先日の「遼寧」空母打撃群の日本接近に際して、空自が興味深い訓練をしていたことがわかっています。
「中国海軍の空母2隻が6月に日本周辺の太平洋上などに展開した際、自衛隊が、沖縄県・尖閣諸島周辺の海域で、空母に対する攻撃訓練を行っていたことが分かった。日本や台湾の近海で軍事的威圧を強める中国海軍に対し、対抗する用意ができていることを明確に示す意味合いがある。
複数の政府関係者によると、自衛隊による訓練は6月に行われ、航空自衛隊のF2戦闘機が複数参加した。訓練場所は尖閣諸島北方の海域で、中国空母2隻のうちの「遼寧」が通過した地点にあたる」
(読売8月14日)
中国空母を想定、自衛隊が攻撃訓練…「遼寧」「山東」太平洋展開の6月に : 読売新聞
この訓練は空自単独でしたが、それをさかのぼる4カ月前には同様の日米共同訓練が行われています。
「自衛隊と米軍が昨年2月に実施した日米共同指揮所演習「キーン・エッジ」で、台湾に侵攻する中国軍艦艇に対し、自衛隊機がミサイル攻撃を行う判断が下されたことなど演習の概要が6日、判明した。日米共同演習で本格的に台湾有事を想定したのは初めて。演習の結果は有事の際に自衛隊や米軍が行動する際の指針となる作戦計画に反映されているとみられる」
(産経4月6日)
<独自>台湾有事を想定、空自戦闘機が中国艦を攻撃 日米共同演習の概要判明 - 産経ニュース
対艦ミッションの場合、F2は国産の対艦ミサイル ASM-2 を4発搭載し、さらに航続距離を延長するために600ガロン増槽2本と自衛用の短射程ミサイル2発も装備します。
大変な重量で、これを翼下に吊るして行動できる機種は世界でも限られています。
空自
このF2によるる訓練を行った水域は普段訓練でつかわれていない地域で、明確に中国に対しての政治的シグナルです。
「訓練場所は尖閣諸島北方の海域で、中国空母2隻のうちの「遼寧」が通過した地点にあたる。日本の排他的経済水域(EEZ)内とみられる。遼寧は周辺海域を既に離れていた。この地点は普段、自衛隊による訓練が行われていない海域だという。F2に搭載した空対艦ミサイルで、空母を攻撃する手順などを確認した。
F2は高い対艦攻撃能力を持つ機体である一方、ステルス性能は限定的だ。最新鋭戦闘機ではなくF2をあえて投入することで、中国側に見せるように訓練を実施した。政府関係者は「時期、場所、内容からして、対抗措置とのメッセージを中国に確実に伝える訓練だった」と明らかにした」
(読売前掲)
また地上から発射する対艦ミサイルの防衛網も一段と強化されています。
「湯布院駐屯地には25年3月までに第8連隊を設ける。九州の戦力は第5連隊と合わせて2個連隊体制となり、有事の際は南西諸島への速やかな増援が可能になる」
(読売2024年1月29日)
南西諸島の地対艦ミサイル防衛網を強化、火力3倍に…陸上自衛隊が大分県・沖縄県に連隊新設:地域ニュース : 読売新聞
よく日本は中国の勝手放題な空母の動きに遺憾としか言わないと揶揄されていますが、なんの自衛隊はしっかりとこれ以上なめたまねをすれば全部海の藻屑にできる能力を持っていることを示しています。
今回の遼寧艦隊もいったんは北上しながらもそれを諦めたように見えるのも、このような背景がありそうです。
唐突に見えた立憲と公明の合体は、総裁選前から進行していたことを、野田氏が明らかにしてしまいました。
「立憲民主党と公明党が衆院選に向けて新党結成で合意した。急転直下の展開となったが、両党関係者は半年近く前からひそかに接触を重ねてきた。衆院解散報道の2日後にあった極秘の党首会談を契機に、決断に至った。
「(自民党が昨年秋に)総裁選挙をやってる最中ぐらいから、公明党とは水面下で協議を進めてきた。急に浮き上がってきた話ではない」
立憲の野田佳彦代表は、15日の公明との党首会談に先立つ両院議員総会で、連携に向けた準備を進めてきたことを明らかにした」
(毎日1月15日)
読む政治:半年前から水面下で交渉、極秘会談 立憲・公明が新党結成に至るまで | 毎日新聞
やれやれ毎日新聞によればこの協議は、「両党の関係者によると、昨年7月の参院選で自民、公明両党が大敗した直後の夏ごろ」からだったそうで、なんだ石破政権のかなり初期からじゃないですか。
公明は連立離脱交渉を水面下でしながら連立を組んでいたわけで、堂々たる面従腹背ってヤツですな。
たまたま高市政権が誕生したために、この時期になっただけのようです。
となると、連立離脱は高市氏の保守的傾向に反発したといままで言われていましたが、どうやら石破政権というだれが見ても泥船に乗ったままだとこれ以上の議席を失うという読みがあったからのようです。
自民党内の反高市氏の議員諸公よ、今回の公明連離脱は立憲の工作なんですぜ、いいんでしょうか。
では、公明党の思うような展開となるでしょうか。
どんなもんでしょうか、数字的にはなる可能性があります。
「次期衆院選は、公明候補が比例代表に回り、立民候補が小選挙区で公明支持者の支援を受ける態勢となる。一昨年の衆院選での政党別の得票数で単純計算すると、比例代表の獲得票数は立民1156万票、公明596万票で、合計すると自民1458万票を上回ることになる」
(産経1月15日)
立民・公明、昨年末から接触 新党結成も「野合」批判は免れず 不信と警戒感も渦巻く - 産経ニュース
