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2024年5月22日 (水)

頼清徳新総統の就任演説

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台湾の頼清徳(ライ・チンドォー)新総統の就任演説の要旨です。
福島香織氏の解説を参考にして付け加えます。
頼清徳新総統の演説要旨 「台湾をAIの島に」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)


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「戦争の恐怖から解放を」 台湾の頼清徳新総統、就任演説で中国警戒:朝日新聞デジタル (asahi.com)

「1996年に選挙で選ばれた総統が就任し、台湾は主権独立国家だと世界に示した。初めて同一政党(民主進歩党)が3期続けて政権を担う。苦労して勝ち取った民主主義の勝利だ」

この部分ですが、頼総統ははっきりと「中華民国」という表現をとっていました。しかも9回も。
台湾独立派には正名運動というのがあります。

「台湾の公的な場で使用されている「中国中華(China)」という呼称を「台湾(Taiwan)」へ置き換え、台湾の存在を「中国の一部」から「中国とは別個の地」に代えることを目標としている。但し、ここでの中国、中華は中華人民共和国ではなく1945年以降台湾を実効支配している中華民国(Republic of China)に由来する名称である」
台湾正名運動 - Wikipedia

ここでいう「中華」や「中国」とは国民党の蒋介石が作った中華民国のことです。
ですから上の頼氏の写真には、国民党の党旗が中華民国国旗に入っています。
国旗を見ただけで蒋介石は他の政党を認める気がなかったのがわかりますが、中華民国3代目の総統となった李登輝が一気に民主化を押し進めて多党時代に突入しました。
民進党もこの民主化の流れの中で誕生した独立派の政党です。

ただし民進党は、台湾が独立すると口にした瞬間、中国が攻めてくることを知っていますから、「独立」という表現を使わず、かつ「中華民国」という国民党臭がこびりついた国名を使うことにも慎重でした。
蔡英文前総統もほとんど中華民国という表現を使っていませんでしたが、今回、頼新総統はそのタブーをあえて破っています。

「傲慢にも卑屈にもならず、(中台関係の)現状を維持する。中国が言論や武力での威嚇を停止し、共に台湾海峡と地域の平和と安定の維持に尽力するよう求める。中台は互いに隷属しない。
中華民国(台湾)の存在を中国が直視し、台湾人の選択を尊重するよう望む。中国が民主的な選挙で選ばれた合法的な政府と対等の原則の下で、対話と交流を進めることを望む。
ただ中国に幻想を抱いてはいけない。中国は台湾に対する武力侵攻の可能性を放棄していない。中国の台湾併合の企てが消えることはない。
民主主義国家と平和の共同体を形成して抑止力を高めて戦争を回避しなければならない」
(日経前掲)

つまりこれは、頼氏率いる民進党の台湾アイデンティティの現れで、もう台湾は国民党の私物ではないのだから中華民国でかまわないというのが新総統の考えです。

「国名問題に結論を出しています。中華民国じゃなくて、台湾が正名とかいう議論は些末な問題で、重要なのは民主パワーで団結すること、という立場を言明。
これで憲法問題、国名問題について頼清徳民主党政権として答えを完全に出したということです。なので頼清徳政権による国名変更も、憲法改正も当面ない、ということです。だから、国民党は台湾の政党として国家主権を守るという立場において民進党と協力、強調せよ、と呼び掛けているわけです」
(福島香織 note)

そしてそのうえで中国に対して「中華民国」という現実を直視し、侵略をしないようにと呼びかけました。

「台湾の国家としての存在をはっきりと中国に示し、その上で、中国が中華民国の存在という事実を直視し、台湾人民の選択を尊重するように、呼びかけました。
ここで「各位国人同胞(国民同胞のみなさん)」という呼びかけで、「(中国に対して)幻想を持つべきではない」と訴えているんですが、この国人という表現には、中華民国人(国民党、親中派)が強調されているように聞こえます。
そして抑止力による戦争回避の必要性をときました」
(福島前掲)

一方、議会(立法院)は、民進党も国民党も過半数をとれずにいます。
つまり三すくみ状態なわけです。
国民党は新総統の就任式に参加しないという子供じみた抵抗をしていて議員がひとりしか参加しませんでした。
これについて頼氏はこう述べています。

「立法院(国会)はいずれの党も過半数に達していない。各政党は競争だけではなく協力の信念を持つべきだ。国の利益は政党の利益より優先される」
(日経前掲)

この部分は中国にすり寄り、馬元総統のように中国と声を合わせてワンチャイナを叫ぶような国民党に対して、政争ではなく大局を見ろという意味です。

「16年ぶりに「3党とも半数以下」の立法院に言及。「人民至上」「国家優先」での協力を呼び掛けると同時に、中国にすり寄る国民党に牽制を入れました。すなわち、どんな政党であっても、政治権力のために国家主権を犠牲にするな、と釘をさしました」
(福島前掲)

そして経済については、AIイノベーションの島にすると宣言しました。

「台湾を「人工知能(AI)の島」にする。イノベーション主導型の経済モデルを発展させ、台湾に第2の経済成長の奇跡をもたらす。地政学的な変化をチャンスと捉え、半導体やAI、軍事産業、次世代通信といった産業を育成する」
(日経前掲)

日経が頼演説のタイトルにしているほどこの台湾のAI立国宣言は心強いものです。
これはTSMCの熊本進出を、今後も台湾政府も後押しするということです。

「今、誰もが夢にも思っていなかった大投資ブームが起きている。その牽引車は半導体の受託生産で世界最大手の台湾企業「TSMC」による熊本工場の始動である。2月に第1工場が完成したのに続いて、6ナノメートルの先端半導体を生産する第2工場の建設も決まり、第3工場も視野に入っている。これまでに決まった投資総額は3兆4000億円、日本政府は1兆2000億円の補助を約束している。熊本県ではこの投資ラッシュにより土地は値上がりし、人不足から賃金は上昇、交通渋滞が起きるなどブーム状態である」
日本半導体産業復活をけん引する「天の時、地の利、人の和」 | 武者リサーチ (musha.co.jp)

そして日本のみならず、世界の重要なAIサプライチェーンである台湾を世界は見捨てるなという意味になります。
全体を通して実にリアリズムに徹して、かつ壮大な理念に裏打ちされています。

 

2024年5月21日 (火)

イラン大統領、ヘリ事故で死亡

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イランのライシ大統領が事故死したことを、イラン当局も認めました。

[ドバイ 20日 ロイター] - イランのライシ大統領(63)とアブドラヒアン外相が搭乗していたヘリコプターがアゼルバイジャンとの国境近くの山岳地帯に墜落し、いずれも死亡した。イラン国営メディアが20日に伝えた。
19日に墜落したヘリを巡っては吹雪の中で夜通し捜索が進められ、20日の早い時間帯に炎上して燃え尽きた残骸が発見された。
政府高官がロイターに明らかにしたところによると、搭乗者全員が死亡。マンスーリ副大統領もその後、声明でライシ氏の死亡を確認した。
国営テレビは墜落原因に触れていない。現場の映像は山頂に激突したことを示していると伝えた」
(ロイター5月20日)

イラン大統領と外相が死亡、ヘリ墜落で 国営TVは原因に言及なし(ロイター) - Yahoo!ニュース

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速報】イラン・ライシ大統領ら乗せたヘリ発見か ロイター通信に対しイラン当局者「生存可能性低い」 | TBS NEWS DIG

さて、上の黒いターバンを巻いて人間を信じない目つきをしている人物がセイイェド・エブラーヒーム・ライシです。
黒いターバンを巻く者は、ムハンマドの血筋を引くという意味で、シーア派高位であることを示しています。
ですから、イランの歴代大統領でも黒いターバンを巻けることができるのは2名しかいませんでした。
次の「最高指導者」はこのライシだと目されていたようです。

