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2024年6月26日 (水)

ガザの市民死者数3万3千人説は真実だろうか

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淡々とガザ戦争について考えています。
ガザ戦争についての一般的イメージはこうです。

パレスチナ自治区ガザの保健当局は19日、イスラエル軍の攻撃によるガザの死者数が計3万4千人を超えたと発表した。国連によると死者の3分の1近くにあたる1万人以上が女性だという。
保健当局の発表によると、イスラム組織ハマスとイスラエル軍の戦闘が始まった昨年10月以降の死者数は計3万4012人。負傷者数は計7万6833人に上る。
一方、国連女性機関が16日発表した報告書によると、死亡した女性のうち6千人が母親だった。その結果、1万9千人の子どもが孤児になったとみられる。また、ガザに住む100万人以上の女性と女児が飢餓に直面しており、清潔な水やトイレ、生理用ナプキンを利用できていない。肝炎や下痢などの感染症も蔓延(まんえん)しているという」
(朝日2024年4月20日 )
ガザの死者、3万4千人超える 国連機関「女性に対する戦争」と警鐘:朝日新聞デジタル (asahi.com)

この3万4千人という数字が一人歩きして、日本のメディアはもっぱらハマスをパレスチナ人の代表に祭り上げ、それに寄り添い、イスラエルは虐殺を続ける悪玉ということを報道方針としました。
いまや世界のサヨク界隈の反イスラエルの人々は、これをジェノサイドとまで呼びます。
ちなみに「ジェノサイド」とは、安易に使っていいレッテルではありません。

「genocide」(ジェノサイド)という言葉は、1944年より前には存在しませんでした。これは非常に特定的な言葉で、あるグループの存在を抹消することを目的として行われる暴力的な犯罪行為を意味します」
ジェノサイドとは | ホロコースト百科事典 (ushmm.org)

つまり特定の民族が特定の民族を抹殺するための残虐行為がジェノサイドであって、イスラエルがガザで戦っているのは「パレスチナ人」一般ではなく「ハマス」というテロリスト組織なのです。
ここを混同しないで下さい。
イスラエル軍の行き過ぎた戦闘行動が多く市民を巻き沿いにしたことは事実ですから、それはそれとして批判されるべきですが、それはハマスが市民の家や病院、学校に立て籠もり、トンネルからロケット弾や銃で攻撃したからです。
このような「人間の楯」戦術はハマスの定石であって、それが市民の死傷を増加させましたが、この卑劣な戦法についてほとんどのメディアは沈黙しています。

また「ガザ保健省」あるいは「国連機関」と名乗ってプレスリリースしているのは、ハマスです。

「イスラエル軍のハガリ報道官は4日、パレスチナ自治区ガザでの支援を担う国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、イスラム組織ハマスを含む武装集団から450人を超える「軍事工作員」を雇用していたと述べた。イスラエルはこの情報を国連と共有しているとしている」
(ロイター2024年3月5日)
UNRWA、ハマスなどから450人以上雇用=イスラエル軍報道官 | ロイター (reuters.com)

このような情報も「イスラエル軍はそう言っている」ていどでいとも軽く片づけられてしまいました。
もちろん西側メディアも「ガザ保健省」なるものの正体はとうにご存じで、申し訳ていどにこういう表現をしています。

「ガザ地区で殺害された人数、3万人超す=ハマス運営の保健省 大多数は女性や子供と」
(BBC2024年3月1日)
ガザ地区で殺害された人数、3万人超す=ハマス運営の保健省 大多数は女性や子供と - BBCニュース

なーんだBBC、「ガザ保健省がハマス運営」だとわかって書いているのですね。
それならなおさら罪が深い。

ならばプロパガンダに長けたハマスが出す「公式発表」は大本営発表にすぎませんから、独自に裏取りをするべきでしょう。
常日頃西側メディアは「これは確認されていない」という言い方をするのに、今回に限ってハマス大本営のプロパガンダを丸投げしています。
メディアが独自の裏取りをせずに、そのままプロパンダ数字を世界に流すから、それを米国政府も使ってしまい、これが公認の数となります。す。
最低でも、ハマス=ガザ保健省はこう言っているが、イスラエルはこう言っているという両論並記でもしてくれたならいいのにと思いますが、これでは偏向報道です。
思えば、最初の10月7日のハマスの越境テロ時、その現場になぜか居て画像を取り巻くっていましたが、どうしてこの時間にこの箇所でハマス戦闘員が突破するとわかっていたのか不思議じゃありませんか。

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【解説】 イスラエルへの急襲、不可能と思われたが……ハマスはどうやって - BBCニュース

もちろんハマスが10月7日にここでテロを行いますよ、という情報をBBCなどはあらかじめ知っていてこの場所で待っていたのです。
このようにハマスと西側メディアは水面下でツーカーの関係だったことが暴露されました。
こういう写真を報じた段階で、西側メディアは報道の中立性を喪失しているのです。

それはさておき、まだガザは鉄火場です。戦争が終わらねば正確な死傷者数など出るはずもありません。
戦争の途中で、中立性が疑問視される組織があたかも公式発表のようにして出してくる数字を垂れ流していい道理がありません。

さて、ペンシルベニア大学ウォートン・スクールの統計学・データサイエンスのエイブラハム・ワイナー教授は、この3万4千人説が、自然発生的な数字がどのように機能するかを理解」していない人間が作為的に作った数字だと考えています。
「ガザ保健省」はパレスチナ人vsイスラエルという図式を作り出したいために、ガザにはハマス戦闘員が存在しないような見方をします。
一般市民とハマス戦闘員との区別をつけすず、ベタで「パレスチナ人の死傷者」という表現をします。
このことは西側メディアも知っています。

「殺害された人数を発表する際、保健省は民間人と戦闘員を区別していない」
(BBC2024年3月1日)
ガザ地区で殺害された人数、3万人超す=ハマス運営の保健省 大多数は女性や子供と - BBCニュース

したがって、イスラエル軍が去年末にこう発表しているのもほとんどスルーされています。
去年末時点で7000人、そして今年3月には1万3千人の戦闘員を殺したとしています。

「イスラエル国防軍は2月29日の時点で、少なくとも1万3千人の戦闘員を殺したと明らかにしている は「ハマスのテロリスト」だったと推定している」
(BBC3月1日))
ガザで3万人超が殺されたと現地当局、イスラエルは戦闘員1万3千人を殺害と 数字が示すものは - BBCニュース )

このイスラエル軍発表の1万3千人という数字も、ハマスと同じく戦時プロパガンダであることはいうまでもありませんから割り引かねばなりません。
仮にハマス戦闘員の死者が1万人前後だとすれば、ガザ保健省=ハマスの主張する3万3千人が正しいとして差し引き約2万人ていどとなります。

またガザ保健省=ハマスによる死者について、その死因について明らかにされていません。

「これまで報告されてきた死傷者数については、パレスチナ人がどのように殺されたのかを反映していないという批判が続く。イスラエル軍の空爆の結果なのか、砲撃なのか、あるいはパレスチナ側のロケット砲の誤射によるのかなどが、示されていないからだ。死者は現在いずれも「イスラエルの侵略」による犠牲者として計上されている。
ガザ保健省は最近では、WHOが「間接的な死者」と呼ぶ死者数を強調している。つまり、戦争の影響で亡くなったが、戦闘そのものに殺されたのではない人たちのことだ。
保険省は2月28日には、ガザ北部の病院で子供6人が脱水と栄養不良で死亡したと発表した。2人はガザ市内のアル・シファ病院、4人はガザ地区北部ベイト・ラヒアの病院で亡くなったという。
ガザ地区について国連は、今では人口の25%が飢饉(ききん)で犠牲になる危険があると警告。さらに、医薬品や医療が全体的に不足していることもあり、感染症にかかる人が劇的に増えているという」
(BBC3月1日)
ガザ地区で殺害された人数、3万人超す=ハマス運営の保健省 大多数は女性や子供と - BBCニュース

この記事で述べられているように、ハマスは国連の「間接的死者」という概念を拡大して、死者は現在いずれも「イスラエルの侵略」による犠牲者として計上しています。
このような「間接の死者」の原因は、戦争そのものにあります。
たとえば地震において直接の死者より、その後の避難生活での間接の死者が多かったように、避難生活による不衛生、栄養不足などで多くの人が死にます。
いわゆる関連死ですが、ガザ戦争の場合、これをすべて「イスラエルによる市民殺害」で一括りにしていいのでしょうか。
救援物資はどこで滞貨しているのか、考えたことがありますか。
おおよその人は、イスラエル軍か避難民を飢えさそうとして救援トラック止めていると思っています。
よく考えて見てください。そんなことをしてイスラエルにどんな得があるのでしょうか。
救援物資は組織的盗難に合って、運搬トラックまで襲撃されるから滞貨しているのです。
「「今や略奪は実に深刻だ」と、国連人道問題調整事務所(OCHA)のガザ代表を務めるゲオルギオス・ペトロポウロス氏は指摘。18日には、トラックに積載されて検問所からガザ入りした物資の4分の3が盗まれたようだという。
国連関係者によると、車両は武装集団によって組織的に襲撃され、停止させられる。この集団は、特にガザの闇市場で法外な値段で取引されるたばこの密輸を中心に行っているという。ガザに燃料を運ぶトラックも、最近狙われるようになった」

