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2022年11月29日 (火)

地球温暖化説の怪しい出生

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地球はほんとうに温暖化しているのか?それとも正反対に寒冷化に向っているのか?  
実はこのことに対して、科学界はふたつに分かれているといったほうか公平でしょう。  
主流はいうまでもなくIPCC(気候変動に関する政府間パネル)を中心とする温暖化派で、それに反対する人たちは懐疑派と呼ばれています。

簡単に温暖化説を誕生のいきさつをおさらいすると、 1970年代後半からそれまでの寒冷化説に代わって人為的CO2の増加が温暖化の原因だとする学説が生まれました。 
1988年には、NASA・ゴダード宇宙研究所のジェームズ・ハンセン所長の炭酸ガスの増加が地球温暖化を引き起こしているという爆弾証言があり、一挙に世界中で話題となりました。 
これは金星がぶ厚いガスに覆われていて、その雲の下は温室効果で焦熱地獄に違いないという考え方から来ています。 

それに歩調を合わせるように、9年後に有名なマイクル・マンのホッケースティック曲線が世に出て、米国政府まで動かすようになります。(下図参照Wikipediaより)
これがホッケースティク曲線と呼ばれるのは、20世紀に入るやいなや炭酸ガスと気温が45度でドーンっと同調して上昇するという分かりやすいグラフだったからです。Photo
この図はIPCCの「気象変化2001」にデカデカと掲載されました。マンは若手の古気象学者で、主に気象代替指標といって年輪などを使って1000年~1980年代までの気象変化を調べていた人でした。 
このホッケースティック曲線は、マン自身もIPCCの執筆者のひとりで加わっていた2001年のIPCC第3次報告書に公式文書に登場するやいなや、大騒動に発展しました。 

それは科学的に吟味されるより早く、政治の絶好のテーマなったのです。

まず、米国のクリントン大統領(というよりゴア副大統領)が、いわば米国政権の公認の学説となりました。
当時、米国海洋・気象諮問評議会副委員長をしていたS・フレッド・シンガーは、これに対して苦々しげに「クリントン政権と、IPCCが気象変動に関してほしがっていたお手軽な答え」と評しています。 

つまり当時、石油資本の後ろ楯のある共和党政権から一線を画して新たなエネルギー政策を取りたかった米国民主党政権と、気候問題というマイナーな分野に多額の予算を欲しがっていたIPCCなどの気候マフィアが手を組んでこのマンのホッケースティック曲線を政治的に利用したというわけです。

もちろんIPCCも一枚岩で温暖化を信じていたわけではなく、すぐに有名なホッケースティック論争が開始されます。 
というのも、多くの気象学者が関わったマンの発表の3年前95年にIPCC「気象変動1995-図22」としてこのような気象変動グラフが掲載されているからです。 

 

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ここにはマンが意図的に無視した中世の農業発展を支えたといわれる中世温暖期と、その後にやって来るテムズ河も凍ったマウンダー極小期による小氷河期がしっかりと記されています。 
ちなみに上図で分かるように中世温暖期に至っては、現代より温度が高いのですが、当時にハンセンやマンが言うような「地球気候を変動させるような人為的炭酸ガスの排出」がなかったのはいうまでもありません。 
このような多くの批判を受けて2004年にマン自身も訂正に応じて、現在はこのようななんと11種類の曲線があるグラフに訂正されています。(下図参照Wikipediaより)
ここには批判があったマウンダー極小期が小氷河期としてでてきます。(ただし、マンは訂正しても間違ってはいないと主張し続けています。)

 

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このように一見不動のように見える地球温暖化説は、多数の間違いやスキャンダルを引き起しながらも本質的にはまったく変更を加えられることなく現代に至っています。

 

 

 

すべてはホッケースティック曲線から始まった

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脱炭素というとイヤでも思い出されるのが、CO2と気温上昇がパラレルで上昇するという、マイケル・マンのホッケースティック曲線です。 
これは樹木の年輪の間隔から割り出した仮説の曲線です。
 マンはこれを1998年に「発見」して、炭酸ガスが増えて金星のように分厚いガスの下はアッチチという星に地球がなるとして世に問いました。
ここから脱炭素狂想曲のすべてが始まったのです。

