ドイツは本気だ
ドイツ連邦軍は本格的に復活しようとしています。
それもハンパではなく、一気にポーランド一国規模の増強を図ろうとしています。
レオパルト2A8戦車とボクサー歩兵戦闘車を計3500輌も調達しようというのですから、さすがに驚きました。
「ドイツは、最大2500両の装甲戦闘車両と最大1000両の主力戦車の購入を検討している。事情に詳しい関係者が明らかにした。対ロシアの抑止力として、北大西洋条約機構(NATO)の新部隊創設に向けた欧州共同の取り組みの一環になるという。
NATOはドイツに対し、10年以内に最大7個の戦闘旅団をNATOに送るよう求めている。匿名を条件に述べた関係者によれば、今回の購入が承認された場合、装甲車両および戦車はこうした部隊向けに装備される見通しだ。(略)
関係者によると、購入規模は最大250億ユーロ(約4兆2500億円)に上る可能性がある。ただし、達交渉はまだ進行中であり、最終金額はこれより少なくなる可能性もあるという。
注文は今後数カ月以内に確定し、年末までには議会が承認する見通しだと、関係者は述べた。
ロイター通信が詳しい関係者の話を基に報じたところによれば、ピストリウス国防相は、現在10万人いる訓練を終了した予備役を倍増させることを目指しており、任意による6カ月間の兵役プログラムを導入する法案を8月末までに可決させたい考えだ」
(ブルームバーク2025年7月4日)
ドイツ、250億ユーロ規模の戦車発注を準備-NATO部隊強化へ - Bloomberg
ロシアはウクライナ戦争に勝利した場合、時をおかずに領土を接するエストニア、ラトビア、フィンランド、ポーランドなどの近隣国に侵攻する可能性が高いとNATOは見ています。
それも消耗したロシア軍の再編が終了次第、時をおかずに実施されます。
おそらく4年以内とNATOは考えているようです。
あまり時間を置くと、NATO軍が強化されてしまうためです。
NHK
そのような状況が起きた場合、NATO軍は東欧の戦線に緊急展開するはずです。
その主力となるのがドイツ連邦軍です。
つい先日、ドイツ連邦軍が先行してリトアニアに投入されています。
「ウクライナ侵攻を続けるロシアへの警戒感がヨーロッパで高まる中、ロシアと国境を接するバルト三国のリトアニアではドイツ軍による駐留が始まりました。
ドイツ軍が単独で外国に部隊を常駐させるのは、第2次世界大戦後初めてです。
NATO=北大西洋条約機構は、ウクライナ侵攻を続けるロシアに備えて加盟国の防衛強化を進めていて、ロシアの飛び地カリーニングラードやその同盟国ベラルーシと接するリトアニアには、ドイツ軍が主力戦車「レオパルト2」などの部隊を配備し、5000人規模が駐留する計画です。
その部隊の発足式が22日に首都ビリニュスで開かれ、ドイツのメルツ首相がおよそ800人の兵士を前に「われわれは責任を自覚している。NATOはドイツを頼ることができる」と述べました」
(NHK2025年5月23日)
ドイツ軍 リトアニアに駐留開始 単独で外国に部隊常駐は第2次世界大戦後初 | NHK | ドイツ
また後方の兵站基地となるドイツや英国、フランスなどに対して、ミサイル攻撃やテロ攻撃が仕掛けられると想定されます。
これに対応して、国内の治安維持も飛躍的に強化されようとしています。
ドイツが手本にしたのはイスラエルです。
「欧州では安全保障のリスクが高まっているため準軍事組織の活用に注目が集まり、ドイツの国民保護災害支援庁も有事を想定した準備や訓練を開始、ドブリント内務相も「イスラエルの経験から民間防衛の在り方、弾道ミサイルやドローンがもたらす脅威への対処方法を学びたい」と表明した」
Innenminister Dobrindt möchte mit Israel die Cyberabwehr stärken | tagesschau.de
具体的には、英国が進めているホーム・ガード(民兵組織)です。
それにしても、時代が変わったとつくづく思いますね。
日本を半世紀以上支配してきた「専守防衛」思想と酷似したものが、ヨーロッパにもありました。
それが「メルケル軍縮」です。
世界の国防費推移を見てみましょう。
日本がいかに対GDP比て低位かお分かりになるでしょうが、ドイツはNATOの中でも群を抜いて低位です。
次にその推移を見ます。
諸外国の軍事費・対GDP動向をさぐる(2021年公開版)(不破雷蔵) - 個人 - Yahoo!ニュース
赤線がドイツ、紫色が日本ですが、ものの見事にペタンコのゼロ成長だとお分かりになるでしょう。
ドイツなど、自国の防衛と密接に関わるはずの2014年のクリミア侵攻があっても、ビクリともしなかったのですから相当なものです。
メルケル政権は、ロシアとは共存共栄時代に入った、経済的にも統合化が進んでいる、その象徴がノルドストリームだと考えていたのです。
そしてメルケルは、欧州で戦争は二度と起こらない、という願望と現実を混同した認識に基づいて、安全保障政策を進めてしまいました。
ですからメルケルは、ドイツ軍はNATO即応部隊や国際的なミッションに派遣される部隊だけてよい、国防は必要最低限でよいと考えていました。
かくして、ドイツ軍はメルケルによって徹底的に防衛費を削りまくられた結果、NATO諸国最弱なまでに転落していました。
「ドイツ議会の防衛委員会議長、ハンス・ピーター・バーテルス氏はドイツ海軍について「かつて無いほど小さくなってしまった、海軍は15隻のフリゲート艦を保有しているはずだったのに、7隻を廃止し、新たに4隻しか導入予定がない」と語り、ドイツ海軍の艦艇不足に警告を発した。(略バーテルス氏はさらに、陸軍が運用している53機の攻撃ヘリ「PAH-2(ティーガー)」についても言及し、特定のボルトに欠陥があるため飛行を中断している同機について、徹底的なチェックを行いボルトの交換を行う必要性を指摘した。
さらにドイツ空軍参謀総長が空軍の現状について発言し、空軍機はスペアパーツの不足にため地上に留め置かれているか、メンテナンスのため工場に送られているとし、ドイツ空軍の状況が良くない事を認めた。
そのため昨年、ドイツ空軍875人のパイロット中、NATOが定めた年間最低訓練時間(180時間)をクリアしたのは512人だけで、363人がこの基準をクリア出来ず、この状況に不満を抱いた、少なくない数のパイロットが空軍を去っていった。
今年2月に提出された報告書によれば、昨年、ドイツ空軍のタイフーンは128機のうち39機、トーネードは93機のうち26機しか運用が出来ない状態で、残りの機体は地上から離れることが出来ず、これは主にスペアパーツの供給不足が原因らしい」
(フランクフルターアルゲマイネ 2019年
国際ミッョンに派遣された戦車や歩兵戦闘車9台全部が動かず、ウクライナに供与を約束した対空火器の弾薬がない、といったとんだ恥さらしの存在になってしまったのです。
いまやプーマ装甲歩兵戦闘車を装備する部隊では、まともな訓練さえできず、「一般的な乗用車を使え」という指令さえでています。
歩兵戦闘車に見立ててワーゲンのバンから乗り降りして、その気になっているようです。
それがわずか5、6年のうちに戦闘車両を数千台増産する体制を急ピッチで作ろうというのですから、変われば変わったものです。
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