(BBC2024年6月22日)
援助物資が届かない……イスラエルと国連は互いを非難 - BBCニュース
つまり治安の不安定をうながしている勢力があるのです。
それがハマスかどうかわかりませんが、少なくとも混沌の長期化を願う彼らにとってこれは「いいこと」のはずです。
そのような状況があっても、ガザ保健省=ハマスは避難民や市民が死ねばただちに「イスラエル軍の虐殺」としてカウントしています。
つまりイスラエル軍の空爆の結果なのか、砲撃なのか、あるいは地上部隊の戦闘の巻き沿いなのか、パレスチナ側のロケット砲の誤射によるのか、戦闘とは関係のない間接的原因なのかなどが、いっさい示されておらず、死者はすべて「イスラエルの侵略」による犠牲者として計上されています。

もう少しわが国の民は、戦争における数字について醒めたほうがいいでしょう。
数字ほど容易にプロパガンダに利用されるものはありません。
一見「公的機関が出した統計数字」を「国際的メディア」が報じたとしても、その数字が信頼性があるかどうかを吟味して「ジェノサイド」なるものを考えたほうがいいと思います。
さもないと戦争にはつきもののプロパガンダにやられてしまいますよ。

2024年6月25日 (火)

ガザ戦争に投影された超正統派と世俗派の対立

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イスラエルのガザ戦争に対する国論は分裂しています。
整理すれば、今のイスラエルにはガザ戦争についておおよそふたつの立場があります。

一つ目は、ネタニヤフとイスラエル右派の立場です。
イスラエル右派は、ユダヤ教超正統派を基盤としています。
シンクタンク「イスラエル民主主義研究所」によれば、イスラエルの超正統派は130万人近くに上り、かつては9%程度だったものがいまや人口の約14%を占め、出生率は全国平均を大きく上回って、急速に拡大しています。

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イスラエルの宗教モザイク/イスラエルについて | シオンとの架け橋 (zion-jpn.or.jp)

超正統派が拡大するのは、特権がいくつもあるからです。
その最大のものは、徴兵免除と税金の減免です。

「イスラエルの超正統派は電力や水道の供給に至るまで世俗派(の税金)に依存している。超正統派の割合が増えれば全般的に生活の質が落ちる」
(産経2022年11月1日)
「超正統派」に「世俗派」が反発 揺れるイスラエル - 産経ニュース (sankei.com)

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イスラエル「超正統派」ユダヤ人の間で感染拡大…戒律重視で礼拝規制も無視 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

このような超正統派に与えられた特権が、イスラエルの国家統合を阻んできました。
超正統派は、非妥協的戦争の完遂を目指せと主張していますが、皮肉にも兵役を免除されていました。

「イスラエルでは、基本的に国民皆兵が導入されているが、フルタイムで宗教を学ぶ超正統派の男性は、建国初期から続く政策に基づき、多数が免除されてきた。建国当時の1948年ごろに徴兵免除になったのはイェシーバーの学生約400人のみだったが、現在は18~26歳の超正統派の男性約6万6000人に上っている。
この問題は長らくイスラエル社会を分断しており、超正統派も他のイスラエル国民と同様、国家安全保障に貢献するべきだという声も上がっている」
(AFP2024年4月15日)
兵役免除は「道徳的」に許されない ユダヤ教超正統派閣僚 イスラエル

宗教保守派が兵役を拒否するのは、(ふざけた話しですが)女性や他宗派、さらには同じユダヤ教でも世俗派などとは共に軍隊に勤務できないと主張するからです。
彼らは一切の妥協を拒み、ハマスの物理的完全殲滅を目指しており、戦争後もハマスの復活を許さないと言い続けています。
また戦後のガザ統治についても、パレスチナ国家はおろかいまあるパレスチナ自治政府すら否認しています。
いうまでもなく、ヨルダン川西岸の植民者を撤収させる気など毛頭ありません。
なぜなら、神が与えたもうた土地だからで、そう聖書に書かれているからです。
神が出てくると、一切の妥協を拒否し、みずからの民族的利害を一歩も譲ろうとしません。
ネタニヤフ政権は、この超正統派を支持基盤にしています。

何事もない平時なら、それはそれとして通用したでしょうが、戦火が拡大し戦死者が増大し続け、国際的孤立が進行しても、あいも変わらず頑なに過激なことを鼓吹している超正統派に大きな反発が生まれました。
なんせ自分は戦争に出ないでナニを言っているのか、という反発が出て当然です。

この世論に押されて、兵役適期の青年層の宗教学校学生も徴兵対象とする法改正が行われました。

「イスラエル議会は10日、ユダヤ教超正統派の宗教学校生も徴兵対象に含める徴兵法改正法案の予備採決を行い、法案成立に向けて前進した。
ユダヤ教超正統派の兵役免除は長年、イスラエル社会に分断をもたしてきた。ネタニヤフ首相率いる連立政権が免除廃止に向けた方策を打ち出すと、連立政権内の超正統派系政党から強い反発を招き、紛糾が続いていた」
(ロイター2024年6月11日)
イスラエル議会、徴兵法改正に前進 ユダヤ教超正統派も対象に | ロイター (reuters.com)

ネタニヤフは戦時内閣という野党まで含んだ大連合を組んだはずなのに、結局は自分の支持基盤である超正統派のいう通りではないか、という声が高まっています。
この声は米国政府内にも拡がり、いまや国際社会の孤児と化そうとしています。

それに対してもうひとつの考え方は、世俗派の見方です。
彼らは軍や情報機関、あるいはイスラエル労働党やキブツなどの社会主義勢力にまで広く分布しています。

ガザ紛争においては世俗派は、IDFと諜報機関という形で政権内部に現れ、首相府を取り巻くようなデモはネタニヤフを確実に追い込みました。
軍部というとイケイケのイメージですが、極めて冷静、かつ、したたかです。

彼らは、いままでの四方を敵とした4次に渡る苛烈な戦争を経て勝利してきました。
多くの土地を軍事占領しながら、それを返還するという政治的妥協を知っています。
すべてが神の与えたもうた土地だなどというおとぎ話など信じていたら、ジェノサイドを経てカナンの地に辿りついたユダヤ民族はとうに滅亡していたでしょう。
したがって彼ら世俗派は、超正統派をイスラエルに必要不可欠なものとして重要視していると同時に、敬して遠ざけています。

今月、ガンツ前国防相とアイゼンコット元参謀長が戦時内閣を離脱しました。
IDFはいまや反ネタニヤフの旗幟を鮮明にしており、元来ネタニヤフとは不仲だったモサドも同調しているようです。
いままで水面下での軋轢でしたが、軍を代表するガンツが戦時内閣を脱退し、そのうえIDFスポークスマンのハガリまでもが公然とこのようなことを記者会見で言い出すようになっています。

「イスラエル国防軍のスポークスマン、ダニエル・ハガリ少将は水曜日、ハマスのテロ集団を根絶するというイスラエルの戦争目標は達成不可能だとし、ベンヤミン・ネタニヤフ首相と国防高官の間のガザでの戦争の扱いをめぐる緊張を強調しているように見えた。
「ハマスを破壊し、ハマスを消滅させるというこのビジネスは、大衆の目に砂を投げつけているだけだ」と、ハガリはチャンネル13のインタビューで語った。
「ハマスは思想であり、ハマスは政党だ。それは人々の心に根ざしており、ハマスを抹殺できると考える人は誰でも間違っている」と彼は続けた。ハガリ氏はまた、「もし政府が代替案を見つけなければ、(ハマスは)ガザ地区に残るだろう」と警告した。
これに対し、ネタニヤフ首相の事務所は声明で、安全保障内閣は「ハマスの軍事力と統治能力の破壊を戦争目標の一つと定めた」と述べた」
(タイムス・オブ・イスラエル2024年6月20日 )
イスラエル国防軍のスポークスマン、ハマスを壊滅させることはできないと発言、首相から反論「それが戦争の目標だ」 |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)

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国防軍のスポークスマン、ダニエル・ハガリ少将
タイムズ・オブ・イスラエル

このハガリのコメントは、先月、軍がハマスを一掃したガザ地区に戻る必要があるのは、テロ集団の代わりに誰がガザ地区を支配するかについて政府が決定を下さなかった結果ではないかと尋ねられたときの発言です。
ヨアブ・ガラント国防相は、ネタニヤフにガザの戦後統治計画を進めるよう促し、5月には、ハマスに代わるものを見つけられなければ、テロ集団が再編成し、飛び地の支配を再び主張することができるため、イスラエルの軍事的成果が損なわれると警告しました。