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毎日

ライシは、2021年の大統領選挙で6割の票を集めて当選しました。
大統領職とは元首のことですから、国家のトップかとおもいきや、イランでは中間管理職でしかありません。
だから選挙で国民が選ぶことが(形式的にはですが)可能なのです。
イランの権力構造は下図のようになっています。
実にわかりにくいですが、イランという異形の国家を知るためにちょっとおつきあいください。

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イランは最高指導者が絶対権力 大統領は行政の長 (産経ニュース) (newspicks.com)

イランの全権を握るのは「最高指導者」は、わが国やヨーロッパ諸国のような国家統合の象徴ではなく文字通りの実力を持っています。
ここに座ったのはたった2名。初代があまりにも有名なカリスマ指導者のホメイニ、二代目が今のハメネイで、いずれも高位のイスラム法学者でした。
3代目と目されていたのが、今回事故死したこのライシでした。

この「最高指導者」が、日欧の立憲君主制と根本的に違うのはふたつの「力」を持っているからです。
まず、なんといっても国家の実力組織を掌握しています。国軍と例の悪名高きコッズ部隊を擁する革命防衛隊です。
ですから、イスラエルに盛んにテロ攻撃を仕掛けているコッズ部隊は、直接に「最高指導者」が司令官を任命し、その命令で動いているということになります。
国軍は政府の統制が効きますが、革命防衛隊は「最高指導者」の直轄なので、なにをしているのかさえも政府が掌握してはいないようです。

イラン革命防衛隊(IRGC)は、軍隊のように見えますし、実際国軍並の軍事力を持っていますが、国軍とはまったく別系列の軍隊です。
おそらくこのような組織は諸外国にはないでしょう。
強いていえば、ヒトラー個人に忠誠を誓ったナチの突撃隊(SA) と武装親衛隊(SS)を足して、ゲシュタッポをかけあわせたような組織で、独裁国家でしか誕生しません(おおコワ)。
当初、イスラム原理主義政権が反革命と目した国内の民主派運動家たちを殺すために作られ、やがて起きたイラン-イラク戦争を支える組織として武装化しました。
国内民主派が海外に逃亡すると、海外のイラン民主派勢力に対しても容赦ない暗殺攻撃を続けました。

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イスラム革命防衛隊

「イラン人の暗殺は、欧州亡命組を中心に、1980年代から90年代にかけてかなり頻繁に行われ、少なくとも20か国以上で、計350人以上が殺害された。ただし暗殺作戦は、2000年代以降は比較的沈静化している。亡命反体制派の活動家たちが高齢化し、武力で体制を倒せるような存在ではなくなったからである」
(黒井文太郎2019年4月17日)
中東の最重要問題に浮上したイランの国家的テロ組織 ISよりも危険な存在、イラン「革命防衛隊」とは(後編)(1/4) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

この執拗な大量暗殺のために、国外亡命グループは壊滅しました。
なぜならほとんど全員が殺されてしまったからです。
このようにイランで専制政治が続く最大の理由は、イスラム原理主義政権にとって代わる民主派勢力を存在させない革命防衛隊がいるからです。

次に革命防衛隊の標的にされたのが、イスラエルです。
コッズ部隊は、中東各国に浸透しました。浸透工作が成功した地域は、イラク、シリア、イエメン、パレスチナで、この地におけるテロ流血事件のすべてに、イランが関わっています。
今回イスラエルをテロ攻撃しているハマス、ヒズボラなどのテロ組織はことごとくイランが育成し、武器と資金を与えたものです。
これらの組織の活動は、革命防衛隊の指令に従っており、革命防衛隊を通じてイラン「最高指導指呼」と直接につながっています。
つまり、中東の騒乱の大元締めがイランの「最高指導者」なのです。

第2に、「最高指導者」は大統領選挙の候補者を選ぶことができます。
え、国民が投票で選ぶんじゃなかったのと思うのは甘い。

その候補の選定は「最高指導者」が行うのです。
こういうのを言葉の正しい意味で「選挙」とは呼ばないはずですが、大統領選挙に出るには、最高指導者の影響下に置かれた「監督者評議会」(専門家会議)の承認を得なければなりません。
この監督者評議会のメンバー12人のうち6人は最高指導者が任命し、残り6人は司法の長が指名します。

ライシが司法の長だった時代に指名した人間がこの6名の中には含まれています。

つまり、「最高指導者」のペット以外に立候補すらできないのです。
しかしメディアはノーテンキに「イラン大統領選挙でライシ当選」などと報じていましたが、こういうカラクリには触れませんでした。
当然のこととして、大統領職は「イラン・イスラム共和国」という看板に偽りありの体裁を整えるためだけの存在にすぎません。
逆に、失敗したら大統領が腹を切ることになります。

ライシは精力的に仕事をこなしていき、長く在任した検察官時代には多くの反体制派の処刑を決定しました。
「検察官」といっても、近代法で裁くのではなく、イスラム原理主義の法典で裁くのです。

たとえばヒジャブです。
日本の「イスラム専門家」たちには、ヒジャブについてイスラム風ファッションだとか、着用の義務はなく自由だという言い方をする者がいますが違います。
女性のヒジャーブ着用はイスラム教という宗教上の義務であり、そこには基本的に「選択の自由」などというものは存在しません。

国家が宗教支配の象徴として着用義務を定めているために、ヒジャーブをしなかったり、着用が既定と少し異なっていることで懲役刑や、それ以上の刑罰に処されます。

22歳のイラン女性マーサー・アミニさんは、ヘジャブの端から髪の毛がでていたというささいな理由で宗教警察(こんなもんがあるんです)逮捕され、拷問死しました。
この痛ましい事件はイラン全土で激しい抗議デモを呼び起こしました。

「一方、クルド系のRudawメディア・ネットワークは、「彼女はヘッドスカーフが原因で警察官に殴打された。彼女の父親は娘の体に拷問の痕跡があったと主張している。彼女が以前に病気を患っていたという情報についても、父親は『娘は完全に健康だった』と述べた」と報じた。また、彼女の治療にあたったクリニック関係者は、「彼女は13日に入院した時に既に脳死状態だった」と証言したという」
(ウィーン発 『コンフィデンシャル9月24日)
10年遅れで「イランの春」到来するか : ウィーン発

アミニさん虐殺抗議行動は、イスラム原理主義政権への抵抗運動でした。

「(CNN) イランで道徳警察に拘束された若い女性の死に対する抗議デモが続くなか、当局は24日までに、街路に平穏が戻るまでインターネット接続を制限すると明らかにした。
イランではマフサ・アミニさん(享年22)の先週の死をきっかけに、数千人が街頭に繰り出して抗議を行っている。
アミニさんは首都テヘランで逮捕され、「再教育センター」に連行された。逮捕理由は頭部を覆うヒジャーブを適切に着用していなかったことだとみられる。
16日以降、テヘランを含む少なくとも40都市でデモが行われた。デモ隊は女性に対する暴力や差別、ヒジャーブ着用義務の撤廃を求めている。
デモは治安部隊との衝突に発展し、数十人が死亡したとの情報もある」
(CNN9月24日)
イラン、ネット接続を制限 女性死亡へのデモで死者増加 - CNN.co.jp

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民主派を大量にクレーンから「吊るした」ので、奉られたあだ名が「ハングマン」でした。
なぜハングマンと呼ばれたかといえば、イランはいまだ公開処刑をしており、死刑囚をクレーンで街中に吊るすという蛮行をいまでもしているからです。
特にひどかったのが、1988年で、実に数千人から数万人といわれるイランの反体制派が短期間に絞首刑とされましたが、その決定をした「死の委員会」の4人のメンバーの指導者が、このライシでした。

ライシの後任はモハンマド・モフベル第1副大統領です。
そうとうに悪相の男です。

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ハメネイ師に近い強硬派 大統領代行のモフベル氏 イラン(時事通信) - Yahoo!ニュース

革命防衛隊上がりのゴリゴリの強硬派だそうで、大統領選挙にも出るようです。やれやれ。

 

2024年5月20日 (月)

