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2019年9月23日 (月)

豚コレラワクチン接種認められる

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国がやっと豚コレラのワクチン接種を認める方針に切り換えたようです。

江藤大臣は「われわれの予想を超える事態に直面し、13万頭以上の殺処分となり、大いに責任を感じている。防疫指針しかり、衛生管理基準しかり、あらゆるものを検討したい。私だけでできることではなく外部有識者などの意見も十分うけたまわりたい」と述べ、農林水産省として午後、豚コレラについての対策本部を開いてワクチンの接種に踏み切る方針を正式に決めたうえで、改めて説明する考えを明らかにしました。
三重県の鈴木知事は20日午前、記者会見し、「ワクチン接種に踏み出す方針転換を国が図ってくれるのは評価しないといけない」と述べました。
そのうえで、実際のワクチン接種の進め方について、鈴木知事は、「地域への丸投げは国家レベルの危機事案に対処する方法ではないと思う。できるかぎり急いで、国、自治体、生産者をあげて取り組むようなワクチン接種にしてほしい」と述べました」
(NHK9月20日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190920/k10012091331000.html

今回の江藤大臣の決断は妥当です。
ワクチン接種する以外、感染拡大を阻止する術はありません。

決定をした農水大臣は、2010年に自らの選挙区において未曾有の口蹄疫禍を経験した江藤拓氏であったことは幸運でした。
江藤氏は就任と同時に決断をしていますから、おそらく早くオレを大臣に指名しないかと思っていたことでしょう。

宮崎口蹄疫に関しては、あまりにも沢山の記事を書きすぎて(書きも書いたり、ざっと330本!)、自分でもどう整理したらいいのかわからなくなるくらいです。もし関心がおありならカテゴリー「口蹄疫問題」をご覧下さい。発生から終了まで逐次追跡しております。
ご存じの方は波線から下に飛んで下さい。

                                                   ~~~~~

宮崎口蹄疫は巨大な傷跡を残しました。
宮崎口蹄疫の原因は多々ありますが、ひとことで言えば
、伝染病制圧を指揮統制すべき者が欠落し、自治体の防疫能力に限界があったために初動が遅れに遅れたことです。
台風もそうですが、家畜伝染病が発生した場合、それを鎮火する責任は一義的には地方自治体にあります。
宮崎口蹄疫の場合は宮崎県が責任をもって、初発が出た時点で直ちにサーベイランス(発生動向調査)を行い、確定して陽性ならば殺処分を行わねばなりません。

ところが確定が遅れた上に、初動の殺処分が極めて遅れました。
時系列で見てみましょう。なぜ日単位の時系列で見るのかは、口蹄疫の際立った特徴が三つあるからです。

①異常に早い感染力と感染速度。
②治療薬がない。また予防ワクチンが設定されていない。
③防疫方法は殺処分しか現状では認められていない。

これら三点の口蹄疫の特徴があるため、いったん初期防疫に失敗した場合、燎原の火のように燃えるものがなくなるまで燃え盛ります。
人間はこの燃え盛る疫病に対して、いわば破壊消防のように高価な和牛や豚を殺処分、つまり殺して防ぐ殺処分しか方法はなくなります。

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ウィキ https://ja.wikipedia.org/wiki/2010%E5%B9%B4%E6%97%...

時系列で宮崎口蹄疫の前半を追ってみます。

●3月31日 都農(つの)町の農家で水牛3頭に下痢の症状があり、動物衛生研究所海外病研究施設(東京都小平市)で遺伝子検査を行い、陽性と判明。初発と認定されるも、実は川南町ではその前の22日、農家から役場を通じてよだれや発熱の症状を示す牛がいると、宮崎家畜保健衛生所(宮崎市)に連絡があった。3頭に症状がみられ、うち1頭が陽性。でした。つまり、微弱な感染が3月中旬頃から見られていた。

●4月9日~17日、口に水泡がある牛を獣医師が発見。
●4月20日 宮崎県が口蹄疫発生を報告。一切の国産牛肉は輸出が不可能となる。農水省も確認。
4月21日 本来この時点であるべき政府・農水省からの指示や支援策が現地に来ないことで、宮崎県はパニックになる。宮崎現地の備蓄消毒薬が在庫切れになる可能性がでる。
4月25日 殺処分の処分対象千頭を突破。過去の2000年時をはるかに凌ぐ最大規模になることが明らかになりる。初動制圧失敗。

この時点で既に25日間も経過していますが、家畜伝染病は初めの24時間で殺処分せねばなりません。
初動で資金とマンパワーを一挙に投入して、一気に沈火せねば、後は水漏れのようにそここから感染ルートが伸びてネズミ算的に手がつけられなくなるからです。
発生後役1カ月で、殺処分対象が千頭となったということは、それだけ順番待ちをしている疑似患畜がいるということであって、パンデミックに既になっているということです。

●4月27日 東国原知事が陳情。政府、野党自民党(当時)に対策本部設置。
ただし、鳩山首相はまったくの無関心。最後までハト氏はこの無関心を貫く。

この当時の民主党政府の無能さは眼を覆うばかりで、対応に動いているのは農水副大臣(後に大臣)の山田氏ひとりで、肝心の大臣の赤松氏は4月30日にはカリブ海へと外遊するあり様でした。
かくして口蹄疫発生国の担当大臣が指揮官敵前逃亡という異常事態となります。

赤松氏については論評すらしたくありません。民主党うんぬんではなく、唾棄すべき最低男です。
この人は、5月に帰ってくると、その足で行ったのは民主党候補選挙応援ですから、念がいった大馬鹿者です。
後に山田氏が大臣、篠原氏が副大臣(現地対策本部長)になって民主党政権の汚名を少しでも回復させるべく奮闘しましたが、政府与党内はひたすら無関心をきめこみ、まさに孤軍の様相を呈しました。
原子力事故にしても口蹄疫にしても、政権の揚げ足取りだけしかしてこなかった連中が政権を取るとこういうことになります。

●4月28日 川南町の県畜産試験場の豚5頭に感染。同試験場の豚486頭が殺処分に。
県なんと試が感染ハブとなっていることがわかりました。感染ハブとは感染を拡大する中心センターという意味です。
しかも防疫のモデルとならねばならない県試ですから目も当てられません。
初動の失敗、確定の遅れ、殺処分の停滞と合わせて、宮崎県には強く反省してもらわねばなりません。
ここで、
牛感染が豚にも感染するという牛豚共通感染症になるという最悪の事態となりました。

●4月30日 移動・搬出制限区域を宮崎・鹿児島・熊本・大分の4県に拡大。
宮崎県周辺の県はレッドアラート体制に突入し、以後宮崎県東部は孤立していきます。
●5月1日 宮崎県知事、自衛隊に災害出動を要請。もはや前代未聞の激甚災害となりました。

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ざっとここまでが発生から一カ月あたりの初動段階です。
後に現地に入った山田大臣に対する東国原知事の不毛な要求闘争があり、更に殺処分は遅れ、ワクチン接種して感染を遅らせながら、殺処分するといった事態にまで発展しましたが、後半は略させていただきます。
後に、獣医のために家畜伝染病でやってはいけない教訓集を作るとしたら、そのいい教科書となるでしょう。

                                                          ~~~~~~

さて話を豚コレラに戻します。
今まで豚コレラを記事にしてこなかったのは、感染ルートが明確でなく、原因が分からなかったからです。
たとえば、関東に豚コレラ侵入した9月13日
埼玉県小鹿野町の事例は、同時期に秩父市の養豚場においても感染が確認されています。
この両農場は南西におよそ5.5キロ離れた場所で、この二つをつなぐ接点がありません。
一方、推定可能なケースが今年2月の愛知県の事例です。 


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田原市の養豚場は、6日にが確認された同市内の別の養豚場から5キロ離れている。同じ食肉処理施設を利用していたことから、監視下に置かれていた。愛知県は、13日に新たな感染が見つかった養豚場で飼育している1000頭余りの殺処分に着手した。 昨年秋以来確認された1~7例目のは、すべて岐阜県南部に集中。周辺で野生イノシシの感染例が多くみられることなどから、イノシシがウイルスを媒介したとの見方が有力だ」(時事2019年02月13日 地図も同じ)

子豚の出荷は重要な感染ルートですが、野生のイノシシが関わっていると見られています。

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農水省 豚コレラについてhttp://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/csf/

中国、韓国の口蹄疫や豚コレラははことごとく畜舎の外に感染を拡大し、野生の偶蹄類に感染を広げています。
こうなってしまった場合、野生のイノシシを一頭残らず捕獲して殺処分することは不可能です。
したがって、伝染病が在野化した場合、もはや打つ手は唯一、低毒性のワクチンを打って軽く感染させることによって免疫抗体を上げるしか方法はありません。

ここで問題となるのは、防疫そのものの問題ではなく、食肉としての商品性です。
ワクチンは軽く感染させることになるので、国際獣疫事務局( OIE )から認定を受けている「ワクチン未接種清浄国」というランクから転落します。

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農水省 http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k...

OIEが設けたカテゴリーは、①ワクチン未接種清浄国②ワクチン接種清浄国③発生国というカテゴリー分類でした。

2010年当時の日本は今まで①だったものが③の感染国に転落したわけです。
これを殺処分という破、壊消防で切り抜けられれば、①に戻れますが、ワクチンを使って防ぐと接種していることで、②となって、貿易上の不利益がうまれるのです。
というのは、今まで非清浄国やワクチンを使っている国々からの輸入は、家畜伝染病があるから制限をかけることができたものを解禁せねばなくなるからです。
つまり輸入圧力が増大するということです。

また輸出に関しても、日本は黒毛和牛を世界中に輸出して、和牛ブランドを確立しましたが、この第2弾として国産豚肉も準備していた矢先に足元に火がついてしまったわけです。

ところがやや驚かれるかもしれませんが、元々日本は豚コレラのワクチンは使っていたのです。
その辺を正直に語る江藤大臣です。
江藤農林水産大臣臨時記者会見概要 9月20日
http://www.maff.go.jp/j/press-conf/190920_2.html

江藤大臣: 思い切ったことを言わせていただきたいと思います。御批判もあるかもしれませんが、私は今59歳です。日本はですね、2006年まで豚コレラのワクチンを接種しておりました。ですから私の人生の大半の時間は、ワクチンを接種した豚肉を食べて、成長して今、健康であります。
 ですから、ワクチンを接種するとですね、なんかその豚危なくなるんじゃないかという気持ちをですね、消費者の方々が持つのはこれは間違いですから」

江藤氏の言うとおり、日本は2009年まで豚コレラのワクチンを使っていました。
その後、制圧したというのでワクチンを接種しなくなっただけのことで、日本は輸出を考えない時期にはワクチン接種国だったのです。
ですから戻るだけのことで、特に新しいことではありません。

江藤氏の決断の背景には、豚コレラより更に恐ろしいアフリカ豚コレラという強力なものが後ろに控えていることも絡んでいます。
このアフリカ豚コレラはアフリカで猛威をふるい、中国にも飛び火したことが確認されています。
しかも豚コレラと違ってワクチンがありません。

トリインフルも口蹄疫も、そして豚コレラもアジアにおける発生源の大元は中国です。
防疫関係者から中国は防疫のブラックホールと呼ばれ、防疫はあってなきが如しである上に、ありとあらゆる家畜伝染病の博物館と化しています。

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農水省 http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k...