ガラント国防相はこう述べています。

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ヨアブ・ガラント国防相
|タイムズ・オブ・イスラエル

「イスラエル国防軍は、ハマスの残存大隊を解体し、人質の居場所を突き止め、テロリストを排除し、(ハマスの)密輸ルートを封鎖するために、ラファで活動している。
しかし、ハマスがガザの市民生活を支配し続ける限り、ハマスは再建と強化を行う可能性があり、イスラエル国防軍は帰還し、すでに活動している地域で戦う必要がある。ガザ地区におけるハマスの統治能力を解体しなければならない。
この目標の鍵は、軍事行動と、ガザ地区における統治の代替案の確立である。
そのような代替案がなければ、ガザにおけるハマスの支配か、ガザにおけるイスラエルの軍事支配かという、2つの消極的な選択肢しか残されていない。
優柔不断の意味は、ネガティブな選択肢の1つを選択することです。それは、我々の軍事的成果を損ない、ハマスへの圧力を弱め、人質解放の枠組みを達成する機会を妨害するだろう」
(タイムス・オブ・イスラエル2024年5月15日)
本文: 勇敢な首相、イスラエル軍の排除を要求、ハマス後のガザ地区の文民統制 |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)

さらに、ガラントは、ネタニヤフの連立政権の超正統派が提唱しているような、戦争終結後のガザにおけるイスラエルの軍事支配の考えを排除するようネタニヤフに呼びかけています。
このガラントに同調し、イスラエル国防軍参謀総長のヘルジ・ハレヴィとシン・ベト(イスラエル総保安庁)のローネン・バール、国民統一党首の元国防相のベニー・ガンツも戦時内閣を辞任しました。

 

 

 

 

2024年6月24日 (月)

ヒズボラがイスラエルに全面戦争を予告

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ガザ戦争は、レバノンをも巻き込んだものに発展しそうな勢いです。
レバノンの過激テロ組織ヒズボラがイスラエルに全面戦争を予告しました。

レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラの首長であるナスララ(Hassan Nasrallah)師が19日、宿敵イスラエルとの全面戦争に応じる用意があると表明した。
ナスララ師はテレビ演説で「我々はイスラエルとの全面戦争になった場合、シオニスト共が潜伏する拠点を含む、イスラエルの奥深くを正確に攻撃できる兵器と諜報能力を持っている」と主張した。

イスラエルとヒズボラは昨年10月にガザ紛争が始まって以来、ほぼ毎日国境沿いで攻撃を交わしている」
(KWP2024年6月20日)
ヒズボラ首長「イスラエルとの全面戦争に応じる用意ある」 | KWP News/九州と世界のニュース (kagonma-info.com)

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ナスララ党首がガリラヤ侵攻とキプロス攻撃を示唆:ヒズボラと全面戦争の危機 2024.6.20 – オリーブ山通信 (mtolive.net)

イスラエルとヒズボラはじりじりと紛争をエスカレートさせてきました。
「じりじりエスカレーション」といわれるのは、国境からの距離と武器の選択、攻撃対象が民間に及ぶか否かです。

「国境を越えた衝突の数と規模が拡大するにつれて、両陣営は最近戦争に近づいています。「明らかにエスカレートしている」とウィメンは述べ、特に国境の両側での死者数と、ヒズボラが配備している兵器の種類に関して述べた。
先週、イスラエル北部の村に対するヒズボラの攻撃でイスラエルの予備役兵が殺害され、イスラエル側で殺害された兵士の総数は19人となった。
イスラエルは今週、ヒズボラの最高司令官の一人、タリブ・サミ・アブドゥラを、レバノン南部への攻撃で殺害した。イスラエル国防軍は、司令官が数年にわたってイスラエルの民間人に対する複数の攻撃に関与したと述べた。報復として、ヒズボラは水曜日にイスラエルに向けて200発以上のロケット弾を発射し、木曜日には大規模ではあるが小規模な集中砲火を浴びせた。
イスラエルとレバノンの国境で緊張が高まる中、イスラエル国防軍は新たな攻勢の決定が近づいていると警告。
イスラエルとヒズボラは、戦闘が両側の国境から半径約4キロ(2.5マイル)に制限されていた戦争開始時よりも、互いの領土をはるかに深く攻撃している。
ヒズボラはイスラエルに向けて35キロの砲撃を行い、イスラエルは120キロ以上北のレバノンの地域を標的にした」
(CNN6月14日)
イスラエルとヒズボラの緊張が今沸騰する危険がある理由 |CNNの

ヒズボラは2023年10月のハマステロ攻撃以来ハマスに呼応して、地対空ミサイルを発射してみたり、イスラエルに5千発以上のロケット弾、ミサイル、ドローンを発射しています。
ヒズボラはイランの息がかかっているテロ団体としては中東最大最強で、指導者のナスララは3年前にはみずからの兵力を10万人といっていましたが、19日のテレビ演説では「これよりもっと多い」と主張し、さらに「周辺の同盟国や民兵が数万人規模の戦闘部隊をレバノンに派遣したいと申し出ているが、今のところ、これを受け入れるつもりはない」と述べています。
もちろん吹かしでしょうが、公安調査庁の「国際テロリズム要覧」には戦闘員4万5千人と記述されています。

ヒズボラがイスラエルに攻撃を全面化すると、IDF(イスラエル国防軍)は、いやでも北部に戦力を分散させられることになります。

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アイアンドーム
CNN

「イスラエルとヒズボラの間で全面戦争が勃発した場合、イランが支援する過激派集団が、自慢のアイアンドーム防空システムを含む北部のイスラエルの防空網を圧倒する可能性があると、3人の米国当局者がCNNに語った。
アイアンドームがヒズボラの膨大なミサイルや無人機に対して脆弱になり得るという懸念は、イスラエルがレバノンへの陸と空からの侵攻を準備していることをますます米国当局者に示唆するにつれて、イスラエルからも伝えられていると米国当局者は述べている。
イスラエル当局は、この集団に対する攻撃の可能性に備えて、ガザ南部からイスラエル北部に資源を移す計画を米国に伝えたと、米国当局者は水曜日にCNNに語った。
「少なくとも一部のアイアンドーム砲台は圧倒されるだろう」と政府高官は述べた。
イスラエルの高官は、ヒズボラが主に精密誘導兵器を使用して大規模な攻撃を行った場合、その可能性が高くなり、システムにとって防御が困難になる可能性があると述べた。ヒズボラは何年も前からイランから精密誘導弾やミサイルを備蓄しており、イスラエルは繰り返し懸念を表明してきた」
(CNN6月20日)
イスラエルのアイアンドームがヒズボラとの戦争で圧倒される可能性を懸念する米国、当局者は言う |CNNの政治

「イスラエル国防軍北部軍司令官オリ・ゴーディン少将と作戦総局長オデッド・バシウク少将は、ヒズボラとの国境を越えた戦闘が最近激化していることを受けて、火曜日にレバノンの戦闘計画を承認したと軍は述べた。
イスラエル国防軍は声明で、将軍らが査定を行い、「レバノンでの攻勢作戦計画が承認された」と述べた。
最高司令官らは「地上部隊の即応態勢を加速する」という決定も下したと軍は付け加えた」
(タイムス・オブ・イスラエル6月19日)
イスラエルの最高司令官がレバノンの攻撃的な戦闘計画を承認、軍は言う |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)

ヒズボラは、1982年にイラン・ゴッズ部隊がレバノンのシーア派をテロ組織として組織し、2000年にIDFがレバノン南部から撤退するとを決めると、レバノン南部で急速に力をつけました。
レバノンでは合法政党も有しています。
テロ組織が政党を作り、巨額のカネを会社から横領したゴーンが逃げめるほど、このレバノンという国はハチャメチャなのです。
以後、この24年の間に、ヒズボラはイスラエル北部だけでなく、テルアビブやエルサレムも含む文字通り全土に向けて、実に15万発ものロケット弾を発射してきました。しかもそれらの発射基地はハマスと同じで市民の家屋や公園や学校の周辺に設置されています。

レバノンに接する北部にはハイファ港や重要な軍需産業の工場群があり、ヒズボラがドローンで空影したとして動画を公開しています。

「イランが支援するレバノンのテロ組織ヒズボラは6月18日、イスラエル沿岸上空で撮影されたドローン映像を公開した。映像には、イスラエル最大の防衛企業の1つであるラファエル・アドバンスト・ディフェンス・システムズ(Rafael Advanced Defense Systems)が入居する地域や、イスラエル海軍基地があるハイファ港など、海岸沿いのいくつかの場所が映し出されている。ヒズボラが編集し、ヒズボラが撮影した映像は、ラファエルの所有地内の防空システムやその他の場所を示していると主張している」
ヒズボラ、ナスラッラーが新たな警告を発したイスラエルのドローン映像を公開 |FDDのロング・ウォー・ジャーナル (longwarjournal.org)

IDFは北部軍司令官にレバノンへの越境攻撃も許可したようです。
なおイスラエル・レバノンの国境は確定しておらず、暫定的にブルーラインと呼ばれています。

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L'Orient Today (lorientlejour.com)

「レバノンとイスラエルの国境のマーキングは、2023年9月13日以降停止しています。この日、レバノン、イスラエル、国連レバノン暫定軍(UNIFIL)の三者による最後の会合が、レバノン南部のナコウラで開催され、ブルーライン(境界線)沿いの13の係争点について合意に至らなかった。
しかし、10月8日以来、ヒズボラがガザ戦争に関与したことで、この問題は、レバノンとイスラエルの間の永続的な解決のために米国とフランスが主導する交渉で顕著に再浮上している。
国境画定の最終決定は、フランスがレバノン当局に提出した計画を補完する、米国特使エイモス・ホッホシュタインによる提案の第3段階を構成する」
レバノンとイスラエルの国境の現実と課題 - L'Orient Today (lorientlejour.com) 

