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2025年6月23日 (月)

米国、イラン核施設を爆撃

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米国がイランの核施設を爆撃しました。

「トランプ米大統領は21日夜、ホワイトハウスのクロスホールから国民に向けて演説を行い、イラン核施設3カ所に対する米軍の攻撃を「華々しい軍事的成功」と評した。
トランプ氏は攻撃後初となる公の発言で「私は今夜、攻撃は華々しい軍事的成功だったと世界に報告できる。イランの主要な核濃縮施設は完全かつ徹底的に消し去られた」と述べた。
またイランが和平に応じない場合、米国は追加の目標を攻撃する可能性があると警告。21日に核施設3カ所への攻撃を決定した後のタイミングで外交的解決を呼び掛けた」
(CNN6月22日)
トランプ氏、イラン攻撃は「華々しい軍事的成功」 主要核施設「完全消滅」 - CNN.co.jp

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トランプ大統領「世界最大のテロ支援国家がもたらす核の脅威を阻止」…イランへの攻撃成功を強調 : 読売新聞

ヘグゼス国防長官とケイン統合参謀本部議長は記者会見をおこない、作戦詳細を述べています。
この爆撃作戦は周到に計画された非常に大規模なもので、7機の米空軍第509爆撃航空団所属のB-2戦略爆撃機、先導とエスコートする戦闘機が125機、空中給油機が複数投入されたようです。

B-2はステルス機ですから単独でも侵攻作戦をすることが可能ですが、分厚い護衛機群をつけて保護したようです。
護衛編隊も第4世代、第5世代戦闘機とされていんますから、F-22やF-35といったステルス機がおしげもなく投じられたようです。
たぶんイランの防空部隊は爆撃されるまで、察知することすら出来なかったのではないでしょうか。
それとは別にイラン時間22日午前2時10分頃には、B-2がイラン領空に入る直前に合わせて、米海軍の潜水艦が30発以上のトマホークでイスファハンを攻撃しました。
B-2を使った作戦ではもちろん最大規模です。

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イラン核施設を破壊し得る「バンカーバスター」とは-QuickTake - Bloomberg

使用された地中貫通爆弾は、バンカーバスターのなかでも最大級のGBU-57で、あわせて14発を使用したということです。
重量13トンを超えるGBU-57A/Bは、B-2に2発までしか搭載できないために7機ものB-2が使われたわけです。
3つの目標に対して14発ですから、一カ所に4発以上投下したことになります。

「MOPは重さ3万ポンド、長さは6メートルに及び、世界最大の精密誘導兵器とされる。
米空軍によれば、「厳重に防護された施設にある大量破壊兵器」を破壊するよう設計されている。これまで戦闘で使用されたことはない。 空軍によると、MOPは爆発する前に最大で61メートルの深さまで貫通する能力を持つ。フォルドゥの一部はこれよりさらに深いところに埋設されているが、MOPは同じ地点に連続投下でき、一段と深部まで掘り進めることができる」
(ブルームバーク6月20日)
Bloomberg

地下90mといわれる核濃縮施設をケイン統参議長は、「初期の評価では、3つの施設すべてに極めて大きな被害を与えた」としていますが、詳細な被害評価は出ていません。

6月21日夜、B-2戦略爆撃機はミズーリ州ホワイトマン空軍基地から離陸し、アラスカ沖・太平洋航路上空でKC-135給油機による複数回の空中給油を実施し、1万1000kmをノンストップで37時間飛行してイランに到達したようです。
当初これらはグアムかディエゴ・ガルシア島に配備されると推測されていましたが、米本土から直接爆撃したようです。。

爆撃は、イラン時間6月22日早朝2時30分頃から、イランの核施設3カ所へ開始されました。

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米国、イラン核施設3カ所を攻撃 イラン「重大な国際法違反」 - 日本経済新聞

フォルドゥ地下濃縮施設
ナタンツ核関連施設
イスファハン核技術センター

このうちもっとも重要と見られた中部フォルドにある核濃縮施設は、テヘランの南約200キロの山岳地帯にあり、中部ナタンズのウラン濃縮施設と並ぶイラン核開発の中枢拠点でした。

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イラン、地下ウラン濃縮施設に高性能の機械を追加 ―IAEA|ARAB NEWS

濃縮施設は地下80~90メートルにあるとされ、2015年にイランが欧米と結んだ核合意では、フォルドゥは核技術関連の研究施設に転換されたと称していましたが、実は旧型の遠心分離機1044台を残しており、ウランを使わない条件で稼働が認められたことをいいことにして稼働を持続していたようです。

第1次トランプ政権が、2018年に核合意から離脱すると、イランもそれを理由に核合意を公然と無視するようになり、19年にはフォルドゥでのウラン濃縮活動を再開しました。
2021年には合意で認められていない高性能の核濃縮装置を導入しています。

「イランがナタンズの地下ウラン濃縮施設に高性能の遠心分離機を新たに設置した上、増設を計画していることが、国連の原子力監視機関が水曜日に発表した報告書で分かった。イランは主要国との核合意に違反する動きを強めている。
この報告書は、2015年の合意の下で高性能な機械を濃縮ウランの生産に使用することが認められていないにもかかわらず、イランが高性能な機械の設置を進めていることを示す最新の証拠だ」
(アラブニュース2021年2月4日)
ARAB NEWS

そして核合意で認められていた濃縮度3.67%を超えて、60%まで濃縮し、23年には核兵器に転用可能な兵器級濃縮度90%目前の83.7%まで進行させました。
つまり月内にも完成するというところまで来ていたわけです。
これができてしまえばチェックメイトで、もはや査察解体などまったく不可能となります。

トランプは再攻撃を匂わせて、こう言っています。

「トランプ氏は「中東のいじめっ子であるイランは今こそ和平に応じなければならない。応じない場合、将来の攻撃は格段に大規模かつ容易なものになるだろう」と述べ、「こんなことを続けるわけにはいかない。イランを待つのは和平か、あるいは過去8日間に目の当たりにしたものをはるかに上回る惨劇だ。覚えておけ、まだ多くの攻撃目標が残っている」とした。
さらに、米国は「他の目標を精密かつ迅速、巧みに攻撃」でき、「ものの数分で」実行可能だと警告した。
演説後、トランプ氏はSNSに場所を移し、イランが武力で対抗すれば米国は圧倒的な報復を行うと厳しい警告を発した」
(CNN前掲)

私もトランプの本気度を見事にはずしたわけですが、今後どうするのかは、まさにイラン次第です。
イランは米軍基地を攻撃すると言っていますが、できるでしょうか。

かつてのように、ハマスやヒズボラ、フーシー派といった舎弟どもをお前やれ、で使えた時代は終わっているのです。
革命防衛隊もズタボロです。鉄砲玉はいるでしょうが、限定的です。
とてもじゃないが、イスラエルと米国に挑めるだけの力量はありません。
残るは、濃縮60%以上のウラン約409キロをダーティボムに詰めてミサイルで撃ち込むことくらいでしょうか。
ただこれを使うと、さすがの中露も味方になってくれませんよ。

となると残るのは:ホルムズ海峡封鎖です。

「イラン議会はホルムズ海峡封鎖を承認した。実行には国家安全保障最高評議会の決定が必要。イランのプレスTVが22日伝えた。
ホルムズ海峡は世界の石油・ガス輸送の2割が行き交う大動脈。今のところ議会承認は公式に伝えられていない。

イラン議会の安全保障委員会委員であるエスマイル・コサリ氏は22日、ホルムズ海峡封鎖が必要ならいつでも行うと述べていた。アラグチ外相は会見で、海峡封鎖するかとの質問に対し「さまざまな選択肢がある」とだけ答えた」
(ロイター6月23日)

イラン議会がホルムズ海峡封鎖承認と報道、最高評議会の決定必要 | ロイター

ホルムズ海峡封鎖なんかに走れば、待ってましたとばかりに米海軍に一掃されます。

とまれアヤトラ体制はまさに瀕死です
とうとうアヤトラ・ハメネイは、生きているのに後継者を決めねばならなくなりました。
そこまで弱体化していますが、これを倒すも倒さないもイラン国民次第です。

 

2025年6月22日 (日)

日曜写真館 種かしや太神宮へ一つかみ

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雨の中大神宮に札納 橋本こま女

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神宮の沓に木の実のはずみけり 唯野嘉代子

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神宮の菖蒲見てあり誕生日 大橋櫻坡子

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鴬の聲さへ低きかしこさよ 加倉井秋を

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神宮のどの木も蝉の木となりぬ 細川淳子

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此松のみばえせし代や神の秋 芭蕉

2025年6月21日 (土)

