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2026年4月18日 (土)

米国自動車産業でも武器製造

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米国が武器の大増産に踏み切りました。

「2026年の現代に再現されるかもしれない。そんな事態が現実のものとなりつつある。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、トランプ政権はゼネラル・モーターズ(GM)やフォードといった自動車大手、さらにGEエアロスペースのような産業界の大手企業に対し、自動車の組み立てラインを武器・弾薬の生産に転換する準備を整えるよう要請を行っている。
この動きは、世界中の軍事専門家を動揺させた。多くの戦略アナリストが即座に思い浮かべたのは、第二次世界大戦時代の古典的な概念、すなわち「民主主義の兵器廠」という言葉だ」
(エポックタイムズ4月17日)
米軍需産業が戦時体制レベルに増産か | 壮絶な怒り作戦 | 大紀元 エポックタイムズ

もちろん自動車産業は米国の本気度を示すもので、本業の軍事産業との協議はとっくに済んでいます。

「トランプ米大統領6日、自身のSNSで米防衛大手など7社の最高経営責任者(CEO)と協議したと発表した。高度な兵器の生産を4倍に増やすことで合意したという。兵器増産はすでに3カ月前から開始し、米国内での生産拠点を拡大している途中だと説明した。2カ月後に再び協議する。
米航空・防衛大手のロッキード・マーチンノースロップ・グラマンボーイングや英BAEシステムズなど計7社のCEOと協議した。
ロッキードは1月、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の年間生産数を今後7年間で2000発まで増やすことで米国防総省と合意した。防衛大手の米RTXも2月、巡航ミサイル「トマホーク」などの増産に向けて合意した。
米国とイスラエルによるイランへの軍事行動を受け、米株式市場では防衛銘柄の買いが広がった。ロッキードの株価は年初来で4割近く上昇した」
(時事3月7日)
トランプ氏、防衛大手7社のCEOと協議 「兵器生産4倍に」 - 日本経済新聞

大戦中の自動車産業の軍事物資生産とは、元々巨大だった自動車産業が戦車、軍用トラック、航空機エンジンなど大量の軍需物資を生産し、「生産力」が戦争の勝敗を左右したことを指します。
たとえば、フォード・モーターのウィローラン工場で大量生産されたB-24は1942年11月に太平洋戦線のオーストラリアに配備され、それまで使われてきたB-17に代わり主力爆撃機として定着し、それは後継機のB-29が投入されるまで、太平洋戦線の主力として活躍しました。
下写真はその生産風景ですが、一見航空機工場のようにみえますが、れっきとした自動車工場です。
ここでフォードは1時間に1機というハイペースで爆撃機を製造していたといわれています。
自動車産業が今と違って貧弱だった当時の日本は比較にならず、航空機の生産量において桁違いの差をつけられました。

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1時間に1機の爆撃機:フォードのウィローランB24リベレーター工場 : r/aviation

実は今、米軍は弾薬・ミサイル不足に直面しています。

「米紙ワシントン・ポストは26日、米国防総省が、ウクライナ向けに供与している防空迎撃ミサイルなどの兵器について、中東への転用の可否を検討していると報じた。イランとの戦闘の長期化に伴い米軍の弾薬不足が深刻化しているためで、ウクライナへの供給量に影響が出る可能性がある。
イランとの戦闘にあたる米中央軍は弾薬の確保が課題となっている。トランプ大統領は26日の閣議で、「ある場所の備蓄を別の場所で使うことはある」と語った」
(読売3月28日)
米軍の弾薬不足が深刻化、ウクライナに供与する防空迎撃ミサイルなどの中東への転用検討 : 読売新聞

米国の打撃力の主力であるはずのトマホークは、対イラン攻撃開始から4週間で850発以上を消費しました。
このような速い消費ペースが続くとたちまち在庫は枯渇します。
トマホークのような精密誘導兵器は生産量が限られることから、国防総省では在庫不足を警戒する声が上がっているそうですす。
またイランが開戦当初、めくら滅法数撃ちゃ当たるとばかりにドローンやミサイルをぶっ放したために、米国のみならず中東諸国全体でも防空ミサイルの在庫が激減しました。
正直、一発数十万円のドローンをパトリオットのような400万ドル(6億2千万)で対抗してはソロバンに合わないのです。
まぁそれはそれとして、今後安価なドローン対策をかんがえるとして、今は米軍も備蓄を補うため海外に置く戦力からの移転でお茶を濁しています。

今後、いかにイラン戦争が早期に終了しようと、武器弾薬のサプライチェーンを大幅に強化せねばならないのです。

 

2026年4月17日 (金)

イラン金融封鎖

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このイラン戦争は形を変えた対中圧力です。
よく中東に目が行ってアジアはがら空きじゃないかという人がいますが、とんでもない。
今回のイラン戦争でも一部を除けば、米国は中央軍(CENTCOM)と呼ばれる中東地域専門の部隊だけしか使っていません。

アジア地域を守備範囲とするインド太平洋軍は、一部の海兵隊を除けばそのまま温存していますし、そもそも海兵隊は即応用の遊軍です。
ですから中国主敵の構図にはいささかの変化もありません。
まぁといっても、常にさぁ戦争だ戦争だと行っているわけじゃなくて緩急をつけてなぐったりなだめたりするのがトランプの流儀なんですがね。

さてその中国ですが、イラン戦争が始まってどうも顔色が優れません。
中国にとってイランはロシアと並ぶそりゃ大事な同盟国、というかお得意さんだったはずなのに、国連でぶつくさ言う以外ナニもしようとしません。
大枚のカネで売りつけた防空ミサイルシステムは、ベネズエラに続いてまったく米軍機に歯がたたないことがバレ、対艦ミサイルもごっそり売ったはずなのにその影すら見えません。
これじゃあ発展途上国を中心にして、「早い・安い・そこそこの性能」をうたい文句にして巨額なカネを稼いできた武器輸出も、今後不景気になっちゃいますね。