この中国からの家畜の密輸、あるいは渡り鳥、野生動物を媒介して北朝鮮や韓国に伝染を広げていきます。
韓国は全土くまなく家畜伝染病に侵されきった土地と化しています。
しかもいまや野生のイノシシなどにまで常に感染が存在しているという状態ですから、伝染病が抜けるということがありえません。
しかも韓国は移動禁止となっても患畜を売りさばくために移動させたり、当局が生きたまま生き埋めにするといった日本ではありえないような杜撰なことを平気でやっています。

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https://togetter.com/li/91069

本来ならば、韓国からのヒトの移動も制限をかけるか、空港で消毒ブースを通すなどといった予防措置をとりたいのです。 
韓国が勝手に輸出管理規制で逆ギレして旅行禁止してくれたので、大助かりです(笑)。
このままずっと来ないでくれると、畜産農家は嬉しい限りではないでしょうか。

このような世界有数の家畜伝染病発生国に包囲されたわが国ですから、このままワクチンひとつ打てないとなると、ブロックする手段を自ら捨てたに等しいことになるわけです。
今回認められたワクチン接種は豚コレラだけですが、口蹄疫、トリインフルまで検討課題としていただきたいものです。

※扉写真差し替えました。すいません。

 

2019年9月22日 (日)

日曜写真館 秋のひょうきん者たち


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  巨大ピーナッツではありません

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仲良きことは美しきかな と書き込みたくなります

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農家の軒にぶら下げたくなります

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のどかな秋の陽に似合います

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なんといっても私たちが秋の主役です

2019年9月21日 (土)

東電刑事訴訟判決

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東京電力の旧経営陣に対して起こされていた刑事訴訟について、東京地裁の判決がでました。

判決で、東京地方裁判所の永渕健一裁判長は、裁判の大きな争点となった原発事故を引き起こすような巨大津波を予測できたかについて「津波が来る可能性を指摘する意見があることは認識していて、予測できる可能性が全くなかったとは言いがたい。しかし、原発の運転を停止する義務を課すほど巨大な津波が来ると予測できる可能性があったとは認められない」と指摘しました。
そのうえで、「原発事故の結果は重大で取り返しがつかないことは言うまでもなく、何よりも安全性を最優先し、事故発生の可能性がゼロか限りなくゼロに近くなるように必要な措置を直ちに取ることも社会の選択肢として考えられないわけではない。しかし、当時の法令上の規制や国の審査は、絶対的な安全性の確保までを前提としておらず、3人が東京電力の取締役という責任を伴う立場にあったからといって刑事責任を負うことにはならない」として無罪を言い渡しました」(NHK9月19日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190919/k10012089251000.html

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東京電力の勝俣恒久元会長(79)、武黒一郎元副社長(73)、武藤栄元副社長(69) NHK前掲

争点は、判決文が言う「旧経営陣3人が巨大な津波の発生を予測できる可能性があった」か否かでした。
指定弁護士は、2002年に国が公表した『地震予測の長期評価』を根拠に「福島第一原発に最大 15.7m の津波が来る」との情報を当時の経営陣が2008年3月に報告されていたが、これをあえて無視した、と主張しました。

判決では、この大地震と津波の予見可能性の観点から否定しました。
常識的判断です。
なぜなら、この国の「長期評価」には具体的な根拠がなく、多くの専門家からも疑問視されていたものだからです。

実はこの津波は予見できたとする意見は、繰り返し繰り返し登場してきています。
これは東電処罰論の一角をなす議論でした。
東電処罰論には3ツのパターンがあります。

①予備電源が津波を被る前に地震で破壊されていた。
②地震による
大津波を知りながら、予見して対策を打たなかった。
③東電は職員が事故処理を放棄して撤収した。

③に関しては、朝日が流した真っ赤な嘘八百で、吉田所長証言が出るに至って完全否定されました。
後に朝日は社長の全面謝罪に追い込まれます。
①の原子炉が地震で破壊されたとする説は、政府事故調査報告書で否定されており、規制委員会も事故報告書で正式に否定しています。
地震で壊れたのではなく、あくまでも外部電源がブラックアウトし、予備電源までもが津波で水没し、全交流電源が停止してしまったために起きたのです。

当時官邸で指揮を執っていた菅直人首相がマネージメント能力を喪失していた様は、多くの事故報告書で厳しく批判されています。
また当時官邸に呼ばれていた原子力専門家の斑目氏や、今回起訴されている東電・武黒氏などが、菅氏のパワハラに屈伏してしまったためにまともな助言を出せずに、あろうことか菅氏の言うがままに吉田所長が行っていた原子炉の海水冷却を止めようとすらしました。
ら指揮中枢がまともな指揮を執りさえすれば、水蒸気爆発は避けられ、これほど大規模な事故につながらなかった可能性があります。

最大の事故原因は、非常用予備電源がノーテンキにも平地につけられていたことです。
福島第1原発のジェネラルエレクトリック社製マーク1では、非常用電源が米国と同じ仕様で平地にあったために、外部電源とバックアップディーゼル電源がほぼ同時に破壊されてしまいました。
予備電源が同時に破壊される事態を、東電が予知できたかできなかこそが、真の争点なのです。

これは事故前に強烈に原子力業界を支配していた「空気」である「安全神話」に由来しています。
なにせ、当時福島第1原発の設計段階で「全交流電源喪失という想定外は起こり得ない」と規制機関であるはずの
原子力安全委員会が明言してしまったのですから話になりません。

1990年8月30日、原子力安全委員会が出した文書にこのような文言があります

「長期間にわたる全交流動力電源喪失は、送電線の復旧または非常用電源設備の復旧が期待できるので考慮する必要はない」
(「発電用軽水炉型原子炉施設に関する安全設計審査指針」より)

つまり、安全委員会は初めから安全対策を「全交流電源喪失なんてあるわけないから考えなくていい」、と言ってしまっているところから始めているのです。
ちなみにこの指針を作ったのが、当時原子力安全委員会の委員長であり、皮肉にも事故時に官邸で指揮を執っていた斑目氏でした。

外部電源の全ルートが止まる可能性があるということは、当時においても決して絵空事ではなく十分に予見可能だったはずです。
それは先日の千葉大停電時に多くの電柱が倒壊したばかりか50メートルもの鉄塔さえ倒壊したことでわかります。
ならば予備電源ひとつが頼りのはずですが、海岸際にありながら津波の可能性にすら眼をつぶっていたために平場に設置してしまったのです。

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上の写真を見ていただければ、海岸の真ん前にあるのがわかります。
いちおう堤防がありますが、10メートルを超える津波には役にたちませんでした。
下の写真は福島第1の構内に流れ込む津波の様子です。

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そしてたちまち設備を水没させて行く様子がわかるのが下の一枚です。

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予備電源の水没対策はあきれるほど簡単です。
施設の屋上に持っていき、水密構造にしておけばよかっただけのことです。カネもかからなければ手間も要りません。
改修というのも大げさで、数日の工事で済んでしまうでしょう。
これをしなかった東電経営は強く批判されるべきです。

また、そもそも福島第1は設置地表から15メートル掘り下げて建設されました。
地質が脆かったために岩盤まで掘り下げたいということと、取水・排水が容易となるというのが理由でしたが、仮に通常どおり地表に建設しておけば津波ははるか数十メートル下の崖を洗っただけで済んだはずでした。

同じ津波を浴びた女川原発が高台を削らずにいたために助かり、福島第2は予備電源が水密構造になっていたために助かったことなども考えると、建設用地を15m削って予備電源を水密構造にしなかったのは明らかに津波が来る可能性を甘く想定した判断だと言われても仕方がないでしょう。 

この二つの点において、東電の責任は追求されてしかるべきですが、では、今回裁判で争われた福島第1を襲った10メートルを超える大津波を予見できたかどうか、という地震予知の問題となると、筋違いとしかいいようがありません。

まず、大前提として地震は絶対に予知できると言っている専門家がいるとすれば、その人の言うことには眉に唾をつけたほうがいいでしょう。
ハッキリ言って、東日本大震災を前もって予見できた人など皆無だったし、熊本や北海道地震すら予知できた者は皆無だったのです。
地震が起きた後にしたり顔で地震専門家がどこそこプレートがなんじゃらというのは後知恵にすぎず、起きたから分かったにすぎません。
予見できたというのはただの幻想にすぎません。

元国立極地圏研究所所長の島村英紀氏は著書『地震予知はウソだらけ』の中でこのように述べています。


「地震の予知は短期の天気予報と違う。それは地震は、地下で岩の中に力が蓄えられていって、やがて大地震が起きることを扱える方程式は、まだないからである。つまり天気のように数値的に計算しようがないのである。その上、データも地中のものはなく、地表のものだけである。これでは天気予報なみのことができるはずがない」

このように地震学者の島村氏ですら、予知が不可能と断言しています。
地震予知とはいわば占いの一種のようなものですから、「予知できたはずだ」ということを前提にするのはいいかげんやめたらいかがでしょうか。
まったく建設的ではありません。

しかも、東日本大震災は元地震予知学会会長の島崎邦彦氏が告白するように、地震予知「理論が根本から間違っていた」ような事態でした。
地震学会の常識では、宮城県沖のような「古いプレート」は沈み込まないとされていたからです。
にもかかわらず、大きく沈み込んでマグネチュード9の大地震を引き起こしました。
これを事前に「予知」し得たのは、日本で極めて少数の専門家しかいませんでした。

そのひとりが産業技術総研の活断層・地震研究センターの岡村行信氏で、氏は、佐竹健治氏らの『石巻・仙台平野における869年の貞観津波の数値シミュレーション』を参考にして、マグネチュード8.5クラスの地震が、仙台よりさらに南に、つまり宮城沖まで来る可能性を指摘していました。(※「地震・津波・地質・地盤合同ワーキンググループ」第32回会議・09年6月24日)  

しかし、これをもって地震学会全体が警告を発したかというとまったくそういうことはなく、2011年3月11日午後2時46分の運命の時間まで、誰しも考えもしなかったわけです。 
この岡村氏の説を根拠にして、東電は貞観(じょうがん)地震を知っていながら無視したという批判がなされ、さらに朝日が流した東電撤退論が重なって東電=悪玉論へと肥大化していきます。  

