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2025年3月18日 (火)

なぜヨーロッパはロシアと戦えなかったのか?

036

英国のフィナンシャルタイムズが、トランプは欧州を団結させた偉人であるというブラックな論説を掲載しています。
ドナルド・トランプは欧州を再び偉大にしている、進展なかった結束強化に弾み――ギデオン・ラックマン(1/3) | JBpress (ジェイビープレス)

さすがブラックジョーク好きな英国人らしく言い方がふるっています。
「ドナルド・トランプは絶対にノーベル平和賞を受賞しないが、欧州の結束に最大の貢献をした人に毎年授与されるカール大帝賞(シャルルマーニュ賞)の有力候補になるだろう」という書き出しです。

実にトランプはいいことをしてくれた、バラバラでまとまりのない仲良し学級委員会にすぎなかったヨーロッパをなんとひとつにまとめ上げてくれたのだぁ、すんばらしい偉業だ、ブラボーということのようです。
あながち冗談ではなく、ほんとうにシャルルマーニュ賞(カール大帝賞)というのは実在します。
賞の目的はヨーロッパの団結の促進です。
カール大帝 - Wikipedia

「われわれは、西欧の理解と地域の同一性に寄与し、また人類と世界平和において最も価値のある功績に対して国際的な賞を贈ることにさせていただきます。その功績とは、文学、科学、経済、政治における業績を対象とします」
カール大帝賞 - Wikipedia

ちゃんと政治も一項入っていますから、トランプの頭上にさん然と輝くのもあながちなしとも思えません。
ただし、もちろん逆説であって、ほんとうはゴールデンラズベリー賞主演男優賞でしょうがね。

とまれ、この間一昔前を知る者にとって驚くほど「ヨーロッパの団結」が進みました。
もちろんその理由は、ウクライナ戦争とその和平を巡ってのトランプがロシアに急接近し、ヨーロッパを切り捨て、EUには関税で牙を剥き、さらには内政にまで手を突っ込んで親ロシア極右勢力を後押ししたことに起因します。
これはヨーロッパ各国をまんべんなく恐怖に陥れました。
ゼレンスキーがホワイトハウスから追い出された件の事件の時など、ハンガリーを除くほぼすべての国が強い抗議声明を出したほどです。
シュナイダー、メルケルと2代に渡って親ロシアの筆頭だったドイツの次期首相のメルツはこう述べています。

「ドイツのフリードリッヒ・メルツ次期首相は「親愛なるウォロディミル・ゼレンスキー、私たちは良い時も厳しい時も、ウクライナを支えている。この恐ろしい戦争において我々は決して、侵略者と被害者を混同してはならない」と書いた」
(BBC3月2日)
欧州など各国首脳、次々とゼレンスキー氏を支持 トランプ氏との衝突後(BBC News) - Yahoo!ニュース

では、頂戴したコメントにもありましたが、なぜヨーロッパは真正面からロシアと戦えないのでしょうか。
ウクライナ侵略の直後、エドワード・ルトワックはこう書いたことがあります。

「G7の一員である米英独などを主体とする北大西洋条約機構(NATO)も、ドイツなどが国防への投資を怠ってきたことから弱体化が指摘されてきた。ロシアは、そうした現状を見越して侵攻に踏み切ったわけだが、その瞬間からNATOは逆に極めて強力な組織に変貌を遂げた。
ショルツ独首相は国防費を国内総生産(GDP)比2%以上に引き上げると表明したほか、加盟国のポーランドやデンマークなどが今月に入って国防費の大幅増額を決めた。NATOは目を覚ましたのだ」
(ルトワック『ウクライナが呼んだNATOの覚醒』2022年3月18日)
【世界を解く-E・ルトワック】ウクライナが呼んだG7の「覚醒」 - 産経ニュース (sankei.com)

プーチンがウクライナ侵攻に踏みきったのは、NATOを甘くみていたからです。
では、なぜ甘く見られていたのでしょうか。
NATOは軍事同盟でありながら、各国が勝手なことを言ってまとまらず、しかもカネがなかったのです。
軍事力を強くするためには新たな兵器の増産と導入、それを扱う兵員の増強と部隊編成、そして技術革新が必要です。
そのためになにがいるでしょうか。それを支える積極財政です。

しかしNATO、つまりはEUには軍備にかけるだけのカネがありませんでした。
EUは人類の夢という甘い黄金の檻に閉じ込められて、財政拡大でテコ入れしようにも欧州財政収斂基準(マーストリヒト基準 )で緊縮財政を強いられ、大規模な財政出動をしようにもその権限は当該国財務省にはなくECB(欧州中央銀行)がガッチリ握っていました。
つまりはトランプがいきなり国防費を3%にしろ、とガナっても欧州財政収斂基準の強い縛りのためにできなかったのです。

しかし容易に分かるように、それでは思わざる緊急時に対応できません。
それが痛いほどわかったのが新型コロナでした。

「EUの財政ルールには、各加盟国の統制の及ばない異常事態が発生した場合には、適用を一時停止する条項(一般免責条項)が設けられている。2020年3月に欧州委員会は、新型コロナウイルス感染症の拡大を「異常事態」とみなし、財政ルールの適用の一時停止を提案し、欧州理事会はこれを承認した。
そのため、各国は財政ルールに囚われず、大型の財政出動を実施することが可能となった。財政ルールの再開時期については当初は定められていなかったが、2024年から再び適用されることとなった」
EUにおける財政(規律)ルール見直しと日本への示唆 | 研究プログラム | 東京財団政策研究所

そして新型コロナが収束した直後に起きたロシアのウクライナ侵略でした。
これでわかったことは、感染症や戦争は国境をたやすく超越し、ヨーロッパは無力だということでした。
いままで国境を越えるパンデミックなどスペイン風邪くらいのもんさ、もう過去の話さ、ロシアの侵略だって、そんなもん冷戦期の発想だよ、今は経済が相互に乗り合っているんだ、ロシアが天然ガスのお得意さんを侵略しっこないいぜ、という考えがヨーロッパの常識でした。

そして口にこそしませんが、軍事などという汚れ仕事は米国に任せておけばいいという貴族趣味もあったのです。
それを体現したのが、緊縮財政の筆頭のメルケルでした。
16年も続いたメルケルによって、かつて強豪を自他ともに認めたドイツ連邦軍はボロボロになっていきます。

陸軍は動く戦車は一握り、海軍はまともな艦船がないという体たらくの時期すらあったようです。

「ドイツ国防軍の装備はとてもお粗末で、すでに10年以上も前から問題になっていた。有事となれば、戦闘機は飛ばない、駆逐艦は出ない、戦車は走らない、弾丸はないという状態になるだろうと言われつつ、しかし、いっこうに改善されないまま今日まで来ている。飛ばないヘリコプターが多すぎて、演習の時にADAC(日本のJAFに相当する民間の自動車連盟)から借りたという不名誉な話もあるほどだ」
(川口マーン恵美2022年11月27日 )
「防衛費増額」の是非を議論している場合ではない…平和ボケで国防軍がボロボロになったドイツの教訓 専門知識が失われて、軍備増強の計画を立てられない | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

こんな状況だから砲弾やミサイルの備蓄が足りず、ウクライナに支援したくともできなかったのです。
このヨーロッパ流平和ボケがまったく誤りだったことはこのパンデミックとウクライナ戦争で証明されてしまいます。
いま、ヨーロッパはやっと目が覚めました。

「これまで何十年も滞っていた欧州の結束強化へ向けた抜本的な対策が今、進み始めている。
注目しておくべき重要な分野が3つある。1つ目は欧州の防衛、2つ目は欧州共同債、そして3つ目は英国とEUの不和の修復だ」
ドナルド・トランプは欧州を再び偉大にしている、進展なかった結束強化に弾み――ギデオン・ラックマン(1/3) | JBpress (ジェイビープレス) 

「ブルームバーグ・エコノミクス(BE)は、ウクライナの防衛と欧州主要国の国防強化には今後10年間で3兆1000億ドル(約470兆円)の追加費用がかかり得ると推計する。北大西洋条約機構(NATO)の計画立案当局は、防衛費を国内総生産(GDP)の最大3.7%に加盟国は引き上げる必要があると試算したと、ブルームバーグは先に報じた。NATOに加盟する32カ国のうち、GDP比2%の防衛支出目標を昨年時点で達成しているのは23カ国だけだった。
資金調達について協議されている選択肢には、EUの財政規則に抵触せず調達額を引き上げることが可能な免責条項も含まれる。欧州委員会のフォンデアライエン委員長は先週のミュンヘン安全保障会議で、このような防衛投資のためのメカニズム発動を提案した」
(ブルームバーク2月18日)
欧州首脳が防衛強化策で協議、共同債議論されずー米仏首脳が電話会談 - Bloomberg

