北の「体制保証」の要望に答える担保とは

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昨日の続きは中段の~~以下からお読み下さい。 

ムン・ジェイン閣下の雲行きが怪しくなりました。米朝双方からお前の言っていることは信じるに値しない、と言われ始めたようです。 

北からはこのクソ馬鹿、無能扱いされたことは既報しましたが、こんどはトランプからも、お前の言うことは信じられん、と言われる始末です。 

Photohttp://www.wowkorea.jp/news/korea/2018/0522/10212970.html

「米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は20日(現地時間)、米政府関係者の話として「トランプ大統領は16日、北朝鮮外務省の金桂冠(キム・ゲグァン)第1次官が首脳会談の中止に言及したことに驚き、怒りをあらわにした」と報じた。
さらに「危険を冒して首脳会談を推進するのかをめぐり、ブレーンたちを質問攻めにした」とも報じた。同紙はまた、トランプ大統領が前日に行われた文大統領との電話会談で「なぜ北朝鮮の談話の内容は、南北首脳会談後に文大統領が伝えてくれた内容と相反しているのか尋ねた」と書いた。
 トランプ大統領は南北首脳会談の翌日の4月28日、文大統領と75分間にわたり電話会談を行った。このとき青瓦台(韓国大統領府)は「トランプ大統領は『完全な非核化を通じて核のない韓半島(朝鮮半島)をつくるという実現目標を確認したことは、全世界にとって非常に喜ばしいことだ』と評価した」と伝えた。NYTはこの韓米電話会談について「文大統領が米国に来るまで待っていられない、というトランプ大統領の心理状態を示すものだ」と指摘した。」(朝鮮日報5月21日)
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/05/21/2018052103072.html

 トランプは南北首脳会談の翌日の4月28日に、ムンを電話で呼び出して75分も会談内容を問い詰めていたようです。 

その場でムンは会談で、正恩が「完全非核化の意志がある」と答えてしまっています。それでとりあえずトランプは、そりゃ世界にとってメデタイことだと答えました。 

ところが、ご承知のように北の外務次官が5月16日に、そんなことは言っていないとやってしまったわけです。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/05/post-8d4d.html 

「先に核放棄、後に補償』方式を触れ回りながら、リビア核放棄方式だの『完全かつ検証可能で不可逆的な非核化』だの、『ミサイルの生化学武器の完全放棄』だのという主張を厚かましく繰り返している」
「我々を追い詰め、核兵器を放棄するように一方的に強要するのであれば、我々は協議にはもはや関心を持たず、来る朝米首脳会議に応じるかどうかを再考せねばならない」(AFP5月16日)
 

北は公式に、米国の言うようなリビア方式の非核化の意志などない、会談を流してもいいぞ、と述べたわけで、正恩も首脳会談で言質を取られるようなことは一言も言っていないはずです。 

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それをこの「外交天才」は、脳内翻訳して世界に発信したんですから、罪が深い。 

トランプは訪米前段のムンとの電話会談で、「なぜ北朝鮮の談話の内容は、南北首脳会談後に文大統領が伝えてくれた内容と相反しているのか尋ねた」(朝鮮日報前掲) そうです。

わずか一カ月もたたないうちにバレるようなことを、いやしくも一国の元首が言ってしまうところが、ザ・コリア、これぞコリアですね。 

韓国特有の両属性全開というわけで、コッチにもいい顔、アッチにもいい顔、結局コウモリであることがバレて、双方からフルボッコにされる、という情けない顛末です。 

こういうことが起きると、かえって状況を刺激し、米朝双方共に硬化します。 

こんどは米国が会談を流してもいいぞ、と言い始めました。 

まずは、ペンス副大統領の怒りの一撃です。

「【ワシントン=黒瀬悦成】ペンス米副大統領は21日、FOXニュースの報道番組に出演し、北朝鮮が米朝首脳会談を中止する可能性に言及したことに関し、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長がトランプ大統領を翻弄できると考えているとしたら「大きな間違いだ」と警告した。
 ペンス氏は米朝首脳会談について、「北朝鮮が韓国を通じて非核化の意思を表明し、対話を求めてきたから応じた」と指摘した上で、米国が求めているのは「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」だと改めて強調した。」(産経5月22日)
http://www.sankei.com/world/news/180522/wor1805220013-n1.html

米国の国家安全保障の専門家であるハリー・カジアーニスは、ムンがトランプに「首脳会談を救う」と述べたことに対して、「私は米朝首脳会談は死んだ思う。両サイドはあまりにも離れている」(FOXPence: 'No Question' Trump Still Willing to 'Walk Away' If North Korea Summit Goes South(FOX NEWS insider9)と述べています。

まぁトランプが、丸々ムンのいうことを信じたとは思えませんから、米国政府の「怒り」は交渉の一部だとかんがえるのが妥当でしょう。 

米国は改めて「完全・検証可能・不可逆的な非核化」以外、北の回答はありえないと、北に明言したわけです。 

この部分を米国が譲ることはほぼありえないでしょう。ここまで強いアプローチした以上、米国が譲歩するとは考えられません。 

                                            ~~~~~~~~~ 

■昨日の続きはここから 

さてここで昨日の私の自問自答に戻るのですが、どこにどうやって落とし所を設定するか、です。 

整理すれば、こういうことになります。 

①米国は北の完全非核化を譲歩する気はない。
②北は、現況では完全非核化を呑むつもりはない。
③米朝会談を流した場合、消去法で軍事オプションしか解決手段がなくなる。
④米朝会談決裂の場合も③と同じ。
 

軍事オプション以外の方法としては、長距離核だけを廃棄させて、中距離核は以後の協議に任せる「封じ込め」が、おそらく国務省の考えだと憶測されます。 

この場合、同盟国日本はもちろんのこと、米国にとっても世界戦略の策源地を、北の核の脅威下に置き続けることになります。 

そして、今までの六カ国協議で明らかのように、北は絶対に約束を履行しないでしょう。 

この思考方法では、いずれの方法をとっても、結局、戦争になるしかありません。

その時期が会談直後か、中距離核を残した場合は、将来、米朝軍事衝突が起きた場合に日本は核攻撃を受ける可能性が残ります。 

ここで多くのコリア・ウォッチャーは、その深い専門知識が故に思考停止に陥ってしまっています。 

ではここで観点を変えてみましょう。北の立場から見るとどうなるかです。 

北には米国と軍事衝突する気持ちはありません。また、韓国を軍事侵攻する予定もありません。 

それが、北の消滅に繋がることくらい分かっているからです。 

ならば北の言う「体制保証」とは、金王朝の護持を指すと考えるべきです。 

米国は既に北に対して、体制に手をつけないということを言っていますが、その担保がない以上、そんな口約束なんか信じられるかというのが、北の言い分です。 

2在韓米軍陸軍第2師団

ならば北に「体制保証」の担保を与えればよいだけです。 

それは韓国で不良資産になりかかっている米陸軍第2師団と、ふたつの空軍基地を撤退させることです。 

空軍基地は対中対応で残しておいても意味があるでしょうが、フル編成(大分、イラク・アフガンに抽出されていますが)の陸軍第2師団は塩漬けと化して久しい存在です。 

私が塩漬けと呼ぶのは、北からの侵攻がほぼ考えられないにも関わらず張り付けられていて、しかも対北以外に使い道がないからです。
第2歩兵師団 (アメリカ軍) - Wikipedia 

韓国は間抜けにも駐留経費の半分以上出しているぞ、などと言っているようですが、在日米軍はマルチに使えますが、在韓米軍は韓国防衛の単目的なのです。

駐留経費もさることながら、国防費削減の折りに、こんな大きな軍事的リソースを塩漬けにするわけにはいきません。

米軍もそれをよく分かっていて、在韓米軍を縮小していますが、米軍内にはさっさと戦時統制権を返還しちまって、こんな反米デモはかりの韓国から出て行こうぜ、という気分が濃厚にあると聞きます。 

