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2020年1月19日 (日)

日曜写真館 少し派手な太陽もいいかなと

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今日は珍しくハレーション気味です

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印象派風にはなかなかいきません

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少しこわいような日の出です

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水上の林の向こうから太陽が昇ります

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厚い雲をこじ開けるようにして太陽が顔をのぞかせました

 

2020年1月18日 (土)

ワクチンを家畜防疫員(獣医)だけのものにするな

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おとといにも転載しましたが、琉球新報が便利な感染経路図を作ってくれたのでご覧になって下さい。

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琉球新報

初発はうるま市の農場ですべてはここから始まっています。
今後農水省から報告書が出るでしょうが、これら発生農場には共通点があります。

①同一の経営者
②近隣農場
③共通の堆肥施設を利用

いったん海外悪性伝染病に侵入を許すと、家畜・ヒト・モノを媒介してどんどんと感染を拡大していきます。
豚は群飼しますから、一頭の感染がまたたくまに(おそらく一晩で)その群すべてを冒し、更に別の群へと飛び火していきます。
いったんこのような連鎖感染が開始されると、江戸時代の破壊消防のように燃え広がらないように火事場近くの家を壊したような殺処分をするしかてがなくなります。
つまり、発生源からリング状に豚がいない空白地帯を人工的に作るのです。
ここまでは陸自の力でなんとかこぎ着けました。

そしてさらに他の清浄区にも飛び火を防ぐために緊急ワクチンを投与します。
今、ここでストップしている段階で、これを急がないとまだ感染していない豚に抗体が発生せず、無防備状態が続いてしまいます。
おそらく来週初めの対策会議でやる方向にはなるとおもうのですが、国は既に沖縄県に緊急備蓄してあったワクチンを持ち込んでいるはずで、今度は誰がそれを打つのかということになります。

現行では家畜防疫員という資格が必要です。聞き慣れない用語ですがこれは獣医のことです。
「宮崎人」さん(獣医師でいらっしゃいますが)の下のご指摘のとおり、豚コレラワクチンはこの家畜防疫員、つまりは公務員獣医師しか打てません。

「今回の豚熱に対するワクチン接種は、家畜防疫員が、実施するそうです。つまり家保の先生が実施します。民間の獣医師は出来ません」

宮崎人さんのおっしゃるように、感染拡大が始まると、獣医は目のまわるような忙しさになります。
発生動向を調査、殺処分だけでおそらく50人程度の県の公務員獣医は身体がふたつほしいような状況のはずです。
だから発生動向調査のほうに手抜かりが生まれる余地が出てしまいます。
その上に、ワクチンを獣医がしろだと冗談もほどほどにしろ、これか偽らざる現場の声のはずです。

こうなってしまったのには理由があります。
そもそも農水省は海外悪性伝染病全体についての緊急ワクチンの投与そのものを否定してきました。
農水省豚コレラ緊急指針にもこう麗々しく書き込まれています。

農水省豚コレラ緊急対策指針
「第13 ワクチン(法第31条)
1 豚コレラのワクチンは、感染を防御することができるが、無計画かつ無秩
序なワクチンの使用は、清浄性確認の際に支障を来たすおそれがある。
このため、ワクチンの使用については、慎重に判断する必要があり、我が
国における本病の防疫措置は、早期発見と患畜及び疑似患畜の迅速なと殺を
原則とし、平常時の予防的なワクチンの接種は行わないこととする。

「清浄性確認に支障をきたす。殺処分一本でいけ」というのは、農水省の昔からの言いぶんですが、なにぶん古い。
昔のOIE(国際獣疫事務局)の見解のコピーにすぎず、OIEすらとうに方針を転換しています。

ほんとうの感染と見分けがつかないだとか、接種したら肉が食えないだの、接種範囲が決められないだの、輸出がしんどくなるだの、獣医師が足りないなどとグダグダと言っていても、その気になってやれば、要するに出来るのです。
この中でも特に最後まで固執した理由が、ワクチンをすると自然感染との区別がつかないということでした。
ワクチンを接種するととホントに自然感染した個体と、ワクチン接種した個体に同様に抗体が出来てしまって見分けがつかなくなり、診断が不可能になる、というわけです。

一見もっともらしい理由ですが、ほとんどウソです。
マーカーワクチンを使えば、瞬時でワクチン由来か否かは判別できてしまうからです。
マーカーワクチンはNSP抗体という特殊なものを作るために、自然感染かワクチンによる感染かは簡易検査キットで容易に判定できます。
こんな簡易検査キットはいまから20年も前にできていて、OIEも2002年の総会でNSP抗体陰性が確認されれば6ヶ月で清浄国に戻れるという条件を承認しています。

非清浄国から輸入が増えると言いますが、半年で清浄国に復帰できるのですから、現実にはわずかそれだけの期間で輸出体制を整えられる国はありません。
逆に輸出にしても、そこまで日本は豚肉輸出に依存していませんから、実害は少ないはずです。

このような反対のための反対と化した農水省の考えがあるために、わが国は緊急ワクチンは邪道とでもいわんばかりの固定観念に支配されていました。
ですから下のグラフをみると全国の自治体においても判断にバラつきがあります。

「国が示した豚への予防的なワクチン接種を可能にする防疫指針案は、イノシシから豚への感染リスクが高いエリアを「接種推奨地域」とし、都道府県知事が接種を認めるとしている。接種推奨地域は、野生イノシシの感染状況や生息状況、周辺の農場数などの環境要因から、専門家の意見を踏まえて設定する見通しだ」(日本農業新聞2019年10月10日)

農水省は野生イノシシの発生があるなしで分けていて、その表現も「推奨」ですからやってもやらなくてもいいよといわんばかりです。
野生イノシシに県境はないのですから、全国で統一した緊急ワクチン指針が必要で、やらない県には家伝法違反を問える法的たてつけがいるのです。

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日本農業新聞 https://www.agrinews.co.jp/p48960.html

しかし現場の農家、特に発生を見た地域の農家は圧倒的にワクチンを要望しています。

「昨年9月に岐阜市の養豚場で国内26年ぶりに発生した豚(とん)コレラ対策として、東海3県の養豚場などで25日に始まったワクチン接種。胸をなでおろす農家が多かった一方、ある感染農家は「自分の豚が殺されたことが悔しい。もっと早くワクチン接種に踏み切ってほしかった」と怒りをにじませた」(毎日2019年10月25日)

うれしいことに、江藤大臣になって大きくワクチンに舵を切りました。

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江藤拓農相は20日、豚コレラの感染拡大を食い止めるため、飼養豚への感染を予防するワクチン接種を可能とする防疫指針の改定作業に着手すると表明した。改定すれば都道府県知事の判断で接種できるようになるが、接種地域の設定などクリアすべき課題は多い。(略)
現行の防疫指針は予防的ワクチン接種は認めていない。江藤農相は指針の改定に踏み切った理由について、昨年9月の国内での初確認から1年が経過したことや関東の養豚地帯に感染が広がる懸念があることを挙げた。
 防疫指針を改定するには今後、接種する地域や接種の順序、接種した豚の流通規制をどうするかなどを定める必要がある。農水省は、食料・農業・農村政策審議会牛豚等疾病小委員会で検討していく」」(日本農業新聞2019年9月21日)

この江藤大臣の英断で大きくワクチン容認へと変化しようとしていますが、いまだワクチンの実戦的使用を想定しているとはおもえない縛りが存在します。
それが家畜防疫員に接種作業を限定している縛りです。

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https://www.youtube.com/watch?v=hx4SFi0jcWg

ワクチンなんか農家が日常作業としてピスターを使って接種しています。
誰にでもできる仕事なのです。
これは殺処分と一緒で、家畜防疫員は指示書を発行し、せいぜいが立ち会うていどのことに済ませるべきです。
実際やるのは県職員でもボランティア誰でもいいのです。

来週からワクチン接種は始まることと思われますが、家保獣医にしかやらせないとなると、終わるはいつの日になることやら。
これでは緊急対策になりっこありませんね。
他県の家保獣医を借りてくるしかありませんが、どうするつもりなんでしょうか。

 

