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2025年11月13日 (木)

非核3原則というバーチャルから醒めるのはいまです

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戦狼領事の「汚い首を引っこ抜いてやる」発言が飛び出したのは、この高市首相の答弁がきっかけでした。

「高市早苗首相は11日の衆院予算委員会で、来年を目指す安全保障関連3文書の改定を巡り、非核三原則を堅持するかどうかを問われ、明言を避けた。「3文書はこれから見直し作業が始まる。書きぶりを私から申し上げる段階ではない」と述べた。台湾有事が集団的自衛権の行使を認める「存立危機事態」に該当する可能性に触れた自身の国会答弁については「政府の従来の立場を変えるものではない」として、重ねて撤回を否定した。
非核三原則は、核兵器を「持たず」「つくらず」「持ち込ませず」とした日本政府の基本的な核政策。首相は昨年の自民党総裁選時に「持ち込ませず」に関しては議論が必要だと主張していた」
(共同11月11日)
首相、非核三原則堅持明言せず 安保3文書改定巡り(共同通信) - Yahoo!ニュース

立憲の大串博志議員は、戦狼領事に呼応するかのように、先週の高市総理の国会答弁に対する異常なまでの執着を見せた。
繰り返し同じことを20分ですよ。この暇人め。
大串氏が問題としたのは、11月7日の衆議院予算委員会で高市首相が示した、「台湾有事において、艦船を使って武力の行使が伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になりうるケースであると私は考えます」という認識です。
どこがまちがっているのでしょうか、「そこにある危機」を危機と呼んだだけではないですか。

ところが立憲は、高市首相が「国名、地域名、事態、状況を具体的に」挙げて存立危機事態に言及したことを「異例かつ極めて重い」として食い下がり、答弁の撤回と取り消しを迫ったわけです。
なぜ取り消さねばならないのか、さっぱりわかりません。
大串氏が上げる理由は、この判断が「国民を戦争に巻き込む」と言うことのようですが、防衛の準備をすることが戦争の準備なら、実際に台湾海峡で台湾を包囲するような軍事演習を繰り返しているのはどこの国ですか。
「戦争を誘発している」のはどちらか、言うなら中国に向けて言え。

野党の皆さんはいまからヒステリックに「軍拡政権だ」「日本が戦争ができる国になる」といった幻視幻聴症状を呈していますが、小泉大臣は別人になったような受け答えをしました。
カンペも見ないし、毅然と前向いて立派。パチパチ、この調子でやって下さい。

「11日の衆議院予算委員会で、共産党・田村智子委員長は、高市早苗首相が10月24日の国会演説で、防衛費のGDP比2%を今年度中に前倒しで達成すると表明したことを取り上げ、「数字ありきだ」「軍拡そのものだ」と批判したことに、小泉進次郎防衛相は強い口調で反論した。
小泉氏は「先ほどから、まるで日本が自制が効かず、軍拡を進めているかのような前提に立ってお話をされてますが、正直理解に苦しみます」と述べ、「空調設備の整っていない隊舎の改善やドローン対処・災害対処器材の整備など、現場の課題を挙げ、「世界の安全保障状況はめまぐるしく動いている。丁寧に説明すれば国民の理解は得られる」と続けた」
(THE PAGE11月11日)
小泉防衛相「理解に苦しみます」「まるで日本が軍拡を進めているかのよう」 防衛費をめぐる共産党・田村委員長の指摘に反論(2025年11月11日) - YouTube

なぜかヒダリの人たちは揃って小泉氏の言い方を借りれば「日本が自制が効かず、軍拡を進めているかのような前提に」に立っています。
下写真の中核派など「中国侵略戦争反対」といっていますが、コレ、「中国の侵略戦争」じゃなくて「中国への侵略戦争」ですから念のため。

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【写真速報】11・2全国労働者総決起集会 中国侵略戦争阻止・高市政権打倒へ号砲 – ZNN.JP

なんか多元宇宙にでも来たような気分ですが、ヒダリの人たちの脳内では中国が侵略を準備していて周辺に軍事的圧力をかけ続けているのではなく、中国は可哀相にも日本から侵略を受けようとしているのだそうです、ぶ、はは。(爆笑)
どこどうーしたらそういう認識になるのか、もはや精神分析の世界ですな。伊良部先生にでも診察を受けなさい。
しかし共産党も立憲も一緒で、あくまでも中国の安全を脅かし、侵略の意図を隠さないのはこちらなのですからたまげます。
あー、頭がクラクラする。

私はなんどとなく書いてきていますが、極東における危機のレベルはマックスに達しつつあると考えています。
北朝鮮は核を使うことにためらいがない男によって核武装化が完了してしまいましたし、中国は台湾侵攻を現実のものとして考えて準備しています
いつなにが起きても不思議ではありません。
だから妙な出来心を起こさないような対抗抑止が必要なのです。

トランプがイランの核施設を攻撃できたのは、まだ完成しておらず核報復の可能性がなかったからです。
しかしもう遅い。北は核を99%完成させてしまいました。
核施設を攻撃するなら、第1次トランプ政権の時に決断すべきだった。
首脳間ディールに持ち込もうとして、バイデンに代わってしまい失敗しました。
もう3回目はありえないか、あるとしても撃つなよという念押しです。

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                                                                韓国聯合

朝鮮中央通信は「朝鮮人民軍戦略軍火星砲兵部隊による、日本駐屯米帝侵略軍基地への攻撃」が目的であると宣言しました。
また2015年2月の朝鮮労働党政治局会議の決定書には、「現代戦の要求に即した精密化、軽量化、無人化、知能化されたわれわれ式の威力ある先端武力装備をより多く開発する」としています。
しかも、「昨年9月の第5回核実験の際に「核兵器研究所」は核弾頭の「標準化・規格化」に触れ、核弾頭の量産化を示唆していた」(倉田 同)とされます。
北朝鮮弾道ミサイルは「実験」から「訓練」へと移行した: 農と島のありんくりん

北朝鮮の核は、「軍事作戦に組み込まれた装備」による核先制打撃を目指したものなのです。
いうまでもありませんが、中国はとっくに小型化、精密化、多弾頭化、そして核兵器の増強を続けています。

にもかかわらず、わが国は65年前の佐藤内閣が決めた非核3原則に足をとらわれ身動きができない。
その足かせとなっているのは、チューカク派から立憲共産党にまで共通した「わが国が自制心なく軍拡に走っている」という思い込みなのです。
そして彼らの拠り所は、いまや非核3原則だけです。こんなものは閣議一発で廃止できるのにね。
現実の危機は進行するばかりなのに、あいもかわらず昭和の亡霊のような野党は非核3原則を金科玉条にして、議論を前に進ませないのだから困ったものです。

 

 

2025年11月12日 (水)

中国の暴言領事はペルソナノングラータです

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国家間関係とは、結局は人間関係のようなものです。 
というか、そもそも国際法というのは、近代国内法を敷衍したものなのです。 
人と人が争う「種」をあらかじめ抜いておくために法律があるなら、同じように国際法は国と国の紛争の「種」をなくすことが目的で作られた、様々な国際条約や国際組織における合意事項の総称です。 

ですからどこかにポンっと「国際法法典」があるわけではなく、その都度作られる国際的なコモンセンス(良識・常識)です。
人と人の関係でも、「この家にはレイプ魔がいますよぉ」なんてことを大声で喚いて、相手の家の前にディスるような看板や、ましてや「この子がレイプの被害者の少女ですよぉ」なんて銅像を建てたら、絶対に喧嘩になりますよね。
まぁ国家規模で実際にこれをやったのが韓国なんですがね。