さて、いままで何回かふれてきましたが、中国のイランとのビジネスモデルは、武器を大量に売りさばき、その見返りにイランから格安の闇原油を買うというものでした。
だからイランは中国のタンカーだけは、見えません見えませんとホルムズ海峡を素通りさせてきたのです。
それを見て、高市、米国への支持を止めて中国様のようにカネ出して通してもらえ、というウスラが現れたのでびっくりしました。
なにを言ってんだか、イランは日本を友好国だなんて思ったことは一度もありませんよ。
そういう幻想を持たしておく方が有利だから、日本の幻想につきあうふりをしてきただけです。
イランは日本より百倍以上中国が好きですからから。

それはさておき、米国はイランとイランへの入港船舶の海上封鎖を開始しました。
中央軍は、「許可なく封鎖海域に出入り‌する⁠船舶は、臨検、進路変更、拿捕の対象となる」としましたから、イラン船籍及びイランに入港しようとする船舶はすべて無条件でこの封鎖の対象になります。
ルートは2つあります。
下図の赤線が通常ルートですが、イランは青線ルートを通るように命じています。
というのはふたつの大小の島がイラン領だからで、ここがイランの関所になっています。

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ホルムズ海峡封鎖への対処法は「時間稼ぎ」のみか 代替案も穴埋めには不十分 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

この米軍の封鎖により、イランは石油輸出が不可能となりました。
そのほんとうの影響は油井使用不能という形で1カ月以内にでることでしょう。

それと同時に中国からの軍事支援物資の搬入も不可能になりました。
特にイーグルを落して有名になった肩撃ち式対空ミサイルやミサイル燃料も止まります。

「[11日 ロイター] - 米CNNテレビは10日、中国が数週間以内にイラン‌へ防空システムを供与する⁠準備を進めていると報じた。関係者3人の話として伝​えたもので、中国は輸出元を隠すため、第三‌国経由での輸送を模索している兆候があるという。軍事産品などの輸入ができなくなった。また、中国が肩掛け型対空ミサイルやミサイル燃料などを輸出しようとしていたと報じられているが、これも困難になる。トランプはイランに軍事産品を輸出したことが確認されれば、50%の追加関税をかけるとしており、これは中国を視野に入れたものとなる」
(ロイター4月11日)
中国がイランに防空ミサイル、供与を準備とCNN報道(ロイター) - Yahoo!ニュース

中国は公称中東依存割合は40%としていますが、実際にはイランの闇石油を大いに買いまくってきたために、実際の中東依存割合は50%程度と見込まれています。

なおイランは、人民元国際決済システムや暗号資産により、米国の監視を逃れる形で資金決済を行ってきましたが、これも石油というブツがあってのことです。
ブツがなくなれば無意味ですが、そのブツは厳しい監視下に入りました。
そして米国財務省は、イラン産原油を購入する国に2次制裁をかけることを発表しました。
イラン石油購入のためだとわかれば、その金融機関にも2次制裁がかかることになります。

 [ワシントン 15日 ロイター] - ベセント米財務長官は15日、イラン産原油を購入する国に制裁を科​すと警告した。また、イランに対する米‌国の海上封鎖により、中国がこうした購入を一時停止するとの見方を示した。
ホワイトハウスで記者団に対し「​われわれは各国に対し、イラン産​原油を購入している場合、あるいはイラ⁠ンの資金が自国の銀行にある場合、二次制裁​を適用する用意があると伝えた」と述べた。
米​国によ「るイランへの海上封鎖は13日に始まった。中国はこれまで、イランが輸出する原油の8割以上を購入してい​た。
ベセント氏は「この封鎖により、中国の購​入が一時停止されると考えている」と述べた。
また、財務省‌が中⁠国の銀行2行に書簡を送り、両行の口座を通じてイランの資金が流れていることを証明できれば、二次制裁を発動する用意があると伝えた​と明らかにし​た。
財務省⁠は同日、イランの石油輸送インフラを標的に20以上の個人、企業、船舶を​対象とした制裁を発動したことも発​表し⁠た」
(ロイター4月16日)
米、イラン産原油購入者に制裁警告 海上封鎖で中国が購入停止と予想 | ロイター

いやー、くどいくらいに十重二十重だな。
軍事的には締め上げられ、経済の根幹の原油輸出は止められ、さらに持久戦に持ち込もうにも油井が余命2週間、そして金融制裁ですから泣き面に蜂です。

2026年4月16日 (木)

イランは油井の封鎖に耐えられない

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イラン戦争は、いよいよ大詰めに近づいています。
2週間の停戦期間の終了に合わせて2回目が設定されようとしています。

「アメリカとイランの代表団は11日、パキスタンの首都イスラマバードで戦闘終結に向けた交渉を実施しましたが、合意に至らず終了しました。 CNNは13日、トランプ政権の関係者の話として、イランの代表団と2回目の交渉を実施する可能性が政権内で協議されていると伝えました。
イランや仲介国との協議が進展した場合に向けて次回の交渉の日時と場所を検討していて、スイスのジュネーブとパキスタンのイスラマバードが候補地としてあがっているということです。
また、ニュースサイト「アクシオス」によりますと、11日の交渉で、アメリカの代表団はイランにウラン濃縮の20年間の停止を提案したということです。
一方のイランの代表団は最長で5年間停止との対案を示したとニューヨーク・タイムズは報じています」
(テレ朝4月14日
米政権がイランと2回目の交渉検討 候補地にジュネーブとイスラマバード 米CNN(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース

米国はホルムズ海峡を武器化したイランに対して、逆封鎖という奇手で応じました。
実はこれがいちばん効くのです。
革命防衛隊は威勢のいいことを叫んでいますが、資金源はなんでしょうか。
もちろん原油です。
数字は時期や制裁の強さでかなり変動しますが、最近の傾向としては輸出量は日量で数十万〜百数十万バレル程度になることが多いとされています。
原油価格を1バレルあたり数十ドルとすると、年間で数百億ドル規模の収入といったところです。
推定で、輸出により得られる利益は日額4億ドル、月額130億ドルくらいと推測されています。
これが革命防衛隊の資金源で、これを彼らは産軍複合体の原資としているわけです。
ですからカネの成る樹である原油収入が枯れたら、いっさいが砂上の楼閣に還ります。