米国が軍事介入しなければ、イスラエルは核保有を宣言するかもしれない

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イスラエル情勢を語る時に、なぜか語られないものがひとつあります。
イスラエルの90発以上といわれる核の存在です。

「2019年5月現在、イスラエルの保有核弾頭総数は80と推定される(Kristensen, Hans M. & Korda, Matt 2019)。2014年末時点でイスラエルは約300kgの高濃縮ウラン(HEU)と約900 kgの兵器級プルトニウムを保有している(IPFM 2018)。
核爆弾一発の製造には(技術的レベルなどにも影響されるが)12–18kgのHEUあるいは4–6kgのプルトニウムが必要であることから、イスラエルは167–250発の核爆弾に相当する核分裂性物質を保有していることになる」
イスラエルの核戦力一覧長崎大学 核兵器廃絶研究センター(RECNA)

 

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長崎大学 核兵器廃絶研究センター(RECNA)

後述しますが、これは疑惑ではなく公然の秘密です。
イスラエルは、保有をあえてあいまいにする戦略をとっているだけのことです。
これはイスラエルが、米国の核の傘(拡大抑止)に入っていないことを意味しています。

初めに、念のために言っておきますが、私は今のイスラエルに対しては是々非々の立場です。
ガザ地区侵攻は過剰報復で容認できませんし、今回のイランの核施設爆撃も自衛の範囲内ですが、ネタニヤフはそれを越える可能性があると見ています。
ただし、イスラエルがイランの核保有を2度目のホロコーストだと認識するのは当然ですし、反撃の権利は留保されるべきです。

今回の「立ち上がる獅子作戦」を発動したのは、米国を含む国際社会がイランの核開発を止められないと見たからです。
米国さえとうとう「2週間後に決める」と後退してしまいました。
実はこの作戦中にもトランプはあのド素人のスティーブ・ウィトコフを、イラン外相のアラグチと秘密交渉させていました。
そこでウィトコフはイランに「柔軟性を示せ」と言ったとか。
イランは、イスラエルとの紛争が激化する中、米国と直接会談を行ったと外交官は言う

たぶんトランプは、こんな妥協線を模索しているはずです。

「イランはウラン濃縮を地域協力の枠組みに位置づける新提案をしていると伝えられている。サウジもウラン濃縮に関心を有しており、この行方は興味深い。
最近の報道で、イラン側は交渉次第ではこれまで拒んできた米国人のIAEA査察官を核施設へ受け入れる可能性を示したとのことである。これに関連し、トランプ大統領は、イランとの合意案は「非常に強力で、査察官の立ち入りが可能だ。われわれは望めば何でも持ち出し、破壊することもできる」と述べた由であるが、当然のことながら、米国人のIAEA査察官は米国の立場で業務に当たるのではなく、国際公務員として業務に当たるので、米国が「望めば何でも持ち出し、破壊することもできる」わけではない」
(岡崎研究所6月20日)
核兵器10個分の高濃縮ウランを持ち、核の「寸止め」がイランの戦略の核心…トランプ政権のアプローチに見られる変化とは?  Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン)

トランプの戦争嫌いは有名です。この新たなイラン提案の詳細な中身はわかりませんが、あの国が核開発を止める気などいささかもないのはわかりきった話です。核保有とアヤトラ体制は一体だからです。
しかしそれを信じたふりをしたいのが、西側諸国、特に米国です。
トランプにとって、いまや中東における一番の関心事は、もはやイスラエルではなく、サウジです。
イスラエルは揉め事ばかり起こしますが、サウジは未来の富を約束しています。

「なぜ、第二期トランプ政権が第一期政権とは異なるアプローチを取っているかについては、いくつもの背景・理由が考えられる。トランプはサウジアラビアとの関係を重視しており、サウジはイランと23年に国交を正常化しており、イランとの対立激化よりは地域の安定を望んでいること。中東地域が18年よりも軍事紛争が激化した状況となっていること。米国として、第一期トランプ政権時にもまして対外的な紛争に関与することに慎重になっていること、などを指摘することができるだろう」
(岡崎研究所前掲)

イスラエルは、米国がカッコばかりで軍事介入はないし、地中貫通爆弾がフォルドゥの核施設に使われることはないと、腹をくくったはずです。
そしてその時に登場するは、イスラエルの核保有宣言です。

公然の秘密ですが、イスラエルの核は、米国にすら完全に隠匿して開発されました。
米国政府がイスラエルの核の存在に気がついたのは、英紙サンデー・タイムズが1986年10月5日号において「暴露─イスラエル核兵器の秘密」というスクープ記事によってでした。
同紙は、イスラエル南部のネゲブ原子力センターの元原子炉技術者モルデハイ・ヴァヌヌの内部告発証言と、彼が撮影した多数の写真に基づいて、極秘の巨大な地下工場で核兵器が製造されていることを暴露しました。
そしていまや、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は2017年、イスラエルが保有する核弾頭数を80発と推定しています。
この80発はミニマムの数字で、おそらくイスラエルは現在約80~200発の核爆弾とその運搬手段を保有していると見られています。

米国はあえてこの「イスラエルの核」の存在に眼をつぶってきました。
最初の暴露記事が出た1986年から6年後に、米国はイラクに開戦するにあたっての大義を核兵器や大量破壊兵器の開発阻止に置きましたが、戦後の検証によってそのようなものはなかったことがわかっています。
またイランは2003年に核開発が露顕した後、厳しい制裁を受け続けています。

しかし、中東において最初に核開発に成功し、核爆弾とその投射手段を保有するイスラエルにはひとこともありませんでした。
これは二重基準です。
どうしてこのようなダブスタをイスラエルに対してだけとるのでしょうか。

その理由は逆説的ですが、NPT(核拡散防止条約)体制を護持したいからです。
世界の主権国家を、核保有国である米露中英仏(P5)と、それ以外の非核兵器国に二分して管理するのがNPT体制です。
これこそが戦後体制そのものでした。

しかし唯一の例外がありました。いうまでもなくイスラエルです。

煎じ詰めると、主権国家の運命はどこの国の核の傘に入るのかで決定されます。
なんの紛争もない凪の地域ならいざ知らず、外国の脅威にさらされている国にとって、どの国の差し出す核の傘にわが身を預けるのかで、国家の行き先は決定されてしまうのです。
たとえばアジア・オセアニアにおいては、日韓豪NZの国々は中国の核に対峙するには米国の核の傘に入るしか選択の余地がなかったわけです。

では、イスラエルはどうでしょうか。
イスラエルは米国の兵器体系に依存しながらも、核兵器に関しては独自の道を選択しました。
つまりイスラエルは、米国や欧州を信じていなかったのです。
欧州は、ナチスのホロコーストに際して無力だったばかりか、フランスのようにドイツ占領地域においてユダヤ人狩に協力した恥じるべき歴史を持っています。
どうしてら彼らを信用できようか、それがイスラエルの本音でした。

そして誕生したばかりのユダヤ人国家の存続の担保として核を保有したのです。

イスラエルという国を無から作り上げ、核保有に踏み切ったのはダヴィッド ・ベングリオン初代首相でした。

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ベン・グリオン ハウス|アレックスソリューションズ@イスラエル (note.com)

「「原子力兵器」の開発・保有は、初代イスラエル首相ダヴィッド・ベングリオンの着想である。ベングリオンが核兵器開発を重視した理由としては、
①「イスラエルの破壊・抹殺」を叫ぶアラブ諸国による「第二次ホロコースト(the second Holocaust)」を絶対に阻止するとの決意。
②人類初の原爆製造に成功したアメリカのマンハッタン計画にユダヤ人科学技術者が多大の貢献をしたことなどからくる「ユダヤ人の頭脳」への信頼。
③原子力エネルギーを利用した大規模淡水化事業によって不毛のネゲブ砂漠を花咲く緑の草原に変える。
(『イスラエルの核不透明政策と ケネディ~ニクソン政権』船津靖)
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すなわちイスラエルの核開発は、二度とホロコーストを受けないというユダヤ民族の決意そのものであり、それはユダヤ人を海に追い落とせと叫んで四方から攻め込んで来るアラブ諸国に対する恐怖が背景にあったのです。
これは今に至るもいささかも変化しないイスラエルの根っこにある感情です。

すぐれた現実主義者だったベングリオンは1948年の独立戦争の勝利の後も、アラブ世界の攻撃はこれで終わりとならず極めて長期間これに耐えぬかねばならないことをわかっていました。
彼はこう言っています。

