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2020年7月10日 (金)

「先制攻撃」について考える

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イージス・アショアの撤退が決まってから、その対案として敵基地攻撃問題が浮上したようです。
私は何回か書いているとおり、イージス・アショアの代替案として敵基地攻撃能力を考えることには反対です。
だって別次元の問題ですからね、このふたつ。

イージス・アショアは現在存在するミサイル防衛(MD)の中でもっとも合理的なものです。
これについては小野寺五典防衛大臣がこう答えています。

「相手国がミサイル攻撃をする時、防衛するのが最も易しいのは発射する前か発射した直後のブーストフェーズ です。目的が把握しやすいですし、スピードも遅いですから。一方、防衛するのがいちばん難しいのは落下してくるターミナルフェーズ。速度が非常に速い。
次に難しいのはミッドコース。弾道の最も高いところです。 
なので、発射する前、発射した直後に打ち落とすのが最も好ましいわけです」(日経ビジネス『ロシアのクリミア併合から戦い方が変わった』
https://business.nikkei.com/atcl/report/16/082800235/111400011/?P=2

ごもっともな意見です。ミッドコースとかターミナルフェーズとかなんのこっちゃと思われるでしょうから、図でみてみましょう。

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産経

上図で中間段階というのがミッドコースで、終末段階がターミナルフェーズです。
日本語で言えよなと思いますが、なにぶんシステムが全部丸ごとメイドインUSAのものなんで。
イージス・アショアはこの一番高く上がっている弾道の頂点を目標にしています。
なぜなら、弾道ミサイルは弾道の頂点から一目散に落下してくる終末段階が一番加速されているために速いからです。

イージス・アショアはもっともハズしにくい時を狙って撃ちますから、落とせる確率が飛躍的に高いのです。
しかしそれでも、今回撤回賛成論者が指摘しているように、昨今北朝鮮は落下してくるときに微妙に機動をスライドさせるという小憎らしい小業を使うものを開発してきました。
すると、弾道軌道で落下すると思って迎撃予定点に向けて撃ってもスルリと逃げられてしまうかもしれない、だからイージスアショアなんか時代遅れさ、というわけです。
それは確かに一理ありますが、全部が全部このタイプに切り替わるわけでもあるまいし、たかだか一回実験しただけのことでここまで長い時間をかけて積み上げてきたイージス・アショア計画全部を御破算にするのはいかがなものかと思います。

いきなり全部を白紙撤回するという乱暴なことを河野さんがしたので、とりあえずはイージス艦を2隻増やそうとか、いや足りない人員は地上警備部分は陸自にやらせようとか、おいおいな対案もでているようです。
なにを考えているのか。イージス艦は船です(当たり前だ)。
それを日本海の一定海域に常に3隻プカプカ浮かべておくなんて、なんともったいない使い方。
しかも米国以外はほとんど保有していない最新鋭艦を、プカプカ浮かべておいてどうするんですか。
海自はそのために艦艇のやりくりや人員で大きな負担を強いられているのです。
海自はそれでなくてもスマホが使えない、洋上勤務が長くてデートもできないというので志願者が激減しているのに、なんつう無駄なことを。

そこででてくるのが、敵地攻撃能力を獲得しろという議論です。
前もってお断りしておきますが、私は自衛隊が敵地攻撃能力を持つことには賛成です。
ただ、イージス・アショアの代替案にするな、と言っているだけのことです。

敵地攻撃で発射準備に入っている敵ミサイルを撃破しようというのは一見分かりやすいようですが、現実的ではありません。
だって、一体どれだけ潰さねばならないと思っているんでしょうか。
日本に照準していると思われるノドンなどを、北朝鮮はおおよそ500発保有していると思われます。
これらがどこに配備されているのかわかりません。
自衛隊は衛星情報からおおよその場所については当たりをつけてはいるとは思いますが、大部分が深い山中の洞窟というもっとも手ごわい場所に貯蔵してあるはずです。

しかも個体燃料で発射するために、移動式発射台から打ち上げるまで短時間しか余裕がありません。
短時間に場所を特定し、攻撃部隊を出すのは不可能です。
そしてよしんばそれに成功しても、残存したミサイルの第2撃を考えねばなりません。
元海将の香田洋二氏はこう述べています。

「虎と戦うならば、食い尽くさなければなりません」。虎に余力を残せば、手傷を負った虎は死に物狂いで反撃(第2撃)を仕掛けてきます。その際は、もともと日本向けではなかった弾道ミサイルを日本向けに転換使用する可能性もあります。
その場合、攻撃を受けた北朝鮮の反撃は、必ず核弾頭を搭載したミサイルとなるでしょう。それがたった1発でも、迎撃できなければ日本の大都市で数百万規模の犠牲者が生じるのです」(日経ビジネス6月30日)
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/062900180/

敵地攻撃能力を議論することは有益ですし、まったく反対する気はありませんが、イージスアショアの代替としてかんがえるのはあまりに非現実的です。

さて敵地攻撃能力が現実問題として議論され始めると、やはりでてくるのが9条の守護神・朝日です。
朝日はこう書いています。

「敵基地攻撃能力』高い壁 陸上イージス断念で衆院委議論へ
どういう状況を『敵が武力攻撃に着手した』とするのか明確に定義するのは難しい。日本に対する武力攻撃が着手されていない状況で行えば、国際法で認められていない『先制攻撃』にもなりかねない」(7月6日朝日)

朝日は知っていて混同しているのか、ただの無知なのかわかりませんが、「先制攻撃」という言葉を漠然と使っています。
まるで日本がまた真珠湾作戦をもう一回やるみたいな書き方ですが、そんなこと今の日本にできるわきゃありません。
武力攻撃をまったく受けていないのに、先制攻撃をすることは国際法上認められていません。
ですから「先制攻撃」はこのように定義されています。

「自衛を名目としているが、武力攻撃がまだ発生していないので、国際法で認められない武力の行使」

可能なのは、国連憲章第51条にある「自衛権の行使の要件」を満たした場合です。

「国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間」

この安保理の決議というのがクセモノで、ご承知のように今の安保理は使い物になりません。
世界の三大紛争国である米露中が安保理で拒否権を行使して、自分の国が関わることには全部ノーだからです。

ただし、武力攻撃が差し迫っていれば、自衛権の行使として先制攻撃も国際法で認められるます。
朝日がいう「国際法上みとめられていない先制攻撃」というのは、予防(preventive)戦争のことです。
これはこのように定義されています。

「武力攻撃の脅威が現在ないのに、将来発生するおそれを理由に行われる。仮想敵国との力関係がいずれ不利になると考えた政権が、不利な条件で戦うことになることを防止する目的で、領土割譲などの講和条件を相手に強制できる見込みがあるうちに始める戦争である」
(静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之)

こういう極端な例を出して「国際法で認められていない」と書くのが朝日の狡猾なところです。
では国際法上認められている先制攻撃はどのようなものでしょうか。
これには三つあります。

一つ目は消極的攻撃論で、日本政府の公式見解です。
やられると分かっている、いわば相手が銃を向けて引き金に手をかけたという場合に自衛手段として先制攻撃することです。

1)世界各国政府の多数説は、国連憲章第51条「武力攻撃が発生した場合」を文字通り、武力攻撃への着手を確認後(損害の発生より前の時点でもよい)と解釈する、消極説である。
日本政府は自衛権の行使が可能になる時点について、1970年にこの定義を採用した。
「武力攻撃による現実の侵害があってから後ではない。武力攻撃が始まった時である。(略)始まったときがいつであるかというのは、諸般の事情による認定の問題になるわけです」(高辻正己内閣法制局長官、昭和45年3月18日、衆議院予算委員会)」(西前掲)

敵が明らかに攻撃の準備をしたことをもって先制攻撃を可能にするというかんがえ方です。
たとえば、弾道ミサイルを発射台に立てて燃料を注入しようとしている場合などを政府は上げています。

下の写真はムスダンの発射のものですが、これだとすぐに監視衛星に熱感知されてしまいます。
また液体燃料は長期間充填したままにすると酸化して使い物にならなくなるために、発射直前に充填せねばなりませんから、早くから察知が可能です。
そりゃそうでしょう。ジッと発射台で座り込んでいたら、いい目標です。
こんなことをじっくりやっていたら、本番では一瞬で爆撃されます。

というわけで一見轟音をたてて打ち上げられる弾道ミサイルは威勢はいいのですが、じっさいにはいい標的にしかなりません。
ですからこのようなものばかりなら、ある意味怖くはありません。

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また中国が尖閣湖侵略のために海軍艦艇を周辺海域に終結させたり、空軍基地に航空機を終結させていることが明らかである場合にも、「先制攻撃」が可能であると解釈することもできます。
先ほどの真珠湾作戦のたとえでいえば、ただ米国太平洋艦隊がそこにいるというだけでは不十分で、それが日本攻撃の意志を持って準備していることが明らかでなければなりません。

今の日本の場合、実際は急迫性を国際的にアピールするために、「一発目は相手に撃たせる」可能性が高いでしょうが、いずれにしてもこのような条件下では先制攻撃の権利を行使しても国際法上問題がありません。
ただ、このような図式にはまってくれるかどうかは未知数です。

二つ目は積極的自衛です。

「2)先制(anticipatory)自衛は、「武力攻撃が発生した場合」を積極的に解釈する。軍事的反撃の必要性(重大な自衛の必要が差し迫っており、平和的手段を選ぶ余地も熟慮の時間もないこと)、均衡性(反撃が相手の攻撃と釣り合うこと)、即時性(反撃が即座のものであること)を要件としている」(西前掲)

これは第二次世界大戦におけるドイツの戦争犯罪を裁いたニュルンベルク裁判で、国際慣習法として確認されています。
米英はこの立場をとっています。
またまた真珠湾作戦を例に取れば、日本は米国との戦争を「平和的手段を選ぶ時間的余裕がない」と判断したわけですから、あながちこの法理論で武装できないことはなかったかもしれません。
それを封じるために、米国はリメンバーパールハーバーだとかスネークアタックとか言って米国民を煽ったのです。
なお、私は真珠湾作戦はやるべきではなかったと思ってますので、念のため。

三つ目は、脅威の急迫性です。

「3)先制的(preemptive)自衛は、必要性の原則の一部をなす、武力攻撃の脅威の急迫性(どれだけ差し迫っているか)の要件を、2002年に米国が緩和したもので、いわゆるブッシュ・ドクトリンの主な要素の一つである。同年の米国家安全保障戦略は、この立場を次のとおり説いた。
「脅威が大きいほど、行動しないことのリスクは大きく、敵の攻撃の時と場所が確実にわかっていなくても、自衛のため予測に基づく(anticipatory)行動をとることの説得力が強い。大量破壊兵器によるテロ攻撃よりも大きな脅威はほとんどない。そうした敵の行為を回避(forestall)または予防(prevent)するため必要な場合、米国は先制的(preemptively)に行動して固有の自衛権を行使する」(西前掲)