これと同じように、国と国もまた相手国のディグニティ(尊厳)を保護しなければ国家間喧嘩、つまり戦争になりかねません。 
戦争になれば沢山の人が死にます。
ですから、韓国がやったように接受国が大使館を受け入れた国の国旗を侮辱する掲示をしたり、相手国が嫌がって撤去を要請している慰安婦像といった違法設置物を建てたりすることは、そもそも文明国ではありえないことなのです。

その逆に一国の代表であり、その国の威厳の象徴たる外交使節が、接受国の首相に対して「汚い首を引っこ抜いてやる」なんてヤクザのような暴言を吐いていいわけがありません。

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そこで外交の前提として、接受国は相手国の外交官に対する特権を認めたり、外交施設を保護しているのですから、それに見合わないことをする外交使節にはペルソナ・ノングラータ(Persona non grata 好ましからぬ人物)として国外に退去していただくしかないのです。
ちなみに理由も開示する必要がないので、黙ってこの領事に「お前はペルソナノングラータに指定されたので出て行け」で済みます。
ペルソナ・ノン・グラータ - Wikipedia

それにしても中国という国が「力の信奉者」であることがリアルに伝わってきました。
そのためには上品な外交的配慮など吹き飛んだこのテの発言は逆説的にすんばらしい。
今後もビシビシとこのような戦狼的台詞を吐いて啓蒙して下さい。期待しています。

 

2025年11月11日 (火)

島田洋一氏、独自核武装を言い出す

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百田党政調会長の島田洋一氏が、先日のNHK日曜討論で突如「島田無双」になったそうです。なんだかなぁ。
どんなことを言っているのかと思えばあんがい古臭い独自核武装論です。

「現在では、極超音速で変速軌道をとる核ミサイルが飛んできた場合、迎撃不可能だ。通常ミサイルであっても飽和攻撃をされれば全部を打ち落とすのは不可能だ。
その中で二度と広島、長崎の惨禍を日本の地にもたらさない為には、日本独自の核抑止力を持たねばならないと考えている。具体的には同じ島国のイギリスが採用している様な原潜四隻からなる抑止力。仮にイギリス本土が核攻撃で壊滅状態になっても海上から反撃できる態勢を持つ事によって相手の核攻撃を抑止する。因みにフランスも原潜四隻からなる核抑止システムを持っている。こういう物を持つ事によって初めて核保有国との間で核軍縮交渉もできる。
こっちが持たずに、持っている国に「無くせ」と言っても聞く訳が無い。お互いに平時に於いても相手国を照準から外すといった軍備管理交渉も可能になる。こういった現実的な政策を考えるべきだと思っている」

特に驚くに値しない古典的な自主核武装論で、半世紀前からあったよなぁ。
小泉大臣が原潜を匂わせたので、冬眠から醒めて一気に現実味を帯びて再登場です。
かならずこのテの議論で引き合いに出されるのはフランスで、おいおいゴーリズム(ドゴール主義)にありたいのかよと思っちゃいます。
日本はゴーリズムにどうやってもなれないのです。

だってフランスにとって米国はしょせん大西洋の向こうの国ですが、日本にとっては「世界で唯一日本を軍事支配可能な国」なのです。
だから米国と正面切って大戦争をして大敗し、米国の核の傘に収まったのです。

それなのにそれなのに、島田さんは巧みに米国という巨大な存在を隠してしゃべっています。あんた米国政治の研究者でしょうが。
日本が核武装すること、それは米国の核の傘(拡大抑止)から出て行くこととイコールですから、米国の敵に回ると解釈されます。
米国と戦争する気なら独自核武装でもなんでもしなさい。
いうまでもなく、それは亡国の道ですよ。

お互いが核を持っていても戦争は起きます。
それはインドとパキスタン、あるいはイスラエルとイランを見ればわかるように、核をもっていても攻撃されます。
核さえあればなんとかなるというのはロマンチックな夢にすぎません。
仮に日本が島田氏がいうように英仏のように戦略原潜4隻分の核ミサイルを保有できたとしても、中国は核軍縮のテーブルにすらつかないでしょう。
ましてや核の照準からはずすなんてご冗談を。
抑止力となるような核とは、世界全体を滅亡させる規模のものなのです。

クールダウン、クールダウン。百田党みたいな無責任な所に引きづられると大火傷しますよ。
現在の日本を囲む軍事情勢はこのようになっています。
私なんぞが説明するより、プロ中のプロ伊藤俊幸元海自海将の説明に耳を傾けましょう。

「伊藤氏は「中国海軍の行動範囲が海自の予想を超える勢いでどんどん広がっている今、日本も原潜の保有を真剣に検討しなければならない時代になりました」と語ります。今年6月には中国空母「遼寧」と「山東」の2隻が、九州から沖縄、台湾などを経て南シナ海を囲むように延びる第1列島線を越え、初めて同じ時期に太平洋に進出しました。その後、遼寧は、小笠原諸島からグアム、パラオを経てパプアニューギニアに向けて延びる第2列島線を初めて越えました。伊藤氏は「中国空母を抑止できるのは、航空機と潜水艦しかありません」と語ります」
日本が原子力潜水艦を保有する日は来るのか? 廃絶論VS抑止論を超えた議論が必要な時代が到来も

ここでご注意願いたいのは、前々回でも書きましたが、伊藤氏がここで論じている「原潜」とは、核ミサイルを積んだ戦略原潜ではなく、原子炉を動力とした攻撃型原潜を指します。
ここをゴッチャにして、島田氏は一気に戦略原潜の保有を主張しているのです。
まったく次元が違いますから。

原潜なら水中速度30ノット(時速約55キロ)以上の高速で何の制限もなく長時間連続航走できます。
これに対し、海自が保有する通常型潜水艦は、水中速度20ノット(時速約37キロ)程度で、リチウム電池に充電するため、たびたび海面の上にシュノーケル(吸気筒)を出してディーゼル発電機を使う必要があります。
現代戦では、わずかな時間でも海面上にシュノーケルを出せば、たちまち発見されてしまいます。
通常型潜水艦は遅いので、空母を長時間追尾することに限界がありますし、仮に中国の攻撃原潜が魚雷を発射しても回避するには限界があります。

だからマイクロ炉や小型モジュール炉を搭載した攻撃型原潜保有は現実性があります。
ただしこれも一隻あたりの建造コストが通常動力型の10倍もすることや、そのための要員の教育訓練、設備に膨大な時間と費用がかかることがあるために、実現は非常に難しいことは頭に入れておいて下さい。

さて今日は、日本が中国や北朝鮮、さらにはロシアの核搭載弾道ミサイルの脅威に対して対抗抑止を持つために、どのようなことが可能なのか、今日はもう少し踏み込んでみることにします。
米ハドソン研究所の村野将氏が優れた論考を書いています。
※村野将・岩間陽子 『日本の「抑止力」とアジアの安定と日本に欠けている戦略的コミュニケーション』)
日本の「抑止力」とアジアの安定 | 政策シンクタンクPHP総研

下図は中国軍の弾道ミサイル発射基地の分散状況を示しています。

図表3:中国の潜在的な重要軍事施設と地上発射型中距離ミサイルの位置関係
村野氏による

一見してお分かりのように、中国軍の弾道ミサイル基地の大半は沿岸部に集中して配置されています。
大陸奥深く配備されているのは、彼らが全面戦争に備えた大陸間弾道ミサイルだけですからわが国はこれを無視してよいでしょう。
また同様に、航空基地、海軍基地、潜水艦基地、陸軍基地なども捨象します。
わが国にはそこまで広範囲を攻撃する力はないし、その必要もないからです。
私たちは中国と全面戦争するのではなく、私たちの頭上の刃を取り除くだけに集中すればよいのです。
長距離弾道ミサイルは米国に届くが故に、米軍の領域と割り切りましょう。