ガラントとガンツ国防相コンビ、ネタニヤフ戦時内閣から離脱か

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イスラエルのガラント国防相が、戦時内閣からの離脱を示唆しました。
もし離脱が実行されれば戦争の真っ最中に国防相と前国防相が戦時内閣から出て行くという異常事態となり、戦時内閣は瓦解するでしょう。

ヨアヴ・ ガラントは、ネタニヤフと同じリクードに属しながら、野党の支持もあって、今選挙があれば次期首相の呼び声も高い政治家です。
ネタニヤフとは対照的な考えを持っており、たとえば、ネタニヤフは西岸支配を強化するための司法改革を進めましたが、ガラントは粘り強く反対し撤回させました。

公然と叛旗を翻すのは時間の問題と見られていたようです。

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ヨアブ・ガラント国防相とベニー・ガンツ前国防相
ガンツはギャラントを国防相として復帰させるよう呼びかける - イスラエルの政治 - エルサレムポスト (jpost.com)

今回の戦時内閣離脱の示唆は、前々からくすぶっていたガザの戦後統治のあり方を巡って、ネタニヤフと決定的に対立したからのようです。
ガラントの懸念は、去年10月のテロ発生直後からあったようです。
BBCによれば、対ハマス戦争を遂行する主体であるイスラエル国防軍(IDF)は、この戦争初期の時点で戦時内閣に対して「戦争の計画書」を提出していたようです。


「ガラント氏は、ガザ地区への地上作戦を開始した昨年10月末の時点ですでに、国防省が内閣に戦争の計画書を提示していたと説明。それには「現地主導で非敵対的なパレスチナの統治代替組織を確立する」案も含まれていたという。
ハマスのいない状態は、「パレスチナ人組織が、国際的な組織と共にガザを掌握することによってのみ達成される」と、ガラント氏は述べた。
しかし、この案は一度も議論されず、代替案も提示されていないという」
(BBC5月19日)
ネタニヤフ首相に反発、イスラエル国防相 ガザ地区の戦後計画めぐり - BBCニュース

このIDFの「戦争計画書」がどのようなものかは明らかではありませんが、ガラントのいうことから想像すると戦後のガザ統治まで含んだ中長期的なもののようです。
ここで問題となるのは、なんといっても戦後統治のあり方です。
これを定めて置かねば、戦後のガザは統治主体なき混沌の場と化します。
このような統制の及ばない政治的真空地帯を作ってしまえば、そこには「アラブの春」で各国にISが誕生したような過激組織の温床が生まれるでしょう。
この不安は戦争が拡大するに連れて実体化して、いまやIDFの中にある種の厭戦気分をもたらしているようです。
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BBC ガラント国防相

そりゃそうでしょう。
残虐なテロに対しての反撃をするところまでは多くのイスラエル人の挙国一致でしたが、戦争が長引いて多くのガザ市民が巻きぞいで殺害されて、いまやイスラエルはこともあろうにジェノサイド国家の汚名を着せられつつあります。
しかしハマスの首領は捕まらず、人質は続々と死亡が確認されていき、南部ラファに侵攻かと言う時期を狙ったように戦闘が終結したはずの北部で再びハマスの攻勢が始まっています。
そのうえに仮にガザの戦闘が終わっても、戦後統治が決まらないままにIDFはどこまで続くかわからない治安維持任務に駆り出されます。
たまったもんじゃない、なんで戦争開始の時点でIDFの戦争計画書を戦時内閣が議論しなかったのだ、冗談ではない、これが本音でしょう。
ガラントが考えているのはハマスを放逐し、「パレスチナ人組織が、国際的な組織と共にガザを掌握することによってのみ達成される」(BBC)状態のようです。
ガラントはぼかした言い方をしていますので、「パレスチナ組織」とはいまのアッバスの自治政府を指すのか、それともそれ以外の「穏健な市民たち」で構成される「刷新された自治政府」のか、ならばどうやってその線引きをするのか、あるいは「国際的組織」はアラブ湾岸地域諸国のエジプト、ヨルダン、サウジがこの火中の栗を拾う用意はあるのかなど不透明なことばかりです。
はっきりしていることは、ネタヤフのイスラエル単独でのガザ統治構想に対しての強い批判です。
「ガラント氏は、イスラエル政府が計画を立てられずにいることで、ガザはイスラエル軍と民間人が支配する「危険な道」に向かっていると述べた。
「これはイスラエル国家にとって、戦略的にも、軍事的にも、安全保障の観点からも、ネガティブで危険な選択肢だ」「繰り返すが、私はガザにイスラエル軍による統治体制を作ることに反対する。イスラエルはガザ地区に文民統治を敷くべきではない」」
(BBC前掲)

なお、ガラントの盟友であるベニー・ガンツ前国防相が、ネタニヤフに突きつけた6項目要求は以下です。

「ガンツは、「6つの戦略目標」を達成するために、戦争内閣は「行動計画を策定し、承認しなければならない」と述べた。
1「人質を家に連れて帰れ」

2「ハマスの支配を打倒し、ガザ地区を非武装化し、イスラエルの治安管理を(ガザを)手に入れよう」
3イスラエルの治安管理と並行して、「アメリカ、ヨーロッパ、アラブ、パレスチナの要素を含む、ガザの国際的な文民統治メカニズムを創設し、それはまた、ハマスでもなければ、(パレスチナ自治政府の)アッバス議長でもない、将来の代替案の基礎となるだろう」
4「(ヒズボラの攻撃で避難した)北部の住民を9月1日までに自宅に帰還させ、(10月7日にハマスが標的にしたガザに隣接する)西部ネゲブを復興させる」
5「イランとその同盟国に対抗する自由世界と西側諸国との同盟関係を構築するための包括的なプロセスの一環として、サウジアラビアとの国交正常化を進める」
6「すべてのイスラエル人が国家に奉仕し、国家的努力に貢献する(軍/国家)奉仕の枠組みを採択すること」
ガンツ首相、6月8日を首相の戦後計画策定期限に設定、さもなければ連立政権を断念 |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)

 ガンツの提案は傾聴を値します。
人質の解放、ハマスの粉砕を前提として、北部住民の帰還、西武の拠点としネゲブの復興などの復興プログラムを組み入れています。
これはイスラエルの(おそらく暫定的な)治安管理の下で、「国際的文民統治メカニズム」を作りながら行われると考えられます。
「国際管理」とは、エジプトとアラブ湾岸諸国が加わり、サウジとの国交正常化を意味するようです。
ここでできる暫定政府からはハマスは言うまでもなく、アッバスも排除されるようです。

このガンツ提案は米国案と重なる部分があります。
米国は一貫してイスラエルのハマスをガザから一掃することについては合意しつつも、戦後に恒久的な平和をもたらすためには、西岸地区とガザ地区を合わせたパレスチナ国家設立が必須だと考えています。

この米国プランでは、パレスチナ国家の樹立主体はあくまでも現行のパレスチナ自治政府です。
これを国家承認し、西岸とガザを管理させ、その復興を湾岸諸国と世界諸国が助けるというビジョンのようです。
そして納得しないイスラエルには、ブリンケンはイスラエルがこのプランを受け入れるなら、サウジとの国交正常化を強く推進するというおまけを用意しています。

ガンツ案と米国案の決定的違いはアッバスの扱いです。
ガンツはアッバスを排除していますが、米国は許容しむしろ戦後の主体にしたいようです。
腐り切ったアッバス政府に対する過剰な思い入れに見えますし、ともかくアッパスは西岸の一部しか実効支配していないのですからどうしてガザ全域を代表できるのか不明です

とまれガラントは6月8日までと時間を区切ってネタニヤフに回答を迫っていますので、もし協議が不調な場合、ガラントとガンツは戦時内閣から出ていくことになるでしょう。
ここまで対立が煮詰まってしまったら(戦時下で可能かどうか分かりませんが)、ネタニヤフの信任を問う選挙をしたほうがいいと思います。
この男はなにも決められないまま、ひたすら軍事力だけで押し進もうとしているようです。