さて、東電は、この貞観地震について無視していたわけではありませんでした。東電の政府事故調への証言によると、東電はこのような津波の調査をしています。 

まず、2006年9月に安全委員会の耐震設計審査指針が改定されました。  
2002年7月の地震調査委員会は、三陸沖から房総沖にかけての日本海溝沿いでマグニチュード8クラスの地震が起きた場合、福島県沖で10m超の地震津波を想定していました。
東電は福島第1、第2、女川(※女川は東北電力管轄)などの原発に津波が到達する可能性を探るために、現地の地質学調査を実施しています。  

それによると、2009年から10年にかけて、東電は福島県内の5箇所で貞観地震の津波堆積物現実に調査しており、南相馬市で高さ3mの地点では地震による堆積砂が見られたが、4m地点ではなかったために、貞観地震の津波は最大で4m以下と推定されました。  
ちなみに貞観地震を念頭において過去に十数メートルの大津波があったという人もいますが、正しくは4メートルです。

これでわかるように、東電は貞観地震の津波の影響調査をしており、それが数百年のスパンの周期であるために、すぐに対策を立てる必要のある危険とは判断しなかったのです。  
869年に起きた貞観地震の周期は、推定で約1100年という超長期スパンです。  

東電はこれを無視したと言って非難されているわけですが、11世紀スパンの周期ですので、何十年も、時には百年単位の誤差が生じてあたりまえで、30年以内の確率は0.1%でした。 
東電が0.1%の確率を想定していなかったと言って、どうして責められねばならないのでしょうか。

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吉田所長は政府事故調の証言で津波対策についてこう述べています。

「それが10(メートル)だと言われれば10(メートル)でもいいし、13(メートル)なら13(メートル)でもいいんですけれど、こう言う津波が来るよという具体的なモデルと波の形をもらえなければ、何の設計もできないわけです。ちょっとでもというのは、どこがちょっとなのだという話になるわけです」

吉田氏が言うように、津波の「波源の場所、波の高さ、あるいはその形状などが、施設の設計に使えるように具体的にモデル化されていないでは具体的対処をしようがないではないか」、という指摘は企業のリスク管理としては間違っていません。
企業は計量化できる脅威に対して、それを排除するための対策を構築するものだからです。
いつか、どこかに、規模すら不明なものが「来る可能性がある」と言われても、企業としては対処しようがないのです。 

私の結論としては、東電が最善であったかといえば、おそらくノーです。
東電にとって対策の取りようはいくつかあり、それをしなかったのは問題視されるべきです。
しかし津波については、判決の言うとおり「原発の運転を停止する義務を課すほど巨大な津波が来ると予測できる可能性があったとは認められない」のです。

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菅直人首相、枝野幸男官房長官、仙谷由人官房副長官

また、東電旧経営陣が裁かれるのなら、当時官邸にいて事故処理に失敗した菅直人元首相とその側近たちの責任もまた法廷で裁かれるべきでしょう。
 
首相であり対策本部長だった菅首相、官房長官であった枝野氏、所轄の経済産業相だった海江田氏などもまた法廷に召還されるべきです。
ところが誰ひとりとして罪を裁かれることなく、いまは口をぬぐっていち早く反原発に転向して東電を糾弾している姿を見るとなんとも言えない気分になります。

 

 

2019年9月20日 (金)

トランプがボルトンを切った訳とは


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「トランプの暴走」という表現をメディアは好みますが、違うんじゃないかなとこのところ思うようになっています。
トランプは「迷走」などしておらず、一貫して「トランプ」なのです。
彼にとって閣僚はいわば使い捨ての駒のようなもので、本気で彼らの言う政策を実行する気はありません。
彼のディールにとって必要なら使うし、不要ならマティスやマクマスターのように辞任を求めるし、公然と楯突いてくるようなボルトンならば追い出すだけのことです。

私はトランプは暴走して核戦争も辞さないどころか、通常兵器による軍事介入すら喜ばない「平和な紳士」だと思っています。
たとえば朝鮮半島海域に3隻の空母を並べて見せるのも、北朝鮮を交渉の場に引きずりだすための仕掛けだったのであって、その巨大な軍事力を行使する気など初めからありませんでした。

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https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-09-...

ボルトンを補佐官という強面を中枢に据えて見せたのも、おい正恩坊や、おとなしく会談に出てこないと痛い目に会うぞ、ということを分かりやすく伝えたかったからであって、ボルトンの主張する「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)というパーフェクトゲームをやる気は元々なかったのです。

ただ、交渉開始前には、ディールのハードルを目一杯高くしておかねば値切られてしまいますから、思い切り高い要求を突きつけたのであって、本気でボルトンが望んだ完全非核化など夢物語にすぎないと、トランプは冷めた頭のどこかで考えていたことでしょう。
だから、第1回直接会談で「朝鮮半島の非核化」という絶対に呑んではならない文言を呑んでしまい、これで北朝鮮の非核化とは在韓米軍の撤退とイコールだということを公式に認めてしまいました。

トランプにとって韓国はいわば67年前の朝鮮戦争が残した不良債権そのものであって、早くこんなものは処分してしまいたいはずです。
完全編成の陸軍第2師団を対北朝鮮対応だけの目的で韓国に貼り付けおくことは、彼ならずとも馬鹿馬鹿しい軍事的リソースの濫費でしかありません。
第一、在韓米兵にとって韓国は居心地の悪い国ナンバーワンなのです(日本は米兵にとっていたい国のトップですが)。
ましてや、受け入れ国が手を替え品を替えて嫌がらせを仕掛けては追い出しにかかっているわけですから、米国ならずとも馬鹿馬鹿しい限りで、トランプからすればいかにスマートに米国のメンツを保ったままで撤退するかが関心事だったと思います。

最低でも2022年の戦時統制権返還時までには、在韓米軍は引き上げさせたかったと思います。
戦時統制権はよく話題になるテーマですが、軍隊の編成・指揮権を意味し、ハッキリ言えば韓国軍は米軍の言うがままに動け、勝手に動くなという権限です。
この権限に基づいて、米軍は韓国軍の要所要所に連絡将校という形でお目付役を配置しました。
勝手に北進されたり、クーデターを起こされてはたまらないからです。

それそもこんなヘンな形になったのは、朝鮮戦争時に、大統領の李承晩が敵前逃亡をするなど韓国軍が悲惨なまでに使い物にならなかった祟りです。
米国は以来、軍事的に韓国を全く信用していないし、米韓合同司令部の形で、自分の指揮下に置いておきたいと思ってきました。
話が逸れますが、よくネットには韓国軍が対馬に攻めて来るということを言う人がいますが、韓国軍が戦時統制権を握られているかぎり、米軍がそんなことを許可するはずがありませんから無理です。
やる気なら別枠の特殊部隊(特戦団)か海兵隊を使うかしかありません。
実際に、軍事政権時に起きた光州暴動の鎮圧には特戦団を投入しました。
ですから、現実問題として韓国の日本攻撃は、特殊部隊や海兵隊を使ってやればできるが、そのていどの小部隊の攻撃しかできないということになります。

話を戻します。
まぁ韓国からすれば屈辱的な半主権状態にあったとも言えるわけですから、しつこく返せ返せと言い続けてきました。
で、返還に合意したわけですが、裏を返せば韓国軍みたいな者の指揮下に在韓米軍が入る気などみじんもないということです。
米国には外国軍人の指揮下に米軍将兵を千人以上置いてはならないという法律までありますから、戦時統制権の返還イコール在韓米軍は自動的に消滅ということになります。

では在韓米軍が完全撤退してしまうのかといえば、それは米韓合同司令部の枠内だけのことで、国連軍は埒外ですから、米軍は一定数の軍人を国連軍名義で駐屯させることができます。
国連軍司令官は米軍人ですから、その権限で韓国軍を統制することも不可能ではありません。

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一方、逃げる準備は着々と整えられていて、在韓米軍はいまかつてのワイヤートラップの位置であったソウル以北から、半島中部のピョンテク(平沢)のキャンプ・ハンフリーズに集中させています。
上の地図を見ると、この位置まで在韓米軍司令部、国連軍司令部、第8軍司令部を下げた意味が分かると思います。
ちなみにどうでもいいですが、この図は米軍出所ですが、シー・オブ・ジャパンって書いてありますね。韓国さん米軍に抗議しなくっちゃ。なんせイケアの店内地図にすら噛みついたもんなぁ(笑)。

それはさておきピョンテク移動が意味することは、北朝鮮が38度線に集中させているロケット砲や大砲の射程外に出てしまうということです。
いままでは北朝鮮は南進しようとすれば、38度線のすぐ南に駐屯していた米軍第2師団に引っ掛かってしまい、自動的に米国と交戦状態になってしまいます。
このような自動参戦戦略をワイヤートラップと呼びますが、中部のピョンテク移動が意味するものは、もう米軍は韓国の楯の役割はしない、という意味です。

その上、頭が不自由なムン政権はソウルにある米軍施設のヨンサン(龍山)基地 の返還まで求めたようで、どうせやくたいもない反米民族主義を鼓吹したいのでしょうが、正気の政府ならやりません。
だって首都ソウルに米軍基地を置いてある意味は、 ここに米軍がいることによるワイヤートラップ効果を狙っていたのですから。
ソウルを「火の海」にすれば、米軍も自らの頭上に降ってくる砲弾を浴びねばなりませんからね。
ですから、ムンがヨンサン基地撤去を求めたことは、自分から頭を差し出してソウルを撃ってくれと頼んでいるようなもんです。

ちなみに沖縄に米軍基地があるのも、同じワイヤートラップ戦略ですから念のため。
沖縄に米軍がいることによって中国や北は攻撃すれば、自動的に米軍も攻撃してしまうことになりますから、ためらいます。
米軍がいるから抑止が効いた状態でいられるわけです。自衛隊だけならためらわず撃ってきます。
だからヒダリの人たちがよく言う「米軍がいるから戦争になる」のではなく、「米軍がいるから戦争にならない」のです。

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さて冒頭のトランプに話を戻します。
トランプからすれば、北朝鮮が再び南進しないと約束し、米国に届く長距離弾道ミサイルを撃たなければ、一定の核施設を閉鎖すれば、多少の核保有は認めてやってもいいと考えていているフシがあります。
これらの不安定要因があるから米軍はいつまでも韓国に駐留せねばならないのであって、それさえなくしてしまえば、米軍が韓国に駐留する意味はなくなるからです。

ところが頑固な哲人軍人のマティスはぜったい同盟解消に繋がるようなことには賛成しなかったし、ボルトンに至ってはかつての成功体験のリビア方式の焼き直しであるCVIDに固執しやがって、オレの華麗なディールをジャマしやがる、この頭の堅い奴らめ、とトランプが思っていても不思議はありません。