欧州の世論は軒並み8割近くがトランプに不信感を露にし、米国はいまや信頼出来るパートナーから「脅威」とさえ見られるようになりました。
それはヨーロッパ各国政府も同様で、外交上の配慮から口にしないだけです。

「外交上の理由から口に出して言う人はほとんどいないものの、欧州諸国の多くの指導者はトランプの米国が今では脅威になったと考えている。 欧州首脳は、80年目に入った大西洋同盟のために、欧州が米国の軍事支援に大きく依存するようになったことも痛感している。
これはお金だけの問題ではない。本当に危険なのは米国の技術と兵器に対する依存だ。
欧州の人々はトランプ政権が機密情報と兵器の供与を停止した後、ウクライナ人がどれほど大きな問題に陥ったか、よく分かっている」
(フィナンシャルタイムス前掲)

軍事力を強化せねばならない、というのはとりたててトランプに言われなくてもわかりきった話です。
また米国の軍事力、たとえば駐欧米軍の存在や米国の兵器体系に依存していたことを抜本的に改善せねばならないことも分かっていました。
ただEUのマーストリヒト条約基準で国のサイフが締まってしまってカネがなかったのです。
これをなんとかしないと1ユーロも出ないでしょう。

ヨーロッパがウクライナ支援の必要性をいやというほど分かっていても、米国ほどの支援が出来なかったのは、ひとえに軍事費が不足しており、備蓄している兵器も少なかったからです。
それは支援の額でわかります。

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【そもそも解説】ウクライナ支援の現状 武器のレベルは徐々にアップ:朝日新聞

EUは非軍事的財政支援に多く回り、軍事支援はわずかであることがわかります。
ドイツはレオパルトⅡ戦車を送っていますが、それが遅れに遅れたのはなんのことはない自国軍の備蓄も少なかったから支援できなかったのです。
戦車はただの輸出品、じぶんの国では使わない、これがメルケル流でした。

「EU共通債へのタブーは伝統的に、倹約的なドイツで強かった。
新型コロナウイルスのパンデミック中に、このタブーが部分的に破られた。それがこれから完全に一掃される公算が大きい。
ドイツの次の首相になるフリードリヒ・メルツは、防衛とインフラ関連の歳出をドイツの基本法(憲法に相当)で定められた赤字支出の上限から除外する方向へ進もうとしている。
ドイツが過去に財政規律を重んじてきたことは、多額の債務を抱えたフランスや英国よりも借り入れの余地がはるかに大きいことを意味する」
(フィナンシャルタイムス前掲)

軍事費を赤字の上限の範疇から除外するというのは、日本の財務省にも聞かせてやりたい措置です。
恒久的インフラ整備や軍事費拡大を言うと、直ちに自民党税制部会の宮沢や財務省はすぐに財源はと水をかけるのですが、今後の世代の安全に寄与するインフラには積極的に国債を当てればよいだけのことです。

ヨーロッパの場合EUという枠組みがありますから、欧州共同債となります。

「これがEUの防衛産業に投資するために1500億ユーロ調達することを欧州委員会に認めた首脳陣の決断のロジックだった。
新規支出は恐らく防空システムなど、欧州諸国が特に大きく米国に依存している分野に集中的に投じられるだろう。
EUの共通債発行はただ単に防衛のために資金を調達する手段ではない。米ドルに代わる世界の準備通貨としてユーロを強化する機会も与えてくれる。
トランプ政権の移り気は、安全資産として米国債に代わるものを求める世界的な意欲が大きいことを意味するからだ」
(フィナンシャルタイムス前掲)

このようにヨーロッパは従来の米国依存から目覚め、独自の勢力としての力を再構築しようとしています。
日本も他人ごとではありませんよ。

 

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 Neonila Martyniuk(@catskillowl2021)

2025年3月17日 (月)

ロシアはどうなる?

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トランプは、プーチンがお前オレの仲で、すぐにでも和平会談が開かれるとでも思っていたようです。
そうとうに馬鹿だと思います。もう少しで勝てると考えているプーチンと、いまさらナニを話そうとだからなんだというのです。

時間稼ぎに使われるれるだけのことです。

ゼレンスキーさえ這いつくばらせればオーケー、小うるさい癖に無力なヨーロッパをオフリミットにすれば段取り終了、あとはポン友と密室談合だけ、そう思って起こしたのがあのホワイトハウス事件でした。
そして続くサウジの会議で、トランプはゼレンスキーに事実上の領土放棄を認めさせました。スゴイね。
西側同盟の盟主が、被侵略国の小国をつかまえてお前領土くれてやれよ、それで収まるんだからさ、というのですから。

まさに苦汁の選択そのもので、これでウクライナの勝利という道は閉ざされ、残るのはよくて引き分け、最悪は敗北ということになります。

「サウジアラビアで11日に行われた米国との会合で「ロシアとの30日間の停戦」という米提案にウクライナが同意したことは、同国が事実上、露軍の占領下にある領土の武力奪還を断念する用意があるとの立場を示したことを意味する。侵略された側のウクライナにとって苦渋の決断となるが、戦場で劣勢にある上に国力も疲弊している同国は、譲歩に応じてでも米国の支持を取り付け、将来的な対露交渉で可能な限り「引き分け」に近い条件での停戦を実現したい思惑だとみられる」
(産経3月12日)
【動画】ウクライナ、領土奪還方針を事実上放棄 「引き分け」狙い苦渋の決断 サウジでの対米協議 - 産経ニュース

そりゃ心ならずも屈するよ、誰でもね。トランプはただ支援を止めるといっただけではなく「即刻、何もかも止める」と言ったのです。
ほとんど数日をおかずして支援は止まり、軍事機密情報もまた停止しました。
ロシア軍の位置や勢力がつかめなくなったために、クルスクに侵攻している精鋭部隊はロシア軍に包囲されたのです。(戦争研究所は包囲されたことを認めていません)
こういう行為を世の中では、恥知らずの裏切り、あるいは利敵行為と呼びます。

トランプという男には、国境を接してロシアと対峙しているウクライナの戦略的意味が理解できないのです。
たぶんウクライナの価値は鉱物資源ていどだ、小麦はうちの国のライバルだしな、人口も3000万人ぽっち、テキサス州と同じくらいなチッポケな国だし、メンドー起こすならいっそなくなってもいいような国だ、ウクライナ戦争なんてただの局地戦でロシアとガチでなぐりあったら大戦になるぜ、ていどの認識なのでしょう。
まるで田舎のおっさんていどの認識です。

前ウクライナ外務大臣のドミトロ・クレバ氏(現パリ政治学院教授)はこう言っています。

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NHK

「戦争を終わらせるのがなぜこれほど難しいのか。それはプーチン大統領が勝利に向けて順調に勝ち進んでいると確信しているからです。
プーチン氏はウクライナ全体を手に入れることができると信じているのです。彼がウクライナの一部を獲得することで満足できるわけがありません」
(NHK3月14日)
「トランプ氏は騎兵隊?」ロシア プーチン氏との停戦協議は?ウクライナ侵攻どうなる?クレバ前外相に聞く | NHK | WEB特集 | 国際特集

クレバ前外相が指摘しているように、プーチンが狙っているのは「ウクライナ領の一部獲得」ではありません。
それはなぜ侵攻したのが、フィンラントやエストニアではなくウクライナであったのかを考えればわかってきます。

西村金一元自衛隊情報本部一佐が解説するように、ウクライナの価値は鉱物資源になどにあるのではなくその地勢的位置にあります。
ウクライナこそ、ヨーロッパの「要石」(キイストーン)なのです。
下図をご覧いただくと、ウクライナがロシアに対して最初のファイアウォールになっていることが理解できるでしょう。

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西村金一氏作成
JBpress (ジェイビープレス)

西村氏はこう述べています。

「今後、ウクライナが米国とロシアとの交渉などによって、弱体化された場合には、再びロシアの侵攻を受ける可能性がある。
そうなれば、ロシアの脅威は、ウクライナに隣接し南西方向にあるモルドバやルーマニア、北西方向のポーランドに及ぶことになる。
また、ロシアに直接接するバルト3国であるエストニア、ラトビアおよびリトアニアにも脅威は及ぶ。
さらには、ロシアと陸続きのフィンランドをはじめ、ノルウェー、スウェーデンのスカンジナビア3国に波及することになるだろう。
ウクライナの戦略的価値は、欧州各国へのロシアの脅威を止めることができる「要石(KeyStone)」なのである」
(西村金一3月10日)
ウクライナを蔑むトランプとその子分は、安全保障を全く分かっていない 現代戦では、大西洋・太平洋は米国を守ってくれる障壁ではなくなった(1/5) | JBpress (ジェイビープレス)