公明党の獲得票数は2025年7月の参院選で全国比例で521万票を獲得していますから、この得票数を衆院289選挙区に単純に分配すれば、1選挙区当たり約1.8万票となります。
俗に「公明2万票」という根拠がこれで、立憲はこれを大いにアテにして連立に手を突っ込んでいたわけです。
政治ウォッチャーの新田哲史氏はこんな連立組み換えの裏には「あの人」がいると見ています。
でしょうね。
こういう二極対立型政界再編ってあの「昭和の妖怪」こと小沢氏の大好物ですからね。
この御歳83歳の妖怪さんはこれを主食にしてこの半世紀生きてきたんですからコワイ。
ああ、いやだ、立憲の支持層がシルバーになっているのは有名ですが、党の脳味噌まで超高齢化してたんですね。
では今回公明が立憲に寝返ったことによってどのような変化が生まれるでしょうか。
公明は長い期間にわたって連立を組んで得たのは国交省利権でした。
2004年から実に国交大臣6人。もう完全な指定席です。
公明新聞にやたらと大手ゼネコンの広告が目立つのはこのせいです。
赤旗
「東京都築地市場の豊洲移転計画が大問題になるなか公明党の機関紙「公明新聞」が、豊洲新市場(江東区、東京ガス豊洲工場跡地)の工事を受注したゼネコン14社から、市場施設建設工事が始まった2014年以降の3年半だけでも計190回余の広告を掲載し、推定8732万円の広告料収入をえていたことが17日、本紙の調べで明らかになりました」
(しんぶん赤旗2017年6月18日)
公明新聞に広告190回/豊洲受注ゼネコン14社/8700万円(推定)“事実上献金”
この他にも副大臣などを多数送り込んできましたが、こうやって陳情案件の窓口となることで利権を握ってきました。
これは大きな公明党の資金源だったはずですし、選挙などでもなにかと協力関係にあったはずです。
さぞかし斎藤代表はこの利権すべて失うことは悔しかったことでありましょう。
そして母体の創価学会がカリスマだった池田教祖亡き後に求心力を喪失し、分解過程に入ったと噂されています。
それでなくとも高齢化が進み、中央と地方の乖離は激しくなる一方なところに、それを縫い合わせてきた国交省利権がなくなればどうなることやら。
そのうえにまったく考え方が違う立憲との統一ですから、いままでやってきたことの正反対です。
まともな公明党員はたまったもんじゃありませんな。
よく連立の力をみせつけたのは選挙協力だといわれていますが、これにも濃淡があるといわれています。
公明党の手足となっている創価学会員が本気で自民候補に協力するのは、自民党内左派だけに限られていました。
公明党沖縄に顕著ですが、知事選、辺野古移設問題などことごとく連立政権の政策に反発して、翁長・デニーに馳せ参じていたことは知られています。
ですから、今回公明が連立離脱したとしても、その余波をもろに被るのは反高市派の自民党リベラルなのです。
なお、新党名は「中道改革連合」、略して中カク派だそうです。ぎゃはは。
高市首相がようやく解散の決断をしました。
選挙の洗礼をうけずに連立を組み換えたのですからむしろ遅いくらいで、補正予算がなければ去年のうちにやってもよかったくらいです。
野党はとぼけて私利解散だなんて吠えていますが、もっとも有利なタイミングで解散するのは首相だけに許された「特権」です。
もう野党はパニックです。
れいわ新撰組の山本太郎がこんなことを叫んでいました。
「れいわ新選組の山本太郎代表が14日、高市早苗首相が通常国会冒頭で解散に踏み切ることに言及した。
高市首相はこの日、与党幹部に解散意思を伝えた。これまで解散風にも沈黙していた山本氏だが、「物価高と倒産のさなか、国民生活を無視して解散をやらかすバカどもを日本から叩き出そう。消費税は廃止だ」と怒りをにじませ、初めて所感を表明した5
(東京スポーツ1月14日)
れいわ・山本太郎代表が怒り表明「解散をやらかすバカどもを日本から叩き出そう」 | NEWSjp
もう完全にパニくっているといったかんじね。追い出されるのは君ら。
れいわみたいな鼻クソ政党は置くとして、立憲と公明がなんと統一するそうだというのにはさすがその節操のなさにたまげました。
方や野党第一党というのか唯一のうたい文句、そして方やつい去年の秋までは紛れもない連立与党、これが衆院だけとはいえ統一しちゃうというのですからハレンチも極まれり。
立憲民主党の野田代表 公明党の斉藤代表が会談 両党間のより緊密な連携検討へ | NHKニュース | 高市内閣、衆議院選挙、衆議院
「立憲民主党と公明党は14日、新党を結成する方針を固めた。23日召集の通常国会冒頭での衆院解散が迫る中、15日に両党首が会談し、合意を目指す。ともに「中道」を掲げる両党が新党を結成することで、衆院選の構図を変え、将来的な政界再編につながる可能性がある。
複数の両党関係者が明らかにした。両党は早期の解散・総選挙に危機感を募らせており、新党結成で与党に対抗し、巻き返しを図る。立憲と公明両党の参院議員は残したまま、衆院議員のみで新党を立ち上げる方向だ」
(朝日1月14日)
立憲と公明が新党結成へ、15日に党首会談 公明は小選挙区撤退方針(朝日新聞) - Yahoo!ニュース
立憲は「解散には大義がない」なんて言っていますが、宗教政党とたんなる提携ではなく「新党」まで進むとは、さすがというかなんというか。