■追記  広島高裁が伊方原発3号炉の仮処分決定をしました。

「愛媛県にある伊方原子力発電所3号機について広島高等裁判所は、地震や火山の噴火によって住民の生命や身体に具体的な危険があるとして、運転を認めない仮処分の決定を出しました。現在は定期検査のため停止中ですが、検査が終了する4月以降も運転できない状態が続く見通しになりました。伊方原発3号機が司法判断で運転できなくなるのは平成29年以来、2度目です」(NHK1月19日)

原発や今回の海外悪性伝染病の防疫などに、専門家以外をかかわらせてはダメだということです。
これではなんのために専門家による規制委員会という3条委員会をつくったか分からなくなります。
今まで数年をかけて規制委員会が審査しても無意味です。
司法が規制委員会の上に君臨してしまい、短い審理でちゃぶ台返ししているのですからたまったものではありません。

高裁の言っている理由は阿蘇山の噴火。(またかい)
九州が壊滅するようなことを想定すること自体がナンセンスです。
九州全域が溶岩の下になるなら期歩の噴火なら、九州、四国、西日本、いや西日本自体がアウトです。
ならばもう電力供給する対象がなくなってしまう。
こういう極端な想定をして、それに耐えられないからダメとするという論理がもはやカルトです。

 

2020年1月17日 (金)

防疫の指揮権を為政者から取り上げねばならない


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あいかわらず腰が重いことで、なにデニー知事のことです。
一見接種を開始する決断をしたのかと勘違いしますが、その検討に着手したていどのことです。

「玉城デニー沖縄県知事は、16日、県庁で定例記者会見を開き、豚コレラ(CSF)のワクチン接種プログラムの策定を長嶺豊県農林水産部長に指示したことを明かした。接種を決めたわけではなく、接種する場合の迅速対応が目的。
週明けに開催する国や市町村、有識者、生産者団体などでつくる県CSF防疫対策関係者会議で議論し、接種を判断するという」(沖タイ1月16日)

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週明けにまた会議して決めるんだそうで、こうやっているうちにも貴重な初動の時間は大幅に超過しています。
会議がそんなに重要ですしょうか。
今、大火災が燃え広がろうとしているのに、火の前であーでもないこーでもないと鳩首協議しているのがこのヒトたちです。
ウチナータイムは飲み会だけにしてくれと言いたくなります。

必要なことは速度であって、議論ではありません。
現時点でできているのは、とりあえず第3例までの殺処分が終わったということにすぎません。
初発の発生は12月20日、既に27日間も経過しています。既に1カ月弱ですから、致命的な遅れです。
既に充分遅れているのに、来週また会議をして決めるさーですか、開いた口がふさがりません。

とりあえず今は治まっているようにみえますが、それはただの見せかけです。
豚コレラはその急激な死亡個体によって判断できますが、死亡数が急増しても実に17日間も農家は通報を怠っていたわけで、この間この農家がどこに何を移動したのか、その動線を徹底的に遡及調査せねばなりません。

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たぶんこの農場には豚コレラウィルスが蔓延していたはずで、これを無自覚に持ち歩いてバラ撒いていたのですから、かんべんしてくれと言いたくなります。
それも去年12月20日に死亡豚急増を確認といいますから、おそらくそれ以前から患畜は潜在していたと思われます。
豚コレラの死亡するまでの潜伏期間は10~20日ていどだと言われていますから、死亡豚が出た12月20日から遡って、12月初旬からその農家がどこに行ったのか、何を履いてでかけたのか、誰とどこで会ったのかなどを、家族まで含めて徹底的に洗い出さねばなりません。
仕事関係だけではなく、交遊関係まで含めてです。

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農研機構 http://www.naro.affrc.go.jp/laboratory/niah/swine_fever/explanation/classical_swine_fever/019953.html

気の毒ですが、この発生農家にはプライバシーはありません。発生農家はウィルスキャリヤーだからです。
洗いざらい申告してもらい、行った先々を特定し、できれば行った先々に消毒用石灰を撒きたいくらいです。
宮崎口蹄疫やトリインフルエンザなどにおいては、養豚場で使う長靴を履いてでかけた食堂にウィルスが持ち込まれ、そこをハブにして次の感染農場が生まれ、そこからまた発生が出るという連鎖発生をしました。
ですから、第4例が移動制限区域内から出たというのは、初回の発生動向調査が杜撰であったか、さもなくばたまたま検査した日が潜伏期間だったからにすぎません。

したがって、今もなお多くの潜伏期間の個体が潜在していると見ねばなりません。
つまり、今沖縄は豚コレラという火薬庫の上で、ともかく最初の種火は消したという段階にすぎないのです。
まだこの火薬庫には導火線に火がついている爆弾がどれだけ眠っているのかさえ、まるで分かっていないわけです。
だからこそ、今この火薬庫にワクチンという水を入れて発火しないようにする、これしか方法はありません。

ところで私は、家伝法(家畜伝染予防法)が宮崎口蹄疫の後に改訂された時に、重大な箇所を修正していなかったと思っています。
それがこの条項です。
http://www.mmjp.or.jp/yokojyuu/low/low/low_019.html#id_17

第17条の3

   農林水産大臣は、指定地域及び指定家畜の指定をしようとするときは、当該指定地域を管轄する都道府県知事の意見を聴かなければならない。

この条項を楯にして、自治体知事はまるで自分が最終決定権者であるかのようにふるまっています。
移設問題において県は公水面の認可の裁量権限で自分にあるかのようにふるまってきましたが、実はただの環境アセスメントをする権限ていどのものでした。
それを手を変え品を変え、何度となく裁判までして国と対決してきた悪い癖が、沖縄県はまだ抜けていないようです。

この豚コレラの防疫について第17条の3は「自治体の意見を聴くていどはしていいよ」と書いてあるだけで、県知事が最終決定をしろとは書いてないのです。
今回も江藤大臣が8日の時点でワクチン接種を提言したのに、それから既に9日間も経過して、そこから更に「来週に皆んな話あって決めるするさぁ」ですから、なんともかともです。
デニーさん、あんたにはいい悪いを決める権限なんかないのです。ただどうですか、と国から聞かれているだけなんですから。

防疫は原発事故の処理と一緒で政治家にやらせてはいけません。
原子力事故においては、当時の原子力安全委員会と政府・官邸の職務権限が明確になっておらず、首相だった男のあまりの無知な指揮ぶりが収束を遅らせました。
その反省から政府から独立した権限を持つ3条委員会として原子力規制委員会が生まれたのです。

同じような性質のものを防疫にも設けるべきです。
政府・官邸や農水省安全局からも、そしていうまでもなく地方自治体からも独立しした全国防疫対策センターのような機関です。
防疫に精通した獣医師専門家が一貫して指揮をとり、政治家はその責任をとればいいのです。

かんがえても見てください。デニーさんが豚コレラのなにを知っているのでしょうか?防疫について関心があって学んできたとでも?
この防疫を知るには畜産を知り、家畜防疫学を学ばねばなりませんし、ケーススタディとして宮崎口蹄疫事件くらいは頭に入っていなければ話になりません。

もちろんデニーさんは知らなくていいのです。
問題は知る知らないではなく、知らないことを前提として専門家の指示に従うこと、そしてその結果責任を行政官トップとして取る覚悟だけです。

だからこういう過度に「民主的」なご意見拝聴条項などは削除しないと、「聴いた」地方自治体の素人たちがする学級委員会が済むのを待たねばならなくなります。
今回は幸いに速やかに自衛隊の災害派遣要請が出ましたが、これがもっとヒダリの知事なら「私が知事の間は、軍靴の音を響かせない」なんて言っていたかもしれません。
その場合、今頃まだ延々と県の事務職員たちが泣きながら殺処分をやって、そこかがまた感染ハブになるという悪循環が生まれていたことでしょう。

ですから、緊急時には決められたマニュアルどおり国が責任をもって防疫にあたり、その遂行にあたっては一切の政治家の恣意は許さない仕組みがいるのです。

無能な為政者は天災よりひどい。


 

2020年1月16日 (木)

やんばるに豚コレラを侵入させないためにワクチン接種を急げ

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沖縄県で豚コレラ(CSF・クラシカル・スワイン・フィーバー)の4例目がでてしまいました。
あらかじめお断りしておきますが、豚(トン)コレラは人間のコレラやアフリカ豚コレラとはまったく別種の伝染病です。
高い感染力と死亡率を有しますが、人には感染しません。