したがって、わが国が対抗せねばならないのは、この中国の軍事施設・重要拠点5万箇所のうち約70%が集中する沿岸から400km地点以内の弾道ミサイル発射基地群です。
具体的にはこれらは、日本から2000㎞以内に納まっています。
仮に九州に射程2000kmの準中距離弾道ミサイルを配備すれば、中国沿岸から約1000km以内の弾道ミサイル基地を13分以内に攻撃することが可能となります。
まず日本は、この沿岸部の中国ミサイル基地を攻撃可能な準中距離弾道ミサイルを保有すべきです。

結論からいえば、米国と中距離ミサイル戦力を共に作り、日米が一体化した対抗抑止システムを作る必要があります。
独自核武装は実現できないのか、という疑問もあるでしょうが、米国から独立した核武装をすることは米国の核の傘からはずれること、すなわち日米同盟の終焉を意味する現在、それをするのは今ではありません。

現時点において、日米同盟なくして日本の防衛を語ることは不可能である以上、米国と共同して対抗抑止力を獲得するほうがはるかにメリットがあります。

私たちが考える以上に日米防衛の一体化は多方面で進んでいて、たとえば海自がもっとも力を入れている対潜水艦作戦においては完全な米海軍との共同作戦が前提となっています。
むしろ日本が対中防衛構想を牽引している部分すらあって、宮古島など島しょ部への対艦ミサイル部隊の展開に米海兵隊のほうが触発されて、同様の対艦ミサイル部隊を作り、第1列島線に展開する構想もあります。
これは従来の敵前上陸・ヘリボーン作戦から、今やウクライナの救世主となったハイマース(HIMARS)への転換です。

この海兵隊の改変構想は、自衛隊の対艦艇ミサイル部隊との共同が大前提となっています。
ですから、新たな中距離弾道ミサイルシステムというと一見唐突に聞こえますが、現場においては先行して基盤が作られているのです。
このように日米が協調して対抗抑止を作ることが最善の道であるのです。
日本が限られた予算と時間しか持たない対抗手段の中で、島田氏の主張するような独自核武装はもっとも実現不可能な行き止まりにすぎません。ただ、こういう核談義自体が抑止力となっているので、意義はあったのかもしれません。
また誤解なきように言っておきますが、私は岸田氏のような「核なき世界」の信者ではありません。
仮に米国が極端なトランピズムに陥って日本の防衛を捨て去った場合、わが国はいかにカネがかかろうが、技術的障壁があろうが、直ちに核武装すべきです。
今はその時でしょうか。否。
そうではないから、議論を尽くして難点を洗い出して、時を待てというのが私のかんがえです。

2025年11月10日 (月)

小泉大臣、すいません(汗)

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先週、イ.ジェミョンが米国と原潜建造の承認をもらったことにふれて、小泉大臣も原潜を欲しがっていると批判しました。
そしてこの小泉氏の発言を紹介しました。

小泉進次郎防衛相は6日のTBS番組で、原子力潜水艦導入について、トランプ米大統領による韓国の原潜建造承認に触れた上で「まわりの国々は皆、原潜を持つ」と述べ、前向きに検討する姿勢をにじませた。潜水艦の動力について「今までのようにディーゼルか、それとも原子力かを議論していかなければいけないくらい日本を取り巻く環境は厳しくなっている」と述べた」
(産経11月6日)
小泉防衛相、原子力潜水艦「まわりの国々はみんな持っている」 安保環境厳しく、議論必要(産経新聞) - Yahoo!ニュース

この小泉大臣の意図を、どうやら短絡して解釈した可能性があるので修正しておきます。

ことの起こりは、防衛省が設置した防衛力の抜本的強化に関する有識者会議でこのような提言があったことが発端です。
有識者会議提言は今年9月19日に公表されたもので、この最終章にこうあります。
「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」 報告書 令和7年

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提言① 防衛力抜本的強化の7本柱の推進と戦略装備の導入による抑止力・対処力の一層の強化
●VLS(垂直発射装置)搭載潜水艦
潜水艦は隠密裏に展開できる戦略アセットである。スタンド・オフ防衛能力を具備させれば抑止力の大幅な強化につながるため、重視して整備を進めていくべきである。長射程のミサイルを搭載し、長距離・長期間の移動や潜航を行うことができるようにすることが望ましく、これを実現するため、従来の例にとらわれることなく、次世代の動力を活用することの検討も含め、必要な研究を進め、技術開発を行っていくべきである。

この有識者会議の提言は非常に多岐にわたっており、一読に値します。
これを読まないで小泉氏発言だけを切り取ると、唐突の感がしますが、非常に大きな全体の一部にすぎません。

「防衛省が設けた「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」は9月、原子力潜水艦を念頭に「次世代の動力」を活用した潜水艦の導入検討を提言しました。海上自衛隊の潜水艦はやしお艦長を務めた伊藤俊幸元海将(金沢工業大学虎ノ門大学院教授)によれば、会議では「原潜」という言葉も出ていたそうです。
ただ、2011年3月の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故から、日本国内で「反核アレルギー」が更に強まったと判断し、「次世代の動力」という表現にとどまったそうです」
日本が原子力潜水艦を保有する日は来るのか? 廃絶論VS抑止論を超えた議論が必要な時代が到来も

まず私に誤解があったのは、小泉氏が既存の原潜の技術移転を望んだように解釈したことです。
どうやら私の間違いのようです。

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GDEB、バージニア級潜水艦の建造で米海軍と契約 – 旅行業界・航空業界 最新情報 − 航空新聞社

米海軍のヴァージニア級原潜(SSN)は、建造計画は前世紀から始まっており 2000年から建造が始まり、2023年10月14日には21隻目の「ハイマン・G・リッコーヴァー」が就役しました。
この特徴は、そのVLSの多さです。
弾道ミサイルを搭載しないタイプながら、対艦・対地攻撃や特殊部隊の輸送など多様な任務に対応できます。
魚雷発射管に加え、巡航ミサイル「トマホーク」の垂直発射機(VLS)モジュールも備えており、ブロックIVまでは12基のトマホーク発射モジュールを搭載していますが、ブロックVでは船体を延長し、40基まで増強されています。
バージニア級原子力潜水艦 - Wikipedia

搭載されている原子炉はジェネラルエレクトリックの「S9G」と呼ばれ、練れた潜水艦向け原子炉ですが、開発されたのは前世紀であってとうてい「次世代動力」とは呼べないでしょう。
S9G (原子炉) - Wikipedia

ところで日本が今後導入すべき潜水艦にVLS(垂直発射機)は必須ですが、現在の最新鋭潜水艦の「たいげい」ですらVLSを搭載することは事実上無理があります。

「海自は、2022年12月に策定された安保3文書に基づき、長射程巡航ミサイル「スタンド・オフ・ミサイル」を発射できる垂直発射型ミサイル搭載潜水艦(SSG)の開発と取得を目指している。 
たいげい型は原潜に比べて船体が小さく、電力供給も限られているため、垂直発射装置(VLS)を搭載するのは依然として困難だ。
日本が水中から長射程ミサイルを発射できるVLSを搭載した新型潜水艦を建造する場合、新型潜水艦の船体を現在よりも大型化し、追加の電力供給能力を確保する必要がある」
(高橋浩祐 10月14日)
高橋浩祐 - エキスパート - Yahoo!ニュース