いずれにせよ、仮に越境攻撃を実行すれば、イスラエルは二正面作戦を強いられることとなります。
悪手の極みですから、思い止まっていただきたい。

戦争は拡大しており、イスラエルはいっそう困難な立場に追い込まれています。

「ガザでの停戦だけが、レバノン-イスラエル国境での戦闘や、イエメンのフーシ派反政府勢力やヒズボラと同盟関係にあるイラク民兵による欧米やイスラエルとつながりのある標的への攻撃を止めることができる」
(AP6月20日)
ヒズボラの過激派組織がイスラエルに戦争拡大を警告 |APニュース (apnews.com)

戦況としては、ハマスは部隊として正面戦を戦う能力をほぼ喪失するていどに弱体化し、IDFはトンネルに逃げ込んだハマス戦闘員を捜索している状況です。
単独でラファだけならあと1カ月で掃討作戦は終わるでしょう。
しかしハマスは、国際世論の反イスラエルの声を追い風にして、ラファから離れていったん戦火が収まったかに見えた北部地区や、ヨルダン川西岸でのゲリラ戦に持ち込もうとしています。
そのうえにレバノンまで戦線を拡大し、ヒズボラのみならずレバノンと戦争におよぼうとしています。
これでは中国との戦争を解決できないままに対米戦争に突入してしまったかつてのわが国と一緒です。
結局、今、戦争をガザで消し止めるしか方法はないのです。

ガザですら手を焼いているのに、戦時内閣の極右はこう言います。

「ヒズボラの拠点はすべて焼き払われ、破壊されなければならない。「戦争だ!」とイスラエルの極右国家安全保障相イタマール・ベン・グヴィルは声明で述べた。」
(CNN前掲)

彼らと袂を分かてない今のネタニヤフには、エスカレーションを制御することは不可能です。

 

2024年6月23日 (日)

日曜写真館 あじさいに ひとりびとりの思いの丈

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あじさいに 絞り下ろしの 水絵具 伊丹三樹彦

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あぢさいや花と露との重みにて 正岡子規

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あじさいに降り 有彩の 雨の糸 伊丹三樹彦

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けふや切らんあすや紫陽花何の色 正岡子規

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あぢさいや花と露との重みにて 正岡子規

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あぢさいや一かたまりの露の音 正岡子規 

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七変化にてとどまらぬ 花の色 伊丹三樹彦

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いくらでも水気ほしげに紫陽花は 細見綾子 

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夕焼に 色譲りつつ あじさい園 伊丹三樹彦

 

2024年6月22日 (土)

正恩のイルソン離れは自信か、自滅か

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先月、日本政府はモンゴルで北朝鮮と面談していたようです。
報じたのは韓国中央日報です。

「北朝鮮と日本が最近、モンゴルで接触したことが分かった。北朝鮮が公開的には日本側と「すべての接触を拒否する」と公言しながらも秘密裏に会ったのは経済的・外交的な突破口を模索しようとする試みに読まれる。
12日、複数の情報筋によると、北朝鮮と日本の関係者らは先月、モンゴルで会った。関連事情に詳しい消息筋は「両国が先月中旬、モンゴルのウランバートル近くで会ったと承知している」とし「北朝鮮では偵察総局・外貨稼ぎ関係者など3人が参加し、日本側からは有力な家門出身の政治家が代表団の一員として出てきた」と明らかにした。 」
(中央日報2024年6月13日)
朝日、モンゴルで秘密接触…「金正恩氏の直接指揮を受ける情報機関関係者が出席」(1) | Joongang Ilbo | 中央日報 (joins.com)

面白いのは、与正が対話を拒否していた後に会っていることです。

「今回の朝日接触が注目されるのは、北朝鮮がわずか3カ月前に公開的に日本を相手にしないと明らかにしたためだ。金与正(キム・ヨジョン)労働党副部長は3月25日、岸田文雄首相が「できるだけ早い時期に」首脳会談を提案してきたと紹介し、興味を示しているようだったが、翌日すぐに「日本は歴史を変える勇気がない。日本とのいかなる接触・交渉にも背を向け拒否する」と明らかにした。3日後には崔善姫(チェ・ソンヒ)外相がまた「朝日対話は我々の関心事ではない」と明らかにした」
(中央日報前掲)

このモンゴル会談で北朝鮮が出してきた代表は、正恩直轄の工作機関である偵察総局と出稼ぎ担当でした。

「今回のモンゴル接触に参加した両国代表団の面々も目を引く。北朝鮮では、外務省ではなく最高司令官(金正恩国務委員長)の直接指揮を受ける諜報機関である偵察総局の関係者が出席者リストに含まれていた。
金委員長が直接関わっているという意味とみられるが、専門家の間では北朝鮮が偵察総局関係者を派遣したのは日本人拉致被害者問題を議題化しないという意志と捉えるべきだという見方もある。実際、偵察総局は対南・海外工作を担当してきた部署で、日本人拉致被害者問題とも無関係ではない」
(中央日報前掲)

日本相手に出稼ぎ担当が出てくるというのは奇妙ですが、身元をロンダリングするためではないかと見られています。
あるいは、北にとっての大きな財源である朝鮮総連の権益と関係あるのかもしれません。
ちなみにこういう時期に蓮舫氏は朝鮮学校無償化を進めるとのことで、まことに彼女らしく時宜にかなったイカレポンチの公約です。

蓮舫氏はともかくとして、岸田氏が訪朝に色気を出しているのは事実なようですから、お止めになったほうがよい。
たぶん岸田氏は「得意の外交」で一気に人気浮揚なんて近視眼的な思惑でしょうが、アンタもうそんな状況でしょうに、北朝鮮のほうも大きな権力の地殻変動期に当たっています。
そんな時期に北となにか決めたとしても、アチラさんが履行されるかどうかまったく予想もつきません。
こちらもこちらで岸田氏が9月以降首相である可能性は、小惑星の地球衝突くらいの確率しかありませんから、結局、カネだけふんだくられて国交正常化という禍根を残してオシマイになりかねないでしょう。
双方共に権力基盤が揺らいでいる時に、なにか決定的な外交をしてはいけません。
相手の動向をみきわめてからでも遅くはありません。いずれにしても今ではありません。

さてこの時期、優れたコリアウォッチャーの李相哲氏が、北の地殻変動について興味深いことを述べています。
李氏は、正恩がジィ様にして初代の独裁者であるキン・イルソンの路線から逸脱し始めているのではないかと見ています。

「この頃の北朝鮮の金正恩総書記がやっていることや打ち出す政策はどう考えてもおかしい。今年1月に開かれた最高人民会議での施政演説で「わが民族史から『統一』『和解』『同族』という概念自体を完全に除去する」とまくし立て、韓国への攻勢を強めている。ミサイル発射は常態化し、最近も韓国にゴミ付き風船を大量に送り付けるなど挑発を繰り返す。
また、まねしていた祖父の金日成に対する態度を一変させた。政権を受け継いだ直後には遺体安置所を頻繁に参拝したが、今年は行っていない。ただの怠慢か、意図的なのかは不明だが、先代の陰から脱して新時代の到来を演出するつもりなのかもしれない」
(李相哲2024年6月19日)
正論>金正恩政権の崩壊視野に対応策を  龍谷大学教授・李相哲 - 産経ニュース (sankei.com)

いままでなにかといえば「建国の父」であるイルソンの御威光を担ぐことで、自らを「白頭山の血脈」と仰々しく神格化してきた金一族が、とうとうイルソン離れを開始したことをどう考えるべきでしょうか。
李氏はこう続けています。

「それを自信の表れとみるべきか、危機を乗り越える苦肉の策か評価が分かれようが、筆者は、正恩体制は崩壊過程にあり、崩壊を食い止めようともがいているのではないかとみる」
(李前掲)

外交においても、経済、軍事においても、イルソン時代の伝統的やり方が通用しなくなったために、正恩はこの無理偏にゲンコツというやり方を繰り返すことができなくなりつつあるようです。
おもえば12年前に正恩が政権を継いだ時から、すでに正恩の権威は揺らいでいました。

ドイツ大使として北朝鮮に2度赴任したトマス・シェーファー元大使は『金正日から金正恩まで』の中でこう述べています。

「シェーファー氏が、金正恩氏の不安定な立場を確信した根拠として挙げたのが、「私の記憶に残った会話」だ。金正恩氏が2011年12月に権力を継承してから間もない頃、「朝鮮語を使う相手」と交わした会話だ。シェーファー氏は「相手はロイヤルファミリーについて語るとき、求められていた尊敬語を使わなかった」と語る。「金正恩は、(権力の継承によって)自動的にエリートからの尊敬と服従を得ることができなかった」と指摘する。
シェーファー氏の指摘を裏付ける別の情報もある。日朝関係筋によれば、同じ頃、日本政府も北朝鮮軍の将兵が交わした会話についての情報を入手していた。内容は、新しい指導者である正恩氏を馬鹿呼ばわりする内容だった。将兵らは、正恩氏の軍に対する統率力を疑い、未来を悲観していたという」
(牧野愛博2021年6月4日)
「金正恩氏は絶対的独裁者でない」北朝鮮で2度大使を務めた外交官が見た、権力の構図:朝日新聞GLOBE+ (asahi.com)