さて4例目は今まで発生が確認されてきたうるま市の農場の3キロ圏内、つまり移動制限区域の中で発生しました。

「沖縄県は15日、うるま市の養豚場で県内4例目となる豚コレラ(CSF)の感染を確認したと発表した。県の聞き取り調査では1825頭を飼育しており、殺処分の対象となる。県は14日に、同市と隣接する沖縄市で3例6養豚場の全7326頭(速報値)の殺処分と埋却作業を終えていた。殺処分の総数は9千頭を超える見込みとなった。
 県内ではうるま市の養豚場で8日、1986年以来の感染を確認。県によると、今回の養豚場は約100メートル先にあり、14日に豚が死んでいると通報。精密検査で15日に判明した。(共同1月15日)

ひょっとしてまだ感染拡大が眠っているかとも思いましたがやはりそうでした。
まだ情報がほとんどない中で決めつけることはしたくないのですが、殺処分に追われて発生動向調査がしっかりされているのか不安が残ります。

海外悪性伝染病が発生した場合、直ちにせねばらないのは発症発生動向調査(サーベイランス)です。
通報と同時に発生農場を封鎖し、移動を禁止した上で、その農場の周辺の農場はもちろん、その農場に入っている飼料系統・糞尿処理場所、その農場から出荷される屠場、そして系列農場に至るまで徹底的に洗い出して、ウィルス拡散がどの程度なのか、どこに飛び火しているのか、いないのかを突き止めねばなりません。
これを血清学的発生動向調査と遡及調査と呼びます。

今回、これがおろそかになっていはしまいかという危惧があります。
今回の第4例で問題視されるべきは、県の発生動向調査による発見ではなく、死亡を発見した農家からの通報で分かったことです。

「新たに確認された農場は、これまでに確認されていたうるま市など3例の農場から移動制限区域内(3キロ)にあり、監視対象となっていた。 14日に農家から「豚が死亡している」との通報があり、県が立ち入り検査を実施。15日午前、感染の疑いが強い疑似患畜と判明した」(沖タイ1月15日)

宮崎県口蹄疫の場合、現場の獣医師に大きな負担がかかりました。
一般的にどの県も県家保(家畜衛生保健所)の獣医師は50人ていどにすぎません。
この数少ない獣医師が6千頭もの大型家畜を殺処分できる道理がありませんから、実際にするのは診断書、殺処分指示書の発行と方法の指示、立ち会いまでです。
現実に殺処分をするのは、家畜の所有者とその依頼を受けた人たちです。
といってもこれだけの膨大な数の殺処分が積み上がった場合、他県からの支援があったにせよ、数すくない家保のマンパワーには限界があります。

宮崎口蹄疫の昼間報告書は、発生動向調査が不十分だったことを認めています。
殺処分の重圧で発生動向調査がおろそかになっていたのです。
今回も発生農場のわずか3キロ圏内ででるようだと、もう一つの重要な仕事である発生動向調査を徹底しきれたとは言えないと思われます。
早急にうまるま市、沖縄市全域にまで拡げて血清検査をされることをお勧めします。

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琉球新報

さて、やっと県はワクチンを接種することにしたようです。
腰の定まらぬデニー知事にさんざん焦らされた関係団体は、とりあえずほっと一息ついたと思います。
沖縄の養豚関連団体は、強くワクチン接種を要望しており、デニー知事の頭越しに江藤農水大臣に陳情しています。

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「沖縄県でブタの伝染病のCSFいわゆる豚コレラの感染が広がっていることを受けて、沖縄の農業団体の代表が江藤農林水産大臣に早期のワクチン接種と特産のアグーの保護を求めました。
JA沖縄中央会の大城勉会長など沖縄県の農業関係者が15日、農林水産省を訪れ、江藤農林水産大臣に要請書を手渡しました。
要請書では、養豚業への影響を最小限に抑えるために必要な量のワクチンを確保し早急に接種できるようにすることや、特産のブタ「アグー」について繁殖を担う原種のブタが感染しないよう、厳重に保護することを求めています。
これに対して江藤大臣は「ワクチン接種やアグーの隔離による保護も、沖縄県からの要請があれば迅速に対応できるようにしたい」と応えました」(NHK1月15日上写真も)

沖縄の養豚団体が焦れたのは、デニー知事があの人らしくやるでもなくやらんでもないという煮え切らない態度をしてしまったからです。
豚コレラだと確認される江藤農水大臣はすぐさま8日に沖縄に駆けつけました。

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https://mainichi.jp/articles/20200108/k00/00m/040/...

江藤氏がこの感染時に国側のカウンターパートであったことは幸運でした。
彼は自分の選挙区で宮崎口蹄疫の大爆発をその目で見て、民主党政権に提言を出し続けた人だからで、国会議員の中でも有数の知見を持っている人だからです。

江藤氏は、宮崎口蹄疫が殺処分とワクチンの二本立て対策でかろうじて宮崎県東部地域から出さなかったことを熟知しています。
大臣は当初から国としてはワクチン接種を前提に対策をたてていることをデニー知事に直接伝えたはずです。

ところがこれに対してデニー知事はこのように答えてしまっています。

「ワクチン接種実施のための推奨地域指定は国が行うが、都道府県の意向が前提となる。
玉城デニー知事は県の対策会議で「農家の意向を聞きながら検討したい」と語った。 これ以上感染を拡大させないためには、感染が発生していない養豚場にウイルスを持ち込ませないよう人や車の消毒を徹底するなどの防疫対策が必要だ 」(沖縄タイムス1月12日)

このデニー知事の躊躇の理由が解せません。
「農家の意向」もなにも、おそらく彼が養豚関連団体に一本電話をしてみれば、即座にワクチンを打つしか対策はないという答えが返ってくるはずです。
「人や車の消毒は大事」だって。なにをあたりまえのことを。
昨日危機に際してはリーダーを立てろと言っておきながら、自分で破ることにしますが、デニーさんあんたは馬鹿か!
伝染病が猛威をふるって死者まででている時に、手をよく洗いましょうね、うがいはしっかりね、と言っているようなものです。
デニ氏には、もうそんな初歩的なことでは済まないという危機意識が欠落しています。

デニー知事が「感染を拡大させないためには、感染が発生していない養豚場にウイルスを持ち込ませないようにしたい」(沖タイ前掲)ならば、発生農場から3キロ圏内の豚をすべて殺処分にするしかありません。
その場合、処分する豚は数万頭に達するはずです。もちろんアグーなどの貴重種も例外ではありません。

だから、畜産の被害を最小限に押えるためにワクチンが必要なのです。
実は今後心配されるのは、中部から北部への感染拡大です。
感染が発見されたのがたまたまうるま市であったことは、幸運でした。
これが北部だったらとおもうとゾっとします。野生のイノシが北部には大量に生息していているからです。

岐阜や長野の例から、この野生のイノシシがウィルスに感染し、常在化させる大きな原因となっています。

「豚コレラに感染したイノシシが19日、合計1008頭に達した。感染は6県53市町村に広がり、うち31市町村852頭と8割以上を岐阜県が占める。検査や狩猟の体制が整っていない県もあり、検査していないイノシシにも陽性が広がっている可能性があり、防疫対策の徹底が重要になっている。
 19日までの各県発表で岐阜の他、愛知県5市76頭、長野県9市町村64頭、福井県4市町7頭、富山県3市5頭、三重県1市4頭。」
(日本農業新聞2019年8月20日 下図も同じ)
https://www.agrinews.co.jp/p48496.html 

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上図の感染イノシシの分布図に、発生農場を重ねてみます。発生農場と感染イノシシが重なるのがお分かり頂けると思います。

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沖縄北部の深い森にイノシシは多く生息しており、養豚農家も多く存在します。
言い換えれば、やんばるにウィルスを侵入させてしまえば、ウィルスはイノシシの身体に常に存在し、イノシシを一頭残らず駆逐しない限り豚コレラは半永久的に沖縄に居続けることとなります。

だからこそ、イノシシがほとんど稀なうるま市で感染拡大を止め、ワクチンで予防の壁を続かねばならないのです。
それを消毒すればですか、呆れてものがいえません。

ところが、家伝法においては一義的には県が決定権者ですから、県がストップさせてしまえばワクチンは使えなくなります。
おそらくデニー氏は、県庁の役人からこんなことを聞いたのではないでしょうか。