ところがイランの油井には根本的な欠陥があります。
ちょうどベネズエラの油田が重質油油田であって扱いが困難であるように、イラン油田もまた大きな弱点を持っているのです。
それは中東でも20世紀初頭から開発されてきたために油井が老朽化していることです。
多くの油田では自然に噴き出す力だけに頼る一次回収の段階はとうに終わり、貯留層の圧力低下が進んでいることを意味します。

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イスラエルがイランのガス油田攻撃:イランは反撃でカタールの世界最大級油田攻撃 2026.3.19 – オリーブ山通信

ではどうしているのかといえば、元々油で満たされていた空間から油を取り出すと、空間と圧力のバランスが崩れるので、そこに水やガスを入れて、地下の圧力や流体の配置をコントロールするわけです。
いわば水やガスを注入して無理やり油を絞り出しているのです。
だから原油が制裁で輸出できないからコックを捻って減産できずに、水をいれては汲み出すことを半永久的に続けていなければなりません。
さもないと、この油井の汲み出し圧力のバランスが崩れて油井自体が使い物にならなくなるからです。
だからイランは経済制裁下でも、中国やインドに割安で叩き売ってでも汲み出してきたのです。
Elise Vanessaはこう言っています。

「米軍によるホルムズ海峡封鎖の裏で、イランが直面しているのは技術的な絶望です。
油井を長期間停止(Shut-in)すると、地底の圧力バランスが崩れ、パラフィンや砂が通路を塞ぎます。
再開しても生産量は激減し、古い設備は腐食で全滅。
老朽化したイランの油田にとって、停止は「永久的な損傷」を意味します。
再稼働には高度な技術と専門機材が必要ですが、制裁でそれらは手に入りません。
トランプ大統領によるホルムズ海峡封鎖が、単なる「一時的な輸出停止」ではなく、イランの将来的な産油能力そのものを破壊する「息の根を止める一撃」になる理由がここにあります」
Xユーザーの21@Ru-minoさん X

では、他の中東諸国のように新しい油田を開発すればよさそうなものですが、この国は政治が極めて不安定で常に政情不安を抱えていました。
古代神権支配を今に実現し、世界全体もイスラム原理主義で一色化しようというのですからまともではない。
国の絶対的支配者がイスラム坊主ですから、技術テクノクラートが育ちません。
油なんか掘れば出るくらいにしか理解していないために、外資を入れようともしないのですから困ったもんです。

このような国で中国とインドも含めていっさいの原油輸出がストップしたらどうなるでしょうか。
わかりきったことですが、たちまち原油を絞り出していた油井のバランスが崩れて二度と使い物にならなくなります。
今、イランが米国の海上封鎖によって迎えている状況がまさにこれです。
時間的余裕はあまりありません。おそらく2週間ほどではないかと言われています。
だからイランには、コケ脅かしを言っている余裕は実はあまりないのです。
日本のメディアでは、イランは泥沼の長期戦に引きずり込みたいのだ、その罠にトランプはかかった、なんてヨタ言っている人がいますが、海上封鎖されてできるならおやりなさい。

 

 

2026年4月15日 (水)

米海軍の封鎖作戦詳報

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米海軍によるホルムズ海峡逆封鎖作戦が始まりました。
どうやら米国はこの封鎖のエリアをペルシャ湾外にも拡大するようです。

イランとの戦争開始から6週間後、米国のトランプ大統領は海軍に対し、この紛争において最も困難な任務を与えた。それはイランの港湾の封鎖と、戦略的に重要なホルムズ海峡から同国製の機雷を除去することだ。
米中央軍(CENTCOM)によると、封鎖命令は13日午前10時(米東部時間)から、海峡内外のイランのすべての港湾に適用される。イランは戦争勃発以来、世界のエネルギー貿易にとって極めて重要な航路であるホルムズ海峡を支配下に置いている。
トランプ氏はこの任務の範囲がさらに拡大し、ペルシャ湾外にも及ぶ可能性があることを示唆した。
「私はまた、イランに通航料を支払った国際水域内のすべての船舶を捜索し、拿捕(だほ)するよう海軍に指示した。違法な通航料を支払う者は、公海を安全に航行することはできない」。トランプ氏は12日にそう述べ、イランが船舶に通航料を課す措置に言及した」
(CNN4月14日)
イランの港湾封鎖とホルムズ海峡からの機雷除去、米海軍に実行可能な方法とは(1/3) - CNN.co.jp

戦争研究所(ISW)はこのように述べています。

米中央軍(CENTCOM)は同時にイランの港や船舶に封鎖を課す一方で、ホルムズ海峡を通る非イラン港への船舶の公式通過ルートの開放に向けて措置を講じている。CENTCOMは4月13日午前10時(東部標準時)にイランの港と船舶に対する封鎖を実施した。
 
CENTCOMは4月13日、ペルシャ湾およびオマーン湾の港を含むイランの港および沿岸地域に出入りするすべての国の船舶に対して封鎖を実施すると発表しました。
CENTCOMは、ホルムズ海峡を通過する船舶の航行の自由を妨げないと指摘した。

 英国海上貿易作戦局(UKMTO)は3月13日に、米軍がペルシャ湾、オマーン湾、アラビア海の一部にあるイランの港および沿岸地域に対して「海上アクセス制限」を実施していると報告した。
 UKMTOは、CENTCOMが現在イランの港に停泊中の「中立艦艇」に対し、出港のための限定的な猶予期間を与えたと報告した。ただし、UKMTOは「限定的な猶予期間」の長さを明示しなかった。
UKMTOは、CENTCOMの封鎖はイラン以外の港への交通を妨げるものではないが、船舶が海峡を通過する際に米国の「軍事的存在、指示された通信、または訪問権手続き」に遭遇する可能性があると付け加えた」(太字原文)
イランアップデート特別報告、2026年4月13日 |ISW