ネタニヤフは、オレに最後通牒を出すのか、ハマスに出せぇと吠えています。
逆質問状はガンツの公開質問状の意図をねじ曲げて、ハマスを殲滅したくないのかといっていますが、これは論点ずらしです。
ガンツが言ってるのは、ハマスを粉砕した「後」の状況についてです。
ただパレスチナ国家について、ガンツがあえて不明瞭にしている点をついています。
まぁ、結局ここなのです。

「ネタニヤフ首相は、大統領府を通じて発表した痛烈な声明で、連立相手が「ハマスに最後通牒を突きつける代わりに、首相に最後通牒を突きつけた」と非難した。
ガンツの要求は「イスラエルの戦争と敗北を終わらせ、人質の大多数を放棄し、ハマスを権力の座に残し、パレスチナ国家を樹立する」ことを意味すると声明は主張している。
首相官邸は、ガンツが本当に政府の転覆ではなく、国益を優先するのであれば、次の3つの質問に答えなければならないと主張した。
・ガンツは、ラファでの作戦を最後まで見届けたいのだろうか、もしそうなら、なぜ彼はイスラエル国防軍の作戦中に統一政府を打倒すると脅しているのだろうか?
・彼は、たとえマフムード・アッバースが関与していなくても、ガザにおけるパレスチナ自治政府の支配に反対しているのだろうか?
・彼は、サウジアラビアとの国交正常化プロセスの一環として、パレスチナ国家を支持するだろうか?」
(イスラエルタイムス5月19日)
ガンツ首相、6月8日を首相の戦後計画策定期限に設定、さもなければ連立政権を断念 |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)

やれやれネタニヤフは、聞く耳をもたないという姿勢です。

2024年5月19日 (日)

日曜写真館 あかときの水平らかに花菖蒲

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咲くほかはなき一叢や花菖蒲 阿部ひろし

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いさぎよく散るも叶はず花菖蒲 山本浪子

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その中にサムライブルー菖蒲園 桑原泰子

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仮縫のままで咲いてる花菖蒲 松田都青

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七彩の風のさやかに菖蒲園 大橋淳一

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水染めて舞ひ立たんとす花菖蒲 清水明子

 

 

 

2024年5月18日 (土)

プー・シュー会談の示すものとは

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プーチンと習近平が首脳会談をしました。
もちろん下目のプーが、シューの足下に参上したのです。
プー5期め初の外遊といっても、プーは国際司法裁判所のお尋ね者ですから、行ける国は中国くらいしかありませんがね。

「北京 /モスクワ 16日 ロイター] - 中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は16日、北京で会談し、両国への圧力を強める米国を非難し、防衛・軍事関係をさらに深化させる「新時代」を築くことで合意した。
習氏は、中国はロシアの良き隣人、友人、相互信頼のパートナーであり続けると表明。現在の中ロ関係は容易に実現したものではなく、双方が大切にすべきだと述べた。
5期目の大統領就任後、初の外遊となったプーチン氏は、「われわれは国際法に基づく、多極化した現実を反映した、正義と民主的な世界秩序の原則を守っている」と述べ、中ロの協力関係は特定の国に対するものではなく、世界を安定させる要素だとの認識を示した」
(ロイター5月17日)
中ロ首脳会談、対米で結束 包括的戦略パートナー深化へ共同声明 | ロイター (reuters.com)
「パートナー」なんてモダンな言い方をしていますが、これはシューがプー帝国を中華帝国の属邦としてやったという宣言のようなものです。
共同宣言の内容は、要は米国を中心とする自由主義陣営に対抗して、中露で軍事協力を深化させて「新時代」を作るということです。
「中華」という概念自体世界の中心を意味しますから、「パートナー」という関係ではありえません。
ワン公の世界と一緒で、エライのはオレ様、中華こそが世界の中心、世界からオレ様を慕って来れば褒美をとらせるということです。

今回のプーへの褒美は弾薬の主原料であるニトロセルロースでした。
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NHK

「ロシアによるウクライナ侵攻が長期化する中、アメリカは、中国が軍事転用可能な物資をロシアに提供しているとして懸念を強めています。その1つで弾薬の製造にも使われる「ニトロセルロース」という物資のロシアへの輸出がウクライナ侵攻が始まったおととし以降、急増していたことが中国当局の公表データの分析で明らかになりました。専門家は、ロシアに対する軍事支援と考えられるとしています。
「ニトロセルロース」は、塗料やインクなど民生用として使われる一方、激しく燃焼する性質から弾薬の材料にもなり、軍事転用が可能な物資の1つです」
(NHK5月16日)
中国 ウクライナ侵攻後 ロシアへ軍事転用可能物資の輸出急増 | NHK | ウクライナ情勢

もちろんニトロセルロースは軍事転用可能な物質ですから国際制裁違反です。
もっともチャイナは、他の国に売っている2倍の値段で売っているようですが、制裁を潜って売ってやっているのだから文句言うなということのようです。
ロシアは北朝鮮からは砲弾を、イランからはドローンを、そしてチャイナからは弾丸の材料を売ってもらってやっと継戦しているようです。
ウクライナ戦争の結果がどうなるかはわかりませんが、この借りをどう返すつもりのでしょうか。
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習近平、トランプのために紫禁城をまるごと空けて“皇帝儀式” : 日本•国際 : hankyoreh japan (hani.co.kr)
それはさておき、中華帝国は一貫してこの思想でやってきました。現代も例外ではありません。
上の写真はかつてトランプが訪中した時のものですが、どこを案内したのかご存じでしょうか。
まず、シューが初めにトランプを連れていったのが紫禁城の太和殿前の広場です。 
この広場は皇帝が臣下を拝謁させる場所です。

下の映画『ラストエンペラー』にも登場しましたので、ご記憶の方も多いでしょう。 
こういうかんじの場所を案内することに無意味なはずがありません。

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「ラストエンペラー」

この太和殿こそ、世界の中心を意味する「中華」の、そのまた中華。中国皇帝が、世界の真ん中で権力を叫んだ場所です。 
習はここを貸し切りました。こんなまねが今の中国で出来るのは、彼しかいません。
ホワイトハウス前とは違うのですよ。

次にお茶の場所は宝蘊楼でした。ここは皇帝の宝物殿です。

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トランプ大統領が訪れた故宮の宝蘊楼 百年の歴史誇る西洋風建築物--人民網日本語版--人民日報 (people.com.cn)

皇帝が臣下を謁見する紫禁城の太和殿前の広場で初顔合わせし,そして紫禁城を案内した後に宝物庫である宝蘊楼をみせびらかし、そして夕方からは、紫禁城内の王室公演施設である暢音閣で京劇公演を観覧しました。
ここも皇帝専用の劇場です。
そして演目は孫悟空が出てくる「美猴王」だったそうで、トランプ「王」などは中華皇帝の手のひらのゴクウだといわんばかりです。
この日のしめくくりの晩餐会は建福宮で行われました。ここは清の全盛期の皇帝である乾隆帝が鎮座ましましていた王宮です。

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[コラム]ゴルフ、武器商人、そして皇帝 : 社説・コラム : hankyoreh japan (hani.co.kr)

というわけで、習のおもてなしは中華皇帝尽くしのコテコテの暗喩とも言えない露骨な教育でした。

ところで、この紫禁城の最長の支配者だったのが乾隆帝でした。
ここも重要です。乾隆帝は在位と退位した後の太上皇帝だった時期を合わせると、実に64年間に渡って、中華帝国の主人でしたが、これは中国皇帝として最長の支配期間となり、その間、乾隆帝は10数回の遠征に成功し、最大の版図を築き上げました。

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なまぐさ坊主の聖地巡礼 世界史のミラクルワードルー十全老人・乾隆帝 (fc2.com)

実はこれがシューがイメージする中華帝国の版図です。
いうまでもなく台湾は領土、東南アジアと朝鮮半島全域と沖縄は朝貢国です。
日本とインドはそのどちらでもありません。

