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2025年1月17日 (金)

目に余る自民党指導部のコウモリ外交

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凡庸な政治家がふたつの争う勢力にはさまれた場合、どうするでしょうか。
どちらがわが国の国益かということを考えずに、このふたつの国をどうなだめるのかと発想するでしょう。
そしてどちらにも媚を売り、折衷案をひねり出します。
その結果、どちらの側も満足せず、誰もこんな国を信用せずに、結果どちらも失敗します。

ゲル首相が就任式後にワシントン詣でをする一方で、森山幹事長は中国共産党詣でをしました。
矛盾したことだとは思っていないようです。

「自民・公明両党の幹事長らは、7年ぶりとなる中国共産党との政党間交流「日中与党交流協議会」などに臨むため、13日から中国を訪問しています。
自民党の森山幹事長と公明党の西田幹事長ら12人の訪問団は、日本時間の13日午後1時前、中国に到着しました。
13日から3日間の日程で北京に滞在し、14日は2018年以来、7年ぶりに再開される中国共産党との政党間交流「日中与党交流協議会」に出席します。
この中では、
▽日本産水産物の早期の輸入再開や
▽拘束されている日本人の解放など
懸案事項について日本の立場を伝えるほか、
▽弾道ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮への対応や
▽両国間の交流の促進などについて意見を交わす見通しです」
(NHK1月15日)
自民党・公明党の幹事長が中国訪問 7年ぶりに中国共産党と与党交流へ 「日中与党交流協議会」に出席 | NHK | 日中関係

そのときに森山氏が中国共産党に渡したゲル首相の親書の内容がこれまたドヒャーものです。
「【北京時事】自民党の森山裕、公明党の西田実仁両幹事長らは15日、中国・北京の人民大会堂で李強首相と会談した。石破茂首相から習近平国家主席に宛てた親書を手交。石破氏が早期訪中に意欲を示していることを踏まえ、李氏は「都合の良いときに訪問していただきたい」と歓迎する意向を表明した。要人を含む日中間の人的交流や経済交流の重要性も確認した」
(時事1月15日)

中国首相、石破氏訪中を歓迎=「都合良いときに」自公幹部へ伝達|ニフティニュース
ゲル氏は、要人交流を盛んにし、自分も早期に訪中したいんですと。

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中国に輸入規制撤廃要求 自民森山氏 「成果が必要」 李首相ときょう会談 | 沖縄タイムス+プラス

外務省は森山氏にナニを教えてやっているのでしょうか。
森山氏が会談をするだけではなく、一歩踏み込んで基調講演までしている中国共産党対外連絡部は中国共産党の対外工作機関ですよ。
ドイツの連邦憲法擁護庁によれば、対外連絡部とは、党中央委員会の直属機関として、外国の影響力のある人物を取り込み、中共に有利な発言や行動を促す役割で作られた機関で、外国において中国共産党の政治的目標に賛同する人的ネットワークの構築を目指しています。

こういう相手と協議会を開き、自民党と公明党の幹事長という政権与党のトップらが、「日中関係を進展させるには具体的な成果が求められる」と強調したわけです。
対外連絡部だけではなく、外交トップの王毅相手にも同じことを言っています。

「王毅外相は「両国は一衣帯水の近隣どうしであり、各分野で協力を強めていくべきだ。両国の与党は重い責任を共有して担っている」と述べました。
これに対し、森山氏は「去年11月の日中首脳会談で示された大きな方向性をもとに、課題と懸案を1つでも多く減らし、目に見える形で協力や連携を具体化し、日中関係が発展してよかったと両国の国民が実感できるよう、共に努力したい」と応じました。
また、西田氏は、政党間交流の「日中与党交流協議会」を、次回はことし秋に日本で開催することを明らかにしたうえで「関係改善の勢いを加速していくことが、私たちに課せられた大きな責任と使命だ」と述べました」
(NHK1月14日)
自民 森山幹事長と中国 王毅外相が会談 “目に見える形で協力や連携を” | NHK | 日中関係

公明党の西田氏がいう「今秋にこの日中与党協議会を日本で開きたい」というのは、おそらく公明党や自民党親中派が画策している習近平の訪日のことでしょう。
習が、まだ首席になる前の民主党政権時に訪日したときには、小澤氏が横車を押して天皇陛下と会見させましたが、これでまた日中蜜月を演出したいのでしょう。

中国との戦いを一番に掲げたトランプの就任式1週間前に、その中国共産党と協議会をやって「関係改善に具体的に進もう」と叫ぶのですから、もうトランプからすればケンカ売ってんのか、上等だという気分になるでしょうな。
そのうえこの森山御大は、こんな言わずもがなのことまで言ってしまっています。

「自民党の森山裕幹事長は8日、熊本市での自民県連会合で、国際情勢に関し「世界が内向きになりつつある。内向きのチャンピオンは、間もなく就任するトランプ次期米大統領だ。非常に方向性が気になる」と述べた。米国第一を掲げるトランプ氏の動向を注視する考えを示した。
同時に「世界の国々としっかりと協調し、わが国の発展を果たさなければならない」と語った」
(日経1月8日)
トランプ氏は「内向きのチャンピオン」 自民党・森山氏 - 日本経済新聞

米国大統領を「内向きのチャンピオン」と揶揄し、「世界の国々としっかり協調する」と言った直後にでかけたのが、中国共産党との協議会ですから、「誰と協調する」のかは一目瞭然です。
森山氏は、日本は中国とよろしくやっていく、「内向きのトランプ」を包囲していく、と大ぴらに宣言したことになります。

かといって、凡庸なる自民党領袖たちは米国と手切れになる気はいささかもないようで、就任式に絡めて訪米し、虫がいいことには日米首脳会談をしたいと言っています。

「石破茂首相は2月前半にワシントンを訪問し、1月20日に就任するトランプ次期米大統領と初の首脳会談を開く方向で最終調整する。日米同盟の重要性を新政権との間で確認する。経済や安全保障分野で協力の具体策を話し合う。
2月8、9日の週末や前後の日を使い訪米するのが有力。
(日経1月12日)
石破首相の訪米、2月前半で最終調整 トランプ氏と会談 - 日本経済新聞

へぇ、それでも会うんだぁ、鉄面皮なことよと妙に感心してしまいますが、ナニを話すの、ナニをしたいの、どうして今トランプと合わねばならないのと頭がクルクルしてしまいます。
「日米同盟の重要性の確認」なんて、毎回大統領が代わるごとにやってきていて、そのつど「尖閣は日米安保第5条の範囲内」というご託宣を頂戴して「外交成果」としています。
今やるなら、ぜひゲル首相の持論である「日米安保の双務的発展」をかますべきでしょう。
「米国が内向きチャンンピオンだ」などと泣き言を言っていないで、わが国は米国の世界戦略にの絶対的同志だということをじぶんの言葉で言ってきなさい。
そうすればトランプがゲル氏を見る目が、多少なりとも違ってくるはずです。

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【 画像3/4枚 】岩屋外相が訪中し李強首相、王毅外相と相次ぎ会談 歩み寄りの機運:朝日新聞デジタル 

とまれ、ゲル政権中枢の岩屋外相と自民党森山幹事長は、露骨な中国との無節操な融和に動いてしまいました。
岩屋氏が王剛と取り交わしたことにはこのようなものが含まれています。 

「第2回日中ハイレベル人的・文化交流対話
(7) 日本側から、日中外務報道官協議の早期開催に期待を示すとともに、双方は、民間主催のメディア交流を再活性化させることを確認しました。
第2回日中ハイレベル人的・文化交流対話|外務省

ところが同じ7節の中国版にはこうあると山口敬之氏が指摘しています。
たぶんこちらがオリジナルで、これで合意してしまっているはずです。
下線部分がなぜか日本版には欠落しています。よほど日本人には秘密にしたかったのでしょう。

七是加强媒体、智库交流合作,在双边关系中发挥积极作用,着力改善民意和舆论环境。支持双方开展新媒体交流合作,鼓励两国正能量网络创作者相互交流。
メディアやシンクタンク間の交流と協力を強化し、二国間関係において積極的な役割を果たし、世論や国民感情の環境改善に努めることです。双方が新しいメディア交流と協力を展開することを支援し、両国のポジティブなエネルギーを持つネットワーク創作者が相互に交流することを奨励します

これは政府が中国に対して「世論や国民感情の環境改善に努める」、すなわち親中的な発言を強化するという意味にとれます。
このようなことが、言論の自由が確立したわが国でできるものかどうかかんがえなくてもわかるはずです。
それとも岩屋氏は、政府による中国礼賛の言論統制や検閲を肯定したいのでしょうか。
かつての日中国交回復時には、それに近いメディアの「空気」が存在しましたが、またあれを繰り返したいようです。
だからあえて日本版から削除したのでしょう。

それも時をわきまえずに、中国を主敵とするトランプ就任1週間前ですからケンカを売ったも同然です。
仮にご両人がそうおもわなかったら、逆にその鈍さに感心するばかりです。
こんなゲル氏の訪米の「地ならし」をしてしまうと、たぶんトランプは貿易や安全保障で高いハードルを与えて来ることでしょう。

トランプがやらなくてもイーロン・マスクがやります。
いったん敵認定されてしまえば、いくらと同盟国だからといっても情け容赦なく叩きまくります。
カナダのトルドーはトランプとの対談で絶望し辞任に追い込まれましたし、同じ北米のメキシコも対中戦略を大きく転換することを余儀なくされました。

これは北米自由貿易協定(NAFTA)を抜け穴にして、中国がメキシコやカナダからEVを米国へ入れようと画策しているからです。
パナマやグリーンランドで、非常識に見えるようなことを言っているのも一緒です。
ここが米国にとって安全保障上きわめて重要な地域だから、牽制しているのです。