この見解は、オバマを経て今のトランプまで引き継がれている米国の公式の立場です。
英国はテロ組織に対してはこの解釈を認めています。

このように国際社会では、一定の条件をつけて先制攻撃を認めています。
朝日が言うように、なにもかも国際法で認められていないと解釈すると、日本は核ミサイルの一発目を受けて数十万人が死ぬまで指をくわえて見ていろ、ということになりかねません。
とまれいわゆる専守防衛論は、いきなり本土決戦となって国民が多く死んでやっと自衛権が成立する、という恐怖の論理です。
一見平和的なようですが、実はこの論理に従うと、国民がいくら死んでもかまわない恐ろしいロジックなのです。

 

 

2020年7月 9日 (木)

日本のウルトラパンダハガー 二階と小澤

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七夕の日、自民党政調審議会はやっと習国賓来日中止決議を了承したそうです。

「自民党は7日、中国による香港国家安全維持法の制定を受け、習近平国家主席の国賓来日を中止するよう日本政府に求める対中非難決議を決定した。政府内でも習氏の来日に慎重論が高まり、年内の実現は困難との見方が強まった。
 自民党外交部会などの決議は、国安法制定を受けて「部会として訪日中止を要請せざるを得ない」と指摘した。当初案では「中止を要請する」としていたが、党内の異論を踏まえて表現を弱めた。自民党外交部会の中山
 親中派として知られる二階俊博幹事長は記者会見で「日中問題に関わった先人の苦労を思えば、慎重の上にも慎重に対応すべきだ」と決議に不快感を示した。茂木敏充外相は記者会見で習氏来日について「具体的な日程調整をする段階にはない」と述べた。泰秀部会長が近く菅義偉官房長官に提出する」(東京7月8日)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/40760

東京によれば「年内は困難」だそうですが、この新聞の希望的観測にすぎません。
なぜなら、外交部会の決議は香港国安法の施行を理由としている以上、中国が改心して、悪うございました、香港市民様。白紙撤回させていただきます、とでも言わないかぎり状況に変化がないからです。

自民党は外交、農業、安全保障など14もの部会があり、その結論を集約して政務調査会に上げ、政府に回されます。
つまりいったん部会で決定すれば、これが変更されることはほぼありえません。
このような民主的なシステムは自民党が腐っても鯛でいられる底力です。
ちなみに日頃なんの勉強もしない野党にはこんな部会すらありませんから、週刊誌片手のスキャンダル探ししかやることがなくなります。

と、ここまでは褒めておきますが、なぜか原案が修正されています。

・原案・・・「中止を要請する」
            「自民党は」
・修正案・・・「中止を要請せざるをえない
              「党外交部会・外交調査会として」

骨抜きになったとまではいいませんが、原案が「自民党は中止を要請する」から、「自民党外交部会は中止を要請せざるを得ない」に書き換えられたわけで、トーンダウンしたことは否めません。
これではまるで自民党としては国賓来日を継続したいが、外交部会がうるさいことを言っていてね、という意味になります。

なぜでしょうか、二階派がゴネたのです。
外交部会で、二階派5人が原案の撤回・修正を求めたのですが、13対5で却下されました。
日韓議員連盟幹事長で、去年さんざん韓国絡みで恥さらしな言動をした二階派の河村建夫議員はこんなことを言ったそうです。

「日中関係を築いてきた先人の努力を水泡に帰すつもりか」(産経7月8日)

はて、「先人の努力」ですか。美しい言い方を。
それは角栄が井戸を堀り当て、田中派の金城湯池のカネのなる樹だった中国金脈のことを指すのでしょうか。
外交部会がこんなものを蹴飛ばして、決議に持ち込んだとは評価に値します。
と、いいたいところですが、なぜか修正に応じてしまって、しまらないものになったのが残念です。
自民党はボス猿がお怒りになると、多数決原則ですら曲げられという前近代性があることもバレてしまいました。やれやれです。

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日経

もちろん、この背景に中国様の激怒があったことは想像に難くありません。
二階という怪しげな政治家が政権で大アグラをかいていられるのは、彼の個人的能力ではなく、中国という超大国がバックにいるからです。
中華帝国は二階を冊封体制下での「国王」と認定しているからで、王は超大国の権威とパワーを背景に支配権を得ることができました。
いわば中国という宗主国による間接統治です。

では、安倍氏の存在はどう反映しているのでしょうか。
安倍氏の自民党内のポジションはいわば「会長」職です。
会長は「株式会社自民党」を人格的に代表しますが、直接の党運営のガバナンスは「社長」の幹事長に一任しています。
多くの大会社の会長がそうであるように、安倍氏は政府という経団連のような場所に出向している人にすぎないともいえます。

安倍氏自身は個人的には中国に対して塩辛い意見をもっており、彼の外交政策は米国と協力して中国包囲網の形成をめざしています。
しかしそれと同時に、安倍氏は実利的な対中関係改善の流れを使い分けています。
ですから親中・反中のどちらから見ても味方に見える、という奇妙なスタンスを取り続けてきました。

そのために安倍政権は中国に対抗する外交政策をとる一方で、中国と緊張緩和するために習を国賓訪日させるという分裂的という批判すら受けかねないことを政治日程に乗せていました。
安倍氏がこの「現実主義外交」の中国担当をやらしていたのが、二階「社長」です。

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https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/2019042...


第2次安倍政権は、第1次と違って大変に現実主義的な政権ですが、改憲ひとつとっても強硬に突破するのではなく、だましだまし刺を抜いていく処方を選択しています。
やりようによっては政権が倒れかねない改憲の正面突破はひとまず置いて、第9条の大きな制約だった集団的自衛権の容認や専守防衛の見直しから外堀を埋めていくことに精力を傾けました。
このようなまだるっこい方法をとっているのは、ひとえに中国からの圧力を最大限やり過ごしたいためです。
国内世論だけならば、寸頓狂な野党と、日々古紙を量産しているメディアだけが相手であり、過半数の国民はとうに改憲に納得しているのです。
ですから最大の改憲反対派はむしろ中国であり、中国経済に深入りしすぎた日本財界です。
この二大勢力の手代が二階であって、彼にとって国賓招待こそ政治人生の最後を飾るにふさわしいレガシー作りだと信じて疑いませんでした。

書いていて、かつて二階以上に身も世もないパンダハガーがいたことを思い出しました。
小澤一郎です。
数ある利権の中で、最大規模、かつ深い闇に包まれていたのが中国ODA利権でした。
この中国利権は伝統的に、田中角栄が「井戸を掘った」(中国側の表現)ことにより、旧田中派が一元的に握ってきました。
田中-金丸-橋本と連綿と続く中国ODAの利権のやり口を、田中の愛弟子、金丸の腰巾着としてもっとも知悉していたのは、他でもない直系本流の小澤一郎 でした。

この男が政権を奪取するやまずやったことは民主党の現職議員160人による北京詣と、当時まだ国家首席になる直前の習を天皇陛下に無理矢理面会させたことでした。

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下の写真を見ると、右端の胡は惜しいことに消えてしまっていますが、もう嬉しさ一杯で笑み崩れている小澤チルドレン諸君が写っています。

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滑稽を通り越してなにやらもの哀しくなってくるような光景ですが、一国の与党がここまで自尊心と羞恥心を捨てて堕ちるのはなかなか難しいことです。 
この北京詣を小澤は「長城計画」と名付けていたそうですが、長城とは中国を夷狄から守るためのもの、ならば彼は何を何から護ろうとしていたのでしょうか。
ですから、この国内では傲慢そのものの小澤が日本ではゼッタイに見せない追従笑いを浮かべて、揉み手をせんばかりにして「(人民解放軍)野戦軍司令官として頑張っています」などと殊勝なことを、胡に伝えたようてす。
「野戦軍」という呼称は方面軍をのことですが、その統帥権者は中国共産党軍事委員会主席たる胡です。
つまりは、「胡総司令官様。私、小澤一郎めは、あなた様の部下でございます。よしなにお使いくださいませませ」ということです。
ついでにこの男は「解放の戦いはこれからです」なんて言っているのですから、よく日本がこの民主党政権時に「解放」されずに済んだな、とすら思います。


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 おそらく胡は、「日本の議員なんぞ、皇帝に使える奴婢のようなもの。写真一枚で大喜びする。手応えひとつない卑屈な奴らだ」と内心思ったことでしょう。 
ちなみにこの民主党議員ご一行様の「修学旅行」に立ち会った中国政府の下級官僚から、「オザワは胡錦濤主席にじゃれつく子犬」とまで言われたそうで、このような奴婢外交をすれば皇帝からどう見られるのかが判ろうというものです。

とまれ、この日中の戦後最大のイベントとなったであろう国賓招待が、中国の新型コロナと香港国安法という二大失策で自滅したのは慶賀の至りでした。

 

 

2020年7月 8日 (水)

球磨川水害は充分に予想されていたはずだ

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熊本県と大分県で大きな災害が発生しています。
亡くなられました方々、また被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。
人吉は私の母の故郷で、母方の先祖の墓地もある地域なので、胸が痛みます。

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毎日

状況は現在も進行しており、なにか結論めいたことを書くには早いとおもわれますが、現時点でとお断りして進めていきます。
まずもっとも被害がひどかった人吉を中心とする熊本南部の降水量です。

「7月3日(金)0時から4日(土)24時にかけての3時間、6時間、12時間、24時間、48時間の各雨量および土壌雨量指数(土砂災害危険度を表す指標)の最大値を図1に示します。球磨川流域を含む熊本県南部では、6時間雨量最大値で200~500ミリ、12時間雨量で300~600ミリの雨量、24時間雨量で400~600ミリ超となりました」(日本気象協会7月6日)
https://www.jwa.or.jp/news/2020/07/10378/


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上図は、7月3日(金)0時~7月4日(土)24時の各指標最大値(国土交通省解析雨量より作成)で、緑色の線で囲った範囲が球磨川流域、太い青線が球磨川です。
この球磨川流域に降った雨は、過去の最大値を100とした場合、150%となります。

「また、これまでの観測データの既往最大値(過去の最大値)を100%として、今回の各時間雨量最大値との比較を行ったところ、ほとんどの降雨継続時間の雨量で既往最大を超過する100%以上の範囲が球磨川流域と重なることがわかりました(図2)。とりわけ、6時間雨量や12時間雨量では、既往最大比が150%以上となっている領域が見られ、記録的な雨量であったことがわかります」(日本気象協会前掲)