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海自の最新潜水艦たいげい型6番艦「そうげい」が命名・進水 漢字では「蒼鯨」 旧海軍での命名実績なし(高橋浩祐) - エキスパート - Yahoo!ニュース

海自は、2022年12月に策定された安保3文書に基づき、長射程巡航ミサイルであるスタンド・オフ・ミサイルを発射できる垂直発射型ミサイル搭載潜水艦(SSG)の開発を目指しています。
しかしこれですらVLSは3基です。    

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垂直発射型ミサイル搭載潜水艦(SSG)

「防衛省は、この新型潜水艦発射型ミサイルの開発を三菱重工業が契約者となって2023年度から始めた。2027年度に開発を完了する予定だ。2025年度予算では、その研究費として297億円を計上した。2025年度から2029年度まで研究試作を実施する。
一方、12式地対艦誘導弾能力向上型(艦発型)は、陸上自衛隊の12式地対艦誘導弾をベースとした、12式地対艦誘導弾能力向上型で最大射程は約1500キロメートル。今回は水上艦向けのものだが、将来はSSGのVLSでの発射を視野に入れている。ただし、潜水艦への装備には時間がかかるとみられる」
(高橋前掲)

このような垂直発射型ミサイル搭載潜水艦(SSG) が実戦配備されるのは、2029年度計画艦からで2034年ごろの就役になると高橋氏はみています。
また動力も、今の段階では新型の超小型原子炉(マイクロ炉)や小型モジュール炉(SMR)ではなく、全固体電池と燃料電池ではないかと見られます。
それでもなお小型であるために拡張性に難があり、搭載可能なVLSには限界があります。
新型原子炉を初めから視野の外に置いてSSGを構想してよいのか、というのが小泉氏の発言の真意のようです。
この新型原子炉は既存の原発のリプレイス(置き換え)問題も含めてもっと大きな議論が必要です。
常日頃の軽薄な発言に引きづられて、ついこれを矮小化したことはごめんなさい。

 

 

2025年11月 9日 (日)

日曜写真館 一日に一度は見上ぐ山茶花を

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また逢へた山茶花も咲いてゐる 種田山頭火 

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夕焼のうすれ山茶花も散りゆくか 渡邊水巴

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一幹の 日影 日おもて 山茶花散る 伊丹三樹彦

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一樹満白の山茶花 添水音 伊丹三樹彦

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山茶花に 対座の背骨立て直す 伊丹三樹彦

 

2025年11月 8日 (土)

ニューヨーク、どうなっても知らないぞ

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ニューヨークが民主党極左派市長を選出しました。

「投票終了はアメリカ東部時間2025年12月4日20時(日本時間11月5日午前10時)であったが、11月4日21時30分に CBS NEWSが[投票総数2,055,921票、 得票率ゾフラーン50.4%,クオモ 41.6%,スリワ 7.1%]でゾフラーンの当選確定の速報を流した。
5日0時51分にはニューヨーク市選挙管理委員会が、ゾフラーンが得票率50.4%で当選確定と発表した」
(ベストタイムス11月6日)
【ニューヨーク市長】急進左派のゾフラーン・マムダーニーが当選。しかしそれはMAGAトランプ派の敗北を意味するわけではない!【中田考】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

得票率で接戦を映じていたのは同じく民主党のクオモだったわけですから、リベラルの分裂選挙だったわけです。 
共和党候補スリワは惨敗が予想されたために、トランプはクオモに入れるように呼びかけています。

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ゾーラン・マムダニ氏 日経

「4日に予定されているアメリカ・ニューヨーク市長選をめぐり、ドナルド・トランプ大統領は3日、アンドリュー・クオモ前ニューヨーク州知事(無所属)を支持すると表明した。そのうえでトランプ氏は、優勢の左派候補ゾーラン・マムダニ氏(民主党)を選ばないよう有権者に呼びかけた」
(BBC11月4日)
米NY市長選、トランプ氏がクオモ氏支持を表明 民主党候補が勝てば補助金削減と脅す - BBCニュース

マムダニの勝利演説はこのようなものです。

「The future is in our hands(未来は私たちの手にある)、This is a mandate for change(「これは変化を求める委任状だ)」とし、「未来は私たちの手中にある、皆さん、私たちは政治的王朝を打ち倒した。権力は富裕層だけのものではないと証明した。それは倉庫で働く人々、配達員、介護ヘルパーのものであり、この都市を動かしているのは、所有している者ではなく、働いている者たちだ」
(ベストタイムス前掲)

高揚した階級史観ですが、民主党はいまや労働者の日常から離れてLGBTなとのリベラルインテリの党になったことに対してのアンチでもあります。
現在34歳の彼は、ニューヨーク市史上1世紀以上ぶりの若さで市長に就任します。
初のイスラム教徒市長、初の南アジア人市長、そしておそらく国内で最も影響力のある民主社会主義者など、数々の歴史的な「偉業」を成し遂げた人物ということになります。

マムダニが勝ったのは、今の猛烈なインフレによる生活苦の救済をメーンに打ち出したからです。

「マムダニ氏は生活費の高騰への対策や富裕層への課税を強調した。「トランプのような億万長者が課税を逃れることを許してきた腐敗文化に終止符を打つ」と主張した。そのうえで「200万人以上の賃貸住宅の値上げ制限、バスを高速かつ無料にし、保育援助を提供する計画だ」と表明した。
市長選では生活費高騰や治安対策が主要な争点となった。
マムダニ氏は物価高騰が続くなかで市民生活を直接支援する政策が評価された。賃貸住宅の値上げ凍結や市営バスの無料化、高所得者層への増税などを公約として掲げ、生活環境の悪化に不満を持つ若年層や労働者層からの支持を広げた」
(日経11月5日)
ニューヨーク市長選挙、急進左派マムダニ氏が当選 生活支援に支持 - 日本経済新聞

無料のバス、家賃の値上げ禁止、子育てなど無償のサービスなどを掲げるのはいいとして(インフレの解決にはまったくなりませんが)、一緒に警察の廃止縮小、刑務所の廃止などを唱え、富裕層へのさらなる高率税を掲げています。
市長には予算権限があるので治安予算を削減してしまえば、警察を縮小することはできます。
また、刑務所も予算をカットすれば運営できません。 

民主党が地方自治体の政権をにぎると、ほとんど例外なくやるのがこの警察予算の大幅カットです。
BLMの乱の時期、彼らはシアトルに銃による武装解放区をつくろうとしました。

この解放区の中にあった警察署の署長は黒人女性でしたが、撤収命令に強く抗議をしましたが、民主党系市長は握りつぶします。
トランプ陽性判定とシアトル自治区の「愛の夏」の結末: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)

このコンミューンはわずか一カ月で殺人事件を引き起こして内部分裂を起こして崩壊しますが、民主党市長はこれを放置したどころか強く支援しました。
ニューヨークでこの二番煎じがなければいいと思いますが、やりかねません。

今回のニューヨークの場合、火種は不法移民です。
マムダニは各種無料化の話で移民など貧困層を味方につけたわけですが、連邦政府の支援を打ち切られてどうやってこの大盤振る舞いをするのでしょうか。

また、富裕層を敵視し富裕税をかけると言っていますが、彼らは一斉にNYから脱出してしまうでしょうから、どうやって実現するでしょうか。
今回の市長選でもクオモが連邦法的には違法な氏名のないIDカードを大量発行していたといわれており、その多くが不法移民が手にし、これがマグダニの当選の力となったとも言われているようです。

よもやとは思いたいのですが、マグダニは「刑務所の解放」なんてオッソロしいことを言っています。
ほんとうにやれば、警官減らして刑務所まで開けようというのですからまるでバットマンの世界です。ブルブル。