海野素央明大教授はこう述べています。

「北朝鮮との核・ミサイル交渉において、ボルトン氏は「負の存在」になりました。トランプ大統領は、ボルトン氏解任後に行われたホワイトハウス記者団とのやり取りで、同氏が北朝鮮との交渉の場で「リビア方式を持ち出したのは大きな誤りであり、これで交渉が後退した」と明かしました。
リビアのカダフィ政権は、核を全面的に放棄した後に制裁を解除する「リビア方式」に応じました。しかしその後、政権は崩壊しました。体制維持を最優先する金正恩朝鮮労働党委員長にとって、リビア方式は到底受け入れられない手法です」
(WEDGE Infinity9月15日)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/17364?page=2

まぁそうでしょうね。
トランプ御大の口から直接に、ボルトンが進めてきたCVIDを「リビア方式をもちだしたのは間違いだった」とまで言われてはホワイトハウスにいる場所はありませんもんね。
正恩にとってボルトンがいることによって体制護持の約束が阻まれていると考えるでしょうし、第2回会談を破綻させたのはこのボルトンの野郎のせいだ、と大いに憎んでいたことでしょう。
一方、それが北との妥協点だと考えていたトランプにとって、もはやボルトンは目障りだったのです。

いまのトランプの頭の中を占めているのは実にシンプルで、再選の二文字です。
かつてトランプにとってボルトンという「強硬」の記号をホワイトハウスに置くことで御利益はありました。
米国と敵対する諸国は軍事オプションも辞さないとするボルトンがトランプに耳打ちすることを恐れていました。
だから、ボルトン流の正論がトランプ外交となった時期もあったのですが、これでは交渉がなにひとつまとまりゃしないぜ、どうすんだ成果なしと国民から言われるぞ、とトランプ翁は心配を始めたのです。

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https://webronza.asahi.com/national/articles/20161...

それは再選の大統領選挙が1年先に迫ったからです。
米国大統領は2期でワンセットと考えていますから、何かなんでも再選を勝ちとらねばなりません。
当選した2016年の米大統領選挙で、トランプは海外に駐留している若い米兵を本国に戻すと支持者に約束しました。
この公約の一丁目一番地を、トランプはまだ履行できていません。

ですから外国からの米軍撤退の完遂に無理筋でも目鼻をつけねば支持者にどのツラ下げて出るんだ、という思いに駆られているようです。
実際に、共和党の支持基盤の中西部でも米軍撤退の希望は強いのです。

「これまでに筆者(海野氏)は、中西部オハイオ州シンシナティなどで開催されたトランプ集会に参加して支持者を対象にヒアリング調査を実施してきました。彼らは軍事介入に否定的で、駐留米軍撤収に肯定的です。仮に18年にもわたるアフガン戦争に終止符を打つことができれば、トランプ大統領は来年の選挙においてかなりの政治的得点を稼ぐことができます。
 例えば、民主党大統領候補とのテレビ討論会で、トランプ大統領はジョージ・W・ブッシュ元大統領とバラク・オバマ元大統領ができなかったアフガン戦争を終わらせ、自分は「偉業」を達成したと強調して、相手候補にノックアウトパンチを浴びせることができるかもしれません。アフガニスタンからの米軍撤収はトランプ大統領の再選戦略に組み込まれています」
(海野前掲)

このトランプ再選の悲願ともいえるアフガン撤退のためにトランプは、キャンプデービットにタリバンの代表を呼ぼうとして、ボルトンと激しい口論になったといわれて います。
ボルトンはいま米軍が撤退すればアフガンまた元のタリバンが残虐な支配をし、軍閥と内戦を続ける修羅の国に戻ると見ています。
その意見はまったく正しいのですが、これはトランプの再選戦略にはまったく敵対するものだったわけです。

イランもしかりで、ボルトンが主張したイランへの攻撃などトランプからすればとんでもないことで、火種をこれ以上増やして米兵を外国で殺すのか、ということになります。



「米メディアによれば、ボルトン氏はトランプ大統領がイランとの核問題に関してロウハニ大統領と会談をして、関係を築くことにも反対の意を表明しました。来年の主要7カ国首脳会議(G7サミット)で議長役を務めるトランプ大統領がプーチン露大統領のサミット復帰を提案すると、ボルトン氏はこれにも反対の立場をとりました」(海野前掲)

もうこうなると、ボルトン路線はことごとくトランプの方針とぶつかるわけで、とうとうトランプは切れたのでしょう。
そのように考えてくると、トランプはある意味で変わっていません。
彼は一貫して自分の都合に合わせた「駒」を選んでいるだけで、それがその時その時で変化しているにすぎないからです。

私の見立てが間違っていることを祈ります。

 

2019年9月19日 (木)

サウジを攻撃したイラン強硬派の意図

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サウジの石油基地攻撃について、追加情報が上がってきました。
サウジは突貫工事で今月以内に元の生産量に戻すと言っています。
慶賀の至りで、これで国際経済の影響は最低限となりました。

といっても、シェールガスが実用化され、いまやトランプをして「わが国にはタンカーなんか一隻もないぞ」と豪語している世界最大の産油国・米国にとって、サウジが燃えようとどうしようと痛くもかゆくもありません。

それにしてもタンカーが一隻もない事を自慢できる大国は強いですなぁ。
中東に全面依存している中国と大違いです。
したがって、米国にとってかつての湾岸戦争時のように原油の安定供給を念頭に置く必要がなくなりました。
それにつれて中東は米国にとって、オレにとってあんまり関心ないやで済むテーマになりつつあります。
覇権国としての責任上、トランプ以外はおおっぴらに言いませんが、サウジはもはや米国にとって重要な戦略的価値を失っているのです。

それにしても今回、世界の軍事専門家たちを呆れさせたのは、サウジがみすみす最重要施設である産油基地を、25基もの巡航ミサイルと軍用ドローンで攻撃され、それに小指一本抵抗できなかったことです。
なんだ、中東最強と自称してきたサウジの防衛力ってこんなもんだったのか、と多くの人がそう思いました。
もっともサウジのために弁護してやれば、小型で低空を飛んで来るドローンはレーダーに引っかかりにくい上に、撃墜も難しいのですがね。
巡航ミサイルは低速で回避行動がとれない低速ジェット機にすぎませんから、それなりに対処できますが、ドローンとなると登場したのが近年ですから,まだ撃墜方法は確立していないかもしれませんね。
防衛したい施設周辺にジャミングを張っておくかするしかないのかな。
まぁムハンマドさんは、このあまりの国軍の無能ぶりに怒って、そこら中を蹴飛ばしたのではないでしょうか。

さてこのサウジ攻撃は、イランから発射されていることが突き止められています。
使用したのはその残骸から新型のデルタ翼の軍事用ドローンと巡航ミサイルであることが分かっています。

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JSF氏ツイッター

上の写真はイランの自爆用ドローンに似ていますが、新型のようです。

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JSF氏ツイッター

もう一枚の写真はイランのQuds(コッズ)-1巡航ミサイルです。
これはイラン製の最新鋭地対地巡航ミサイルですが、オレがやったと名乗り出ているイエメンのフーシ派ゲリラが製造できるはずがなく、もちろん供与したのはイランです。

推測飛行ルートも分かってきました。
米国専門家のマイケル・エレマン氏は、発射地点はフーシ派のイエメンではなく、そのものずばりペルシャ湾北部のイラン南部から発射されて南下し、クェートを経て施設の西側から攻撃したとみています。

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では、これだけすぐバレる攻撃をなぜイランはとったのでしょうか?
逆説的にいえば、バレてかまわなかったからです。
その理由は、この攻撃によって、誰が最も利益を得るかを考えれば自ずと回答がでます。
首謀者はイラン強硬派です。

イランはいわば二重権力になっています。
ハメネイ師とロウハニ大統領です。
下の産経(2019年6月12日)のイラン国内関係図を見てください。

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https://www.sankei.com/world/news/190612/wor190612...

最も上位にあるのは赤丸がついているハメネイ師です。
ロウハニ大統領と違って選挙で選ばれていませんから、国民は辞めさせるわけにはいきません。
国会などというややっこしい民主的手続きも不要です。

一般国の元首に相当しますが、他国のそれが権威的存在であるのに対して、なんと軍隊を二つも握っていて牽制し合わせています。
国軍と革命防衛隊(IRGC)の指揮・統帥権、さらには警察・司法もハメネイの掌中にありますから、なんだ絶対的独裁者じゃん、ということになります。

黒井文太郎氏の説明によれば、このハメネイは細々としたことまで決めているわけではなく、実際に決定権を行使しているのは、彼を補佐する側近集団「最高指導者室」であり、そのなかの安全保障政策担当「最高指導者軍事室」(室長ムハマド・シラジ准将)です。
その最高指導者軍事室の指揮下に「イラン軍事参謀総長」(現在はモハマド・バケリ少将)が指揮する国軍最高指導部が置かれています。
今回イランがかかわったのなら、このシラジ准将が企画立案の責任者のはずです。

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日経

また一方の強大な軍事勢力である革命防衛隊や、民間人を取り締まる司法も同様にこの「最高権威」の下に属しています。
逆に言えば、大統領という世俗権力が掌握できるのは、経済や社会の純粋に民間の部門にのみ限定されていると言っていいでしょう。
とりあえず外交権は内閣が持っていますが、それさえも政府とは無関係に革命防衛隊がそこかしこに軍事介入したり、工作員を浸透させたりしていて引っかき回していますから、存在感は希薄です。

国軍と革命防衛隊は、比喩が正しいかどうか分かりませんが、ナチスドイツにおける国軍と親衛隊の関係に似ています。
革命防衛隊はナチス親衛隊(SS)から発展した武装親衛隊(Waffen-SS) のようなもので、国軍並の装備と兵員を抱えています。
このいかにも革命国家らしい組織は、イラン革命の時に故ホメイニ師の親衛隊として発足しました。

ナチスで言えば初期の突撃隊(SA)時期に革命の荒事を一手に引き受け、1979年に権力を握った後は反ホメイニ狩りの急先鋒として親衛隊化しました。

そしてイラン・イラク戦争(1988年~88年)で、前線に国民を動員する働きをし、優先的に予算を与えられて国軍をしのぐ軍事勢力として武装親衛隊化しました。

実はイラン革命の指導者たちは国軍がパーレビのものだったためにまったく信用しておらず、革命防衛隊を対抗勢力に仕立て上げて、国軍の監視をさせるつもりだったようです。
この関係はいまだに変わらず、国軍と革命防衛隊はいまでも水と油、犬と猿の仲です。
現在この革命防衛隊は、ハメネイ最高指導者が君臨する「最高指導者室」の直系です。

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https://www.iza.ne.jp/kiji/world/news/190613/wor19...