英労働党政権やドイツ社民党政権も、イーロンマスクの標的になっています。
次に標的にされるのはわが国だと心することです。

その前兆は、別記事にする予定ですが、日本製鉄のUSスチール買収計画についても露になっています。
ここにきてバイデンもトランプも買収阻止を言い出し、とうとう買収で日鉄よりはるかに低い額しか提示できなかった米鉄鋼2位のクリーブランド・クリフスが割り込んできました。
このクリーブランドクリフスのゴンカルベスCEOは、言うに事欠いて「日本は中国より悪だ」「1945年以来、学んでいない」など頭のネジが飛んだような発言をしています。
これでは40年前の1980年代の日米貿易摩擦時代の蒸し返しで、たぶんゴンカルベスはトランプの意を汲んでしゃべっています。

この危機感もなく、こともあろうにトランプ会談の前に訪中して、中国共産党と握手してくるなんて、想像絶する凡庸さです。 
なんか既視感があるなと思ったら、あ、そうそうムン・ジェインが似たことをしていましたっけね。

2025年1月16日 (木)

ユン大統領、出頭に応じる

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ユン大統領が自ら出頭に応じて青瓦台を後にしたようです。
たぶん無視されるでしょうから、ユン氏のステートメント全文を乗せておきます。

「韓国の ユン・ソンニョル大統領が、拘束に際して発表した国民向け談話の要旨は次の通り。
私を応援してくださったことに感謝する。
残念ながら、この国の法はすべて崩れた。
捜査権のない機関に令状が発付され、令状審査権のない裁判所が拘束令状と捜索令状を出したのを見て、また、捜査機関がうその公文書を発行して国民を欺く違法の違法の違法が行われ、無効な令状によって手続きを強圧的に進行するのを見て本当に嘆かざるを得ない。
私は今日、彼らが警護保安区域を消防装備を動員して侵入してくるのを見て流血事態を防ぐため、ひとまず不法捜査ではあるものの高位公職者犯罪捜査庁(公捜庁)への出席に応じることにした。
しかし、公捜庁の捜査を認めるわけではない。憲法と法体系を守らなければならない大統領として、違法で無効な手続きに応じるのは流血事態を防ぎたいとの一念からだ。
国民の皆さんがこれまで、特に青年たちが自由民主主義の大切さを本当に再認識するようになり、情熱を見せてくれたのを見て、今は法が崩れて暗い時期だが、未来は希望的だという考えを持つようになった。
国民の皆さん、どうかお元気で頑張ってください。
ありがとうございます」
(読売1月15日)
韓国大統領 拘束で談話「残念ながらこの国の法はすべて崩れた」「流血を防ぐため応じた」 : 読売新聞 

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読売

訣別の辞のように読めてしまいますが、ユン氏はもちろん今後も戦う気満々です。

「大統領権限を代行する崔相穆(チェ・サンモク)経済副首相兼企画財政相は「国家機関間の物理的衝突はいかなる理由であっても許されない」と表明していた」
(産経1月15日)
韓国・尹錫悦大統領の拘束令状を執行、捜査本部 現職大統領で初 「不法捜査だが出頭」 - 産経ニュース

戒厳令の判断は誤っていましたが、この国家機関同士の相討ちという最悪の事態を回避したことは賢明でした。
公捜処(高位公務員犯罪捜査)は実力で青瓦台に入ったようですが、これを見てユン氏側は流血を避けるために自ら出頭したようです。
この拘束の前後にも行き違いがあったようで、ユン氏側はその30分前から捜査に応じる旨を伝えていたようですが、公捜処は強引に実力で押し入ろうとしたようです。

「(ユン氏の弁護人の)ソク弁護士は「夜明けから公捜処と警察が大量に令状執行をすると管轄区内にまで押し入り、官邸の外で市民が怪我をしたという知らせも入ってきて、また警護処職員が大統領に対する令状執行を必ず防ぐという意志をハッキリ示しており、警護処と警察の間に物理的な衝突が生じる可能性も高くなってきたことなどで、大統領としてそのようなことを未然に防止するために、こうしなければならないという心情で決断したものだと説明した。続いて「公捜処と警察が先に官邸から撤収すれば、警護移動準備ができ次第、公捜処に出発する予定だ」とし「出席時間は状況整理や準備などがあるため、もう1、2時間がかかり、今日の午前中は公捜処に到着するようになるのではないかと思われる」と伝えた」
ソク・ドンヒョン「尹、今日は空輸事務所にいます。。」これは違法な逮捕の試みですが、避けられない決定です。

公捜処側は警備側が車両をバリケードに使うと見てレッカー車まで準備し、1000人が突入し、機動隊が3000人包囲したともいわれています。
おそらく警護室と銃撃戦になるとみていたはずです。

大統領側はここでそのような自体になれば、完全に無政府状態になると見て、名誉ある撤退を求めたようですが、結局15日午前10時33分に逮捕状が執行されました。

それにしてもどうして捜査側がここまで大事に演出したいのか理解に苦しみます。
大統領が出頭を拒否したとしても、公捜処側が青瓦台にしかるべき少数の取調官を派遣して効けばいいだけのことで、どうしても公衆の面前で手錠をガチャっとやりたかったとしか思えません。

以後、公捜処は与えられた20日間程度で取り調べをするようです。
大統領を逮捕してまでの案件でありながら、わずかの時間でのスピード捜査です。
想像できるように、これで満足な真実が明らかになるとは思えません。

ユン氏が声明でも述べているように公捜処には内乱罪を捜査する権限がありませんから、憲法裁判所の判断を待たねばなりません。
その結果がでるまでユン氏は「現職大統領」であり続けるわけです。

そもそもユン氏の弾劾理由である「内乱罪」を、弾劾した当事者の議会は取り下げています。

「【ソウル=仲川高志】韓国の憲法裁判所で3日に行われたユン・ソンニョル大統領の戒厳令宣布をめぐる弾劾審判の弁論準備手続きで、野党議員で構成する国会の訴追団が訴追事由から内乱罪を撤回し、戒厳令の違憲・違法性の審理に絞ると表明した。大統領や与党側は「弾劾訴追自体が誤りだ」と反発している。
内乱罪の撤回は、審理の迅速化を図りたい野党の思惑を反映した法廷戦術とみられる。内乱罪の立証には長時間を要するとみられる上、尹氏は、戒厳令宣布は正当な統治行為だったと反論に自信を見せている」
(読売1月4日)
韓国大統領弾劾巡り訴追団が内乱罪立証を撤回、審理迅速化図る…与党側「訴追自体が誤り」と反発 : 読売新聞

おいおい、議会多数派の共に民主党さん、ユン氏を弾劾した最大の理由は戒厳令が内乱罪に当たるということじゃなかったのですかね。
その弾劾理由からヘソの内乱罪を取り下げたら、お前閣議をおろそかにしていただろうという形式犯か、今は戒厳令出す状況じゃなかっただろうという状況判断の主観の問題だけになってしまいます。
ユン氏からすれば、その行き過ぎは認めたとしても「統治行為」で突っぱねることもできるわけです。

ユン氏は獄中の現職大統領として、逆に議会多数派を糾弾するでしょう。
ある意味で振り出しに戻ったとも言えるのです。

なお、ユン氏がこう言っている、ああ言っている、ゲロして積みを認めた、という様な情報がボチボチ出始めていますが、このような検察や警察のリークはアチラの国でも常識ですので、鵜吞みにしないようにしましょう。

 

2025年1月15日 (水)

ウクライナに投じられた北朝鮮兵士の悲哀

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私は北朝鮮軍の兵士に同情することはいままでまったくなかったのですか、今回に限って気の毒ではあるなぁと思います。
ウクライナに派兵されている北朝鮮兵士の実情がだんだん漏れ伝わってきました。
とうとう生き証人とでも言うべき捕虜が捕まり、画像が公開されています。
いままでその推定される損害に較べて確保される捕虜が少ないのが疑問でしたが、どうやら捕まるなら自殺しろと命じられていたようです。

「韓国の情報機関・国家情報院(国情院)は13日、ウクライナ軍との戦闘で戦死した北朝鮮兵士の所持品に、捕虜にならず自爆や自決をするよう北朝鮮当局が命じる内容が見つかったと説明した。国会の委員会に出席した議員が記者団に明らかにした。
北朝鮮の兵士は、ウクライナが越境攻撃をするロシア西部に派兵されている。国情院は最近の事例として、ウクライナ軍に捕らえられた北朝鮮兵が「(朝鮮労働党総書記の)金正恩将軍!」と叫んで手投げ弾を爆発させようとしたと説明した。この北朝鮮兵はその場でウクライナ兵に射殺されたという」
(毎日1月13日)
「金正恩将軍!」と叫び自爆図る ロシア派遣の北朝鮮兵 韓国説明(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

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「恐怖に震え自信喪失」ロシア派兵部隊の動揺に北朝鮮当局も困惑(高英起) - エキスパート - Yahoo!ニュース

北朝鮮が昨年秋に、1万2000人規模の兵力をロシアに送り、彼らはクルスク州などでウクライナ軍との戦闘に加わったことは分かっていました。
断片的には彼らがすでに多くの犠牲を出していることは、ゼレンスキーの4日の演説で死傷者は派遣兵力の3分の1に及ぶという演説で知られていました。

「ウクライナ政府は、これまでに1万~1万2000人の北朝鮮兵がロシアに派遣されたとみている。国情院は、これまでに北朝鮮兵300人あまりが死亡し、約2700人が負傷したとの推計を説明した。
ウクライナのゼレンスキー大統領も10日に、北朝鮮の兵士の死傷者が4000人に上ったとの見方を示している」
(毎日前掲)

軍事常識では、確認できるだけで3割の兵士が死傷した場合、組織的戦闘の継続ができないとして「全滅」と判定されます。
このような部隊はできるだけ速やかに後方に撤退させて、損害を補充する必要がありますが、たぶんロシア軍はそのような措置をとらないでしょう。
ロシア軍はクルスク全域を奪還するために、「挽き肉作戦」と呼ばれる非人道的攻撃を繰り返しています。
これはろくな戦車などの支援なしに、損害を省みずにしゃにむに敵陣地の前に生身の体を投げ出す人海戦術ですが、わずかな数キロの土地と交換にして数万規模の損害を出しています。
こんな戦法をとるロシア軍にとって、北朝鮮部隊がすり潰されるのは計算済みのことにすぎません。