この降雨量のすさまじさは、人吉市など球磨川の流域を中心に実に400~500mm近い72時間降水量が記録されている事でもわかります.
体験的に100㎜を超える降雨があった場合、屋外で活動することは困難となりますので、400~500㎜という数字がいかに巨大なものだったのかご想像下さい。
またもうひとつの特徴として、大きな降水量が見られた範囲(上図赤色)は比較的狭く、周辺の熊本県北部、大分県、鹿児島県南部などでは72時間降水量が200mm以下、ところによっては100mm以下のところも見られます。上図の黄色部分です。

「今回の雨は,3日昼前から4日昼前までのほぼ24時間,特に雨が強かったのは3日夜遅くから4日朝までの12時間程度だったようです」
( 牛山素行 | 静岡大学防災総合センター教授)
https://news.yahoo.co.jp/byline/ushiyamamotoyuki/20200705-00186715/ 

つまり、12時間という短時間に人吉を中心とする球磨川流域に、今までの最大値を5割も超える膨大な雨が降ったということになります。
その結果、球磨川流域は各所で決壊しました。

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https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200704/k1001249

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「浸水は球磨川周辺の比較的標高の低い地域に集中し、浸水が最も深かったのは、熊本県球磨村の渡(わたり)地区のうち畑や森林が広がる場所で、深さは8メートルから9メートルほどに達しているとみられるということです。
JR人吉駅周辺にも浸水が広がっていて、深さも1メートルから2メートルほどに達しているとみられます」(NHK7月7日)

上図のハザードマップを見ると球磨川の屈曲点に決壊箇所が現れており、このような箇所から氾濫を起こすことは充分に想定可能だったはずです。
というのは、今まで日本の各地を襲った大規模水害はことごとくこのような川の屈曲点で起きているからです。
たとえば2019年に起きた千曲川水害を見てみましょう。

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上の地図を見ていただくとわかるように山岳地帯に源流をもつ千曲川と犀川は長野市で合流し、信濃川と名前を変え日本海まで流れています。
2019年に起きた千曲川水害において決壊が発生した長野市穂保(ほやす)は、犀川との合流地点近くの屈曲して狭くなっている手前の場所で、河川事務所が洪水の危険性がある場所として警戒をしていた地点でした。
この穂保には電柱に、「5・0メートル以上想定浸水深 この場所は千曲川が氾濫すると最大10・0メートル浸水する可能性があります」と書かれたプレートがつけられているほど、かつて何回も洪水を起こした地点として知られていました。

千曲川水害では、この地点に記録的大雨が降り、この大量の水の運動エネルギーは千曲川屈曲部を経て犀川との合流点に向かいました。

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「今回は千曲川の上流域に当たる、東信で記録的な大雨になりました。13日(日)9時までの48時間雨量は北相木で411.5mm、佐久で311.5mm、鹿教湯で327.5mmなどいずれも観測史上1位の記録を更新、軽井沢の332.5mmも10月としては1位の記録です」(ウェザーニュース10月13日)
https://article.auone.jp/detail/1/2/2/150_2_r_20191013_1570937583887204

上図をみると300㎜を示す紫色の丸が、千曲川屈曲部右岸周辺にに集中しているのがお判りになると思います。
千曲川の特徴は、屈曲と盆地が連続することで、特に今回洪水を引き起こした穂保周辺は大きく曲がって犀川と座右流するすぐ手前に当たっています。
このような二つの河川が合流する地点は、バックウォーター(背水)現象の起きる特徴的地形です。
かつての倉敷市真備の洪水でも典型的なバックウォーター現象が起きています。

2018年の倉敷真備水害でも支流が本流に合流する屈曲点から決壊しています。

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真備水害概念図

千曲川と犀川の合流点においても似た現象が起きたと推定されます。

①記録的大雨で両河川の水位が著しく上昇。
②犀川に対して比較水量が少ない千曲川は、犀川の水量が多いために合流を阻まれて流れにくくなる。
③合流を阻まれたために千曲川が滞留し水位が更に上昇する。
④水が堤防を越水し決壊する。

今回も球磨川にも多くの支流が流れ込んでおり、特に大きな支流である川辺川は人吉の手前で合流しています。

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さて、川辺川ダムが民主党政権によって中止されたことはよくとりあげられていますが、現時点でこの災害とダムの因果関係は専門家の調査を待たないとわかりません。
この川辺川ダム反対運動の主役のひとりだった朝日はのどかにこんなことを書いていました。

「川辺川ダム中止表明10年 明るい兆し、残る不安ー
 川辺川ダム計画に蒲島郁夫県知事が「白紙撤回」を表明してから、11日で10年となった。清流が残された熊本県五木村では豊かな自然環境にひかれて観光客が増えるなど明るい兆しもあるが、水没予定地からの移転を機に多くの住民が村外に出て、残った住民は将来に不安を募らせる。ダムに代わる流域の治水対策の策定も難航する中、ダム建設計画復活があるのではないかと懸念する声もある」(朝日2018年9月15日)
https://digital.asahi.com/articles/ASL9F00YVL9DTLVB00P.html?iref=pc_ss_date

ここで朝日が「残る不安」と言っているのは、今回のような多数の死者を出す激甚災害が起きる「不安」ではなく、「建設計画の復活」のことのようです(笑)。
ぜひ朝日におかれましたは、今回の大災害の後も、同じことを書き続けていただきたいと思います。

一方、熊本県首長はこう述べています。

「熊本県南豪雨による球磨川の氾濫を受け、蒲島郁夫知事は5日、報道陣の取材に応じ、球磨川支流の川辺川ダム建設計画に反対を表明した過去の対応について「反対は民意を反映した。私が知事の間は計画の復活はない。改めてダムによらない治水策を極限まで追求する」と述べ、従来の姿勢を維持する考えを示した。
 蒲島知事は2008年9月、治水目的を含んだ川辺川ダム計画に反対を表明。翌年の前原誠司国土交通相(当時)による計画中止表明につながった。国と県、流域12市町村はその後、ダムによらない球磨川治水策を協議。河道掘削や堤防かさ上げ、遊水地の設置などを組み合わせた10案からダム代替案を絞り込む協議を本格化させる予定だった」(熊本日々新聞7月6日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/12b54692c4fa2aa2ab75ef2ae92e3e056e9a7fc8

なんと県知事は「民意」で決まったことだからダム計画は見直さない、考慮にも値しないというご意見のようです。

災害県の首長をとやかく言うのはいかがなものかと思いましたが、正直呆れました。
「ダムによらない治水」を言うのは簡単ですが、ならば民主党政権が中止に追い込んだ川辺川ダムに代わる代替案を出す責務が首長にはあります。
蒲島知事が反対を掲げて、当時の前原建設相と中止に追い込んだのは2008年、なんとすでに12年もたっています。
この12年間、蒲島氏は一体なにをしていたのでしょうか。

蒲島知事が代案はどうやら川の底を深く掘る河川掘削と堤防の嵩上げのようですが、この人が全国で頻繁に起きた水害を少しでも研究したかはなはだ疑わしくなります。
倉敷真備川の時もそうでしたが、反対運動の主力となった共産党の川辺川ダム反対の時の代案も河道の掘削でした。
この共産党の反対論は、水利の常識に反しています。
共産党の言い分は、ただ河道を深くするだけということで済ませようとしているわけですが、これでは水量がかえって増してしまい、川辺川の水の運動エネルギーはそのままの勢いで球磨川に突入してしまうことになるからです。 
つまり、共産党案はかえって水害をひどくする愚案にすぎないのです。

かさ上げも、このような前代未聞の大雨が恒常化する場合には役に立ちません。
いったんバックウォーター現象を起こして一箇所から決壊すれば、その地域全体の堤防が連鎖反応を起こしたヨウニなります。
バックウォーターを防止すると言われるフロンティア堤防にするのは有効だとおもいますが、技術的に確立しているとは言えないというのが国交省の見解です。
私はダムかフロンティア堤防かという二者択一ではなく、川上の点をダムで守り、川下の危険地域の線をフロンティア堤防で守るのがベストのようなきがします。

老婆心ながら蒲島さん、川辺川ダム計画はペンディングなのですから、それを含めてトータルに再考されたほうがよいと思うのですが、いかがでしょうか。
これだけの生命を奪う大水害が起きてなお、ダムなど一顧だに値しない、これが「民意」だというあなたの姿は非常に見苦しい。

 

 

2020年7月 7日 (火)

香港 静かな抵抗が始まる

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香港に対する国安法の施行によって民主活動家の海外脱出がすこしずつ伝えられるようになってきました。

「14年に起きた民主化デモ『雨傘運動』を主導した民主活動家、羅冠聡(らかんそう)氏(26)は2日深夜、SNSに『深刻な身の危険を感じている』と投稿し、既に海外に脱出したことを明らかにした。1日に米下院外交委員会の公聴会にオンラインで出席、中国の習近平指導部を批判し、『光復香港 時代革命!』と叫んだばかりだった。
羅氏の行為は、国安法が刑罰の対象とする『中央政府転覆』や『外国勢力との結託』に問われる恐れが浮上していた。羅氏は脱出先を明かしていないが、国際社会を舞台に活動を続ける意向を示した。在香港英総領事館の現地職員だった鄭文傑(ていぶんけつ)氏も1日、英国に政治亡命が認められたことを明かすなど、民主活動家らの海外脱出が続いている」(7月4日毎日)

「民主化運動の女神」と呼ばれてきた周庭(アグネス・チョウ)さんも6月30日、「生きてさえいれば希望はある」というツイートを最後に民主化団体「デモシスト(香港衆志)」の解散を表明し、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏も共に記者会見に立っています。
おそらく、水面下では多くの民主化運動の若者たちがさまざまな経路で、脱出を試みていると思われます。

このような国外脱出の動きに対して早くも中国当局は規制を開始し始めました。

「また捜査対象者に当局がパスポートの提出を命じるなど、移動の自由を制限する措置も盛り込まれた。罰則も設けられ、当局に虚偽の資料を提出すれば、10万香港ドル(約140万円)以下の罰金と2年以下の禁錮刑を科すとしている」(朝日7月6日)

また、令状なし捜査の適用を開始しました。

「香港政府は6日、反体制活動を取り締まる香港国家安全維持法(国安法)に基づく政策策定の司令塔となる国家安全維持委員会の初会合を開き、捜査手続きを定めた施行規則を決定した。緊急時などの「特殊な状況下」では、警察官に捜査令状なしでの立ち入りや証拠収集活動を認めるなど、捜査機関に強い権限を与える内容だ。7日から適用される」(朝日前掲)

つまり、今後香港において今のような「特殊な状況下」では、公安がパスポート提出を求めて本人確認をするということになりました。
これは当局が自由由に令状なしで恣意的な捜査・逮捕が可能都なり、かつその場でパスポート提出を要求し、偽造したものだったりした場合、即刻拘束すると二なります。
これは民主主義の重要な要件の一つである「移動の自由」を制限したもので、事実上の戒厳令下に置くことを意味します。