 

2025年11月 7日 (金)

韓国が原潜作るってさ

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冗談のような話ですが、韓国が原潜を作ることの承認をトランプからもらって有頂天です。

「韓国訪問中のトランプ米大統領は30日、自身のSNSへの投稿で、韓国が原子力潜水艦を建造することを承認したと明らかにした。核兵器ではなく通常兵器を備えた原潜になる見通しで、米韓両政府は米国内での建造に向けた協議を本格化させる。トランプ氏は別の投稿で、韓国の原潜が米ペンシルベニア州フィラデルフィアで建造されるとの見通しを示した。
韓国は現在、原潜を保有しておらず、29日の米韓首脳会談で韓国李在明大統領が原潜開発への支援を要請していた」
(読売10月30日)
トランプ氏、韓国の原子力潜水艦建造を承認…「フィラデルフィアの造船所で建造」と投稿 : 読売新聞

おもわず飲んでいたお茶をプっと吹き出しそうになりました。
だって朝鮮半島の周りは一番深い所で深度200mほどの浅海ですから、深く潜れません。
そんな浅海に、常に冷却水を循環させるためにガラガラと大きな音をたてる原子炉を持つ原潜を沈めていたら、優秀な対潜能力を持つ国にここですよ、と教えているようなもんです。
ちなみに中国も同じように大陸棚に囲まれているせいで、潜水艦を運用するには宮古海峡を抜けて太平洋の大海原まで進出せねばなりませんから、大多数が途中で海自に捕捉されてしまいます。
いったいナニをしたいんでしょう。

そもそも一括りで「原潜」と言っていますが、よもや戦略原潜じゃないでしょうね。
戦略原潜は、通常の潜水艦(攻撃型原潜と呼びますが)と本質的に別の存在です。
ひとことで言えば戦略原潜は、核ミサイルのプラットホームです。
陸上からの大陸間弾道ミサイル(ICBM)、空からの戦略爆撃機と並び、海中からの核ミサイル発射基地です。、
核保有国は、これら三つを核兵器の3本柱(トライアド)として位置づけていますが、このうちもっとも秘匿性が高く、隠密性が高いのがこの戦略原潜です。
この戦略原潜は海中をうろうろすることは稀で、通常は本国のそばの海底にジっとしています。おお陰険なこと。

ちなみに北朝鮮が技術的に可能どうかわかりませんが、この戦略原潜を保有しようとしているのは知られた事実です。
ただし北朝鮮の潜水艦建造能力は初歩的段階で幼稚なものしか作れません。

ですから、イ・ジェミョンがトランプにこう説明したという内容はウソ八百です。

「李大統領は会談の席上、「ディーゼル動力の潜水艦は潜航能力が低く、北朝鮮や中国の潜水艦に対する追跡活動に制限がある」と述べ、「原子力潜水艦で使用する燃料の供給が認められれば、韓国の技術で通常兵器を搭載した潜水艦を複数隻建造する。
それらを朝鮮半島の周辺海域で活動させれば、アメリカ軍の負担もかなり減らせる」とメリットを強調し、アメリカ側の理解を求めていました。また、ウラン濃縮や使用済み核燃料の再処理に制限がかかっていた米韓原子力協定の改定も要請しています」
(読売前掲)

北朝鮮の原始的潜水艦の「追跡活動に制限がある」ような情けない国は攻撃型原潜を保有しても使いこなせないでしょう。
いやところがギッチョン、KSS-IIIは高度な性能と強力な攻撃力を備えた潜水艦を作ってはいます。

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韓国の潜水艦「島山安昌浩」の進水式(大宇造船海洋のウェブサイトから)
臆測呼ぶ、韓国が強力な最新潜水艦を開発する理由:朝日新聞GLOBE+

そしてこのKSS-III bach-1のVLS(垂直ミサイル発射装置)は発射管数が6本あって対地攻撃用長距離巡航ミサイルや弾道ミサイルまで装備する予定です。
いったいなんのために、どこの国に対して?

「北朝鮮もミサイル潜水艦を開発しているが、北朝鮮海軍相手ならば外洋での作戦を想定した3500トンといった大型潜水艦の必要性は低い。また韓国と中国との昨今の関係からすると、韓国海軍が東シナ海や南シナ海などに潜水艦を展開させ、中国海軍に対抗しようという作戦構想を持っているとは思えない。同様に、潜水艦に搭載した巡航ミサイルや弾道ミサイルで中国に反撃するシナリオなども想定され得ない。
となると、「日本海や場合によっては西太平洋から、日本をミサイル攻撃する能力を持つ強力な潜水艦を開発しているのではないか?」という推測が米海軍関係者らの間で浮かび上がらざるを得ないのである」
(北村淳 朝日グローブプラス2019年4月5日)
臆測呼ぶ、韓国が強力な最新潜水艦を開発する理由:朝日新聞GLOBE+

たぶん北村氏の憶測は当たっているでしょう。
原始的潜水艦しかない北朝鮮のはずはないし、「三不」政策を清算しきれないような対中恐怖症の韓国が中国相手の攻撃装備を持つはずがありません。
まちがいなくわが国が標的だと考えるのが素直です。

攻撃型原潜が欲しいならあえて原潜である必要はありません。
攻撃型原潜は原子炉を動力として使用するため、理論的には長期間の連続潜航が可能ですが、実際は潜水艦の任務は乗員の志気がダダ下がりするため60~70日が適切とされていて通常型とそう大きく変わりません。
高速での水中移動も可能ですが、原子炉の宿命でうるさいので実際的ではありません。

第一、調達コストがバカ高い。
米各軍の次期攻撃型原潜(SSN(X))は、調達コストが1隻1兆円を超える可能性があると言われています。
そのうえに最後に用廃する場合、原潜の解体は地上の原子炉以上にカネがかかり、技術的にも資金的にも米海軍でさえ壁につきあたっている始末です。
ロシア海軍みたいに、軍港近くにそのまま捨てる気なら別ですが。

そしてもうひとつの大問題は、韓国は米国エネルギー省によって「センシティブ国」に指定されているのをどうするつもりなんでしょうか。

「米エネルギー省傘下の研究機関など国の安全保障に関わる施設について、2025年度米国防権限法(NDAA)に「センシティブ(微妙な、慎重に扱うべき)国」に対するセキュリティー強化に向けた新たな規定が設けられたことが20日までに分かった。
米国務省のルビオ長官が昨年、米議会上院情報委員会副委員長だった当時「米国の技術優位を維持するため情報セキュリティー対策が必要」として超党派の支持を受け法案を成立させたという。
米エネルギー省が今年1月にセキュリティー国リストを更新した際の韓国の追加指定も、国防権限法におけるこの新たなセキュリティー強化関連条項に伴うものとみられる」
(朝鮮日報2025年3月21日)
米国、国防権限法に「センシティブ国」に対する保安強化規定を新設-Chosun online 朝鮮日報

こっ恥ずかしい話ですが、要するに韓国は米国の原子炉技術情報を盗もうとしてバレて出禁処分されていたんです。
韓国に流れたら最後、必ず北朝鮮にまで行きます。
それでエネルギー省の監視対象に置かれたというわけです。
こういう国に米国がすんなり最大の機密情報を含む原潜をそのまま進呈するわけはありません。

ですからこの会談、よくわからないことだらけなのです。

「トランプ氏は投稿で、「我々の軍事同盟はかつてないほど強力で、彼らが現在持っているディーゼル潜水艦ではなく、原子力潜水艦を建造することを承認した」と表明した。別の投稿では、「韓国は自分たちの原潜をフィラデルフィアの造船所で建造するだろう」とし、「我が国に『古き良きアメリカの造船業』が間もなく大きな復活を果たす」とアピールした」
(読売前掲)