「ワクチン接種推奨地域に指定された場合、精肉や加工品は推奨地域外に流通できる一方、生きた豚を推奨地域外に移動できず、種豚や小豚の自由な販売に支障が生じる可能性がある」(沖タイ前掲)

たしかにワクチン接種すると、国際獣疫事務局(OIE)から「清浄国」の格付けが外され輸出が制限されます。これが農水省が口蹄疫やトリインフルに対して接種をためらう理由の一つとなっています。

一般的にワクチンに消極的な理由はこう説明されています。
農水省 ワクチン接種のデメリット 関係者間の合意形成が大前

1) 緊急ワクチン接種(地域限定)
① 野外感染豚とワクチン接種豚との区別ができないことから、接種豚のトレーサビリティや移動制限等が必要になる
② 非清浄国となれば、他の非清浄国からの豚肉輸入解禁の圧力が強まる可能性がある
③ 消費者がワクチン接種豚の購入を控えることなど風評被害が生ずる可能性があり消費への影響が懸念される
④ 農家の飼養衛生管理水準を向上しようとする意欲がそがれ、アフリカ豚コレラ等の農場への侵入リスクが高まる可能性がある。

宮崎口蹄疫でさんざん議論されてきたことですが、①のワクチンを打つと自然感染したものとの区別がつかないということですが、特定のワクチン特有の痕跡を残すマーカーワクチンを使えば解決できますし、②は防疫問題を貿易問題にすり替えています。
③の風評被害などもそれに負けない宣伝を打つほうが、このまま「沖縄、またまた発生!豚コレラ蔓延」のニュースを流されるよりよほどましなはずです。
④もなに言ってんだか、です。ワクチン接種を実施している農家はむしろ防疫に積極的です。

実際に宮崎口蹄疫時には、感染拡大速度を落とす目的でのみ接種され、その後すべてが殺処分となっています。
この消極姿勢が変化したのは豚コレラが岐阜での発生して1年後でした。

これはOIEの清浄国への復帰が今までより早くなったことと、もはやワクチン以外では感染拡大を阻止できないことをやっと農水省も悟ったからです。
そりゃそうでしょう、野生イノシシに出てしまえば、もう事実上防ぐ方法はないに等しいからです。

心配されたワクチンの備蓄状況ですが、現在、ワクチンは足りているようです。

「昨年末までに250万頭分を増産しており、さらに今年3月までに250万頭分を製造する予定で、ワクチンは足りそうだ」(沖タイ前掲)

デニー知事の逡巡によって貴重な初動におけるワクチン接種のタイミングが失われましたが、まだ遅くはありません。
離島も含めて沖縄県全域の豚に対してワクチンを早急に接種せねばなりません。

 

 

 

2020年1月15日 (水)

沖縄で豚コレラ発生


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沖縄で豚コレラ(CSF)が発生しました。現時点では一戸2農場、都合3例です。
あらかじめお願いしたいことは、イデオロギーをもちださないでいただきたい。
私は宮崎口蹄疫事件を百日以上追跡した経験をもっています。※カテゴリー「口蹄疫問題」を検索下さい。
その経験から言えるのは、海外から侵入する悪性伝染病が、地域の畜産のみならず、地域経済そのものまでも破壊し尽くし、地域住民に数年に渡る塗炭の苦しみを与えることです。
その恐ろしさを知ったうえで、戦わねばなりません。

沖縄県が一丸となって海外悪性伝染病と戦わねば勝てないのであって、政治的利用は厳に慎むべきです。
私はデニー知事に対して一貫して冷やかな見方をしてきましたが、そのような政治的立場と伝染病との戦いはまったく別次元です。
宮崎口蹄疫事件時においては、東国原というポビュリスト知事がことごとく足を引っ張り続けました。
デニー知事に防疫の知識は皆無でしょうし、危機においてリーダーシップを取れるタイプにも見えません。

しかしだからといって、頭から「デニー知事だから」「オール沖縄だから」という色眼鏡で見ることはしません。
危機においては、いかに頼りなかろうが常日頃批判し続けていようが、リーダーの下に団結せねばならないのです。
泣いても笑っても、デニー知事にがんばってもらいましょう。

前置きはこのくらいにして、感染の概要を押えておきます。

「沖縄県内で豚やイノシシの感染症、豚コレラ(CSF)の感染が発生している件で、県農林水産部は11日、うるま市での発生に関連して、沖縄市内の養豚場の豚から陽性反応が出たことを明らかにした。隣接する養豚場と合わせて1897頭が殺処分の対象となる。沖縄市内での感染確認は10日に続いて2件目となった。これで豚コレラ感染に関連して殺処分される豚は6養豚場で合計6683頭となり、県全体の飼育数20万6828頭(2018年12月末現在)の3.2%に上っている」(琉球新報1月12日)

また、殺処分は現時点では完了したようです。これは大変にいい知らせです。
殺処分に携わった多くの人々に心から敬意を表します。ご苦労さまでした。

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「豚コレラ(CSF)の発生を受け、沖縄県が実施していた県内6養豚場の豚の殺処分が14日午後5時すぎまでに、全て完了した。
豚コレラ感染に伴い殺処分された豚は6養豚場で計7326頭に上り、県全体の飼育数20万6828頭(2018年12月末現在)の3・5%を占めている。  
豚コレラは8日にうるま市の2養豚場で確認され、10日には沖縄市の養豚場でも見つかった。うるま市の養豚場で飼育される豚2001頭ついては、殺処分と埋却などの初期防疫作業が11日までに完了した」(琉球新報1月14日 上写真も)

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琉球新報 https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1055900.html

沖縄県のプレスリリースです。

令和2年1月10日
2 経緯
(1)1月6日(月曜日)、うるま市の養豚農場から県中央家畜保健衛生所へ飼養豚が死亡しているとの報告を受け、家畜防疫員による立入検査を実施しました。
(2)同日、県中央家畜保健衛生所及び家畜衛生試験場での検査によりCSFの疑いが生じたため、材料を農研機構動物衛生研究部門に送付し、遺伝子解析を実施したところ、本日(1月8日)、CSFの患畜であることが判明しました。
(3)このため、当該農場の飼養豚について防疫処置を講じるとともに、当該農場と飼養者が同一である農場(うるま市)の飼養豚もCSFの疑似患畜とし、防疫措置を講じます(防疫措置対象:825頭(1戸2農場)。
本県におけるCSF(豚コレラ)疑似患畜の確認について(3例目沖縄市)(PDF:89KB)

初発から3例はすべて同一の養豚業者です。経過はこのようです。

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「発生農場で死亡する豚が出始めたのが昨年12月20日。抗生物質や解熱剤を投与して様子を見ていたが、死亡するペースが加速し、農家は異常に気が付いたという。26日までに25頭を食肉市場に出荷していた。また、県は豚の飼料に使う食品残さを加熱するよう呼び掛けていたが、発生農場では非加熱で給餌していたという。
 同県畜産課は「残さに含まれた肉の加熱が不十分でウイルスが生きていた可能性もある」と指摘した」(日本農業新聞2020年1月9日)
https://www.agrinews.co.jp/p49679.html

この初発の農場の対応は強く批判されるべきです。
昨年12月20日頃から死ぬ豚が急増したにもかかわらず、県への連絡はなんと年を越して1月6日でした。
その間実に17日間も時間をロスしてしまっています。養豚家として信じられない対応だと言えます。

この初発報告が遅れたことが、今回の沖縄豚コレラ事件における最大の失敗です。
豚コレラについては、家保から厳重な警戒要請がきているはずで、24時間体制での通報受け付けもあるはずです。
通報義務があるにもかかわらず、個人では手がつけられなくなってからやっと腰を上げたような対応を見る限り、この農家に当事者意識があるようには思えません。

「8日午前5時50分、豚コレラ感染の疑いがある豚が出たうるま市の養豚場に続く細い農道は、「立入禁止」の紙を張り出した軽トラックでふさがれていた。午前6時30分を過ぎ報道各社が集まり、午前7時頃1台の軽トラックで養豚場の管理者が現れた。規制で入場できずに引き返そうとしたところで報道陣の取材に応じ、「最後に餌をあげようと思った」とまだ現実を受け入れられないような戸惑った表情で話した。」(琉新1月12日)