「平和は,アラブ側が自らの敗戦と和解するまで来ない。この敗戦がアラブ人指導者の愚かさや分裂に起因する単なる失敗ではなく、将来にわたって訂正不可能であることをアラブ側が理解するまで平和は来ない。
和平の実現には、アラブ人が(イスラエル建国という)領土の損失を最終的に受け入れる必要がある」

(船津前掲)

ベングリオンは、アラブ側が物理的にイスラエルを解体できないと理解するまでこの包囲は続き、アラブにイスラエルの最終的不可逆性を納得させるには、核を手にする必要があると考えたのです。
この根源的とでも言っていいホロコーストへの恐怖がある以上、イスラエルの核をとりあげることは不可能です。

しかし同時に、ベングリオンはこのイスラエルの独自核武装をもっとも嫌うのは、他ならぬ独立宣言の19分後に承認してくれた米国であることも熟知していました。
米国は最大の支援国であると同時に、イスラエルの核についてもっとも嫌う国なのです。
なぜなら、イスラエルの核武装は米国が考えているNPTという戦後枠組みを否定するものだからです。
それが故に極秘に開発し、核保有をひとことも漏らさず、持っているとも持っていないとも言わない曖昧戦略に徹したのです。
まるで中東の都市伝説のように漂うイスラエルの核の幽霊です。

ただし欧米も、イスラエルが核保有していることは充分に知っていました。
ガザ地区核爆発というフェークニュースが信憑性を持って世界に流れたのも公然の秘密だったからです。
しかし彼らはイスラエルの核を非難できないでしょう。
なぜならホロコーストを許したという巨大な倫理的負い目があるからです。

この核のあいまい戦略は、米国にとって福音でした。
表向きは、核拡散防止条約体制は崩壊していないように見えるからです。

そして実態を知っているアラブ側は、これ以上のイスラエル侵攻をすればイスラエルが核使用に踏み込むということに恐怖しました。
そのうえ通常兵器でも、情報戦においてもかなわないとなれば、一部の過激派が振り回す「パレスチナの大義」という旗は静かに降ろすしかなかったのです。

つまりベングリオンが夢見た、イスラエルを囲む平和な環境が整おうとする兆しがほのかに見え始めたのです。
それがトランプが放った「アブラハム合意」であり、さらにイスラエルとアラブ世界の盟主サウジとの接近でした。
この流れが完了すれば、安んじてイスラエルはこの核という戦略的資産を神殿からとりださずに済んだはずでした。
しかしこの共存を断じて許さないとする国が一国残りました。
それがアラブ人ではなく、ペルシャ人の国イランです。
そしてこのイランは、ロシア、中国、北朝鮮と「新悪の枢軸」を組んだならず者国家でした。

そしてイランが操るハマスが、10.7大規模テロを引き起しました。
今後、イランが核保有し、国際社会がイスラエルを孤立させる方向で動いたならば、イスラエルは核保有宣言をするでしょう。

核なき世界が夢だという岸田氏よ、ぜひイスラエルの核というパズルをほどいてみてください。
お菓子のような反核では、どうにもならないことが少しは分かるでしょうし、米国がこれほど奔走しているのはイスラエルに核保有宣言をさせないためだと分かるでしょう。
最悪ここで核の火の手が上がれば、世界を巻き込んだ大戦に発展する可能性もありえるのです。

トランプが軍事介入をためらい続けるなら、イスラエルは水面下で、ならば核保有を宣言せざるをえなくなるぞ、と通告することでしょう。

 

2025年6月19日 (木)

米国イラン攻撃前夜

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これを書いている時点(20日午前0時現在)では、まだ米国のイラン攻撃は実施されていません。
トランプはすでに攻撃計画を承認しており、トランプの決断次第です。

 「トランプ米大統領が17日にイラン攻撃計画を承認した旨を上級補佐官らに伝えていたことが分かった。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が18日、関係筋の情報として報じた。ただ、イランが核開発計画を放棄するかどうかを見極めるため、最終命令は発出しなかったという」
(ロイター6月18日)
トランプ氏、イラン攻撃計画を非公式に承認 最終命令発出は保留=報道 | ロイター

トランプはイランとの協議に含みをもたせながらも、一方で軍を集結し続けています。
空爆の主力となる空母打撃群は、すでに中東水域にいるカール・ビンソン、いまマラッカ海峡を抜けてインド洋に入ったミニッツ、そして地中海にジェラルド・フォードが向かっています。

「米軍は着々と準備を進めている。ヘグセス国防長官は18日の上院公聴会で、イランを攻撃する可能性について、「我々の仕事は常に準備を整え、大統領に選択肢を用意しておくことだ」と述べた。米原子力空母「ジェラルド・フォード」を中心とする空母打撃群も来週、イスラエルに近い地中海に配備されるとの観測があり、完了すれば、中東情勢に対応する米空母は計3隻となる」
(読売6月19日)
イラン攻撃を承認のトランプ氏「期限の1秒前に決断下すのが好きだ」…最終命令は「保留」か : 読売新聞

また、空軍の空中給油機31機が、米本土から中東に飛行しているという情報もあります。
情報は錯綜しており、当然のことながら軍事的な情報は封印されています。
米軍が動く! 空中給油機の大移動、バンカーバスター搭載可能なB2ステルス爆撃機のスタンバイ――狙いはイランか|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

さて、今回のイラン攻撃が実施されるとすれば、それは一切のイランとの協議が不調に終わったことを意味します。
米国とイランはおそらくは水面下で交渉を重ねているはずで、20日には英独仏とイランのアラグチ外相との協議がセットされています。

「戦闘の拡大を防ごうと、欧州諸国も動いている。ロイター通信によると、独仏英の外相は20日、スイス・ジュネーブでイランのアッバス・アラグチ外相と会談する方向で調整を進めている。ドイツのヨハン・ワーデフール外相は18日の記者会見で、「 真摯しんし な姿勢で交渉のテーブルに着くのであれば、遅すぎることはない」とイランに呼びかけた」
(読売前掲)

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トランプ氏、イラン攻撃計画を「承認」も最終決定は保留と米メディア 攻撃の応酬やまず - BBCニュース

G7会合ではいちおう共同宣言がでました。
共同声明の要点は3点です。

①イスラエルの自衛権を認める。
②イランの核兵器製造につながる核関連活動を絶対に容認しない。
③イランの核問題は最終的には関係国間の外交交渉で解決すべきである。

これにはトランプも署名していますが、温度差があるはずです。
米国が求めているのは「核関連活動のを絶対に容認しない」に止まらず、核施設へのIAEAの査察、そしてしかる後の解体のはずです。
ここまでやらないと、イランは口では核開発をしないと約束しておきながら、しっかりと複数の地下濃縮施設で兵器級ウラニウムを取り出そうとするからです。
ですから、いままでのように国際社会の圧力→口約束→違約→核開発進行という轍を踏まないためにどうすべきなのかが問われるのです。

「外交交渉での解決」は耳障りがいいですし、可能なら幸いですが、イスラエルが乾坤一擲の「立ち上がる獅子作戦」を実施している現在、虚しさが残ります。
実際には、イスラエルの軍事作戦、米軍の戦争準備を外交的圧力に使ってイランに迫るしかないわけですが、おそらくはイランは折れないでしょう。
というのはいまや核開発はイランという宗教権力が独裁体制を敷く国家では、最高指導者の決定は覆せないし、後戻りも妥協もできないからです。
それをしてしまったら最高指導者の権威が崩壊し、今の今の独裁体制そのものが大きく揺らいでしまいます。
だから、絶対に妥協しないはずです。

あるのは、時間稼ぎです。
できるかぎり協議しているふりをして引き延ばし、その間にいま残っている濃縮ウラニュウムだけで少量でもいいから核爆弾を作ってしまうことです。
ここで問題となるのが濃縮度60%のウランです。
兵器級濃縮ウランは90%ですが、これは不完全ながらも核兵器の材料となりえます。

「IAEAは12日、定例理事会でイランの核不拡散義務違反を批判する非難決議を可決したばかりだ。IAEAは5月31日、イランの核活動に関する包括的な報告書を加盟国に送付し、核不拡散のためのIAEAの活動に対するイランの協力について、「満足いくものではない」と批判した。IAEAによると、イランによる濃縮度最大60%のウランの保有量は、5月17日時点で3カ月前から133.8キロ増の推定408.6キログラムとなり、核爆弾9個分に相当する。IAEAは「イランは高濃縮ウランの生産と備蓄を大幅に拡大させており、深刻な懸案事項だ」と指摘した。
また、IAEAの査察官は、既知の核施設から離れた施設で、ウランの痕跡やその他の証拠を発見した。それに対し、イランはこれまで信頼できる説明をしていない。秘密核活動は、長年調査が続けられてきた。機密報告書によると、これらの活動に使用された物質は国連に報告されていないという」
イラン産「高濃縮ウラン409Kg」の貯蔵先? : ウィーン発 『コンフィデンシャル』