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ISW

その米海軍の陣容もわかってきました。

「 4月13日、ウォール・ストリート・ジャーナルの上級米当局者は、15隻以上の米海軍艦艇が封鎖を支援していると語った。
 当局者は封鎖を実施している艦艇を明示しませんでしたが、CENTCOMは現在、航空母艦、複数のミサイル駆逐艦、強襲揚陸艦、その他複数の軍艦を海峡付近に展開させています。
4月11日には2隻の米ミサイル駆逐艦もホルムズ海峡経由でペルシャ湾に展開した。 CENTCOMは封鎖執行のためにどのような手順を用いるつもりかを明示しなかったが、米軍はこれまでに海軍艦艇から展開したヘリコプターによる小規模な乗り込みチームを使ってベネズエラやロシアの石油タンカーを阻止したことがある」
イランアップデート特別報告、2026年4月13日 |ISW

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米海軍VBSSチーム・海上船舶臨検 - US Navy VBSS Team (Visit, Board, Search, and Seizure) - YouTube

この封鎖作戦には、機雷除去には協力した中東諸国も参加していないようで、米海軍が単独でおこなっています。

「アメリカ大統領ドナルド・トランプは4月13日、イランの港や船舶の封鎖において、CENTCOMを支援するために未特定の国々が支援することを期待していると述べた。
トランプ大統領は以前、4月12日に一部の湾岸諸国が米国の海軍機雷除去努力を支援していると述べたが、彼らが封鎖の執行に協力するかどうかは不明である。 イギリスとフランスは封鎖に参加しないと表明した」
イランアップデート特別報告、2026年4月13日 |ISW

イランのビジネスモデルは、イラン近海の安全地域を利用し、中国やインドなどの船舶に対して、通行料を払う代わりに石油を供給するというものでした。
通行料は、暗号資産やCIPS(人民元国際決済システム)で支払われており、この方法で欧米の制裁逃れをしてきました。
また武器の補給もこのルートを使い、中国から新たな兵器やミサイルの部品が搬入されてきました。
今回の封鎖作戦でこれらの裏ルートは完全に壊滅することになります。
これはイラン経済の首根っこを押さえただけではなく、イラン原油に頼ってきた中国にとってとてつもない痛手となるでしょう。

なお、イランはこれを海賊行為だと行っていぇすが、自分が勝手に国際海峡を封鎖しておいてよー言うよ、ですが、今回はトランプは国際法を遵守しています。
トランプが大嫌いなCNNはややくやしげにこう報じています。

「海戦法に関するニューポート・マニュアル」は、封鎖を「海上における密輸品の拿捕、および敵国の財産の拿捕または破壊」と定義している。
同マニュアルは、「これらの手段を通じ、敵国から輸出による経済的収入や輸入による利益を得る機会を奪う。こうした収入や利益は敵国の戦争遂行の支えとなる」と述べている。
封鎖を合法的に実施するには、以下の規則に従わなければならない。
・封鎖は宣言、通知されなければならない。つまり、影響を受ける可能性のある船舶に警告を発する必要がある。
・封鎖は効果的でなければならない。つまり、米国は封鎖を実施するための艦船と航空機を保有していなければならない。
・封鎖は公平でなければならない。つまり、どの国の船舶にも影響を与える必要がある。
・封鎖は民間人だけを標的にしてはならないが、民間人への被害は許容される。
・中立港へのアクセスを妨害してはならず、ホルムズ海峡のような海峡を封鎖してはならない。トランプ氏はイランと無関係の国際船舶の航行については同海峡は開放されていると述べている」
(CNN前掲)

つまり正当な「封鎖」に該当する行為であって、まったくの合法です。

 

2026年4月14日 (火)

米国、逆封鎖始める

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私が「媚米」ですか、生まれて初めて言われたな。(苦笑)言葉使いに気をつけなさいよ。
こういうレッテリングをすると、見えるものも見えなくなりますよ。
相手を貶めた表現をする者との議論は無意味です。

さて、米国が意外な荒技を繰り出してきました。なんとホルムズ海峡逆封鎖と、イラン港湾の封鎖です。
いままでイランがやってきたことを、そのまま逆手にとった形です。


米軍、ホルムズ海峡で機雷除去作戦開始



フロリダ州タンパ — アメリカ中央軍(CENTCOM)部隊は4月11日、ホルムズ海峡の機雷除去の条件を設定し始め、米海軍の2隻のミサイル駆逐艦が作戦を実施した。

USSフランク・E・ピーターソン(DDG 121)とUSSマイケル・マーフィー(DDG 112)はホルムズ海峡を通過し、イランのイスラム革命防衛隊が以前に敷設した海雷を完全に除去するという広範な任務の一環としてアラビア湾で活動しました。

「本日、私たちは新しい航路の確立プロセスを開始し、この安全な道を海事業界と間もなく共有し、商取引の自由な流れを促進するつもりです」とCENTCOM司令官のブラッド・クーパー提督は述べました。

ホルムズ海峡は国際的な海上通路であり、地域および世界経済の繁栄を支える重要な貿易回廊です。今後数日で、水中ドローンを含む追加の米軍部隊が撤去作業に加わる予定です。
XユーザーのU.S. Central Command

米海軍はホルムズ海峡手前ですべての船舶に臨検を行い、イランに通行料を支払った船舶は足止めされます。
さてさて、「高市、イランに土下座してカネはらって通してもらえ」と叫んでいた皆さん、そんな近視眼的なことをしていたらどえらいことになっていましたね。
「即時発効で、世界最強の米海軍はホルムズ海峡に出​入りしようとするあらゆる船舶を封鎖するプロセスを開始する。イランに通航料を支払った全ての船舶を公​海上で捜索し、拿捕するよう海軍に指示した。違法な通航料を支払う者に、公海上の⁠安全な通航はない」と記した」
(ブルームバーク4月12日)

一方、米海軍はすでに駆逐艦2隻を使って掃海作業をおこなっています。
下の写真は、米国中央軍がアップしたホルムズ海峡を通過する駆逐艦です。
イランは「警告したら引き返した」なんて言っていますが、もちろんウソです。

