)意味であることを明記していない。
(略)
国会の議論は、さらに低調かつ関心の希薄さをさらけ出している。国会では、棚上げされた二つの水域のうち、北緯30度40分以北、九州沖「中間水域」の東限線に関心が集中した。ここは豊かな漁場で、日中韓三国の漁船が同じ海域で操業していることが理由である。尖閣・先島諸島領海の周りの27度以南水域については2003年4-5月、社民党の東門美津子衆議院議員(現沖縄市長)が質問し、政府側が日中漁業協定改定の意思はないと答弁したほかは、議論されていない。
以上が日本の領海や排他的経済水域をめぐる対応の現状である。国民が知らされていないだけでなく、国会議員や関係省庁の官僚の認識も怪しい状態で事件が発生したりすれば、昨年9月の尖閣沖での中国漁船の衝突事案で明らかだったように、迅速な対応など望むべくもない」
(西前掲)

このような政治の臭いものに蓋的な政府の対応が破られたのは、いうまでもなくこの間の中国の傍若無人な活動だったわけですが、ではなにができるのかといえばはなはだ現況は無力です。

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よく右方向の人たちは景気よく海自を出せといいいますが、不可能です。

なぜなら中国はそれを狙っているからです。
中国はもっけの幸いとばかりに国際世論に訴えることでしょう。※このフレーズが大きな活字になっていましたが、間違いです。意味はありません。

ネットでは中国ミサイル艇が控えているという産経の記事に煽られて大騒ぎしていますが、中国海軍は絶対にあちらから手を出しません。
だって、中国から仕掛けたら負けだと狡猾な中国は判っています。

中国が望む状況は、日本側(できるなら海自)に先に手をださせて、「ニッポンはこんな国際法違反をしていますよ」と国際世論に訴えることです。
そして日本のメディアに「海自過剰警備。中国側怒り」みたいな太鼓持ちの記事を流させることです。
世界の大部分の国は、尖閣諸島が日本を領有だなどということを知りません。
日本人が中印国境紛争の理由をよく知らないのと一緒です。
国際社会の無関心のベースの上に、それでなくても中国は尖閣周辺をしっかり「警備」していることを国際世論にアピールし続けていますから、こちらから手を出せばどのようなリアクションが返ってくるかやる前から判りきっています。

感情論を抑えて国際法の建て付けをみます。

「1)国連海洋法条約は、「各国政府が非商業的目的のために運航する船舶」に軍艦なみの治外法権を与えている。この種の船舶が、領海内の無害通航に関する規則に違反しても、沿岸国は退去を要求し、損害賠償を所属国に求めることしかできない。中国の漁業監視船や調査船のケースはこれに該当する。
2)「領海等における外国船舶の航行に関する法律」も国連海洋法条約に準拠し、「軍艦及び各国政府が所有し又は運航する船舶であって非商業的目的のみに使用されるもの」を適用から除外している」(西前掲)

中国公船・軍艦は国際海洋法により無害通航権を有していますから、現在の領海侵犯行為に対してもそれが適用されます。
日本側はそれに対して領海であることを強く警告できますが、砲を旋回させたり、艦載機をとばしたり、調査行為などをしないかぎり合法です。

まったくなにもできないかといえば違います。
唯一残された道は、中国や台湾なみに法整備をすることです。
中国や台湾は「領海法」を持っていますから、これに習ったものを日本も法整備しなくてはなりません。
国際法の盲点をすり抜けても、当該国の法律によって対処可能なような領海警備に関する法律を早急につくるべきです。
そして日中漁業協定も、よい機会ですから改訂交渉をして、あいまいな尖閣周辺の「法令適用除外水域」を廃止せねばなりません。

実はこの話は、中国漁船衝突事件の時に一回与党内で持ち上がったのですが、そのまま立ち消えていますから、当時の議員に再度動いてもらって法整備をしましょう。
こういう政治のバックアップがなく、すべてのしわ寄せを海保に丸投げしている日本政府のあり方が問題なのです。
海自を出せとか、ミサイルを配備しろというのもけっこうですし、おそらく国際状況はそのような方向に行くのかもしれません。
しかしそれは今ではありません。
今できるのは、中国公船の横暴に対処する国内法の整備をすることが先決です。

 

 

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