さて、習が自分を何になぞらえているのか見えてきましたね。
なぜこのようなものをトランプ「王」にみせたのかはお分かりですね。
自分は中国皇帝、それも乾隆帝であるという示威です。

シューが考える中華帝国と、自由主義陣営とは根本的に相いれません。
中華帝国が考える「法」は、上位者が下位の人民を縛るためのものにすぎません。
上位者、そのトップである支配者の中の支配者であるシューを縛るものはありません。
中華帝国とは、極端な人治国家ですから、権力者が自在に解釈を変更することが可能です。

一方、同じ「法」という言葉を使っていても、自由主義陣営においては「法の支配」(rule of law )を意味します。
「法」が国際的な秩序を定め、様々な取り決めを互いに遵守することが自由主義貿易に参加できる資格でした。
これが法治主義です。

世界で唯一の人治主義の理解者はロシアです。
プーだけが人間であり、その他は農奴でしかありません。
農奴に人権などはありませんから、ツァーリーの命令に従ってウクライナの戦場で生命を散らすのです。

 

 

2024年5月17日 (金)

NHKはただの金融ファンドなので「公共放送」の特権を剥奪すべきです

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何年か前にNHKの人件費だけで、海保全体の予算よりも多いとのコメントをいただいたので調べてみたことがあります。
現在は尖閣の緊張で増額されていますが、海保は2012年度は、全部の人件費、巡視艇からヘリなどの装備費を入れてたった1千732億円でした。
また海保の人員は1万2636人です。

一方、同年度のNHKの職員数は1万354人、人件費だけで1千819億円でした。わ、ははですな。
あってもなくてもいいようなコンテンツを垂れ流すNHKと、連日のように侵入する中国海警や違法漁船と危険を冒して取り締まりにあたっている海保の予算総額は、なんとNHKの人件費より少ないのです(号泣)。
そしてNHKの人件費は予算の3割にすぎません。

しかも職員数は民法の10倍の1万354人、平均給与は1千90万円、退職金は4千万円。うひゃー。
まさに電波貴族です。
しかもこの人件費1千万円超えの給与はNHK本体だけの話。

いくつあるのかわからないほど多数の子会社を持っています。

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くつざわ亮治(クツザワリョウジ) | 選挙ドットコム (go2senkyo.com)

たとえばNHKドラマの大部分を丸投げをしているのは、NHKエンタープライズ(NEP)です。
自社制作を増やせばいいだけですが、このような子会社を多数作るのは、余剰金のストックに使っているからです。

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NHKネット事業、財源議論スタート…「何をどう見るか自由に選べる」時代の公共放送・受信料のあり方とは : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

東経はNHKの余剰金についてこのように述べています。
NHKの『値下げ』と『2倍割増』受信料よりも事業支出が多い構造改革と放送法を考える…(神田敏晶) - エキスパート - Yahoo!ニュース

「2022年9月末時点のNHKの連結剰余金残高は5135億円に達する。
営利を目的としない特殊法人でこの数字というだけでも貯め込みすぎの観があるが、それより注視すべきは8674億円もの金融資産残高だ。剰余金残高の1.7倍近くに上る。
特別な事情で多額の資金流出があった年度を除けば、毎年1000億円を超える事業CF(キャッシュフロー)を生んできた。
そしてその半分強が設備投資などに回り、残りは余資となり国債など公共債での運用に回されてきた。その結果として積み上がったのが、7360億円もの有価証券である。
金融資産は総資産の6割を占めており、このほかに保有不動産の含み益が136億円ある。まるで資産運用をなりわいとしているファンドのようなバランスシートだ」
(神田敏晶 東経前掲)

そもそも、NHKは放送業界最大の自前の放送設備や番組制作のリソースを持っています。
そのうえに全国すべての県にまたがって、その県庁所在地の一等地に大きな自社ビルもあるわけです。
渋谷の放送センターなど、巨額の資金で建て替えるのだと。

なぜわざわざこの巨大な自社資産を使わないで、下請けのNEPに出す必要があるのでしょうか。
このNEPは大変な売り上げを上げている超優良企業です。NHKの名はかぶっていますが、ただの民間会社にすぎません。
このNEPも2015年度売り上げが544億3175万円で、その6割が番組制作費としてNHKから支払われています。
このようなNEPに渡った番組制作費用が正しく使われたか否かについて、国会は監査することができません。

なぜなら、NHK本体は「公共放送」ですから、国民の監査が可能ですが、NEPはただの民間企業ですので、監査の手が及ばないのです。
一般企業ならば一般株主の監査要求ができますが、なにぶん株主はNHKが独占しています。
つまり、NHKは経費の80.7%を占める番組制作・発送経費の多くを、監査不可能な民間会社に出しているのです。
これで「公共放送」とは、とんだ言い草ではありませんか。

 

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http://www.dempa-times.co.jp/housou/2017/0120-01.h...

つまり、NHKは自社内部に余剰金として毎年280億円もの金を溜め込み、そのうえに営利目的のNEPを作って、そこをもうひとつの「隠し田」にしています。
「隠し田」は領主からの年貢を避けるために農民が秘かに作った田んぼのことですが、NHKは領主である国の眼、つまりは監査から逃れるためにNEPのような「隠し田」を増やしていったのです。
またこのNEPはNHKの天下りが大半を占める意味でも、NHKにとって二重に美味しい「隠し田」なのです。

現在の放送業界は、視聴率最下位に転落したフジを見ればわかるように、制作コストの切り詰めから、さらに下請けの番組会社を圧迫することでコンテンツがいま以上に貧しくなるという悪循環に陥っています。
しかしこのNEPという番組制作会社のみは、バラ色の未来が拡がっています。

説明する必要もないでしょうが、親方NHKが税金まがいの視聴料徴集が可能で、それを気前よく下請けに丸投げしてくれるのですから、永久に鉄のお茶碗で飯がくえるからです。

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NHK

ちなみに、NEPはビデオやキャラクター商品の販売までやっていますから、「公共放送」が作ったコンテンツの二次利用で二度おいしい思いをすることすら可能です。
また、すこしでも儲けを増やそうとして韓国から格安の韓流ドラマを仕入れるという悪習を放送業界に取り入れたのも、このNEPでした。
2004年の『冬のソナタ』に始まり、わけのわからない朝鮮王朝ものをはやらせたのが、この「公共放送」の独占的下請けでした。

「公共放送」を自称するならば、日本の優秀な演出家や俳優を起用すべきなのに、このていたらくです。
フジはこれを模倣したあげく、ドラマ制作力を喪失して今の体たらくとなったのはご存じのとおりです。

NEPはこの版権を親会社NHKに独占的に売り込み、そこでもまた膨大な収益を得ました。
このような下請けは13社にも登り、その中にはNHKアイテックという発送設備整備会社まで含まれています。

NHKアイテック - Wikipedia

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ここも余剰金を154億円積み上げていています。
この会社の腐敗ぶりもなかなかで、2人で2億(!)という巨額着服事件まで発生しています。
それにしても作るのは子会社、電波を発送し、保守点検するのも子会社、では親会社は一体なにをする所なのでしょうか。

NHKは「公共放送」であるが故に、格安の価格で電波帯を多数押さえ、視聴料を強制的に徴集する権利を得ています。
テレビ局が支払っている電波利用料は、携帯電話会社の実に13分の1という破格な価格に据え置かれているのも、この「公共性」が認められているからです。Photo_6

 

しかし「公共性」の内実はご覧のとおりです。
会計検査院は2015年度のNHKに対する監査で、NEPのようなNHK子会社13社の利益剰余金総額を948億円あるとし、NHKに対してこの剰余金の性格を明瞭にすべきであるとの監査報告を出しています。
NHKが既に健全な「公共放送」としての性格を逸脱し、ただの官許独占企業、あるいは金融ファンドになっています。
そしてさらに貪欲にPCにまで受信料という税金をかけようとしているのですから、たまったもんじゃありません。
いまやNHKの実体は、ただの金融ファンドなので「公共放送」の特権を剥奪すべきです。