朝日は「政界再編につながる」なんて期待感をこめていますが、どうみてもこれは自滅の道です。
立憲の現有議席は、ゲル政権の派手な自壊によって得た棚ぼたに過ぎないのは誰でも知っています。
いわばアブクのようなもので、自前の政策で勝ったわけじゃありません。
公明党も自民というジンベイザメにコバンイタダキよろしくくっついて、利権とポストを享受してきただけの政党です。
それをナニを切れたのか、連立離脱すれば困ったことになるだろう、サナエを降ろしたらまた連立復帰してもいいぞ、なんて策謀をしていたらなんと高市政権はロケット発射して手の届かない所に行ってしまいました。
いまや政権支持率は75%。若年層の支持率に至っては実に92.4%。
産経
「産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)が20、21両日に実施した合同世論調査で、高市早苗内閣の支持率は75・9%と、政権発足以来の高水準を維持した。その要因の一つが、新たな支持層の獲得だ。高市内閣は、今まで新興政党がよりどころとしてきた若年層や、自民の勢力が比較的弱かった地域で支持を獲得しており、重層的な支持が強みとなっている」
(産経2025年12月22日)
高市内閣、18~29歳の支持率92% 若者世代で圧倒人気…全世代65%超 政策も好感 - 産経ニュース
統計数字で92.4%というのは、ほぼ全員という意味です。
こんな特出した数字を見たのははじめてです。
では、政党支持率を見てみます。NHKの今年1月13日のものです。
各党支持率 自民32.2% 立民7.0% 国民4.6% 支持なし37.0% NHK世論調査 | NHKニュース | 選挙、国会
政権支持率と政党支持率を足したいわゆる青木率はこれまた仰天の107%ですから、これで高市さんが選挙に負けたらそのほうがビックリです。
ちなみに較べちゃ可哀相ですが、石破政権の去年参院選時の政権支持率は31%、自民の政党支持率は25%でした。
したがって青木率は56%。だいたい高市政権の半分です。
青木率が50%を下回ると政権運営が厳しくなったり、政権が倒れたりする可能性が高いとされていますwy、そのとおりとなりました。
石破内閣支持率31% 発足以来“最低”【NNN・読売新聞 世論調査】(2025年3月16日掲載)|日テレNEWS NNN
野党や与党の中でもふーブー言っていますし、メディアは矛先を揃えて攻撃をしていますが、もっともクールに見ているのは市場です。
日経平均先物を見てみましょう。日経平均先物1限月:チャート - Yahoo!ファイナンス
54340円で、とうとう5万4千の壁を突破しました。
もうお分かりですね、市場は高市政権勝利を完全に既成事実として折り込んでいるということです。
米国はイランに介入するでしょうか。
The Atlanticはこのように述べています。
「イランの石油輸出の90%を占める中国は、捕食的なパートナーであることが証明されている。ドナルド・トランプはイランの核施設の上に16発のバンカーバスター爆弾を投下し、沈没費用、制裁、石油収入の損失で国に5兆ドル以上の損失をもたらした企業をほぼ破壊した。さらに、過去の米大統領がイランの政治的争いに関与することをためらっていたのに対し、トランプ大統領はイスラム共和国に対し、抗議者を虐殺すれば米国は「対応の準備が整っている」と警告している」
(The Atlantic 2026年1月10日)
Is the Iranian Regime About to Collapse? - The Atlantic
そして現実に米国は介入を「検討を開始している」と伝えられています。
「米政府当局者によると、ドナルド・トランプ米大統領は13日、イランでの反政府抗議活動への対応に関する具体的な選択肢について説明を受ける予定だ。これはトランプ氏が、これまで繰り返し警告してきたように、イラン政権によるデモ弾圧への対抗策を検討している兆候だ。大統領と政権高官との会議では次のステップについて協議される予定で、その中にはオンラインでの反政府勢力の支援強化、イランの軍事・民間施設に対する秘密サイバー兵器の展開、政権への追加制裁、軍事攻撃などが含まれる可能性があると、当局者らは述べた。マルコ・ルビオ国務長官、ピート・ヘグセス国防長官、ダン・ケイン統合参謀本部議長がこの会議に出席する見込みだという
(ウォールストリートジャーナル 2026年1月12日)
米、イラン介入計画を本格化 軍事攻撃も選択肢 | The Wall Street Journal発 | ダイヤモンド・オンライン
トランプは1月9日、米国はイランの「もっとも弱いところを非常に激しく」攻撃すると述べていますが、同時に「地上部隊の投入」はないとも明言しています。
元来、トランプは戦争を嫌います。戦争は富の浪費であり、わけのわからない取り返しがつかない事態を招くからです。
軍事的オプションはディールに箔をつける重しにすぎないと思っています。
ベネズエラを空爆したのは、場所がカリブ海を挟んで一衣帯水の場所であったからで、遠い国に介入してなんになるショーモーじゃねぇか、と思っているはずです。
ですから介入するとしても、そのやり方としては限定的です。
ざっとこういうところでしょうか。
①口だけの反政府勢力支援