かつてはテヘランの米国大使館占拠などもやり、かなり長期に渡ってパレスティナのヒズボラやイエメンのフーシ派などのテロリストに対する資金・武器供与や軍事軍連、果ては直接にシリアアサド政権の軍事支援にまで関わっています。
いまや中東最凶の団体として、米国からテロ団体指定のお墨付きまで得ています。
先日の日本タンカー襲撃事件もたぶん革命防衛隊の仕業であることが濃厚です。

ロウハニ大統領はまったくこのイランの国軍・革命防衛隊の指揮権を持っていません。
ペルシャ湾で日本タンカーが襲撃されても、へぇーってなもんだったでしょう。

やや説明が長くなりましたが、この普通の国にはないイラン特有の国内勢力図がわからないと、今回の事件は理解できなくなります。
というのは、常識的にかんがえると、なぜ「いまの時期にサウジを攻撃するのか」がわからないのです。

攻撃のタイミング自体に、大いに怪しむべき点がある。攻撃が行われたのは、まさにドナルド・トランプ米大統領が今月下旬の国連総会の場でのイラン大統領もしくは外相との外交交渉を可能にするため、厳しい対イラン経済制裁の若干の緩和を検討していた時だった。
フランスも、まさにこうした若干の関係改善に向けて、精力的な働きかけを行っていた。 しかし、突然始まった外交的動きを好ましく思わない勢力も多い。
そのうち一部は、動き始めた外交プロセスを停止させるような危機を生み出すため、ミサイルを活用できる立場にある。恐らくこれが、週末の出来事の説明になると思われる」(ウォールストリートジャーナル9月17日)
https://jp.wsj.com/articles/SB12696131808382783557304585555240552165732?mod=WSJ_article_EditorsPicks_3

トランプは現在イランと「前提条件を作らない」直接交渉しようと考えていました。
相手はもちろんハメネイではなくロウハニです。そのためにイラン制裁を緩めてもいいというシグナルを送っていて、その一環が強硬派と言われたボルトンの解任でした。
また日本も、ロウハニを通じて仲介を準備している直前でした。
日本タンカーの襲撃など、安倍氏が訪問した矢先でした。

この緊張緩和の動きを壊したい連中、即ち強硬派が、今回のサウジ攻撃を仕掛けたのです。
ウォールストリートジャーナルはこのように指摘しています。

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http://agora-web.jp/archives/2033648.html

「容疑者リストの筆頭に挙げられるのは、イラン政府内の強硬派だ。国際社会のみならずイラン国内でも、多くの人々は、オバマ前政権下でまとめられたイラン核合意からの離脱をトランプ氏が決めたことを危機と捉えた。しかし、イラン国内の一部強硬派は、これを好機と受け止めた。
 イラン革命防衛隊の指導者を含む強硬派は、そもそも核合意を好意的に受け止めていなかった。むしろ核合意が廃棄されれば、核および弾道ミサイル開発の取り組み強化の論理的根拠になると考えている。

 またイランの強硬派は別のことも知っている。米国との外交的なダンスをやめることに加え、サウジの石油施設を攻撃すれば、欧州とアジアの指導者たちを怖がらせ、米国の経済制裁に対する何らかの救済措置を引き出せるかもしれないことだ」(WSJ前掲)

ハメイニに率いられた革命防衛隊などのイラン強硬派は、イラン核合意を邪魔者だと考えていました。
こんなものがあるからイラン悲願の核武装ができないのだ、軟弱モンがオバマにだまされやがって、核さえ握ればイスラエルを海に蹴落とし、サウジを叩き潰し、中東の覇権国となれる、これが強硬派の本音でした。
そこにトランプが別な思惑でイラン核合意を壊すと言い始めたので、皮肉にもトランプと平仄が合ってしまったわけです。
 

 

2019年9月18日 (水)

トリチウム水が「汚染水」だって?

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まずはこれから。
さっそく茂木外務大臣が、小泉環境大臣の例の「汚染水を出させない」発言を打ち消しています。

「福島第一原子力発電所にたまり続けている水の処理をめぐり、韓国が日本の対応を批判していることについて、茂木外務大臣は韓国に、科学的根拠に基づき主張するよう求めるとともに、国際社会には透明性をもって丁寧に説明していく考えを示しました」
(NHK9月17日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190917/k10012085811000.html

まったく常識的発言で、これで事実上小泉ジュニアのフライング発言は否定されたことになります。
というのは、日本国政府が公式に対外的に発信することのほうが、所管外の新米大臣が記者会見で述べた「持論の開陳」などよりはるかに重いからです。

松井大阪知事もかつての橋下氏の震災瓦礫処理の時の行動を想起させる発言をしました。

福島第一原発でたまり続ける処理済みの汚染水をめぐり、大阪市松井一郎市長(日本維新の会代表)は17日午前、市役所で記者団に「政府が科学的根拠を示して海洋放出する決断をすべきだ」と述べた。大阪湾で放出する可能性についても「持ってきて流すなら、(協力の余地は)ある」と述べたが、大量の水を大阪まで運ぶのは困難で、実現可能性は低そうだ」(朝日9月17日)
https://www.asahi.com/articles/ASM9K3RL0M9KPTIL006.html

朝日は「実現可能性は低そうだ」などとイヤミを垂れていますが、ならばこの「大量の汚染水」はいつまで貯めておけるのでしょうかね。
福島第1のタンク群が貯蔵可能な域をはるかに超えていることは、事故処理の「実現可能性」を大いに低めているのです。
そこを見ないで、なにが大阪に持って来るのが「実現可能性が低い」ですか。
そこじゃないだろう、問題は。

松井市長は、多くの首長が尻込みして発言しないなかで、いわば一石を投じる覚悟で言ったのですよ。
かつての震災瓦礫処理をめぐって、被災地自治体の処理能力をはるかに超えたためにSOSを出している時に、よしわかったオレのところでも協力するよ、と言って一肌脱ごうとしたかつての石原都知事や橋下知事を思い出しました。

あの時、彼らは口では「被災地がんばれ」だとか「絆」などと口にするくせに、自らも泥をかぶらねばならないこととなると一転して尻込みする多くの自治体と違って、文字通り身体を張って被災地と連帯しようとしました。
結果、強い反対運動に遭遇したのですが、その時もたじろがずに焼却場付近の放射線量データーを公開し続け説得に当たりました。
その良き大阪の伝統を松井市長は受け継いでいるようです。


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https://www.asahi.com/articles/ASM2M01KFM2LULBJ01S

さて「処理水」の現況はこうです。

福島第1原発の処理水の保管用タンクは既に900基を超え、2022年夏ごろに満杯になる見通し。薄めて海に放出することが、最も現実的な手段とみられているが、風評被害を懸念する漁業関係者らの反発は根強い」(日経9月10日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49622460Q9A910C1CR8000

ちなみに日経は「処理水」と記していますが、NHKや朝日はあいかわらず、「汚染水」という表現を平気で使っています。
朝日には反原発運動家もどきは掃いて捨てるほどいるのに、科学記者はいないのですか

「汚染水」はいうまでもなく、科学的に正しい表現ではありません。
「汚染水」というふうに表現してしまえば、まったく放射性物質を除去していないマンマ放射能で汚染された排水というイメージですが、まったく違います。
少し筋を追って説明します。

まずなぜ原子炉はとうに止まっているのに、「処理水」が出続けているのでしょうか。その量は1日なんと300トンから600トンという膨大な量となっているのは事実です。


「東京電力福島第1原発で発生する汚染水が1日300トンから600トン程度に増加していることが18日、分かった。汚染地下水の海洋流出を防ぐ海側遮水壁の完成後、岸壁に近くトリチウム濃度が高い井戸「地下水ドレン」の水位が想定を超えて上昇。くみ上げて原子炉建屋に移送する量が増えたのが原因という」
(河北新報(2015年12月19日)

Photo河北新報前掲

水の出所は3カ所です。

①原子炉の冷却系の循環水
②汚染水貯蔵タンクからの漏水
③流入する地下水

あいにく福島第1原発は、山系から湧きだす豊富な地下水がある場所に建てられています。
しかも地表を15メートルも掘り下げて建設されたために、いっそう地下水が湧きだすことになりました。
平時はそのまま海に流せばいいだけのことですが、事故処理となると大きな問題となりました。
それは地下水の出る
3ルートが、事故を起こした原子炉や瓦礫と接触して、濃度の差があっても放射性物質を含んでいる可能性があるからです。

ではどうするかといえば、ひとつは施設手前に井戸を掘ってバイパスルートを作ること、施設を囲む凍土壁を作ってブロックすることでしたが、いずれもあまりうまくはいきませんでした。
あまりにも流入量が多いからです。
地下水の8割から9割は施設地下に流入しいわゆる「汚染水」となってしまいました。

止められなければ、放射性物質を除去するしかテはありません。
そこでこれを、ALPS(アルプス・多核種除去装置)を稼働させて、放射性物質を取り除いて浄化する仕組みを作りました。
事故処理のみならず、廃炉の日まで原子炉の冷却は止めるわけにはいかないので、完全廃炉の日までALPSを稼働させ続けねばなりません。

よくある誤解ですが、再稼働停止の仮処分を出したある裁判官などは、再稼働を止めれば「安全」だと勘違いしていたようですが、原子炉と使用済み燃料は、運転停止しようと事故処理中だろうと、休みなく冷却し続けねばなりらないのですよ
ですから、この冷却水は半永久的に止められません。

 ごこで「汚染水」処理の切り札として登場したのが、いま述べた多核種除去設備 (ALPS) です。

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東京電力HP  http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/genkyo/fp_cc/fp_alps/index.html

既にこのALPSは稼働しています。

A系は2013年3月30日より開始(6月16日に停止)、B系は2013年6月13日より開始、C系は2013年9月27日より開始」(東電前掲)

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東電前掲

このALPSは大変に高性能な除去装置で62種の放射性物質を除去しますが、唯一の例外がいま問題となっているトリチウムです。

「既に設置している水処理設備では、放射性物質のセシウムを主に除去しているが、セシウム以外の除去が困難であった。多核種除去設備(ALPS)ではセシウムを含む62種の放射性物質(トリチウムを除く)の除去が可能となっている」(東電前掲)

下図は対策会議のデータです。全部ND(検出されず)です。

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・γ核種(45核種)・・・検出限界値(ND)未満にまで除去
・β核種(8核種)・・・5核種までが検出限界値(ND)未満にまで除去
・Sr-89(ストロンチウム)、Sr-90、Y-90(イットリウム)については、告示濃度以下

しかし、唯一例外がありました。
それがトリチウムです。これだけはどうしても除去できないのです。
つまりはこのALPS浄化装置が除去できない唯一の核種がトリチウムである以上、汚染水問題は詰まるところ、トリチウム水の問題ということです。