バフムト戦線で、ロシア軍がとった戦法が「ゾンビーアタック」です。
そのロシア軍は正規兵ではなくワグネルが担っていました。
ワグネルはプーチン直属の傭兵集団でしたが、アフリカやシリアの汚い戦争に投入され、残忍な爪痕を残してきました。
このウクライナ戦争にも投入され、ここでワグネルが命じられた戦術が、ゾンビーアタック、すなわち人海戦術です。
今どきこんな戦法をとるのは、世界ひろしといえどロシアくらいなもの。
本家の中国ですら一人っ子政策で青年層が薄くなっているのでもうできません。

映画『スターリングラード』をご覧になった方は、主人公がスターリングラードにいきなり連れてこられて体験するので覚えておられるかもしれません。

主人公らは、銃を渡されずに突撃させられ、前の兵士が死ぬとその銃を拾って戦えと命じられます。
機関銃で撃ちまくるドイツ軍になにも持たずに突撃しろというのですから、当然全滅になりますが、それでかまわないのです。
その分しか銃は用意されていないし、兵隊の生命など無価値だと考えているから、銃のような貴重な物資は二人に一丁で充分だと考えていたのです。
バフムトで大損害を被ったワグネルも同様だったようで、ブリゴジンは装備もなしに突撃させるのかと怒り狂い、とうとうキレて叛旗を翻しました。
ですから全滅するのは想定内、弾代わり人間を使うのです。

当然突撃部隊はほぼ全員が死にますが、わずかに生き残った者は命からがら自軍の前線に戻ろうとします。
しかしそこに待っているのは、味方の督戦隊の機関銃です。
戻ろうとした兵士は全員が「逃亡兵」として射殺されることになります。
これは今のロシア軍のなかにも残っています。

このような作戦に投入された北朝鮮兵士こそいい面の皮です。
彼らは21世紀の兵士ではなく、1950年代の朝鮮戦争から一歩も進化していない古生物のような兵隊たちなのです。

彼らに鉄砲一丁持たせて、短期の訓練だけでいきなりクルスクという激戦地に投入するのですからめちゃくちゃです。
北朝鮮指導部にまともな判断力があればこんな劣悪な条件は呑むべきではありませんでしたが、正恩がミサイル技術の餌に釣られて一番乗り気だったのですから絶望的です。

ウクライナの軍事専門家であるミハイロ・サムスはこのように述べています。

「また、ウクライナ軍との戦闘を続ける北朝鮮軍の兵士について、大量の無人機が投入され、電子戦の技術なども求められる現代の戦争には「慣れていない」としつつも「ロシアが戦い方を教え、彼らも訓練をしている。北朝鮮にとっては韓国との戦争に備える上で現代の戦場から教訓を得る機会となっている」と述べ北朝鮮は、今後も多くの兵士を派遣する可能性があると指摘しました」
(NHK1月4日)
北朝鮮兵 ロシア軍装備着用か ウクライナ情勢複雑化 ことしは | NHK | ウクライナ情勢 

たぶん北朝鮮の兵士は、無人機が徘徊し、ドローンが戦場を監視し、適時に攻撃を仕掛けてくるような戦場は考えてもいなかったはずです。
そもそも彼ら北の兵士は石油不足のために、戦車や歩兵戦闘車との共同作戦をした訓練をしてきませんでした。
ですから、ロシアとしては人海戦術ですり潰すしか使い道がないと思ったのでしょう。
かつて、この人身御供にはブリゴージンのワグネル傭兵部隊が使われていましたが、彼らなき後、その代用に北兵士を使っているのです。

そんな前線で戦う兵士の士気は崩壊状態のようです。
下の写真はウクライナ軍ドローンが撮影した、ドローンに追い回されて恐怖に怯える北朝鮮兵士です。

デイリーNKは、兵士たちの現状をこのように伝えています。

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過去1週間で #北朝鮮兵 1000人死傷 米高官「 #人海戦術 」と批判 #ロシア #ウクライナ #毎日新聞 #tiktokでニュース | 北朝鮮 スマホ | TikTok

「ロシアに派遣した兵士たちが死への恐怖でひどく萎縮しており、文化など様々な面でも適応できず、思想的にも変化する兆候があるという文書が先月下旬から伝えられており、(北朝鮮当局の)悩みの種になっている」
この文書によると、思想に問題なく、肉体も鍛え上げられた兵士たちだが、実戦の中で精神的に激しく動揺しているという。
北朝鮮当局は、ロシアに派遣された軍事部門イルクン(幹部)からの報告で、兵士たちが未来への確信を持てず、死に対する恐怖とショックに陥っている状況であることを認識しているとのことだ。
兵士たちはまた、外の世界を一度も経験したことがなく、ロシア軍と共同作戦を行う過程で過度に萎縮してしまっているようだ。初めて接するロシア人など外国人を不思議がったり、過大評価したりしている。
海外からの情報流入を過度に統制してきた体制の在り方が、弱点として作用しているということだ」
(高英起) - エキスパート - Yahoo!ニュース

そもそも北の兵士ほど真空状態で育成された軍人は世界に存在しません。
北朝鮮国内でも、兵舎は市民生活から切り離され、もちろんSNSなど影も形もなく、あるのは貧弱な食事と過酷な訓練だけ。
人的物的リソースは全部弾道ミサイルと核開発に注いでいますから、兵隊は数だけ揃えていれば満足しているという愚かな姿です。
こんな軍隊に名前だけは「暴風軍団」と空威張りな名前を与えて、ロシアに供与したのですから、結果は初めから見えていました。
これは一種の飢餓輸出で、彼らを送った見返りで、ロシアからミサイルや核兵器技術を譲渡される約束をしたからです。

さらに北の兵士たちを待っていたのは、ロシア軍の差別だったようです。

「現地からの報告によると、北朝鮮の兵士に会ったロシア軍兵士の中には『根本的に人として扱う価値がない』と言い放つものすらいたという」(情報筋)
その原因として挙げられたのが言葉と文化の壁だ。ロシア軍内部でも、北朝鮮の兵士に対する不満が高まっており、ロシアとの軍事協力に悪影響を及ぼしかねないとの内容も、報告書に含まれているとのことだ。
「戦死者、負傷者が増えるにつれ、兵士たちがさらに恐怖に震え、精神的に苦しんでいる。(言葉、文化への)適応問題が壁となり落胆しており、いつでも党と国家を裏切り、事をしでかすかもわからないという懸念が取り沙汰されている」(情報筋)」
(高英起) - エキスパート - Yahoo!ニュース

ここまで追い詰めると、これらの北兵士には後は暴発か、脱北しか残されていません。

 

2025年1月14日 (火)

LAの大火災とリベラル政治が残したもの

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今、ロスアンジェルスの山林から始まった大火災が手がつけられません。
このあたりは先住民だった頃から山火事が多い地域で、乾燥していると自然発火する場合があります。

(CNN) 米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊で発生した山火事による死者が少なくとも16人となった。四つの山火事が依然として燃え続けるなか、消火活動の妨げとなる恐れのある強風が予想され、当局は鎮火に向けて取り組みを進めている。
数万人が依然として避難指示の対象となる一方、自宅に戻ったものの全てを失い、再建への長い道のりに直面している人もいる。
郡内4カ所の火災のうち、沿岸部の高級住宅地パシフィック・パリセーズの「パリセーズ火災」は焼失面積が約9600ヘクタールで、鎮火率は11%にとどまっている。
風はいったんやんだ後、朝から再び強まる見通し。警報によれば、乾燥した植生と組み合わさることで、風が新たな火災あるいは既存の火災の素早い拡大や不安定な動きを促す可能性がある」
(CNN1月13日)
米ロス山火事、死者16人に 依然として数万人に避難指示 - CNN.co.jp

衛星写真を見るとその被害状況がわかります。

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「(CNN) 米カリフォルニア州ロサンゼルス郡では各地で猛威をふるう火災により甚大な被害が発生し、これまでに少なくとも10人が死亡した。複数の住宅地が丸ごと破壊され、1万棟の建物が焼失。破壊の様子を上空から捉えた人工衛星画像には、住宅地全体が瓦礫(がれき)と化した様子が写っている」
(CNN1月11日)
米ロス山火事、発生前後の衛星写真を比較 被害まざまざ - CNN.co.jp

隣国のカナダとメキシコは12日までに消防隊の派遣を相次いで発表し、ゼレンスキー大統領すら「ウクライナは米国民の人命救助を支援できる」として、消防隊の派遣準備を進めているそうです。

原因は追々明らかにされていくでしょうが、その大きなひとつに消防に対する1760万ドルもの大規模な予算削減が響いているという士気がされています。

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ロスで発生した大規模な山火事に冷たいトランプ、視察要請にも応えず 宿敵ニューサム知事潰しか、山火事は天災ではなく人災と批判(1/3) | JBpress (ジェイビープレス)

「バス市長を巡っては、火災発生時にガーナの大統領就任式に出席するため国外におり、不在だったことが物議を醸している。加えて、火災発生後に2024-25年度の市の消防局の予算を1760万ドル削減したことが発覚。消火活動中の消防隊員からも消火栓の水が枯渇していると悲鳴が上がっていることが報じられている。現在も3カ所で大規模な火災が続き、7万人が避難を余技なくされているが、鎮火率は0%で今後も被害の拡大は免れず、市の歴史上最悪の山火事となっている。
(日刊スポーツ1月10日)
山火事でロス市長にセレブから非難の嵐「消火栓は空」「交通誘導する警察官が1人もいない」(日刊スポーツ) - Yahoo!ニュース