それはさておき、北にとって「体制保証」の前提は、「朝鮮半島の非核化」が前提だと言い続けていますが、それは米軍基地に核が再搬入されることを恐れているからです。 

在韓米軍基地には核保管庫もありますし、ただ核の有無は公表しなだけのことです。 

米国は、現在政策的に朝鮮半島に核を持ち込んでいませんが、いつでも政策が変更されれば持ち込むことは可能です。 

また通常戦力においても、北など足元にも及ばない軍事力を在韓米軍はもっています。 

これが正恩の恐怖の根源です。 

だったらこの「恐怖の種」を取り除いて正恩の気を楽にしてやればいいのです。 

一方、在韓米軍が晴れて撤退できるには、こちらも担保が要ります。

それが北は二度と絶対に韓国に侵攻しませんということを条約化した「米朝平和条約」、及び「朝鮮戦争平和条約」の締結です。

それが締結されれば、米朝国交樹立、大使交換、大使館設置などの一連の外交正常化措置がなされます。

いままで米国が出している飴は、経済制裁解除と経済支援ですが、それに加えて以下の「体制保証」の担保を与えることになります。

その追加担保を整理しておきます。

①在韓米軍撤退
②米朝平和条約・朝鮮戦争平和条約
③米朝国交樹立などの外交正常化措置

この三つはパッケージです。ひとつがかけても成立しません。在韓米軍を撤収させて、米朝平和条約が成立していなければ無意味だからです。

そして言う必要はないでしょうが、「完全・検証可能・不可逆的非核化」が唯一の条件なのはいうまでもありません。

正恩がこれもイヤなら、もう処置なしです。

どこかの地下司令部で、核弾頭つきバンカーバスターのターゲットになることを恐怖して一生を送る未来しか残らなくなります。

 

 

 

 

 

 

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米国が在韓米軍撤収を交渉材料にする気だとしたら

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昨日の記事を脱稿してから、考えるともなく考えていました。 

選択肢は、ほんとうにこれだけなのだろうか。 

先日の記事で、「米朝会談の4つのシナリオ」を上げてみました。
関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/05/post-edc1.html 

・[シナリオ1] 北朝鮮が受諾した場合・・・非核化の解決。核査察・解体・撤去の開始
・[シナリオ2]  条件つき非核化の場合・・・対話延長か?
・[シナリオ3 ]北朝鮮が拒否した場合・・・①軍事攻撃②経済制裁強化③海上封鎖
・[シナリオ4] 会談自体を流す。

これがほとんどのコリア・ウォッチャーが言う最大公約数です。

実はこのいずれのシナリオにも、ひとつ大前提があります。

思い込みと言い換えてもけっこうですが、それは米国が現在の東アジアの勢力図を刷新する気がない、というものです。 

つまり、日米同盟が基軸となって、方や米韓国盟があり、そのふたつが米国をブリッジにして対中・北と対峙しているという構図です。 

私は、仮に米国がこの構造を放棄する気なら、先に上げた4つのシナリオは根本的に成り立たないと思い当たりました。 

あくまでもこのシナリオは、米国が同盟国である日韓を防衛するというのことが当然だとする前提に立っているからです。 

ここでひとつの問いです。では、米国がそう思わなくなっていたとしたらどうしますか? 

いえ、先走らないで下さい。米国が日本と同盟関係を捨て去ることは、米国が巨大な島国国家になって、米本土に閉塞した時のことです。 

それは現時点ではまったく考えられません。

米国が覇権を捨て去る時が、日米同盟の終了の時であって、逆に言えば世界の半分(その中には中東とアジアが含まれますが)に戦力投射できる策源地としての日本の戦略的位置は米国にとって必要不可欠な存在だということてす。 

では、もうひとつの同盟国である韓国はどうでしょうか。 韓国の戦略的意味は薄弱で、駐留しているのは純粋に北の侵略をブロックするためにいるのです。

ですから、日本にいる米軍がアジア本社だとすれば、韓国はその出張所ていどの位置づけでしかありません。

率直に言いましょう。憶測の域をでませんが、私は米国は韓国を捨て去る気であると感じています。 

韓国という国家は、南北統一の流れの中に消えていき、北主導の「高麗連邦」がそう遠からずできる、今はその過渡期にすぎないと、米国が観察している節があります。 

パク・クネ政権は、THAADで例の「3つのノー」という重大な裏切りを働きました。

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パク・クネはTHAADの配備をこれ以上しないと中国に約束したばかりか、日米間の防衛協力を軍事同盟に発展させないとまで約束してしまいました。

現況で軍事同盟として機能しているものを、こともあろうに仮想敵国の圧力に屈して同盟者の米国の了解なく責務を放棄したわけです。 

ミァシャイマーはこのような韓国のことを、経済的には独立していても政治・外交で支配されている「半主権国家」というような表現をしていますし、ルトワックに至っては守る義理はもうないという言い方すらしています。

このようなことを仕出かしても、自分がなしたことの愚かしさに気がつかず、自分の存在は米国にとっても意味があるから平気さぁとぬけぬけと思う、それが韓国という国の耐えられない軽さです。 

米国はこの時点で、韓国を同盟関係から「準同盟関係」にまで引き下げ、さらにはその放棄すら念頭に置いたと思います。 

それは米国にとって、THAAD配備は巷間いわれるように、中国内部の弾道弾発射を探知する目的だけで始めたわけではないからです。 

それだけなら、日本にあるMD探知網で対応可能です。 

あえて韓国内にTHAAD配備を振ったの東アジアミサイル防衛システムを作ることで、同盟関係を再構築する気だったからです。 

いわば、米国は韓国に同盟のストレス・テストを仕掛け、韓国は保守政権であったにもかかわらず見事なまでにそれを裏切ったことになります。 

そして一連の親北派によって計画されたとされるろうそくデモによってパク・クネは失脚し、北に対するシンパシーを隠そうともしないムン・ジェイン政権が生まれます。 

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ここで米国は、韓国を防衛する意義をほぼ完全に喪失したと思います。 

ならばもう、在韓米軍将兵を駐留させておく理由はないではないか、反米運動の標的になってまで韓国にいる意味があるか、米国はそう思ったはずです。 

問題が残るとすれば、米国が同盟国を「捨てた」と国際関係の中で認識されることです。これは覇権国の威信に関わりますから、是非とも避けたいところでしょう。 

ところがそれを回避する唯一の方法があります。 

それが朝鮮戦争の終結宣言、そして米朝平和条約の締結です。 

これが成立すれば、北が韓国を侵略することはあり得ない以上、米韓同盟を維持する必然性はなくなり、在韓米軍は自動的に撤退の運びとなります。 

この米国のオファーは、北にとっても、その後ろ楯に復帰した中国にとってもたまらなく魅力的なはずです。

なぜならこれこそが、中国と北が口を揃えて言う「北の体制保証」「朝鮮半島の非核化」という要求に答えたことになるからです。 

その場合、北が米国の要求する「完全・検証可能・不可逆的非核化」を拒否する理由は完全に消滅します。 

また北にとって国内向けにも、米国を会談に引き出して、平和条約と左韓米軍撤退という大戦果を引き出したことを大いに喧伝できるでしょう。 

つまり正恩のメンツも立つのです。

このように考えてくると、米国がギリギリまで圧力鍋の中で北を煮詰めて、最後の最後に在韓米軍撤退と北の完全な核の放棄をバーターにする可能性はあると、私は思います。

これについてはもう少し続けます。 

 

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トランプ政権の新閣僚シフトが意味するもの

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米朝会談まであと3週間を切りました。この時期、恒例のさや当てが盛んに行われています。 

トランプは、この間やっと共和党内をまとめきった自信の現れか、いままで共和党主流派から押しつけられてきた閣僚人事を自分の考えが行き渡るように切り換えています。

米国は「頭の硬い」マクマスターを解任し、ボルトンを補佐官に据え、融和方針に傾斜していたティラーソンの首を切って、前CIA長官のポンペオを国務長官に起用しました。
 

そして新たなCIA長官には、「ラングレーの鬼女」(私の命名)ことジーナ・ハスペルをCIA長官に指名しました。
ジーナ・ハスペル - Wikipedia

トランプが嫌いなCNN(5月18日)はこう報じています。 

「ハスペル氏はCIAで33年のキャリアをもち、そのうち32年は秘密工作を担当した。元情報当局者の幅広い支持も得ている。
一方、一部の民主党議員や人権団体などは、同氏がブッシュ政権時代にテロ容疑者の拘束や過酷な尋問に関与したことを問題視していた」

https://www.cnn.co.jp/usa/35119395.html

 PhotoBBC  ジーナ・ハスペルCIA長官

彼女はタイにおけるテロ容疑者の拷問に関わっていたとされています。
 

NYタイムズは、このように述べています。 

「2002年、秘密工作員だったハスペルは、2人のテロ容疑者への拷問を監督し、タイにあった極秘の収容所で撮影された残忍な尋問の録画テープを(証拠隠滅のために)破壊する命令に関与していた」と指摘している」 

一方、ハスペルは、議会の承認を受ける際に、以後今までのような「強化された尋問」はしないと議会に一札入れたようです。ということは、やってたんですな(苦笑)