「最後にエサを上げようと思った」というのは気持では理解できますが、今やるべきことではありません。
疑似患畜が出た場合、やるべきことは、家保の指示に従って移動をせずに消毒し、殺処分するだけであって、ウィルスが蔓延している畜舎をうろつき回るなどもっての他です。

それはさておき、このような死亡する患畜が出た場合、農家はかならず獣医を呼びます。
呼ばないで素人考えでなんとかなるだろうと思うような者は、そもそも畜産などすべきではありません。
すべての家畜伝染病は、初めの段階で止める、これが大原則だからです。

ではこの農家は指をくわえて毎日急増する患畜をながめていたのでしょうか。わけはありません。
本能的に畜産家は家畜が死ぬのに平気でいることは不可能ですから、抗生物質や薬剤を投与したはずです。
ところがこの投与するには獣医師の投薬指示書が不可欠ですから、獣医を呼んだはずです。
ところが17日間も遅れたのですから、なぜか獣医を呼ばなかった可能性が高いと思われます。
獣医を呼べば必ず届け出がなされるはずで、豚コレラとおぼしき症状がでているにもかかわらず届け出なかったら獣医師法違反です。
ですから、発生から10日以上たっても出ていない以上、獣医は呼ばなかったと判断するかありません。

次に家伝法の定めに従って、発生農場からの移動は一切禁止され、3キロ以内は封鎖され、チェックポイントを作らねばなりません。

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https://mainichi.jp/articles/20200108/k00/00m/040/...

次に確かに豚コレラであることを確証するために東京の動物衛生研究所(動衛研)にウィルスサンプルを送付せねばなりません。
出先の県では精密に同定する施設がないからです。
これでもわかるように県は国の支援なくしてはまったく自力対応することができないのです。
そして県からサンプルが送られたのが6日、動衛研から返事が返ってきたのか8日です。
ここまでで発生から既に19日が経過しています。

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出典不明

ここからやっと殺処分が始まります。県からの災害出動要請が自衛隊に速やかにだされたことは大変によかったことです。
ここで変にイデオロギッシュになってしまわれると、主力の自衛隊を初動で投入できなくなってしまうからです。

「1986年10月以来となる沖縄県内での豚コレラ(CSF)の発生から9日で丸1日が経過した。発生農家では72時間以内に初期防疫作業を進める必要があり、豚舎内の全頭殺処分と埋却、消毒作業など感染封じ込めの作業が進められている。県は全庁体制で職員を動員し、家畜防疫員やJAグループなどからも加わって人員は2日間で延べ280人に上る。さらに県の災害派遣要請を受けて自衛隊も約390人を動員。現場を取材する担当記者が報告する」(琉新前掲)

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https://www.sankei.com/life/news/190208/lif1902080

常に海外悪性伝染病において殺処分の主力をなすのは自衛隊です。
本来は農水省が責任を持って殺処分できる全国体制を構築すべきですが、その問題意識自体がこの役所にはありません。
それについては今回は置きますが、いずれにしても、専門知識もなければ豚に触ったこともないような県の事務職員に手に負えるような生易しいものではないのです。

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宮崎口蹄疫事件においては殺処分が遅れに遅れ、患畜が積み上がりました。
宮崎県も県の職員が全力で殺処分にあたりましたが、まったく無力でした。

怯えて暴れる豚を押さえつけて殺すのは、人間にとっても生易しいことではないからです。
毎回、彼らの悲鳴が耳について離れない、肉が食えなくなったという作業者が大量に出ます。
専門教育を受けている獣医師ですら大型動物の何千頭もの殺処分など教えてもらってはいないのです。

「作業に携わる人たちの精神的なダメージは避けられない。自衛隊などは作業に当たる隊員へのメンタルヘルス教育を実施しているという」(琉新前掲)

それをズブの素人で、日常はペパーワークしかしていない県庁やJA職員にやれというほうがムリです。
それも6千頭を超えるような患畜に対して、2日で延べ280人ではお話になりません。1日当たり100名前後しか投入できていないのです。
しかも全員が殺処分に回るわけではなく、消毒チェックポインや、発生動向調査(サーベイランス)にも人手をさかねばなりません。

宮崎口蹄疫の場合、初期には県庁職員が当たったために、殺処分待ちの患畜が増え続け、感染がいっそう拡大するという悪循環が生まれました。
これを防ぐには72時間以内という初発の段階で、一時間でも早く現場に大量の要員を一括して投入せねばなりません。
これは災害時における72時間以内救助の原則とまったく同じです。
それが可能で、しかも後方支援がいらない自給型組織は日本において唯一自衛隊しか存在しません。

皮肉にも反自衛隊闘争をしている陣営が選んだ知事が自衛隊にすがる事になったわけですが、陸上自衛隊第15旅団は即応体制で対応しました。
自衛隊をこのように使うのなら(それ以外選択肢がないわけですが)、日常的に沖縄県は災害時や悪性伝染病において、演習をくりかえさねばなりません。

自衛隊は全国で多くの修羅場を経験し、このような悪性伝染病に対しても災害派遣という名目で出動に備えてきました。
このような自衛隊にこたえるだけの対応を沖縄県がしてきたのでしょうか。
日頃から緊密に連絡をとりあい、自衛隊と県・市町村の統合訓練を行ってきたたのでしょうか。
それがないといざ有事の場合、うまくいきません。

「県はこれまでも、豚コレラが発生した場合を想定した防疫演習を実施してきた。昨年6月12日には農林水産部の職員ら約80人が那覇市の八汐荘に集まり、防護服の着用方法や初動防疫の流れなどを確認し、危機管理に備えていた。しかし豚コレラの発生が現実となり演習通りに行かない場面もあったのか、作業に遅れが出る場面もあった」(琉新前掲)

琉球新報の記事にもある去年6月の貿易演習にも自衛隊は呼ばれていなかったようです。
確認はとれていませんが、主力部隊を呼ばない予行演習なんて無意味です。
これでは現実に起きてうまく動く道理がありませんね。
日頃は白い眼で見ておいて、いざこのような事態になると、手のひらを返したように便利だからと自衛隊に頼りきりとなり、埋却地がたりないとなると米軍にすらすがる、なんとムシがいいことよ、と思います。
おっと、政治臭くなってしまった(汗)。

長くなりましたので、ワクチン接種問題と感染経路については次回に致します。

 

 

2020年1月14日 (火)

国民党の自壊は「中華民国」の再編につながる


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今回の台湾総統選挙は、蔡英文の信任といえないこともありませんが、ハッキリいえば習近平の自爆です。
煎じ詰めると、蔡英文の勝利は4つの要因によります。

ひとつは習があまりに外交が下手くそだったこと、ふたつめは蔡が「一国二制度」をきっぱりと拒否したこと、三つ目はなにより香港デモの大爆発が台湾にまで延焼したこと、そしてよっつめは国民党の自壊現象に助けられたことです。

蔡英文はこの選挙に惨敗するだろうと予想されていました。
というのは、必ずしも内政において成功していたとはいいがたい状況で、私の耳にもいい噂がまったく入ってきませんでした。
蔡政権は親日的であり、かつ中国に抵抗しているために意外かもしれませんが、台湾民進党は実はリベラル政党の色彩が強い政党なのです。

唐筱恬(台湾「今周刊」)によれば、蔡政権はこのような内政の失敗を重ねてきました。
https://toyokeizai.net/articles/-/191525?page=2

たとえばひとつめは台湾版働き方改革とでもいうべきもので、週休完全2日制を実現しようとして労働基準法の改正にとりくんだのですが、失敗に終わりました。
というのは、これは日本の働き方改革にもいえることですが、中小企業主には不評で、肝心な労働者からも収入が減るとして抵抗を受けてしまいました。
また年金改革は公務員を対象としたために、軍人も含めて大きな抵抗を受けました。

このふたつで労働団体と公務員・軍人団体を敵にしてしまったところに、極めつけは同性婚の法制化と反原発政策でした。
なんでわざわざこんな政策をせにゃならんのか、理解に苦しみますが、反原発政策が原因の大停電を引き起こしてしまいました。

「グリーンエネルギーの発展を盛り込んだ改正「電業法」が成立し、民進党が核心的な価値とする2025年までの原子力発電所廃止は、その姿勢を簡単には変えることができない重要政策の1つだ。
今年(2017年)8月15日に台湾全土で発生した大停電は、人為的な操作ミスを原因とする事故によって発生したものだった。だが、この停電から見ると、与党・民進党は反原発の代替策として掲げている、グリーンエネルギーと天然ガス燃料による火力発電の導入について、現在のスピードでは原発廃止で電力供給の減少分を補えないことがはっきりとしている」(唐前掲)