トリチウムは三重水素で、要するに水素です。
水素の同位体ですから、人体の中では水素(H3) の化学形である「水」の形をとっています。(※炭素結合形態もあります)
それが福島第1の処理現場では、地下水に含まれているのですから、言ってみれば「水の中に水がある状態です。

もう少し細かく言えば、トリチウムは、毎日宇宙から地球にふりそそぐ放射線が空気中にある窒素や酸素とぶつかり、日々あらたに作られるもので、空気中や海水中に普通に含まれています。
中性子を2つ持つ水素の同位体であり、ガンマ線を出しますが、非常に小さな力しかなく、人体に与える影響はミニマムで、ヨーロッパのミネラルウォーターには含まれているものが多く、フランスなどにはその含有基準すらあります。

とくに流出した「汚染水」を飲まなくても、既に地上生物の体内の水にはトリチウムが含まれていて、およそ1ベクレル/ℓだといわれています。
当然人体も被曝事故を起こさなくても、トリチウムを微量持っています。
WTO飲料水ガイドラインが10000ベクレル 処理水660ベクレル 人の体内に元からあるのが100ベクレルです。
よくオセン水をだしたいなら飲んでみろ、という人が反原発運動家にはいますが、いいですよ。、飲みましょか(笑い)。

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図  自然放射線による日本人の平均被ばく量2.1mSv/年の内訳

そして、毎日オシッコで10日間ほどで、体外に排出されています。
このようにトリチウムは、水や大気に取り込まれて存在します。
ただし「存在」していても、セシウムやストロンチウムのように特定の食物や内臓諸器官に残留せずに、水や大気に混ざって存在しているところが、他の放射性物質と大きく異なる点です。

これは大気圏上層で、一次宇宙線という高エネルギーによって生成されて地上に降り注ぎ、その過程で二次放射線に含まれる中性子が窒素(空気)と反応してトリチウムが生成されるからです。
この量はバカバカしく多く、127.5京といわれており、海、湖、川など以外にも水蒸気にも含まれています。
要するに、人類の生存圏のありとあらゆる「水」に含まれるといっていいでしょう。

韓国や反原発派の人たちにいわせれば、このトリチウムがある限り放射能汚染水としてドバァ~と毎日でているので、「事故は収束していない」ということのようです。
韓国は自分の国の原発でもトリチウムを毎日排出しているくせに、ナニ言ってンのか。
豆腐の角に頭をぶつけてしまいなさい。

では、「反原発の巨人」・小出裕章さんにご登場ねがいましょう。
※小出裕章ジャーナル2014年12月13日http://www.rafjp.org/koidejournal/no101/


「ALPSが動いたとしても、取り除けない放射能というのはありまして、例えばトリチウムという名前の放射性物質はALPSは動こうと、他の浄化装置が動こうと、全く取り除けません。ですから、結局そのトリチウムに関しては、何の対策もとりようがありませんので、いつの時点かであれ「海に流す」と必ず彼らは言い出します」

前述したとおり、小出さんに言われなくてもALPSでもトリチウムは除去できません。
しかし例によって、運動家的学者特有の、「嘘は言っていないが、隠していることがいっぱいある」という類の言辞です。
小出さんはトリチウムなんか飲みたければ飲めるくらい安全なことをよく知っているはずです。
それを知っていながら伏せて、危険性だけをことさら叫ぶ、フェアじゃないですね。
だから運動家はイヤだ。

運動家たちにすれば、ホントのことを言えば、せっかく福島事故で盛り上がった反原発運動は一区切りつけねばなりません。
福島第1事故をめぐる反対運動は事実上終わったのですから、いったん総括したらいかがですか。
しかしそれを認めたくないためにいつまでも半永久的にやっていたい、だから
、「汚染水が止まらない以上、福島第1はまだ危険な状態なんだ。なにがアンダーコントロールだぁ」と叫びつづけにゃならんのです。
ああ、虚しい。ああ馬鹿馬鹿しい。これで国民の共感を得られると思っているんでしょうか。

よく反原発派は、「東電が嘘をついて放射性物質を海に流して汚染を拡大しようとしている」という言い方をします。
これを聞いて福島漁協が風評被害を恐れて、処理水を流すなという抗議をしています。
風評がこわいと福島漁協はいいますが、おちついて見て下さい。
そんなことをいまでも言っているのは、一部のサヨクメディアと運動家たちだけなのですよ。

 このようなトリチウムは基準以下にまで下げた「告示濃度」にまで希釈して海に排出する以外、いかなる解決方法もありません。
小泉さん、あんた責任者ヅラしてダメ出しするなら、どうぞ他の方法を教えて下さい。
漁協の人とノドグロを食べる前に、少しは勉強してから言えつうの。

「多核種除去設備は、汚染水に関する国の「規制基準」のうち、環境へ放出する場合の基準である「告示濃度」より低いレベルまで、放射性核種を取り除くことができる(トリチウムを除く)能力を持っています」(東電前掲)

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念のために書き添えますが、タンク内の排水はすべて告示濃度ではありません。
告示濃度1倍未満の正常の処理水が23%、5倍未満が34%、10倍未満が21%、100倍未満が16%、100倍以上が6%となっています。
これについても、東電は黙って流してしまおうというわけではなく、その事実を認めた上でもう一回ALPSで二次処理をすると述べています。

当社は、多核種除去設備等の処理水の処分にあたり、環境へ放出する場合は、その前の段階でもう一度浄化処理(二次処理)を行うことによって、トリチウム以外の放射性物質の量を可能な限り低減し、②の基準値を満たすようにする方針」と、もう一度『多核種除去設備(ALPS)』に通す方針を示しています」(東電原型)

とまれ、いま経済産業省の委員会で審議されているようですので、落ち着いてその経過を注視すればいいだけのことです。

2019年9月17日 (火)

イラン、サウジ石油施設を攻撃する


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9月14日、サウジのブキャクとクーライスの油田地帯。アブカイク精油工場という世界最大の石油施設が攻撃を受けました。
今までも陸上からアルカイーダが自爆テロをしたことはありましたが、失敗に終わっています。
今回は、10発のドローン、ないしは巡航ミサイルによって、炎上させることに成功し、操業を途絶させています。

サウジアラムコ(石油公社)によると、ブキャクは、原油精製プラントとしては世界最大であり、打撃は当初予想されたより深刻なようです。

「イエメンのイスラム教シーア派武装組織フーシ派によってアブカイクの石油施設を攻撃されたサウジアラビア国営石油会社サウジアラムコは、早急な石油生産回復への楽観を後退させつつある。事情に詳しい関係者が述べた。
フーシ派の攻撃によって世界の石油供給の約5%が途絶され、原油価格は過去最大の値上がりとなった。アラムコは当初、数日以内に相当量の原油生産を再開できると見込んでいたが、現在では想定以上の時間を要する可能性があると、同関係者が述べた」(ブルームバーク9月16日)

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アルジャジーラ 9月14日、何者かの攻撃を受けて炎上するサウジアラビア東部アブカイクの石油施設

この原油施設では、1日に原油700万バレルを石油製品に変え、パイプラインでペルシャ湾と紅海にある積み出し港へ送出しています。
クーライス油田は日産100万バレルで、埋蔵量はサウジアラムコによれば200億バレルと世界最大級です。

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クーライス油田

位置関係は下の地図をご覧下さい。
サウジとイランという共に天を戴かざる宿敵同士が、ペルシャ湾ひとつ隔てて向かい合っているのがわかります。
皮肉にもこの憎悪を募らせている両国は、生命線を共通させています。
それが、ペルシャ湾付近に展開する原油基地とその石油積み出し港、及びペルシャ湾タンカールートです。
また今回ドローン(あるいは巡航ミサイル)が発射されたのはイラクではないかという情報もありますが、イラクからサウジの原油施設は指呼の距離にあります。

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攻撃を受けたサウジアラムコの施設ではサウジアラビア国内での生産量の半分、 世界全体の 5%を担っており、 当初、サウジからの原油輸出が半分になるとの情報も飛び交いましたが、IEAは直ちに鎮静化に走りました。

「国際エネルギー機関(IEA)は14日、サウジアラビア東部の国営石油会社サウジアラムコの石油施設2カ所が無人機による攻撃を受けたことに関連し、当面の原油供給には問題がないとの見解を明らかにした。「十分な量の商業在庫がある」としている」(産経9月15日)

このIEA声明にもかかわらず、国際原油価格は高騰しました。
下図のように現在、ヨーロッパ原油価格のの指標となる北海ブレント、米国の指標WTIはいずれもハネ上がっていて、当面世界の原油高基調は避けられないと思われます。
下図は右端が切れていますが、クリックすると今週の高騰がわかります。

いままで原油市場が軟調だっただけに、意外とサウジはイランを罵倒しつつ、内心ほくほくしているかもしれませんがどんなものでしょう。
もっとも大喜びするのは、原油一本のモノカルチャーで国を支えているロシアです。

日本への影響も当然でるでしょうが、日本の場合、石油調達の大部分は契約調達であって、時の市場価格とかならずしも連動しません。
一方わが隣国の韓国は、スポット買い中心のために、国際市場価格上昇をモロに受ける事になります。
今、そうとうに経済を悪化させているかの国にとって、さらに悪い影響がでるのは避けられないと思われます。

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「サウジアラビアの石油施設への攻撃を受け、原油価格が急上昇した。国際的な指標原油の北海ブレント原油先物は16日、一時19%も上昇。原油急騰による物価上昇が景気を冷やすおそれもあり、各国で株価が下落した。トランプ米大統領は15日、原油の供給不安を和らげるため「必要に応じ、戦略石油備蓄を放出することを承認した」と表明した」
(日経9月16日 上グラフも同じ)

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ムハンマド皇太子

サウジはムハンマド皇太子が経済改革を進めている真っ最中なために、大きな痛手とはなるでしょう。
彼は皇太子ながら事実上のサウジのトップですが、ハンサムな男ですが(関係ないか)、よく言ってあげれば「リスクを恐れない大胆な性格」、悪く言えば強権的かつ独裁的な性格です。
彼は、野心的な改革を断行すると同時に、自らを批判するジャーナリストに対しては、トルコ国内まで追いかけて暗殺したりしています。
今後、ムハンマドはフーシ派とその後ろ楯であり、今回ドローン(ないしは巡航ミサイル)を提供したことが確実視されているイランに対して厳しい反撃に出ると思われています。

それにしてもサウジ軍はイラン国内で無差別爆撃で民間人を多く殺すことには有能ですが、最重要施設に向けてワラワラと飛んできたドローンにはまったくお手上げだったわけで、ムハンマドの怒りを買うことは避けられないことでしょう。