NHKは大正時代に作られ、放送法も70年間改正されないまま放置されています。

放送法
第1条 この法律は、次に掲げる原則に従つて、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。
1 放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。
2 放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。
3 放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。
放送法 | e-Gov法令検索

読めばお分かりのように、「放送が国民に最大限普及することを保障する」なんて時代は半世紀前に終わっています。
つまり公共放送を作る目的は、放送が未発達だった時代に適合したものなのですから、いまや解散して当然です。
また「不偏不党」などと白々しいことを言われても困ります。
そして巨額の余剰資金の蓄積にもかかわらず、まったく視聴者に還元せず、私腹を肥やし続け、さらに貪ろうという根性。

つまりもうとっくにNHKは「公共の福祉」のための公共放送であることを止めたのです。
視聴料という「税金」を廃止し、一企業として電波帯の独占を排除し、あたりまえの競争にさらして余剰金を吐き出させ、普通の放送局として出直す時期です。

2024年5月16日 (木)

ワニの口論の破綻

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財務省には世界でも稀な奇習があって、国債を60年で償還するべしという自主ルールを作っています。
この償還のためだけに「債務償還費」として一般会計のなんと17.5%も使っています。
財務省の広報紙である日経はこんなことを書いています。

「財務省が2023年度予算案をもとに歳出や歳入の見通しを推計する「後年度影響試算」が17日分かった。国債の元利払いに充てる国債費は26年度に29.8兆円と、23年度予算案から4.5兆円ほど膨らむ。足元の長期金利を加味し利払い費の見積もりに使う10年債の想定金利を1.6%と前回試算から引き上げた」
(日経2023年1月17日)
国債費、26年度に4.5兆円増 財務省が想定金利1.6%に: 日本経済新聞 (nikkei.com)

「防衛費増額の財源を巡る自民党の特命委員会が16日に始まった。歳出改革や税外収入など増税以外の財源を模索する。国債の「60年償還ルール」見直しで財源を捻出すべきだとの案も浮上する。償還期間を延長・廃止しても、浮いた国債費を防衛費に使えば借金は膨らむ。借金返済の担保が消えれば、市場の信認を失う恐れもある」
(日経2023年1月16日)
防衛財源確保、「国債60年償還」延長論も 自民が本格議論: 日本経済新聞 (nikkei.com)

ふーん、「国債の償還ルールを守らねば、借金は膨らむ」ですか。
想定金利も1.6% だそうで、なにが根拠かしりませんが、目一杯上振れしています。
ここで日経が「4.5兆円膨らむ」と書いているのは、財務省が債務償還費まで含んで計算しているからです。
この債務償還費は、ただ積んでおくだけの予算で、なににも使い道がありません。
もちろん例によって、これも法律の定めでもなければ、論理的根拠も怪しいもので、勝手に財務省が前例踏襲しているだけの因習にすぎません。
これができたのは日露戦争の頃のことで、当時戦費が枯渇していた日本が、国債市場で国債の信任をとりつけるために作った苦肉の策だったのが始まりです。
そんなものを1世紀も後生大事に持っている財務省はなんと物持ちがいいんでしょうか。

「国債は10年などの満期が来ると、返済する必要があるが、一度に現金で償還することは難しい。このため、大部分は借換債と呼ばれる国債を出して借り換えた上で、毎年の現金償還を国債残高の約60分の1(1・6%)とするのが「60年償還ルール」だ。1966年度に建設国債の発行開始と同時に始まった日本の減債制度で、道路などの平均的な耐用年数から60年とした。戦後の日本の財政制度の根幹をなすルールだ」
(朝日2023年1月11日
国債の返済ルール見直し検討へ 防衛費の財源確保狙い、財務省は警戒 [自民]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

この60年償還ルールという奇習に、日本で最初に気がついたのはエコノミストの会田卓司氏(クレディ・アグリコル証券チーフエコノミスト) でした。
21世紀政策研究所より政策提言報告書「中間層復活に向けた経済財政運営の大転換 

この中で会田氏は、1990年以降、一般会計の歳入と歳出のギャップが拡大しているという財政危機を語る人が必ず使う図を引き合いにだして説明しています。
下のグラフだけ見ていると、財務省 の言うように収入と支出の差がどんどん開いているように見えてしまいます。
この開いた口が歳入と歳出のギャップで、俗に「ワニの口」と呼ばれているものです。
なんだか日本がワニに呑み込まれそうでコワイですね。

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岡三証券 

さて、ここで会田氏が指摘しているのは、こんな「ワニの口」ができる原因についてです。
会田氏はこれが日本の財政運営における「60年償還ルール」にあると喝破しました。
実は、日本の予算(一般会計歳出)には国債の償還費が含まれているのです。
なんと日本は、現在の負債を60年後までに完済することができるようにせっせと毎年国債の元本を積み立てています。

ヘンな話です。60年というのは減価償却の発想から生まれています。
減価償却年数を定めで、積み立てていくわけです。
まるでサラリーマンの住宅ローンみたいな発想です。
しかしよく考えて見てください、庶民は60年後には死んだりリタイアするかもしれませんが、国家はなくなりません(あたりまえだ)。
だから国家が発行する国債は、60年たったら借り換えして先延ばしていけばいいのです。
世界中の国はそうやっています。

しかし日本だけは頑固にこの奇習を守ってきました。
するとこういう項目が予算に堂々と記されることになります。
右が米国の予算ですが、左の日本の予算のように「債務償還費」などという項目はありません。
これが世界ひろしといえど、日本にだけしかない「60年償還ルール」です。

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岡三証券


「日本政府は国債残高の数%を毎年償還(形式上は返済)してほぼ同額を国債発行(形式上は借入)によって賄う--つまりは債務の借り換えを行っています.どうせ借り換えをしている,さらに別に満期がきたわけではないのだなら借換をする必要もないのに,償還の部分は歳出(=出費)扱いをして,一方の借り換えの部分は歳入(=収入)として取り扱わない.この不可思議な慣習が生んだのが「ワニの口」なのです.
ちなみに米国の予算ではこのような不思議な取り扱いは行われません.景気過熱を防ぐために積極的に債務償還が必要……といった場合以外では歳出として扱われるのは利払い部分のみです.つまりは下図の赤色部分だけ日本の一般会計歳出は「盛られ」ている」
(飯田泰之2022年6月3日 )

ですから、このおかしな積み立てを止めれば、歳入と歳出のバランスは至って健全なものに変わります。
グローバルスタンダードにしてみるとこうなります。

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岡三証券

あら、不思議。ワニの口などどこかに消えてしまいました。
あるていどの経済成長がされれば、歳入と歳出の差は縮まっていくもので、コロナで大盤振る舞いした米国ですら景気がよいので財政環境は持ち直しています。

だからこの不思議な「60年償還ルール」をやめれば、1兆円など簡単にでてきます。

飯田氏はいみじくもこう述べています。

「ここからも,そもそもこれらのルールは「何か論理的な意味があって存在する」わけではなく,「なんとなくそれっぽい数字を並べて権威付けしているだけ」というのがわかります.
 財政関連ってこの手の「無駄な作法」がやたら多いんです.例えば,徳川幕府では会計を米方(米の収支)と金方(金銀の収支)にわけていましたが,両者の間には謎の繰り入れルールが入り乱れ・・・。
この手の「お作法」って何のためにあるのか.正直,ルールを複雑化して政治家(江戸期なら将軍・老中)が官僚の仕事に口出しできないようにするために存在するんじゃないかしら.いわば実務官僚の「お仕事の知恵」「処世術」と言ってよいのかもしれない」
(飯田前掲)

まったくそのとおりです。
岸田氏の防衛増税論は不毛そのものでしたが、こういう財務省の因習が分かったのだけは、よかったかもしれません。
財務省はたかだか1兆円を騒ぎ立てたために、とんだ藪蛇でした。