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西村金一氏作成
JBpress (ジェイビープレス)

そしてウクライナという防波堤が崩壊すれば、その危機は西欧全体にも及びます。
米国の支援を受けられない場合、西欧は孤立し、全域が不安定にさらされます。
この状況はすでに始まっていて、西欧を代表するフィナンシャルタイムスなど、「米国はすでにヨーロッパの脅威だ」という言い方をし始めています。

「欧州の世論に見られる劇的な変化だ。
先週実施された世論調査は、英国人の78%がトランプを欧州に対する脅威と見なしていることを示していた。ドイツ人の約74%、フランス人の69%もこれに同意している。
ドイツで実施された別の世論調査では、フランスがドイツ人の85%から「信頼できるパートナー」と評価され、英国も78%の高得点を獲得したのに対し、米国は16%にとどまった。
外交上の理由から口に出して言う人はほとんどいないものの、欧州諸国の多くの指導者はトランプの米国が今では脅威になったと考えている(略)
トランプは米国大統領としてロシアに接近し、北大西洋条約機構(NATO)への信頼を損ない、欧州連合(EU)を関税で脅し、欧州で極右勢力を後押しした。
これらすべてがEUにショックを与える効果を発揮した。
これまで何十年も滞っていた欧州の結束強化へ向けた抜本的な対策が今、進み始めている」
ドナルド・トランプは欧州を再び偉大にしている、進展なかった結束強化に弾み――ギデオン・ラックマン(1/3) | JBpress (ジェイビープレス

しかしヨーロッパが団結して米国を友邦ではなくはっきりと脅威と位置づけたとしても、屁ともおもわないのがトランプです。
だって大西洋があるじゃん、グレートアメリカはどこからも侵略されない「安全無比な国」だぜ、というのがトランプの思惑です。

「米国が何によって、誰によって守られているのかについて認識がなく、米国は他国の協力を得なくても「どの国からも侵攻を受けることのない安全な国」という誤った認識が根底にあるからであろう。
米国とロシア間の交渉の行方によっては、米国と欧州がお互いに不信感を抱き、分断が現実になるかもしれない。
そして、米国がNATO(北大西洋条約機構)から脱退して米軍が欧州から去れば、欧州の軍事力は著しく低下することは明らかだ。
私は、「ウクライナが弱体化し米軍が欧州から去れば、いずれ世界のパワーバランスが崩れ、ロシアと中国の脅威が米国を囲む大西洋・太平洋に及ぶことを、米国は予測していない」のではないかと危惧している」
(西村前掲)

いとも簡単にトランプは西側同盟の守護者という立場を捨て去り、むしろ全体主義国家と手を組みました。
ならば、気楽なもんです。
どうなろうとかまわない、自分の政治的手柄としてはウクライナ和平を考えてもいいが、それ以上ではないというところです。

実はこの部分は妙にバイデンと平仄が合っています。
前出のクレバ前外相はバイデンの対ウクライナ政策についても、「答えにくい質問だが」と断ってこう言っています。

「バイデン氏はウクライナにとても強い思いを持っていたし、きずなもありました。しかし、バイデン氏は冷戦時代にその地位を確立した政治家です。
その政策の根底にあったのは『ウクライナを支援する。ただしロシアとの直接対決は避ける』というものでした。これをロシアに巧みに利用されました。
バイデン氏は(武器の供与など)多くの決定を下しましたが、すべての決定に時間がかかりすぎ、ロシアが戦闘で優位に立つことを可能にしてしまいました。
バイデン氏には冷戦時代の米ロの対立の記憶が強く残っているのです」
(NHK前掲)

決定に時間がかかりすぎ、常に及び腰、これがバイデンの政策でした。
トランプはこの米国の「及び腰」を修正するどころか、決然としてロシア勝利に導こうとしました。

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トランプ氏、ウクライナでの「ばかげた戦争」の停止をプーチン氏に求める 応じなければ新たな制裁科すと警告 - BBCニュース

ところで、ゼレンスキーがトランプに殴り倒されたことを見ていたプーチンは、この事態にどう見たでしょうか。
さっそく和平会談に乗り出した、いえいえ喧嘩を売るだけが能のトランプとは違って「待ち」を知っているのがプーチンです。
深遠な「待ち」ではなく、文字通り交渉相手を待たせるのです。
いままでも正恩をポツンと夜の駅頭に待たせたことがありましたし、バチカン法王すら待たせたり、わが安倍氏など数時間待たせて後のスケジュールを台無しにしました。
こういう男です。巌流島の武蔵よろしく遅刻することでマウントをとろうというのですから、なんとも卑しい。

今回は、和平提案を持って来た米国の特使がたっぷり8時間待たされました。
フツーこれだけ待たされたら、ふざけるなと捨て台詞を吐いて帰っていいのです。
というか、むしろ決然として帰るべきです。
しかしプーチンは自分が圧倒的有利な立場にいると思い込んでいますから、なんなら1日でも待たせようか、という気分なんでしょう。

「英スカイニュースは14日、ロシアの首都モスクワを13日に訪問した米国のスティーブン・ウィトコフ中東担当特使が、プーチン大統領との会談のため少なくとも8時間は待たされたと報じた。プーチン氏は首脳会談などでも遅刻が多く、スカイニュースは主導権を誇示するための「古典的な威圧の手法だ」と伝えた」
(読売3月15日)
「遅刻魔」プーチン氏、アメリカの特使を8時間待ちぼうけに…「古典的な威圧手法」の指摘も(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース 

こういうことを平気でして見せるのがザ・プーチンです。
プーチンは少なくともクルスクのウクライナ軍を完全殲滅するまで和平会議には乗りません。
そして乗っても「非ナチ化」がどうしたの、占領地は神聖なロシア領だのと盗人猛々しいことを言い続けて、なにひとつ決まらないはずです。
さて、盟友にこう出られてトランプはどうする気でしょうね。
追加関税なんてまったく意味をなしませんよ。今週には電話でサシの話あいをするとか。
 

2025年3月16日 (日)

日曜写真館 夢死するもよし 梅林のこの日溜り

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梅林の遥かに見ゆる水田哉 政岡子規 

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再会の老けはともども 梅林 伊丹三樹彦

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梅林を額明るく過ぎゆけり 桂信子

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梅林を出て懐に梅のつぼみ哉 曉台

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梅林の空の機嫌をうかがへる 上田五千石

 

この写真を無理な姿勢で撮ってこけました(涙)。

 

 

2025年3月15日 (土)

逃がさぬゾとミズーリ州連邦裁判所

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新型コロナについて面白いことが同時に起きました。
まずひとつが2020年にドイツの対外情報機関である独連邦情報局(BND)が報告書の中で、武漢ウィルスラボを名指しで新型コロナウィルスの流出源だと特定していたことです。
実は似たような報告は米国情報機関も上げていましたが、改めて他国のインテリジェンスの線からも流出源が特定されたことが重要です。

「ドイツの有力紙ツァイトと南ドイツ新聞は12日、ドイツの対外情報機関が2020年、新型コロナウイルスが中国・武漢のウイルス研究所から流出した可能性が高いとの極秘報告書をまとめ、独首相府に提出していたと報じた。
報道によると、独連邦情報局(BND)は、19、20年に執筆された新型コロナウイルスに関する未発表論文などを入手して分析。報告書では、武漢のウイルス研究所が、人間に感染しやすいようウイルスを改変する実験を行っていたと指摘した。ウイルスの扱いはずさんで、多くの安全規則違反があったとし、ウイルスが研究所から外部に流出した可能性が「80~95%」で非常に高いと結論付けた
ウイルスの発生源を巡っては、研究所から流出した説と、動物を介して人間に感染したとする説とで論争が続き、23年6月公表の米政府の報告書でも原因特定には至らなかった。BNDの報告書は米中央情報局(CIA)にも共有されたといい、今後、論争に影響を与える可能性もある」
(読売3月13日)
新型コロナウイルス、中国・武漢の研究所から流出可能性「80~95%」…ドイツ情報機関が極秘報告書 : 読売新聞 