全滅したパシフィック・パリセイズ地区では消火活動自体ができませんでした。
理由は消火栓から水が出ないからで、その水源であるサンタイネス貯水池は火災が発生した時にはカラッポでした。
現時点ではこの貯水池と消防栓ラインとの関係は分かっていませんが、この貯水湖はすでに2年前から機能しておらず、ロスアンジェルスの公共インフラが崩壊しているかがよくわかります。

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FOX はロス市をこのように批判しています。

「ロサンゼルス市当局は、州史上最も破壊的な山火事の1つに先立ち、消防署から数百万ドルの資金を剥奪していましたが、「ゲイ・メンズ・コーラス」やトランスジェンダーのホームレスのための住宅などのプログラムに数十万ドルが割り当てられました。
今週、南カリフォルニア全域で致命的な火災が発生し、猛烈な風によって増幅され、約10,000軒の家屋や企業が破壊されました。消火栓が水を出さず、家屋が全焼した後、住民は民主党主導の州内指導部に声をかけ始め、ロサンゼルス消防局(LAFD)の資金をわずか数ヶ月前に1760万ドル削減した。
しかし、同省の予算が引き下げられる中でも、Fox News Digitalがロサンゼルス郡の予算を見直したところ、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンのイニシアチブやホームレスに注射器を提供するプログラムに数千ドルの納税者が割り当てられていたことが明らかになりました」
(FOX2025年1月10日)
ロサンゼルス郡は、消防予算を削減しながら、目覚めたプログラムに多額の費用を費やしました |フォックスニュース

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ロサンゼルス市長のカレン・バスとカリフォルニア州知事のギャビン・ニューサム

バスとニューサムは二人共に民主党で、ニューサムは次の民主党の大統領候補を目指している人物です。
彼らのがLGBTやなどにいれあげて、公共インフラの保全を省みず、しかも消防の予算をバサバサ切ったことがこの大火を食い止められない原因だと共和党は批判しています。
この批判が的をえているかどうかは、もう少し検証の時間が必要ですが、たしかに民主党のリベラル政治がなにを残したのかを問う時期に入ったことはたしかです。

リベラル内部の反省も少しずつ出ています。
CNNの人気1位のキャスターであるファリード・ザカリアは、反トランプの旗手でしたが、最近になってこのようなことを述べています。

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CNNで不動の人気「ファリード・ザカリアGPS」特別番組を3夜連続放送 | 株式会社日本ケーブルテレビジョンのプレスリリース

「 同氏は長年のリベラル派の論客としてトランプ前大統領の保守的な政策を手厳しく批判してきた。だが最近では米国民の多数派の保守志向を意識したのか、嫌悪の感情だけでトランプ氏をたたく風潮である「反トランプ錯乱症」(TDS)の欠陥をも認めていた。
 ザカリア氏は今回の論評で、米国民の多くが「進歩的とされる政治家たちに重税や過剰な規制を課され、脅かされる」ことへの不満を高めたと述べ、その結果がトランプ氏の圧勝をもたらした、と論じた。その変化の具体例として、ザカリア氏は民主党のニューヨーク州と共和党のフロリダ州の統治を比較し、住民の税負担、治安、インフラ、教育、不法入国者の扱いなどで後者がはるかに円滑かつ効率的だと強調していた」
(産経1月13日)
米リベラル派も自らの挫折と危機を認め始めた 本紙ワシントン駐在客員特派員・古森義久 - 産経ニュース

やっと認めたのか、というところです。
バイデン政権下、民主統計首長がバカをしまくりました。
ワシントンD.C市長のバウザーは民主党左派ですが、BLMに連帯してペンシルバニア通りを「ブラック・ライブズ・マター・ストリート」(黒人の命は大切通り)とすると発表し、道路のデカイ字でペイントまでしてしまったようです。

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西日本新聞

また同時期には、ワシントン州シアトルのキャピトルヒルで過激派が武装して警察署などを占拠し「解放区」を作ってしまいました。
彼らは独立宣言を発して、連邦政府にこのような「要求」をだしています。
それはこのようなものです。

・シアトル警察と裁判所の廃止。退役警察官に払われる年金の停止を含む。
・青年刑務所の廃止。
・警察が抗議者に対して行った行為の謝罪と賠償
・マリファナ関連の犯罪で服役している囚人の釈放
・囚人に投票権
・シアトルの病院では黒人医師と看護師を採用する
・黒人とネイティブアメリカンの歴史の教育カリキュラムで大きく扱う。

まぁ要するに、警察や裁判所をなくしてて無政府状態にして、大麻を解禁し黒人の雇用を大幅に増やせということのようです。
それに対しての民主党系のダンカン・シアトル市長は、連邦政府の州兵派遣要請を拒絶し、これを「愛の夏」と評して連帯しています。

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抗議活動阻止のための軍派遣は「違憲」=米シアトル市長 | Reuters

「[シアトル 11日 ロイター] - 米ワシントン州シアトルのジェニー・ダーカン市長(民主党)は11日の会見で、同市内の抗議デモ排除に向けてトランプ大統領が軍を派遣することは、違憲かつ違法だとの見方を示した。
米ミネソタ州で5月、黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人警官による暴行で死亡した事件を契機に人種差別に抗議するデモが広がりを見せ、シアトル市内では約500人のデモ隊が議会周辺にバリケードを築き「自治区」を設置したと主張している。
トランプ大統領はFOXニュースで「大都市の主要部が占拠されるような事態を許してはならない」と述べ、必要があれば介入するとの強硬姿勢を示した。また、州知事に対し州兵の動員も考慮するよう示唆した。
これに対し、ダーカン市長は「シアトルが占拠されるという差し迫った脅威はない」とし、「シアトルに軍を差し向けることは違憲かつ違法だ」と反対した」
(ロイター2020年6月12日)

このようなことは民主党系首長がいる地域のどこにでもあったことです。
そしてこの過剰なBLMやLGBTに多額の地方行政の税金を投入、警察や消防や公共インフラの予算を切りまくった結果、治安は乱れ、公共インフラは崩壊の危機にさらされたのです。
多くの国民が、リベラルはキレイゴトを言うだけで我々の生活を守らないと思い、カマラを忌避したのは当然のことです。

 

2025年1月13日 (月)

プーチンを和平会談に引きずり出すには

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ウクライナ戦争の終わらせ方について考えています。
もちろんウクライナの全面勝利で終わり、ロシア軍が自国に戻るのがいちばんいいわけですが、残念ながらその可能性は限りなくゼロです。
ただしロシアが全面勝利する可能性もまたゼロです。

プーチンが夢想したのは、ウクライナを「同民族」と見立ててこれを大ロシアとして合邦することでした。
そしてこれを足掛かりにして旧ロシア帝国の勢力圏を復活させることを構想しました。
今思えば、お笑いですが、この独裁者は真剣にそれが可能だと考えていたのです。
なにひとつ政治的懸案もなく、紛争もないベタ凪状態であったとしても、ひとりの狂人が支配する専制主義国家においては、侵略戦争を起こすことが可能なことを教えてしまいました。

戦争の経過をおおざっぱに見ておきます。
当初ロシアはウクライナ全土の占領を企み、心臓部のキーウを電撃的に占領し、ゼレンスキーを倒して傀儡政権を打ち立てようとして手痛いウクライナ軍の反撃に合い、初手でつまづきました。
そこで侵攻計画を変更して、キーウ攻略に用意していた部隊を東部や南部に転用しました。

その目的は、ウクライナを海から切り離し内陸国に封じ込めることです。
ハルキウを含むドニプロ川東部、ザポリージャ州、ヘルソン州、オデーサを含む南部領域に攻勢をかけまし、これはオデーサを除いておおむね成功しています。

2024年5月から同年12月の間、ロシア軍は占領している北部・東部から占領地を拡大しようとしましたが、この間の24年10月にウクライナ軍にクルスク州に侵攻されるという逆襲にあっています。
一方ウクライナ軍は南部で分断攻撃をしかけましたが、残念ながら失敗しました。

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JBpress (ジェイビープレス)

「ロシア軍は、ウクライナのルハンシク州、ドネツク州、ザポリージャ州で攻勢し、主力はドネツク州全域を占領するように主に2つの方向から攻撃するという構想を立案し、実行している。
この攻撃は、ドニプロ川の線まで突進するものではなく、ドネツク州の境界線までを占拠する程度の攻撃衝力でしかない。
この間、ロシアはウクライナ軍にロシア国境での配備の弱点を突かれクルスク州に進攻された。
そして、ロシア軍はこのクルスク州の奪還を目指しているが、3か月が経過しているものの奪還できてはいない」
ウクライナ戦争は戦争末期へ、ロシア軍の肉弾戦がいよいよ限界に 当初の最小損失・最大戦果が、今や最大損失・最小戦果へと激変(1/7) | JBpress (ジェイビープレス)

現在、ロシア軍はクルスクからウクライナ軍を追い出そうと、肉弾攻撃をくりかえしていますが、1か月間で3.5万~4.7万人といわれる膨大な死傷者を出しています。
ウクライナ軍はクルスク戦線を天王山と心得ていますから、そうそう簡単に奪還されることはなく、プーチンはクルスクが奪還されるまで和平提案には乗れないことになります。
だってそりゃそうでしょう。現時点で「武器を置く」ならば、クルスク州のかなりの部分はウクライナの実効支配に置かれてしまい続けるからで、プーチンのメンツは丸つぶれです。

「現段階では、ロシアという巨大な国家が、最も小さい軍事目標達成(クルスク奪還)のために多大な損失を出している。この努力は無意味である。
現在の戦争を継続すると、ロシア国内の痛みはますます大きくなっていく。
そして、戦争継続の意味は薄まり、ロシア政権内部に不満が高まることになる」
(西村前掲)