兵器専門家は、実際には60%の濃縮ウランでも簡易な核兵器を作ることが可能だと指摘しています。

「有力シンクタンク、米科学国際安全保障研究所(ISIS)のデビッド・オルブライトとサラ・バークハードは報告書で「比較的コンパクトな核爆弾を作るためには60%の濃縮レベルで事足りる。80%ないし90%まで濃縮を進める必要はない」と書いた。
さらに、この種の兵器は「飛行機や輸送コンテナ、トラックといった簡易な運搬システムによる運搬」に適しており、「イランを核保有国として確立するのに十分だ」としている」
(フィナンシャルタイムズ6月19日)
イスラエル・イラン戦争の行方、イランが非伝統的な手段で報復する恐れ――ギデオン・ラックマン(2/3) | JBpress (ジェイビープレス) 

IAEA元査察局長のハイノーネンは16日、BBCとのインタビューでこう言っています。

「「重要な疑問が一つ未解決のままだ。イランが400キログラムを超える高濃縮ウランをどこかに貯蔵し、ひそかに核開発を継続する場合だ」と述べている。なぜならば、イランの製造済みの約400キログラムの高濃縮ウランは、容易に隠蔽できるからだ」
ウィーン発 『コンフィデンシャル』

ここまで含んでイランと協議しなければ、また前のとおりの繰り返しとなります。
もちろんイスラエルはそのようなことをよく知っており、あいまいな妥協は許さないでしょう。

かといって、体制転換を見通さねばならない軍事攻撃にはおおかたの諸国は反対です。
それはどの国も「戦後」まで見据えているからです。
軍事攻撃を選択すれば、それは否応なしに体制転換に繋がるでしょう。
フランスのマクロンは、イラン国内に受け皿が見当たらない以上、イラク戦の戦後のような混沌とした治安状況が生まれかねないことを懸念して軍事行動には反対なようです。

そのリスクを考慮しつつ、ぎりぎりまで交渉が進むはずです。
テヘランは避難民で溢れているそうです。
燃料は配給制であり、防空シェルターもありません。
空路とはとうに閉鎖されています。痛ましいことですが、逃げ場はそう多くないことでしょう。
国軍は、ましてや革命防衛隊も国民を守りません。
彼らが奉仕するのはアヤトラ(高位聖職者)体制だけだからです。
そしてこの36年間続いた絶対権力は、綱渡りの限界を越えて奈落に落ちようとしています。

 

 

 

トランプ、イランに降伏勧告

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驚いたことにはトランプが、G7を中座したと思ったらこんどはイランに降伏勧告です。
いつもながらトンでるね、この人の頭の中では整合してるんだろうけど、いきなりここですか。
 第一、あんたつい最近まで仲介する、協議に応じろと言ってたじゃないですかね。
急に片方の立場になって「無条件降伏」(unconditional surrender.)はないだろう、って思いますよね。

「複数の米主要メディアは17日、トランプ米大統領が米軍によるイランの核施設攻撃を検討していると報じた。トランプ氏は同日、自身のSNSで核兵器の保有につながるウラン濃縮活動停止に向けた「無条件降伏」を要求した」
(日経6月18日)
トランプ氏がNSC開催、イラン攻撃検討と報道 「無条件降伏」要求 - 日本経済新聞

あまり軽々しくunconditional surrenderなんて言うのは、止めていただきたいものです。
だって「無条件降伏」とは、外交的にキチンと定義されているのです。

「無条件降伏(むじょうけんこうふく、unconditional surrender)とは、普通には軍事的意味で使用され、軍隊または艦隊が兵員・武器一切を挙げて条件を付することなく敵の権力に委ねることを言う」
無条件降伏 - Wikipedia 

つまりイランの陸海空軍及び革命防衛隊は、一切の条件なしで武装解除されるということです。
今のイランが呑むわけないしょ。
軍隊、特に革命防衛隊がなくなったら、イラン国民はさぁ来い占領軍め、ゲリラとなって戦うゾとなるでしょうか。
まずないでしょう。今、国民は過酷な宗教的締めつけと貧しさにうんざりしているし、産油国でありながらしょっちゅう停電している政府に飽き飽きしています。
軍さえなくなれば、イスラム坊主どもは民衆につるし上げられること必定です。

ただしトランプが見ているように、今のイランは瀕死です。
なんといっても、石油で得た国家収入を国民に配分せずに惜しみなく分け与えて育成してきた中東のハマス、ヒズボラ、フーシ派などのテロリストグループが、ことごとくイスラエルによって壊滅、ないしは壊滅寸前なことです。
いわば外堀が埋められた状態です。
ですからいつもだったら、今のようにイランが直接爆撃されれば、親分危うしとばかりにガザやレバノンから飛んできたロケット弾やドローンを自分で飛ばさねばなりません。

しかしそれも、いままであまりにテロリストグループが無思慮にテロ攻撃に使ったために、全部特性を読まれてしまっています。
イランは盟友のロシアに恩を売るためにドローンを大量供与しましたが、イスラエルはウクライナに専門家を派遣してまで特性を把握しようとしました。
そしてその対策をウクライナと共有したのですが、そのためにしこたま保有していたドローンは、いまやIDFのカモと化しています。

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【解説】 ロシア、中東の友好国を再び失うことを懸念 イランとイスラエルの軍事衝突で - BBCニュース

また爆撃を阻止しようにも防空システムがオシャカです。
自慢のロシア製S-300もS-400も揃って、モサドによってしらみ潰しに破壊されてしまっていますから、イラン領空は丸腰のガラ空き状態です。
せめてシリアにアサド政権が残っていてくれたら、イスラエル軍機の通過を許さなかったのでしょうが、いまはありませんからフリーパスです。
イラクも同じですから、イラン上空の優勢は完全にイスラエルに握られています。

現代戦において航空優勢を握られたら、その時点で負けです。
好き放題頭上から爆弾やミサイルが降ってきます。
ウクライナ戦争がこれほど長引いているのは、露宇共ににウクライナ上空の航空優勢を取れないからです。
F-16は離陸した瞬間に露軍のS-400によってキャッチされていますから、満足に任務を果たせません。
逆に露軍の戦闘機や爆撃機も、上空を飛べば落とされるのでおちおち攻撃参加できないのです。
露軍は戦略爆撃機で領空外から巡航ミサイルを撃つという苦肉の策を使っていましたが、それも「蜘蛛の巣作戦」で戦略爆撃機を大量に破壊されてしまいました(ざまぁみそ漬け)
したがって双方共に手詰まり。だからドローン戦争になってしまうという側面もあるのです。

いまイランは、苦し紛れに弾道ミサイルを撃ち込んでいますが、いままでのように軍事目標に向けて発射するのではなく、デタラメにともかくイスラエルならどこでもいいやとばかりに高価なミサイルを370発発射し、着弾できたのが30発です。
アロー1、アロー2によって9割前後が撃墜されています。
しかも軍事目標を狙えず民間アパートを撃ってどうするのです。
ほとんど全部迎撃されてしまっているのもさることながら、目標をマッピングすべきイランの情報機関が壊滅しているためです。

「イスラエルのライター駐米大使は15日、ABCの番組で「われわれには優れた防空システムがあるが、空を完全に密閉できるわけではない」と発言。「発射された弾道ミサイルのうち約10-15%が迎撃をすり抜けている」と語った。これは、イスラエル軍があらかじめ想定していた「到達率」の範囲内とされる」
(ブルームバーク6月17日)
イスラエル防空網、大きな試練に直面-イラン弾道ミサイル波状攻撃で - Bloomberg

情報機関もなにも、そもそも軍や革命防衛隊の司令部が壊滅状態です。
いまや生存している幹部は探す方が困難です。
核科学者は14人も殺害されたので、核開発を再開する力は残っていないでしょう。

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最高指導者ハメネイは「無償権降伏」を拒否してこう述べています。

「アメリカのトランプ大統領が求めた「無条件での降伏」を拒否したうえで、次のように警告しました。
イラン最高指導者 ハメネイ師
「アメリカが、特に軍事的に介入する場合、アメリカが被る損害は間違いなく取り返しのつかないものになるだろう」
AP通信などによりますと、イラン外務省の報道官は、アメリカなど第三国が介入すれば「地域を超えた全面戦争になるだろう」と強調。「イランの兵器の射程圏内にある近隣諸国に、数千人のアメリカ軍部隊が駐留している」と述べ、アメリカの介入があった場合、中東にある米軍基地への報復攻撃の可能性を示唆しています」
(TBS6月19日)
イランの最高指導者ハメネイ師 軍事介入なら「米国は取り返しのつかない損害受ける」と警告(TBS NEWS DIG Powered by JNN) - Yahoo!ニュース