2023年には、米国エネルギー省が新型コロナウィルスの発生源を武漢ウィルスラボと結論づけたと、ウォルーストリートジャーナルが報じていました。

「【ワシントン】米エネルギー省は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の起源について、研究所からウイルスが流出した可能性が最も高いと結論付けた。ホワイトハウスや米議会の主要議員に最近提出された報告書から明らかになった。
 同省はウイルスが広まった経緯についてこれまで判断を下していなかったが、アブリル・ヘインズ国家情報長官(DNI)のオフィスがまとめた2021年の資料を改訂する中で今回の考えを示した」
(WSJ 2023 年 2 月 27 日)
新型コロナの起源、研究所から流出の可能性高い=米エネルギー省 - WSJ

しかし残念ながら、このエネルギー省のレポートは現時点では非開示なので、見つけたと推測される「新たな証拠」がなにかはわかりません。
ただ、エネルギー省は傘下に多くの研究機関を持ち、病理学的新証拠を発見したようにも見えます。
というのは、それを強く示唆するフレーズをWSJは社説で書いているからです。

「26日の報告において重要な点は、エネルギー省が「新たな」情報に基づいて、その結論に至ったということだ。最終的にどんな情報が判断の変更に影響したのかが明らかになれば幸いだ。エネルギー省は国立研究所の責任を負う部署であり、研究所の一部は生物学的な研究を行っているため、同省の判断は、なおさら注目に値する。中央情報局(CIA)や国家安全保障局(NSA)の専門分野は同省と異なり主に人の介在や電波信号の傍受による諜報活動を扱う」
(WSJ 2023 年 2 月 28 日)
【社説】コロナ流出「コンセンサスなし」は逃げ - WSJ

同様にFBIも流出説を報告していました。

「Covidウイルスは、中国の武漢にある研究所から漏れた可能性が最も高いと、FBI長官のクリストファー・レイ氏は述べています。「FBIはかなり長い間、パンデミックの起源は武漢での潜在的な実験室での事件である可能性が高いと評価してきました」とクリストファー・レイはフォックスニュースのインタビューで語った。 ところで,私は武漢ウィルスラボがしていた機能獲得実験によって、人間の喉や肺のACE2受容体に感染し易いようウイルスを操作していたと考えている」
(ヒンドスタンタイムス2023年3月1日)
中国が管理する研究所からコビッドが「最も可能性が高い」リーク:FBI長官の主張|世界のニュース-ヒンドゥスタンタイムズ (hindustantimes.com) 

武漢ウィルスラボの主任研究員の石正麗とそのグループは、今年またもや復活し同じ変異実験をしていることが最近報じられました。
よほど情報隠蔽に自信があるのでしょう。
彼らは、新型コロナウィルスの始祖ウィルスを雲南省墨江ハニ族自治権にある鉱山の坑道で発見し、そのコウモリの糞からRaTG13ウィルスを得て、それを機能性獲得実験によって変異させて新型コロナウィルスを作成したのです。

軍事用生物兵器として開発されたはずですが、兵器使用されたという証拠はありません。
ただしなんらかの理由、おそらくは不作為の流出事故によって武漢市内に流れだしそれが世界に拡がったのです。
FBIは2021年に、この武漢ウィルスラボからの流出に対して「中程度の確信」を公表しています。
なお、この「中程度の確信」という言い方は、情報が錯綜したり、対立する場合、その結論の信用の度合いを示すものです。

「FBIは微生物学者・免疫学者などを含む研究者を雇用しており、炭疽菌やその他の生物学的脅威の可能性を分析するために2004年にメリーランド州フォートデトリックに設立された米バイオディフェンス分析対策センター(NBACC)の支援を受けている。(略)
長期の戦略分析を行う米国家情報会議(NIC)と政府関係者が特定を避けた4機関は、このウイルスが感染した動物からの自然感染によって生じた「確度は低い」と評価している、と最新報告書は述べている。
機密扱いの同報告書を読んだ前出の関係者らによると、米中央情報局(CIA)および政府関係者が名前を明かさない別の機関は、実験室からの漏洩説と自然伝播説の間で決めかねている。
各機関の分析は異なっているものの、今回の報告書は新型コロナが中国の生物兵器プログラムの結果ではないという既存のコンセンサスを再確認したものだという」
(WSJ前掲)

いい機会ですから、初期時系列をおさらいしておきましょう。

・2019年12月8日、武漢で既に「原因不明の肺炎」が発生。
・同年11月には、武漢で「原因不明の病気」の患者が確認され始める。
おそらく武漢ラボの黄氏が始めの患者だった可能性が高いですが、いずれにしても11月下旬に発症していたことから、潜伏期を入れれば既に初旬頃から感染が始まっていたと思われます。
・同年12月30日、武漢中心医院救急室の患者の肺胞洗浄液から「SARSコロナウイルスと一致」という検査結果が出る。
これが分かっているのは、中国情報を傍受している米海軍情インテリジェンス機関が、この時期に「中国で新型コロナ発生か」という情報をリリースしているからです。
・同年12月後半、台湾の蔡英文政権は直ちに中国武漢からの直行便航空機内での検疫活動を開始し、全力で防御体制に移す。
・2020年1月1日、救急救命室に勤務している艾芬(ガイフン女性)主任は、病院の責任者が参加する会議で「SARSが帰ってきた。人間に感染するかもしれない」と警告したがにぎりつぶされた上に、叱責を受ける。
この医師は長期に渡って行方不明となります。

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艾芬(ガイフン医師

また同病院の陳小寧医師は「伝染病が始まった12月30日の非常会議で「コロナウイルス」「『隔離」などの単語を使用してはならないという指示があった」と証言。

・1月1日武漢警察は、ツイッター上で「事実でない情報をSNSで拡散させた8人の武漢市民として中心医院眼科医の李文亮医師を拘束。

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その上、ご丁寧にも武漢市衛生当局は「患者のパニックを誘発しかねない」という理由で、医療陣のマスク着用すら禁止しています。
なんと感染初期において、武漢の医師はマスク着用すら政治的に禁じられていたのですから呆れ果てます。
実はこの時には、19年12月末の時点で中国国家衛生健康委員会の専門家チームは武漢に乗り込んでいたのです。
しかしその調査結果は、現場の医師はおろか武漢市衛生当局にすら通知されず、問い合わせに対しての答えは「待て」の一言でした。
そして理由は明かされないまま武漢は爆発的感染、すなわちパンデミックに突入します。
にもかかわらず中国当局のみならずWHOもヒトヒト感染はないとして警報をだしていません。

・2020年1月1日、武漢「華南海鮮市場」閉鎖。
・1月11日、武漢市で新型コロナウイルスによる初の死者が発生。
・1月12日、WHOはヒトヒト感染はないと発表。

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・1月前半、広東省でも新型肺炎患者が発生。
・1月13日、タイで感染者確認。
・1月16日、日本で感染者確認。
・1月16日、中国で病院の医療陣26人の感染事実が報告されたが、武漢市は「医療陣の感染はない」と発表。
・1月中頃、医療陣から26名もの感染者が発生。

1月20日、中国疾病統制センター(CDC)が新型コロナについて公式に認める。
実に発生から1ッカ月近くたっていました。

・1月20日、中国感染者135人、死者3人が確認され、韓国でも初の感染者が発生。
・1月中頃から春節休暇が開始。中国政府はまったく移動制限をかけずに放置。
約500万人が武漢から全国各地と世界へ移動開始。
・1月23日、欧州にも火の手が上がり、イタリアで初の感染者発生。
・1月24日、武漢での感染拡大がわかると、台湾政府は直ちに1月26日には湖北省から台湾への渡航を禁止。同時に台湾国内に滞在している中国人留学生などの中国から台湾に入国していた人々の隔離を開始します。
・1月28日、中国最高人民法院、「新型肺炎はSARSではないが、この情報の内容は完全に捏造とういわけではない。もし社会大衆が当時、この“デマ”を聞いていたら、SARSの恐怖を思い出し、みなマスクをして、厳格に消毒し、野生動物のいる市場を避けるなどの措置をとって、今の新型肺炎防疫状況はもっとましになっていただろう」とコメント。
・1月28日、それまで傍観していたWHOのテドロス事務局長は、突如「中国の現状を詳細に理解するため」と称して中国訪問。
担当責任者の李克強とは面談せず、なぜか学習近平と手を握りあった写真を撮らせます。もちろん武漢への訪問などはまったくなく、医療機関とは思えないようなご機嫌伺いにすぎませんでした。
・2月中旬から下旬、武漢の病院という病院は満杯。医療崩壊が始まる。

たぶん感染した動物に噛まれた職員が新型コロナウィルスを持ち出したのでしょう。
武漢ラボの実験動物の扱いは非常にルーズで、よく職員が噛まれるという事故を出していました。