中国によって簡単にオイルロードを切断されるリスクがあり、エネルギー自給ができない台湾が原発を25年までに止めてしまったら自分で自分の首を締めるようなものです。なんでこんな簡単なことがわからないのでしょうか。
現実に原発を事実上ゼロにして苦吟するわが日本のエネルギー事情を見ればわかりそうなものを。
エネルギーの自給は、いつ何どき中国の制裁でエネルギー供給源を断たれるかもしれない台湾にとって死活問題なはずです。

一方、経済政策では国民党政権の中国に強依存する政策を改めました。これは中国市場にあまりにも依存すぎた経済構造によって、台湾製造業が空洞化してしまったからです。
製造業は賃金が安く、消費市場に近い中国本土に工場を移転させてしまった結果、台湾の青年層の失業率を大きく増大させてしまいました。

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日経

「台湾の若者が職探しに悩んでいる。主計総処(総務省統計局に相当)によると、20~24歳の2019年1~5月の平均失業率は11.7%。2~3%程度の30歳以上に比べ突出して高い。若者の低賃金も社会問題となっており、大卒初任給は18年に2万8849台湾ドル(約10万円)にとどまる」(日経2019年7月13日)

この中国依存の経済体質をあらためようと、蔡政権はTPPや各国とのFTAを推進する政策をとってきたことは評価できます。
これは「中国様におすがりしていれば万事うまくいく」という国民党の経済政策とは大きく違います。
ただし、これもその結果がでるにはまだ至っておらず、総じて未熟な内政が多く、次はないなと私は憂鬱な気分で眺めていたものです。

ところが、総統選挙にとんでもない「カミカゼ」が吹いてしまったのです。
しかも吹かしたのは台湾にとって最大の脅威であるはずの習皇帝陛下その人ですから、世の中というものはわからないもんです。
習がやった最大の「功績」は、選挙の1年前になって「習五条」を台湾につきつけたことです。
おそらく総統選まで1年の間よーく考えろと習は「犬のしつけ」をしたかったのでしょうが、これによって選挙のテーマは一気に内政から対中政策へとシフトチェンジしてしまいました。
習のほうから蔡英文の得意とする土俵に乗ってしまったといえます。

なにせ「習五条」なるものは、昨日も書いたように、「一国二制度による平和統一」と「武力統一」のどちらかを選べと迫っているのですから、もうムチャクチャ。これで台湾の人が燃えない道理がないわけです。
しかもこの「一国二制度」なるもの内実は、6月から始まる香港デモで、世界の誰もが知ってしまったのですから、結果論とはいえ習は馬鹿なカードを馬鹿な時期に出したものです。

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上の支持率グラフをみればお分かりのように、初め韓国瑜(かんこくゆ)が大きく引き離していたものが、香港デモが激化する8月から一気に逆転しそのまま韓国候補はスロープを直滑降するようにして視野から消えていきます。

つくづく習という男は内向きに出来ているのです。
腐敗一掃という名で、アンチ習派狩りばかりやって井の中の蛙をしているからこうなるのです。

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  韓国瑜 https://jp.rti.org.tw/news/view/id/91864

習が本気で台湾を内部から瓦解させて中国に吸収したいなら、国民党候補に実績もなにもない、韓国瑜なんてポピュリスト候補を持ってくるべきではありませんでした。
韓について福島香織氏はこう評しています。

「韓国瑜のような”下級国民党”、政策実績などなにもなく、なんかおもろいおっさん、というだけの人物。彼が急に高雄市長になったのは、中国の世論誘導工作、浸透工作の成果だということは、目下、多方面の情報機関の共通の分析結果ですが、ようは、国民党のプロパー政治家が国民党候補になれず、なんか中共がねじ込んでくる、ビジネスマンのテリー・ゴウだとか、中共の工作でうっかり人気ものになった下品はおもろいおっさんとかが、候補になってしまう」
(福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.53 2020年1月13日)

つまりは候補者選びの段階で負けていたのです。
元来国民党の本命は鴻海(ホンハイ)精密工業の創業者である郭台銘(テリー・ゴウ)氏、16年の総統公認候補の朱立倫氏などが名乗りを挙げていました。 しかし国民党予備選で世論調査方式を採用したため、オモロイ発言で人気の韓が勝ち残ってしまったようです。
このことによって国民党は、韓と国民党有力者の郭や朱、王金平たちらとの関係が悪化し、最後まで修復ができないまま、国民党はバラバラな状態で総統選を戦ってしまったようです。

国民党が蒋介石と共に台湾島に逃げ込んだ国民党の残党らによってできているのは知られていますが、福島氏によればその時にエライさんとして逃げてきた「上級国民党」と、ただの下っぱで銃と鍋をかついで逃げて来ただけの兵隊たちの「下級国民党」にくっきりと別れているそうです。
今までの国民党の政権を担った政治家や優秀な官僚は皆この「上級国民党」出身だったそうで、前回総統選の国民党候補者だった朱立倫は典型的な正統派の「上級国民党」だったようです。
彼ら「上級国民党」にいわせれば、韓のような「下級国民党」に総統になられるくらいなら、台湾大学出の蔡英文のほうがよっぽどまし、ということのようです。

「こうした正統派国民党はプライドが高いのです。彼らの中には、下級国民党の指導者に従うくらいなら、台湾人の支配下に入った方がいいわ、と考えるくらいの下級国民党への差別感があるとか」
「もう、その時点で「国民党おわったな」という空気が、国民党正統派党員の間で流れていたようです。それが選挙運動の着手の遅さ、団結のなさにつながった。韓国瑜を国民党の古株は誰も応援していませんでした」
(福島前掲)

つまりは、今回の選挙ではっきりしてしまったのは国民党が長年の中国共産党の浸透工作によってグダグダになってしまった結果、国民党に残っていた優秀な正統派政治家たちが雲散霧消してしまい、中国のカイライそのもののような軽い奴しか選べなくなってしまったということです。
そしてこれを全世界に告知してしまったことで、「中華民国」という虚構もまたこの国民党とともに消滅してしまったということになります。

この選挙後に大きな台湾政治の再編がおこなわれるかもしれませんが、その時の選択肢からは「ひとつの中国」派と劣化した国民党は転げ落ちることとなることでしょう。

 

 

2020年1月13日 (月)

蔡英文再選おめでとう!

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1年前の蔡英文惨敗予想を完全に覆しての圧倒的大差での勝利でした。
実に得票数817万231票という台湾民主選挙史上最高得票数で、これはあの熱烈な親中派だった馬英九の得票数765万票を遥かに超える得票数でした。
投票率は74.9%で前回より9ポイント上回りました。
おめでとうございます。自由の民は、民主主義を選ぶという鉄則が証明されました。

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上の写真は最後の訴えを済ませた後の蔡英文の写真です。彼女は中央にいますが、いい写真を選びましたね。
彼女がどのような思いで戦ったのか、そしてなにを祈ったのかがよく分かる一枚です。

ただし、手放しで喜べないのは得票率です。
4割弱を国民党ががっちり握っているという現実には変わりありません。

・得票率
・蔡英文・・・57.13%(前回2016年時は56.12%)
・韓国瑜・・・38.6%
・宋楚瑜は・・・4.2%
cf.  2008年時における馬英九の得票率・・・・58.44%

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一方、同時に行われた立法院選挙はこのような結果でした。

立法院議席数
・民進党・・・61議席(△7)113議席中で単独過半数確保
・国民党・・・38議席(+3)

このように、国民党は立法院では、民進党の単独過半数を許したものの、しぶとく3議席増やして野党第一党を確保しました。
蔡英文の勝因は習近平という頑迷な中華帝国皇帝にあります。
この男なくしては蔡英文の再選はなかったはずです。

昨年1月早々に習が台湾に対していいだしたのがいわゆる「習5条」でした。東外大小笠原欣幸氏によればこのような内容です。
http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/ogasawara/analysis/xifivepoints.html

●「習五項目」の骨子
第一:統一促進と中国の夢
第二:一国二制度と民主協商の呼びかけ
第三:一つの中国原則と台湾独立反対
第四:両岸融合と同等待遇
第五:中華民族アイデンティティ