中東にある米軍施設へのミサイル攻撃など、先刻予想済みです。
海上の米海軍と地上からの迎撃ミサイルによって9割は落とされるでしょう。
そしていったん米軍施設を標的にしたなら、そのお返しは倍返しなんかでは済みませんよ。
湾岸諸国でイランに味方する国など皆無で、むしろ冷やかに見ているでしょう。
だから中東全域を巻き込んだ戦争になどなりようがありません。

このようにイランは抵抗したくともできない、せめてあと数カ月あれば核ミサイルを手にやるならやってみろ、死なばもろともだと叫べたのでしょうが。
だからイランが呑むワケないのは百も承知ですから、トランプは米軍の投入を検討し始めているようです。

「トランプ米大統領は17日、国家安全保障チームと緊迫化する中東情勢について協議した。事情に詳しい関係者が明らかにした。これを受け、米国がイスラエルのイラン攻撃に加わるとの観測が再燃している。
会合は1時間余り続いた。ホワイトハウス当局者は協議終了後もコメントや声明を控えている。ホワイトハウス当局者によると、トランプ氏は協議終了後にイスラエルのネタニヤフ首相と会談したという。米国製兵器はイスラエル単独では成し得ないイラン核施設の完全な破壊に不可欠とみられている」
(ブルームバーク6月18日)
トランプ氏、中東情勢で国家安保チームと協議-イランへの降伏要求後 - Bloomberg

たぶんやるとしても、イスラエルが渇望している地中貫通爆弾の提供でしょう。
イスラエルは核施設を主要な標的にしていましたが、もっとも重要な核濃縮施設があるナスタンズの地下施設はどうやら無傷で残されているようです。
下写真がナスタンズ核濃縮施設ですが、フォルドゥ核施設も同様に深深度に濃縮施設中枢があります。

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イラン核施設被害は「限定的」、専門家がイスラエル攻撃後の画像分析 | ロイター

「国際原子力機関(IAEA)は同日、イスラエルの攻撃によって、イランの主要な核燃料生産施設の地下にあるウラン濃縮施設が損傷したことが新たな衛星画像で示唆されたと明らかにした。
IAEAはXへの投稿で、「地下の濃縮施設に直接的な影響を与えたことを示すさらなる要素を特定した」と説明。イスラエルが主張してきた同施設に対する攻撃を、IAEAが独立機関として初めて確認した。5日目に突入した今回のイラン攻撃で、イスラエルは当初からナタンズにある同施設を攻撃目標にしていた。
IAEAによれば、フォルドゥにある地下濃縮施設は、現在のところ損傷は検出されていない。
衛星画像からはナタンズ施設の地上構造物に明らかな損傷が確認されていたが、IAEAはこれまで地下の濃縮施設には損傷が見られないとしていた。今回の画像分析が正確で、イラン国内で最大規模の濃縮能力を持つこの施設が破壊されたとすれば、同国の核開発計画にとってさらなる深刻な打撃となる」
(ブルームバーク6月18日)
トランプ氏、中東情勢で国家安保チームと協議-イランへの降伏要求後 - Bloomberg

いままでに破壊されたのは、地表部分の施設と周辺の電源インフラだと思われます。
というのは核濃縮施設は推定で80~90mという深深度に建設されており、イスラエルが保有する地中貫通爆弾(バンカーバスター)の届く深度はせいぜい6mで歯がたちません。
これを破壊しようとすると世界最大級のGBU57しかありませんが、それすら60mだと言われています。
それもあまりに巨大なので、これを投下するにはイスラエルの戦闘機では不可能で、B-2が必要なはずです。
つまり、米軍が直にB-2を飛ばして落とすしかないのです。

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Chosun Online | 朝鮮日報

G7首脳会議で、トランプはワシントンが軍事介入する条件について問われ、「その件については話したくない」と答えています。
まだ決心が定まっていないようですから、まず口先介入でというわけで降伏勧告です。
イスラエルのモサドはだいぶ前から最高権力者ハメネイの所在を探知して追跡しており、爆撃の許可をワシントンに秘密裏に求めたようです。


「BBCがアメリカで提携するCBSニュースは15日、米政府関係者3人の話として、アメリカのドナルド・トランプ大統領が、イスラエルによるイランの最高指導者アリ・ハメネイ師の殺害計画を認めなかったのだと報じた。
関係者の1人によると、トランプ氏はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に対し、ハメネイ師の暗殺は「良い案ではない」と伝えたという。トランプ氏はこの報道について、現時点で公にコメントしていない。
このやり取りは、イスラエルが14日にイラン攻撃を開始した以降に行われたとされている。
ネタニヤフ首相は15日に放送された米FOXニュースのインタビューで、トランプ氏がハメネイ師の殺害計画を却下したのだとするロイター通信の報道について、肯定も否定もしなかった」
(BBC6月16日)
トランプ氏、イスラエルによるイラン最高指導者の殺害に反対か 米政府関係者が証言と報道 - BBCニュース

結局、ワシントンの答えはノーだったわけですが、今になってこのカードは生きてきます。 
ちなみに、テヘラン空港も爆撃で使用不能ですから、国外逃亡もできません。

なおふたつの米海軍空母打撃群が、中東水域に接近しています。

「米海軍は中東有事に備え、二つの空母打撃群を即応態勢に置く方針とみられている。一つが空母「ニミッツ」を中心とする打撃群、もう一つが空母「カールビンソン」を中心とする打撃群だ。
複数の米当局者によると、ニミッツの打撃群は16日、中東へ向かうため東南アジアの海域を出発した。約7カ月間の日程で中東に展開中のカールビンソン打撃群と合流するとみられる」
(CNN6月18日)
中東派遣へ 米海軍の空母打撃群、その戦力は? - CNN.co.jp

ミニッツは到着するのが7カ月後ですが、すでにカール・ビンソンは中東水域で作戦中です。
トランプにとって、対イラン攻撃は願ってもない好機なはずですが、むしろ敵は自陣営のほうでしょう。

「イスラエルとイランの交戦を巡り、米国のトランプ大統領が掲げる「米国第一」に共鳴する岩盤支持層「MAGA」の間で米国の参戦に否定的な意見が目立つ。トランプ氏は共和党内の対イラン強硬派からは参戦を後押しされており、是非を慎重に見極めている」
(読売6月18日)
トランプ岩盤支持層、対イラン「参戦反対」相次ぐ…トランプ氏はいら立ち隠せず(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース

こういう微妙な時期にイランが中東の米軍基地を攻撃して、ひとりでも米兵の犠牲者が出たら、それはむしろトランプに口実をあたえるようなものです。

 

2025年6月18日 (水)

イランはホルムズ海峡を封鎖するか

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G7が共同声明において、今回の攻撃をイスラエルの自衛戦争であると認め、イランの核保有を許さない立場を明確にしました。

「我々G7首脳は、中東の平和と安定へのコミットメントを改めて表明する。
この文脈において、我々はイスラエルが自国を防衛する権利を有することを断言する。我々はイスラエルの安全保障に対する支持を改めて表明する。
我々はまた、民間人の保護の重要性も認める。
イランは地域の不安定化とテロの主な発生源である。
我々は、イランが核兵器を持つことは決してできないと一貫して明言してきた。
我々は、イラン危機の解決がガザでの停戦を含む中東における敵対行為のより広範な緩和につながることを強く求める。
我々は、国際エネルギー市場への影響を引き続き注視し、市場の安定を守るために、同じ考えを持つパートナーを含む関係者と連携する用意がある」
イスラエル・イラン間の最近の進展に関するG7首脳声明 |カナダ首相

日本は早々にイスラエル非難声明を出したわけですが、これでひとつ決着したわけです。
ただし、このような国際社会の支持は、10.7ハマステロの時にもあったわけですが、その後のあまりに過剰なガザ地区への攻撃により雲散霧消してしまいました。
イスラエルの今回の作戦は終わっていませんが、分別をもって戦うことをG7は要求しているのです。

さて、イスラエルがイラン石油施設を攻撃した理由は、言うまでもなくイラン経済の大動脈を遮断することです。

「イランの石油の確認埋蔵量は世界有数で、今年度の国家予算の約35%を占め、税収を上回る。2018年に米国が経済制裁を復活させた以降も、 迂回輸出し、生産量と石油輸出の収入はともに伸びている。イスラエルにとって、イラン経済の封じ込めに最も効果的なのが、石油関連施設の破壊であることは確かだ」
(読売6月15日)
イスラエル、石油・ガス施設標的…イランの基幹産業攻撃し体制揺さぶり狙う : 読売新聞