さて素朴な質問ですが、ここでなぜ香港民主派は国外に脱出せねばならないのかもう一回考えておきます。
国安法に対して、いやあんなものは日本にもあると言い切った阿呆がいたので念のため。
国安法の核心は第23条です。

●国安法第23条
他人がこの法律第二十二条の罪を犯すように扇動、幇助、教唆、又は金銭その他の財産をもって出資した場合も犯罪とし、懲役、拘留又は管制下に処する。悪質な場合は5年以上10年以下の懲役、状況が軽い場合は、5年以下の有期懲役、拘留または管制下に処する。

ここで中国当局は、「国家転覆」にかかわった者は「煽動・幇助・教唆」という概念で゙処罰すると言っています。ここが重要です。
煽動・幇助・教唆とは、国安法の対象は言論活動も含むということを意味します。
国安法に類似した法律に刑法第77条「内乱罪」があります、迂遠ですが、押えておきます。

●日本国刑法第77条
国の統治機構を破壊し,又はその領土において国権を排除して権力を行使し,その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者は,内乱の罪とし,次の区別に従って処断する。
一首謀者は,死刑又は無期禁錮に処する。
② 外患誘致
(刑法)
第81条外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者

わかりますか、日本国刑法は「行使」「壊乱を目的とした暴動」だけを処罰対象にしているのであって、その「煽動・幇助・教唆 金銭的協力」はそもそも対象外なのです。
だから言論手段で革命を呼びかけても、言論の域を出ない限り罪には問われません。
犯罪教唆という概念はありますが、それは爆破や殺害などのテロ行為に対しての具体的指示の場合の話です。
一国民の言論活動や、ましてや学者が学説で反政府的なことを発言したくらいでは絶対に拘束されることはありえません。
そんなことでいちいちパクっていたら、日本の私立文系の先生たちはみんな牢獄行きです。
ここが自由主義国と中国の決定的違いです。

また政府批判の旗を持っていたくらいで逮捕・拘束されることはなどかんがえられもしません。
そんなもんで逮捕していたら、赤旗祭りなんて出来ません。

しかし香港ではすでに「香港独立」の旗を持っていただけで国安法逮捕第1号となっています。

「6月30日夜から施行された香港国安法がどのように運営されるかは、まだ見定められていない。少なくとも現在までには、「香港独立」や「光復香港 時代革命」といった言葉を掲げたり、所持していると香港独立派として国家分裂を画策している、あるいは香港の法的地域を変更している、あるいは国家政権の転覆をたくらんでいる、といった容疑で国安法を根拠に逮捕されることはわかっている。(略)
言葉だけを対象に、刑事犯として逮捕、起訴される法律は、言論の自由を基本的人権としてみとめている西側法治国家では目下、存在しない。言論の自由がなければ、被疑者に対する弁護士も被疑者弁護のために言論を駆使できず、メディア、ジャーナリズムも存在できず、文芸・芸術などの活動も行えなくなる」
(福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.110 2020年7月6日)

では、どのていどの言論が国安法の処罰対象となるのでしょうか。
それがわかるのが、7月6日に起きた清華大の許章潤教授の拘束事件です。

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清華大教授・許章潤
https://www.epochtimes.jp/2019/04/41602.html

「中国指導部の政治路線を批判してきた北京の名門大学、清華大の許章潤(きょしょうじゅん)教授が2020年7月6日、公安当局に拘束された。許氏は2019年3月に大学から停職処分を受けるなど当局の圧力にさらされていた。「香港国家安全維持法」の施行によって、中国の言論統制に厳しい目が注がれる中、共産党への異論を許さない強権的な体質が改めて浮き彫りになった形だ。
許氏の友人の証言によると、6日朝、20人ほどの公安当局者が、北京市内にある許氏の家にやって来て、本人を連行した。許氏の友人によると、警察と名乗る男性が、大学の住宅で別居している許氏の妻に電話を掛け、許氏が同国南西部に位置する四川省(Sichuan)成都(Chengdu)で買春を持ちかけた疑いで逮捕されたと伝えたという。友人は、許氏に対する容疑は「ばかげており恥知らず」だと述べている。 米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)によれば、許教授は自宅に踏み込んだ警官によって拘束され、同教授のコンピューターや文書なども押収された。北京のどの警察部門が許教授を拘束したかは不明。
中国外務省の趙立堅(ちょうりつけん)副報道局長は7月6日の定例記者会見で「提供できる情報はない」と述べるにとどめた。(略)
許氏は中国を代表する改革派の法学者。18年7月、インターネット上に論文を発表し、指導部が憲法を改正して国家主席の任期上限を撤廃したことを批判し、天安門事件の再評価を要求した。
その後に停職となっても言論活動を続け、今年2月に発表した文章では、新型コロナウイルスの対応を巡って、習近平国家主席への過度な権力集中が「組織的な秩序の喪失」を引き起こし、情報隠しや感染拡大の原因になったと指摘し、国民の監視や言論統制を批判した。
6月22日に新刊を米国の出版社から出版したばかりで、当初は香港で出版する計画もあったが、政治的な内容のために実現しなかったという。
 中国では、大学教員などの知識人が中国共産党の価値観と異なる発言をしたとして処分される事例が後を絶たない。最近も、新型ウイルス対策を巡って率直な意見をネット上につづった湖北省武漢市の女性作家、方方さんが個人攻撃を受け、方方さんを支持した大学教員が共産党籍剥奪の処分を受けた」(毎日7月6日)

逮捕された許教授が言ったことは、習が永世国家首席になろうとする憲法改正や、今回のコロナウィルス対応が過度な権力集中によって感染拡大の原因となったなどといった、私たちから見れば至って穏健な政府批判にすぎません。
許教授は国安法がいう内乱幇助をしたわけでもなんでもなく、言論統制について批判したにすぎないわけで、これで拘束するならほぼすべての民主派の言論は違法とみなされるでしょう。
しつこいようですが、こんなていどの言論で逮捕されるなら、朝日や毎日なと即刻死刑です。

すでに香港の図書館では民主派の本が撤去されました。

「香港01など香港紙によれば、香港公共図書館で、民主化運動関係が執筆したり編集したりした書籍が、閲覧棚から一斉に撤去されている。図書館のネット検索でも、こうした本の図書名は検索できなくなっているという。
少なくともオンラインで目下閲覧、検索不能となっている本は9冊。香港反送中運動参加者のバイブルと言われる陳雲・嶺南大学中文学部元教授助理の著書「香港城邦論」「香港城邦論2」ほか4冊と、香港自決派の政治団体デモシスト事務局の黄之鋒の著書「我不是英雄」「我不是細路:十八前后」、元公民党立法会議員の陳淑庄の「辺走辺喫辺抗争」などだ。
 この9冊は人気があるので、香港各地の図書館の中であわせて400冊以上、収蔵されていたという」
(福島前掲)

香港人はこのような圧政にしぶとく戦おうとしています。
さきほどの「香港独立」の旗も、実は「香港独立」の前に非常に小さい字で「不要」(いらない)と書いてあり、全体としては「香港独立(いらない 小声)」みたいなニュアンス」(福島前掲)だそうです(笑)。
私は好きだな、こういう抵抗。

小川和久氏は第2次天安門事件当時上海にいたそうですが、こんな光景にでくわしたそうです。

「このとき、上海市内のあちこちを上海国際問題研究所のC研究員の案内で歩き回っていた私は、おもしろいことに気づきました。大通りの交通を完全に遮断しているかに見えるバリケードでしたが、なんと、バリケードの両脇が、車一台が通り抜けられる幅だけ空けてあり、自転車を無造作に積んでバリケードの体裁を整えていたのです。そして、公安(警察)の車両が来ると、自転車をどけて通過させ、また自転車を積み上げることを繰り返していました。
私が、「それではバリケードの意味をなさないじゃないか」と言うと、バリケードの傍らで政治集会をしていた何人かが言いました。「上海人は頭を使うからケガをしないのです。北京の連中は頭を使わず、身体で勝負するから死ぬのです」。警察車両をフリーパスで通すのは、頭を使った上海流の「戦術」だと言いたいようでした」(小川和久 『NEWSを疑え!』第876号(2020年7月6日特別号)

上海も香港もしたたかに生きてきた商都です。
たとえばこんな思わず笑ってしまうような抵抗もあります。

「ほかにも「香港独立」の代わりに「香港独特」、「奪回香港」のかわりに「奪回香焦(バナナ)」と別の言葉に言い換えて、意味を込めるやり方などがある。
 香港市民が民主化の願いをポストイットに書いてはる、レノンウォールは国安法施行後、すべて撤去されたが、とあるカフェの中などには、のこっている。だが、その場合、ポストイットには何も書かれていない。これは「大事なものは目に見ない」というメッセージが込められている、とか。
中国、華人社会は長い歴史のいろんな王朝で言論弾圧、焚書が行われてきたが、庶民はそれに耐えながら、批判精神を込み入った暗喩、暗号などで周囲に伝えよう、後世に残そう、と工夫をこらしてきた」(福島前掲)

そして爆笑ものの抵抗は、中国国歌「義勇軍行進曲」のこのワンフレーズだけ歌うことだそうです。

「起来!不願做奴隷的人們!
(立ち上がれ! 奴隷になるのを望まぬ人々よ)」

香港はかんたんには北京の言うとおりにはなりません。
香港人は静かな抵抗で、この冬の時代を生き抜いていこうとしています。
ある者は国外へ脱出し、海外で運動を継続し、ある者は「香港独立」の願いを「香港香焦」と言い換えることで。
そして周庭のように獄中で。


 

2020年7月 6日 (月)

つまらなかった都知事選

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小池氏が再選だそうです。
まぁなんというのか、あまりに典型的なデキレースで、ゲソっとします。

選挙結果です。

●東京都知事選挙結果
▼小池百合子、無所属、現。当選。366万1371票。
▼宇都宮健児、無所属、新。84万4151票。
▼山本太郎、れいわ新選組、新。65万7277票。
▼小野泰輔、無所属、新。61万2530票。
▼桜井誠、諸派、新。17万8784票。
▼立花孝志、諸派、新。4万3912票。

やる前から結果はわかりすぎていて、私はせめて第2位に維新推薦の小野泰輔候補に来てほしかったのですが、4位でした。
組織票を持たず、知名度もない小野は、山本候補に伯仲している奮戦ぶりでした。
おそらくどーしようもない自民都連、いや自民党そのものに対する批判票の受け皿になったのでしょう。
自民がいまのような戦わずに負ける、初めから出来レースを組んでしまう、といったことを繰り返すなら、かならず自民の唯一右に位置する現実主義政党の維新が票を伸ばすということがわかりました。

宇都宮候補は票は伸ばしたといいますが、言っていることが万年一日の如き手垢の着いた左翼の寝言ですから、小池にかすり傷ひとつ負わせられませんでした。
野党は山本太郎に一本化できず、その理由は消費減税反対でまとまらなかったというのですから、ここで既に負けが決まったようなものです。
野党に勝つつもりがあるなら、せめて消費税凍結くらいは言わなければ負けるに決まっています。
といっても、仮に山本を野党統一候補にできたとしても合計で150万票ていどですから、それでも小池にダブルスコアで負けなんですがね。