2024年5月15日 (水)

恒久財源だってさ

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岸田さんは深~く財務省の洗脳を受けておられる方です。
親族には財務省関係ばかり、鈴木財務大臣も親戚です。
あまり頻繁に増税をいいすぎたために、とうとう「増税めがね」という愛称までつけられてしまい、以来、増税という知恵の足りない表現から社会保障の負担を増やしていくというやり方に変更しました。
昨今でいえば、「子供・子育て支援」という名目で「ステルス増税」したことなど典型です。

え、増税じゃないって。いえいえ、誰でもウーもスーもなく払わねばならない医療保険の負担を増やすのですから、言い方が違うだけで実質増税とかわりありません。

「政府は公的医療保険制度を活用することを決めた。理由について、もっとも幅広い世代の人が保険料を支払っていること、少子化や人口減少に歯止めをかけることができれば、社会保障に関わる制度全体の持続可能性も高まること、企業も負担することを挙げる。
つまり社会全体で子どもや子育てを支えようということだ。
加入者1人あたり平均月350円~600円。
子どもなど扶養されている人を除いた「被保険者」で試算すると最も高い場合は950円。
少子化対策の一環として、政府が公的医療保険を通じて集める「子ども・子育て支援金制度」」
(NHK2024年3月29日)
「子ども・子育て支援金」であなたの負担はどうなる? 加入者1人平均月350円~600円 被保険者 最高950円 | NHK政治マガジン

じゃあどれだけ足りないんだといえば、わずかなもんです。

「「子ども・子育て支援金制度」は2026年度から始まり、初年度は6000億円、2027年度は8000億円、2028年度以降は1兆円が徴収される予定だ」
(NHK前掲)

たった1兆円など、税収の上ぶれで吸収できてしまうような額です。
「防衛増税」の時も同じでした。
防衛費を増やすというのはいいのですが、その手段となるとパブロフの犬よろしくすぐに「広く国民にご負担を」、つまり増税となります。

財務省はなんと税収はゼロ成長を前提にしているのです。
日本経済はゼッタイに成長しない、しないといったらしない、なぜなら財務省が成長しそうになると潰すからだ、ということのようです。
いつも景気が回復しそうになると消費増税をしかけて成長の芽をつぶしてきていたのでヘンだとは思っていたのです。
案の定、彼らには彼らしか通用しないロジックがありました。それが「税収弾性値が1.1」ということでした。
税収弾性値とは、「名目GDPが増えた時に税収がどの程度増えるか」という予測値のことですから、財務省の1.1とはゼロ成長で経済を考えていたわけです。

経済を回復させれば税収が増える、という子供にも分かるこの理屈が、東大法学部出身のエリート官僚の皆さんには理解できないようです。
彼らは経済はずっとデフレでけっこうと思っていますから、景気をよくする、雇用を増大させる、収入を増やして個人消費を伸ばすという平々凡々たる経済の道筋が見えません。
仮に景気が上振れして税収が伸びたとしても、そんなことは一時的なこと、税率を高く設定せねば財政は健全化しないぞ、だから税率を高くせねばならないのだ、ありとあらゆる機会を逃さずに増税を、くらいに盲進しています。
与野党を問わず、議員の大半もこの信徒だから困ったもんです。
これが、昨今首相がよく口にする「恒久的財源」論です。

もちろん現実には、税収の伸びが1.1なんてことはありえません。
下図は90年代後半に消費税増税をして以後の、過去15年間の一般会計税収ですが、名目GDPが増えれば税収は1.1どころか3倍ちかくに増大することがわかっています。

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一般会計税収の推移

ですから経済に冷や水を掛けなければ、1兆円ていどの税収不足など軽く自然の税収増だけで得られてしまいます。
2021年度の一般会計決算概要によると、国の税収は67兆378億8500万円と過去最高だった20年度の税収(60兆8216億400万円)を更新しました。
しかもこのコロナ不況の真っ最中で個人消費がメタメタであったにもかかわらず、予想を3.1兆円も上回りました。しかも2年連続です。

普通に考えれば景気が回復すれば税収は今回の3.1兆円上振れしたようなことが起きるはずですが、彼らの税収弾性値では1.1しか成長しないはずなので、常に財政危機なのです。
経済学者の飯田泰之氏が言っていますが、「何か論理的な意味があって存在するわけではなく、なんとなくそれっぽい数字を並べて権威付けしているだけ」のこけ脅かしにすぎません。

岸田氏は政権の人気浮揚に腐心しているようですが、これも簡単。
オレは増税はしないと言い切ればいいだけです。
もちろんモロモロの負担増もなしでね。

2024年5月14日 (火)

NHK「国の借金論」をまた蒸し返す

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今、6月のいわゆる骨太の方針を巡って追い込みの時期に入っています。
こういう時期にかならず出てくるのが、「基礎的財政収支の(プライマリーバランス)の黒字化の時期」です。

「財務大臣の諮問機関が、政府がまとめることしの「骨太の方針」に向けた議論を始め、焦点となる財政健全化の目標をめぐり、財政の現状などについて意見を交わしました。
財務大臣の諮問機関、財政制度等審議会は、政府が例年、夏までに「骨太の方針」をまとめるのを前に提言を提出していて、5日、ことしの提言に向けた議論を始めました。
会議では、政府が2025年度の黒字化を目指す「基礎的財政収支」という指標について、ことし1月に行った試算では、高めの経済成長を想定した場合でも、2025年度には1兆1000億円程度の赤字が見込まれることが説明されました」
(NHK2024年3月5日)
財政審「骨太の方針」ことしの提言に向けた議論を開始 | NHK | 財務省

この中で死滅したとばかり思っていた「国の借金」論を、NHKがまたもや蒸し返しています。
たぶんこういうことを言う委員が、かなりの数いるということです。

「国債や借入金などをあわせた政府の債務、いわゆる“国の借金”は、ことし3月末の時点で1297兆円余りと過去最大を更新し、財政状況は一段と厳しくなっています。
財務省によりますと、国債と借入金、それに政府短期証券をあわせた政府の債務、いわゆる“国の借金”はことし3月末の時点で1297兆1615億円と8年連続で過去最大を更新しました。
去年3月末と比べた1年間の増加額は26兆6625億円となり、財政状況は一段と厳しくなっています。
昨年度は防衛費や社会保障費が増えたことに加え、ガソリン補助金や低所得者世帯への給付金など、物価高対策を盛り込んだ13兆円を超える補正予算を編成した結果、国債の発行が積み重なりました」
(NHK2024年5月10日 )
“国の借金” 1297兆円余 8年連続で過去最大を更新 財政厳しく | NHK | 財務省

へぇー、今どき「国の借金」だなんて堂々と言うとはやるな、NHK。
もちろん冒頭から間違っています。
政府債務は「国の借金」ではありません。
そして「借金」という一般家庭の財布と、「国の借金」を意図的に混同して使うという初歩的誤謬をしています。

では、「国の借金」とはなんでしょうか。
一般家庭には債権を発効できませんが、国家は国債を発効する権限を持っています。
ここが一般家庭の家計と国の財務を一緒にしてはならないポイントです。

しかも日本国債はすべて内国債といって、すべて自国通貨建て(円建て)です。
国債が日本で破綻するとすれば以下の条件が揃った時です。

●国債が破綻する原因
①国内投資家が国債を買わなくなること。
②外国投資家が国債を買わなくなること。
③中央銀行(日銀)が国債を買わなくなること。

では、国債の保有者はだれなのでしょうか。
この「国の借金」論の出元である財務省自身がこんなグラフを出しています。

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saimu2023-1-3.pdf (mof.go.jp)

●国債引き受け主体
・中央銀行(日銀)   ・・・47.90%
・保険・年金基金    ・・・19.06%
・預金取扱機関(市中銀行)・・10.92%
・社会保障基金     ・・・4.50%
・海外         ・・・13.51%