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米国中央軍
掃海艇がいないのにどうやって掃海するかといえば、水中ドローン(EMD)です。
日本でも開発が進んでおり、護衛艦(FFM)の指揮所から、遠方の機雷処分用水上無人機を遠隔操縦しての機雷処分に世界で初めて成功しました。
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水中ドローンは、人が危険水域に入らずに済むため安全性が高く、長時間の監視や広範囲の反復調査が可能きなり、小型で展開が容易なため、港湾や沿岸部など狭いエリアにも投入しやすいというメリットがあります。
今回、米海軍はさらにアジア海域から、掃海作業を得意とする沿海域戦闘艦(LCS)を追加投入するようです。

なお、かつて湾岸戦争時に、イラク軍がクウエート沖に1200個もの機雷を敷設し、海自も派遣されました。
これは敷設船で撒いたために大型で、てこずったのですが、これに較べてイランの機雷敷設能力はかなり劣るようで、すでに敷設用ボートは一隻もなく、やるとすればミサイルを使った投下だと思われます。
ただし、船とは違って大型機雷を敷設することはできませんから、脅威は限定的です。

 

 

2026年4月13日 (月)

わずか1日の協議で決裂

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まぁ、おどろくような結果ではありません。むしろ予定調和です。
イランと米国がわずか1日の協議で決裂しました。

初めから障壁がありすぎました。
米国側の要求はこうです。

●米国側要求
①核施設の解体: ナタンズ、イスファハン、フォルドゥにある核施設の解体。

②ウラン濃縮の恒久的な停止: 国内でのウラン濃縮活動を完全に終了する。
③濃縮物質の引き渡し: すでに保有している濃縮ウラン等の物質を国際原子力機関(IAEA)へ譲渡する。
④武装組織への支援停止: ヒズボラやフーシ派など、親イラン武装組織に対する軍事・財政的支援の全面停止。
⑤ミサイル開発の制限: 弾道ミサイルの保有数や射程距離に制限を設ける。

この米国側提案を見るとわかりますが、焦点はあくまでもイランの核武装です。
よくメディアはホルムズ海峡が交渉の胆だと言っていますが、間違いです。
米国は現時点でホルムズ海峡の軍事的実効支配を完成しつつあり、あとはイランがゲリラ的なタンカー襲撃をしないと確約すれば海上保険屋も安心することでしょう。
イランラバーたちは、ホルムズ海峡を通過する船舶にミサイルの飽和攻撃をしかけてくるぞ、早く高市はイランに土下座して通してもらえ、なんて言っていますが、ただのプロパガンダです。

イランはミサイルをしこたま持っていましたが、今その大部分は使えません。
だって深い洞窟か地下にあり、あいにくその入り口は瓦礫で塞がれている状態だからです。

もちろん瓦礫を撤去して死ぬ気で撃ってくる革命防衛隊もいるでしょうが、「飽和」するほどありゃしません。
だからただの大ぼらですが、一発でも飛んで来れば、当たろうと当たるまいと保険屋が騒ぐので、その可能性がゼロにならないかぎり慎重にならざるをえないのです。

したがって、米国にとってプライオリティはあくまでも核開発放棄です。
イランはあれこれ言っていますが、ゼッタイに米国が呑めないのはこの4点です。

●米国が呑めないイランの要求
①戦争賠償金の支払い、 今回の紛争による損害に対する賠償。

②ウラン濃縮権利の容認: 平和的利用を名目とした濃縮権利の承認。
③中東からの米軍撤退、地域内にある米軍戦闘部隊の完全撤退。
④ホルムズ海峡の主権認容: 海峡の管理権がイランにあることの承認と、通行料徴収の権利。

で、どうなったのか。20時間協議をしたみたいですが、合意できたら奇跡です。

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【速報】バンス米副大統領が帰国 米国とイランの停戦協議「合意に至らず」 - YouTube

「米国とイランの代表団による戦闘終結に向けた対面の直接協議が4月11日から、パキスタンの首都イスラマバードで行われた。12日、記者会見に臨んだ米国側代表のバンス副大統領は、「悪い知らせは合意に至らなかったこと。合意のないまま帰国する」と述べた。
米国が求めた核兵器保有を可能にする手段の放棄について、イラン側から明確な確認が得られなかったと説明。さらに、「米国のレッドラインと譲歩可能な範囲を提示したが、イラン側は条件を受け入れなかった」と明らかにした。一方、この発表に先立ち、トランプ大統領は「合意しようがしまいが、どうでもいい」「我々が軍事的に勝利した」と述べ、強硬姿勢を強調していた。イランのタスニム通信も、「イランと米国の協議は終わり、交渉は成立しなかった」と報じた」
(メーテレ4月12日)
【合意至らずバンス氏帰国】米イラン協議“20時間交渉も不調”核放棄巡る相違が鮮明- 名古屋テレビ【メ~テレ】

イランが代表団に「ミナブ168」と名付け、団長にガリバフを選んだ時点で、妥結する気はないのは見え見えでした。
「ミナブ168」とは、2026年2月28日にイラン南部ミナブの学校で爆発があり、生徒や教師など168人が殺害された事態を指しています。
これは米軍・イスラエル軍の残虐さの現れとして大きく喧伝されましたが、後に検証されたBBCの衛星画像ではこの革命防衛隊基地と学校は同一の敷地にありました。

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【検証】イランの学校と近隣の軍事施設は攻撃を複数回受けていた……人工衛星画像から明らかに - BBCニュース

つまり、ハマスがガザで常習していたように学校と隣接して軍事拠点を作っていたのです。
いわゆる人間の盾です。
こういう所業をする革命防衛隊のガリバフという大幹部が和平交渉団を率いてきた時点で、イランにはいささかも和平に応じる気はないということです。
ガリバフは革命防衛隊空軍司令官、警察軍司令官だった男ですからね。
モハンマド・バーゲル・ガーリーバーフ - Wikipedia

日本のメディアはこの男のこんな台詞をそのまま伝えてしまっています。

「アメリカとの停戦協議でイランの代表団を率いたガリバフ国会議長はアメリカはイランの信頼を得るのに失敗したと批判しました。
パキスタンでのアメリカとイランとの協議は合意に至らず終了しました。
イラン側を率いたガリバフ国会議長は12日、「イランの代表団は前向きな提案を示したが、最終的にアメリカはイランの信頼を得ることができなかった」と自身のSNSに投稿しました。
アメリカ側の対応に問題があったこと示唆しています」
(テレ朝4月13日)
「米がイランの信頼得るのに失敗」 停戦協議めぐりイラン代表団のガリバフ氏が批判(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース