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NHK

そもそも圧倒的に現職が強いのが自治体首長選挙です。
再選を狙う現職は、よほどのスキャンダルを起こさないかぎり、ほぼ9割で勝利するというのが常識です。
しかも女性現職は、山形県の吉村知事のようなその資質が疑われるような無能の人でも再選されています。

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今回も女性票を確実に小池が押えました。

「NHKの出口調査では、小池さんは、
▽男性の50%余り、
▽女性の60%台半ばから支持を集めました」(NHK 7月6日 グラフも同じ)

年齢別では

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30代、40代で維新(オレンジ)が宇都宮(青)山本(ピンク)より支持を集めています。
維新に票が流れるのは、政権与党の自民が対立候補すら立てず、安倍と小池とのツーショット写真をバラ撒くという愚行への批判票のようなきがします。
政党色を鮮明にした議会選挙では、自民が手堅く勝利しています。

一方、小池が率いる都民ファーストは低迷しました。

「選挙戦の最中にNHKが公表した都民向けの政党支持率でも、都民ファーストの会はわずか0.2%と、NHKから国民を守る党と並んで最下位に沈んでおり、都知事選で圧勝した小池氏とあまりの落差が浮き彫りになった形だ」(アゴラ7月6日)

さて、小池は信任されたと言うでしょうが、その都政はお世辞にも褒められたものではありませんでした。
ともかく公約は言い散らすだけ、はなから守る気はないのですから。

今回、小池を勝たせたのは、誰もが同じことを言うでしょうが、二階が小池を熱烈支持したからです。
二階は自民独自候補がいないとか言っているようですが、そんなことはただの言い訳。
そもそも真面目に探そうともしていません。
選挙が1年先の時点で「小池支持表明」なんですから、なんともかとも。

1年前の時点では、都議会自民は小池に対立候補を立てる気満々で、小池の「築地跡地」の活用法が公約違反であるとして激しく迫っていた時のことでした。
それを都連が小池都政の汚点である豊洲移転で真っ向から噛みついている真っ最中に、他でもない中央の大ボスがそれを裏切るのですからまったく話にもなりません。
どこの世界に前線が戦っているときに、背後から味方を殴りつける大将がいるのですか。

小池は、都知事に就任後、あろうことか共産党とつるんで移転阻止運動を始め、公約として「築地において市場機能を維持する」としながら、現実には築地についての再開発方針には市場機能維持」などの文言は消えています。
そりゃそうだ。あれほど執拗に移設に反対し、開場を伸びに伸ばしたくせに、いったん移設すれば老朽化が激しかった築地より豊洲のほうが、はるかに衛生的で近代的だったからです。

この都知事が旗ふりをした移設阻止闘争でオリンピック道路もできず、IOC相手の開場変更も全部失敗。
結果的には、五輪延期で救われる、というなんちゃってジャンヌぶりでした。
こういう支離滅裂ぶりを都議会で追及されるとこの人は、元キャスターらしくお得意の言葉で逃げます。
いわく「方針を変えたわけではない」、「築地ブランドを支えてきた食文化を生かすという意味で述べた」などと意味不明な言い訳に終始しています。

また、小池はかつての都知事選挙では、自民党員でありながら自民党と自民党都連を悪玉にしました。
その時に吐いた台詞が、「自民党が主導してきた都政」「ブラックボックス」といった、まるで悪の伏魔殿が自民都連で、自分は正義の旗を戴くジャンヌダルクだと大見得を切ったもんでした(あーバカバカしい。)
そのプロパガンダに熱狂した都民によって圧勝すると、悪玉に仕立てた自民党に「言い過ぎた」と陳謝し、それどころか古い自民党政治の代名詞のような二階にすり寄るのですから節操がないにもほどがあります。

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「自民党の二階俊博幹事長は9日の記者会見で、任期満了に伴う東京都知事選(18日告示、7月5日投開票)に小池百合子都知事が立候補を表明すれば速やかに推薦する方針を重ねて示した。「最善、最適の候補だ。直ちに推薦し、積極的に応援する」と述べた。小池氏は都議会会期末の10日にも、再選を目指して立候補を表明する方向で調整している」(6月6日山陽新聞)

こんな二階の裏切り行為で、自民支持者は投票すべき候補を失ってしまいました。
それは政党支持ごとの候補者分布をみればわかります。

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こういう国民をナメたまねをしくさったことをしているから、安倍政権の支持率はまたもや30%台のようです。
このまま推移すると、自民は次回に想定される参院選・衆院選ダブル選挙で過半数割れを引き起こす可能性が濃厚です。
かろじて維新を入れて過半数を取れるか取れないかていどに伸び悩み、安倍と二階が揃って退陣・引退というシナリオすら現実味を帯びてきました。

自民は沖縄県議会選挙で、なぜ全国最弱と言われた自民沖縄県連が一定の勝利ができたのか、それはあいまいな野党的与党の公明を切り捨てて、自民党らしい移設容認をバンっとうちだしたからだということを思い出すべきです。

 

 

2020年7月 5日 (日)

日曜写真館 嵐がやって来る

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香港、それは中国大陸で唯一の自由の灯台でした。

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やませ吹く日も灯台は在りつづけ 阿部流水

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海怒る日は 髪いかり 灯台守る 伊丹三樹彦

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今、香港は暗雲に飲み込まれようとしています。

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さようなら香港、とは言いません。 

2020年7月 4日 (土)

中国ほど外交が下手な国は珍しい

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今週は香港に対しての国安法一色になってしまいました。
私も記事を書きながら、どうしてここまで中国という国は外交が下手くそなのかと微苦笑してしまったほどです。

なにもよりによって今でなくても、国際世論は中国にモーレツに批判的です。
そりゃそうです。世界中に感染者1086万人、死者52万人。
感染地域は東アジアから始まり、欧米に拡大し、今やアフリカ、南米にまで拡大していっかな終息の気配もありません。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/
はて、この出火元はどこだったんでしょうね。
武漢ラボから発生していたら致命的ですが、自分の初期隠蔽が原因で感染拡大したことをころりと忘れて、自分はコロナのファーストウィナーだと言いふらしているのですから、鉄面皮にもほどがあります。

もらい感染をした国々は、都市封鎖で経済はガタガタ、コロナ恐慌すら始まってしまいました。
さぁ、この始末どうつけてくれるだ、というのが国際社会の大勢の声です。
それをまたなにも好き好んでかこんな時期に、香港の自由まで摘み取る必要はなかったはずです。
火に油を注ぐとはよくいったもんで、ブレーキを踏みつつ慎重運転すべき時期に、アクセルを目一杯吹かして火の壁に敢然とに突っ込もうというのですからたいしたもんです。
おもわずガンバレーと声援を送りたくなるほどです(送らねぇよ)。

こういう時期を読み間違える、空気を読まないというのが、この中国という「幼児のような大国」の特長です。
外交の上手下手の分け方にこんなものがあるそうです。

・大国で外交が上手な国・・・英国
・大国で外交が下手な国・・・米国・中国
・それ以外の国で外交が上手な国・・・タイ・ベトナム
・同じく           下手な国・・・日本
・自分は天才だと思っているが論外な国 ・・・韓国

中国の立場になって考えてやると、今回の香港情勢でも、去年の夏以前になんらかの手打ちを民主派としておくべきでした。
この段階では民主派は後の5大要求をまとめておらず、自由選挙まで要求していませんでした。ましてや独立などという声はまだ少数派。
妥協するなら、この時点しかなかったのです。
この時点で移送法をいったん白紙にしてしまえば、民主派は戦う対象をなくします。
決断をズルズル引き延ばし、警察暴力だけで制圧しようとするから、一挙に市民全体を敵に回すことになります。
100万ものデモが毎週行われるまで状況がヒートしてから、やっと移送法は止めますと言ってみても、なにをいまさらです。

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https://news.yahoo.co.jp/byline/miyazakinorihide/2...

こういう拙劣な対応になったのは、一にも二にも習のメンツが大事だったからです。
この男は自分の党内権力維持だけで考えるから、判断が全部後手後手に回って、結局、こんな下策中の下策の国安法を拙速で作って強権支配するしかテがなくなってしまうのです。
あまつさえ38条みたいな外国人も処罰対象に入れてしまえば、国際社会にケンカを売っているに等しいと見なされます

おっと、その前に新型コロナについてけじめをつけておくべきでしたね。
せめて世界最初の発生国として、第三国の調査団を入れて武漢を調査してもらうくらいをするのが常識です。
その報告書に沿って責任関係を明らかにしするていどのスマートさが欲しいのに、あてつけのように「制圧宣言」を得意そうに出すんですからため息がでます。
その理由があろうことか「自由主義の敗北」なんて神経を逆撫ですることを言ってしまい、おまけに恩着せがましく送ったマスクも検査キットも全部粗悪品ときては、挑発しているのか、こるらぁという気分にさせて当然です。

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ここまで中国が外交が下手だと、逆に制裁をしてほしいのかと勘繰ってしまいますが、とりあえず制裁には、3種類あります。

第1に、本来王道は国連安保理での制裁決議です。
ただしもちろんお分かりのように中国が拒否権を発動するでしょうから、使えません。
ですから人権委を使うという変則なことをしていますが、ここには実効性のある制裁はできません。

第2に、人権委での非難声明に賛成国した国々で国際制裁決議をだすことです。
ここにはほぼすべての主要国で入っていて、今回入っていないイタリア、米国はすでにG7外相による共同声明で批判声明に署名していますから、自由主義陣営は批判で結束しました。
韓国が予想どおり脱落したようですが、放っておきましょう。やがてまとめてツケを支払うことになるはずです。

第3に、独自制裁です。
思えば第2次天安門事件の時に、自由主義陣営は国際制裁をかけましたが、約一国だけ脱落しました。
なにを隠そううちの国です。当時もっとも密接な関係を持つわが国が制裁から脱落したために、国際制裁はスッポ抜けました。
今と違って、当時の中国は発展途上国からテイクオフしている時で、わが国の経済援助や技術力に依存していました。
ですから、今と違って第2次天安門事件当時のわが国の制裁はかなり効いたはずです。
それを中国にたぶらかされて脱落してしまうのですから、どうしようもありません。まさに外交下手。
そして当の中国からはいささかも感謝されるどころか、その後反日暴動というお礼をしっかり頂戴しております。
二度と金輪際、この轍を踏まないようにしましょう。

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この苦い教訓を覚えていたのか、自民党が中国非難決議を政府に提出するそうです。