朝鮮語は極端に上下のけじめにうるさい言語で、ひとつ歳が違っただけで尊敬語を使わねばなりません。
それがこの独裁国家で、指導者を尊敬語なしで語るということは、3代目をただの親から権力を引き継いだだけのボンボン扱いしていたということです。

「金正恩氏は労働党第一書記に就任した直後の2012年4月の演説で「二度と人民が(飢えで)ベルトを締めるようなことはさせない」と宣言、経済の立て直しに取り組む姿勢を見せた。経済開発特区を20カ所つくると発表、海岸観光リゾート地区開発に着手したが、いつの間にか特区の話は消え、開発事業も頓挫した」
(李前掲)

正恩は、開放改革派と強硬派に分裂していた時期に権力を引き継いでいます。
開放改革派とは要するに中国派のことで、そのボスは正恩の叔父の張成沢(チャンソンタク)でした。
張は中国流の開放経済をめざし、資源を売りさばいて暴利を貪る一方、中国共産党とベッタリの党運営をしようとしていたようです。
張にとって正恩など甥の小僧っ子にすぎず、意のままに操れると思ったようです。
もし仮に張が正恩のパペット化に成功していたなら、いまごろ東アジアの辺境にベトナムやカンボジアのような中国型経済の国がそれなりに栄えていたかもしれません。
この時期、一時的に平壌はバブル景気で沸き、党官僚のどら息子がスポーツカーを乗り回したそうです。

ところがどっこい、正恩は2013年12月に張のクーデターを事前に察知し、張を残虐な方法で処刑します。
党内闘争こそ主戦場、逆らった者は全部殺せ、というのが金一族の家訓ですから、外から金一族の婿になった張は甘かった。

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正恩体制に入ってから粛清されたのは240人以上と言われています。
正恩の兄の正男もまた長年にわたり、北朝鮮の世襲体制に疑問を呈しており、張と共に中国型開放改革経済の導入を提唱していたために、2017年2月にクアラルンプール国際空港でVXガスで暗殺されます。

正恩にとって体制護持の障害になる者は、公衆の面前で見せしめ的に残虐に殺害する公開処刑スタイルを取ります。
ISの公開石打ち刑と発想は一緒で、 法治国家ウンヌンというより、数千年前の古代国家と思ったほうがいいでしょう。
戦車とか戦闘機を持って洋服を着ているから見た目でだまされますが、やっていること自体は数千年前の古代国家そのままです。

張や正男の処刑と開放改革派の粛清によって、短かった開放経済の季節は終わり、正恩肝いりの馬息嶺スキー場はわずかにロシア人観光客が訪れただけで閑古鳥が鳴く状態となり、総合病院も建設途中で放棄されたままです。
そしてとうとう昨年の経済成長はマイナス6・2%を記録しました。

一方、軍事路線は人民軍がほとんど燃料不足と栄養不良で動かなくなり、備蓄していた砲弾やミサイルの類も劣化しきっていたことが、今回のロシアへの砲弾提供でバレました。
頼みの弾道ミサイルも、この間の軍事偵察衛星の度重なる失敗でわかるように壁にぶち当たっています。
そこに降って湧いたのが、ウクライナ戦争によるロシアの砲弾絶対ピンチという事態だったわけです。

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朝日  国でひとりだけ肥満している独裁者

李氏は、正恩体制の崩壊を三つの側面で見ています。

一つ目は配給制度です。

「配給制度。北朝鮮住民が体制に臣従し、首領を崇(あが)める理由は根本においては配給制度のおかげと言ってよい。それが崩壊した。
韓国統一部が実施した正恩政権誕生後に脱北した約6千人の調査によれば、7割が国から配給をもらった経験がない。
人民軍に対しても食糧配給を減らし、兵士の半数近くが栄養失調に陥っているとの国連報告もある。現在、軍の中核をなす20、30代の若者は配給制度などの恩恵を受けず、労働党や正恩氏と連帯感はなく体制に対し忠誠心を持たないと言われる」
(李前掲)

そして二つ目は洗脳教育。

「北朝鮮当局は住民を外部の世界から孤立させるため鉄の壁を作り、情報を遮断してきた。金一族の独裁が70年以上持ちこたえた理由は、徹底した情報統制にあったと言ってよい。
当局は、保育園の頃から住民を各種組織に従属させ、首領を崇め、首領のために行動するように強要。学校、職場、家庭でも首領唯一思想(主体思想)という統治理念を注入できるシステムをつくり、住民を教化し、洗脳してきた。それが崩壊中だ。
携帯電話をはじめ便利なデジタル機器の普及で住民の多くが外部情報に接する手段を手にしたからだ。前出調査では8割が外部から入ってきた映像を見たことがあると答えた」
(李前掲)

そして残ったのが、三つめの恐怖政治です。

「最近では恐怖統治もうまく機能しないという実態が浮き彫りになった。昨年夏、水害対策を怠り、穀倉地帯の干拓地で水田の冠水を招き、食糧生産に大きな支障を来したとして金徳訓首相に罵詈(ばり)雑言を浴びせた。それを労働新聞に掲載させておきながら、首相を粛清しなかった。正恩氏が「太っ腹政治」をやるようになったという評価もあるが、北朝鮮のような独裁体制では、間違いなく権威失墜につながるだろう」
(李前掲)

今回ロシアと軍事協力協定を結び、砲弾やミサイル提供の代償として食糧や燃料を得たとしても、すでに体制を支える3本の柱は折れてしまっているのです。

 

2024年6月21日 (金)

プーが北朝鮮に行ったわけ

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プーチンがわざわざ北朝鮮という辺境に出向いてまで「包括的戦略的パートナーシップ条約」とやらに署名しました。
これでプー・キム会談は3回目だったでしょうか。
初回はトランプとの直接会談に失敗した正恩にプーはすげないそぶり、2回目は去年の9月、ウクライナでの砲弾不足からわざわざ極東アムール州の「ボストーチヌイ宇宙基地」まで呼んで会談しています。
さぁキム坊や、大砲の弾くれたら、宇宙ロケット技術をちよっぴりお分けしてもいいんだぜというわけです。
それにしても、いままで旧式の武器を下げ渡してやるていどに思っていた「辺境の最貧国」が、ウクライナ戦争で突如として盟友に変じたのですからわかりやすいことではあります。

それほどまでにロシアの砲弾不足は深刻でした。

「(ウクライナ大統領府顧問 )ポドリャク氏によると、ロシア軍の砲弾使用数はピーク時で1日当たり3万5000~5万発だったが、侵攻が長引くにつれ同3000~5000発に減少。最近、再び同8000~1万2000発に増加した。(略)
ポドリャク氏は、北朝鮮がロシアに砲弾100万発以上や地雷、弾道ミサイルを提供したとし、「北朝鮮の武器供与はロシアを大いに助けている」との見方を示した。その上で「ロシアと北朝鮮、イランによるテロ国家連合は、明らかに武器や軍事技術を融通し合うという合意を結んでいる」と指摘。北朝鮮に武器提供を求めたのは、ロシアの軍需産業が逼迫している証拠だとも語った 」
(時事2024年2月1日)
砲弾数、ロシアの4分の1 ウクライナ高官「深刻な不足」:時事ドットコム (jiji.com)

最近、北朝鮮の砲弾供与を受けて(もちろん有償ですが)、ロシアはかつての勢いを取り戻しています。
逆にウクライナは、共和党のウクライナ支援のサボタージュのために支援が激減し、再び攻勢を招いています。

といっても北の砲弾やミサイルの品質は劣悪で、多くの事故を起こしてロシア兵を恐怖に陥れているようです。

「ウクライナ軍当局によれば、北朝鮮がロシアに提供した砲弾は不発や砲身内で爆発する不良品が多く、弾道ミサイルも半分以上は発射後に目標に向かって飛ばず、空中で失踪した」
(李相哲2024年6月19日)
金正恩政権の崩壊視野に対応策を  龍谷大学教授・李相哲 - 産経ニュース (sankei.com)

それはさておき、もうこの頃からプーは正恩のペースにはまりかけており、今回も朝高露低の力関係の中での3回目会談です。
今回、プーはわざわざ北朝鮮にまで出向いています。

「ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は19日午前3時(日本時間同)ごろ、北朝鮮の首都・平壌に到着した。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記が出迎えた。両首脳は同日午後、首脳会談に臨んだ。ロシアの通信社は、両首脳が包括的戦略的パートナーシップ条約に署名したと報じた。
首脳会談でプーチン氏は、北朝鮮の「ウクライナを含むロシアの政策に対する一貫して揺るぎない支持」への感謝を表明した。
プーチン氏はまた、今後の両国関係の基礎となる新たな「基本文書」を発表した。これに先立ち、ロシア政府関係者は、包括的な戦略的パートナーシップが結ばれる可能性を示唆していた。
その後、ロシアのRIA通信は、両首脳が包括的戦略的パートナーシップ条約に署名したと報じた」
(BBC6月19日)
プーチン大統領、北朝鮮で金総書記と会談 戦略条約に署名との報道 - BBCニュース