「ハスペル氏の承認に賛成した民主党議員の一人、マーク・ワーナー議員(バージニア州選出)は、ハスペル氏がいわゆる「強化された」尋問手法を決して使うべきではなかったと後悔していたと指摘。今後はたとえ大統領が強く要求したとしても、そのような尋問は決して行わないとハスペル氏が誓ったことを、自分の判断理由に挙げた。
ワーナー議員は議決前の演説で、ハスペル氏について「大統領に何を言われても反対することのできる、そして反対するだろう人物だと確信している」と評価。「この大統領がもし、拷問回帰など違法なことや非道徳的なことを命令しても、権力に向かって真実を語ることができる人だと思う」と述べた」(BBC5月18日)

 ボルトン-ポンペオ-ハスペルの新閣僚人事が指し示すのは、疑う余地なく従来の国務省主導の外交政策を放棄したということです。 

北に対する国務省の外交方針は、特別代表をしていたジョセフ・ユンに代表されます。 

「日米外交筋は「ユン氏は米政権で最も北との対話重視のニュアンスを出していた」と語る。北朝鮮への挑発を繰り返すトランプ大統領に不満があったとみられている。
ユン氏は昨年9月15日に北朝鮮が弾道ミサイルを発射した直後、核実験やミサイル発射を60日間行わなければ米朝対話に応じる考えを伝えていた。だが、北朝鮮が挑発行為を控えていた中、トランプ氏は11月20日に北朝鮮のテロ支援国家再指定を発表。北朝鮮側がユン氏とのチャンネルを重視しなくなったとの見方もあり、12月上旬には元国務省情報調査局北東アジア室長のジョン・メリル氏が北京で北朝鮮と極秘接触した」
(産経3月1日)

https://www.sankei.com/politics/news/180301/plt1803010038-n1.html

Photo_4ジョセフ・ユン(右)とビクター・チャ( 松井大阪府知事と植村隆氏みたい)

このユンは去年の早い時期から、北欧が介在したバックチャンネルを使って北との水面下との交渉の責任者でした。 

「北朝鮮との極秘協議を主導したのは米国務省情報調査局のジョン・メリル=元北東アジア室長。「トラック1.5」と呼ばれる官民合同の意見交換会の形をとったとされる。北朝鮮側の出席者ははっきりしないが、対話の再開条件や枠組みなどについても協議したとみられる。
直後の12月12日にティラーソンは講演で「前提条件なしで北朝鮮との最初の会議を開く用意がある」と発言した。メリルらの報告を踏まえ、対話再開に向けたシグナルを北朝鮮側に送った可能性もある。
米朝間では、米国務省のジョセフ・ユン北朝鮮担当特別代表と北朝鮮外務省の崔善姫米州局長も度々接触しているとされる」(産経1月4日)

 おそらく去年秋頃から韓国の冬季五輪を使っての北と韓国の融和路線に並走するようにして、北との秘密接触が行われたようです。

この動きは日本のメディアの「日本だけ蚊帳の外」論として、安倍叩きの絶好の材料となったことは記憶に新しいことです。 

たとえば代表的な「蚊帳の外」論はこうです。 

「米国はとっくに北との対話に向かって動いており、今回の南北高官級会談の開催という新展開も、米韓中露さらにカナダも含む国際的な対話醸成努力の成果と見ることもできる。そうしてみると、米国を盟主と崇めてその斜め後ろに控えて、韓国を叱咤激励しつつ北に対する国際包囲網を作り上げているというのは、日本だけが思い描いている虚像で、実は朝鮮半島問題の対話による解決のための国際的包囲網が作られつつあって、そこで包囲されているのは唯一人、対話を拒否している日本なのである」
(高野孟「日本だけが蚊帳の外。北朝鮮問題の対話路線に乗り遅れた安倍官邸」2018年1月18日)

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高野氏たちにはお気の毒ですが、「日本だけが描いている虚像」は、実は逆に「日本メディア・野党だけが描いている虚像」でしかなかったことが、彼らが否定したくてもできないほど明らかになったのが、今回の新人事です。 

今や北との融和路線を閣内で唱えているのは、かつて就任した際に「軍人内閣」だと騒がれたマティス元海兵隊大将だけというのも皮肉です。 

そして更に追い打ちをかけるようにして、空席だった米国の駐韓国大使に、ハリー・ハリス太平洋軍司令官(大将)が指名されました。
ハリー・B・ハリス・ジュニア - Wikipedia

あまりこれを強調すべきではないと思いますが、ハリスは母親が日本人で横須賀生まれです。ただし2歳で米本土に移住しています。

パイロット出身で、実戦経験もあります。

また多くの米国の将官に共通するように、ハーバード、ジョージタウン、オックスフォード大学などの大学院で学んでいます。

見た目はまるで日本人で、ユンやチャが見た目はコリアというのと対照的ですね。

Photo_5ハリー・ハリス新駐韓国大使(現米海軍太平洋軍司令官) 

「トランプ米大統領が18日(現地時間)、対中国・対北朝鮮強硬派のハリー・ハリス米太平洋司令部司令官を駐韓米国大使に指名した。
ホワイトハウスはこの日、ホームページを通じてトランプ大統領の主要人事内容の中でハリス司令官の指名を知らせた。米上院承認聴聞会を通過すれば駐韓米大使として公式的に赴任する。駐韓米国大使はトランプ大統領の就任から16カ月以上にわたり空席だった。 
ハリス司令官はその間、北朝鮮に対して強硬発言をするなど「対北朝鮮強硬派」に分類される。トランプ大統領が6月12日の米朝首脳会談を控えてこうした人事を決定したのは注目を引く」(中央日報5月19日)

http://japanese.joins.com/article/528/241528.html

 実はトランプ政権は就任してから1年たっても、駐韓大使を指名できないでいました。 

いままで、最有力と見られて、韓国からアグレマン(内定合意)まで取っていたのがビクター・チャです。

「米政府はチャ氏を駐韓米国大使に内定し、昨年12月には韓国政府にアグレマン、すなわち任命同意を要請して韓国政府は直ちに承認手続きを完了していたことが分かっている。アグレマンまで受けた大使内定者を指名しないのは非常に珍しい」(中央日報1月31日)
http://japanese.joins.com/article/091/238091.html?servcode=A00&sectcode=A30  

さきほど上げた国務省のユンとチャには共通した考えがあって、いわば「封じ込め」派で、このような考えです。 

戦争となれば、ソウルは火の海となる可能性があるし、日本も無事では済まないだろう。在韓米国人も危険にさらされる。 

ならば、同盟国を危険にさらす軍事攻撃はしないほうがよい。中国やロシアと協調して、北の核拡散を防ぐほうが現実的だ。

ユンやチャの考えは、米国国務省の主流の考えかたで、日本でも元外交官評論家や国際政治学者では三浦瑠麗氏などが同様のことを述べています。

ひとことで言えば、秘密裏に対話を継続しつつ圧力を強化していくところまでは、トランプと一緒ですが、米朝首脳会談で北と決定的に決裂した場合の「次の段階」が異なります。

国務省派と仮に名付ければ、彼らの「次の段階」は交渉は継続しつつよりいっそう強い国際協調による「封じ込め」を選択するでしょう。 

一方、新たなトランプシフトの「次の段階」はひとつしかあり得ません。

・・・それは軍事行動です。

 

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日曜写真館 立てばしゃくなげ

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北から愛想づかしされた韓国の悲哀

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つい数週間前までノーベル平和賞最有力候補とまでオダてられていた、ムン・ジェイン閣下の雲行きが怪しくなりました。 

ブルームバーグ(5月17日)です。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-05-17/P8VBU56K50XU01 

「国営朝鮮中央通信(KCNA)は17日に英語で発表した声明で、韓国当局者は「無知無能な集団であることをさらけ出した」と非難。韓国当局は「北朝鮮最高指導部の尊厳と体制を、人間のクズどもが国会の場で傷つけるのを容認した」と続けた。 
その上で、韓国との「閣僚級会談の中止に至った深刻な状況が解決されない限り、韓国の現政権と再び交渉の場で向かい合うのは断じて容易ではない」と警告した」

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とうとうムン閣下は北から、「無知無能の人間のクズ」呼ばわりされたうえで、「南北閣僚級会談が吹っ飛んだ理由を考えてこい。それまでは次の会談はない」と愛想づかしされてまいました。 

この間の昨日取り上げた北のキム・ゲグファン外務次官の発言は、内容もさることながら、今までムンに言わしていたことを、ダイレクトに北の外交当局が公式に発言し始めています。 

つい最近までこんな感じだったのが、なぜか大昔のような気がするから奇妙なもんです。 

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まぁ、一言で言えば、ムンは北にとってもう用済みだということですね。 