う~ん、韓国が米国の造船所にカネ出して、自分で作るっことでしょうか。
多少の技術供与はあるでしょうが、軍事機密の塊の原潜技術をそう易々とは渡すほどお人好しじゃありませんぜ、韓国さん。
米国の造船所に資金ださせたところで終了にするくらいトラならやりそうです。
まちがいなく同床異夢となるはずです。

蛇足ながら、小泉防衛大臣も攻撃型原潜欲しそうで、困ったもんです。

「小泉進次郎防衛相は6日のTBS番組で、原子力潜水艦導入について、トランプ米大統領による韓国の原潜建造承認に触れた上で「まわりの国々は皆、原潜を持つ」と述べ、前向きに検討する姿勢をにじませた。潜水艦の動力について「今までのようにディーゼルか、それとも原子力かを議論していかなければいけないくらい日本を取り巻く環境は厳しくなっている」と述べた」
(産経11月6日)
小泉防衛相、原子力潜水艦「まわりの国々はみんな持っている」 安保環境厳しく、議論必要 - 産経ニュース 

あいかわらず頭軽いなぁ。通常動力の潜水艦をとことん進化させるのがウチの国の流儀。
そもそもバカ高くて、1隻で通常型なら10隻できるのに、どうしてこんなややっこしいものを欲しがるのか理解できましぇん。
イジェミョンといいジュニアといいほんとにもう。馬鹿は響きあうのか。

 

2025年11月 6日 (木)

サナエノミクスで春を先取り

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大きな河をせき止めていた塵芥が一気に崩れて、日本が本来もっていたエネルギーを放出し始めたようです。
その牽引役を努めているのが株価です。
昨日11月5日の日経平均は50,200.39 (5日 15:21)です。

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日経平均株価:リアルタイム推移・最新ニュース - 日本経済新聞

株価は、石破氏が辞任を表明する気配で上がり始め、高市氏が首相に就任するやいなや、あれよあれよ問いうま煮5万円を突破し、連日史上最高値を更新しています。

高市氏が就任早々に取った経済政策は①懸案だったインフレ対策としての家計支援(給付金付き減税、ガソリン・軽油引取税の暫定税率の廃止)を実行に移し始めました。
暫定税率の廃止など、いったい前政権はなにを昼寝していたんだ、といいたくなる猛スピードで与野党が合意し、本年内に廃止されることでしょう。
これでガソリンは一気に25円ほど安くなるはずです。

株式市場が高市氏の経済政策を好感しているのは、このサナエノミクスが石破政権において否定されてしまったアベノミックスを復活させ、さらにインフレ局面を考慮したアップデート版だからです。

第1生命研究所永濱利廣氏はこう述べています。

  • 高市氏が描く経済政策は基本的にイシバノミクスから一線を画し、野党の政策も取り入れて、これまでの緊縮財政の度合いを緩めるということになろう。高市氏の経済政策運営のカギを握るのは、名目経済成長率が長期金利を上回る局面では財政規律よりも経済成長を優先し、いかに大胆な投資が実現できるか。
  • 少なくとも総裁選の公約通りに政策が進めば、日本経済における最大の課題である供給力の強化が進展することになろう。そうした意味では、高市氏の経済政策も初期段階では、いかに国民の暮らしと安全・安心を確保すべく、25年度補正予算に政策を総動員し、雇用と所得を増やし、消費マインドを改善し、税収が自然増に向かう「強い経済」を実現できるかにかかってこよう。
    政権と株価の関係 ~コロナ下に求められる政権とは?~ | 永濱 利廣 | 第一生命経済研究所

つまり雇用と所得を増やすことによって個人消費の消費マインドを刺激します。
これがいまやっている家計応援政策、たとえば暫定税率の廃止ですが、このことによっていまネックとなっている供給力を底上げして経済成長を促し、同時にそれによる税収増を意図しています。
この循環が軌道に乗れば、増税しなくとも税収が増えますから防衛費などの必要な分野に予算投入が可能なはずです。

国会論戦を始まるや立憲の野田氏が「家計応援に即効性がない」とか言っていましたが、思わず失笑してしまいました。あんたの時はどーだったんだいといいたくなりますね。
野田氏が率いた民主党政権時の株価はこうです。
グラフ中央の大きくへこんだ時期がそれです。

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政権と株価の関係 ~コロナ下に求められる政権とは?~ | 永濱 利廣 | 第一生命経済研究所

ブハハハ、今の株価の7分の1ていどの8000円台あたりを低迷していたのですよね。(爆笑)
株式関係者はこの時期を「失われた4年」と言っています。
その原因は、経済成長をまるで悪と考えているかのような反資本主義思想にかぶれていたからです。
日銀審議委員をされていた原田泰氏の『反資本主義の亡霊』という面白い本があるのですが、左翼に根強くある資本主義は格差・貧困・戦争をもたらすという歪んだ思想が根底にあるのです。

そのうちゆっくりふれてみたいですが、この反資本主義とはなんのこたぁないニュールックのコミュニズムにすぎません。
政権さえとらなければ、世田谷に住んでオーガニックが好き、朝日を読んで反原発を叫んでいる無害な連中にすぎませんが、間違って政権をとったのが悲劇でした。
彼らは「コンクリートからヒトへ」という訳の分からないスローガンを唱えて、意気揚々と首相官邸に乗り込んだのです。

建前だけで解決策なしの反資本主義思想は、経済合理性など初めから無視していました。
政権を率いる連中が、ゼロ成長こそユートピア、足るを知る、里山資本主義こそ理想なんて気取っているんですから話になりません。

もっともそれじゃあ選挙に勝てないんで国民には小銭をばらまくんです。13000円ていどの子供手当て、高校授業料無償化、そして悪名高き農家個別所得補償といったやつです。

当然、財政は「強い財政」と称して緊縮財政ですから、同時にやったのが、レンホー氏と枝野氏が率いる「事業仕分け」ショーです。
これは財務省が青写真を書いて資料を渡してやらせたもので、基礎研究に対する国庫支出を削ろうとして、ノーベル賞学者たちから抗議されたのはこの時期です。

そして当時の日銀白川総裁がデフレ容認の金融政策をとりましたから悲惨でした。
白川総裁は970年代の「狂乱インフレ」の最大の原因は、金融緩和から引き締めへの転換が遅れたことだと総括して金融政策を否定し、財政規律が重要視しました。
いわゆる財政規律主義とか財政再建主義と呼ばれる財務省路線です。
政権を始動すく政治家は反資本主義にかぶれ、金融当局は金融引き締め、財政当局である財務省は財政再建主義の三拍子ですから、日本経済は本格的デフレに突入しました。
テレビでは価格破壊をスーパーが連呼し、主婦は1円でも安いものを求めて走りました。
そして増税です。消費増税は野田政権が決めたことを、当の野田さんはお忘れのようですが。

企業投資は低調になり、個人消費は激減し、若年層は就職ができず、株価は1万円以下を低迷するという日本列島デフレの冬景色の惨状をたっぷり味わいました。
この時期学校を卒業した若者は20数社の面接を受け、それでも決まらず派遣社員で一生を過ごすなんて珍しくありませんでした。
これで結婚などできるはずもありませんから、当然少子化に拍車がかかります。
いやー、いま思い出してもゾっとするヒドイ時期でした。ノーモア民主党と多くの国民は思ったはずです。