なにが「米国はイランの信用をえられなかった」だ。ばかか。
こんなテロリストの親方の捨て台詞を伝えて協議を代弁させる、実に低劣です。

今後米国は、ホルムズ海峡の掃海作戦を本格化させる一方、2週間の停戦終了と共に攻撃を再開するでしょう。

 

 

2026年4月12日 (日)

日曜写真館 遠き遠き遠き青春さくら散る

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ときをりの風のつめたき桜かな  久保田万太郎

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この先も斯うした花の日和あれ  随笑

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来年も又来ておくれ花の鳥  燕音

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ゆとりより生るゝものに花の風  燕音 

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朝桜みどり児に言ふさやうなら 中村草田男

 

 

 

2026年4月11日 (土)

中東は千夜一夜物語の世界のままです

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日本人の通弊として、世界どこでもじぶんの国と同じようなもんだという美しい誤解があります。
だから中東世界がわからない。
うちの国は世界的に見て、極めて特殊な地勢学的特徴があるのです。
なんといっても四方を海で囲まれた自然国境が存在し、その中にほぼ同一の人種が暮し、強烈な宗教支配がなく、国家と国を分離しないでも自然にひとつだと思える、こんな国世界でもあんまりないですよ。

では、中東はどうかというと、アリババと30人の盗賊の千夜一夜物語の世界のまま止まっています。
国はあっても国家はないのです。
たとえば今イランが停戦協定破りだと騒いでいるレバノンは、表向きは国家という体裁ですが、私たち日本人が考える「国」とはまったくちがいます。
なんとレバノンという国家の中にヒズボラというテロ集団が国を作って、勝手にやっているのです。
こういう状態を国家内国家(二重国家)と呼びますが、様々な勢力が代表を送って政権をつくって国家の顔を整えています。
こんな国だから日産を食い潰した大悪人であるカルロス・ゴーンが逃げこんでも匿ってもらえるというわけです。ま、カネさえあればですがね。

で、ヒズボラはなんでレバノンにしがみついているかといえばレバノン南部から地続きでイスラエル北部に浸透できるからです。
かつてこの国境地域にはアラファトのPLOが陣取って、イスラエルに連日ロケット攻撃を仕掛けていました。
いまは役者が替わって、イランが武器を与えて訓練した育成したヒズボラです。

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産経

イスラエルはこのレバノン南部の国境地帯に、国境からリタニ川まで緩衝地帯を作りたいと考えています。

「イスラエルのカッツ国防相は24日、イランと連携する民兵組織ヒズボラを標的に行っているレバノンへの軍事攻撃を巡り、「自衛のための緩衝地帯」を設けるとしてレバノン南部を広範囲に占領する意向を示した。トランプ米政権がイラン側との停戦協議でレバノンの戦闘を扱うかは不明だ。
ロイター通信によると、カッツ氏はイスラエル軍幹部との会合で、北部国境に隣接するレバノン南部の防衛線をリタニ川流域まで北上させ、一帯を支配下に置くとの見通しを示した。リタニ川以南のレバノン領は全国土の10%近くに相当。
イスラエルがこれほど広い地域の占領方針を示したのは初めてだという」
(産経2026年3月25日)
イスラエル、レバノン南部を占領の意向「自衛のための緩衝地帯」 レバノン政府は苦慮 - 産経ニュース

ネタニヤフはテロ禍の根絶を期しており、ガザと西岸を支配下に置くまでは枕を高くして寝られないとかんがえていますし、レバノン南部にも緩衝地帯を設けるまでは戦いを止めないつもりです。
中途半端なところで妥協すれば、必ず再びテロの温床となるからです。

中央アジアから中東の砂漠地帯には、海や川のような自然国境は皆無です。
だからアラビア半島の国境線は不自然に一直線ですよね。
ここで通用するのは「力」です。有体にいえば軍事力。
軍事力で支配した地域が領土です。その意味で、レバノンという国家があってもそんなもんは芝居の書き割りみたいなもんで、ヒズボラにとっては自らが支配する土地は「国」なわけです。
そしてここで通用する唯一の「法」は、国家が定めた近代法ではなくシャリフ法だけなのです。
国際法ですか、もちろん話の外です。

ヒズボラは、人間の楯を使って学校施設や民家の下のトンネルから執拗なロケット弾攻撃を仕掛けたりしていますが、彼らの「イスラエルを地中海に追い落す」という反ユダヤのスローガンは、言い換えれば「力による国境の拡張」なのです。
そうはさせじとイスラエルは押し返すといわけですが、イスラエルはいままでこうやって自国の四方に緩衝地帯を作ってきたのです。

ですから今回イラン戦争停戦条件で絡まってしまいましたが、イスラエルからすれば冗談ではない、アレはアレ、コレはコレだといいたいのでしょう。

 

2026年4月10日 (金)

高市氏イラン大統領と電話会談

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高市首相がなかなか味なことをしました。イラン大統領のペゼシュキュアンに電話会談したのです。
外務省HPによれば
日・イラン首脳電話会談|外務省

4月8日、午後4時から約25分間、高市早苗内閣総理大臣は、マスウード・ペゼシュキアン・イラン・イスラム共和国大統領(H.E. Dr. Masoud Pezeshkian, President of the Islamic Republic of Iran)と電話会談を行いましたところ、概要は以下のとおりです。
冒頭、高市総理大臣から、事態の沈静化が何より重要であることを始めとする、我が国の立場について改めて伝えました。
1その上で、高市総理大臣から、今般の米国・イラン双方の発表を前向きな動きとして歓迎しているとした上で、最も重要なことは、今後、ホルムズ海峡の航行の安全確保を含む事態の沈静化が実際に図られることであり、外交を通じて、最終的な合意に早期に至ることを期待している旨述べました。
2さらに、高市総理大臣から、ホルムズ海峡は世界の物流の要衝、そして国際公共財である旨強調し、日本関係船舶を含むすべての国の船舶の航行の安全確保を求めました。
3また、高市総理大臣から、4月6日に保釈された邦人1名をめぐる問題の早期解決を要請しました。
4これに対し、ペゼシュキアン大統領からは、イラン側の立場について説明がありました。
5両首脳は、引き続き意思疎通を継続していくことで一致しました。