読売は14日、イラン国営放送が反米・保守強硬派の重鎮エスマイル・コウサリ議員が、イランがホルムズ海峡の封鎖を真剣に検討していると報じています。
紅海の出入り口を扼するホルムズ海峡は、世界の石油関連製品の消費量の20%が通過する石油輸出の大動脈で、封鎖されれば原油価格は高騰します。

今回もいままでの低迷から、一気に70㌦を突破しました。

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マーケット|SBI証券

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原油価格、サウジなどへの混乱波及が焦点 - 日本経済新聞

ただしこの市場の混乱も一時的でしょう。
いままで何度も紅海は戦乱に巻き込まれており、それに懲りたサウジやUAEは既にここを迂回してアラビア半島を横断するイースト-ウェスト石油パイプラインを作っています。


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East-West石油パイプライン - Wikipedia

日本の石油はこのサウジとUAEが主で、イランは元来が少ない上に制裁で途絶しています。

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日本はどこから原油を輸入しているのか(不破雷蔵) - エキスパート - Yahoo!ニュース

イラン原油輸出先の大手は中国とインドです。

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米国、イラン経済制裁を再開  - 化学業界の話題

ホルムズ海峡を封鎖されてもっとも困るのは中国で、中国の石油備蓄は35~50日程度なので厳しい状況に置かれる可能性があります。
イランが、最大の買い手であり、IAEAのイラン非難決議でロシアと共に反対票を投じてくれた貴重な友邦である中国の利害と敵対してまで、封鎖に走るか見物です。
また、米国を戦争に巻き込むリスクが飛躍的に高まります。
いまでも関係がよくないサウジなど湾岸諸国との関係改善は絶望的でしょうから、たぶんやらないのではないと思います。

そしてもうひとつの攻撃理由が、これによりイラン国民がイスラム原理主義体制を変革する手助けをすることです。

「イスラエル国防軍は6月14日、ブーシェフル州にあるイランの天然ガス精製所2カ所を標的にした。ソーシャルメディアのユーザーは、6月15日にテヘランのガソリンスタンドに長蛇の列ができたと報告した。
イランのエネルギー部門の混乱は、同国で進行中のエネルギー危機を悪化させ、より広範で頻繁な電力不足や停電につながる可能性が高い。イラン人は以前、エネルギー不足に対応して政権に抗議してきた。2017年と2018年のガソリン価格の上昇をめぐるデモは、より広範な反体制抗議行動にエスカレートした」
(国際戦争研究所6月15日)
イラン・アップデート特別レポート 2025年6月15日 朝刊 |戦争研究所

ブルームバークはこう書いています。

「23年10月7日のイスラム組織ハマスによるイスラエル奇襲攻撃以来、イランの代理勢力を解体するために「体系的で慎重かつ組織的」な方法でイスラエルは取り組んできたと、ネタニヤフ氏は述べている。
この作戦はハマスの壊滅から始まり、イランが支援するレバノンのヒズボラを標的とした攻撃や指導者暗殺へと続いた。「約束通り中東の様相を変えている」と、ネタニヤフ氏は昨年12月に語り、これは常とう句となっている。(略)
イランのペゼシュキアン大統領の元顧問で、長年にわたり体制改革を訴えてきた経済学者、サイード・ライラズ氏は「イランの限界点が私の予想よりずっと早く訪れたように見受けられる」とし、「イランにはこれよりはるかに大きな耐性があると思っていた」と明かした」
(ブルームバーク6月16日)
イラン指導部に迫る審判の時-イスラエルの攻撃激化でジレンマに直面 - Bloomberg

この攻撃によりイランの体制が打撃を受けたことはたしかでしょうが、これが一気に体制変革に繋がるかは未知数です。

 

2025年6月17日 (火)

イランは6回協議を拒否したのは核兵器が完成直前だったからです

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今回のイスラエルの「立ち上がる獅子作戦」が発動された日を思い出して下さい。
それはトランプがこの3月、イランに対し核協議に合意するよう与えた2ヶ月の期限が過ぎた直後のことです。
なぜこの日だったのでしょうか。ちょっと時系列で振り返ってみましょう。

「アメリカのメディアは、トランプ大統領が敵対するイランに送った核開発をめぐる交渉を呼びかける書簡の中で、交渉期限は2か月だとしていたと伝えました。早期に対話に応じるようイランに迫った形です。
トランプ大統領は今月、イランの最高指導者ハメネイ師に対して核開発をめぐる交渉を呼びかける書簡を送ったと明らかにしています。
これについてアメリカのニュースサイト「アクシオス」は19日複数の関係者の話として、書簡の中で、トランプ大統領は無期限の交渉は望まず、期限は2か月だとしていたと伝えました」
(NHK2025年3月20日 )
“トランプ大統領 イランと交渉期限は2か月 核開発めぐり”米報道 | NHK | イラン

こうしてイランは外交的手段で核開発を停止する期間を与えられたわけですが、米国との協議には応じないと一蹴しました。


「イランの最高指導者アリ・ハメネイ師は12日、核開発計画についてアメリカと交渉する考えはないと述べた。アメリカのドナルド・トランプ大統領は先週、イランの核開発をめぐり、交渉を要求する書簡を送ったと述べていた。イランはこの日、書簡を受け取ったことを認めた。
トランプ氏は7日の米FOXビジネスのインタビューで、イランが核開発について協議に応じなければ軍事行動に出る可能性があると、書簡で警告したと述べていた。
トランプ氏の書簡はアラブ首長国連邦(UAE)経由でイランに届けられた。ハメネイ師は、書簡には目を通していないとしつつ、「世論をあざむくもの」だと一蹴した」
(BBC2025年3月13日)
イラン、核開発めぐる米国との交渉拒否 トランプ氏の書簡を受領 - BBCニュース

61日目のトランプの発言はこうです。

「イスラエルの攻撃が圧力になり、弱体化したイランが妥協して合意に応じる可能性があるという期待感を示した。
「私は2カ月前、イランに合意のため60日間の期限を与えた。今日は61日目だった。彼らは合意すべきだった!」
トランプ氏は13日朝、自身のSNSにこう書き込んだ。メディア各社と短い電話インタビューにも応じた。ロイター通信には「我々は(事前に)すべてを知っており、私はイランを屈辱と死から救おうとした。合意が成立することを心から望んでいたため、彼らを救おうと懸命に努力した」と主張」
(朝日6月14日)
トランプ氏「イランを屈辱と死から救おうとした」 核合意になお期待 [トランプ再来]:朝日新聞 

つまり、「立ち上がる獅子作戦」発動の6月14日とは、すなわちイランが国際社会とのすべての話し合いの道を絶った日だったのです。
しかもイランは協議に応じなかっただけではなく、その期限当日にやったことはトランプに対するツラ当てでした。

いままで開示してこなかった秘密の核施設での作業を開始し、フォルドゥの核施設の遠心分離機の増設も行うと発表したのです。
これに対して12日、IAEAは強く反発し、イランに非難決議を出して可決しました。

「イランの核開発をめぐり、IAEA=国際原子力機関の理事会は12日、IAEAの調査への協力が不十分だとしてイランを非難する決議を採択しました。イランは対抗措置として新たなウラン濃縮施設を建設すると発表し、今月15日に行われるアメリカとイランの核開発をめぐる協議への影響も懸念されます」
(NHK6月12日)
IAEA理事会 イラン非難の決議採択 イランは対抗措置を発表 | NHK | イラン

そして13日、イスラエルはもはや平和的手段でイランの核武装は阻止できないと見極めた上で、イスラエルは「立ち上がる獅子作戦」を発動したのです。
ちなみに、イランを「伝統的友好国」と呼ぶわが国は、世界でもっとも強い調子でイスラエルを非難しています。

「石破総理大臣は13日夜「イランの核問題の平和的解決に向けた外交努力が継続している中で、イスラエルによる軍事的な手段が用いられたことは到底許容できるものではない」と述べ、イスラエルによる攻撃を強く非難しました。
政府は、中東地域の平和と安定は日本にとって極めて重要だとして、事態がさらに悪化しないよう、イスラエルとイランに最大限の自制と事態の沈静化を求めることにしています」
(NHK6月14日)
イスラエルとイランの軍事衝突 日本政府 最大限の自制求める 現地の日本人の安全確保に万全期す | NHK | イスラエル