北にとってムンは、米国を直接対話に引っ張りだすためのフック(釣り針)でした。 

北はとうに韓国が、軍事的にも政治的にも脅威ではないと見切っています。 

韓国の繁栄は、北の存在によって大陸から遮断された地政学的意味での疑似「島国家」になったことによります。 

また、冷戦期は反共最前線国家がゆえに、大規模な米軍駐留や日本からの経済支援を受けてきました。 

南は民族分断の甘い汁をひとりで吸ってきた。この偽りの繁栄は、オレたちが居たからだろう、コノヤローと正恩は言いたいのです。 

この北の鬱屈した感情は、北が韓国を吸収して「統一国家」とすることでのみ、解消されます。 

北の眼からみれば、世界最強の米国とサシで渡り合っているのは自分だけであって、日本はトランプのゴマすり、ムンなどはパシリにすぎないと考えているはずです。 

ですから、冬季五輪を最大限に使い、米国を引き出せばもうムンなどはもはや邪魔だからさっさと目の前から消えてしまえ、ということです。 

またそのうち高麗連邦でもテーブルに乗るようなら、声かけてやるからな、てなもんかもしれません。 

一方、韓国は南北統一のバラ色の夢に酔いしれていました。

「与党「共に民主党」が6月の地方選挙に合わせて出した公約には23件の対北朝鮮事業が盛り込まれている。直接的な経済事業ではないものもあるが、費用が伴うものが多い。開城(ケソン)工業団地再稼働と金剛山(クムガンサン)観光再開のように韓国政府が「圧迫カード」として使わなければならないものから豆満江(トゥマンガン)地域の南北中ロ共同開発計画のようにさまざまな国の同意を得なくては始められない事業まで混ざっている」(中央日報5月16日)
http://japanese.joins.com/article/425/241425.html 

この火付け役はムンです。ムンは南北の統一を念頭に置いた共同事業ブロジェクトを考えていました。 

それが、ムンが正恩に直接USBメモリで手渡したとされる「韓半島新経済地図」です。 

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「韓半島新経済地図が実現されると、ガス代が今の4分の1に減り、日本の輸出物流を吸収するなどの経済的利益が非常に大きいという分析が出た。新経済地図は先月27日、南北首脳会談の際ムン・ジェイン大統領がキム・ジョンウン北朝鮮国務委員長に渡したリムーバブルストレージデバイス(USBメモリ)に込められたものと伝えられた。
キム・ジンヒャン開城工業地区支援財団理事長は2日、 tbsラジオ「キム・オジュンのニュース工場」に出演して新経済地図の実現した効果を説明した。
新経済地図はファンソベルト(木浦-仁川-個性-て-新義州-大連)、環東海ベルト(釜山-浦項-雪岳山-原産-羅津及び先鋒-清津-ロシアのウラジオストク日本新潟を含む)、国境地域のベルト(仁川-江陵-咸興)で構成されている。これらを接続すると、「H」字型となる。 」(韓国日報5月2日 ブログ楽韓様訳による)

実はこれはかねてから韓国内にあった構想の焼き直しです。かなり前からシべリア原油を極東に持ってくるプラン自体はありました。

D0007923_2232167現在、第1段階の建設工事が行われている(ジェトロ資料より)

うまく行きませんでしたが、父親の正日は当時の大統領だったメドベージェフと、北経由のパイプラインの協議をおこなっていますし、ロシア-中国のパイプラインは現実化しています。

プーチンは売れれば、どこだっていいので、もちろんこの朝鮮半島ルートも検討しています。

韓国としては京義線を延長させて、開城工業団地を経て中国にまでつなげ、さらに東海線も延長させてシベリア鉄道につなげるという計画です。 

つまり一方で中国が進めている一帯一路に乗って西に鉄道を伸ばし、方やロシアからはシベリア原油パイプラインをヨーロッパをつなげるラインを作ろうというものです。 

もちろん、鉄道とパイプラインはワンセットですから、ユーラシア大陸を横断する巨大なエネルギー・物流ルートができるぞ、マンセーイということのようで、まことに気宇壮大ではあります。 

0000297575_002_20180503044915403_3韓半島新経済地図

なるほど確かに、北朝鮮との障壁がなくてって自由往来できるようになれば、晴れて疑似「島国家」から脱して大陸につながることは確かです。

かくして韓国は凡ユーラシアルートの中継拠点として栄え、太平洋側からも日本のヨーロッパ便を吸収し、まさにユーラシア大陸の21世紀の扉となるあろう!ジャジャーン♪(音楽高まる)

日本はヨーロッパへの窓口となったコリアに頭をすりつけて、どうかコリア様、これを使わせて下されと土下座するであろうな、おー気持ちいい、というところでしょうか。 

かつての日本は、東京駅から門司、玄界灘を渡って、朝鮮半島経由で旧満州、中国にいけましたし、シベリア鉄道に乗り換えればヨーロッパまでも鉄道だけでいけたのですから、まんざら絵空ごととも思えません。 

ちなみに母は戦前、このルートで東京駅から切符を買って、父の赴任先だった北京に行っています。 

ま、ムン閣下のバラ色の夢を壊すようでナンですが、そうはならんでしょうね。

だって、今の日本は特に鉄道便でヨーロッパに輸出する必要はないんですよね。船便もあれば、航空便もありますもんで。 

D0007923_2214935日本エネルギー経済研究所資料より

もそも我が国には、かねてからロシアのサハリンからダイレクトに北海道経由で原油パイプラインを伸ばそうという案もあります。

諸事情で実現には至っていないのですが、建設されれば、別に朝鮮半島ルートよりはるかに近距離で原油の輸入が可能となりますので、別に韓国の手を煩わせる必然がありません。

それはさておき、このようにヒートする一方の韓国を尻目に、北からは「無知無能、人間のクズ」呼ばわりですから、まことにお気の毒です。 

北にとって、このような「融和ムード」はカッコつきです。それはかならず南から北へのヒト・モノ・カネの移動を伴うからです。 

ムンの構想に乗ろうものなら、南からハデハデのKポップや映画が流れ込み、資本主義の匂いをムンムンとさせたエゲつなさでは世界指折りの韓国商人たちがなだれ込んで、北の豊富な鉱物資源や安い労働力を食い散らすことは目に見えている、そう正恩は考えているはずです。

正恩は改革開放経済をやると中朝会談で習に言ったそうですから、それなりにやる気はあるのでしょう。

「正恩氏の発言は、米朝首脳会談で体制保証の確約が得られれば、非核化と経済再建に同時に取り組む意思を示したものとみられる。
正恩氏は習氏に、非核化への意欲を示しつつ「私は今後、改革・開放政策を採用する」と表明した」(読売5月19日)
https://news.nifty.com/article/world/worldall/12213-20180518-50148/

しかしそれはあくまでも対中貿易のお話です。同民族の韓国のイニシャチブで開放改革したら、金王朝はお終いです。 

あくまでも北にとっての「統一」とは、北が圧倒的なヘゲモニーを握っての統一であって、このようなものではありません。

というか、今の北にとって、統一に浮かれるどころではありません。南北融和はトランプを呼び込むあくまでも大道具にすぎません。

米朝首脳会談を実現した以上、もうムンには用はない、それが北の今の意志だということのようです。

 

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北が米朝会談を流すと言い始めたが・・・

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北が米朝会談を拒否すると言い出しました。なかなか面白い展開です。 

「米が核放棄強要なら首脳会談「再考」 北朝鮮外務次官
【5月16日 AFP】(更新)北朝鮮の金桂冠(キムゲグァン)第1外務次官は16日、米国が北朝鮮に核兵器の放棄を一方的に強要するなら、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長とドナルド・トランプ米大統領の首脳会談を取りやめると警告する談話を発表した。国営の朝鮮中央通信が伝えた。
 金外務次官は談話の中で、トランプ政権が「我々を追い詰め、核兵器を放棄するように一方的に強要するのであれば、我々は協議にはもはや関心を持たず、来る朝米首脳会議に応じるかどうかを再考せねばならない」と述べた。
 朝鮮中央通信は同日これに先立ち、米韓合同軍事演習を非難した上で、この日予定されていた南北閣僚級会談を中止すると表明。米国に対しても「この挑発的な軍事騒動を踏まえ、予定されている朝米首脳会談の運命について熟慮しなければならない」と警告していた。
 米国は北朝鮮に対して「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(CVID)」を求めているが、北朝鮮はこれまで、どういう譲歩をするかについて公には一切示していない
 金外務次官は「我々はすでに朝鮮半島の非核化に向けた用意があると表明しており、米国が我が国に対する敵視政策と核による脅威を終わらせることが先決だと繰り返し明言してきた」とも指摘。
 また、北朝鮮の核放棄の具体的道筋について「リビア方式」を主張するジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)を非難し、「リビアやイラクの運命を我が国にも押し付けようとする極めて邪悪な試み」だと断じた」(太字引用者 AFP5月16日)
 

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このキム・ゲグファンは、よく名前が出てくる北の外交畑のトップですが、北の外交部は党、つまりは正恩が絶対的に優越するために、日本の外務省と比較すべきではありません。 