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イランは否定していますが、犯行声明を出したフーシ派はイランが作った反政府軍事組織であり、それにはイランの特殊工作部隊「コッズ部隊」が手を貸しているといれています。
今回の攻撃がドローン だった場合、民間用のホビー用ドローンではなく、爆薬が搭載可能な軍事用ドローンであり、ましてや巡航ミサイルならばイラン以外の国が提供するということはありえません。

今回が「コッズ部隊」といったハネ上がり分子だけの独走なのか、それとも政権中枢や国軍まで了承してのものか、現時点ではわかりません。

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イラン・イスラム革命防衛隊 http://parstoday.com/ja/news/world-i52547

ロウハニ大統領は軍事指導系統からはずされている、という黒井文太郎氏の分析もありますので紹介しておきます。

「誰が現在のイランの対外戦略を決めているのか?
最終的な決定権者はもちろんハメネイ最高指導者だ。しかし、最高指導者が細かいところまですべていちいち指示しているわけではない。実際に決定権の多くを行使しているのは、いわばイスラム保守派=軍部連合とでも呼ぶべき陣営だ。
ハメネイ指導者がトップに君臨し、それを補佐する側近集団「最高指導者室」があって、そのなかに安全保障政策を担当する「最高指導者軍事室」(室長はムハマド・シラジ准将)がある。
最高指導者軍事室の下には「イラン軍事参謀総長」(現在はモハマド・バケリ少将)という役職が置かれ、このポストが事実上の軍部トップ。その指揮下に、イラン国軍とイスラム革命防衛隊、警察治安部隊がある」(ビジネスインサイダー)
https://www.businessinsider.jp/post-198848

また今や国軍と並ぶ大きな軍事力に成長した革命防衛隊は、ハメイニ最高指導者が君臨する「最高指導者室」の直系です。

「革命防衛隊は、イスラム保守派の牙城だ。故ホメイニ最高指導者の親衛隊として発足し、イスラム革命の担い手と位置づけられた。1979年の革命直後の混乱期には反ホメイニ陣営を粛清する働きをしたが、その後イラン・イラク戦争(1980〜88年)を通じて優先的に予算を投じられ、巨大な軍隊に成長した」(黒井前掲)

なお、米国は上の19箇所の着弾跡(フーシ派の主張するドローン個数とは違いますが)の衛星写真を公開しており、「臨戦体制をとる」と言っています。
こごし、トランプは軍事的手段には消極的なことは知れ渡っており、おそらく軍事攻撃はしないと思われます。
ボルトンなら限定攻撃を進言したでしょうがね。
その証拠に、トランプはイランのロウハニ大統領との直接会談の線も捨てていないようです。
ということは、トランプがロウハニなどの政権中枢は、今回のテロ攻撃と無関係であると考えて、イランを分断しようとしているとも受け取れます。

「【9月16日 AFP】サウジアラビアの石油施設へのドローン(無人機)による攻撃に関し米国はイラン関与との見解を示したが、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は依然、イランのハッサン・ロウハニ(Hassan Rouhani)大統領との会談を望んでいる。ホワイトハウス(White House)が15日、明らかにした」(AFP9月16日)

 なお、日本の原発もドローン攻撃受けたら炎上するぞなんて、ここぞとヨタを飛ばしている者もいるようですが、ご期待にそえませんが、原発にはそんな可燃施設はありませんし、格納容器と建屋で二重に防護されている原子炉にドローン攻撃しても無駄です。

 

2019年9月16日 (月)

千葉停電 倒木処理を簡単に言うな

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千葉県の広域停電の復旧が遅れています。
その理由は明らかで、今回の台風が予想を遥かに超えて樹木や電柱をなぎ倒していたからです。
そのために多くの箇所の架線が寸断されています。

私も自宅と農場につながる村道に樹木が多数倒れて、道を遮断してしまいました。
たまたま架線は別な場所を通っていたために電気は約2日間の停電で事なきを得ましたが、井戸が止まって水も出ず、かつての東日本大震災のミニ版となるところでした。
もちろん千葉は私の所の比ではありません。

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https://tr.twipple.jp/t/af/1172748705738264576.htm...

ノンフィクション作家の柳原三佳氏はこう述べています。

「13日の午後、私は久留里から鋸南町まで山越えをするつもりで走っていたのですが、とにかく無数の大木が、これでもかというほど根元からなぎ倒され、または途中から折れ、道路が寸断していました。 そして大木はいたるところで電線に引っ掛かっています。
すでに倒木の多くは、通行の邪魔にならないよう切断されていましたが、それでもまだ道路上にせり出している状態です。
また、途中、いたるところで道路が通行止めになっていました。その先にはさらなる危険があるからなのでしょう」

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「倒されていたのは大木だけではありません。肝心の電柱もいたるところで折れたまま、13日の時点でもさまざまな場所で行く手を阻んでいました」(柳原氏前掲 写真も同じ)
https://news.yahoo.co.jp/byline/yanagiharamika/20190914-00142591/

倒木の処理の難しさは、その多くが山間地で足場が悪い斜面であることです。
かしいでしまった倒木は、片方をロープで何人かで支えて、別な側からチェーンソーで慎重に切断せねばなりません。
さもないといきなり重い樹木が倒れてくるからです。
そして慎重に横たえてから、寸断してひとつひとつ運び出さねばなりません。

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https://www.nippon-foundation.or.jp/what/projects/...

そしてもうひとつやっかいなことは、法的な問題です。
倒木といっても私有物である以上、所有者が存在します。
民有地の樹木の適正管理について(平成26年7月4日回答) | 千葉 ... によれば、台風などによる倒木の処理については、このような規定があります

「個人所有の敷地内に生えている樹木は、個人の所有財産であり、所有者に管理責任があります。市には個人の所有財産について適正管理を指導する権限がないため、所有者に対し指導を行うことができません。
よって今回のご相談内容については、直接所有者の方にご相談いただきますようお願いします」

法的建て付けでは、樹木の所有者が自力でやれ、ということです。
ここを案外多くの人は分かっていません。

まず第1に、今回の災害復旧において倒木が遮断した道路の管理責任は地方自治体にあります。
よくテレビなどで、「東電の見通しが悪かったために千葉県民は塗炭の苦しみにあえいでいる」などと言っている者がいますが、よく考えてみなさい。
いいですか、道路の管理・復旧は地方自治体にある以上、その復旧義務は一義的には地方自治体にあるのはとうぜんです。
東電は通行する車両と同格の一般使用者にすぎません。
一般利用者が、勝手に私有物の樹木が地方自治体管轄下の道路にかかったからといって処理するわけにはいかないのです。

ですから、東電をつかまえてこんなことを言われても、なに見当違いなこといってるのかです。

社説 停電の長期化 「想定外」ではすまない
(東電は)房総半島の山間部などで倒木の多さに手間取ったというが、見通しが甘かったと批判されても仕方がない。
 復旧後には、大規模停電の原因や、なぜ復旧作業に時間がかかったのかを、厳しく検証する必要がある」
(朝日社説9月13日)
https://www.asahi.com/articles/DA3S14175820.html

台風による大風によって敷地内の樹木が倒れるかどうかを想定するのは、一義的には土地所有者です。
道路にかかった樹木があればあらかじめ処理しておくていどはできるかもしれませんが、それすらそうとうに無理筋です。
今回の台風は前日までまったく平穏でいきなり風雨がひどくなって、見る見るうちに大災害となったのですから、なおさらです。

東電の私有地なら東電が処理すればいいのですが、東電私有地など倒壊した鉄塔周辺などの極わずかだったはずです。
よもや50メートルの鉄塔が倒壊するなんて、気象専門家のだれひとり予想しなかったわけです。
ですから朝日のように、倒木の一本も切らない奴に「想定外では済まない」と言われてもね。

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https://www.sankei.com/affairs/news/190912/afr1909...

さて復旧は二義的には、県及び市町村です。
「災害を予見すべきだった」と朝日が言うならば、その批判は千葉県が受けるべきです。
ただし、朝日が安直に言うほど簡単に予見できたとはまったく思えませんし、地方行政が乏しい予算でできることは限られています。
仮に百歩譲って大災害を予見できたとしても、地方自治体には、ましてや土地所有者には膨大な樹木や電柱を撤去できる物理力がありません。
今回も主力となったのは、いつも頼もしい陸上自衛隊と全国各地から集まった電気事業連の支援部隊1500人だったのです。

この処理部隊も勝手に動くわけにはいかず、地方自治体の要請という形を受けて活動しています。
倒木処理の権限も自治体経由で土地所有者から取ってやっと動けるわけです。

今回の千葉県停電報道でメディアがよく言っていたのが、平地の都市部での停電と比較してみせて、いかに千葉停電が遅れているかを強調することでした。
つまり、停電発生数と復旧時間を安直に比較して、千葉が遅い、東電はたるんでいる、なぜ予見できなかったのか、という流れです。

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上のテレビが使ったグラフでは、初日に千葉が98万軒、他の地域(大阪)が168万軒あったが、5日後には他の地域では解消されたか、千葉は同じ5日後でも19万軒残っているぞ、東電はたるんでいるというわけです。
あのね、平野部のしかも人口密度がまるで違う大都市の大阪と千葉を較べて、復旧戸数が違うとか、復旧時間が遅いなんて言ってもまったく無意味なの。

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KGNさんツイッートより引用 上も同じ

上の図を見て頂きたいのですが、左側が都市部、右側が郡部です。
修理するのはどちらもたいへんですが、平野部の人口密集地帯は道路が寸断されても復旧は容易で、修理部隊のアクセスも楽です。
それに対して郡部は、復旧ポイントに行くまでの道路が長いうえに、アクセス道が山間部を走るために各所で寸断されて修理にたどり着けないこともしばしば出ました。
しかも一軒一軒が離れているために、家屋と家屋の間も架線が切断されていたりしますから、復旧戸数がおのずと少しずつになります。

これらを一切無視して朝日さん、東電は予見できたはずだぁ、果てはこれまた筋違いの架線地中化などを提案するに至っては馬鹿丸出しです。
朝日はこんなことをもっともらしく吹いています。

「長期的には電線の地中化が有効な対策である。コストはかかるが大規模停電の影響と復旧費用を考えれば、国も電力会社も無電柱化に力を入れる時だ」(朝日前掲)

馬鹿をつかまえて馬鹿ですか、といってもしかたがないですが、朝日さん、地中化になんてなりませんよ。
無電柱化がヨーロッパや韓国で進んでいるのにわが国は遅れているから、今回の大停電になったんだぁ、なんて平気で言っている人がいますが、それは地震がない国のことです。
ひとたび地震が起きればそこら中が液状化するわが国で、地中化なんかしたら、電柱なら簡単に切れた箇所が眼でわかるものを、各ブッックごとに掘り起こして修理箇所を探し出さねばなりません。
千葉は地震のたびに液状化現象が発生するのを忘れましたか。
仮に無電柱化して地震が起きたら、地中はグニャグニャのゲル状ですから、送電網は各所で寸断されて復旧はいつになることやら。
まぁ朝日なんかはそうなったらなったで、「地震は予見できたはずだ。東電はぁ」ってやるんでしょうがね。
気楽な商売だこと。