②イランの軍事・民間施設に対する秘密サイバー兵器の展開
③政権への追加制裁
④空爆などの直接軍事攻撃
⑤ソレイマニ暗殺型攻撃
日経
①はタダですから大いにやるでしょう。得意のビッグマウスでイランを罵倒するのはおてのものです。
ただ、いくら罵倒してもイランは痛くも痒くもないばかりか、ほら見ろ、民主化デモの背後には米国がいるんだぜと国内宣伝するでしょう。
実際に似たようなことをハメネイは言っているようです。
ある意味、トランプが言えば言うほど神権体制を利することになるという側面があります。
②はもっともやりそうなオプションです。ペネズエラ攻撃の前段で激しい電子妨害やサイバーアタックがあり、その結果ベネズエラ軍は手足をもがれてしまいました。
しかしこれは形を変えた軍事的攻撃です。
③追加制裁も得意中の得意で、追加関税をかけるというのはいまも口にしていますから現実性がもっとも高いオプションです。
実際にやるみたいです。
「アメリカのドナルド・トランプ大統領は12日、イランと商取引をしている国の物品に25%の関税を課したと発表した。イランで反政府の抗議行動が3週目に入るなか、同国にとって圧力となり得る。
トランプ氏は自らのソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に、「イラン・イスラム共和国とビジネスをしているどの国も、アメリカ合衆国とのあらゆるビジネスに対して25%の関税を支払うことになる」と書き込んだ。イランと「ビジネスをしている国」の意味は、詳しくは説明していない」
(BBC1月15日)
トランプ氏、イランのビジネス相手国に25%の関税を課すと発表 - BBCニュース
関税はもっともイージーですが、やった気分だけ味わえるという便利なツールです。
ここに止まっている限りは、イランの現体制が潰れることはありません。
④の空爆はないとはいえませんが、かぎりなく可能性は低いでしょう。
昨年6月、イスラエルとイランの間で行われたいわゆる「12日間戦争」の終盤に、米国は「ミッドナイト・ハンマー作戦を実施し、100機を超える軍用機を投入し、戦闘機に護衛されたステルス爆撃機B-2スピリットでイランの中核的な核施設を爆撃しました。
検証されていませんが、これにより核施設は事実上崩壊しました。
これが、今回のイラン体制のぐらつきのきっかけとなっています。
あれほどまでにカネと人材をつぎ込んで国是のように邁進してきた核保有があっさりと一回の攻撃で挫折したことは、たとえようもない衝撃をイラン国内にもたらしたはずです。
ハメネイとそれを支える神権体制の権威はボロボロになり、それが今回の民主化デモが起きるきっかけを与えています。
ただし、もう一度軍事攻撃をするかといえばどうでしょうか。
やるとした場合ありえるのは、パーレビが主張している「都市部を掌握し維持」しようとする民衆に対して、攻撃をしかける革命防衛隊を軍事的に排除することですが、都市部をピンポイントで空爆するのは地上からの指示がないと難しい上に、失敗すれば多数の民衆も巻き込みます。
これはイスラエル軍のガザ攻撃をみればわかるでしょう。
象徴的に革命防衛隊の司令部を爆撃するくらいはできるでしょうが、効果は限定的です。
すると出てくるのは⑤の個人をターゲットとした攻撃です。
これはトランプ1期目の2020年1月、イラクの首都バグダッドでイラン革命防衛隊の最高指揮官だったソレイマニをドローン攻撃により暗殺した経験があります。
ただしこれで、今のイラン体制が転覆するかといえば、しないでしょう。
イランの神権支配は最高指導者を拘束したり殺害しても終焉しません。
かつてのイスラム原理主義革命が成功したのは、パーレビ国王に代わってホネイニというカリスマが存在したからです。
このような存在がなければ、国民をまとめる指導者が不在です。
今のイランの神権体制は、抵抗する国民を殺すことは朝飯前ですから虐殺をし続けます。
2019年の反体制デモのときには1500人を虐殺し、1988年には反対制派の国民を5000人から3万人も拘束して処刑したとされています。
彼らにとってデモをするような者は許しがたい背教者であり、殺してよいのです。
いやむしろ抹殺するのが正しいくらいに考えているはずです。
さてどうトランプが決断するかわかりません。
今のトランプにベネズエラとイランを同時進行で解決するのはちと難しいんじゃないでしょうか。
「通貨下落を発端とした反体制デモが続くイランは11日、アメリカから攻撃されれば報復措置を取ると警告した。これは、イラン当局が抗議者を殺害するような事態になれば軍事的に対応するという、アメリカの警告に対するもの。
BBCが取材した複数情報筋や活動家によると、イラン政府はデモへの弾圧を激化させており、これまでに数百人の抗議者が死亡している。
首都テヘランの情報筋は11日、「ここの状況は本当に、非常に悪い」と話した。「私の友人の多くが殺害された。(当局は)実弾を撃っていた。戦場みたいで、通りは血だらけだ。(当局は)遺体をトラックで運び出している」
(BBC1月12日)
イラン、アメリカに攻撃されたら報復すると警告 反体制デモの死者500人超と人権団体 - BBCニュース
いままで体制派だったバザール商人の抗議デモから始まった反政府デモは直ちに大学にも波及し、テヘラン市内の7つの大学でデモが行われました。