国民が「預金取扱機関」(市中銀行)に預けた資金を日銀に預け、そこから日銀は国債を買っています。
つまり一般国民が国債を買っているということです。
海外は13.51%しかないうえに、円建てですので怖くありません。
したがって、日本国債は世界でも稀なくらいにデフォルトする確率が低い国債なのです。

え、国債が満期になったらどうするのか、って。
国には寿命がありませんから、借り換えればよいだけです。

日本国債は絶対に破綻しませんから、ナニかあるごとに財政負担がぁ増えてぇ、国の赤字を先の世代に残してはならないぃなどと言う増税派には警戒のほどを。
こういう人たちは国の借金を返すために政府は無駄遣いをやめ清く正しく緊縮せねばならない、それでも足りないから恒久的財源確保のために増税やむなしという議論に誘導したがります。

自国建て国債でデフォールトした国は、世界広しといえどありません。
破綻するのは、常に自国建てができない経済しか持たない国です。
なによりも一目瞭然なのは、現在の国債の利回りは10年債で0.28%、20年債でようやく1%をわずかに超えて1.103%、最も長い40年債ですら1.564%に過ぎないことを見れば、理解できるはずです。
ちなみに、下図はちょっと古い2018年のものですが、ブラジルは10%超え、米国ですら2.9%です。
日本は金利0.062%ですから、まちがいなく世界一の低利の国債でしょう。
金利が高い国の国債はリスキーだからです。

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No.3793 世界各国の10年国債利回りです… - シャープ1億にモノ申す部屋 - FX、為替掲示板 - Yahoo!ファイナンス掲示板

かつてカンという無知な男が、財務省からギリシアになるぞと脅かされたという話がありましたが、そんなことにはなりようがありません。
ちなみに民主党政権がやったことは、財務省のレクチャーどおりに事業仕分けという名の歳出カット祭りと、東日本大震災の復興財源と称しての復興増税でした。
消費増税も民主党時代の悪しき遺産です。
ホント、民主党ほど財務省にいいなりの党はなかったのですが、みなさんもうお忘れか。

国債依存になるとハイパーインフレになるということが言われましたが、なりません。
いまの日本のインフレは、欧米のそれと較べようがないほど微弱なインフレにすぎません。

今、日本の円安インフレは日米の金利差から生じているもので、際限なく亢進するものではありません。
そんなことになれば、日本の主力製造業は世界のシェアを奪い尽くしてしまいます。
原油高による電力価格の上昇は避けられませんが、なんの原発を少し余分に動かせばいいだけの話です。


 


2024年5月13日 (月)

自衛艦、白昼堂々と中国にドローン撮影されてしまう

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横須賀軍港に停泊中の自衛艦「いずも」が、中国人にドローンで上空から撮影されていたというので大騒ぎになっています。

「防衛省は9日、中国の動画サイトに投稿された、海上自衛隊の基地で護衛艦ドローンで撮影したとされる動画について、「実際に撮影された可能性が高い」とする分析結果を公表した。
問題の動画は、法律でドローンの飛行が原則禁止されている横須賀基地で、停泊中の護衛艦「いずも」をドローンで撮影したとされ、SNS上で拡散された結果、日本の安全保障への懸念の声が上がっていた。
防衛省はこの動画について様々な分析を進めた結果、「実際に撮影された可能性が高い」との見解を公表し、「防衛関係施設に対してドローンにより危害が加えられた場合、我が国の防衛に重大な支障を生じかねないことから、分析結果を極めて深刻に受け止めている」との認識を示した」
(FNN5月9日)
【速報】海自護衛艦「いずも」ドローン動画「実際に撮影された可能性が高い」防衛省が分析結果を公表 再発防止へ対策(FNNプライムオンライン(フジテレビ系)) - Yahoo!ニュース

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FNN

撮った人物は中国人で、堂々とインタビューに答えています。

「10日までにSNSを通じた取材に対して、ドローンを飛ばして撮影したことを明らかにし、「注目を集めるために動画を投稿した。(基地周辺での無許可のドローン飛行が)禁止されているのは知っていたが、楽しむために危険を冒した」と釈明した。
撮影の際には「妨害を受けなかった」と主張し、撮影日時やドローンの発着場所については「詳細は明かせない」と回答した」
(ZAKZAK5月11日)
「注目集めるため」海自護衛艦「いずも」ドローン投稿者のあきれた釈明 撮影後は中国滞在 身の危険を感じ「もう二度としない」 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

この人物はすでに日本を出て中国にいるそうです。
その筋の人物かどうかは不明ですが、じぶんの国で同じことをしたらその場で撃ち殺されます。
まぁ「その筋」ならSNSには流さんだろうけどね。

伊藤俊幸元海将が言っていましたが、これが今ウクライナで頻繁に使われている自爆型ドローンだったら、「いずも」の甲板に大穴を開けられていたところです。
電子装置類によっては代替が効かないものもありますから、海自さんのどかな顔をしないで下さいね。

たとえ偵察だとしても、自衛艦隊の軍港を見れたということは、その隣の米海軍第7艦隊軍港も撮影可能だったということですから、米国は冷やかに日本を見ることでしょう。
日米同盟の弱点は、自衛隊の装備や練度ではなく、セキュリティクリアランスやこういうドローン対策ができていないような機密保持の甘さなのです。
とまれ、これで東アジアで西側最重要の軍事拠点を自由に中国がドローン撮影できるということを、世界に知らしめてしまいました。
ため息が出ます。

伊藤氏は元呉地方総監らしく、なぜ「いずも」が直ちに報告を上げて来ないのか、SNSに上がってから事後報告することを嘆いていました。
というのは、「いずも」は当然のこととして当直士官以下の乗員が、このドローンを目撃しているはずですから、これを脅威だと考えないほうが鈍いのです。

といっても、自衛艦側がナニをできるというわけでもないのが日本の実態です。
いちおう「小型無人機等飛行禁止法」という法律はあります。
小型無人機等飛行禁止法関係|警察庁Webサイト (npa.go.jp)

いちおうドローンを飛ばしてはならない地域も指定してあります。

●小型無人機等禁止法に基づき指定する施設
・国の重要な施設等、国会議事堂、内閣総理大臣官邸、最高裁判所、皇居等危機管理行政機関の庁舎
・対象政党事務所
・対象外国公館等
・対象防衛関係施設(令和元年改正で追加)

・対象空港(令和2年改正で追加)
・対象原子力事業所

総理大臣官邸はかつて屋上に降りられたことがありました。
軍事施設はもちろんアウトです。
ただし、これは絵に描いた餅です。なぜなら、罰則既定があるだけだからです。

小型無人機等飛行禁止法第11条第1項に基づく警察官の命令に違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金 に処せられます。

はいはい、これではなにも言ったことにはなりません。
この法律には、重要禁止区域に侵入したドローンを落せとは書いてないからです。
もちろん法律に、日々進化するドローンとその対処の技術的なことを書く必要はありませんが、撃墜することを視野に入れた条項でなくては抑止効果はゼロです。
だって、この中国人のように見つからなければいいだけだと思う奴は後を断たないでしょうからね。

では、落す方法はあるのでしょうか。
先日ニュースでお巡りさんが昆虫採集の網持って右往左往していましたが、論外です。
軍事施設だからといって、住宅地の近くにあるのですから銃で撃つわけにはいきません。
発見すると言っても艦載レーダーは近隣の施設や住宅地に電波障害を引き起こすのでダメだそうです。
人の目にはかぎりがあります。

しかし大丈夫。
東芝のHPには、このようなものをランンアップしています。

20240512-092845

対ドローン セキュリティシステム | 電波システム | 東芝インフラシステムズ (global.toshiba)

なぁーんだ、あるではないですか。
防衛施設用のシステムも開発済みのようです。
防衛施設向け運用例 | 電波システム | 東芝インフラシステムズ (global.toshiba)

ちなみに三菱電気にも似たシステムがあります。
防衛省の担当官は、明日にでも東芝に飛んで行きなさい。
法整備も急ぐことです。

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