中国による意図的ウイルス散布ではなく、事故による流出が濃厚です。
いずれにせよ、問題は頑として中国政府が情報を秘匿し続け、秘匿することで初期対応を誤らせ世界に拡散させたことてす。
この責任は逃れようもありませんが、発生源と強く疑われる中国が認めない以上責任論に発展しないと諦められてきました。

これに一石を投じたのが、ミズーリ連邦裁判所の中国共産党に対する賠償訴訟です。

「ミズーリ連邦地方裁判所は7日、「新型コロナウイルスの存在を隠蔽し、初期対策を怠った」として、中国共産党に対して240億ドル(約3.6兆円)の賠償を命ずる判決を下した。
この判決の事実背景は、パンデミック当初に中国政府の関連機関は、人から人への感染について正確な情報の開示を意図的に抑制したり、虚偽の情報を示したこと、また、中国政府の関連機関がミズーリ州でパンデミックの初期から防護服を独占的に買い占めたために、防具服が不足し、また価格が高騰したことなどがあげられている。
同裁判所は賠償金に充てるため、ミズーリ州にある中国人所有の資産を差し押さえることも容認している。 ミズーリ州政府が2020年4月に起こした訴えが全面的に認められたわけだが、同州には中国人が所有する農地が多数存在しており、州政府がこれらを接収する事態となれば、中国側が猛反発するのは必至だろう。
(現代ビジネス3月13日)
 中国政府に3.6兆円の賠償を命じた「ミズーリ判決」は、なにが根拠なのか?「新型コロナ」の深層に迫る判決のヤバすぎる中身(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース  

実に面白い判決です。
今のままでは知らぬ存ぜぬを決め込む中国はこのまま逃げきったと考えているはずです。
中国共産党に声を荒らげて道義を説いても無駄です。

ですから新型コロナウィルスを人為的に作って拡散させただろうという責任論をいったん置いて、もっとも初めの発生国でありながら持っている情報を隠匿し、開示を怠った点を追及します。
それがこのミズーリ連邦裁判所判決のすごいところで、しかも賠償金を州内の中国人所有の資産から差し押さえるという方法で具体的に解決したことです。
この方法は使えます。米国内のあらゆる州政府は同じような訴訟を連邦裁判所に起こし、州内の中国資産を差し押さえたらよいのです。
トランプも関税だけが能じゃないでしょうに。
他国でもこのミズーリ連邦裁判所判決を研究し、世界規模で罪をつぐなってもらいましょう。

 

 

 

2025年3月14日 (金)

トランプ関税戦争を嫌った米国株式市場

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トランプは就任以来のディールが大成功したと勘違いしています。
トランプは決して歴史を学び世界の構造を知って大統領になったわけではありません。
持っている知識といえば、「影の政府」がどーしたとかQアノンがこう言ったといったレベルです。
なにより経営者としての成功体験を絶対のものとして、政界に進出したような人物です。
つまり徹底した経験主義者、パワーの信者なのです。
どうだあの傲慢なゼレンスキーさえ這いつくばらせたぜ、結局オレの言うなりにしてりゃ問題ないんだ、という妙な成功体験を得てしまったようです。

経験主義者には実体験で目を覚ましてもらうしかありません。
やや笑えることには、トランプが始めた世界貿易戦争は自国の株式市場の復讐を受けています。
3月11日のシカゴ日経平均先物(CME)です。
ドーンと爆下がりしているのが分かりますね。

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株探ニュース

「デルタ航空や小売り企業による消費鈍化警告で、警戒感が広がり、寄り付き後、下落。カナダによる国内電力価格引き上げに対抗しトランプ大統領がカナダ産鉄鋼とアルミニウム関税引き上げを警告し、貿易摩擦拡大懸念に相場は大幅続落となった。警戒感に軟調推移が続いたが、終盤にかけて、ウクライナがトランプ政権提案の停戦案を受け入れる用意があると発表、トランプ大統領がウクライナ情報共有と安全保障支援再開で合意したとの報道を受け停戦期待が広がり、さらに、カナダとの協議後、貿易を巡る懸念も緩和し、相場は下げ幅を縮小し、終了。セクター別では、自動車・自動車部品、半導体・同製造装置が上昇、電気通信サービスが下落した」
米国株式市場は続落、消費鈍化や貿易摩擦深刻化を警戒(11日)/海外市場動向 | 市況 - 株探ニュース

いうまでもなく、米国株式が下落した理由は、カナダ、メキシコなどに対するトランプの関税戦争です。


「アメリカのドナルド・トランプ大統領は11日午前、カナダから輸入する鉄鋼とアルミニウムへの関税を50%に引き上げると発表した。しかし、同日午後にこれを撤回し、当初の25%にするとした。カナダの鉄鋼とアルミニウムへの25%の関税は、12日に発効する。
トランプ氏がカナダへの関税を大幅に引き上げると警告した数時間後、カナダ・オンタリオ州は、米北部の複数の州に供給する電力に25%の追加料金を課す計画を停止。この対応を受け、トランプ氏は関税を当初の25%に戻した。
北米の隣国同士に経済的損害をもたらしかねない貿易戦争で、再び小競り合いが起きた」
(BBC3月12日)
カナダへの鉄鋼・アルミ関税、トランプ氏が「50%に倍増」表明も数時間で撤回 - BBCニュース

そりゃ撤回したとはいえ、大統領が一時でも50%関税上乗せなんてクレージーなことを言えば、たまげるよ。
これってもう宣戦布告みたいなもんですから。
当然カナダは売られた喧嘩を買いますわな。買わなきゃ殴られっぱなしで「米国の1州」になってしまいますから。
報復関税はあたりまえ、電力供給に追加料金をかけると言い始めました。


「カナダは今月3日、トランプ氏の貿易をめぐる攻撃は不当だとして、300億カナダドル相当のアメリカ製品に新たな関税を課すなどの報復措置を発表した。
カナダ・オンタリオ州のダグ・フォード州首相は、自国への関税を撤廃させるため、アメリカに供給する電力に追加料金を課すつもりだと発表していた。
また、アメリカが「事態をエスカレート」させるなら、「電力を完全に停止することも辞さない」とも述べていた」
(BBC前掲)

典型的な貿易戦争の勃発です。
しかもいま、カナダは長年続いたトルドーからマーク・カーニーへと政権交代しようかというタイミングでした。

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マーク・カーニー次期首相
Bloomberg

「与党党首に選出されたカーニー氏は勝利演説で、「米国はカナダではない。いかなる形でもカナダが米国の一部になることは決してない。この闘いはわれわれが求めたわけではないが、(殴り合いのために)誰かがグローブを投げ捨てれば、カナダ人は常に相手をする用意がある。貿易でもホッケーでもカナダは勝つ」と訴えた」
(ブルームバーク3月10日)
カナダ与党党首にカーニー氏、首相交代へ-トランプ米政権と対決姿勢 - Bloomberg

自由党党首となったカーニーは冷静な銀行家で、カナダ中央銀行総裁と英国中央銀行総裁を勤めたこともあるという人物で、おおよそトランプのような煽動家とは無縁な人ですが、米国の属国になれと言わんばかりの米国と徹底して戦う気のようです。
というのは、トランプの一連の「帝国主義」発言は、カナダの愛国心に火をつけてしまったからです。
当然です。トランプが愛国者というなら、言われたほうも国を愛しているのです。
「愛国」はあんたひとりの持ち物じゃないんだよ、なぜそんなことがわからんのか、この男。

トランプから関税戦争を仕掛けられたEUもしっかり報復すると宣言しました。

[ブリュッセル 12日 ロイター] - 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は12日、鉄鋼とアルミニウムを巡る米国の関税に対抗し、来月から260億ユーロ(280億ドル)相当の米国製品に関税を課すと表明した。
トランプ米政権はこの日、貿易相手国に対する25%の鉄鋼・アルミニウム関税を発効させた。これまでの除外措置や無関税枠が失効したのに伴い、関税が実質的に引き上げられた。
欧州委は、米製品に対する現行の関税一時停止を4月1日に終了し、同月中旬までに新たな対抗措置のパッケージを打ち出すという。
関税が一時停止されていた米製品はボートからバーボン、バイクまで多岐にわたり、EUは今後2週間でその他の製品についても協議する。EUは新たな措置について、約180億ユーロ相当の製品を対象とし、総額が米国による新たな関税で影響を受ける貿易額と同等にすると述べた」
(ロイター3月12日)
EU、米関税に来月から報復措置へ 280億ドル相当の製品に | ロイター