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BBC

ただし、プーはここで格下の若造にニコニコと揉み手をしたら恥だと思ったのか、来る時間も深夜2時、フツーそんな時間にはよほどの緊急事態でなければ首脳級の訪問はありえません。
そのうえ得意の遅刻を演出して、正恩を平壤空港で待たせてマウントをとっていますから、せこいというか芸が細かい。
空港ではポツネンと正恩が待たされておりました(苦笑)。

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BBC

お前、宮本武蔵かつうの。
これが国内の人物なら即刻処刑でしょうな。


ちなみになぜか正恩は、こういう場合に必ず引き連れて来る、ナンバー2の金与正(キム・ヨジョン)党副部長や崔竜海(チェ・リョンヘ)最高人民会議常任委員長、崔善姫(チェ・ソニ)外相などという取り巻きは随行させず、寒々とした深夜の空港に儀仗兵と正恩だけという異様な光景となったようです。

ところでプーが訪朝した理由は、ひとつは言うまでもなくロシアで深刻化している砲弾供給の恒常化です。
いままでのスポット買いから恒常的に北を砲弾やミサイルを仕入れる軍需工場化にあるでしょう。

「専門家らはプーチン氏の訪朝について、ウクライナでの戦争を遂行するうえでロシアが武器を必要としていることが主な理由とみている。北朝鮮は宇宙技術や食料、燃料などの支援を必要としており、首脳会談で話し合われる可能性もある」
(BBC前掲)

いままでの提携関係を条約化して固定化することです。

「ロシアのメディアは、プーチン氏と金氏が安全保障の問題を含むパートナーシップ条約に署名し、共同声明を発表する可能性があると報じている。北朝鮮の国営メディアは今回のプーチン氏訪問を、両首脳の関係が「無敵で永続する」ことを証明するものだと伝えている」
(BBC前掲)

一方北としては、いうまでもなくいま熱中している軍事偵察衛星などのミサイル技術などの先端技術をロシアから導入することです。
砲弾販売もいい商売で、一般的な155ミリ砲弾は、ウクライナ戦争に続いてイスラエルとハマス間の戦争まで起きたことで暴騰しており、1年間で4倍に跳ね上がっています。
1発2100ドル(約31.5万円)が8400ドル(約126万円)が相場だそうです。

これをロシアに100万発売ったというんですから、正恩は笑いが止まらない。
もはや北の最大の収入源となってしまいました。

そして三つ目は、近々やるだろう核実験の水面下での合意とりつけです。
中国は北京に核ミサイルを向けられてはたまらないので難色を示しているようですから、なおさらロシアの承認を得たいところです。

いずれにしてもこれで北の軍事技術はいっそう強化されたことになり、わが国の脅威は増えたことになります。

 

 

 

2024年6月20日 (木)

イスラエル戦時内閣解散に追い込まれる

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ネタニヤフの戦時内閣が解散しました。

「イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は16日、パレスチナ自治区ガザ地区でのイスラム武装組織ハマスとの戦闘を指揮するために昨年10月に発足させた戦時内閣を解散した。中道派のベニー・ガンツ前国防相とその盟友のガディ・アイゼンコット元参謀総長が、6人からなる戦時内閣を辞任したことを受けてのもの。
政府報道官は17日、ガザでのハマスとの戦闘については既存の安全保障内閣と、それより大規模な内閣全体で決定していくと説明した。
ガンツ前国防相が9日に、ガザにおける戦争戦略の欠如を理由に戦時閣僚ポストを辞任して以降、政権閣僚を務める複数の極右政党幹部が後任として戦時内閣入りすることを求めていた。
戦時内閣を解散することでネタニヤフ首相は、連立政権に参加する極右政党や同盟国とのやっかいな状況を避けることになる」
(BBC6月18日)
イスラエル首相、戦時内閣を解散 主要閣僚辞任で「必要性なくなった」と - BBCニュース

解散のきっかけは、ガンツ前国防相とアイゼンコット元参謀長が戦時内閣を離脱したためです。
両氏ともにIDF(イスラエル国防軍)のトップを努めた経験のある退役将軍で、2人は昨年10月の開戦から数日後、ネタニヤフ氏率いる右派連合との挙国一致政府に加わっていました。

IDFのトップだったふたりが離脱に加わっているのは、軍部がネタニヤフに対して深い不信感を持っているからだと推察できます。
しかもネタニヤフはモサドとも不仲であり、モサドが出していた戦争によらずミュンヘン五輪テロの報復のように暗殺で首謀者を確実に罰していくという進言も退けたようです。
つまりネタニヤフは、イスラエルの2本の柱であるIDFとモサドを敵に回したのです。

ガンツが辞任発表をした直後、極右政党を率いるイタマル・ベン=グヴィル国家安全保障相が、ならば代わりにオレを戦時内閣に入れろと要求したようですが、ネタニヤフに一蹴されて戦時内閣自体を解散する道を選んだようです。
そもそもここで戦時内閣を解散させた意味は、日を追って強まる西側陣営からの非難の声を和らげるためですから、こんな極右をいれてしまったら元も子もなくなります。

これを好感してか、米国は国際社会のイスラエル非難を受けてイスラエルに対する武器援助を控えていた制限を解除すると述べています。

[エルサレム 18日 ロイター] - イスラエルのネタニヤフ首相は18日、先週中東を歴訪したブリンケン米国務長官と会談した際、イスラエルに対する武器供給制限の解除に取り組むと確約したと述べた。(略)
バイデン米大統領は先月、イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ南部のラファに本格侵攻すれば、イスラエルに対する武器供給を停止すると警告している」
(ロイター6月19日)
米国務長官、対イスラエル武器供給制限の解除を確約=ネタニヤフ氏(ロイター) - Yahoo!ニュース

ガンツが戦時内閣に離脱を決めたのは、ネタニヤフが国内の極右やユダヤ教保守派勢力からの圧力に弱く、交渉においても決断すべき時に決断できずにズルズルと引き延ばすという悪手に陥り、それがまた西側を怒らせて国際的孤立を呼び込んでしまったことを批判したためです。
ガンツとアイゼンコットは、9月に総選挙をして新たな政府に交代すべきだと主張しています。

またガンツは、イスラエルはガザ地区から軍を撤退させ、そこに拘束されている人質の解放を確保するために必要な限り、ハマスとの戦争をやめることに同意すべきだと主張しています。


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ベニー・ガンツ
タイムス・オブ・イスラエル
「イスラエルは、ガザ地区から軍を撤退させ、そこに拘束されている人質の解放を確保するために必要な限り、ハマスとの戦争をやめることに同意すべきだ、と国民統一党のベニー・ガンツ委員長は木曜日に述べた。(略)
「南部の治安状況は既に決定的な状態に達しており、イスラエル国防軍が作戦を望み、南部で活動できない場所はない」とガンツは述べた。「南部で我々が負っているのは、人質を返還するという道徳的、至高の義務だ」

「誰も混乱させてはならない、3個大隊に対する完全な勝利は、イスラエル国家の本当の問題ではない」と彼は言い、イスラエルがガザ地区で「完全な勝利」を達成するというネタニヤフの繰り返しの主張を退けた」
タイムス・オブ・イスラエル6月14日)
ガンツは人質の解放がガザでの戦闘よりも優先されるべきだと語る |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)

それにしてもわずか半年で、いかにハマスが卑劣な人間の楯を使ったとしても、また3万7千人という数字がハマスのフロント組織であるガザ保健省の誇大な発表だとしても、あまりにも多すぎた犠牲でした。
おそらく実際の犠牲者はこのガザ保健省の発表はだいぶ割り引かねばならない数字で、しかもそのうちの半分はハマスの戦闘員のはずです。
イスラエルは1万5千人のテロリストを殺したと発表していますが、下に引用したイスラエル紙も書いているように「テロリストと民間人の区別がつかない」のが実際です。
これが非対称戦争の特徴です。

「ガザでの戦争は、10月7日、ハマスによるイスラエルに対する前代未聞の攻撃で勃発し、テロリストが約1,200人(大半は民間人)を殺害し、251人を人質に取った。これに対し、イスラエルはハマスを解体し、人質を本国に連れ帰るという目標を掲げて軍事攻撃を開始した。
ハマスが運営するガザ保健省は、ガザ地区でこれまでに3万7000人以上が戦闘で殺害されたか、死亡したと推定されていると述べている。テロリストと民間人の区別もつかないが、この犠牲者数には、イスラエルが戦闘で殺害したと主張する約15,000人のテロ工作員が含まれている。イスラエルはまた、10月7日にイスラエル国内で約1,000人のテロリストを殺害したと発表している」
(タイムス・オブ・イスラエル6月17日)
ネタニヤフ、ガンツ政権離脱後、正式に戦時内閣を解散 |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)

なお、ガンツ氏と、エイセンコットの2人が離脱しても、ネタニヤフの連立政権は、国会議席120議席中64議席と、まだ過半数を維持できています。
しかし、テルアビブは連日平和と人質解放を叫ぶデモで揺れ、戦時内閣は崩壊、もうネタニヤフに延命の道はありません。