そしてそれを心得ているウクライナは、攻撃の無人機や巡航ミサイルの攻撃の矛先をロシア国内の石油関連インフラや軍事産業施設に移しています。
これは軍事目標と違って即効性はありませんが、ボディブローのように経済活動と国民生活の暖房や電気といった冬を迎えた国民生活に大きな影響を出しています。
プーチンが一番望むのは、西側からかけられた経済・金融制裁の解除ですが、これも戦争を続ける限り終わることはありません。
いやそれどころか、ロシアが勝利などしようものなら、いっそう制裁は強化され半永久的なものになるはずです。

プーチンが和平提案に乗るには、ロシア軍が重大な局面の戦闘で完全敗北を喫し、これ以上ウクライナ領土を侵略する力がないという自覚が生まれる必要があります。
具体的には、クルスクという自国領を完全奪還する見込みがないこと、そして今の占領地を温存するので精一杯であることということをプーチンに認識させねばなりません。
クルスクは今連日激しい戦いが繰り広げられており、ロシアはわずかな数キロの土地を得るために人海戦術を採用し、いたずらに膨大な犠牲を積み上げています。

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JBpress (ジェイビープレス)

このクルスク戦線の膠着状況があと数カ月間続くなら、ロシアは疲弊し尽くします。
外人部隊や囚人までといったありとあらゆる人的リソースをぶちこみ、戦後最大の死傷者を出して、なお止むかどうなのか。
たぶんプーチンはここで一撃をかまして敵に重大な損失を与えて、国民を納得させて有利な条件で講和に持ち込むことを考えているのかもしれません。

これがかつての大戦末期の日本にも登場した「一撃講和論」です。
一種の精神錯乱ですから、まともな判断ができなくなっています。

ならば、プーチンに思う存分、国が傾くほど疲弊していただいたらいいのです。
したがってやるべきは、ウクライナ支援の引き剥がしではなく、逆に徹底的なウクライナに対する支援です。

そしてクルスクからのウクライナ軍の撤退と引き換えに、ウクライナの未来に渡る平和の担保を要求すべきです。
すなわちそれがNATO加盟です。
ここまで犠牲となったウクライナ国民を納得させることができることは、これ以外ありません。

オバマ時代駐露大使をしていたマイケル・マクフォールはこう述べています。

「プーチンをなだめることで平和は生まれない。NATO加盟を伴う安全保障と引き換えにウクライナに名目上、領土の一部をロシアに移譲するという妥協だけが恒久的な平和を生み出すだろう。
戦闘で殺された同胞のために戦っているウクライナ兵の多くに武器を手放させるのは非常に難しい。ゼレンスキーとウクライナ国民は、NATO加盟という対価が得られない限り、そのような犠牲を払うことはないだろう。
これは、ウクライナ国民に戦闘をやめるよう説得するためにトランプが使える唯一の切り札だ。ウクライナのNATO加盟は、ロシアとウクライナの国境に恒久的な平和を維持する唯一の方法である」
【ウクライナ戦争終結へ私たちが知っておくべきこと】プーチンとゼレンスキーは痛みを受け入れることができるのか  Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン) 

トランプが選挙戦で言っていたようなウクライナ支援の削減をした場合、プーチンは戦争をやめる理由がなくなり、最低でもクルスクからのウクライナ軍撤退まで戦争を継続しようとするでしょう。
あるいは最悪、かつてのように再び南部、東部占領地からの進撃すらありえますし、そうなった場合ウクライナは徹底的に戦うしか選択肢はなくなります。
これはマクフォールがいう、「プーチンをなだめること」に他ならない下策の極みです。
そもそもこれではゼレンスキーのほうが、和平交渉に乗れないではありませんか。

ある意味で、最大のネックはマクウォールが言うようにトランプがウクライナのNATO加盟に賛成しない可能性が高いことです。

「この和平案のメリットをトランプに納得させるのは容易ではないだろう。しかし、ウクライナをNATOに加盟させることで、トランプは外交政策の優先事項の一つである負担分担において大きな勝利を収めることができる。
NATOに加盟すれば、ウクライナ軍は同盟国の中で最も経験豊富な欧州軍となる。ロシアと国境を接する他のNATO同盟国に、ウクライナ軍が習得した空、海、陸のドローンを供給することもできる。
トランプは、ウクライナのNATO加盟により米国は欧州での防衛費を削減し、アジア太平洋地域で拡大する中国の影響力を抑えるための資源を解放できると米国民に説明できる。トランプがこの和解の仲介に成功すれば、彼が切望するノーベル平和賞の候補になるかもしれない」
(岡崎研究前掲)

トランプはディールを好きなくせに、妙に頭が堅いところがあるので相当に難しいかもしれません。
つまり、トランプ、NATO、そして当事者のロシア、ウクライナといった4者が合意しないと和平会談さえ始まらないのです。
戦争は始めるのは簡単ですが、終わりにさせるのはかくも大変なのです。

 

2025年1月12日 (日)

日曜写真館 湖の枯蓮風に賑かに

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元日の一湖を拓く鴨の陣 原裕

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湖に影のつきくる冬旱 原裕

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湖の高波風に初燕 石井保

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こころにも寄する波あり冬かもめ 伊藤道子

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湖や枯葦に降る白き雪/裕

 

2025年1月11日 (土)

ロシア軍、ウクライナ軍、共に疲労困憊

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トランプはウクライナ戦争を終わりにする気でいます。
それも100日間という短期に和平にまで持っていこうとしています。
ただし半年という言い方もしていますので、就任してみないと決定的なことは見えません。

「米国のトランプ次期政権でウクライナ・ロシア問題の特別代表に指名されているキース・ケロッグ氏は、ロシア・ウクライナ戦争の終結に関する合意はトランプ政権発足後100日以内に達成する可能性を示した。
また同氏は、「私は、人々が理解すべきことは、彼はプーチンないしロシア人に何かを与えようとしているわけではないということだ。彼は本当にウクライナを救い、同国の主権を維持しようとしているし、それが公正だと確信しようとしている」と発言した。

同時に同氏は、トランプ氏の代わりに話すようなことはしたくないとし、「なぜなら、彼は自分のことは自分で話すからだ」と述べた。
また同氏は、バイデン米大統領の最大の過ちは、全面戦争の間一度もプーチン氏との協議を行わなかったことだと指摘した。同氏はその際、「(トランプ次期)大統領は本当に対立者とも同盟者とも話すし、それが容易でないことを知っている」と述べた。そして、同氏は、それは「最終的な結果を達成する上で」不可欠であり、それは「彼(トランプ氏)が行おうとしていることだ」とも発言した」
(ウクライナフォーラム2025年1月9日)
トランプ米次期政権ウクライナ・ロシア担当、露宇戦争の和平合意が100日以内に達成されることを期待  

このケロッグの言い方を見ると、トランプはロシアとディールする気満々です。
というか、トランプはすでに目ぼしいことについてゼレンスキーとの詰めは終わっているようで、ある意味プーチンの出方次第のようです。

長引く戦争に、侵略国のロシア、被侵略国のウウクライナ、双方ともに軍事的には限界に近づいています。
ウクライナは脱走兵がとまらずに、軍の要請で脱走に関する法を強化しました。

「【1月26日 AFP】ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は25日、兵士の命令拒否や脱走の罰則を強化する法案に署名した。
ウクライナ議会のウェブサイトに公開された改正法によると、司令官に対する脅し、戦場からの逃亡、飲酒なども対象とされている。有罪とされた場合、裁判所が減刑したり、執行猶予を与えたりするのも禁止される。
脱走した場合には12年以下、命令拒否や戦闘拒否の場合は10年以下、上官に対する脅迫は7年以下の禁錮刑がそれぞれ科される可能性がある」
(AFP2023年1月26日)
ウクライナ、兵士の命令拒否や脱走の罰則強化 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News

たとえばウクライナ軍第155機械化旅団は、西側の支援を受けている精鋭部隊だったはずですが、訓練先のフランスに2000人派遣されたうち50名が脱走してしまいました。
この部隊は5800人規模でしたが、去年3月から11月までの間で1700人が脱走したということです。
軍全体では10万人規模の脱走が起きていると見られています。

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JBpress (ジェイビープレス)

「ロシアによるウクライナ侵略で、欧米メディアが最近、ウクライナ軍で兵士の脱走問題が深刻化し、戦局の悪化を加速させていると相次いで報じた。ウクライナ軍では30万~35万人が戦闘任務に就いていると推計されてきたが、少なくとも数万人規模の脱走が起きているという。同国のゼレンスキー大統領は11月末、脱走兵の帰還を促す法律に署名したが、効果がどの程度出るかは不透明だ」
(産経2024年12月3日)
ウクライナ軍、脱走兵が深刻化 数万~20万人試算も 戦局悪化など要因、苦戦を加速 - 産経ニュース

なんともいえない気分になりますが、これほどまでに戦争が長引くとこれまでただの市民であった兵士たちに厭戦気分が拡がるのはやむを得ないのかもしれません。
これは今のウクライナの置かれた状況をよく物語っています。

国家としてのウクライナ経済は西側支援でやっと保たれている状況です。

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JBpress (ジェイビープレス)

対外債務は戦争の22年ですでに52.4%と激増しています。

「財政赤字の急増を受けて、2022年のウクライナ政府の債務残高は4兆728億フリヴニャ(約14兆7000億円)と前年から52.4%増加した。とりわけ目立つのが、対外債務の急増だ。
国際通貨基金(IMF)や国際復興開発銀行(IBRD)といった国際金融機関による金融支援や米国と欧州連合(EU)による支援が、こうした対外債務の急増につながった」
戦時下で急増する財政赤字、ウクライナの戦時財政はどこまで持続可能か 疲弊したウクライナに債務の返済は非現実的、債務再編に応じる覚悟はあるか(1/5) | JBpress (ジェイビープレス)

注意せねばならないのは、これらの外国からの支援はすべて返済を前提とすることです。
今のウクライナの軍事支出は国債に頼っていますが、国債はわが国とは違い外国人が引き受けています。
仮に戦争が終わっても、国中の破壊された道路や橋、発電所やダムなどのエネルギーインフラを復興させねばなりませんから、また外国からの巨額の借り入れが生じます。