オーストラリアも長年の友好を裏切るのかと怒って参戦しました。

「オーストラリアのアルバニージー首相は発動直前に「全く不当」であり、「わが国との間で長年続く友好の精神に反する」と批判した。その一方で、関税の応酬や貿易をめぐる緊張の高まりは経済上の「自傷行為」で、成長の鈍化やインフレ激化を招くと指摘。報復関税は課さない方針を示した」
(CNN3月12日)
トランプ米政権、鉄鋼・アルミに一律25%の関税発動 EUが即座に報復 - CNN.co.jp

トランプは報復関税かけたら、また追加関税かけてやると息巻いています。
かくしてとうとう世界を巻き込んだ関税戦争の勃発です。
いまのような安全保障の枠組みが十重二十重にできていなければ、大戦へ直行でしたね。
トランプはそのくらいアブナイことをしている自覚があるのかしら。

一方、米国株式が風邪をひくと兜町は肺炎になるといわれるわが国の株式市場はどうだったでしょうか。

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日経平均 前営業日比30円安で寄りつき(2025年3月12日掲載)|日テレNEWS NNN

なんと、シカゴ市場が冴えなかったのに日経平均は持ちこたえています。
ここではっきりしつつある経済状況は、米国経済が明らかな景気減速モードをみせはじめた、ということです。
もちろん、今後輸出産業などで日本に影響が来ない道理がありませんから、日本経済もおつきあいするはめになるかもしれません。

とまれこのような馬鹿げた貿易戦争は世界経済を減速させることだけは確かで、それを米国株式市場は嫌ったのです。

 

2025年3月13日 (木)

なんだただの帝国主義じゃないか

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なんだ「ただの帝国主義」じゃん、昨今のトランプの所業をみているとそう見えてきます。
というか、帝国主義と言い切ってしまうと実に分かりやすい。

トランプの再登場に期待をこめて見ていたはずの武者陵司氏が、こう苦々しげに書いています。

「歴史の針が大きく逆回りし始めたように見える。20世紀前半までの、列強による世界分割、各国が権益追及を丸出しにして、戦争にまい進した帝国主義時代に戻ったとしか思えない変化が起きている。南シナ海の公海上の岩礁を埋め立てて軍事要塞化した中国や、主権国家ウクライナにあからさまに侵略し領土を奪取したロシアなど、ならず者国家群(Rogue Nations)だけかと思ったら、トランプ政権もそれに劣らず対外膨張の意欲をあからさまにしている。
トランプ氏はグリーンランドの領有やパナマ運河の管理権の奪還の意志を示した。また。メキシコ湾をアメリカ湾への呼称変更し、2015年に「デナリ」と改称されていたアラスカ州の北米最高峰の名称を、それ以前の「マッキンリー」の呼称に戻した。これらは領土拡大の野望をむき出しにしたものととらえられている。マッキンレーはハワイ併合・フィリピン併合・米西戦争など帝国主義政策を推し進めた第25代大統領(1897-1901)である」
トランプ氏は帝国主義者なのか | 武者リサーチ

ただし武者氏は、さらに露骨な古典的帝国主義国家である中国とトランピズムは同じではないとして、こうもつけ加えています。

「一見帝国主義に見えるトランプ氏の一連の政策、言説の多くは、この中国の「現代版帝国主義」に対抗してのものである。グリーンランドやウクライナの鉱物資源は、今や世界の希少資源生産の大半を支配する中国依存を脱却する必要性から出てきている。パナマ運河も中国による権益支配を許さないために打ち出された。トランプ大統領が侵略者であるプーチン氏と気脈を通じ、祖国防衛に苦闘するゼレンスキー氏に大きな譲歩を求めているが、それも対中戦略から出てきていると考えられる」
(武者前掲)

つまり武者氏は、帝国主義的外交が対中包囲シフトの形成のために必要なのだと説明していますが、これは保守文化人共通の贔屓の引き倒しにすぎません。
残念ながらそうではないと思います。

トランプが自由主義陣営の盟主としての責任とプライドを放棄していなければ、そうもいえないことはないと思いますが、残念ですがその大前提がくるってしまっています。
自由主義国家を保護するという西側盟主の任務を放棄してしまえば、そこに現れてくるのは「ただの帝国主義」にすぎないのです。

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習主席とトランプ次期大統領が電話会談 “意思疎通で合意” | NHK | 習近平主席

トランプは、今後予想される台湾侵攻に際して、台湾防衛の義務について言葉をにごしながら、半導体産業は貿易赤字を生んでいるのだ、なんとかしろと言っています。
ウクライナの鉱物資源と同じことで、これもディールなのです。
トランプは台湾をカードのダシに使って習近平とディールするはずです。
そしてディールの配当は米国のみが独占するのでしょう。

日本に対してもまったく同じ。
安倍氏がいたら別だったでしょうが、特に日本への思い入れもなにもないはずで、日米安保の世界戦略上の構造的意味などには無頓着で「米国が日本を守ってきた」という一面しか見ようとしません。
当然のこととして、これからも守ってほしかったらナニかを寄こせと迫ってくることでしょう。

その典型がウクライナ戦争です。
トランプはゼレンスキーに対して、「米国の軍事支援がなければ、この戦争は2週間で終わっていただろう。我々に感謝するべきだ。あなたはカードを一切持っていない。鉱物資源を兵器供与の見返りで寄こせ」と言いましたが、ほんとうにそうでしょうか。
根本的にまちがっています。
米国の武器供与がなければ、ウクライナは2週間ももたなかったとは、事実と正反対の認識です。

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ウクライナ侵攻、首都キーウで爆発音か 数千人が国外へ避難 - BBCニュース

では、この侵略後2週間になにがあったのでしょうか。
ロシア軍は北部と東部国境から一気に雪崩込み、首都キーウを陥落させ、ゼレンスキーを亡命に追いやり、傀儡政権を作る目論見でした。
その時、「米国供与の武器」があったとでもいうのでしょうか。
いや、ウクライナに対しての本格的武器供与のためのレンドリース法(武器貸与法)が成立したのは、開戦後3カ月後の22年5月でした。
仮にゼレンスキーがウクライナから逃亡し、国民も団結して抵抗しなかったなら、トランプの言い草のように間違いなく侵攻から3日で戦争は終結していました。

そしてウクライナ軍は武装解除され、1カ月以内に西部も含んでウクライナ全土が事実上のロシア領となっていたことでしょう。

その結果、ウクライナにはロシア軍が軍事進駐し続け、事実上のロシアの「国境線」はウクライナとポーランド国境となったはずです。
そしてプーチンは次なる侵略の標的としてバルト3国か、フィンランド、あるいはポーランドに狙いを定めたでしょう。
つまりは旧ロシア帝国の勢力圏の回復です。
このようにロシアが肥大化した場合、ヨーロッパの勢力図は大きく塗り替えられたはずです。
日経の欧州総局長赤川省吾氏がこう述べています。

「不安が広がる。在英ヘッジファンドの運営責任者は「バルト3国消滅」を地政学リスクの「最悪シナリオ」に組み込むかどうか頭の体操を始めた。
米国の大幅譲歩により、ウクライナがロシアの属国になる。その後、ロシア・ベラルーシなど旧ソ連の強権国家軍が「旧領回復」を目指してバルト3国に侵攻するという筋書きだ。その際に金融市場がどう反応するのかをシミュレーションしている。
心配は市民生活にも忍び寄る。筆者は記者の傍ら、ベルリン自由大学で週1回、非常勤講師として教えている。先日、授業で欧州の安保政策をテーマに議論したところ、学生の多くが内心、恐れていることがあった。「近い将来、徴兵され、ロシア軍と戦うために東欧の前線に送られる」。米国が西側の盟主であると信じられなくなったことによる心理的な影響は計り知れない。
いずれトランプ政権は行き詰まり、穏健な政権に交代するとの期待はある。しかしトランプ大統領を選んだ米国の民意は残る。「ポスト・トランプ」で古きよき米国に戻り、それが長続きするという保証はどこにあるのか。安保も経済も米国に頼る日本もひとごとではない」
(日経2025年3月9日)
「西側の盟主」アメリカ、終わりの始まり ヨーロッパに漂う距離感 - 日本経済新聞

この「強権国家軍の旧領回復」を、いま、板一枚で防いでいるのがウクライナなのです。
ウクライナにカネと武器を渡して助けたから恩に着ろ、というのは真逆で、ウクライナにヨーロッパと世界は助けられたのです。

このような発言をいやしくも合衆国大統領が恥ずかしげもなく言える米国は、ウクライナの真の価値を見誤っており、世界の安全保障を大きく脅かしている大馬鹿者のように思われます。