「自民 習国家主席の国賓訪日中止求める方針 「香港傍観できず」
中国が「香港国家安全維持法」を施行させたことを受けて、自民党は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で延期されている習近平国家主席の国賓としての日本訪問を中止するよう政府に求める方針を固めました。
香港で反政府的な動きを取り締まる「香港国家安全維持法」の施行を受けて、自民党は、中国を非難する決議案をまとめました。
決議案では「法律の施行と同時に大量の逮捕者が出るなど、懸念していた事態が現実のものとなった現在、この状況を傍観することはできず、重大で深刻な憂慮を表明する」としています」(NHK7月3日)

この自民党決議案には

①習国賓訪日の中止。
②香港現地の邦人保護の対応。
③脱出を希望する香港市民への就労ビザの発給など、必要な支援を検討すること。

久しぶりに自民が保守党らしい意地を見せました。
「政治人生の一大事」「私たちは習主席と共に、新しい日中関係を構築したいと願っています」なんて眠いことを言っていた二階氏はさぞ苦々しい顔で聞いていたことでしょう。
ライフワークだった習の訪日も頓挫したことですし、早く引退してください。

2020年7月 3日 (金)

「中国本土から来た男」が仕切る香港行政政府

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やるとは思っていましたが、ここまでとは思っていませんでした。中国が香港に押しつけた国安法です。
内容的には先日来、お伝えしたとおりまさに「ザ・ファシズム」の名に恥じないないようですが、中国はやりすぎました。
よせばいいのに、否が応でも国際社会の神経にヤスリをかけるような第38条を突っ込んでしまったからです。

ご存じのとおり、外国人であっても国安法で摘発できるとする条項です。

●国安法 第六節 有効性の範囲
第38条
本法は、香港特別行政区の永住者の資格を有しない者が、香港特別行政区の外で香港特別行政区に対してこの法律に基づく犯罪を犯した場合に適用される。

昨日記事を書いていて、いくらなんでもオレの読み違いだろうとおもったほどイっちゃっています。
国安法に違反すれば、香港の中はもちろん、香港の外でも国安法を適用でき、しかも外国人でも拘束できるというのですからなんともかとも。

ただし一般論としては、国外における犯罪でも、国内法に抵触すれば逮捕は可能です。
それが国外であったとしても、建前ではできます。それは刑法第2条があるからです。
押えておきます。

●刑法第2条
この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する。

そして国外においても適用する条項としていくつか事例を上げています。

●刑法第2条
2 第77条
から第79条まで(内乱、予備及び陰謀、内乱等幇助)の罪
3第81条(外患誘致)、第82条(外患援助)、第87条(未遂罪)及び第88条(予備及び陰謀)の罪
4第148条(通貨偽造及び行使等)の罪及びその未遂罪

このように日本の刑法第2条が国外においてなされたことであっても国内法を適用する対象は、内乱罪、通貨偽造罪、有価証券偽造罪など、国家の存立そのものを危うくするような重大な犯罪行為です。
この場合、日本人であろうと外国人であろうと、また犯罪地がどこであろうとも、海外でこのような重大犯罪を犯したすべての者に対して日本の刑法を適用するのがこの刑法第2条なのです。
つまり、あくまでも日本の存立そのものを守るというがこの第2条の主旨です。

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ビジネスインサイダー

一方、今回、中国が国安法に国際社会の声を無視して38条を入れたのは、二つ理由があります。
ひとつは、外国勢力が香港騒乱の背後にいるという確信です。
中国政府は、人が自律して思考し、自らの考えに基づいて権力に戦いを挑む、ということを信じません。
共産党の経験では、革命とはあくまでも党エリートが無知蒙昧な大衆に過激思想を「外部注入」するものだからです。

共産党は香港の民主化人士は、必ずどこかの外国からカネをもらって、その指令に従っているにちがいないとしか発想できません。
彼ら共産党はその「外部勢力」を、米国か台湾だとみています。
ですから、香港民主派人士の背後にいるはずの「外国勢力」を国安法の処罰の対象としたのです。

ふたつめに、共産党は香港問題の収拾を誤ると(既に充分誤っていますが)、対岸の深センや上海に飛び火するかもしれないと恐れています。
またウィグルに飛び火すれば、資源と広大な土地を失います。
チベットが燃え上がれば、中印国境がおびやかされます。
農民が立ち上がれば、そのときはほんとうに共産党国家の終焉です。
共産党は、香港をこれら火薬庫の短い導火線にはしないと決意しています。
怖くて怖くてしかたがない、いつ自分らが暴力でもぎ取ったこの政権が倒れるか分からない、そのときは自分が敵に対してやってきたことを自分がやられる、そう恐怖しています。

だから初期の段階では移送法を白紙撤回するていどで済んだものを頑強に拒み続け、泥沼にして延べ数百万人をデモに立ち上がらせてしまいました。
それは共産党からみれば、市民の要求にひとつでも屈すればすべてを失うと考えているからです。
香港という中国唯一の金融センターを手放すことになろうと、金のたまごを生むガチョウをしめ殺すことになろうと、自分たちの身の安全のほうが大事なのです。
この融通の聞かない頑迷な姿勢が、香港問題を国家の成立案件にまでもちあげてしまい、国安法を生んだわけです。
なんという狭い視野。硬直した政治姿勢。そしてなんというくだらない脅迫観念。

たぶん中国当局が想定しているのは、台湾人、英国籍を持った香港人、あるいは日本などの自由社会に居住する香港人などでしょう。
彼らが香港民主化や独立を叫ぶなら、どの国に居住していようが犯罪とみなします。

具体的には、香港民主活動家が日本で香港支援のビラ撒きをしたり、日本政府に中国に圧力をかけてくれと請願したりすれば、間違いなく国安法違反に問われます。
もちろん外国に居住している者に、中国司法機関がいかに中国人であろうと拘束することはできません。
やれば重大な主権侵害行為として原状復帰を要求されます。
したがって、他の主権国に司直を派遣して拘束することまではしないでしょうが、いかにトランジットてあろうと中国主権範囲に立ち入れば、直ちに拘束される可能性があります。

これを外国人にも適用するというのが国安法の恐ろしいことです。
香港の民主化を支援する外国人が、一歩中国領内に立ち入れば、国安法違反で内偵していた公安に逮捕されるかもしれません。
これは中国本土や香港に駐在する商用渡航者が、このリスクにさらされるかもしれません。

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たとえばここに商社員Aさんという日本人がいるとします。流暢に中国語を操ります。
彼は、かねがね中国の基本的人権状況に強い批判を持っていました。
彼は上海駐在ですが、たまたま香港に遊びに行った時に、民主活動家の大学生と知り合いとなり、いろいろな話も聞いていました。
以来、メールのやりとりていどはしていました。
その時から彼は自分が公安に尾行監視されているようなきがしてならなくなりました。明らかに盗聴されているかんじがします。
家族にも警戒するようにと言っていましたが、いちおうは平和な日々が続きました。
しかしそのときは急にやってきました。
彼が日本に一時帰国する際に、たまたま香港に立ち寄ってから香港空港に入ったところで、香港警察の公安に逮捕されてしまいます。
国安法違反容疑だそうです。

連行された警察署の取調室には、香港公安より明らかに上位にいると思われる正体不明の男もいましたが、訛りから保香港人ではないと気がつきます。
後に判ったことですが、この男は中国本土からきた国家安全維持公署の人間でした。
この国安維持公署の男が、お前は国家分裂団体の活動家と連絡をとっており、資金援助をしているだろう、と言います。
そして読み上げた国安法の条文にこう書いてありました。

● 国安法第29条
(2)香港政府または中央政府による法律や政策の策定・実施を著しく妨害し、重大な結果をもたらすおそれのあるもの
(5)様々な不法な手段を用いて、香港の住民の間で中央人民政府または香港政府に対する憎悪を募らせ、重大な結果をもたらす行為。

お前は反政府分子と接触し、中華人民共和国政府に対して「政策の実施を困難にさせ」、「憎悪を募らせる」文書を受け取っていたではないか。
国家転覆罪の共犯だ。

びっくりしてAさんがなぜ外国人の私を逮捕するのか、主権侵害じゃないかと抗議すると、この男は国安法では外国人でも裁けるんだ、なんならもっとしゃべりやすい環境に連れて行ってやろうかと言います。
本土に移送して、中国公安に引き渡そうか。本土の同僚はオレのように優しくはないから覚悟しておくんだな。
大使館を呼べと言うと、上海にいるお前の家族までを同罪にしたいなら呼んでやる。
家族を人質にされてがっくり折れたAさんは、取調官が言うとおり自分は米国のスパイに情報をわたしていましたという供述調書を書かされました。

これは現時点ではフィクションにすぎませんが、事実に基づいています。
外国人でも国安法で逮捕拘束できるのは事実です。
いったん逮捕してしまえば容疑者を中国大陸に送致して中国の裁判所で裁くこともできるとも規定されています。

「第56条には、中国の最高人民検察院が関連する検察機関を指定して検察権を行使し、最高人民法院が関連する裁判省を指定して司法権を行使する、とある。その場合、中国国内の刑事起訴法を適用することになる。つまり、被疑者を中国に送致して、中国の法律で中国の検察と司法が裁く、ということだ」
(福島香7月2日『香港を殺す国家安全法、明らかになった非道な全文』)

また、「中国からの男」がすべてを決定するのも事実です。

「第5章では、中央政府が香港に設立する国家安全維持公署(国安公署)の機能などが詳しく説明されているが、はっきりと「国家安全犯罪を法に基づき処理すること」と規定し、香港の要請と中央政府の承認を得て管轄権を行使することもできるとある。つまり中国当局が香港内で執法行為を堂々と行えるのであり、一国二制度の完全な否定である。また、中聯弁や解放軍香港駐留部隊と連携をとり共同で任務にあたる、ともいう」
(福島前掲)

国安法で、香港警察の上位組織として新たに国家安全維持委員会も作られ、この委員会は香港政府長官を飾り物にして、中国政府からの「顧問」が一人派遣され、「助言する」ことになっています。
この委員会は非公開で、なにがどのように決定されたのか分からない仕組みとなっています。
たぶんこの「中国政府からの顧問の助言」が一切を牛耳ることになるはずです。

かくして香港は死にました。

 

 

2020年7月 2日 (木)

香港国安法を読む

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国案法が施行され、1万人が勇気あるデモが行い、国安法最初の逮捕者を出しました。

「香港=木原雄士】香港警察は1日、6月30日に施行された「香港国家安全維持法」に違反した容疑で男女あわせて10人を逮捕した。施行から1日足らずでの初の逮捕者で、香港の統制強化を進める中国当局の姿勢が鮮明になった。違法集会や武器所持など同法以外の容疑も含めて逮捕者は約370人に上った。警察は逮捕した10人の一部が「香港独立」や2019年の大規模デモのスローガンだった「光復香港 時代革命」の旗やプラカードを所持していたと発表した。街頭での荷物検査でかばんなどの中から見つかり、逮捕されたケースもある。
警察によると、最初に逮捕された男は香港島の繁華街、銅鑼湾(コーズウェイベイ)で取り調べを受けた。香港メディアによるとバックパックの中に「香港独立」と書かれた旗を持っていた。
「国家の安全を脅かすごく少数の者にとって国家安全法は鋭い剣になる」。中国政府の出先機関トップの駱恵寧氏は香港が中国返還23年を迎えた1日午前、記念式典でこう演説した。法施行前は欧米など国際社会の批判や市民の懸念を意識して慎重に運用するとの観測もあったが、さっそく法律の威力を見せつけた。
詳しい容疑は分かっていないが、国家分裂を企てた罪に問われる可能性がある。特定の旗やプラカードを持っているだけで逮捕されるのはこれまでの香港では異例だった。言論の自由が損なわれ、民主派の政治活動を萎縮させる懸念が早くも現実になった」(日経7月1日)

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https://article.auone.jp/detail/1/4/8/6_8_r_202007

逮捕の様子を動画でみるとデタラメで、暴力行為があろうとなかろうとランダムに逮捕できるということです。
象徴的なのは国安法逮捕第1号が、ただ「香港独立」の旗を所持していただけの人が逮捕されたことです。
どこの世界に旗を持っていただけで捕まえる国があるのか!