よくメディアや野党は念仏のように「イランは世界一の親日国だから、日本は米国と仲介しろ」みたいなことを言っていますが、それを具体的に今やるとこういうことになるというわけです。
なるほどね、高市氏の目のつけどころが正確です。ペゼシュキアンはイラン政権内でほぼ唯一まともな話ができる対話者足り得る人物です。
高市氏が使った「ホルムズ海峡は国際的公共財」という新鮮にして絶妙な表現を理解できるのは、この男しかいないでしょう。
だってこれは国連海洋法条約(UNCLOS)では、ホルムズ海峡は「国際航行に使用されている海峡」である、という事実認識を指摘したのみならず、通行料支払いを拒否しているからです。
しかもそう言わずに、そう通告したのも同然という憎い表現です。
たぶん西欧諸国はほーという思いで高市外交を見ていたことでしょう。
驚嘆したのか、NATOは大部分の国が大使を日本参りさせるようです。
「NATO北大西洋条約機構)に加盟する約30カ国の大使が4月中旬に日本を訪れる方向で調整していることがわかりました。異例の規模での訪問です。
政府関係者によりますと、日本を訪れる方向で調整しているのはベルギーの首都ブリュッセルにあるNATO本部に駐在する約30カ国の大使です。
加盟国のほとんどが訪問団に参加しています。
アメリカのトランプ大統領がイランでの軍事作戦にNATOが非協力的だとして不満を強め、脱退も示唆するなど関係が悪化していて、政府関係者は「日本がどのように良好な日米関係を築いているのかもテーマになるだろう」と話しています」
(テレ朝4月10日)
約30カ国のNATO大使が4月中旬訪日へ 一度に訪れる人数として異例の規模(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース
それはさておき、政権強硬派は脳が神様しちゃって受け付けないのがわかっているから、ペゼシュキュアンを選ぶのもよい。



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イラン大統領選 改革派ペゼシュキアン氏が当選 - BBCニュース

ペゼシュキアンは医師で、内政においてはヘジャブの着用を強制して死者まで出した道徳警察(なんてもんまであるんですよ、イランには)に批判的で、反米反西欧的だった従来の姿勢の変革を呼びかけて当選しました。


「ペゼシュキアン医師は71歳の心臓外科医で、イランの国会議員。イランの悪名高い道徳警察に批判的で、イランの世界からの「孤立」解消と「団結と結束」を約束し、波紋を呼んだ。
ペゼシュキアン氏はさらに、イランの核開発をめぐり西側諸国と「建設的な交渉」を呼びかけた。イランと西側諸国は2015年、西側の制裁緩和を条件にイランが核開発計画で譲歩すると合意したものの、3年後に米トランプ政権が一方的に離脱して対イラン制裁を再開したことから、この合意枠組みは停滞している。ペゼシュキアン氏は枠組みの再建を目指すとしている。
対抗馬のジャリリ氏は強硬な反欧米姿勢で知られ、核合意再建に反対し、現状維持を呼び掛けていた。同氏は、宗教関係者の支持を得ていた」
(BBC2024年7月7日)
 BBCニュース

 当然、保守頑固派で占められているかれの政権内の立場は微妙で、実際の権限はミニマムであろうと思われます。
しかし、であってもよいのです。
なぜなら、高市氏の目的は現実的にイランを動かすのではなく、イラン政権の裂け目に手を突っ込んで揺るがすことだからです。
そもそも今西側の首脳でイラン政権内の要人に電話できるのは高市氏ただひとりでしょうし、その相手はペゼシュキアン しかいないのです。

では、ペゼシュキュアンはなにと対立しているのか、言わずと知れた革命防衛隊です。
たとえば、今注目されているホルムズ海峡を明けるの、締めるのと言っているのは誰か、革命防衛隊です。
彼らは好むと好まざるとに関わらず、昔の村上海賊よろしく現在ホルムズ海峡のラクク島に関所を作り、「通行料」を払えば通航を許可しています。
支払いは人民元だそうです。
ここを米国が制圧しないかぎり、実効支配権はイランが握っていることになります。
現実には革命防衛隊にタンカーを撃つ能力がなくても、保険屋はゆるさないですからね。

ペゼシュキアンには革命防衛隊を指揮する権限がありません。
それを持つのは国家治安委員会であって、そことアクセスするのは不可能です。
ならば、誰が今イランを危機に陥れているのか、誰が世界経済のパブリック・エネミーとなっているのか、それを白日に曝すしかないでしょう。

今のイラン政権はモザイクのよう分裂しているようです。
独立系のイラン・インターナショナルはこう述べています。

「親政府派のISNA通信は、議会議長モハンマド・バゲル・ガリバフが金曜日にパキスタン・イスラマバードで開始予定の会談にイラン代表団を率いると報じた。30分以内に、IRGC系のタスニム通信は報告に反論し、「関係機関」によって代表団の構成がまだ確定していないと述べた。
相反する報道は、代表団のリーダーが誰になるかの不確実性を浮き彫りにし、テヘランの意思決定をしばしば形作る対立を浮き彫りにした」
(イランインターナショナル4月9日)
脆弱な停戦が進む中、テヘランの各派閥が功績を争う|イラン・インターナショナル

つまり、イラン政権は交渉団すら決められないで二転三転しているのです。
気に食わない奴がイスラマバードに行って、気に食わない妥協でもされたらたまらん、なんて互いに言って足を引っ張りあっているために神輿が進まないのです。
かといって最強硬派の革命防衛隊にでも行かせれば、そんな人選した段階で米国は相手にしない、かといってペゼシュキアン なんかに行かせたらどえらいことを呑んできかねない、ワイワイガヤガヤというわけです。
あげく、でてきたのは革命防衛隊幹部だったガリバフ国会議長殿です。