元駐米大使の佐々江賢一郎氏はこう見ています。

「中露など米国に挑戦する国々を念頭に、もう一回力を背景とする国益の維持を図らなければ、きれいごとでは済まされない。米国から見たこうした現実主義的な見方を端的に率直に表した外交が、〝トランピズム〟といえる。
懐深く世界のために資金を出し、軍事・安全保障も提供し、鷹揚に構えていた米国の時代はもう終わりつつある」
(産経1月25日)
「世界に軍事力を提供した米国」の終焉 トランプ氏が突きつけた「自分の力で自分を守る」時代に対応を 佐々江元駐米大使 - 産経ニュース

残念ですが、このような狭い視野しかない男が大統領になってしまい、無邪気にグリーンランドを寄こせ、カナダは米国の1州だ、ウクライナの鉱物資源を寄こせと言うのですから、なんともかとも。
こうして米国は「ただの帝国主義」に堕していく道を歩むことでしょう。

 

 

2025年3月12日 (水)

現代のチェンバレン・トランプ

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お見舞いありがとうございました。
まだ痛い、というか、歳食うと時間をおいたほうが痛くなるんですね。やれやれ。

さて、ウクライナと米国務省との停戦協議がサウジで始まりました。
「国務省」とわざわざ書いたのは、トランプ御大がいつでもちゃぶ台返しが出来る上に、仮にこれで何か決まったとしても、図に乗っているプーチンが聞く耳を持たないのはわかりきっているからです。
比較的ウクライナに同情的なマルコが行ってゼレンスキーをなだめて、停戦会談に顔を出すことを確認するという予備会談のそのまた予備会談といったところです。

ウクライナウォロディミル・ゼレンスキー大統領とマルコ・ルビオ米国務長官は10日、ウクライナとロシアの停戦に向けた協議を行うため、サウジアラビア入りした。
ウクライナ側の当局者は同日、匿名を条件にAFPに対し、「空と海での停戦案がある」「この案は開始と監視が容易な停戦の選択肢であり、まずはここから始めることが可能だ」と語った。
一方、ルビオ氏は記者団に、部分停戦案について「それだけで十分とは言えないが、紛争を終結させるためには必要となる譲歩の一つだ」「双方が譲歩しない限り、停戦も終戦も実現しない」と述べ、ウクライナ側の提案に望みが持てるとの考えを示唆した」
(AFP3月11日)
ゼレンスキー氏と米国務長官、対ロシア停戦協議へ サウジ(AFP=時事) - Yahoo!ニュース

ウクライナの停戦案はもうわかっています。
海上での戦闘の停止とドローンやミサイルなどによる空爆をしないということのようです。
海上戦闘はウクライナがセヴァストーポリ軍港から事実上ロシア黒海艦隊を追い払ってしまっていますが、空爆はロシアが見境なく連日猛爆を浴びせています。
むしろ問題は、現在、ウクライナはクルスクで1万とも言われる部隊がロシアの包囲にはまっていることで、このままま推移すればクルスク侵攻部隊は全滅という惨事になりかねません。

その理由はトランプにあります。
トランプはロシアとは話がついている、いうことを聞かないゼレンスキーめを懲らしめてやる、とばかりに支援を完全に停止してしまいました。

「米国家地球空間情報局の報道官は7日、G-EGDシステムからの衛星画像へのウクライナのアクセスを一時的に停止したと明らかにした。これについてはニューヨーク・タイムズ紙が先に報じていた」
(ブルームバーク前掲)

たぶん衛星情報のみならずインテリジェンス機関からの情報共有もストップしているはずで、これで事実上ウクライナはロシア軍の動向を掴む目を失いました。
これが西側の盟主というのですから、ヘソで茶を沸かすとはこのことです。

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ロシアのウクライナ侵攻 - Yahoo!ニュース

一方トランプが盟友だと考えでいるプーチンは、きわめて強気です。
なにひとつ要求を後退させていません。

「事情に詳しい複数の関係者によれば、ロシア当局者は先月行われた米当局者との協議で、最終的な和平合意に向けて進展がある場合、短期的な停戦を検討する用意があると伝えた。非公式な協議を理由に匿名を条件に語った。
関係者のうち2人は、停戦に合意するためには、最終的な和平協定の原則的な枠組みについて明確な理解が必要になると語った。別の関係者は、ロシアは最終的な平和維持活動の境界を確立することに特にこだわるだろうと述べた。これには具体的にどの国が参加するかについての合意も含まれるという」
(ブルームバーク3月8日)
ロシア、停戦受け入れ用意を示唆-米政権はウクライナに圧力継続 - Bloomberg

ここでロシアが言う「平和維持活動の境界を確立する」とか「和平条約の原則的枠組み」ということの意味は、支配地域を確定しろ、それはロシア軍が軍事支配しているクリミアと4州そしてクルスクです。
ここからウクライナ軍は州境まで撤退し
ろ、クルスクにいるウクライナ軍は殲滅する、ということになります。

トランプはすでにロシアへすり寄った融和策を考えています。
それはバイデン時代に決まった制裁をことごとく解除する内容で、和平会談うんぬんの前にすでに負けています。

「協議に詳しい複数の関係者によると、トランプ氏のアドバイザーらは、対ロシア制裁をどのように緩和するかについて既に概要を練っている。緩和対象にはロシア産石油の価格に設定されている上限などが含まれる」
(ブルームバーク前掲)

 全体主義国家が現に侵略をし、それを追認するという外交政策をアピーズメント(融和・Appeasement)と呼びます。

「近代の外交政策で“歴史的な失態”という評価が定着した実例は、イギリスの首相ネヴィル・チェンバレンのナチス・ドイツ総統アドルフ・ヒトラーに対する宥和である。1938年のミュンヘン会議でチェンバレンはドイツによるチェコスロバキアの一部占拠を認めてヒトラーを増長させ、ポーランドへの侵攻を招き、第2次世界大戦を引き起こす結果となったとされる」
(古森義久2021年12月29日)
80年前の歴史的大失態と並べられるバイデン「宥和」外交の不安 バイデン大統領は現代のチェンバレンなのか?(1/4) | JBpress (ジェイビープレス)

トランプ贔屓の古森氏はバイデンこそ現代のチェンバレンだと断定していますが、ならばトランプはなんでしょうか。
融和以前の癒着でしょうか。
少なくともトランプは西側陣営の盟主たる責任を捨て去り、全体主義と手を組んだのはまちがいないことです。

トランプの現代の宥和政策に対して勇敢なNZの外交官が一石を投じています。

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駐英ニュージーランド大使 不適切発言で解任 | 大紀元 エポックタイムズ

「ニュージーランドのフィル・ゴフ駐英国大使が、ロンドンでのイベントでトランプ米大統領の歴史の知識に疑問を唱えた後で解任されていたことが分かった。
オークランド市長や外相を務めた経歴を持つゴフ氏は4日、英シンクタンク王立国際問題研究所(チャタムハウス)のイベントで発言。「私はチャーチル(元英首相)が下院で1938年に行った演説を読み返していた。ミュンヘン会談の後の演説で、チャーチルは(当時の首相の)チェンバレンに向かってこう言った。『あなたは戦争と不名誉との間で不名誉を選んだわけだが、それでも戦争をもたらすことになるだろう』」と述べた。
続けて、「トランプ大統領はチャーチルの胸像を大統領執務室に戻した」「しかし彼が本当に歴史を理解していると、あなた方はお考えか?」と問いかけた。
ここでゴフ氏は、ロシアとウクライナの戦争終結に向けたトランプ氏の取り組みを38年に結ばれたミュンヘン協定になぞらえている。当時、英仏独の首脳が調印したこの協定はヒトラーに対し、チェコスロバキアの一部の併合を認める内容だった。ヒトラーは翌年ポーランドに侵攻。第2次世界大戦が勃発した」
(CNN3月7日)
駐英NZ大使が更迭、トランプ氏の歴史知識に疑問投げかけ(CNN.co.jp) - Yahoo!ニュース

結局、ゴフ大使は即刻解任されてしまいましたが、、これこそ自由主義陣営の共通の声なはずです。
トランプは現代の融和主義者チェンバレンです。

※追記
アップした後にウクライナが停戦案を受諾しました。

「サウジアラビア西部ジッダで11日、米国とウクライナの高官級会合が行われ、会合後に共同声明を発表した。ウクライナは同国を侵略したロシアとの戦争に関し、米国が提案した30日間の暫定的な即時停戦に応じる用意があると表明した。ルビオ米国務長官は米国案をロシア側に示すとし、停戦実現の可否はロシア次第だとの見方を示した。
ウクライナのゼレンスキー大統領はX(旧ツイッター)への投稿で、「前向きな一歩だ」として米国案の受諾を確認し、米国によるロシアの説得に期待を示した」
(産経3月12日)
ウクライナが30日の即時停戦受け入れ表明 米国が提案、軍事支援再開 ロシアの出方が焦点 - 産経ニュース