ここで習が台湾につきつけたのが例の「一国二制度」でした。
「一国二制度」を台湾に対して言ったのは、意外なことに習が初めてでした。
胡錦濤は台湾の反発が強いことを知って封印していました。
習政権となってから台湾に対して口にするようになり、馬政権時に初めて出した時にはさすがの親中派の馬もこれを拒否したという経緯があります。
中国と距離を置こうとする蔡英文政権時にこれを再び言い出したのは、「台湾を飼い馴らす」つもりではないかと東外大・小笠原氏は見ます。

「習が今回「一国二制度」を正面から主張したことについて,「習近平は台湾の状況をわかっていないから」という解説があったが,それは違うであろう。台湾社会で反発がかなり大きくなることは2014年9月の経験でわかることだ。そうではなく,正面から突きつけ繰り返していくことで,「一国二制度」への心理的抵抗感を徐々に下げていく策略であろう。台湾を「飼いならす」つもりではないか。
 国民党としては,「統一」と「一国二制度」をあまり強調してほしくない。それに構わず突き進むのが習近平流で,ここが胡錦濤との違いである。表面的には江沢民と似ている。しかし,江沢民時代は台湾の反発を押し切るだけの実力がなかった。習近平は,台湾人の反発を計算に入れ,なおかつそれを押し切る硬軟両様の手段を用意している。ここが江沢民時代との違いである」
小笠原欣幸
習近平の包括的対台湾政策「習五項目」を解読する』

つまり、習は自分が歴代政権と違って「台湾の反発を押し切る」だけの力を持ったと錯覚していたのです。

さらに、習はこうも台湾に言い放っています。
「中国人は中国人を攻撃しない」、「武力使用の放棄は約束しない」
露骨なまでの武力による威嚇ですが、この表現もいままでも「紅八点」などの党内文書では登場しますが、こうまであからさまに台湾に対して言うことはありませんでした。

このように習は、いままでの歴代政権が押えてきた本音をあえてぶつけるべき時期、すなわち見せかけの融和路線ではなく武力を背景とする力による統一のプロセスに入ったと判断したようです。

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https://www.sankei.com/world/news/200101/wor200101...

何度も書いていますが、この習が「一国二制度」を台湾に言ったその年の6月に香港で民主化デモが火を吹きました。

「台湾人は妙にリアリストでコスト主義なので、戦争の脅威があるなら、中国とうまく付き合っていける方法を選ぶ可能性はあったようです。「香港の若者たちが命と血涙を贖って一国二制度がダメだと教えたくれた」のです。香港の若者たちの抵抗運動はまだ続くと思いますが、少なくとも一つ大きな成果をだしました。台湾の民主を救ったということです」
(福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.52 番外』 2020年1月12日)

習が香港民主化デモに対して何らかの現実的な融和政策をとれたならば、台湾総統選挙の構図も白黒反転していた可能性があります。
ところが習ときたら、あうことか香港警察に血の弾圧を命じ、順調に香港市民の怒りを拡大させてしまいました。
香港における市民の戦いを対岸で見ていた台湾の人々にとって、「今日の香港は明日の台湾だ」ということが、連日映し出される映像によって肌身でわかってしまったのです。

そして同時期、中国当局は蔡英文政権締めつけのために得意の「犬のしつけ」をしていました。
そのひとつが、 2019年8月から台湾への個人旅行を暫定的に停止させる制裁です。
観光収入が大きい台湾で観光客を止めてしまえば干上がり、その怒りは中国の「ひとつの中国」に反対している政策をとっている蔡英文政権に向かうに違いないと思ったようです。

しかし、習には気の毒なことに、皮肉にも中国大陸からの観光客は大幅に減ったものの、それを補って日本からの観光客が去年8月~11月の前年同期比11%しました。
また日本への観光を禁止した韓国も台湾へと向かい33%増加しています(苦笑)。
この時期に、観光資源が豊富な上に治安がよく食べ物が美味しい台湾が一気に人気観光スポットに定着してしまったのは、皮肉なことです。

また、折からの米中貿易戦争によって中国の対米輸出入製品に高関税がかけられた結果、中国への外資は逃避を開始し始めました。
この余波で台湾の対米輸出が上昇する追い風が吹き輸出産業が持ち直しました。

すると、「中国に支配されるのはイヤだが、かといって中国抜きでは商売があがったりだ。だから台湾は独立なんて過激なことを言わず微妙なバランスをとって欲しい」という多数派が、「なんだ国民党のいうように中国と組まないと経済回復ができないというのはウソだ」と気がついてしまったのです。

その上は、水に落ちた犬状態となった習に更に追い打ちをかけるように起きたのが、オーストラリアにおいて現役中国スパイ王立強が寝返って、中国の台湾工作を洗いざらい暴露してしまったことです。

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王立強は、中国当局が1月の台湾総統選挙に向けて、蔡英文を落選させる工作として、50以上のインターネット会社やメディアを買収して宣伝と扇動活動を行っており、海外の団体名義で2018年の台湾の地方選挙時、国民党・韓国瑜候補に2000万元(約3・1億円)の選挙資金を提供したと暴露してしまいました。
この王の暴露を裏付けるようにオーストラリア政府治安情報局(ASIO)は19年12月2日、外国勢力の干渉抑制とスパイ対策を強化し、8800万豪ドル(約65億円)を投じて新たな専用部隊を設置することを発表しました。

このように習はやることなすこと全部裏目。これではムン閣下といい勝負です。
とうとう習の手によっては台湾の統合は無理だということが内外に知れ渡ってしまいました。
まことに台湾紙自由時報の社論がいうように、「習近平が蔡英文の最有力支援者だった」のです。
台湾総統選の焦点を、民主主義か中国型一党独裁か、自由か隷属か、に持っていってくれた最大の功績が習にあることは疑い得ません。

 

2020年1月12日 (日)

日曜写真館 降り出した雪の朝

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明け方から降り出した雪の朝に、月がポツンと帰り損なっています

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見る見るうちに雪が村を白く染めていきます

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実際は雪になれば外仕事は大変ですが、なぜかわくわくします

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2020年1月11日 (土)

ソレイマニ殺害を国際法はどうみるか?

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ソレイマニ空爆事件を受けて、改めて「戦争」ができる基準は何か考えてみます。
静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之氏は「ニュースを疑え」第828号(2020年1月9日号)はこれには二種類あって、一つは自衛権の発動と、もうひとつは戦時国際法における「正戦論」という倫理的基準があると指摘しています。

自衛権という範疇は米国民に被害が出た場合に発動されます。
今回これがなかったことで、武力反撃はせずという結果になりました。
もうひとつは戦時国際法の要件を満たすかです。
これが「正戦論」という考え方で、いまも国際社会のルールとして生きています。

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https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58855

では発端となったソレイマニ司令官の殺害を振り返ってみます。
ソレイマニは一般的な軍人でもないし、ましてや政府要人一般でもありません。
彼が正規軍の司令官であり、よくメディアがいうように「イラン政権ナンバー2」というだけなら、これを殺害してしまっては国際法的に逆ねじをくらうでしょう。
朝日などは「清廉な部下思いの人」なんて人物評を報じていますが、そんなこととはどうでもいいことで、彼が革命防衛隊の国外介入特殊工作部隊であるコッズ部隊の最高指揮官であり、この部隊がイラクで何をしていたのか、シリアでどのような市民虐殺をくりかえしていたのかが問題なのです。

シリアでのアサド政権による市民虐殺を長年追及してきた黒井文太郎氏はソレイマニの所業についてこうツイートしています。
https://twitter.com/BUNKUROI

・ソレイマニのシリアでの手法 アサド兵士がデモ殺しに躊躇すると怒鳴りつけて発砲させる。
・アサド軍が弱い戦線にヒズボラやイラク民兵を配置し、住民ごと殺させる。
・ 反体制派が強い町を封鎖して餓死地獄にする。
・ 反体制派捕まえたら拷問。
・ ISはクルドに任せる。
・ アサドが負けそうになるとロシアを引き込む

黒井氏はソレイマニはテロリストとよぶより「虐殺者」とよぶべきだろうと述べています。

ちなにみ山本長官の暗殺を引き合いに出していた馬鹿な米国人もいたようですが、山本はテロリストではなく正当な戦争行為における指揮官にすぎませんでした。
真珠湾作戦のような先制攻撃は国際法上かならずしも違法とはいえません。(宣戦布告なき戦争を米国もしょっちゅうやっています)