しかし、米朝の水面下での交渉で何がデッドロックになりかかっているのかが分かって興味深いと思います。 

それは一つ目は、停戦協定交渉時によくある「どちらが先か」論です。米国が主張する非核化が先か、経済制裁解除が先か、です。 

米国はボルトンが言う「リビア方式」が完了してから、経済制裁を解除するつもりでいます。

ボルトンはクソミソに言われています。

キム次官に言わせると、「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(CVID)」なんてとんでもない、オレらはお前らの言うこと聞いて下水管で殺されたリビアのカダフィみたいにはならんぞ、ということのようです。元気のいいことです。

CVIDについての正式な北の見解を聞いたのはこれが初めてです。聞く限り完全拒否のようです。

「ボルトンをはじめ、ホワイトハウスと国務省の高位官僚は『先に核放棄、後に補償』方式を触れ回りながら、リビア核放棄方式だの『完全かつ検証可能で不可逆的な非核化』だの、『ミサイルの生化学武器の完全放棄』だのという主張を厚かましく繰り返している
「これは対話を通じて問題を解決しようとするものではなく、本質において大国に国を丸ごと任せきりにして、崩壊したリビアやイラクの運命を尊厳高い我々に強要しようとする甚だ不純な企てだ
「われわれは、朝鮮半島の非核化の用意を表明し、そのためには米国の敵視政策と核脅威による恐喝を終わらせることが先決条件になると数度にわたって明言した」(時事5月16日)

米国は軍事的圧力と経済制裁の二本立てで、ここまで北を追い詰めました。 

ではどちらが重いのでしょうか?キム次官はこう述べています。 

まず経済制裁、あるいは経済支援についての言及と思われる箇所です。

「米国はわれわれが核をあきらめれば経済的補償と恩恵を与えると騒いでいるが、われわれは一度たりとも米国に期待をかけて経済建設をしてことがなく、今後もそのような取り引きを絶対にしないだろう」(朝鮮中央通信5月16日)

なんと、北は経済支援なんていらない、とのたまうていることになります。 

こりゃたまげた。ひょッとして考えすぎかもしれませんが、日本に対して言ったのだとすると、なおさら興味深いものがあります。 

ただし、今の経済制裁については「敵視政策をやめろ」で一括されているのかもしれないので、経済支援とは別枠かもしれません。 

つぎに軍事圧力ですが、こんなことを言っています。 

「われわれは既に朝鮮半島非核化の用意を表明したし、そのためには米国の朝鮮敵視政策と核による恐喝をけりをつけることがその先決条件になるということを、数回にかけて明らかにしてきた」 (同上)

北はここで彼らのいう「非核化」の意味は、米国の北敵視政策の放棄と核の脅威の除去だと言っています。 

北の「非核化」とは相互に非核化を図るというもので、北を非核化をさせたいなら、米国も北の要求を呑めということを言っているわけです。 

前者の「米国の対北敵視政策」とは、伝統的に在韓米軍と米韓合同軍事演習を指しますから、北がその撤退を言い出していることが分かります。 

これに対して安倍氏は強くトランプに止めるようにと日米首脳会談で説いたとされますが、トランプは元々在韓米軍撤退論者でしたから、この縮小、ないしは撤退も取引材料に使いたいのは山々でしょうね。

北にとっても、その後楯に復帰した中国にとっても、在韓米軍撤退は魅力的提案には間違いないでしょう。

後者の「核による恐喝」とは、意味不明です。 

というのは、米国はとうに韓国から核を撤去しています。今後の配備予定があるならともかく、そのようなものはありません。 

何をどうしたいのか、具体的に指摘しないと、ひょっとして米国本土のICBMか、潜水艦発射SLBMか、はたまたグアムのB2のことかと、いくらでも拡大解釈が可能です。 

北はどうやら、既に自分は一人前の「核保有国」なのだから、米露核軍縮協議の北朝鮮バージョンをしろと言っているのかもしれません。 

ちなみにこんな核軍縮協議なんぞを始めると、半世紀はかかります。 

そもそも膨大な核ミサイルを保有する米露なら核軍縮協議にも意味がありますが、せいぜいが多めに見ても数十個しかなく、しかも投射手段も満足に完成していないような北相手に、米国がうなずくはずがありません。 

北の核技術は米露を高級車とするなら、電動アシストつき自転車の段階になったかならないかていどなのですから。 

高級車を何万台も持っている米国が、ママチャリと交換に応じる道理がありません。

いや、待てよ、ミニットマン数十発と北の核全部の等価削減なら、米国にとってお安いご用かもしれませんがね(笑い)。

いずれにしても、核と核原料、その製造装置がどこにあって、どのような状態なのかを国際機関に開示せねばなりません。この核査察が核軍縮交渉の大前提だからです。

米国の核の脅迫を排除したいなら、自分の国も核査察を受け入れねばならないのです。軍用核兵器の査察が可能なのは米露中の軍人専門家だけです。

外国軍人が自由に国中を走り回り、自由に査察するのです。これが認められなければ話になりません。

独裁国家としては、けっこうハードルが高そうですが、大丈夫でしょうか、北さん。

というわけで、いままでムンから「任せなさい!北の非核化の意志は硬いですよ」という妙に甘ったるい伝言を聞かされ続けてきただけに、北の言っていることが直接に聞けて大変にけっこうでした。

このようなことをこの時期に、北の外交官トップが言うところを見ると、まだまだ合意のはるか前のようです。

 

 

 

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「ポスト翁長」時代に望まれるものとは

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こういう言い方をするのはまだためらわれますが、「ポスト翁長」を考えねばならない時期に来ているのは万人の目にも明らかです。 

基本的には、かつて書いたシナリオを大きく変更する必要はないようです。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/04/post-f4c0.html 

6495f1b96e41b393a310f78756c8a356退院会見

さて、翁長氏には蛮勇の破壊者の側面があります。それは保革双方に対してです。 

翁長氏がまず破壊したのは、利権とポスト配分にあぐらをかいていた沖縄保守でした。 

その根っこには、米軍基地があってこそ振興予算が島に流入するという隠微な関係がありました。 

このような中から、基地と振興予算をめぐる利権の温床が生じました。このように基地をリアルな安全保障問題としてとらえられないような「眼の曇り」が、保守内部にもあったのです。 

沖縄県管轄地域が国際紛争の現場となる可能性があるにもかかわらず、沖縄保守、いや自民党沖縄県連と名指ししてしまいますが、驚くほどその危険性に鈍感でした。 

それは沖縄保守県政において、離島防衛に対しての意識が生まれず、尖閣から宮古・八重山を経て沖縄本島までの巨大な空間が、安全保障の空白地帯として残ったままだったことでも分かります。

島の自民はむしろ反対派がハネてくれれば、それを口実に予算がぶんどれる、ていどの隠微な読みがあったような気がします。

これは本土の55年体制において、社会党が反安保闘争を激化させれば、政府が米国からの要求に言い訳が立つと考えていたような阿吽の関係に似ています。

かつて翁長氏が寝返るに際して「基地を押しつけるならカネはいらない」と言ったことを、私はほほぉという気分で聞いたことを思い出します。 

また、朝日とのインタビューの中で、「革新は戦ったことで精神的に満足している。政治家は結果だ」と言ってのけた時には、思わず拍手すらしそうになりました。 

まことにそのとおりで、翁長氏は沖縄の宿痾が「基地とカネ」にあることを喝破していたことになります。 

ならば、その利権の構造の中心にいたがゆえに、その汚泥の臭みを最も知り抜いた翁長氏が、オスプレイ反対・辺野古移転阻止を戦ったらどのようなことになるのか、私の関心はそこにありました。 

私は、翁長氏が左翼好みの美辞麗句を言いながら、面従腹背をするのを待ちわびていたのです。 

どこで自民党県連では実行不可能な腹芸を繰り出すのか、待ち焦がれていました。 

特に、一昨年の裁判所が仲介した実に10カ月にも及ぶ「和解」期間において、いかなる寝業を見せてくれるのか、心密かに期待していたものです。

この翁長氏への「期待」は、何度か記事にしました。 

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結果は、ご承知の通りです。菅官房長官が毎月定期的に沖縄に通って来るという、これ以上ない機会がありながら、指をくわえていたのです。

翁長氏がこの10カ月間に紛争の解決に向けて、何か能動的に動いたという記録はありません。ただ、反対派と同じ怒りと怨念を、本土政府にぶつけたにとどまりました。 

こんなことなら革新知事にもできます。それはなぜでしょうか?