ゲルさん、「外交的努力が継続されている」ですって、この流れを見て、どうしたらそう見えるのか不思議です。
欧州各国の「外交的努力」が破綻し、核濃縮を継続し、さらに挑発的にもフォルドゥの核施設の遠心分離機の増設までするという核武装を公然化したから、最後の手段として軍事的主他ンにたよらざるを得なかったのです。
これは「自衛行動」で、主要国もこれを認めています。

まずはフランス。「イスラエルが自衛し、安全を確保する権利を再確認する」と明確に言い切っています。

20250616-054141

XユーザーのEmmanuel Macronさん

続いてカナダ。同じく「イスラエルが自国を防衛し、その安全を確保する権利を再確認する」としています。

20250616-054520

XユーザーのMark Carneyさん

英仏独はイランが6回もの協議のチャンスを拒否し続けたと非難しつつ、「最後の協議」を呼びかけました。
もう遅いよ、ワデフルさん。

「ドイツのワデフル外相は、中東情勢の緊張緩和に向け、フランス、英国とともにイランの核開発を巡り同国と直ちに協議を行う用意があると表明した。
中東を訪問中のワデフル氏は、イスラエルとイランの対立緩和に貢献しようと取り組んでいるとし、イランがこれまで建設的な協議に入る機会を逃してきたと指摘」
(ロイター6月15日)
独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩和へ | ロイター 
わが国のイスラエルに対しての「到底許容できない」とする姿勢とはえらい違いです。
日本政府の伝統である「イランと国際社会のパイプ」とやらがなにか役に立ちましたか?
キレイゴトはけっこうです。
国際法上「予防戦争」であり自衛戦争ではないとJSF氏も書いていましたが、だからなんなのでしょうか。
国際法はイランの核武装を止めることにはなんの役には立たなかったが、その第1標的であるイスラエルの核開発施設の除去は違法だと、言いたいようです。
ならば国際法とはいったなんなのでしょうか。

英独仏がイランに「最後の協議」を呼びかけていますが、これはイスラエルとイランが交戦関係に入った後のことです。
では、どうやったらイランの核保有を阻止することができたのでしょうか。
国際戦争研究所はこのように述べています。これが現実です。
「アメリカの兵器専門家は6月15日、もしイスラエルがフォルドウ燃料濃縮工場(FFEP)を稼働不能にしなければ、イランは攻撃前の60%濃縮ウラン備蓄を使って、最初の月末までに9発の核兵器に十分な兵器級ウラン(WGU)を生産できるようになると報じた。 科学国際安全保障研究所は6月9日、イランがFFEPで現在備蓄している60%濃縮ウランを3週間で233キログラムのWGUに転換できると報告した。
 科学国際安全保障研究所(Institute for Science and International Security)は、核兵器1発を製造するには25キログラムのWGUが必要であることを考えると、9発の核兵器を製造するには233キログラムのWGUで十分であると報告した」
(国際戦争研究所 6月15日)
イラン・アップデート特別レポート 2025年6月15日 朝刊 |戦争研究所

  • この報告書と並行するNPT報告書は、イランがJCPOAとNPTに何度も違反し、兵器級ウランを製造する能力を強化していることを強調するのに役立つが、おそらく最も重要な懸念事項を曖昧にしている。イランの核兵器化計画は、査察官や世界の目の届かないところで着実に進んでいる。緊急に必要とされているのは、IAEAの査察をイランとの関係の中心に据え、イランが核兵器を持つことは決して許されないことを再確認することである。
    所見
    イランは、現在の60パーセント濃縮ウランの在庫を、フォルドウ燃料濃縮工場(FFEP)で3週間で233キログラムのWGUに転換できるが、これは9発の核兵器に相当し、兵器1発当たり25キログラムの兵器級ウラン(WGU)に相当する。
  • イランは、わずか2、3日で、最初の量の25kgのWGUをフォルドウで生産できる。
  • フォルドウとナタンツ燃料濃縮工場(FEP)の両方で勃発したこの2つの施設は、最初の月に11発の核兵器に十分なWGU、2ヶ月目の終わりまでに15発、3ヶ月目の終わりまでに19発、4ヶ月目の終わりまでに21発の核兵器を生産することができた。 そして5か月目の終わりまでに22人。
  • 査察官の目の前で、イランは脱出のほぼ最終段階に着手しており、現在、濃縮ウランの20%のストックを60%の濃縮ウランに大幅に拡大した速度で変換しているが、この速度はこれ以上長くは維持できない(下記参照)。
  • イランは、特に数百キログラムのレベルで、60パーセントの濃縮ウランを生産することについて、民生用使用や正当化を全くしていない。研究用原子炉で民間に使用されている濃縮ウランの在庫を20%近くまで急速に枯渇させ、はるかに多くを作ろうと急いでいることが、さらなる疑問を提起している。たとえ60パーセントの生産が核交渉における交渉上の影響力を生み出すためだと信じている人がいるとしても、イランは必要以上に進んでいる。イランの真の意図は、可能な限り迅速に、できるだけ少ない遠心分離機で大量のWGUを生産する準備をすることであると結論せざるを得ない。
  • 当然のことながら、IAEAは、その控えめなスタイルで、この最新の報告書で、「イランによる高濃縮ウランの生産と蓄積の大幅な増加は、そのような核物質を生産する唯一の非核兵器国であり、深刻な懸念事項である」と繰り返した。
    IAEAイラン検証・監視報告書の分析 — 2025年5月 |国際安全保障科学研究所
月内に核兵器が完成すればもうなにも出来ません。一切が無意味です。
この現実を前になにが出来たのか、冷静に考えてからイスラエルを批判することです。
ただひとつ言えることは、仮にこのイスラエルの攻撃が国際法違法だったとしても(私は訴因は阻却されると思いますが)、国際法というキレイゴトを守った結果、二度と
アウシュビッツに戻ることはしないということです。

2025年6月16日 (月)

イスラエル、イラン核施設攻撃続報

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イスラエルのイラン核施設攻撃の続報です。
予想されたことですが、怒り狂ったイランは報復攻撃に移りました。
最初の攻撃は、長距離自爆ドローン約100機でしたが、これは待ち構えてきたIDF(イスラエル国防軍)の戦闘機によりすべて撃ち落とされ、第2波の弾道ミサイル攻撃がイスラエルを襲いました。


「イランの革命防衛隊(IRGC)は声明で、イスラエル国内の「数十の標的、軍事施設、空軍基地」に対する、「真の約束作戦3」を実行したと発表した。
イランの最高指導者アリ・ハメネイ師は、「戦争を始めた」イスラエルに「大打撃を与える」と述べた。
イランはイスラエルに向けて、計100発弱のミサイルを2度に分けて発射したと、イスラエル国防軍(IDF)のアラビア語報道官アヴィチャイ・アドラエ氏は述べた」
(BBC6月14日)
イランがイスラエルに報復 ミサイル攻撃で数十人負傷、3人死亡と - BBCニュース

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イラン報復、ミサイル数百発|全国海外|神戸新聞NEXT

イスラエル軍は、国産の弾道ミサイル防衛システム「アロー2」「アロー3」で迎撃し、これに米陸軍のTHAADが加わって迎撃しました。
この時点で米国はこの紛争に介入したということになります。
9発が迎撃網をかいくぐって着弾した模様で、犠牲者も出たようです。
非常に派手な攻撃でしたが、効果は上がっていません。
なお、イランがドローンと弾道ミサイルのみに頼りきるのは、IDFの世界有数の空軍力と対抗すべくもないからで、イラン領空を我が物顔で飛び回るイスラエルと大きな空軍力の差が出ています。

これは事前にモサドが、イランに大量に浸透し、対空ミサイル基地の所在、防空司令部のありか、さらにはイラン革命防衛隊や軍の幹部、原子力科学者の居場所まで正確にマッピングしていたためです。
CNNはイランは「モサドの遊び場と化した」とまで評しています。

「(CNN) イスラエルが未曽有の大規模爆撃をイランの核施設と軍の上層部に向けて実施するその前から、同国のスパイたちは既に敵の領土に入り込んでいた。
イスラエルの治安当局によると、同国の情報機関モサドが攻撃に先駆けて、イランへ秘密裏に武器を運び込んでいた。その武器を使用し、イランの防御を内部から標的にする計画だったという。
これらの当局者によれば、イスラエルは自爆型ドローン(無人機)の発射拠点をイラン国内に設置。それらのドローンはその後、首都テヘラン近郊に配備されたミサイル発射装置を狙うのに使用されている。精密兵器も同様に持ち込まれ、地対空ミサイルを標的として使われた。こうした動きを受けて、イスラエル空軍は13日未明、200機を超える航空機による大規模爆撃を遂行することができた」
(CNN6月14日)
イランがモサドの「遊び場」に、イスラエルによる未曽有の攻撃で露呈 - CNN.co.jp