これが安倍氏が政権を奪還して一気に春を迎えます。
日銀総裁には黒田バズーカを指名し、史上かってない金融緩和政策を開始します。

「まず、第二次安倍政権下で株価が大幅上昇した最大の要因は、何といっても金融政策のレジームチェンジだろう。というのも、それまで先進国ではグローバルスタンダードだったインフレ目標2%をようやく日本政府・日銀も導入し、リーマンショック以降に欧米諸国が実施した大胆な量的緩和政策を遅ればせながら日銀でも黒田新日銀総裁のもとで実施したからである。
これにより、それまで金融緩和に消極的な日銀のスタンスなどにより日本株に見向きもしていなかった外国人投資家が日本株を持たないリスクを意識し、日本株を保有するようになった。これによって極端な円高・株安が是正され、日本株が海外の株価と連動性を高めるようになった」
政権と株価の関係 ~コロナ下に求められる政権とは?~ | 永濱 利廣 | 第一生命経済研究所

このアベノミクスによる経済と社会の春の芽生えは失業率に現れました。
第2次安倍政権発足前は5%を越える高失業率が就業者、特に若年層を苦しめてきましたが、アベノミクス開始と共に一気に花が咲いたように見る見るうちに低下し理論的最低値の2%に近づいています。
これがいまだ青年層が安倍氏を慕う大きな理由です。

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日本の人口・就業者・失業率の推移 - 世界経済のネタ帳

そしてアベノミクスを受け継いだサナエノミクスが、政権を取れた最大の理由は国民の支持があったからです。
いかにオールドメディアでの劣勢報道をしようと、SNSでそれを覆したのは一般人の支持があったからで、その中心勢力となったのは若年層が強かったからでした。




 

2025年11月 5日 (水)

トランプという「危ない帝王」

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「ねこねこ」さんから「結局、台湾の話題を出さなかったのは何故で、台湾の出さなくてもトランプの勝ちなのは何故なんでしょう…?」という質問を頂戴しております。
なかなか難しい質問で、私もあの記事の末尾は「どちらが「勝った」かは明白でしょう」と「勝利」にカッコをつけておきました。

ただし、トラも部下のヘグゼス国防長官にはカウンターパートである董軍国防相にこう言わしてはいるのです。

「ヘグセス米国防長官と中国の董軍国防相は31日、訪問先のマレーシアで会談した。ヘグセス氏が台湾周辺での中国軍の活動に懸念を表明した一方、董氏は台湾の独立に反対するよう米側に求めた。トランプ米大統領は10月30日に韓国で行われた米中首脳会談で台湾問題は議題に上らなかったと説明したが、国防相会談では台湾を巡り双方の立場を主張した。
ヘグセス氏は会談後、自身のX(旧ツイッター)で「南シナ海、台湾周辺における中国の活動に米国の懸念を伝えた」と投稿。中国側と対話を継続する重要性も強調した。
(産経2025年10月31日) 
米中国防相会談、台湾めぐり応酬 「周辺における活動に懸念」「独立に反対すべきだ」 - 産経ニュース

当人は勝った勝ったというが、別の方角から見れば中国の勝ちじゃんというふうにも見えます。
実際、ヨーロンパ系メディアはトラの負けと宣告しています。

こういう玉虫をやるのがあの男なのです。
ウクライナで、イヤというほどそれを知りました。
ある時はゼレンスキーに「お前の国は勝てない。お前の国が侵略したんだろう。負けだから領土を割譲してやれ」といったそばから、「トマホークを供与してもいいぞ。プーチンは信用ならん」と言ってのけるのですから、フツーじゃありません。
前言撤回など平気の平左。今日と明日、別のことを言っているのです。
すくなくともいままでの米国大統領の類型にはありませんでした。
マイク・ポンペオや、今のマルコ・ルビオとは根本的に違うのです。
いわゆる共和党系「保守」だと思うと、彼を見誤ります。

キリスト教福音派的な理念は強烈にあるでしょうが、民主党的自由主義陣営の指導者の自覚にはなはだ欠けています。
ただまったくないかと言うと、そうでもない。
力関係が有利だと見れば、明日にでも台湾承認を言い出すかもしれません。

たとえばそのチャンスは眼前にあるのです。
米台間の関税合意で文書に、「米国大統領トランプ」「中華民国総統・頼清徳」にサインすればよいだけです。
これをもって米台間の正式共同文書となりますから、国家承認と同義です。
こういう「危ない球」を密かにころがすのもトランプなのです。

さぁ、どちらなのでしょう。
トラは親台派なのか、親中派なのか?
設問が間違っているのです。
どちらでもない。

一見複雑に見えますが、実は単純です。
実は彼は子供のようにしたたかに自分の国と己の利害だけしか考えないから強靱です。
そう思ってつきあうしかない「危ない帝王」なのです。

まぁ首脳会談はトラからすれば、いま米中で問題となっているのは台湾じゃないだろう、むしろレアアースだろ、ということのようです。
米国の中国産レアアースに対する依存度は非常に強いのです。
ネオジム磁石の米国の中国依存度は84%、スカンジウム、イットリウムなどのレアアースの中国依存度は78%、その他のレアアース酸化物、塩化物の依存度は75%です。

そしてレアアースは、自動車、エネルギー、防衛産業などに不可欠な存在であり、供給途絶のリスクは産業界に大きな混乱をもたらす可能性があります。
中国はレアアースの採掘だけでなく、精製においても独占的な地位を確立しており、世界の化学精製の90%を支配しています。20251104-051957

中国はいかにして「レアアース大国」となったのか。苦汁をなめた時代からはい上がってきた執念。だが、レアアース輸出規制は両刃の剣 | 特集 | 東洋経済オンライン

このため、米国はレアアースに関して中国なしでは動きが取れない状況にあると言えます。
実際に米国はレアアースを戦略的重要物資として位置づけているにもかかわらず、中国に市場支配されていることを認めています。

このようなレアアースの首根っこを押さえられている状況があるために、米国は中国に煮え切らない態度をするほかにないのです。
日米首脳会談でもレアアースが議題に上ったように、今は中国と真正面から対決するのは不利とみているようです。
そりゃそうでしょう、実力で対決となった場合、中国はレアアースの100%禁輸に走るでしょうから、そうなれば日米が受ける打撃はハンパではありません。
だから、今はだましだまし時間をかけてでもレアアースのデカップリングをするほうがいいと判断したのでしょう。

安全保障においても、日本が本格的な同盟軍として戦えるようになるまでまだ時間が必要だと考えているはずです。
特に日本は法的な制約があまりに多すぎます。
これをひとつひとつ解消するまでいましばらくかかるはずで、その間はこの微妙なバランスを崩したくないというのが本音のはずです。
だから、今は中国とは不要な摩擦を避けたいと思っていても不思議ではありません。

一方、中国も軍部の腐敗と幹部の大量更迭が進んでいます。
習近平は反腐敗闘争の名目で他の派閥を徹底的に弾圧しまくったために、常に暗殺の恐怖に怯えています。
長老たちも含めて習の指導力に対する不安と憎悪は増すばかりです。
彼らもまた今日明日に台湾侵攻などできる状況にありません。
ただし、内部矛盾で外部に向けるという伝統的な手段があるので警戒を怠ってはなりませんが。

このようなわけで、米中首脳会談は互いにとって一種の痛み分け、休戦といったところが正確なところでしょう。
ですからその意味で、トランプにとっては「勝利」なのです。おわかりいただけたでしょうか。

 

 

2025年11月 4日 (火)

やっぱりやっていた韓国空軍機、竹島上空通過

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あ~あ、やっちゃった。
やるとは思っていましたが、なにも始まらない内にちゃぶ台返しですか。