欧米の人権団体からの情報によると、抗議デモは現在、イランの185都市に拡大し、さらに増えています。
どうやら「治安部隊」こと革命防衛隊は実弾を使用しているようです。
BBCは、テヘラン近郊の遺体安置所を捉えた映像に、約180の遺体袋が映っているのを確認し、米国に拠点を置く人権活動家通信社(HRANA)は、イラン各地で抗議者495人と治安要員48人の死亡を確認したとしています。
「AFPが撮影場所を特定したこの動画は、テヘラン南郊カフリザクにある遺体安置所で撮影されていた。黒い袋に包まれた遺体が屋外の地面に並べられ、遺族とみられる人々が行方不明の家族を捜す様子が映っている。施設は「テヘラン州法医学鑑定・検査センター」として知られている。
ノルウェーに拠点を置く人権団体「イラン人権(IHR)」は、このカフリザクの動画に言及し「イラン全土で起きている抗議デモの中で殺害された多数の人々」だと述べた。
同じくノルウェーを拠点とする人権団体「ヘンガウ」は、「カフリザク遺体安置所の内外で血まみれの遺体が数十体ある映像を自ら確認した」とし、「広範かつ深刻な犯罪」を示していると述べた。
活動家らは、インターネットが遮断される中で治安部隊が実弾を使用し、2週間にわたる抗議活動を弾圧していると非難。すでに数百人が殺害されている可能性があると懸念を表明している」
(AFP1月12日)
イラン首都南部の遺体安置所、遺体多数映る動画をAFPが検証 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News
AFP
わずか2週間の騒乱で約500人が殺害され、1万600人が拘束されたといいます。
数字は流動的で推測ですが、おそらくこれを上回る犠牲者がでているはずです。
バザールの商人は1979年のイスラム革命において重要な役割を果たし、長年にわたりイスラム共和国の中核的基盤かつ経済的基盤として機能しました。
「しかし近年、政権はイスラム革命防衛隊を軍産複合体に築き上げ、そこから富と権力のネットワークが流れ込んでいる。8年間政権に人質にされたイラン系アメリカ人実業家シアマク・ナマジは、イラン国家を「IRGCとその卒業生が支配する競合するマフィアの集合体」に例え、彼らの最大の忠誠は国家、宗教、イデオロギーではなく個人的な富にある。この制度は政権のイデオロギー的結束を弱めただけでなく、伝統的な商人階級を追い出し、バザールを支えの柱から異議申し立ての源へと変えてしまった」
(The Atlantic 2026年1月10日)
Is the Iranian Regime About to Collapse? - The Atlantic
彼らが政権を見放して反政府側についたことが、致命的な力関係のシフトにつながったようです。
既得権益層が分解し、国民をひとつに結びつけていたはずの説得力のあるナラティブが消滅してしまったのです。
「国家崩壊の第四の条件は、国の社会経済的、地理的、イデオロギー的な溝を橋渡しする説得力のある共有された物語である。今日のイランでは、政権の建国原則である汎イスラム革命イデオロギーは、激しい矯正的なナショナリズムに取って代わられています。国家の使い古されたマントラ「アメリカに死を」「イスラエルに死を」は、国家の自己利益の要求にかき消されつつある。「イラン万歳」だ。
これは単なるトーンの変化ではなく、今や広く使われている抗議のシュプレッション「ガザにノー」という抗議の唱和が際立つ、政権の地域的冒険主義への完全な拒否です。レバノンには反対;私の命はイランのためだけに。」
(The Atlantic前掲)
既存のナラティブはイスラム原理主義でした。
しかし女性のブルカ拒否運動に見られるように、それはいまや大きな桎梏でしかなく、それに代わって「イランのために」に転換したとThe Atlantic は見ています。
つまりいままでうんざりするほど注入され続けてきた「反米・反イスラエル」よりも、自らの生活を大事にするイランファースト、「普通の生活を返せ」という主張が支持を集めているそうです。
では、今の神権政治に代わる政体はなんでしょうか。
「イラン人が1979年からよく知っているように、無慈悲な戦いが革命を定義する傾向がある。約半世紀にわたり海外で過ごしたパフラヴィーは、そのような選挙で勝つための現地の勢力をまだ整えていない。彼はまた、より深い問いに直面している。
イランの君主主義者たちはどのような秩序を築こうとしているのか?パフラヴィーは一貫して、イランの民主化を支援し、国民に選ばれれば立憲君主として仕えることも目標だと述べている。しかし、彼の最も熱心な支持者の多くは絶対的な独裁体制の復活を声高に主張しています。この緊張は、不満を抱くエリート層を政権に反発させる能力を妨げている」
(The Atlantic前掲)
もしかつての皇太子であるレザ・パーレヴィが、親政にこだわらず開明的な立憲君主制を選ぶのなら西側諸国の支持をえられるでしょうが、。レの支持者はThe Atlantic によればもっと強力な親政を臨んでいるようです。
この次の政権の受皿が明確になって、なんらかの指導部ができなければ、今の騒乱は一時的なものに終わるでしょう。
イラン情勢がわずか数日いっそう炎上しています。