理由ははっきりしています。翁長氏が共産党を甘く見たということです。 

共産党はいかなる状況にあっても基本方針の変更を拒むことでこそ、純粋な「革命党」でありえるという秘密に気がつかなかったことです。 

このような「革命党」を自らの手足としてしまえば、翁長氏に選択の自由は存在しません。

翁長知事が言えるのは、わずかにオスプレイ反対と移転阻止の二つだけだったのです。 

翁長氏には「オール沖縄」が降ろしてくる方針を、そのまま実施する以外になにも出来なかったはずです。 

2016122301政府の北部訓練場返還式典を欠席して参加した反対派集会での翁長氏と稲嶺前市長

知事という「黄金の檻」に閉じ込められた共産党の操り人形、それが翁長氏でした。 

翁長氏が「基地を押しつけるならカネはいらない」と吠えたことは、弊履のごとく捨て去った自民党県連に対するあてつけだったでしょうが、それは一面の真理です。 

ただし翁長氏の致命的欠陥は、ひどい経済オンチだったことです。おそらく氏には、県の経済とは基地利権だていどの理解しかなかったはずです。 

翁長県政は、自らの構想と力で沖縄経済を刺激し、浮揚させることをしませんでした。 

この傾向は翁長氏が飛び込んだ革新陣営においては更にひどく、彼らはまるで「資本主義を憎んでいる」ようです。

この体質は、共産党が主力だということと、自治労、沖教組という食いっぱぐれがない「親方日の丸」の人たちがその中心だったためです。

たとえば伊波洋一氏などが選挙公約で、県最低賃金の倍増と言いだした時には失笑しました。

景気の浮揚を伴わない政治的賃上げでは、地場産業は軒並み破綻するのは目に見えています。今の韓国のムン政権と同じです。

経済を活性化させる中から、失業率を地道に減らしていき、そのことによって起きる労働力不足による賃上げを展望するのでなければ、絶対にうまくいきません。

そういう彼らが「独立」を叫ぶのは笑止です。

もし本気で「独立」を希求するなら、それは与えられるものではなく、自らが自分の足で経済を支えることができてこそ初めて獲得できるものです。

独立とはとりもなおさず、強い自前の経済力をもつことであり、大国の干渉に負けない自前の軍隊を持つことのはずなのですが、彼らはそのいずれも忌避してきました。

今の琉球独立派は、北京で会合を持つような人たちにすぎません。

「翁長時代」は、このような左翼陣営に権力を握らせたらどのような結果になるのかを明らかにしました。

このように考えてくると、「ポスト翁長」時代があるとすれば、基地とカネという旧弊な構造から自由にな人物が望ましいと思います。

 

 

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翁長知事 すい臓癌ステージ2と公表

Wst1805150058p2産経5月16日より引用

翁長知事が退院し、病状についての正式な公表がありましたので、そのまま転載いたします。

写真を見ると、氏の頬のやつれ具合はあきらかで、痛々しい思いでした。

腫瘍はすい臓癌ステージ2です。欄外に引用しましたが、ステージ2は以下の段階です。 

「がんの大きさが2cm以下で膵臓の内部にとどまっている。がんから近い第1群のリンパ節に転移を認める。またはがんの大きさが2cm以上で膵臓の内部にとどまっている。リンパ節の転移を認めない」 

ステージ゙2は、リンパ節からの他臓器への移転は認められない段階で、5年後生存率は18.2%です。

知事は任期を全うするとしていますが、2期めの出馬については明言を避けました。

常識的に考えて、2期め4年間の任期を全うできる可能性は極めて低いからだと考えられます。

自民党は月内に候補者を選定する予定ですので、なんらかの影響があると思われます。 

とまれ、退院おめでとうございます。無理をなさらずにリハビリにお励みください。

関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/04/post-f4c0.html  

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産経新聞5月16日 

ステージ2の膵がんと診断 早期の公務復帰意欲も秋の知事選対応は曖昧 

大変お久しぶりでございます。大変ご心配をおかけしました。きょうは手術、病理検査と退院についてということでご報告をさせていただきたいと思います。 

先月から県民の皆さまにご心配をおかけをいたしております。私が受けました手術および病理検査の結果と退院についてご報告をさせていただきます。 

まず経過報告ですが、4月6日、7日と精密検査を行い、膵臓の腫瘍と診断を受けました。 

その他の臓器も検査を行いましたが、腫瘍はありませんでした。腫瘍にもいろいろありますので、診断を確定させるため手術的治療が必要と考えました。 

4月23日に富川(盛武)副知事、謝花(喜一郎)副知事から記者会見をさせていただいた通り、4月21日、土曜日、浦添市の浦添総合病院において、伊志嶺朝成先生執刀で手術を受けました。 

手術は予定通り行われ、腫瘍部を切除し病理検査の結果を待ちました。手術の翌日からは退院に向けたリハビリに取り組み、順調に回復したことから、当初の予定より早く本日、5月15日に元気に退院をさせていただいております。 

今回また膵臓のですね、腫瘍、膵がんということで、また新たな課題であるわけでありますけれども、私からすると冷静に受け止めながら、これから治療に向けて全力を傾けて頑張っていきたいなあというふうに思っております。 

それから他にも転移があったということでありますけれども、膵臓周囲のリンパ節の中に1つ確認をされまして、手術で切除をされたと聞いております。 

これから定期的に通院をいたしまして、抗がん剤治療も合わせて検査、観察をしていきたいと思っております。 

ステージという質問でございます。まあ手術も前の会見でも説明をいたしましたけれども、切除した腫瘍は、大きさが約3センチでございまして、ステージは2と説明がございました。 

退院が早まった理由でありますけれども、むしろ少し遅くなった理由は連休が入ったもんですから、少しですね、まあ数日ではありますけれども、少し遅くなりました。 

あとは私が退院をして公務に徐々に慣れ親しんでいきながら、しっかりと任期を全うするためには病院のほうである意味で丁寧に入院をしたほうがよかったのか。 

あるいは退院をいたしましてこのように初日から記者会見をして、私からご説明をするなりをやりながら、これからの1日、1日を、公務をですね、しっかり果たせるように。 

あるいはまた、しばらくは自宅と県庁と言いますか、仕事の割り振りがあろうかと思いますが、徐々に徐々に仕事の中身をですね、増やしていってということも含めると、今日のほうがよかったのではないかということで、先生のほうも病気が回復するという意味でも、それから私の仕事に理解を示すという意味でも、今日という日が退院という意味ではふさわしいのではないかということで、今日という日になったわけであります。 

 --今回の検査結果を受けて1期目を全うする考えに変わりはないか。秋の知事選に出馬する考えはあるか 

はい。まあ、あの、この病気があるにかかわらず、これまでの1年間というのは、私が知事選挙に出馬するかというようなご質問等は本会議でもいろんなところで受けたわけであります。 

私はそのたんびに1期の4年間、1日、1日、しっかりと公務をやることで県民のですね、判断に委ねたいというような気持ちも含めて、私からすると出馬というよりも1日、1日のですね、公務についてやっていきたいと思っております。 

ですから、こういう退院をして、これからのことでありますけれども、今は幸い、今、流動食等々で体力回復がまだでありますけれども、しかしここ数日、ぐんと元気になってまいりましたので、公務をしっかりとこなしていく、これが私のですね、今、一番の眼目でありまして、まずはそれをしっかりする中で私の負託に応えていきたいというふうに思っております。

膵臓がんステージ別の治療法 | がん治療を分かりやすく

 

ステージ5年生存率症状
ステージⅠ40.5% がんの大きさが2cm以下で膵臓の内部にとどまっている。リンパ節の転移を認めない。
ステージⅡ18.2% がんの大きさが2cm以下で膵臓の内部にとどまっている。がんから近い第1群のリンパ節に転移を認める。またはがんの大きさが2cm以上で膵臓の内部にとどまっている。リンパ節の転移を認めない。
ステージⅢ6.3% がんは膵臓の内部にとどまっている。がんから少し離れた第2群のリンパ節に転移を認める。またはがんが膵臓の外へ出ているが、第1群リンパ節までにとどまっている。
ステージⅣa1.6% がんが膵臓の周囲の主要な血管や臓器を巻き込んでいる。
ステージⅣb

がんから離れた第3群リンパ節や、離れた臓器に転移を認める。

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小西議員への「暴言」事件からシビリアン・コントロールを考える