「韓日両国が防衛協力強化のために推進した自衛隊基地での韓国空軍への給油計画が日本側の一方的な中止で実現しなかった。韓国空軍特殊飛行チーム「ブラックイーグルス」が最近、独島(ドクト、日本名・竹島)上空を飛行した事実を問題にしたという。
読売新聞は2日、韓国空軍が今月中旬にアラブ首長国連邦(UAE)ドバイで開催される国際エアショー参加のために移動する過程で沖縄県那覇基地で給油を受ける計画を韓日が協議中だったが中止になったと報じた」
(中央日報11月3日)
日本、韓国空軍特殊飛行チーム「ブラックイーグルス」に給油拒否…「竹島上空を飛行した」 - ライブドアニュース

先日、首脳会談で「未来指向」したばかりなのにね。

「韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は8月23日、東京都内で開催された日韓首脳会談で、「両国は社会、文化、環境などの多様な分野で、相互に有益で共助し合える最適なパートナー関係にある」と強調した。また、「1965年の韓日国交正常化以降、韓国の大統領が就任後、最初の2国間訪問先が日本となることは今回が初めてだ」とした。
両国首脳は同日の首脳会談で、(1)首脳間の交流と戦略認識の共有の強化、(2)未来産業分野の協力拡大と共通の課題への対応、(3)人的交流の拡大、(4)朝鮮半島の平和と北朝鮮問題での協力、(5)域内およびグローバル協力の強化について協議した」
(ジェトロ短信2025年8月25日)
日韓首脳会談、日韓関係を未来志向で安定的に発展させていくことで一致(韓国、日本) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ

なんでも韓国空軍のアクロチームが中東の航空ショーに行くのに、途中で空自の那覇基地で給油できないか、というのが起きたのが話のはじまりでした。

「日韓両政府が防衛協力の一環として、史上初となる自衛隊基地での韓国空軍機への給油支援を計画していたことがわかった。11月上旬に那覇基地で実施予定だったが、支援対象の空軍機が島根県・竹島周辺を飛んでいたことが10月末に判明し、日本側は急きょ受け入れを中止する方針を固めた」
(読売2025年11月2日)
史上初の韓国空軍機への給油支援、竹島周辺の飛行で白紙に…高市首相が実現に強くこだわった計画|Infoseekニュース

ところがこの韓国空軍のアクロチームは、実は直前に竹島上空で訓練したことがあることが分かってしまったのだそうです。

そもそも二国間関係で「軍」を使ってはいけません。
韓国空軍は6年前のムンジェイン政権時には、ムン閣下の命令で「領空守護」をしていたことを堂々と公表して日韓関係はどっぷりと氷河期に入りました。

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竹島上空に韓国軍機 「領空守護」のデモ飛行(19/10/01)

わかっているのかな、イ・ジェミン閣下。
竹島を「守護」しているのは韓国沿岸警備隊ですね。これが韓国軍でないというのがミソです。
これは領土紛争に「軍」が介在すると、なにか偶発的衝突があった時に軍対軍の衝突、すなわち戦争となってしまうからです。
ですから韓国も海の警察である沿岸警備隊を置いているわけです。いちおう理性的対応ではあります。

にもかかわらず、いきなり「領土守護」の名目でその上空や近海に空軍や海軍を入れたらどうなります。
軍を使った挑発行為そのものになります。
国際社会の理解では、「領土紛争地に軍を入れる」という行為は次は戦争だぞという意思表示ですからね。
だから反日バリバリのムンジェインでさえも、さすがこれ一回だけしかやれなかったのです。

米国から売ってやったばかりの新鋭機をこんなことに使うんじゃねぇ、と怒られましたしね。

それをイジェミンさん、政権とってすぐに空軍機を竹島の上に飛ばしましたか。
一気に対米関係も悪化しますよ。

イ政権を占う試金石は、ひとえに例の「三不」外交を放棄できるかどうかです。
何度か書いてきていますが、くだんの「三不」(3NO)とはこういう内容です。
改めて「3つのノー」とは

①韓国はTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)の追加配備を米国に対して拒否する。
②MD(ミサイル防衛網)を米国と構築しない。
③米日3国軍事同盟などの中国包囲網に参加しない。

韓国は中国に対し、日米韓の軍事同盟を結成しないと約束しただけではありません。
軍事協力が同盟に至ることはない、とも確約したのです。
え、今の米韓同盟って軍事同盟じゃなかったの、と言われた米国も驚いたでしょうね。
つまり、3国が実施する共同訓練が同盟に発展するものと中国が見なせば「3NO違反」と認定されて駄目だしを食らってしまうという恐ろしく劣位の合意なのです。
しかもあいまい、かつ中国様がそう思ったらダメという類です。

今回の韓国アクロ機に自衛隊が給油するということは、モロに「3不」に引っかかるでしょうね。
イ・ジェミョンは、先日の米韓首脳会談でトランプから、しっかりと日本と協力していけとネジを巻かれたはずです。
イからすれば不本意でしょうが、なにぶん関税問題がかかっています。
いまでも最悪の淵にひっかかっている韓国経済にとって、ここでトランプ関税と米国投資を強いられたらどうなるかわかりきっています。

「アメリカのドナルド・トランプ大統領は29日午前、日本を出発し、アジア歴訪の最終目的地である韓国に到着した。この日は李在明(イ・ジェミョン)大統領と会談し、貿易や北朝鮮をめぐる問題などについて協議した。双方はその後、包括的な貿易合意に達したと発表した。
韓国大統領府の金容範(キム・ヨンボム)政策室長は、両国が相互関税を25%から15%に引き下げることで合意したと説明。また、韓国はアメリカに対して総額3500億ドル(約53兆円)を投資するとした。うち現金投資が2000億ドル、造船分野への投資が1500億ドルとなるという」
(BBC10月29日)
アメリカと韓国が首脳会談、「包括的な貿易合意」に達したと トランプ氏は習氏との会談見据える - BBCニュース

たぶん韓国空軍機をドーハの航空祭に飛ばす途中で空自那覇基地で給油させるというのは、イからすれば象徴的な日韓友好のジェスチャーをしてみせるというトランプへのアピールもあったはずです。
両国はまだ物品役務相互提供協定(ACSA)を締結していませんから、日本政府も気を効かせて自衛隊法上の無償貸与規定を根拠に燃料を提供する方針でお出迎えしようとしていたら、こうです。
小泉ジュニアなど、この給油計画を契機に今後ACSA締結など両国間の防衛協力が本格化だなんて考えていたはずです。

それが直前に竹島上空で訓練していたことが分かって一気にチャラとなったわけです。
おいおい竹島上空の訓練なんて、空軍の勝手じゃできないことです。
一体誰が命じたんでしょうね。ああ、ほんと困った国だ。

イ・ジェミョンはいうまでもなく反日反米です。
それはいままでの彼の野党党首としての言動でわかります。
したがって、ほんとうは親中・従北政権なのですが、あいにく中国は韓国(という朝鮮半島に)に関心を失っているうえに、なんと北朝鮮に至っては「北朝鮮と韓国はまったく別の国であり、韓国は敵国である」という立場になってしまったためにとりつくシマすらありません。
かつてのムン時代のような、南北統一という「民族の悲願」というドリームすら許してもらえないのですから、つらい。

そして食料難すらささやかれる経済不況ですから、もはや伝来の趣味の反日反米ゴッコなどやる余裕はないのです。
だから空軍アクロチームという衛生無害なものに燃料補給を要請してと思ったのでしょうし、それはそれで高市氏はここで一気に韓国と間合いを詰めるいい機会だと思ったのでしょうね。
それが一瞬にしてパーです。やれやれ、これでまた振り出しですか。

 

 

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