イランと「伝統的友好関係」があるそうな日本のメディアは、ナニに忖度しているのか無関心を決め込んでいて、読売も朝日も外信にわずかに小さな記事を申し訳ていどに乗せているだけです。
一方欧米系メディアは、連日一面トップ扱いで大きく取り上げています。
BBCを見てみましょう。
「通貨下落を発端としたイラン各地の反体制デモは10日にも各地で続き、100以上の都市や町へと広がり、近年で最大規模のものになっている。多数の抗議者が殺傷されている様子で、さらに多くが拘束されている。イラン国内の医療機関の医師たちは9日夜、BBCに対して、眼科病院をはじめ病院が死傷者であふれていると話した。抗議ではイスラム共和国の終わりを求める声が上がる一方、イランの治安当局はそろって抗議参加者に強い警告を発している。
イラン発のさまざまな映像には、首都テヘランで9日夜に抗議者たちが大勢で通りに出て車両を燃やすなどしている様子や、首都近郊カラジで政府庁舎が放火された様子などが映っている。
イラン革命防衛隊は10日、治安当局と共に「国益と国の戦略インフラおよび公共の資産を守る」活動に参加すると表明した」
(BBC1月10日)
イランの医療関係者、死傷者が病院にあふれていると話す 反体制デモ続く - BBCニュース
CNNはこう伝えています。
「(CNN) イランで行われている抗議活動に参加した複数の人々が、首都テヘランの路上に多くの群衆が集まり、残忍な暴力が振るわれたと証言した。ある女性は、病院で「遺体が積み重なっている」のを見たと話した。
身の安全を理由に匿名で証言した60代半ばの女性と70歳の男性は、8日と9日にテヘランで行われたデモには、あらゆる年齢層の人々が参加したと語った。だが、9日夜には、軍用ライフルを持った治安部隊が「多くの人」を殺害したという」
(CNN1月11日)
イラン各地で抗議デモ、病院には「遺体が山積み」 インターネット遮断は逆効果に - CNN.co.jp
BBC
直接に自分が取材したのではない情報に対しては、必ず検証を入れるBBCはこのように述べています。
「デモはイランの国内各地で行われている。BBCヴェリファイ(検証チーム)は67カ所の映像を確認した。
南東部ザヘダンで9日、金曜の礼拝後にデモ参加者が集まった様子の映像を、BBCペルシア語とBBCヴェリファイが検証した。
映像の一つでは、ハメネイ師を指して「独裁者に死を」と叫ぶ声が聞こえる。別の映像では、地元のモスク付近にデモ参加者が集まっている状況で、複数の大きな破裂音が聞こえる。
8日に撮影され検証された別の映像には、中部イスファハンにある国営放送IRIBの子会社事務所が燃えている様子が映っていた。火災の原因や負傷者の有無は不明」
(BBC前掲)
詳細な分析も出始めています。
ボストンの伝統ある月刊誌The Atlanticはこのような署名記事を掲載しています。
Is the Iranian Regime About to Collapse? - The Atlantic
「47年前、イランはアメリカと同盟していた君主制を反米神権政治に置き換える革命を起こしました。今日、イラン・イスラム共和国は反革命の瀬戸際に立っているかもしれない。
歴史は、体制が単一の失敗からではなく、致命的なストレス要因の重なりによって崩壊することを示唆しています。私たちの一人、ジャックは、革命が成功するために必要な5つの具体的な条件について長い記事を書いています」
(The Atlantic 2026年1月10日)
イランの体制が倒れる5つの条件とはなんでしょうか。
まず第1に深刻な財政危機です。
「これらは財政危機への対応として始まりました。国家通貨の暴落、財政が空っぽの国家です。アメリカの政治では、3%を超えるインフレ率は政権を失脚させる傾向があります。イランのインフレ率は全体的に50%以上、食料は70%で、世界でも高い水準の一つです。過去1年間で、イランの通貨はドルに対して80%以上下落しています。
1979年には1米ドルが70イラン・リアルの価値がありました。現在、その価値は147万リアルで、99%以上の減価償却となっています。イラン通貨は単なる交換手段というよりも、国民的絶望の日々の指標となっています。そして過去の経済危機とは異なり、今回の崩壊は階級を超え、バザールの商人や裕福な人々、貧困層にも影響を及ぼしています」
(The Atlantic 前掲)
実にインフレ率が平均で50%、特に重要な食料は実に70%にも達しています。
そして比例してイラン通貨はドルに対して80%も下落しています。
ベネズエラがそうであるように、ハイパーインフレは国民各層をまんべんなく直撃し、生活を破壊します。
結果、いままで政権を支えてきた富裕層、バザール商人までもがデモに立ち上がっています。
唯一の外貨を稼ぎだしていた原油輸出は、経済制裁を食らって過去1年で20%下落しました。
イランは中国にダンピング価格で石油を売ってどうにか糊口を凌いでいるありさまです。
電気や水の配給は途切れがちで、若者の失業率は青天井で、外国に人材流出が絶えません。
もう一つの重要な崩壊の予兆は支配階層が分裂していることです。
「国家崩壊の第二の条件であるエリートの疎外もイランで広く見られます。
1979年に広範なイデオロギー連合として始まったものは、2026年までに一人政党、すなわちアリ・ハメネイ政党に縮小した。