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後味の悪い事件がありました。 

小西洋之参議院議員に暴言を吐いたとして、空自の三佐が処分されました。 

この自衛官が、30代で統合幕僚監部勤務という重責を担っていたことから、事態がメディアで大きく取り上げられました。

「防衛省は8日、小西洋之参院議員に「国益を損なう」などと暴言を吐いたとして、統合幕僚監部の3等空佐を内部規定に基づく訓戒処分とした。品位を保つ義務を規定した自衛隊法に違反したとしたが、より重い懲戒処分にはしなかった。小西氏が当初から主張した「おまえは国民の敵だ」との発言も3佐は一貫して否定しているという。
防衛省によると、3佐は4月16日夜、国会議事堂周辺をジョギング中に遭遇した小西氏に暴言を浴びせた。「国のために働け」「ばかなのか」「気持ち悪い」などの発言もあり、政治が軍事に優先するシビリアンコントロール(文民統制)を逸脱したとして問題化。防衛省は小西氏に謝罪する一方、3佐から事情を聴き、経緯の解明を進めていた。
自衛隊法58条は隊員に常に品位を重んじ、自衛隊の威信を損するような行為をしてはならないなどと定めている」(産経5月8日)

今回、防衛省は当該自衛官を伴っての現場再現聞き取りまで行っており、通り一遍の臭いものには蓋的なお役所仕事ではないと思います。
自衛官聞き取り全文https://www.sankei.com/politics/news/180424/plt1804240032-n1.html

三佐は「国民の敵」などと言っていていないと一貫して主張しており、苦慮した防衛省は自衛隊法第58条の「品位」で処分をしたようです。 

三佐は西部方面航空隊司令部に左遷されました。会社員なら東京本社中枢から大阪支社に飛ばされたというようなもので、おそらく彼の未来は30代にして断ち切られたと思われます。 

ここで私が憂鬱な気分になるのは、この事件の報道において、当の小西氏は言うに及ばず、メディアが一斉に「シビリアン・コントロールへの暴挙」といったトーンで報じたことです。 

これはメディアの自衛隊の日報が見つからなかったことをとらえて「シビリアン・コントロールへの挑戦」という論調とも重なり、さらには改憲論争における「憲法に自衛隊を書き込まないからこそコントロールできる」という石川健治東大教授らの見解とも共通します。 

ちなみに石川氏はこう述べています。

「戦後日本において、きわめて有効に機能した軍事力統制のメカニズムの、全部ではないにしても不可欠のピースをなしていたはずなのです。それが、自衛隊の正統性を正面から認めようという今回の提案によって、すべて一気に立ち消えてしまうということになります」(「「安倍9条改憲」はここが危険だ(前編))
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2017060500003.html

まるでシビリアン・コントロールという護符を貼らねば、戦争をしたくてたまらない自衛隊が暴走してすくにでも対外侵略でも始めるようです。 

ではほんとうに軍は好戦的で、それを統制して戦争をくい止めているのが文民(シビリアン)政府なのでしょうか? 

シビリアン・コントロールというのは、軍が独立した統帥権を持つのではなく、あくまでも政府の統制下に位置づけるという統治の基本を述べただけのものにすぎません。

いちおう概念を定義しておきましょう。

「文民統制・シビリアンコントロール(Civilian Control Over the Military)とは民主主義国家における軍事に対する政治優先または軍事力に対する民主主義的統制をいう。すなわち、主権者である国民が、選挙により選出された国民の代表を通じ、軍事に対して、最終的判断・決定権を持つ、という国家安全保障政策における民主主義の基本原則である」
文民統制 - Wikipedia

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上の写真(ウィキ)は、米海軍司令官交代式で、文民の海軍長官に敬礼して迎える新旧海軍大将です。

このように海軍長官は米海軍と海兵隊を指揮下に置きます。そし海軍省は国防長官の下にあり、国防長官は大統領の指揮下にあります。

この考え方の裏には、歴史的にシビリアン(文民)が軍を抑えなければ、軍は暴走してしまう、という強い危惧があったのは事実です。 

逆にいえば、シビリアン・コントロールさえしっかりていれば、軍が自ら戦争をすることはない、だから戦争は起きない、ということになります。 

日本においては、戦前の関東軍の暴走によって戦争に突入してしまったという苦い記憶が強く働いていました。 

これが、戦後生まれの自衛隊を「軍」と認めない「平和憲法」を生み出し、国際的にはありえない極度に強い統制を常態化してしまいました。 

事実は、戦後の自衛隊は、対外膨張を図るどころか、文民政府が国際社会でいい顔をするためだけに派遣するPKOにおいても、制服組は強い懸念を抱いてきました。 

民主党政権下に決められた南スーダンPKOなど、送り出すシビリアンの作った「PKO5原則」は、まったく現地状況にそぐわず、隊員を危険な状況にさらしました。 

それが今になって、日報があるだのないだの、そこに「戦闘」と書いてあるからどうのと、シビリアンの無責任をさらけ出しただけです。 

海外においても、軍がシビリアンの統制からはずれて、戦争に引きずり込むという事例はありそうでいて、意外と少ないのです。 

たとえば、よく軍が戦争を起こした事例で取り上げられることの多いフランスのアルジェリア戦争は、現地派遣軍の独立への怒りが原因があったとされています。 

しかし戦争を決断したのは、あくまでも選挙で選ばれた文民政府でした。

むしろこのように強い戦争への意志を軍が持つことのほうが、極めて例外的なのです。 

フォークランド紛争においても、英軍がアルゼンチンの軍艦を撃沈したことが原因のように言う説もありますが、強く開戦を主張したのはシビリアンのサッチャーでした。 

むしろ英国軍は、大西洋を横断するような遠距離戦力投射に対して消極的だったのです。 

ベトナム戦争の泥沼を開始したのは、米国民主党政権のケネディでした。 

また米国が戦後二度目の戦争の泥沼にはまったきっかけとなった2003年のイラク戦争は、強く反対する米軍中枢を「世論」の声を押し被せるようにして戦端を開いたものでした。 

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2006年のイスラエルによる第二次レバノン戦争でも、戦争を求める文民政府に対して、強く反対したのは国防軍や現地司令官たちだったのです。 

地上侵攻を命じる文民の首相と国防相の背中を押したのは、ここでも「世論」でした。 

当時のイスラエルのメディアは、国民に戦争を煽り、国民の大多数は戦争を求めていたのです。

今のホワイトハウスで、トランプに歯止めをかけているのが、海兵隊大将で歴戦の猛者であったマティスであるのもあながら偶然ではありません。

このように見てくると、戦争は必ずしも軍によって引き起こされるものではないということです。 

むしろ戦後に起きた多くの戦争の事例を見ると、逆だと分かります。

その多くは、敵への懲罰を望むメディアが「世論」を煽動した結果、選挙で選ばれる文民政府も戦争を叫ばざるをえなくなり、結局は渋る軍を戦争に向かわせたのです。

ですから、日本特有の「好戦的な軍」vs「平和を望む文民政府」という二項対立はほとんど意味をなさないのです。 

では、ひるがえって今回のことを簡単に考えてみます。 

小西議員はいままで、散々自衛隊に対して侮辱的な言辞を履いてきたことで有名です。

Photo小西洋之参議院議員

幹部自衛官に暴言を吐かれた、これはシビリアンコントロールに対する暴挙だと叫び立てた小西議員は、2015年9月30日のツイッターでこのようなことを言っています。

「自衛隊員は他国の子供を殺傷する恐怖の使徒になるのである」

批判を受けて小西氏は、翌10月1日にはツイートを削除して新たに書き込んだのがこれです。

「安倍総理の安保法制により、自衛隊の集団的自衛権行使を受ける国の子供達は自衛隊員を『恐怖の使徒』と思うだろう。違憲立法から自衛隊員を救わなければならない」

論評にも値しない暴言です。自衛隊を「子供を殺す恐怖の使徒」と呼ぶなど、常識では考えられません。

これについて小西氏は説明も謝罪もしておらず、言い放しのようですが、国会議員とは何を言っても許される高貴なお仕事のようです。

このような、何かことか起きれば、悪いのは必ず自衛隊のほうだとする風潮があるなら、このような事件はまた別の形で起きてしまうことでしょう。

 

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日本は拉致問題を「蒸し返した」のか?