 

 

2024年6月19日 (水)

サミット共同声明、ロシアの凍結資産から支援金を出す

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県議選のために出たり引っ込んだりしていた記事です。時を逸するのでアップしておきます。とほほ。

あまり注目されていませんが、首相はイタリアのサミットに出張中でした。
外交では岸田氏はいい仕事をしているので、強力な首相の部下として外務大臣だけやっていれば有能だったのかもしれません。
是々非々で見て上げましょう。

このサミットでは、ウクライナ支援について大きな一歩がありました。


「主要7カ国(G7)首脳会議が13日、イタリア南部プーリア州で始まった。G7は、凍結済みのロシア資産を使って、ロシア軍の侵攻と戦うウクライナを支援するため、500億ドル(約7兆8500億円)の融資を行うことで合意した。
アメリカのジョー・バイデン大統領はこの合意について、「私たちは一歩も引かない」ことを改めてロシアに示すものだと述べた。
一方、ロシアは、「極めて痛みが大きい」報復措置を取ると脅している。
ウクライナに資金が届くのは年末になる見通し。この融資は、ウクライナの戦争遂行と経済を支援するための長期策とされる。
首脳会議ではまた、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領とバイデン氏が、10年間にわたる二国間の安全保障協定に署名した。
この協定は、アメリカがウクライナに軍事支援と訓練を提供することを想定している。アメリカが軍隊の派遣を約束するものではない。
ウクライナ政府は、この協定締結を「歴史的」なものだと歓迎した」
(BBC6月16日)
G7、ロシア凍結資産使ったウクライナ支援で合意 500億ドル融資へ - BBCニュース

日本も、日ウ防衛支援協定に岸田首相とゼレンスキー大統領が署名しました。

「G7サミット出席のためイタリアを訪問中の岸田総理は、ウクライナのゼレンスキー大統領と首脳会談を行いました。
会談に先立ち2国間文書の署名が行われ、日本として、▼「憲法上及び法律上の要件と規則」に従って可能な範囲で防衛支援を行うことや、▼地雷除去・がれき処理を含む復旧・復興支援に取り組むことなどで合意しました。
首脳会談は30分弱行われ、冒頭、岸田総理は「日本は大西洋国家以外でウクライナとの2国間文書を交わした国であり、ウクライナの問題が欧州だけでなく国際社会全体の問題であることを改めて示すものだ」「G7を初めとする同志国と連携し、ウクライナを強力に支援していく」と強調しました」
(TBSDIG6月14日)
【速報】岸田総理がウクライナのゼレンスキー大統領と会談 防衛や復旧・復興支援含む2国間文書に署名 - ライブドアニュース (livedoor.com)

具体的には、地雷処理、瓦礫処理が上げられていますが、すでに自衛隊のトラック、高機動車などが100台ウクライナ現地に到着しています。

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XユーザーのПосольство Японії в Україніさん

車両には白塗りの73式小型トラック(パジェロの自衛隊向け車両)が写っているのがご愛嬌です。
おそらく全国の部隊から抽出した時に、警務隊のが入っていたのでしょう。

ところで、共同宣言でもウクライナ支援が冒頭から登場します。
「頑張って応援していきます」的抽象的文言ではなく、具体的にやり方まで書き込んでいます。

「ウクライナの自由と復興のための戦いを、必要な限り支援するために連帯する。ゼレンスキー大統領のご臨席の下、固定化されたロシアのソブリン資産の臨時歳入を活用して約500億ドルを利用可能にすることを決定し、プーチン大統領に紛れもないシグナルを送りました。我々は、ロシアの軍産複合体を武装解除し、資金を削減するための共同の努力を強化している」
(イタリアのプーリアG7サミットコミュニケ共同声明)

つまり、いまロシア制裁で凍結している3250億ドル(51兆円)規模のロシア資産をから出てる年間30億ドル(4722億円)をウクライナ支援に当てようというものです。
押さえているロシア資産の形態は、現金預金と有価証券、金地金です。

「G7は、ロシアが2022年にウクライナに全面侵攻したのを受け、欧州連合(EU)とともに約3250億ドル(約51兆円)相当のロシア資産を凍結している。この資産は年間約30億ドルの利子を生んでいる。
G7の計画では、この30億ドルを、国際市場で資金調達するウクライナへの融資500億ドルの年利の支払いに充てる」
(BBC6月14日)
G7、ロシア凍結資産使ったウクライナ支援で合意 500億ドル融資へ - BBCニュース

ここで登場する3250億ドルの凍結資産にはSDRなどの引出権も含まれているため、実際にはそれよりも少ないと考えられますが、ロシアの公的企業の在外資産なども同時に凍結されているので、結局これに近い額が西側の手元にあります。
これらをぜんぶまとめてウクライナ支援にしてしまう、というロシアがみずからのカネで自分を殴られるという冗談のような構図が実現したわけです。

 

※写真 私が追いかけ回しているアオサギさんです。なかなか撮らしてもらえません。

 

2024年6月18日 (火)

かくして、デニー氏を乗せたオール沖縄の神輿は左にコケた

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完勝です。
よくメディアは「自民逆風」と囃し立てていましたが、ではこの沖縄の自民完勝をどう評価するんでしょうかね。
見事にデニー知事が完敗しました。

「沖縄県議選(定数48)は16日に投開票され、玉城デニー知事に批判的な自民、公明両党などの反知事派が28議席を獲得し、過半数を制した。自公が多数派となるのは2008年の保守県政以来16年ぶり。安全保障政策を巡って政府と対立する玉城氏は今後、厳しい県政運営を迫られそうだ。
玉城氏の2期目の「中間評価」と位置づけられた県議選には13選挙区に75人が立候補した。反知事派のうち、改選前に18議席だった自民は公認した20人全員が、2議席だった公明は4人全員がそれぞれ当選した。知事派では、7議席だった共産党が4議席に減らすなど大きく後退した。自民は約2年後の知事選に向けて攻勢を強める構えだ」
(読売6月17日)
沖縄県議選、自民と公明は全員当選…反知事派が過半数でも玉城知事「移設反対は揺るぎない」(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース

自民は立候補した20人が全員当選しました。今の全国情勢に真っ向から反するような快挙です。
メディアの皆さん、これをどう考えるんですかね。

メディアは辺野古「新基地」と南西諸島の「ミサイル要塞」化(なんつうネーミング)が焦点なんて言っていましたが、いまでも同じことが言えますかね。

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いや長かった、これで沖縄保守が勢いを取り戻したとまでは楽観しませんが、2年後の知事選が射程に入ってきたといってもよいでしょう。

政党別の選挙前議席数と獲得議席を比較してみます。

●2024年6月沖縄県議会選挙  選挙前議席 選挙結果
・自民              19    19
・公明               4     4
・維新               3     2
・共産党              7     4
・立憲               5     2
・社大               3     3
・社民               5     2
・無所属             25    10

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沖縄県議選、不支持派勝利で知事、民意の後ろ盾失う 生活に直結の課題なおざり - 産経ニュース (sankei.com)

自民党と無所属はそれぞれ、無投票の石垣島でも1人ずつ立候補しています。
無所属で当選した11人のうちの9人が「知事派」だそうですが、今回は「無所属」立候補が減り、キチンと政党を名乗っています。
けっこうなことで、都知事選でも無党派層に媚びて駆け込み的に離党するなんてヒトがいましたっけね。

とまれ自民は議席を増やし、公明は堅調、維新はやや減ですが、壊滅的といってよい結果になったのはなんといっても7人立候補させて4名という悲惨な結果の共産党でしょう。

共産党はこう敗北を総括しています。

「しかし県政転覆を狙う自民は、徹底した自民党隠しで裏金問題への批判をかわす一方、本土企業が県内企業締め付けを強めるなど異常なテコ入れで企業・団体ぐるみ選挙を展開。自公維で“共産党落とし”のシフトも図りました」
(しんぶん赤旗6月17日)
沖縄県議選 共産党4人当選 (jcp.or.jp) 

う~ん、これでは層塚にならんよ。共産党は長年県政与党で、しかも今の自民党の「逆風」のさなかの選挙で連敗街道まっしぐらでしたから楽勝と考えていたはずです。
だから引かれ者の小唄でよろしく「団体ぐるみ」で負けたなんて言い訳しますが、ナニ言ってんだか。
高い組合費を徴集して政治活動ばかりしている官公労を、選挙マシーンとして手足のように動かしているのはどこの誰でしたっけね。

今回、投票率が下がった、いままでで最低だった、ということを琉新は書いています。
まるでこんな少ない投票率では「民意」はわからない、と言いたげです。

「沖縄県選挙管理委員会によると、沖縄県議選の投票率は45・26%で、過去最低となった。これまでの最低だった前回2020年の46・96%を1・2ポイント下回った」
(琉球新6月16日)
沖縄県議選、投票率は45.26% 過去最低 前回を1.7ポイント下回る - 琉球新報デジタル (ryukyushimpo.jp)