とまれ、一生懸命復旧に励んでいる人たちの背中を撃たないで下さい。

 

2019年9月15日 (日)

日曜写真館 ひたむきな力士たち

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じっと土俵を見つめます


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ちょっと可愛いかも

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安定した余裕です

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この人は孤高です

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人柄がいいんです
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彼は仲間を作りません

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兄弟子なき後、日本人横綱に一番近かったのはあなたです

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さようなら、最後まで全力で走りきりました。小さな巨人でした


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 日本人になられたそうで

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あと一週間。勝ち越して下さい

2019年9月14日 (土)

小泉進次郎新大臣のポピュリズム政治家らしい船出

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小泉進次郎大臣があまりにもポピュリズム政治家丸出しの船出をしたので、ネット界が騒然となっています。

「進次郎氏は12日、東日本大震災で被災した福島県の漁業関係者と面会し、東京電力福島第1原発の汚染水浄化後の処理水をめぐり原田義昭前環境相が「海洋放出しかない」と述べたことについて、「率直に申し訳ない」と謝罪した。 こうした一連の言動をめぐり、容認派と反対派からネット上で批判・注文が殺到している。
 今月下旬には、米ニューヨークで開かれる国連総会の環境関連イベントにも出席し“国際デビュー”を果たす予定だが、政治家として真価が問われるポストのようだ」(ZAKZAK9月13日)

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https://www.fnn.jp/posts/00423940CX/201909121908_C

就任早々、これですか。まぁクソミソに言われてもしたかがないですね。
原田前環境相のこの発言を完全否定しています。

原田義昭環境相は10日の記者会見で、東京電力福島第1原子力発電所放射性物質トリチウムを含んだ処理水について「所管を外れるが、思い切って放出して希釈するしか方法がないと思っている」と述べた」(日経9月10日)

原田氏が「トリチウム水の海洋放出しかない」という常識的なことを、所管をはずれるがと予防線張っておそるおそる言ったわけですが、いわば置き土産です。
これを就任たった2日で、こんな置き土産はいらねぇとばかりに(かわいくないね)消火してしまっただけではなく、漁協にまで謝罪に行って完全鎮火すると言ったそうです。
おいおい、いきなりこれかい、といったところです。

問題は3点あります。
ひとつめは、大前提としてこの人には福島第1の「汚染水」(この表現どうかしてくれ。トリチウムはミネラルウォーターにも入ってるぞ)ことトリチウム水処理について発言する権限がないことです。
この権限を持つのは経済産業省であって、管轄外の大臣がこのような発言をすること自体、ただの失言では済まず、経産大臣の後の判断を縛ることになる越権行為です。

知っていてやったなら大臣がなに者かを知らない無知蒙昧、優しく言ってやってもずいぶんと迂闊な話です。
一方、同じ反原発派でも、河野太郎氏は防衛大臣として、管轄外のマスコミの誘導質問には一切答えません。
大臣が個人的人気取りで所轄外のことにいちいち口出しして調子のいいことを言っていたら、内閣なんてただの学校のホームルームです。

第2に、この発言はただ経済産業省への横紙破りをしだけに止まりません。
なるほど環境省は原子力規制庁を外局として持ち、更にその傘下に原子力行政の心臓部である原子力規制委員会を持っていますが、環境大臣には何の指導権限も与えられていません。
規制委員会は外形的には環境省傘下にありますが、「3条委員会」として独立性を担保されているからです。
「3条委員会」とは、中央省庁の機構などを定めた国家行政組織法の第三条二ある、庁と同格の独立した行政組織を言います。
たとえば有名なのは、国家公安委員会公正取引委員会など七つあります。

これらの委員会は強い独立性を与えないと、時の政治家に介入されてねじ曲げられてしまう可能性があるために、あえて強い独立した権限を付与されているわけです。
ですから進次郎さんが、いくらオレは規制委員会の上にある環境省トップだぞといきまいてみても、規制委員会委員長は淡々と、はいそうですか、あなたのお考えは承りましたが、関係なく仕事をやらしていただきます、と答えることでしょう。
つまり原子力行政について事実上なんの権限もないんですよ、進次郎さん、あなたには。

第3に、ただ残念ながら、世間はそう受けとめないということです。
「原発を止める」というのは父親と一緒で、パパも粗雑な反原発論を吹きまくって往年のファンまでがっかりさせてきましたが、小泉ジュニアはパパとは違って在野の暇人でもなければ、ただの政治家でもなく、あくまでも
大臣だということです。
とうぜんのこととして、大臣が謝罪にするということと、在野のパパが叫ぶのとはまったく次元が違うのです。

いかに所轄違いで権限ナッシングであっても世間はそう取りません。
なんとなく環境大臣なんだから、権限があって言っているように聞えちゃうんですよ。
その現役大臣が前大臣のトリチウム水放出発言を否定してしまったら、これは政府は金輪際二度とそれを考えないと述べたに等しいことになりますし、ましてや福島漁協に謝罪に行くとまで言ってしまったら、原子力行政の仕組みなんか知るはずのない大多数の国民は、そうかその方針で政府はやるんだと錯覚してしまいます。

進次郎さんはポピュリスト政治家らしく、無責任で感覚的にモノを言います。
ポピュリストは大向こう受けすることを言って人気をとることを、本能的にやっちゃう哀しいサガの人種なのです。
パパ小泉は、いみじくも国民は難しいことはわからないから、短いワンフレーズで言えということを信条としていました。
ジュニアはアノ顔で決意を眉根にこめて、父親譲りのメリハリの効いた演説に乗せて言うわけですから、インパクトあるんだよな。
しかし、内容はスカですから、言った以上は責任を取ってもらいます。

第4に、その「言った責任」とは、すなわち代替案を提示するということです。
じゃあ、どうすんのよ、シンジローさん。そこまで言わないと、環境大臣としては言ったことにならないんですよ。
トリチウム水を国際法(ロンドン条約)に従って適切に海に排水しないと、近々にタンクは満タンとなって行き場を失い、事故処理はその時点で頓挫します。
これは事故以前から日本は、いや世界中の原発が通常業務としてやってきたことで、なにを今さらです。
つまりは進次郎さんが言った汚染水は出させないという発言は、一見福島漁民に寄り添っているように聞えますが、実は風評を拡散しているのとなんらかわりありません。

野党政治家なら口当たりのいいことを「言ってみました」で済みますが、いま進次郎さんの立場は環境行政のトップです。
言ったらそれに伴う実行についてきちんとした別の計画を国民に提示せにゃなりません。
大臣は野党ではないのです。

「小泉進次郎環境相は11日夜、環境省内で行った就任記者会見で東京電力福島第1原発事故を踏まえ、原発について「どうやったら残せるかではなく、どうやったらなくせるかを考えたい」と述べた。2030年度に再生可能エネルギーの電源比率22~24%を目指すと掲げた政府のエネルギー基本計画に関し、さらに比率を拡大すべきだとの認識を示した」(毎日9月12日)

この発言を聞いただけで、この人が今までいかに原子力問題をまじめに考えてこなかったのがわかります。
脱原発について、私はこのブログでほぼ1年かけて淡々と記事(カテゴリー「原子力を真面目にやめる方法」参照)にしてきましたので、これを読んで下さいね、でおしまいにしたいくらい幼稚です。

「どうやったら残せるのかではなく、どうやったらなくせるのか」ですって(苦笑)。
あなた、反原発運動家と同じこと言っているね。
現実に「なくす」ためには、減らしながらなくすしかないんですよ。
つまり一定数の原発を残しつつ段階的に長期間かけて「なくす」のが、もっとも合理的な回答なのです。

短めに言いますが、脱原発するためには、社会にいかにダメージをあたえないでするための経済的側面、そして今まで積み上げてきた使用済み燃料をどう処分するのか、最低でもこの2点について回答しないと話にならないのです。

このテーマは始めると長くなるので、過去記事をご覧いただくとして、一点だけ指摘しておきます。
原発を止めるということは、すなわち火力発電の比率を高めることなのです。
既存のエネルギー基本法でも、2030年に再エネを16%から24%にするためには火力を56%でキープせねばなりません。
この火力を微減させるためには、再エネを20%台にして、原子力を今の3%からかつての水準に近い20~22%にまで増やさねばならなりません。

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そして再エネを倍にすればどうなるのでしょう。これには実例があります。脱原発を宣言したイタリアとドイツです
この両国は再エネを日本の倍もっていますが、電気料金はこのありさまです。

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https://criepi.denken.or.jp/jp/serc/source/pdf/Y17504.pdf

上図の薄い緑色が再エネですが、ほぼ独伊が倍であるのがわかります。
図を横切るように上昇する黒線が家庭用電気料金を現していますが、日本は現在中位の電力料金で済んでいますが、再エネを2倍にすると30円/kWhに跳ね上がって世界でも電気料金上位の国となります。
この第2次日独伊三カ国同盟は止めるべきです。
つまりそれでなくても福島事故以降、菅政権が原発ゼロにした祟りで、上りつづけている電気料が更に国民生活を直撃するということです。
経済と生活に打撃をあたえての脱原発など本末転倒です。

そのうえ進次郎さんは国連の地球温暖化会議にぬけぬけと行くと言っているようですから、地球温暖化のためには火力をバンバン削減せねばなりません。
火力
がもっとも二酸化炭素をだすのは、分かりきったことだからです。
仮に原子力ゼロの上に、原発なき後に主力電源の重責を背負っている火力まで止めてしまうと、日本は工業国家であることを止めるたけではなく、文化生活も止めることになるでしょう。

つまりは進次郎さんの言っていることは、ただの空論のキイレイゴト、あるいはただの偽善です。

蛇足ですが、育休とるとか言って、とらないのは古いとか言っているようですが、なぁに言ってんだか。
大臣は、国民が育休を取れる仕組みを作ることが仕事で、てめぇひとりが取ってどうすんの。
国民の付託には休日はないんですよ。
しかも大臣は休んでも賃金は丸々保証されるかもしれませんが、国民は所得はガタ減り、それどころか復帰したら机がないかもしれないんですぜ。
ならどうするのか、そこをかんがえるのが為政者の仕事で、自分だけとって「国民はオレを見習って休め」ではシャレになりません。
これも厚労省の管轄なんだけど、ま、いいか。

とまれ進次郎さんは、大臣がどのような仕事なのかまったくおわかりではないみたいです。
そこからのようですから、彼を高く買っていられる菅さんは、どこかでキッチリと叱ってやって下さい。
本気で総理をめざすなら、まずはそこからです。

 

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