では、これが戦時国際法ではどのように判断されるのでしょうか。

正戦論の倫理的基準は、戦ってもよい(始めてもよい)戦争の条件と、戦い方の条件に区別される。戦ってもよい戦争の条件は、次の5つがもっとも重視されている。
1)正当な目的があること。
2)紛争を平和的に解決する合理的な努力が尽くされ、戦争が最後の手段となったこと。
3)正当な権力が戦争を許可すること。
4)戦争の目的に比べて、戦争がもたらすと予測される損害が上回らないこと。
5)目的が達成可能であること
(西前掲)

次に「戦い方の条件」はこのようなものとして定義されています。

1)戦闘員と非戦闘員を区別し、非戦闘員は攻撃目標にしないこと。
2)攻撃目標の軍事的価値に比べて、巻き添えとなる非戦闘員と非軍事物の損害を、不釣り合いに大きくしないこと」
(西前掲)

ソレイマニ空爆事件に当てはめてみます。
ソレイマニは革命防衛隊の海外テロ作戦専門部隊の最高司令官であり、革命防衛隊司令官としては国内で血なまぐさい国民虐殺をくりかえしてきた人物でした。これは別々な事象ではなく、一体の流れでみねばなりません。

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https://the-liberty.com/article.php?item_id=16481

昨年10月、バグダッドの反政府デモは全国的な反イラン・デモに拡大しました。
これはイラン国内の反政府デモに呼応するように起きたものでしたが、日本では桜騒動に浮かれて、どういうわけかまったくといっていいほどしか報じられていませんでした。
イラン国内だけで、革命防衛隊の弾圧によって1000人以上の死亡者を出しています。

「米国務省のブライアン・フックイラン担当特別代表は記者団に対し、「イラン政権は反政府デモの開始以降、市民1000人超を殺害した可能性がある」と述べ、マイク・ポンペオ米国務長官の呼び掛けに応じてイラン人3万2000人から送られてきた写真や動画などに基づく数字だと説明した。
 この数字は、情報の裏をとるのが困難なために慎重になっているという国際人権団体アムネスティ・インターナショナル発表の208人を大幅に上回る一方、米政権と親密な関係を築き上げてきたイラン反体制派組織「ムジャヒディン・ハルク(イスラム人民戦士機構が4日に発表した1029人とはほぼ一致している。
 アラブ系少数民族が多く暮らすイラン南西部マフシャフルから送られてきた映像には、機関銃を据え付けたトラックに乗った精鋭部隊である革命防衛隊が、デモ隊を湿地帯に追い詰める場面が映っていた。この弾圧だけで100人もの人々が殺害されたという」(AFP19年12月6日)
https://www.afpbb.com/articles/-/3258307

またソレイマニはイラクの反政府デモに対しても、親イラン民兵を使って武力鎮圧させました。

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産経

「イラク国内で拡大している反政府デモで、ロイター通信は4日、全土で計44人が死亡、数百人が負傷したと伝えた。デモは昨年10月に政権が発足して以来、最大規模となっている。 イラクでは2年前、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)に対する「勝利宣言」が出され、国家再生に期待が集まったが、汚職や経済低迷が改善されない現状に民衆が怒りをぶちまけた形だ」(産経2019年10月4日)

そしてそのイラン・イラク両国民の革命防衛隊への反感を米国へそらすため、カタイブ・ヒズボラなどのテロリスト組織は、12月31日には米国大使館の占拠を試みました。乱入した後の大使館にはソレイマニの名がそこら中に落書きされていたそうです。

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https://www.fnn.jp/posts/00049648HDK/202001061730

その前日の12月27日には、イラク北部のK-1空軍基地がロケット弾で攻撃され、米民間人(通訳)1人が死亡しました。米軍はこの時カタイブ・ヒズボラ施設を空爆して報復しています。
これを受けて、トランプは元日に、ポンペオ国務長官の持論だったソレイマニ司令官殺害を決断し、空爆作戦が1月3日に実施されました。
つまり米国はピンポイントでテロリストを狙ったわけです。
なお一部でポンペオが反対していたかのような報じ方をされていましたが、むしろこのソレイマニ空爆をかんがえたのは彼です。

ソニイマニは殺害された時も、イラクで大規模なテロを準備して、最新兵器をイラクに移送する準備をしていたと伝えられます。
したがって西氏はこう結論づけています。

「端的にいえば、ソレイマニ司令官はイラクで米軍や米関連施設への攻撃を指揮していた戦闘員なので、米軍の待ち伏せ攻撃は暗殺ではない」(西前掲)

このように戦時国際法の要件である自衛権の行使であり、かつ「正当な目的」があったと判断されたために、米国と一定の距離を持っているヨーロッパ諸国も即座に支持を表明したのです。

ただし問題はこの後だと西氏は問いかけます。
つまり米国が「自衛以外なにかしたのか」という大きな平和戦略のアフターフォローです。

「米国はそのような目的を示していない。正戦論は、報復の応酬ではなく、平和の回復を目的とする戦争しか正当化しない。しかし、2010年代のイラクやシリアにおける米国の戦略は、モグラ叩きのようにテロ組織を叩く一方で、テロ組織を生んだ状況は放置していた。
トランプ氏が批判する「終わりなき戦争」を米国が続けてきたのは、米国にもイランなど近隣諸国にも受け入れ可能な条件で平和を回復するための、外交交渉や復興支援が面倒だからである」(西前掲)

いままで米国が中東のみならず、世界各地で米国のテロが起きるたびに自衛戦闘を行い、そしてそれが報復の連鎖を呼んできたという批判は一面の真実なのです。
それは米国の自衛戦闘が、「全体として平和を実現する戦略」(西)に組み込まれていないという根本的欠陥あるからではないでしょうか。
トランプがあえてソレイマニ殺害という火中の栗を拾ったなら、その後にどうやって中東に平和を確立するのか示さねばなりません。
それが真にトランプが言う「中東火薬庫からの足抜き」なのです。

 

 

2020年1月10日 (金)

イラン情勢をめぐるさやあて合戦

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昨日書くはずでしたが、ゴーンの会見があったために一日遅れになったとおもったら、今度はイランにおいてウクライナ航空機が「撃墜」されました。これについてはイラン撃墜説がでていますが、詳細は不明です。
追記・カナダ首相も認める発言をしました。ほぼイランの誤射で間違いないようです。

さて、今回のイランの攻撃は、「正確に目標から外す」ということをしているようにも見え、実はイランが革命防衛隊をなだめるためのなんちゃって攻撃だという報道もなされました。

「イランによる弾道ミサイルの標的となったイラク西部の基地の最新の衛星写真を分析したところ、軍用機の格納庫や倉庫などがピンポイントで破壊されていることがわかりました。アメリカ軍に大規模な人的被害が出ないよう、標的を慎重に選んだことがうかがえます」(NHK1月8日)

CNNが着弾前後の衛星写真をアップしています。

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CNN

「目に見える一番大きな違いは、滑走路近くのコンクリートの1区画だ。建物がクレーターとなっているように見える。5つ並んだ中の真ん中の建物や近くの建物に被害が出ているようだ。専門家によれば、ヘリコプターが見えることから、米軍が使用していた箇所が攻撃を受けた可能性があるという。
そのほか、約610メートル離れた建物などにも損害が見られた。こうした建物が何に使われていたのかは不明」(CNN1月8日)

「現時点でイランは合計15発の弾道ミサイルを発射したことが確認されていると米国防当局が発表。
• 10発はイラク西部のアル・アサード航空基地に命中。
• 1発はイラク北部のアルビールの軍事基地に
• 4発は失敗」(米国ABC)

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イランが使用した弾道ミサイルはスカッドCだと言われています。北朝鮮が輸出したノドン系のミサイルだという情報もありますが、イラン・イラク戦争においてリビアから輸入したとみられ純正スカッドを177基発射していますので、真偽は定かではありません。
ただし、北は核兵器と弾道ミサイル開発において同盟を結んでいますから、イランへ現在弾道ミサイル技術を供給する国は世界広しといえど北しかいないのは確かです。

着弾した米軍基地は4箇所です。

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BBC

 

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