これで判るように今後、いかなるデモもすべて国安法で処罰できます
まさに無抵抗の人たちになぶるように襲いかかるというかんじです。
言うも愚かですが、権力の濫用の極みです。
これがファシズムでなくて、なにがファシズムなのか。

民主派は地下に潜って先鋭化する部分と、海外に脱出する部分に別れるでしょう。
胸が潰れる思いです。

さて国安法がやっと公開されました。といっても、施行と同時というひどさです。
しんじられないような民主主義の逸脱です。今まで香港は行政が発起し、専門家で詰めて内容を市民に開示し、立法院に3回審議を重ねた後に、最終的にはパブリックコメントをもらって施行するというのがルールでした。
それを本土にもっていってしまい、全人代というイカサマ「国会」の短時間の審議で決議し、即日施行というのですから、すさまじいかぎりです。

この国安法の意図について中国外交部の趙立堅報道官は 5月29日の記者会見でこう述べています。

「分離独立活動や国家の安全を脅かす活動を認めるような国は世界のどこにもない」

中国の意図は、これに尽きるでしょう。
つまり香港の自由主義陣営への接近をいかなる形でも許さないということです。
今回の国安法冒頭の第1条はこう書いています。

●国安法
第1章総則
第1条
「一国二制度」、「港人治港」、「香港人が高度の自治を行使する」という原則を揺るぎなく完全かつ正確に実行し、国家利益を守るために、 香港特別行政区に関する国家分裂、国家政権転覆、組織的テロ、外国・域外勢力との結託による国家安全危害などの犯罪を予防し制止し、懲罰し、香港特別行政区の繁栄と安定、住民の合法的権益を中華人民共和国憲法と香港基本法、全人代の香港版国安法制に関する決定に基づいて保護するため、本法を制定する。

この冒頭の第1条に中国がやりたいことのすべてが詰まっています。
国家転覆をさせない、外国勢力と接近させない、そのためにあらゆることを可能とする、これが国安法の意図です。
このような脅迫じみた行間から、中国政府がいかに香港民主化デモに怯えきっていたのか、これが内陸のウィグルやチベットに、あるいは続発する農民暴動に飛び火することを恐怖したことが透けて見えます。

そして、このような香港民主化デモは「外国や外部の勢力の干渉」だと言い切っています。
これは中国が散々やってきた浸透工作を白状するようなもので、内部の騒乱は「外部勢力の工作」にしか見えないのです。
香港市民が100万人立ち上がろうと、共産党の目には「外部勢力」に操られて、カネをもらってやっているんだろうということです。
やれやれ、蟹は甲羅煮合わせて穴を掘るとはよくいったもんで、それは米国に対して今あんたらがやっていることです。

国安法が取り締まり対象とした4点
①国家の分裂
②中央政府の転覆
③テロ活動
④外国勢力などとの結託

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おいおいなんだこれは、全部自分が権力を奪取した時にやってきたことばかりじゃないですか(苦笑)。
そもそも共産党政権は、当時の国際的に正統政権として認知されていた中華民国から「国家分裂」させてできたものです。
しかも「統一選戦線術」というコミンテルンの方針に沿って国共合作という融和路線をとるふりをしながら、国民党軍に浸透し骨抜きにしていきました。
そして大戦が終結するや、国民党に戦争をしかけて国土を二分する血なまぐさい内戦を引き起こしています。

仮に当時国安法があれば国家分裂罪の条項が適用となり、重罪です。

●国安法
第20条
国家分裂、国家統一破壊の組織、計画、実施に参与したいかなる者も、武力を使用、あるいは武力を使用すると脅したか否かにかかわらず、すなわち犯罪である。
一) 香港または中華人民共和国のその他の部分を中国人民共和国から分離させようとすること。
二) 香港または中華人民共和国のその他の部分の法的地位を不当に変更すること。
三)  香港または中華人民共和国の一部を外国統治下に移すこと。
 前項の罪を犯した者は、その主犯、あるいは重大な罪の場合、無期懲役又は十年以上の懲役、積極的に参与した者は三年以上十年以下の懲役に、それ以外は三年以下の懲役、拘留又は行動制限におかれる。

この第20条の主語を入れ換えてパロディを作ってみましょう。

●中華民国版国安法があったら
第20条
中華民国に対して国家分裂、国家統一破壊の組織、計画、実施に参与したいかなる者も、武力を使用、あるいは武力を使用すると脅したか否かにかかわらず、すなわち犯罪である。
一) 中華民国の部分を分離させようとすること。
二) 中華民国の法的地位を不当に変更すること。
前項の罪を犯した者は、その主犯、あるいは重大な罪の場合、無期懲役又は十年以上の懲役、積極的に参与した者は三年以上十年以下の懲役に、それ以外は三年以下の懲役、拘留又は行動制限におかれる。

ね、モロに自分らがやったことは国安法に真正面から違反する行為であって、その結果、今共産党は政権に着いているのです。
ならば遡及法で自分らを死刑にしたらどうですか。
まぁ冗談はさておき、革命でできた政権は革命におびえるということがよくわかります。

キモは武力行使と暴力です。
共産党がいかに赤色テロをやり捲くったのかは、中国革命の歴史を少しひもとけばわかるはずです。
テロこそ共産党の代名詞と言っていいほどえげつないテロを仕掛けました。
それは中華民国政府機関だけにとどまらず、協力者、資金提供者、果ては支配した地域の地主、富農に至るまでをようしゃなく虐殺しました。
「反動分子」だけに限らず、内ゲバで大量の粛清者までだしています。

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1930年代、中国で地主を銃殺しようとしている八路軍(Public Domain)

とまれ、中国革命ほど無辜の民が大量に殺された革命はありません。
また政権奪取後も、暴力街道まっしぐらで、文化大革命に代表される恐怖政治で人民を縛りつけました。
 犠牲者数については、中国共産党第11期中央委員会第3回全体会議(第十一屆三中全会)において「文革時の死者40万人、被害者1億人」 としていますが、外国の研究では死者2千万人という説も存在します。
また中国革命全体では、6千万人が殺されたとされる説もあります。
これは第1次大戦(3700万)と、第二次世界大戦(6600万)の死亡者数をうわまわっています。

しかし思えば共産党は、思想からしてマルクス主義という外来のものですし、共産党組織といえばソ連共産党に作ってもらってもの、指導はコミンテルンから派遣されたロシア人、という丸ごと「外国勢力の干渉」だったのですから、いまさら「外国勢力の干渉」を罪に問うなんて片腹痛い。

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中国政府当局は香港市民から、私たちのデモとあなた方が権力奪取した中国革命とどこが違うのですか、あなたがたが国安法で罪としていることすべてそれを数百倍する形であなた方がやってきたことばかりじゃないですか、と問われればなんと答えるのでしょうか。

民主的なルールによってできた私たちの政府ならいくらでも答えようがあるでしょう。
では選挙で与党以外を選んでくれ、その投票数で決めようと言えばよいだけですから。

小学生に聞いてもいい。
選挙で自分が好きな政党を選んで、そこにがんばってもらいましょうって公民の教科書に書いてあるよとこたえるでしょう。
中国にはそうこたえられないのです。ここにこそ本質があります。

中国は自由選挙を否定したところで、政権を作り上げてしまっているから、香港市民に民主化デモを起こされました。
作られかたに重大な矛盾があったのです。
中国革命のような暴力革命は暴力故に否定されるのではなく、それによって出来た政権が政権選択の自由を閉ざすが故に否定されねばならないのです。

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国安法を読んで、親中派の人間はなんだこんなものは日本にだって内乱罪や外患誘致罪があるゾ、なんてうそぶいていますがまったく違います。
自由主義諸国と同じようにみえる内乱罪すらも、これらの国では言論・結社の自由が保証されており、なにより選挙という体制選択の自由が保証されていて、初めて暴力で政権を倒すことに内乱罪を適用すると言っているのです。
それらをすべて否定し、体制選択の道を初めから閉ざしている国とでは、根本的に別次元なのです。混同してはいけません。

●第2章 国家政権転覆罪
第22条 武力、武力による恫喝、その他の不法な手段により国家政権を転覆させるために、次の行為を組織し、計画し、実施し、これに参与することを犯罪とする。
一) 中華人民共和国憲法が定める中華人民共和国の基本的な体制を転覆させ、又は弱体化させること。
二 )中華人民共和国又は香港特別行政区の中央機関を転覆させること。
三) 中華人民共和国または香港特別行政区の中央当局の機関が法律に基づきその機能を発揮することを著しく妨害し、妨害し、または弱体化させること。
四) 香港特別行政区の権力機関がその機能を行使する場所及びその施設を攻撃し、又は損傷させ、通常の機能を発揮することができないようにすること。前項の罪を犯した者は、主犯、重大な犯罪については、無期懲役又は十年以上の懲役、積極的に参加した者は、三年以上十年以下の懲役、その他参加した者は、三年以下の有期懲役、拘留又は管制下に処する。

第23条
他人がこの法律第二十二条の罪を犯すように扇動、幇助、教唆、又は金銭その他の財産をもって出資した場合も犯罪とし、懲役、拘留又は管制下に処する。悪質な場合は5年以上10年以下の懲役、状況が軽い場合は、5年以下の有期懲役、拘留または管制下に処する。
第三節 テロ行為の罪