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JBpress (ジェイビープレス)

今のウクライナ経済は典型的な戦時経済と化しており、高いインフレが国民を苦しめています。

「すでにウクライナでは、戦争の長期化に伴って供給力の低下を主因とするインフレが蔓延しているが、中銀の財政ファイナンスはそれを貨幣面から促していると考えられる。
通貨の暴落も懸念されるところで、中銀は2022年7月に為替レートを1米ドル36.5686フリヴニャに切り下げたが、いつまで維持できるか分からない」
(JBプレス前掲)

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露軍は疲弊しつつもウクライナ軍の数倍規模の砲撃を続けており、この火力の格差がウクライナ兵士の勝利への希望を打ち砕いています。
部隊の士気は衰え、勝手に前線の持ち場を離れたり、海外派遣や治療休暇の取得後そのまま脱走してしまう者が数万単位ででています。
また、このような脱走兵が急増したために正常な部隊ローテーションがなされず、数年に渡って戦場に縛りつけられている兵士がが珍しくなくなっています。
このような悪循環がウクライナの継戦能力を奪っています。

一方、ロシア軍はもまた悲惨で、2024年だけで43万人が戦死傷し、3000両の戦車を失ったようです。
ウクライナ国防省は2022年2月の開戦から2024年12月31日時点までのロシア軍の人的損失を79万人と報告しています。
わが国の自衛隊が22万7千人ですから、自衛隊全体の3倍以上の戦死傷者を出したということになります。
ロシアの人口はわが国と大きな違いはなく1億4千万人ですから、推して知るべしです。

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ロシアの戦死者が7万人超す、約2割は義勇兵 BBCなどの調査で明らかに - BBCニュース

「ロシア軍は2024年、侵略を続けるウクライナで新たに国土の0.69%に当たる面積を奪い取ることに成功した。しかし、その代償として約43万人の兵士と3000両の戦車、9000両の歩兵戦闘車を失ったと報告されている。
ワシントンに拠点を置くシンクタンク「戦争研究研究所(ISW)」が衛星画像と位置情報付きビデオ映像に基づいて行った評価によれば、ロシア軍は2024年、ウクライナ東部ドネツク州で徐々に、そして、着実に進軍を続け、4,168平方キロメートルの畑と廃村を新たにウクライナから奪い取ることに成功した。これはウクライナ国土の0.69%に相当、日本でいうと石川県や徳島県の面積に匹敵する」
(ミリレポ2025年1月6日)
ロシア軍は2024年に43万人の兵士と3000両以上の戦車を失った│ミリレポ|ミリタリー関係の総合メディア

一県ていどの面積を奪うために費やした生贄が43万、開戦から79万とは、唖然とする愚かさです。
人的損害が急増しているのは、プーチンが戦勝を急いで裸突撃に等しいような無謀な攻撃を強いているからです。

「ロシア軍は2024年9月から10月にかけて、ウクライナ領及び、ウクライナが制圧したロシア領クルスクの領土約1500平方キロメートルの制圧に成功。2か月間における制圧面積としては過去最大となったが、犠牲を顧みない攻撃で死傷者が急増。死傷者は1日平均1000人を超え、11月には平均が1500人を超えた。11月28日は2030人、12月19日は2200人と過去最高を記録。11月と12月の死傷者はそれぞれ、4万5720人と4万8670人だった」
(ミリレポ前掲)

この死傷者数はすでに1万4453人が死亡し、5万7537人が負傷したアフガン戦争を上回っています。
兵器の損失も驚くほど膨大で、ウクライナ軍参謀本部の報告によると、2024年1月1日から2025年1月1日の間に、ロシア軍は戦車3689両、歩兵戦闘車8956両、砲システム13050門、防空システム407基を失ったとしています。

また、ロシア海軍は艦船5隻と小型船舶458隻を破壊され、フィンランドとノルウェイのNATO加盟によってバルト海が事実上塞がれ、黒海艦隊は黒海の支配権を失い、シリアのアサド政権の崩壊によって地中海とアフリカへの海の出口を喪失しました。
残るは日本に面した太平洋ルートしかありません。
ロシアの残された艦隊である太平洋艦隊は、中国と連動して日本付近でうるさく活動することでしょう。

ロシアは戦時経済をとって、国の人的物的リソースを全部軍事につぎ込んでいます。
軍事物資の生産を急ピッチで進めていますが、戦車の損害が3千両とあまりに大きいために、年間の最大300両ていどの生産数ではまったく焼け石に水です。
ロシア人が「戦場の女神」と崇拝する大砲の弾も不足しており、北朝鮮から支援を受ける有り様です。

ただし、かつては世界第2位を謳った軍事力の背景にあった軍事関連の物資は、旧式であることを問わねばまだ健在です。
新型はほとんど戦線に出されており、それでも昨年12月時点で戦車が約47%、歩兵戦闘車が52%、装甲兵員輸送車が45%残っていると言われています。
ただしこれも状態や年式は不明で、おそらくひどい状態でしょう。

プーチンはクルスクを奪い返す作戦に全軍事的リソースを注いでいます。
それはまさに常軌を逸した攻撃で、たしかに一定の地域を奪い返したものの、わずか一カ月で3万5千から5万という甚大な損失を招いています。
その理由は、堅固に構築されたウクライナ軍陣地に、「肉挽き作戦」と呼ばれるような人海作戦をくりかえしているからです。
北朝鮮からの部隊はこれでその大半を失っています。

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ウクライナ戦争は戦争末期へ、ロシア軍の肉弾戦がいよいよ限界に 当初の最小損失・最大戦果が、今や最大損失・最小戦果へと激変(1/7) | JBpress (ジェイビープレス)

このままこのような戦い方を実施していくと、さすがの全体主義国家ですらたえられない損害が積み上がっていくでしょう。
しかしロシアはまだ継戦能力が残っていると考えていますから、クルスクからウクライナ軍を駆逐しない限り、和平交渉に応じることはないはずです。
ウクライナは国力を出し切りつつつつあり、西側の支援と最後の根性で持ちこたえている状況です。
冷厳に言って、ウクライナは国力が枯渇しきらないうちに交渉に持ち込むのが得策でしょう。
問題は奪われた4州ですが、主権がウクライナに属することが明確になれば応じようがあります。

いずれにしてもウクライナ戦争は終盤に差しかかっています。
トランプが時の氏神となれるかどうか、ここ数カ月が焦点です。

2025年1月10日 (金)

左翼リベラルの世界的崩壊現象始まる

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つまるところ、これは世界の流れなのだとおもいます。
トランプ第2次政権が成立し、10年という長期リベラル政権を続けてきたカナダのトルドー政権が崩壊しました。
ドイツでも社民党政権が崩壊し選挙を迎える中、隣国のオーストリアもファーライトといわれている自由党が政権につきそうな勢いです。
イタリアは既に右派政権のメローニが握っており、フランスの中道政権は崩壊一歩手前です。
つまり労働党の英国と石破氏を選んでしまったわが国を除き、G7各国は雪崩をうつように右傾化しているわけです。

「カナダのジャスティン・トルドー首相(53)が6日、与党・自由党の党首と首相の職を辞任すると表明した。9年間にわたって国を率いてきたが、退陣を求める声が与党内で大きくなっていた。
トルドー氏は記者会見で、「党がしっかりした全国的な競争手続きを通じて次の党首を決めたのち、党首として、首相として、辞任する」と表明した。
「この国は次の選挙で真の選択が必要だ。私が党内抗争を戦わざるを得ない事態になっているなら、それはつまり、私が最良の選択肢ではないということなのだろう。そのことが、はっきりした」と説明した。
トルドー氏は国内で不人気で、10月20日までに実施される連邦選挙を控えた自由党にとって足かせになっていた」
(BBC1月7日)
カナダのトルドー首相、辞任の意向表明 「党内抗争」理由に9年間の政権に幕 - BBCニュース

ジャスティン・トルドーは、ひとことで評するなら「真逆のトランプ」「カマラ・ハリスの男版」です。
絵に描いたようなリベラルで、2015年、カナダ史上2番目の若さとなる43歳で首相に就任するやいなや、矢継ぎ早に気候変動や人種や性的マイノリティーの権利保護、などといった政策を打ち出します。
最初の組閣では先住民や身体障害者などを起用し、閣僚ポストの男女同数を実現しました。

能力と実績で入閣させるのはかまいませんが、彼の場合、その民族的出自、性別で任命したようです。
いわゆる「多様性」を至高の価値とみたてたリベラルらしい組閣です。

大喜びで拍手するハフィントンポストはこう書いています。

「世界中で右傾化が進む中、10年ぶりに保守党からの政権交代となったカナダでは、中道左派政党である若き自由党党首ジャスティン・トルドー首相(43)によって変革が進められている。
総選挙後の勝利宣言演説のなかで「真の変化をもたらす」と約束した通り、11月4日に発表された新閣僚は、首相を除く30人が男女半数ずつ、年齢もバランス良く入閣。さらに、障害を持つケント・ヘ氏、先住民の血を引くジョディ・ウィルソン・レイブルド氏、アフガニスタンから難民としてカナダに移住したマリアム・モンセフ氏(30)など様々なバックグラウンドを持つ議員が入閣した」
(ハフィントンポスト2015年12月20日)
変化するカナダ、先住民族迫害を正式に認め調査開始へ | ハフポスト NEWS

2018年には大麻の所持や使用をG7で初めて国家として合法化し、30万人のウクライナ難民を受け入れると表明しました。
そして気候変動対策を最優先課題に掲げ、いち早く炭素税(カーボンプライシング)を導入しました。
これはEUの脱炭素のための「Fit for 55」と名付けられた一連の施策に先んじたものです。
EUは2030年までに排出レベルを1990年の水準から55%下げることを目的としています。