推測に過ぎませんし、あきらかになることはないでしょうが、イランの指導部、軍の中枢レベルにまでモサドの協力者がいると思われます。
あの10月7日の大規模テロを許してしまった、世界最強を自他共に許すモサドはこれで面目を施したことになります。

それはさておき、イスラエルの「ライジング・ライオン作戦」は継続されており、石油施設、国防省にまで攻撃が及びました。
テヘラン西部のシャフラーン石油貯蔵所も攻撃され、石油や天然ガスの貯蔵施設・輸出施設が破壊されました。
世界の原油相場が爆上がりすることでしょう。ロシアはほっとしているかもしれません。

「イラン当局は14日、南部ブシェール州にある世界最大のガス田がイスラエル軍の攻撃を受けたと明らかにした。イランメディアが報じた。イランによるミサイル攻撃で死傷者が出たことを受け、イスラエルが攻撃対象を軍事施設からエネルギー関連施設に広げた形だ。
これに対し、イランも14日夜、新たに石油関連施設を狙ったとみられるミサイル攻撃を実施した。事実上の交戦状態が続く中、こうした施設で被害が拡大すれば、世界経済にも影響する恐れがある」
(毎日6月15日)
イランとイスラエル、「交戦状態」に 石油施設標的で世界経済に影響も(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

よく言われるようにイスラエルは無差別攻撃をしているわけではなく、正確に目標を軍事目標、ないしは石油関連の戦略目標に絞り、それを的確に破壊しています。
またナンタツの核施設攻撃でわかるように、核濃縮分離機にはあえて手をつけず、そのエネルギーインフラを徹底的に破壊しています。
これはJSF氏が評価するようにイスラエルの力の限界だったのか、あるいは意図的だったのか判断に迷うところです。

「アメリカ軍が参戦していない点も非常に重大で、イスラエル単独の空爆だけでは完全にはイランを叩ききれない可能性が高いでしょう。イスラエル軍は戦術的には戦闘機で長躯侵攻して空爆を行い大きな戦果を上げているものの、戦略的な目標を達成するには不十分であり、イランの核開発能力を除去しきれない可能性があります。
その場合、怒り狂ったイランが核武装の決断を行ってしまい、逆効果となってしまう可能性が決して低くはありません。そもそもこの攻撃が完全に成功したとしても、イランの核開発を数年から10年程度遅らせることが限界だったでしょう。それがもし中途半端な攻撃の成果に終わったら、もっと短い期間でイランは核武装を実行できてしまうことになります」
(JSF6月14日)
イスラエル軍が単独でイラン核施設空爆「アンケラヴィ」作戦を実施、イランは弾道ミサイルで報復攻撃を開始(JSF) - エキスパート - Yahoo!ニュース

う~ん、どうでしょうか。常に信頼に足る判断のJSF氏ですが、「戦略的な目標を達成するには不十分」とまで言うのはいかがなものでしょうか。
「たかだか核開発を10年遅らせるだけ」と仰せですが、それで充分に「戦略目標は達成された」と見るべきです。
これが力の限界によるものか、あるいは戦争拡大のリスクの最小化を図ったとしたためなのか、もう少し時間がたたなければ判断がつきません。
いずれにせよ、イスラエルは現時点でイランと全面戦争する意志はなく、核開発を大幅に遅延させることに主眼を置いたように見えます。
評価については明日に。

 

2025年6月15日 (日)

日曜写真館 あじさいに 絞り下ろしの 水絵具

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七変化にてとどまらぬ 花の色 伊丹三樹彦 

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あなたと視るあじさいよりもたわわな思慕 楠本憲吉

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あじさいに降り 有彩の 雨の糸 伊丹三樹彦

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いくらでも水気ほしげに紫陽花は 細見綾子

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ありなしの色から育つ あじさい これ 伊丹三樹彦

 

2025年6月14日 (土)

イスラエル、イランの核施設を攻撃

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イスラエルがイランの核施設を先制攻撃しました。
延べ200機近い航空機が参加したと報じられています。
一方イランはドローンで報復しました。


「イスラエルは13日未明(日本時間同午前)、イランの核関連施設などを攻撃したと発表した。イランの首都テヘランでは、爆発音が響いた。イラン国営メディアは、市民や軍関係者らに死者が出たと伝えている。イランは報復する考えを示しており、イスラエルは全土に非常事態を宣言した。イランは同日、少なくとも6人の核科学者が殺害されたと認めた。イスラエル・メディアは同日午後、イランが発射したドローン(無人機)はすべて迎撃したと伝えた。
テヘランでは現地時間午前4時過ぎに爆発音がした。その直後、イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は、同国軍がイランを攻撃したと発表。「非常に近い将来」に反撃が予想されるとし、全土に非常事態を宣言した」
(BBC6月13日)
イスラエル、イランを攻撃 核関連と軍の施設と説明 - BBCニュース

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XユーザーのEmanuel (Mannie) Fabianさん: 「The IDF releases footage showing Israeli Air Force fighter jets heading out for the strikes in Iran this morning, as well as landing following the attacks. https://t.co/1xbif5i8gK」 / X 

攻撃したのはイランの核施設で、イランは核爆弾9~15個と、それを乗せるためのミサイルを製造していました。
イスラエルはこれ以上座視できないとして、かねてから予告していた「先制攻撃」に踏み切ったようです。

「イスラエル軍によると、イランのウラン濃縮にとどまらず、いよいよ核兵器のあらゆる部品製造にも着手しており、その数、少なくとも9個分(メディアによっては15個分)と報告されていた。
このため、イスラエルは、もはやこれ以上躊躇することはできないと判断。
イランがこれまでから、公にイスラエル攻撃を主張してきたことから、イスラエルは今回の攻撃を「先制攻撃」だと強調した」
(Times of Israel6月13日)
「緊急の作戦上の必要性」:イスラエルがついにイランの核施設を攻撃した理由 |

ネタニヤフは、攻撃の前日に嘆きの壁に行って祈りを捧げ、そこに一枚の紙を置いています。
そこにはこのような旧約聖書の一節がありました。

「見よ。この民は雌獅子のように起き、雄獅子のように立ち上がり、獲物を食らい、殺したものの血を飲むまでは休まない」
(民数記23:24)

ここからこの作戦名「立ち上がる獅子」(Rising Rion )が取られたようです。
いかに乾坤一擲の戦いだったか、分かろうというものです。 

この時期を選んだのは、直前の12日にIAEA(国際原子力機関)が理事会を開催し、イランが核合意に違反しているとの欧米4カ国(米英独仏)の訴えを加盟国35カ国で採択を行ない、賛成19、反対3(ロシア、中国)、棄権11カ国、不投票2カ国で、可決となったことを受けています。

攻撃対象は、モサドがかねてからイランに潜入して調べ挙げていた核施設とミサイル基地群です。
下写真は攻撃を受けたナタンズの核濃縮施設です。

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Satellite image show key Iranian nuclear facilities before Israeli attack Satellite Image ©2025 Maxar Technologies ナタンツの核施設
「イラン中部イスファハン州にあるナタンズの核施設は、地上と地下に建設されたイラン最大のウラン濃縮施設です。
2002年8月、イランの反体制派によってその存在が暴露され、イランが秘密裏に行っていた核開発が発覚するきっかけとなりました。
2015年の核合意によってウラン濃縮はこのナタンズの施設に限定され、濃縮度の上限も3.67%に制限されましたが、2018年にアメリカのトランプ前政権が合意から一方的に離脱するとイラン側は反発し、2021年からは濃縮度60%のウランを製造・蓄積しています」
(NHK6月13日)
イスラエルが核関連施設に“再び攻撃” イランは報復宣言 なぜ対立 原油価格や日経平均株価などにも影響 | NHK | イスラエル
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イスラエル空軍の攻撃前にモサドはイラン防空網をドローンなどで破壊したために、イスラエルは事前に領空内の攻撃の自由を確保していたようです。
ナタンツの核施設は火災が確認されていますが、地下濃縮施設は地中50mに設置され、厚さ約7.6mのコンクリートシールドで保護されているとされています。
また、最新施設は超深層地下化されており、従来の貫通兵器では破壊が困難とされていますので、イスラエル空軍が地中貫通爆弾を使用したとしても、どのていどの被害を与えられたのかは不明です。

なお、この攻撃でIRGC(イラン革命防衛隊)のフセイン・サラミ、イラン軍参謀総長のモハンマド・バグリなど主要な指導者たちと、核計画の主任科学者が死亡したとイラン国営放送が報じています。
米国には事前に通告されていたようです。

 

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