イスラム共和国の建国の父であり元首相の一人であるミール・ホセイン・ムサヴィは、現在15年目の自宅軟禁状態にあります。
存命の元大統領は全員沈黙または排除されている。モハンマド・ハタミは完全なメディア禁止下にあり、マフムード・アフマディネジャドは周縁化され監視され、ハッサン・ロウハニは88名からなる専門家会議(次の最高指導者を選ぶ聖職者)への議席獲得を禁じられた」
(The Atlantic 前掲)
いまやイランはハメネイひとりの独裁国家と成り果て、かつて共にイスラム革命を指導した元大統領や首相らは全員が自宅軟禁されています。
また国家の行政基盤を作っていたテクノクラートや技術官僚たちも、なんの専門知識もないハメイニの取り巻きに取って代わられてしまいました。
かくしてかつてのソ連と同様に、イスラム共和国は核心となるべき信念を喪失し、権力を取り巻くのは富と特権に動機づけられた者たちだけになてしまいました。
死亡したソレイマニ司令官とハメネイ師
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58855
ハメネイは革命防衛隊を直接の指揮下に置き、数々のテロをソレイマニにやらせてきました。
典型的なのはシリアで、市民虐殺を繰り返してきたと言われています。
イラクも大半を掌中にしていますし、パレスティナのハマスやレバノンのヒズボラも革命防衛隊の別動隊にすぎません。
イエメンのフーシー派武装集団も同様です。
ソレイマニが率いるコッズ部隊に操られて中東全域がイラン化しつつあったのです。
この総指揮を執っていたのがソレイマニで、彼を抹殺したのがトランプです。
革命防衛隊(IRGC)がハメネイを支持しているのは利権のためで、いま燃え上がるデモ隊弾圧の前面に出ているのは彼らです。
メディアが「治安部隊」と言っているのは、ほぼすべてがこの革命防衛隊です。
彼らだけがハメイニ体制に忠誠を誓って国民に銃口をむけています。
彼らの暴力だけがハメネイを支えています。
長くなりましたので、明日に続けます。
もう少し情報が集まってきてから書こうと思っていたのですが、イランが急速に煮詰まってきているようです。
イラン情勢がいま一つ見えないのは、あの国が外国人記者の入国を一切禁じているためです。
SNSが唯一の外部とのツールで、そこからは多くの情報が送られてきます。
私が常々ウォッチしているのはMasih Alinejadという女性ジャーナリストからの発信です。
今年1月8日には。
またGoldie Ghamarの1月7日の発信も大規模デモと治安部隊の衝突を伝えています。
「北東部マシュハドで撮影され、BBCペルシャ語が実際のものだと確認した抗議行動の映像では、主要道路沿いを大群衆が移動している。「シャー(国王)万歳」、「これが最後の闘いだ! パーレヴィは戻ってくる」という声も聞こえる。数人が陸橋によじ登り、監視カメラらしきものを取り外す場面も映っている。
テヘラン東部で撮影された別の動画では、主要道路に沿って大群衆が歩いている。
同市の北部からBBCペルシャ語に送られた映像では、群衆が「これが最後の闘いだ! パーレヴィは戻ってくる」と声を上げている。北部の別の場所の動画では、抗議者らが治安部隊と衝突し、「恥を知れ」、「恐れるな、私たちは皆一緒だ」と叫んでいる。
中部の都市イスファハンの動画では、抗議者らが「独裁者に死を」と反ハメネイ師のメッセージを唱えている。北部バーボルでも、「シャー万歳」、北西部タブリーズでは「恐れるな、私たちは皆一緒だ」と唱える抗議者らの姿がそれぞれ撮影された」
(BBC2026年1月9日)
イランの反体制抗議、首都などで規模が拡大 多くの映像が示す - BBCニュース
これらの大規模デモがイラン政権側の官製ものでないことは、「アメリカに死を!」とか「イスラエルに死を!」とシュプレヒコールがまったくなく、「これが最後の闘いだ! パーレヴィは戻ってくる」ということを叫んでいることです。
ちなみに、かつて亡命先で死亡したパーレヴィ国王の息子は帰国すると発言しています。
「参加者らは、最高指導者アリ・ハメネイ師の失脚と、1979年のイスラム革命で追放されたかつての国王の息子で、現在はアメリカで暮らすレザ・パーレヴィ氏の帰国を求めて声を上げている。同氏はこの少し前、支持者らに対し、「街頭に出て、一致団結し、要求を叫ぼう」と呼びかけていた」
(BBC前掲)
レザ・パーレヴィの 呼びかけです。
王政復古をイラン国民が臨んでいるとは思えませんし、そうなって欲しくもありませんが、レザ・パーレヴィが帰国すれば大きな政治的シンボルとなることは確かです。
トランプはデモが武力鎮圧されれば介入すると言っています。
「ドナルド・トランプ米大統領は、イランが抗議デモを暴力的な手段で弾圧しようとした場合は介入する構えを示した。イラン政府は景気悪化への国民の不満を封じ込めようとする中、さらなる圧力をかけられた形だ。
イランでは1週間近くにわたり抗議デモが繰り広げられ、デモ隊と警察の衝突で数人の死者が出ている。トランプ大統領は「イランが銃撃し、平和的に抗議している人々を暴力的に殺害した場合、米国は救助に行く」とソーシャルメディアに投稿。「我々は臨戦態勢にあり、出発する用意ができている」と述べた。