●EUの「Fit for 55」の主要な提案
・自動車の排出量制限を強化する。これにより、2035年までにガソリン・ディーゼル車の新車販売は実質的に禁止される見込み
・航空燃料に課税するとともに、低炭素の代替燃料を使用した場合には10年間の免税措置を実施
・EU域外からの鉄鋼やコンクリートなどの輸入について、いわゆる「国境炭素税」の導入
・EU域内の再生可能エネルギーの拡大目標の強化
・エネルギー効率の悪い建物の改修を迅速化するよう、加盟各国に要求
EU、気候変動対策計画を発表 2050年までにカーボンニュートラル - BBCニュース

これを全部やったら間違いなく大不況になります。
とうぜんのこととして、産業界は大反発しました。

「鉄鋼やセメント、アルミ、肥料や電気といった産業に対する投資見通しを不安定化する大きなリスクがある」と批判した。
また、国際航空運送協会(IATA)のウィリー・ウォルシュ会長は、「航空業界はグローバル産業として脱炭素化に努めてきた。こうした変化の動機付けのために課税のような罰則的な施策は必要ない」と述べた」
(BBC2021年7月18日)

では、実際にこの脱炭素で突っ走ったドイツはどうなったでしょうか。
いまや製造業の背骨であった自動車産業は見るも無惨に崩壊しつつあります。
ドイツは、今、かつてない解雇の波が訪れています。

「予定されているのが、フォルクスワーゲンの2万3000人、アウディの4500人、テスラの3000人、フォードの2900人、そして、自動車部品のグローバル企業であるZFが1万2000人、同じく世界的な自動車部品メーカーのコンティネンタルが1万3000人、ボッシュが3760人。
また、世界的製鉄会社テュッセンクルップが1万1000人、ソフトウェアの世界的企業SAPが5300人。さらに、ドイツ銀行が3500人、ドイツ鉄道が3万人で、後者は主に貨物部門だ。不況で生産が落ち、運ぶものが減った」
日本も他人事ではいられない…自動車産業が傾いたドイツで「いま起きている」悲惨な現実(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース

これはほんの序の口で、自動車産業は広大なすそ野を持つために次々に解雇の波が波及していきます。
ドイツ自動車産業のフラッグシップだったフォルクスワーゲンが揺れると、その余波は系列の自動車企業に及び、さらに同業他社、そしてサプサイチェーンを遡って部品メーカー、電子産業、鉄鋼産業にまで波及していきました。

原因はいうまでもなく、いままでシュナイダーが敷き、メルケルが教条にまで仕立て上げた脱炭素政策と中国市場に対する過剰な依存体質です。これはドイツに限ったことではなく、トヨタ、ホンダ、日産も、中国市場では販売不振を食っています。
日産は9千人の人員削減、ホンダは2024年第2四半期の営業利益が15%減少しました。
この2社の経営統合は弱体連合だったのです。

原因はひとつです。中国EV企業の大躍進に食われたのです。
いまやBYDは世界有数の自動車企業に成長しています。

「BYDは11月の販売台数が前月に続き50万台を突破し、世界のNEVの単月販売記録を塗り替えた。同社は2024年の年間販売台数を23年の20%増とする計画を明らかにしていた。23年の販売台数302万台をもとに計算すると、24年の年間販売目標は362万4000台以上となるが、1~11月の累計販売台数は375万7300台で、早々に年間目標を達成した」
2024年中国自動車通信簿:余裕のBYD、シャオミ。苦しいXpeng、Zeekr(36Kr Japan) - Yahoo!ニュース 

それは中国政府による中国製EVに対する補助金政策があるからです。
中国のEV補助政策は、購入時の補助金、充電設備設置への補助金、バッテリーや半導体など電気自動車開発への補助金と多種多用であり、中国製EV普及に竹馬をはかせ、外国製EVを駆逐しています。

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電気自動車販売数世界1位のBYDとは?会社概要や経営状況を解説 -海外事業のプロフェショナル集団~プルーヴ株式会社

しかしこれだけ作りまくった結果、中国のEV市場は中国製EVで満杯となり、鉄鋼や太陽光パネルなどと同じように外国へのダンピング輸出をかけています。

「中国では自動車の生産過剰状態が続く一方、中国政府が巨額の補助金を通じて安い価格で自動車を海外にダンピング輸出をしている、との批判を欧米諸国は急速に強めている。
上海のコンサルティング会社オートモビリティと中国乗用車協会(CPCA)によると、中国には現在、年間4,000万台を生産する能力があるが、国内での販売台数はその半分の2,200万台前後にとどまっているという。そして、中国の自動車輸出はわずか3年の間に5倍近くに増え、2023年には約500万台に達している」
(木内登英2024年05月08日)
中国EVの過剰生産問題とテスラの中国戦略 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI)

このような仁義なき戦いをする中国企業の前に、中国市場への参入を阻まれたドイツはもはや米国市場を頼みとするしかなかったのですが、そこに大魔神のように現れたのがトランプでした。
トランプが外国車に対して高関税を強いるのは明々白々です。泣きっ面に蜂。

高関税を逃れるには米国内に工場を持ってメイドインUSAにするしかないのですが、フォルスクワーゲンも米国に工場はあるにはあってもそれはEV工場なのです、残念。
トランプはEVへの支援を完全に打ち切ると公約しています。

トランプは、「不都合な真実」のアル・ゴアから続くグリーンニューディール政策を完全否定しています。
具体的には、いままで再エネやEVに対して与えられていた補助金を廃止するとしています。
そもそも、民主党はこのグリーンニューディール利権から政治資金をえており、そのおこぼれがファーレフトの環境活動家に流れている構図です。

そしてこの活動家たちに資金を提供していたのが、去年破綻したSVB(シリコンバレー銀行)でした。
SVBはグリーン関連の債券の約6割を保有しており、融資についても1500件以上の大型グリーン融資をしていました。
そしてSVBはBLMの最大のスポンサーであり、活動資金の9割以上、100億円近い資金を提供していたことがわかっています。
このようなからみあったグリーン利権をトンプは徹底的に潰す気でいます。 

金融界もトランプの意向を受けて、一斉にグリーン関連から資金を引き上げました。

「米銀大手JPモルガン・チェースは7日、銀行の二酸化炭素排出量削減を促す「ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)」を脱退すると発表した。ゴールドマン・サックス・グループシティグループに続く動きで、ウォール街の大手銀の中では最後となる。
シティグループとバンク・オブ・アメリカ、ゴールドマン、ウェルズ・ファーゴが昨年12月に相次いで脱退し、1月に入ってからもモルガン・スタンレーが脱退を表明した。脱退は米銀に集中しており、トランプ次期政権による政治的圧力の高まりを懸念した動きとみられる」
(ブルームバーク2025年1月8日)
JPモルガン、銀行の気候変動対策グループ脱退-米大手行では最後 - Bloomberg

このグリーン利権からの資金の巻き戻しの流れに世界の金融業界も追随します。
もはやドイツだけの特殊事情ではないのです。

経済とエネルギー政策の失敗が産業全体を揺らがせ、さらに社会全体を変えていきます。
いままで20年間以上に渡って、我が世の春を歌っていたリベラルの一斉退場が始まったのです。
 

2025年1月 9日 (木)

疑惑のコストコ、イジェミョン

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共に民主党(なんつうネーミング)のイ・ジェミョンは叩けばホコリが出るなんてもんじゃなく、ホコリの中で生活しているようなご仁です。
さながらかつての鈴木某のように「疑惑の百貨店」で、今起訴されているだけでこれだけあります。
イは政治弾圧だみたいなことを言っていますが、ただの背任や収賄にすぎないということがこの人の特徴です。

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 読売新聞

あくまでもこれらは検察が立件しただけですから、たぶんこんなものでは済まないはずです。
もちろんイは輝ける極左の星ですから、北朝鮮がらみの対北送金疑惑というものもやらかしています。
北との関係を作りたかったイが、1919年から20年にかけて京畿(キョンギ)道知事時代副知事と共謀し、800満ドル(約12億6千万円というシャレにならない巨額送金をしました。
北へのコネを求めていた衣料会社に肩代わりさせて、便宜をちらつかせて送金させたものです。

「第三者供賄罪は第三者に賄賂を供与させる罪。検察は李在明氏らが企業側へ対北事業での便宜を約束していたとみている。李在明氏は全面的に否認してきた。
裁判所は7日、この事件に絡んで外国為替取引法違反罪などで李華泳氏に対し、懲役9年6月などの1審判決を言い渡した。
韓国検察は12日、韓国企業が北朝鮮へ巨額資金を不正に渡した事件に絡み、革新系最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表を第三者供賄罪などで在宅起訴した。検察は京畿(キョンギ)道知事だった李在明氏が訪朝という自身の政治的実績をつくるため、北朝鮮に見返りとして巨額の資金を渡したとみている」
(読売2024年9月22日)
韓国野党代表、北朝鮮への不正送金疑惑などで逮捕可決…イメージ低下懸念から造反相次ぐ : 読売新聞

また、イは城南(ソンナム)市長時代の都市開発事業で、民間業者に便宜を図り、市の開発公社に200億ウォン(約22億円)の損害を与えた疑惑ももたれています。

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聯合

「検察は都市開発事業を巡り、城南市長だった李氏が民間業者に便宜を図って計4040億ウォン(約430億円)の巨額の利益を得させ、城南市に損害を与えたとみている。当時、李氏の側近らが民間業者に便宜を図り、利益のうち428億ウォンを受け取る約束を交わし、選挙資金の支援を受けたことにも李氏の介入があったとみている。
城南市長時代に大企業に対し、自身がオーナーを務めたプロサッカークラブ・城南FCに計約170億ウォンの後援金を出させ、見返りとして建築の許認可や土地の用途変更などで便宜を図ったとする第三者供賄の疑いで今月10日にも検察に出頭し、取り調べを受けている5
(聯合2023年1月28日)
韓国最大野党代表が検察出頭 都市開発事業の不正疑惑巡り | 聯合ニュース