おいおい、違うでしょう。投票率が低く出れば、組織票がある共産公明が有利なのは知れたことです。
逆風があり、かつ投票率が低かったという二重の追い風がありながら、デニー知事を支える共産、社民、社大、立憲などの4派で作る自称「オール沖縄」が惨敗したというのが実体です。
今回、オール沖縄の4政党の獲得議席数は48議席中わずか11議席、これで彼らはたった23%の陣営に過ぎなくなりました。
これでまだ「オール沖縄」という誇大表示を続けるなら図々しいにもほどがあります。

この「オール沖縄」というグループ名は、自民県連の大幹部だった翁長氏が、寝返って共産党陣営に飛び込んだ時から始まりました。
いわば山城博治御大が自民党に鞍替えしたようなもんです。
当時、自民県連は、鳩山氏が巻き起こした県外移設の熱波をモロにくらって現実主義路線から脱落し、自民党本部と対立していました。
しかし冷静に考えるとそんなことは不可能なことは百もわかっているために、選挙で当選するやいなや県外移設の公約を翻して辺野古容認に逆戻りしました。
あまりの見苦しさに県民の信頼を失い、衆議院選挙、参議院選挙、自民党はボロ負けです。
こういう中で、県連トップの翁長氏が、移設阻止を金科玉条としてあろうことか共産党と手を組んだのです。
さらに沖縄財界の一部が合流し、かくて保革の垣根を超えた共闘ということで「オール沖縄」という晴れがましい看板を出したのでした。

Photo

出典不明

翁長氏が言う、「県政の柱に新基地反対を据える」ということは、言い換えれば基地移設反対以外何もしないということです。
つまり経済振興策も展望もなく、県民生活のケアもしない、ひたすら移設反対だけしているというのが翁長氏2期でした。

翁長氏は元来経済が分かる人ではなく、利権とポストの配分が「政治」だと考えているオールドタイプの政治家でしたから、移設反対で粘れば必ず本土政府は予算を増額してくるという読みがあったはずです。
実際、翁長氏の頃には新香予算は減額されませんでしたが、デニー氏に替わって本土政府は冷やかに対応するようになります。
本土政府は翁長氏が元保守政治家であることへの信頼があって(間違いでしたが)、なんとか妥協の線を探りたかったのです。

仲井真知事で知事公室長をつとめた吉川由紀枝氏は、当時、こう述べています。

「翁長知事は2014年11月の県知事選で圧勝したが、その基盤は盤石というわけではない。『オール沖縄』を標榜して当選しただけに、知事自身の可動範囲は、全基地閉鎖から基地容認まで様々ある沖縄の意見の最小公約数に狭められている。
即ち、「辺野古反対」「オスプレイ反対」くらいしか、発言できる範囲がないのだ。特に現実的な妥協ラインはどこか?という話になると、「オール沖縄」では一切の合意はない。この可動範囲をちょっとでも越えれば、知事の支持基盤は分裂する
とどのつまり、「沖縄県のいうことをすべて呑むか」「それとも、呑まないか」という、オール・オア・ナッシング以外の交渉ができないということだ。これでは、日米政府とのまともな交渉相手たりえない」
(太字引用者)

吉川氏の炯眼の予言どおり共産党と組んでしまった翁長氏は、かつての現実政治家から仮面のように同じことを同じ言葉で繰り返し、同じ戦術をひたすら繰り返し続ける人物に変わっていきます。
私も当時、「翁長氏を乗せた「オール沖縄」の神輿は左に傾き、そして転倒する」と書きましたが、そのとおりになりました。

翁長氏はかつてのいい悪いは別にして、基地を条件闘争の場にして、本土政府からなにかしらの譲歩を引き出すという伝統的手法を止めてしまい、極端に政治選択の幅の狭い隘路に自ら入っていったのです。
その瞬間、現実政治家としての翁長氏は死んだのです。
そして「いかなる新基地反対」から、やがて「全基地撤去」に少しずつ軸足を変化させていきます。 

Photohttp://kunimasa28.ti-da.net/e7251862.html 読谷村議クニヨシ氏のサイトより引用

この「全基地撤去」というスローガンは、「ただ移転先だけが問題じゃない。沖縄の米軍基地総体を許さない。米軍は出て行け」という主張です。 
これは日米同盟を潰せということと同義です。 
移転先が問題だ、というだけならまだ分かります。
私もその「気分」は実現可能性は別にして、大浦湾埋め立てには反対ですから。
しかし「全基地撤去」とは安全保障全否定の共産党のスローガンそのものです。 
なぜなら、これではわが国の機軸的同盟そのものを全否定してしまうからで、この日米安保そのものを打倒するという共産党の長年の路線だからです。

そして今。
翁長氏が亡くなり、そのご霊言で後継者に指名されたデニー氏の場合、ただの喜劇でした。
あまりにも脳味噌が軽く軽佻浮薄、政治家としては未熟、せいぜいがDJをやっているのがお似合いの人だったために、共産党にべったりと依存しました。
結果は見えすぎています。吉川氏の予言どおりのことが起きました。

「「辺野古反対」「オスプレイ反対」くらいしか、発言できる範囲がないのだ。特に現実的な妥協ラインはどこか?という話になると、「オール沖縄」では一切の合意はない。この可動範囲をちょっとでも越えれば、知事の支持基盤は分裂する」
(吉川前掲)

デニー氏には選択肢がない、一切の妥協を拒否するブレない共産党と地元紙に抵抗できるわけがないからです。
だからパペットとしてこう言うしかありません。

「名護市辺野古の新基地建設に関しては「移設反対は揺るぎない思い。これからもできうることはしっかりと取り組んでいきたい」と強調。ただ、予算を伴う議案では困難が予想されるとし「真摯に、誠実に説明し、理解を求めていきたい」との考えを示した」
(沖タイ6月16日)
「オール沖縄」大敗で表情がこわばる玉城デニー知事 県議会は自公などが多数に 「真摯に対応したい」 | 沖縄タイムス+プラス (okinawatimes.co.jp)

しかしそんなことに飽きた県民の現実との乖離は進む一方です。

「玉城県政が基地問題に精力を傾け国と対立を深める中、足元の地域経済は疲弊。沖縄振興予算は3年連続で減額が続き、県民所得も全国で最も低い。子供の貧困の問題も深刻だ。インフラ整備も進まず、道路の白線や案内標識の劣化も目立つ。基地問題に重きを置くあまり、生活に直結するこれらの問題がなおざりになった」
(産経6月17日)
沖縄県議選、不支持派勝利で知事、民意の後ろ盾失う 生活に直結の課題なおざり - 産経ニュース (sankei.com)

いずれにせよ、デニー氏は絶対君主の立場を喪失しました。
いままでのように気楽にくだらない反政府、反自衛隊、反米軍、親中国という政策では議会は通らないのでです。

 

 

2024年6月17日 (月)

速報、デニー県政敗北!

S-263

都知事選なんぞよりはるかに重要だった沖縄県議選において自民が勝利し、デニー知事陣営が過半数割れを起こしました。
わ、はは、ひさしぶり、本当にひさしぶりの朗報です。
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産経

島袋県連幹事長が「完勝だ」とか叫んだとか。

 

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琉球新報

「任期満了に伴う第14回県議会議員選挙(定数48)は16日、無投票当選が決まった石垣市区(定数2)を除く12選挙区で投票され、即日開票の結果、野党の自民や公明、維新、野党系無所属による「野党・中立」が過半数に達することが確実となった。
 玉城デニー知事を支える県政与党は過半数に届かず県政運営に打撃となった。与党は中頭郡区などで現職候補が落選するなど現有議席を減らした。
投票率は45.26%と県議選の過去最低を記録した」
(琉球新報6月16日)
「野党・中立」が過半数を確実に 玉城デニー県政に打撃 沖縄県議選 - 琉球新報デジタル (ryukyushimpo.jp) 

沖縄県議会議員選挙の投開票が16日行われ、玉城知事を支える与党は過半数を割り込んだ。
今回の選挙は与党、野党・中立のどちらかが過半数を獲得するかが最大の焦点で、自民党の公認候補は20人全員が当選するなど改選前の18から議席を伸ばす結果となった。
改選後の与野党中立の議席数
与党・・・20議席
野党・・・22議席

中立・・・6議席
【沖縄県議会議員選挙】玉城知事を支える与党が過半数割れ 野党・中立が改選前から議席を伸ばす | OKITIVE (otv.co.jp)

「任期満了に伴う沖縄県議選(定数48)が16日、投開票され、自民、公明両党などの玉城デニー知事不支持派が28議席を獲得して過半数を確保した。共産、社民両党など米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対する支持派は20議席と大幅に議席を減らし、玉城知事は厳しい県政運営を迫られそうだ。
玉城知事は17日未明、知事公舎で報道陣の取材に応じ、「選挙結果は真摯(しんし)に受け止めなければならない。非常に厳しい県政運営を余儀なくされる」と語った。一方、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対する姿勢は「揺るがない」とし、「県政運営や政治理念は変化することはない」と強調した」
(産経6月16日)
沖縄県議選、自公など知事不支持派が過半数を確保 県政運営への影響必至 - 産経ニュース (sankei.com) 

とりあえず速報のみ。詳細はもう少し情報がでそろった明日します。

 

 

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