 

2025年3月11日 (火)

本日は休場

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昨日、梅の山を撮影していたところずり落ちてしまい、イヤってほど歩道に叩きつけられて全身打撲。
カメラを守ろうとしたのがいけなかったんですよ。

う~、痛てェよぉ。
というわけで本日は休場いたします。すいません。

 

 

2025年3月10日 (月)

武漢ウィルスラボでまた新型コロナ出現

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トランプの錯乱暴走の影に隠れて、中国がこんな発表をしています。
なんとまたあの武漢ウィルスラボが新型コロナの新たな株「HKU5―CoV-2 」を発見したというのです。

「中国湖北省武漢の武漢ウイルス研究所の研究者らが2月、ヒトに感染する可能性がある新たなコロナウイルスがコウモリから検出されたとする論文を学術誌に発表した。論文では「現時点でヒトへの感染は確認されていない」として平静を呼びかけている。ただ、武漢ウイルス研究所はCOVID19の起源を巡る「研究所流出説」で疑惑の目が向けられている施設。今後の拡大などを不安視する声が上がる」
(産経3月9日)
中国で「新たなコロナウイルス」発見 武漢の研究所調査 「ヒトへの感染は未確認」も疑念 - 産経ニュース

今回発表されたのは、日本では2023年4月1日までに3346万2859人、国内人口にして約26.5%とパンデミックをせたらしたCOVID-19と同系統のコウモリ由来のものです。

「新たなコロナウイルス「HKU5―CoV-2」。過去に中東で流行した中東呼吸器症候群(MERS)と同じ系統のウイルスで、COVID-19と同様にヒトを含む哺乳類のタンパク質と結合し、細胞内に侵入できるという」
(産経前掲)

「ヒトを含む哺乳類のタンパクと結合できる」ということは、ヒト感染が可能だという意味です。
COVID-19はコロナ(Corona)と「ウイルス(Virus)、病気(Disease)の単語を組み合わせ、それにWHOに報告された2019年を組み合わせでできていますから、今回WHOは確定していませんが、これが新たな新型コロナならば「COVID-25」とでも呼ぶべき存在となります。

こういう不吉な予感がぬぐえないのは、今回の新型コロナウィルスを「発見」したのが、例の悪名高き武漢ウィルスラボの石正麗グループだからです。
また出たか、妖怪コウモリ女め。

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中国科学院武汉病毒研究所HP

「発表したのは、広東省広州や武漢の中国科学院傘下組織や大学の研究者でつくるチーム。チームを主導した一人には「バットウーマン(コウモリ女)」の異名を持つ武漢ウイルス研究所の石正麗氏も含まれる。コウモリ由来のウイルスの研究者で、COVID-19の流行を巡って度々、研究所流出説を否定する発信を行ってきた人物だ」
(産経前掲)

いままで公式に石正麗は一度も姿を現していませんでした。世界の追及から逃げ回ってきたのです。
あれほどの重要人物は自由主義国家ならどこへ逃げようとメディアから逃れられませんが、あの国は国家が隠蔽すればとことん隠し通せるのです。
発生源と目された武漢ウィルスラボそのものもは無人の館と化して、ウィルス株のサンプルもないとされていましたが、またいつのまにかほとぼりが冷めたと思ったのか舞い戻っていたようです。
あの国ですから隠そうと思えば、完全にないものとしてし扱えますからね。

とまれ原因究明をすべきWHOが、中国御用達機関となって久しく、中国の流出疑惑に対してWHOのトンデモ「現地調査」で終止符を打ったきになっていました。
中国はこれで逃げきったゼ、と信じていたはずでしたが、あいにく天網恢恢疎にして漏らさずとはよく言ったもんで、武漢から発生して丸々3年もたった2023年になって大ブーメランの大流行を爆発させています。
世界各国が鎮静化している頃を狙いすましたかのように、ひとり中国一国だけが8億人という巨大パンデミックを引き起こしたのです。悪いことはできません。

ではどうしてCOVID-19は全世界の累積感染者数は2億4629万7757人、累積死亡者数は499万4113人(2021年11月 現在)という膨大な被害を出したのでしょうか。
それは武漢ウィルスラボが自然界のコウモリウィルスRaTG13を収拾しただけではなく、ヒトへの感染力を強め、致死力を強めていく機能獲得変異実験を施したからです。
機能獲得変異実験は米国内で禁止されていることからわかるように、いったん流出すれば致死力の高い未知のウィルスを世界にばらまいてしまうことになります。実際そうなりました。

機能獲得変異研究について簡単に説明します。
これは実験室で反復し、より強力さと威力を持たせるように遺伝子コードを操作し、ウイルスが新たな機能を獲得する研究です。
この実験によってきわめて危険な、しかも人類がいままで遭遇したことのない新種のウイルスを実験室内でつくることができたのです。
中国が当初から世界に拡散させるきがあったのかどうかはわかりませんが、あらかじめ実際の流行前に治療法やワクチンを作っておくことが可能だと考えていたことは確かです。
そうでなくては世界最速でワクチンができるはずがありません。ただし効きませんでしたが。(笑)

この実験は一度誤ると大惨事になります。
なにせここで作り出された新型ウィルスは、自然界にあるものではなく、強力に感染し致死率が高くなるように人工的に作られた悪魔のウィルスだからです。
転用すればウィルス兵器として絶大な効果を発揮することは、感染爆発した3年間を見ればわかるでしょう。
敵対国において、大量の人を殺し、経済を壊滅に追い込み、社会に前代未聞の混乱を与え、しかも軍事力まで崩壊させることが可能なことは証明されました。
しかも仕掛けた自分の国は、あらかじめワクチンを用意し、対策を立てているので傷は至って軽症で、世界で最も早く立ち直り、感染流行後のヘゲモニーを握ることができますから、こたえられません。まぁ、そううまくはいかず自分も手ひどい被害に合いましたが。
しかもそれを誰も人為的攻撃だとは思わないときていますから、悪魔の兵器としてこれ以上のモノを想像するが難しいほどです。

このウィルス機能獲得実験が一度間違えると極めて危険なウィルス兵器開発になることを危惧してオバマ政権は、2014年、連邦研究施設における機能性獲得実験の米国内における実験を禁止します。

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NIAID所長アンソニー・ファウチ

しかし、これに強く抵抗した推進派が米国内にいました。米国感染症界の第一人者でありNIAID(米国国立衛生学研究所 )所長のアンソニー・ファウチです。
NIAIDは最初の機能性獲得実験をしたラボで、当時、彼はこの研究が「冒す価値がある危険」であり、「重要な情報と本質の理解は、潜在的に危険なウイルスの実験室での生成から得られるだろう」と主張する論説記事を、ワシントンポスト紙(2011年12月30) に共同寄稿しています。
そしてファウチは、国内で禁じられると武漢ラボに多額の費用負担で委託しました。その時に多額の委託金も支払っています。
こうして米国NIAID と中国武漢ウィルスラボの水面下での危険なウィルス実験のつながりができてしまったのです。

ちなみにファウチはバイデンが最後屁で残していった恩赦の対象となっています。バイデンはなにを隠したかったのでしょうか。

驚くべきことに、今回もまた石らはなんの反省もなくヒト遺伝子組み換えマウスを用いて実験しているようです。

「英紙テレグラフ(電子版)は2月26日、論文の結論部分にウイルス株の「さらなる調査」や、ヒト遺伝子組み換えマウスを用いた実験の必要性が提案されていることに言及。研究チームが今後、さらに追加で「感染性を高める実験」を行う恐れがあるとして「不吉だ」と指摘した。
COVID19の「研究所流出説」を唱えてきた米ブロード研究所の分子生物学者、アリーナ・チャン氏は同紙に対し、論文の結論に書かれた追加の実験は「COVID19のパンデミックの引き金になった可能性がある実験と類似している」と懸念を示した。

交流サイト(SNS)では「COVID19は何度も変異して違う型が発生して感染が拡大した。なぜ今回だけ危険ではないと言い切れるのか」などと不安視する声も上がっている」
(産経前掲)

またまた中国で非常にコワイことが行われているようです。

 

 

2025年3月 9日 (日)

日曜写真館 あらゝぎのはるかに日ざす梅の花

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キヤラメルをいくつかくらひ梅の花 八木林之介

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ああだつたこうだつたなあ梅の花 田原節子

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カアさんといひてみてをり梅の花 川端茅舎

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めいめいに考える椅子 梅の花 伊丹三樹彦

 

 

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