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たぶんこれから米朝会談の開かれる6月12日まで、毎日のようにメディアから玉石混淆の情報が垂れ流されると思います。

心しておかねばならないのは、その大半が意図的に流された情報操作だということです。
 

たとえば、つい最近も拉致問題がらみで、ふたつばかり北から情報が流されてきました。 

ひとつはこんなものでした。

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「北朝鮮の朝鮮中央通信は12日、日本人拉致問題に関する論評を報じ、安倍晋三政権が「すでに解決した拉致問題を再び持ち出し騒いでいる」と牽制し、「全世界が朝米首脳会談を歓迎しているときに、朝鮮半島の平和の流れを阻もうとする稚拙で愚かな醜態だ」と非難した」(産経5月12日)

要は、北は非核化交渉に拉致という人権問題は一番痛い腹だから、持ちだすんじゃねぇと言いたいようです。 

というのは、北はわが国だけではなく世界各国から拉致しまくっていますから、世界がこの問題に注目することを極度に恐れているのです。 

だから、日本だけのことにしたい、ましてやこれをリビア方式とやらで、国内の人権問題にまで拡大されたらたまったもんじゃないぜ、これが北のご意見のようです。

「朝鮮半島情勢を巡る対話の流れを受け、安倍晋三首相も拉致・核・ミサイル問題を包括的に解決し、過去を清算して日朝国交正常化を目指す方針を掲げているが、論評は拉致問題は既に解決済みとする従来の立場を繰り返し日本をけん制した」
(共同5月12日)

https://this.kiji.is/367967055959934049 

拉致問題は、先代が「解決済み」なはずだ、それを蒸し返しやがってというのが、北の公式見解です。 

おやおや、日本は終わっているはずの拉致問題を使って「平和を阻む」勢力にされてしまいましたね(苦笑)。 

そして北はこんなことも言っています。

「4月27日の南北首脳会談で、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長に日本人の拉致問題を提起した際、金委員長が「なぜ、日本は直接言ってこないのか」と語っていたことが、FNNの取材で明らかになった。
政府関係者によると、南北会談で文大統領から、日本が拉致問題の解決を求めていることを伝えると、金委員長は「韓国やアメリカなど、周りばかりが言ってきているが、なぜ日本は、直接言ってこないのか」と語ったという。
拉致問題に関する金委員長の発言が明らかになるのは、これが初めて。
この発言は韓国側から伝えられたもので、政府は、金委員長の発言の真意を慎重に見極めることにしている」(FNN5月10日)

https://www.fnn.jp/posts/00391688CX  

韓国政府からの伝聞は、眉がピチャピチャになるくらいご用心くださいと前に書きましたが、この情報も「ムンが聞いた」というていどの話です。裏をとりようもありません。 

そもそも日本は、拉致問題が「解決済み」などということに、一度たりとも合意したことはありません。 

そして日本政府が「真意を見極める」もなにも、わが国は2014年5月に拉致被害者の調査継続することで合意した「ストックホルム合意」を結んでいます。 

そんなことも知らない野党は、鬼の首でも取ったように、こんなことを言いだす始末です。

「「日本は直接言ってこない」 もし真実なら、我が国政府は何をしてるんだということになる。そもそも、今、日朝間に、拉致問題解決に向けた交渉ルートは存在しているのか。今後の国会審議の中で確認のうえ、問題提起していきたい」
(玉木雄一郎国民民主党共同代表5月10日ツイッター)

この人、モリカケの時にも思いましたが、典型的な高学歴低知能じゃないでしょうか。仮に「交渉ルート」があったとしても、それは非公式な水面下での接触です。 

それを国会で追及されて、政府が「はい、これが非公式ルートです」なんて言うはずがありません。 

たぶんまともに拉致問題を考えたことすらないと思いますから、玉木さん、ストックホルム合意以降の流れなんて知りませんよね。

Photoストックホルム会談http://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/na/kp/page1w_00008...

いい機会ですから、5名を奪還した後の拉致問題の進展について簡単におさらいしておきましょう。 

2002年9月、北は小泉-金正日会談において5名の拉致被害者を解放させる一方、残りの被害者をいいかげんな「死因」で闇に葬ろうとしました。 

Prm1603010003p2産経2016年3月1日https://www.sankei.com/premium/news/160301/prm1603010003-n1.html 

この証拠として渡された横田めぐみさんの「遺骨」と称するするものが、科捜研の調査の結果まったく別人のものだと分かるなど不誠実を極めました。 

これに対する国民の怒りを背景にして、日本政府が継続調査の実施と、拉致被害者全員の帰還を要求して行われたのがストックホルム会談です。 

正恩が「蒸し返し」というのは、2回目の日朝会談で5名返したことで終わっているという意味です。

ならばどうして2014年の時点で、日朝共に「蒸し返し」に合意しているのでしょうか。

「解決済み」ならば、応じる必要はなかったはずです。

しかもこのストックホルム合意を結んだ両国首脳がかなり前の政権だったらいざ知らず、共に現政権の安倍氏と正恩との間での合意です。 

このストックホルム合意の成立プロセスについては、西野純也慶応大学教授の詳細な研究が存在します。
第9章 日朝協議の再開、合意、そして停滞 拉致問題再調査をめぐる日本の ... 

また概要については、外務省のHPに載っていますので参照ください。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000040352.pdf 

そして北と日本はこのような合意を結んでいます。

「1945年前後に北朝鮮域内で死亡した日本人の遺骨及び墓地 の遺骨、残留日本人、日本人配偶者 、拉致被害者 拉致被害者及び行方不 明者を含む 全ての日本人に 関する調査」で合意した」(前掲外務省) 

しかしご承知のように、この帰還への淡い期待は大きく裏切られることになります。

「日朝双方が相手への不信感を高めていたにもかかわらず、日朝政府間では水面下の接触が続いたようである。報道によれば、日朝両国は2015 年に入ってからも複数回にわたり非公式協議を行っていた。
日本側は、非公式協議のなかで、拉致問題に関する再調査の報告を繰り返し求めたという。
つまり、「圧力」論の高まりの中でも、日本政府が「対話」を維持する姿勢には変化がなかったことになる」
(前掲西野論文第9章4「制裁論の高まりと合意履行の停滞」)

ストックホルム合意移行も、なしのつぶての北に対して日本政府は翌年15年からいくどとなく第三国における非公式会談の場で、調査報告を求めてきています。 

「そして2014 年10 月末の平壌への日本政府団派遣以来、日朝間では公式の政府間協議は開かれていない。再調査委員会の立ち上げから1 年が経過した7 月2 日には、北朝鮮側は、「全ての日本人に関する包括的調査を誠実に行ってきたが今しばらく時間がかかる」旨の連絡を日本側にしてきた」
(前掲西野論文)
 

つまり日本はストックホルム合意を遵守して、国連制裁を除く拉致問題に対しての独自制裁を段階的に緩めてきました。 

それに対しての北の答えが、2015年7月の「今しばらく再調査には時間がかかる」というトボケたものだったわけです。 

実はこの「回答」の前に、北は3月に弾道ミサイル実験を日本海に向けて行っていますが、日本側はそれを非難しながらも北との協議自体は地道に継続しています。 

そしてむしろ、「日本側が望む拉致問題の再調査を含む報告を北朝鮮側から受け取るため、水面下で日朝協議を繰り返し行っていた」(西野前掲)のでした。 

以後、日本政府はあきらめることなく、あらゆる場とチャンネルを使ってストックホルム宣言の遵守による拉致被害者の再調査の報告と解放を働きかけています。

もちろん交渉主体だった外務省の力不足など(主体は警察庁にすべきでしたが)、こちら側の問題点はあったのは事実ですが、それは北が「解決済み」という理由とは別次元のことです。

ですから拉致問題は日本が非核化交渉に便乗して、「蒸し返し」ているわけではなく、西野氏が指摘するようにストックホルム合意以降、北の誠意を信じて制裁を段階的に解除しているのです。

よく野党・メディアが安易に言うような、「圧力一辺倒」といった単純な軌跡を描いたたわけではないのです。

二国間関係の流れにおいては、日本と北はストックホルム合意に則って再調査を合意し、北の回答引き延ばしにも応じて、働きかけを継続しながらその報告を「待っている状態」なのです。

ただし、拉致被害者家族会は、また偽装された「証拠」を渡されて調査終了とされることを警戒して、「北朝鮮による報告は再び嘘だらけの恐れがある。

だからこそ、家族は再調査から1年を迎える7月を前に、報告書ではなく、被害者の帰国だけを求め」る方針に切り替わっています。

そしてこの3年間のあいだに、日本の制裁緩和を見定めたように、北は核武装を大いに進めてしまいました。去年などは一体どれだけの弾道ミサイルを発射し、核実験を続けたのでしょうか。

このような暴挙によって、あたかも非核化と拉致問題がひとつのテーマのようになってしまいました。

別に日本が絡めたのではなく、北が勝手に自分の都合で絡めてしまったのです。

北は日本が再び北の核に対して制裁を強めたことによって、ストックホルム合意は廃棄されたと公言しているようですが、手前勝手なことよ。

北が言うようにほんとうに「解決済み」なら、なぜストックホルム合意で再調査委員会を立ち上げることに合意したのか、そこから考えてみることです。

そしていったんは約束どおり制裁緩和した日本が、なぜ再び制裁強化せざるを得なくなったのか、その理由に思いを致してみることてす。

北が隠そうとするのは、拉致被害者は多数生存しているからにほかなりません。

それを北の言い分をそのまま受け取って、非核化と絡めるなとか、直接に言ってこない日本政府がおかしい、などというのは、北の言い分そのものです。

丸飲みしてはいけません。

 

 

 

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