いずれも公的地位を利用した職権濫用・背任事案です。
巨額なカネが動いていますが、たぶん相当な額がイのふところに転がり込んでいるはずです。

こういう職権の私的利用が習性となっているタイプの政治家を大統領なんぞにしたら、どうなるのか目も当てられません。
この他弁護士費用建て替え疑惑だのなんだの盛りだくさんの疑惑があって真っ黒黒助なのがこの人です。

でありながらか、あるいはだからなのか、イはゴリゴリの極左反日反米です。
かつては慰安婦運動の旗振りでしたし、最近でも福島第一原発からのの処理水放出は「第2の太平洋戦争だ」と主張したり、自称「徴用工」裁判ではユン大統領の示した解決案を「親日売国政権の日本への降伏文書」なんて言っています。

 

2025年1月 8日 (水)

韓国もはや無政府状態

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まったくどーなってんだろうね。いや、なに韓国の弾劾事件です。
なんとまぁ野党が弾劾ジユウ変更してしまいました。

「【ソウル=仲川高志】韓国の憲法裁判所で3日に行われたユン・ソンニョル大統領の戒厳令宣布をめぐる弾劾審判の弁論準備手続きで、野党議員で構成する国会の訴追団が訴追事由から内乱罪を撤回し、戒厳令の違憲・違法性の審理に絞ると表明した。大統領や与党側は「弾劾訴追自体が誤りだ」と反発している。
内乱罪の撤回は、審理の迅速化を図りたい野党の思惑を反映した法廷戦術とみられる。内乱罪の立証には長時間を要するとみられる上、尹氏は、戒厳令宣布は正当な統治行為だったと反論に自信を見せている」
(読売1月4日)
韓国大統領弾劾巡り訴追団が内乱罪立証を撤回、審理迅速化図る…与党側「訴追自体が誤り」と反発 : 読売新聞

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読売

分かって言っているなら狡猾、分かっていないならただのバカです。
だって内乱だぁとだんがいを成立させたから憲法裁判所も認め、かつ高捜処もやれ身柄拘束だと言って青瓦台に押しかけたんじゃありませんか。
それは死刑ありえる大罪の内乱罪で弾劾されていたからです。

しかしその弾劾理由から肝心要の内乱容疑を取り下げたら、閣議をおろそかにしていただろうという形式犯か、今は戒厳令出す状況じゃなかったろうという主観の問題だけになってしまいます。
すると憲法裁から高捜処、警察は上がった二階からハシゴをはずされるということになっちゃいます。(笑)
そもそも弾劾理由から「内乱容疑」を抜いたら、初めから国会でやり直しに決まっています。

しかし野党は「内乱行為を刑法ではなく憲法違反とするだけだ。そのため再議決は必要ない」(読売前掲)と言い張っていますが、与党は「共に民主党は尹大統領弾劾審判をできるだけ早期に終わらせ、大統領選挙を前倒しする意図がある」と言い返しているようです。
与党としては1日でも伸ばして、イ・ジェミョンが被告となっている裁判で有罪を出させたいとかんがえています。

だってイは裁判を5つも抱えているのです。
それも政治とは関係のない公的なカネの私的流用などでです。

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イ・ジェミョン  東亜日報

去年11月に、すでに一発有罪判決を食らっています。

「ソウル近郊の京畿道知事時代に予算を私的に流用したとして、韓国の水原地検は19日、進歩(革新)系最大野党・共に民主党の李在明(イジェミョン)代表を業務上背任の罪で在宅起訴した。李氏は次の大統領選の有力候補の一人とされるが、この件を含めて5件の刑事裁判を抱えることになり、選挙戦略に影を落とす可能性もある。
水原地検によると、李氏は朝食のサンドイッチなど私的な飲食の費用を京畿道の法人カードで支払うなどして、計1億653万ウォン(約1180万円)を流用したとされる。

李氏は15日、自身の疑惑について虚偽の発言をしたとして、公職選挙法違反の罪で懲役1年執行猶予2年の有罪判決を受けた。他にも3件の刑事裁判が進行中で、うち1件の判決が25日にも言い渡される予定」
(朝日2024年11月19日 )
韓国野党代表、また在宅起訴 「飲食費など私的流用」 訴訟5件抱え:朝日新聞デジタル

この11月の1審判決の控訴審が2月にも出る見通しで、有罪判決が出れば次期大統領選自体にでられなくなります。
野党はイ以外に候補がおらず、なんとしてでも引き延ばしたくないわけです。
そもそも今回の弾劾理由から内乱罪を抜いたのも、内乱罪容疑とすると判決まで時間がおそろしくかかるからです。

だからお手軽に閣議無視みたいなことにすげ替えようとしたのでしょう。

またイは別件の「大庄洞ゲート」の被疑者でもあります。

「李在明は第20代大統領選挙運動中にいわゆる「大庄洞ゲート」の被疑者となった。これは李が城南市長時代、民間不動産ブローカーと癒着したとするものである(市長職権を濫用して城南市に帰属すべき不動産開発利益を同ブローカーに横流した)。
本件の捜査中に自殺した元城南市職員について李は知らないと発言したが、故人と李を撮影した写真が見つかった。李は選挙に不利な事実を隠そうとマスコミに虚偽答弁したとして、公職選挙法違反を疑われた。検察は李に被疑者として出頭するよう要請したが李は応じず、書面答弁書を提出した。このため検察は2022年9月8日、公職選挙法違反容疑などで李を在宅起訴した」
李在明 (政治家) - Wikipedia

この事案でイが100万ウォン以上の有罪確定判決を裁判所で宣告された場合、自動的に現職国会議員の地位を失い、大統領選挙に立候補する資格が剥奪されます。
こういう背中に大量の爆薬を背負っているために、イとしてはなにがなんでも1月の早い時期にユンを青瓦台から追い出して大統領選に持ち込みたかったわけです。

それで焦ったんですな。
出しも出したり弾劾の29連発。やりすぎもいいところ。
大統領弾劾で味をしめ、続いて大統領代行のハン・ドクス首相も弾劾で追い出し、その代行の代行のチェ・サンモク副首相にも憲法裁判所判事にオレらの息のかかった者を任命しろ、さもなくば弾劾するぞと脅し上げ、イ・ジェミンに有罪を出した判事も弾劾、ともうやりたい放題です。
さすがの朝鮮日報も呆れています。

「韓国最大野党・共に民主党は27日、韓悳洙(ハン・ドクス)首相の職務停止により大統領権限代行職を継承した崔相穆(チェ・サンモク)経済副首相兼企画財政長官に対し、「国会推薦の憲法裁判官3人を任命せよ」と要求した。
同党は「我々が要求してきた憲法裁判官の任命などを崔相穆副首相が受け入れなければ、また弾劾訴追を推進する」と言った。同党は政府組織法に基づき、大統領権限代行職を継承する他の国務委員(閣僚)に対しても弾劾訴追を予告するなど、行政府の崩壊も辞さない構えだ」
(朝鮮日報12月28日)
「大統領権限代行の代行」「代行代行の代行」「代行代行代行の代行」…韓国巨大野党の「弾劾断頭台」前に並ぶ閣僚たち-Chosun online 朝鮮日報

野党は、朝鮮日報がいうにように「行政府の崩壊も辞さない構え」なのです。
となると、この弾劾三昧はユンが戒厳令を出した理由にある「親北勢力による国政の停滞」をそのまま国民の目の前で実証してしまったことになります。
韓国民はユンのひとり戒厳令に当初は驚き怒ったのですが、こういう野党の狂態を見るに至って、いや待てよユンが言っていることにも一理あるのではないかと思い始めたようです。

ユンさんは鉄条網とバスでバリケードを作っているようで、おさまらない警察は特殊部隊による武力制圧などと言い出しました。

「昨年12月3日の非常戒厳事態を捜査する警察国家捜査本部は2回目となる尹大統領の逮捕状執行に向け、対テロ部隊である警察特攻隊投入などを検討している。国家捜査本部は1回目の逮捕状執行を試みた際もこれを検討したが、投入を決定はしなかった。しかし最初の執行の試みが失敗に終わってから大統領官邸を囲む警護処の「鉄壁」はさらに強固になった状況だ。警護処は1回目の逮捕状執行失敗後にバスによる壁と鉄条網を追加で配置するなど警備態勢を強化している。警察出身である「共に民主党」の李知恩(イ・ジウン)麻浦甲地域委員長はソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で「警察特攻隊の火力と圧倒的人員で初めから警護官の抵抗意志を粉砕しなければならない」と強調した。高位公職者犯罪捜査処が前日警察に逮捕状執行を一任しようとしたが再び翻意した状況であるだけに国家捜査本部が今回の逮捕状執行で主導権を持つだろうという観測が出ている」
(中央1月7日)
韓国大統領官邸、バスと鉄条網で「鉄壁」作る…警察、2回目は特攻隊の投入検討(中央日報日本語版) - Yahoo!ニュース

やれやれスゴイね。もはや内戦一歩手前。映画『シビルウォー』の世界です。
ここまで既成秩序をぶっこわすと、次の大統領はどうするんだろう。

しかし一方、立て籠もるユンは失職中にもかかわらず支持率がなんと40%越えという椿事が起きました。

「5日の世論調査の結果、国会での弾劾訴追の可決で停職処分を受けた尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の支持率が40%を超えた。昨年12月3日の戒厳令勅令が発令されて以来、尹大統領の支持率が世論調査で40%台に入ったのは初めてだ(中央選挙調査検討委員会の発表による)」
大統領の支持率が40%を超えた...戒厳令以来初めて [韓国世論調査院] 

もはやなにがなんだかわかりませんが、ブリンケンがわざわざ訪韓して、オレらは韓国信用してっからと言わねばならないような無政府状態のようです。
北も今スッチャッカメッチャカですが、韓国はそれに輪をかけて無政府状態のようです。

 

 

«こんな場所にコンクリートの施設を置くな