意思決定する者がいないから、戦争を終わらせる解決能力が欠落しているのです。

ならばこのバラバラなイラン政権に楔を撃ち込むしかないでしょう。
高市さんはそれをやったのです。

 

2026年4月 9日 (木)

イラン20日間停戦案受諾

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まぁ、今日はこれしかテーマはありませんね。
トランプが「テメーの国の文明は終わりだぁ」とか「石器時代にもどしてやる」といった野蛮人みたいなことを叫んでいた成果のようなものがでました。
大向こうからは、これも得意のTACO(トランプはいつも日和る)じゃんという声も聞こえますが、いいじゃないですか、とりあえず戦争は回避できる可能性ができたんだからさ。

「アメリカのドナルド・トランプ大統領は7日夜、自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、イランがホルムズ海峡の航行を認めれば、アメリカとイランの間で2週間の停戦が実現すると発表した。その後、イランの最高国家安全保障会議(SNSC)も声明で、アメリカとの合意を認め、詳細を「最終確定」させるため、最大15日以内に、パキスタンの首都イスラマバードで交渉を行うと明らかにした」
(BBC4月8日)
アメリカとイランが停戦で合意、条件付きで2週間 ホルムズ海峡開放へ - BBCニュース

これにより原油価格は急落し、市場全体は安堵感が生まれました。
株価も急上昇していますが、これから毎日が原油・株価、為替のジェットコースター市場を見ることになることでしょう。

停戦問題は、これをきちんとイラン側が守れるかに尽きます。
守れなければこれは短い停戦でしかなく終戦にはなりません。

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米・イランが2週間の停戦合意、ホルムズ海峡の航行可能に…イラン外相が声明 : 読売新聞

米国は6日に、イランが出してきた停戦条件10項目を、検討可能だとして、一時停戦に合意し、イランへの攻撃を停止したと表明しました。
ちなみに、イランの10項目提案とはこんなものです。

勝手なこと言っていやがるとおもいますが、ま、あくまで初めの球は高めと決まっていますから。

イラン10項目の内容
イラク、レバノン、イエメンにおける戦争の完全停止

期限を設けない、イランに対する戦争の完全かつ恒久的な停止
湾岸地域におけるすべての紛争の全面的な終結
ホルムズ海峡の再開
ホルムズ海峡における航行の自由と安全を確保するための協定および条件の確立
イランに対する復興費用の補償金の全額支払い
イランへの制裁解除の完全な履行
アメリカが保有するイランの資金および凍結資産の解放
イランがいかなる核兵器の保有も求めないことへの全面的な確約
上記条件が承認され次第、すべての戦線で即時に停戦を発効すること

そして期限切れ90分前のアラグチ外相がXにツイートして、とりあえず2週間の和平とあいなりました。

「シャリフ首相のツイートによる友好的な要請に応え、また米国が15項目の提案に基づく交渉を要請したこと、さらに米国大統領がイランの10項目の提案の枠組みを交渉の基礎として受け入れると発表したことを考慮し、イラン最高国家安全保障会議を代表してここに宣言する。イランに対する攻撃が停止されれば、我が強力な国軍は防衛作戦を停止するだろう。2週間の間、イラン国軍との連携と技術的な制約を十分に考慮した上で、ホルムズ海峡の安全な航行が可能となるだろう」
XユーザーのSeyed Abbas AraghchiさんX

なお、この停戦合意には、レバノンのヒズボラとの停戦も含まれています。
米国はイスラエルもこれに合意していると発表しましたが、ネタニヤフはイランとの停戦には合意をしたが、ヒズボラについては別だと言っているようです。

「イスラエル首相府は8日、トランプ米大統領がイランとの2週間停戦を表明したことを受けて声明を出し、米政権を支持するとした。ただ、停戦にレバノンは「含まれていない」としており、早くも停戦内容について齟齬が表面化した。
イスラエル軍は8日、レバノン南部ティルスの住民に北方に退避するよう警告し、親イラン民兵組織ヒズボラを標的に攻撃を続ける方針を明確にした。イスラエルのネタニヤフ首相は米国に従う姿勢を示しながらも、レバノンへの攻撃を強化する可能性がある」
(産経4月8日)
イスラエル、米政権を支持もレバノン攻撃に集中か イラン攻撃の恒久停止は見通せず - 産経ニュース

選挙を控え、ガザ戦争ですっかり信用をなくしたネタニヤフにとってこの宿敵イランとの戦争で人気が回復しています。
正直、この際足腰立たないくらい叩きたいはずですし、ついでにズボラなどのイランの眷属も一掃したいはずです。
果たしてネタニヤフが、この2週間の間おとなしくしているかはなはだ不安です。

一方さらに大きな不安は、イランがこの2週間の停戦を遵守するかどうかです。
この受諾宣言がアラグチというイランの権力構造の下っぱである外相名で出てきているのが不自然だ、という指摘もあります。

「2月28日以前、イランのシステムは複数の権力拠点を均衡させていた。
選挙で選ばれた政府は、大統領、議会、地方議会で構成され、日常的な統治は行われ、選挙で選ばれていない宗教組織――最高指導者、後見人評議会、専門家会議――が最終的な権威を持っていました」
(テレグラフ4月5日)
How Trump is turning Iran into a full military dictatorship

アラグチは宗教的権力がなくただの実務者にすぎない、アラグチは「最高国家安全保障会議」を代表できないという見方もあるようです。
つまり、この2週間の停戦をなんとか外交実務者は説得したが、冗談ではない、「大悪魔米国」との戦争はこれからだという神州不滅派も大勢残っているはずなのです。
だからこのイスラマバード和平会議が不調に陥ったり、あるいはその間にドンパチが再燃したりすれば、上層部の神州不滅派は全部悪いのはアラグチに押しつけてひっくり返すことが可能なのです。

このようには考えばきりがないほど不安要因はあるですが、とりあえずの焦点はなんといっても世界経済に深刻な打撃を与えているホルムズ海峡を無事に通航できるか、イランに不当な通行料を支払わずに済むのかでしょう。

 

 

 

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