第24条
中央人民政府、香港特別行政区政府、国際機関を脅迫したり、政治的思想を実現するために国民を脅迫するために、次のようなテロ行為を組織し、計画し、実行し、参加すること、あるいは実行すると脅迫して、社会に重大な危害を与えるか、または与えることを目的とするテロ行為を行うことを、犯罪とする。
一 )人に対する重大な暴力。
二 )爆発、放火又は毒性、放射性、感染性病原などの放出
三 )交通手段、交通インフラ、電気インフラ、ガスインフラ、その他可燃性、爆発性の設備の破壊
四) 水道、電気、ガス、交通、通信、ネットワーク等の公共サービス及び管理の電子制御システムに重大な支障を与える、または破壊すること。
五) その他危険な手段で公衆衛生又は安全を著しく脅かすこと。
前項の罪を犯して、人に重傷を負わせ、若しくは死亡させ、又は公私の財産に著しい損害を与えた者は、無期懲役若しくは十年以上の懲役、状況が比較的軽い場合は、三年以上十年以下の有期懲役に処する。

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読んだとおり「国家転覆」にかかわった者は「煽動・幇助・教唆」という概念で゙処罰されます。
自由主義諸国においての教唆は因果関係のある具体行為に適用されますが、中国にあっては「デモにいこう」「移送法反対」「警察は暴力をやめろ」といった言論一般まで含んでいます。
つまり、解釈ひとつで、なんでも引っかけられるのです。
こういういくらでも当局の思惑で拡張可能な法文ほど悪用されるものはありません。
また資金援助をした者まで摘発対象としていることから、カンバした者、あるいは多くあるデモを支援する民間企業も取り締まり対象となります。

つまり拡大解釈で中国政府に反対するものは全員拘束し処罰できるというすさまじい法律なのです。

そして第38条では、外国人が海外で行った行為も処罰の対象としているというトンデモぶりです。

●第六節 有効性の範囲
第38条
本法は、香港特別行政区の永住者の資格を有しない者が、香港特別行政区の外で香港特別行政区に対してこの法律に基づく犯罪を犯した場合に適用される。

この38条を使えば、外国人が「香港行政区の外で」、つまり日本で香港民主派支援を言えば処罰対象とするということになります。
おいチャイナ、正気か。どこの国の法律に、外国人がその主権国でしたことを処罰する法律なんてあるんでしょうか。
あんた、外国で国案法に抵触することをした「香港永住権を有しない者」、つまり外国人が国案法反対を反対をさけんだら、適用するってことを言っているんです。もはや笑うしかありません。
では、今私が書いているこの記事も、「中国の分裂」を教唆煽動しているわけですから、さぁどうぞ捕まえて下さい。

 

 

 

2020年7月 1日 (水)

香港の終り

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香港という自由都市が消滅しました。
地図上には残っていますが、それも内実は「香港自治区」にすぎません。
自由都市から「自由」を奪えば、それは単なる地図上の記号にすぎませんから。

香港国家安全法が成立し、即日施行されました。

中国の立法機関、全国人民代表大会(全人代)常務委員会は30日に開いた会議で香港に導入する「香港国家安全維持法」を全会一致で可決・成立させた。習近平(しゅう・きんぺい)国家主席が公布。香港政府は同日午後11時(日本時間7月1日午前0時)に施行した。英国から中国に香港の主権が返還されて23年となる7月1日に合わせた形だ。高度な自治を返還後50年間にわたって保障した「一国二制度」が形骸化されることになり、香港は歴史的な岐路に立った。(略)
法案の概要によると、香港において国家の分裂や政権の転覆、テロ活動、海外勢力と結びついて国家の安全に危害を加える行為を処罰するのが柱だ。治安維持の出先機関「国家安全維持公署」も香港に新設する。
全人代は5月下旬、香港での抗議デモの取り締まりを狙い、国家安全法制の香港への導入を決めた。全人代の常務委会議は、通常2カ月に1度のペースで開くと定められているが、今回は6月中に2度も開くという異例のスピード審議で可決へとこぎつけた(産経7月1日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/f3fab9c25cf796dfd86625b110b29cac5f09ecdb

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これを受けて香港民主化団体は一斉に解散し始めました。
戦いを止めたわけではなく、国安法の下では、このような反政府団体自体が取り締まりの対象となるからです。

「香港の民主派団体、解散相次ぐ=黄之鋒氏の「香港衆志」も
香港の主要な民主派団体「香港衆志」は30日、解散すると発表した。「香港国家安全維持法」制定を受け、民主派や独立志向の団体の解散・活動停止表明が続出。同法施行によって当局の取り締まりが強化されることを警戒しての動きだ。
 香港衆志はフェイスブックを通じて「団体の運営継続は困難となった。より柔軟な方法で抗争を続けるべきだ」と解散を発表。香港衆志は2014年の民主派による大規模デモ「雨傘運動」の中心メンバーによって結成され、国際的に著名な活動家の黄之鋒氏や羅冠聡氏、周庭氏らが率いてきた」
(時事7月1日)

また、民主化運動の中心メンバーの逮捕拘束は決まっていることで、今日からでも民主人士の大規模な逮捕が始まると予想されます。
天安門事件で米国に逃げている王丹によれば、具体的に現時点で名が上がっているのは、蘋果日報創始者の黎智英(ジミー・ライ)、香港自決派政党事務局長・黄之鋒(ジョシュア・ウォン)などで、すでに逮捕が決まっているそうです。
いままで反骨の報道姿勢を取り続けてきた蘋果日報のジミー・ライは、既に覚悟を決めておりこのようにコメントしています。

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ジミー・ライ ブルームバーク

「 どこにも行かない。(7月1日逮捕の情報)を信じようと信じまいと、関係ない」
(福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.105 2020年6月30日)

またジョシュア・ウォンもこのように述べています。

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ジョシュア・ウォン( 黄之鋒)右と周庭(アグネス・チョウ)

「生きるか死ぬかの瀬戸際だけど、私の対応は変わらない。あらゆる手段を駆使して、私たちの愛する香港をまもっていきたい」
(福島前掲)

この覚悟は立派ですが、私は一刻も早く台湾や米国、ヨーロッパに脱出してほしいと思います。
逮捕された場合、中国本土に送致され、以後まったく消息がつかめなくなる可能性が高いからです。
中国本土に送られた場合、ブラックボックスに入れられたのと同然で、自由主義国は一切救援ができなくなります。
殺害されても何の証拠も残りません。今までどれだけ膨大な人々がこうして抹殺されたことか。
しかし、彼らのパスポートは既に取り消されていると考えたほうが妥当ですから、密航するか、米国の外交施設に逃げ込むしかないでしょう。

彼らを先駆けとして、ほぼすべてのデモ参加者が拘束されることになると思われます。
王丹はこう言います。

「もし、二人がたやすく逮捕されてしまえば、反送中デモに参加していたすべてのデモ参加者がブラックリストに乗り、同様に逮捕されうるということだよ。
香港の若者は逮捕され、拷問され、長く交流され、その運命がどうなるかわからなくなる。
もし中共が香港でこういう悪法をあえて執行しようとしたら、私は香港人がみんなで立ち上がって最後の抵抗を行うように望む」
(福島前掲)

私は「最後の抵抗」は望みません。それは死を意味するからです。
死ではなく生き残って、香港以外の土地で闘争を継続されることを望みます。

この国安法は法律の名に値しません。
現時点では、香港版国安法全6章66条の条文は未公開ですから、いかなる罪に問われるのか、誰がどのようにどれだけの期間、なんの権限で拘留できるのか、一切不明です。
このような法律の内容が一切市民に知らされていない中で、これほどの強権法を通すのですから、民主党議員で弁護士のジェームズ・トゥが言うように「これは、まともな政権のすることではない」のです。
そうです、これを仕掛けているのは、人権という概念自体を持たない暗黒政府であることを忘れないでください。
これこそが現代のファシズムです。アンチファシズムというならば、これこそファシズムそのものではありませんか。

しかもなんと遡及法です。
法律が出来てから法に沿って取り締まると言うならまだしも、過去に遡って違反行為を取り締まることが出来るのですから唖然となります。
これは香港区代表で全人代常務委員の譚耀宗率が、出発前にこのように言い放ったことから発覚しました。

「一定の遡及期間は必要で、刑罰も軽すぎてはいけない、という意見が常務委員からでており、法案はそれを反映するだろう」
(福島前掲)

また量刑については、重罪適用があるだろうといわれています。

「一部流れている情報によれば最高終身刑もあるという。また、人民代表の一人、葉国謙によれば刑罰は低すぎることはない。政権転覆や国家分裂などの罪を抑止できるくらいの重罰が適当であるとして、「終身刑がなぜだめなんだ?」という。「牙が必要だ、なかでも鋼鉄の牙が!」と強調した。(略)
マカオには、基本法23条に基づいた国家安全条例があるが、それでは政権転覆罪、国家分裂罪は、懲役10-25年、複数の罪に問われると最高懲役30年になりうる。また中国本土の刑法第105条の国家政権転覆の組織化、画策、実施の罪、103条の国家分裂・国家統一破壊の組織化、画策、実施の罪は、主犯は無期懲役あるいは10年以上の懲役となっている」(福島前掲)

つまり、おそらく今日からでも民主人士は逮捕拘束される可能性が極めて高く、しかも遡及して民主化デモ発生以来のすべてのデモ参加者に対して何らかの罰則が加えられる可能性が濃厚です。
恐ろしい風景ですが、半年、一年後には香港の青少年層は根こそぎ消滅するかもしれません。

一方、国際社会はコロナとBLM一色であり、残念ながら民主人士を救援するに至っていません。
米国は6月25日、香港人権法(Hong Kong Accountability Act) を作って、香港弾圧に関与する人や組織のビザ廃止する方針を決めました。
ポンペオ国務長官は26日、中国の香港国安法施行をけん制する目的で、香港の自由を侵害する責任者の中国共産党の当局者に対するビザ(査証)を制限すると発表しています。
福島氏によれば、「具体的に名指しはしていないが、今のところ政治局常務委員の中で、香港、マカオ、統一戦線担当の汪洋と韓正、駱恵寧(中聯弁主任)の名前がとりざたされている」そうです。
しかし、最大の責任者であるはずの習近平、今回の法案成立を作った習側近の全人代常務委員長の栗戦書がリストアップされているかは不明です。

香港人権法はこの香港の自治侵害の責任者だけにとどまらず、彼らと取引のある金融機関などに制裁を科すセカンダリーボイコットを定めています。
どのように運用されるかまだ不明ですが、適用方法によっては厳しい制裁となりえるかもしれません。

いずれにしても、米国は国安法が適用されれば香港の特恵待遇を廃止するとしていますから、これで香港の国際経済都市の生命は根底から破壊され、ただの中国の一地方都市となることに決まりました。
また今まで香港が果たしてきたアジアの金融センターの機能は、上海に行くはずもないので、自動的に東京に来ることになるかもしれませんが、少しも嬉しくはありません。

香港の民主人士がひとりでも多く脱出することを祈っています。

 

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