ただ、米国がどのような行動を取るかは不明だ。米国は過去にもイランが情勢不安に陥った際、人権侵害を理由に同国関係者に制裁を科してきた。トランプ大統領はパレスチナ自治区ガザなどでの和平努力を推進する一方、昨年夏にはイランの核施設を爆撃するなど、より強硬な外交政策をとっている」
(ウォールストリードジャーナル2026年1月2日)
トランプ氏、イラン政府がデモ弾圧なら介入の構え | The Wall Street Journal発 | ダイヤモンド・オンライン 。
イラン情勢を注視しましょう。
正直に言って、今回のベネズエラ攻撃ほど書くのに苦しんだテーマはありませんでした。いまだ苦しんでいます。
判断すべき軸が見えないからです。
今回の場合は、国連憲章第2章第4項にある「武力行使の禁止原則」がそれに当たるでしょう。
国連憲章は、1945年6月26日に締結されたサンフランシスコで採択され、同年10月24日に発効した当時の状況に拘束されています。
つまり「時代の産物」でした。
この当時に想定された情勢は、戦勝国が戦後秩序を管理していけるという国連の仕組みを反映しています。
この仕組みがあって、はじめて「武力による威嚇や武力行使の原則的な禁止」や「国際紛争の平和的解決」「国境線の実力による変更の禁止」などといったいわゆる国際法の枠組みが出来ていくわけです。
では、いま国連が生きているでしょうか?
ウクライナでも、ガザでも、南シナ海においても、そして今回のベネズエラでもまったく無力でした。
たとえば2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、この武力行使禁止原則に対する重大な違反と認識されています。
国連総会では、この侵略に対し非難決議が採択されています。
しかしなんの効果もありません。ロシアは平然と侵略を続けて、止める気配もありません。
なぜでしょうか。答は非常に簡単です。
本来、世界平和と秩序維持のために作られた安全保障理事会がまったく機能していないからです。
常任理事国に拒否権が与えられているために、紛争解決のための決議が絶対に採択されないからです。
そしてこの常任理事国であるロシア、中国、米国こそが、常に世界の秩序の破壊者だというアイロニーです。
結果、国連は各国が口々に意見を言うだけの学級委員会と化しており、一切の実効性のある決議やましてや国際行動を取ることができません。
かといって常任理事国から拒否権を取り上げれば、即座に脱退することでしょう。
つまり、「国際法」はその違反を罰する主体を欠落させた「法のようなもの」にすぎないのです。
だからいくらハーグの国際司法裁判所が南シナ海の中国の軍事要塞を不法なものだと裁いたところで、中国が無視すればそれまでです。
いくら国際法が「法」と呼ばれても、それを司る司法権を持つ国内法とは根本的に異なるのです。
今回のベネズエラ侵攻においても、「法」の解釈が常に統一されているわけではないことが暴露されました。
国連のグテーレス事務総長は、米国の行動を国際法違反して強く批判しましたが、トランプは歯牙にもかけませんでした。
トランプはとうに国際法と国連を見限っているからです。
トランプは、2026年1月7日に大統領令を発表し、米国が66の国際組織から脱退し、これらの組織への資金拠出を打ち切る方針を示しました。トランプは、これらの66の国際組織が「米国の利益に反している」とし、マルコ・ルビオは、これらの組織を「反米的で、役に立たず、あるいは無駄だ」と非難しています。
アメリカ、66の国際協定・団体から離脱 気候変動対策など - BBCニュース
「ドナルド・トランプ米大統領は、気候変動問題に取り組むために設立された国連委員会や主要機関を含む66の国際的な組織から米国が脱退すると表明した。トランプ氏は7日夕に大統領令を発表し、66の国際的な団体および機関について、「米国の利益に反する」として、それらから脱退し、資金拠出を打ち切る方針を示した。
そのリストには、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際自然保護連合(IUCN)などが含まれている。トランプ大統領は、この変更により米国は対象団体への参加を終了し、全ての資金拠出を打ち切ると述べた。マルコ・ルビオ国務長官は7日にX(旧ツイッター)に投稿し、これら66の組織は「反米的で、役に立たず、あるいは無駄だ」と指摘し、米政府はさらに他の国際団体についても見直しを行っていると明らかにした」
(ウォールストリートジャーナル1月8日)
米、国連機関など66の国際的組織から脱退へ | The Wall Street Journal発 | ダイヤモンド・オンライン
おそらく米国は遠からず国連を脱退するかもしれません。
提供するカネは最大でありながらなんのメリットもないからです。
ならば国連と国際法自体が無力なケースにおいて、米国が現実的な解決に向けての行動が必要だと考えているでしょう。
それはそれで筋が通っています。
とまれ、 国際法が全ての国際問題を解決できる「魔法の刀」ではとうにないのは厳然たる事実で、それに代わるものが見えない中でもっとも早くそれを見せたのがトランプだったのはたしかなようです。
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