下図があまりにも有名な、脱炭素の元祖ホッケースティック曲線です。

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赤祖父俊一(アラスカ大学国際北極圏研究センター初代所長)による

これが地球温暖化を説明するのにつごうがいいことから、炭酸ガス主犯説の科学的根拠とされました。
しかしあいにく、このホッケースティック曲線には大きな誤りがありました。
最大の誤りは、上のグラフの右に見える19世紀以前の気温が単調に横ばいですが、現実の観測記録と大きく異なっていることです。
また10C世紀~14世紀の中世温暖期は無視され、19世紀の小氷河期もなかったことになっています。
つまりマンは過去の様々な気象変動をあえて無視して、18世紀以後の産業革命による人為的炭酸ガスの増加が地球温暖化を招いているとしたのです。

そしてできたのがこのような、いまや教科書にも載っている「定説」です。

「IPCC第5次評価報告書では、人間活動が20世紀半ば以降に観測された温暖化の要因である可能性が極めて高い(95%)と発表しています。18世紀に始まった産業革命により、石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料の使用が急増し、大気中の二酸化炭素濃度は産業革命以前(1750年頃)に比べ約40%増加しています」
二酸化炭素はなぜ増えたのか | JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター

さらに具体的には、このような主張がなされ、現実に各国政府が目標値を定めて邁進しているのはご承知のとおりです。


  • 地球温暖化によって世界の平均気温が産業革命以前の水準よりも2℃上昇すれば、膨大な数の人が生死に関わるリスクにさらされる恐れがあります。
  • 気温上昇を1.5℃に抑えることができれば、水ストレスに悩まされる人の数を半減できるなど、あらゆる影響を軽減できると言われています。
  • 気温上昇が2℃に達すれば、夏の北極海では海氷が消えるという現象も珍しくなくなるでしょう。
  • 温暖化を食い止めるためには、効果的なエネルギー転換の推進が不可欠。しかし、一部の専門家は、現状のエネルギー転換の進展ペースは遅すぎると指摘します。
    地球温暖化による世界の気温上昇、「1.5℃」と「2℃」では大きな差 | 世界経済フォーラム (weforum.org)

もはや脅迫的言辞ですが、「世界の科学者の総意」とまでいわれてしまっては、もう懐疑をはさむ余地がない真理となってしまいました。
ところが、この震源地だったマンのホッケースティック曲線が危ういということは、いまやIPCCですら認めているのです。
ただし小声ですが。

「だがIPCCの第5次評価報告書(2013年)の示した過去の温度のグラフでは、中世(1000年前後)の温度は、現在とあまり変わらない高さまで上がっている。
政策決定者向け要約
「北半球では、1983年から2012年の30年間は、過去1400年間で最も暖かかった可能性が高い」「幾つかの地域において、中世気候異常(950年から1250年)の内の数十年間は、20世紀末期と同じぐらい暖かかった(高い確信度)」となる。(略)

ホッケースティック曲線の発表の後、古気候を巡った論争が起きて、結局、IPCCはホッケースティック曲線の使用を止め、最新の第5次評価報告書では北半球において中世の温暖期(今のIPCCの言葉では中世気候異常と呼ばれているけれども)が存在したことが明記されている」
(『中世は今ぐらい熱かった:IPCCの最新の知見』杉山大志IPCC第6次評価報告統括代表執筆者)
中世は今ぐらい熱かった:IPCCの最新の知見 – NPO法人 国際環境経済研究所|International Environment and Economy Institute (ieei.or.jp)

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                                                                   IPCC第五次評価報告書 

上図のIPCC(2007) 第4次評価報告書においてはホッケースティック曲線は消滅しています。
つまり20世紀に入って特異な気温上昇が見られたという説は、科学的信憑性が低いとIPCC自身が認めているということになります。

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また上のグラフは、中世温暖期は地球規模で見ても、中世の温暖期は現在よりも暖かかったとする複数の温度再現研究結果をまとめたものです。
中国においても同様の中世温暖期があったことが記録に残っています。

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                                     中国における中世の温暖期研究
https://www.clim-past.net/9/1153/2013/cp-9-1153-2013.pdf

また、このホッケースティック曲線が衝撃を与えた20世紀からの極端な気温上昇の中にも、下図のように1940年から1980年まで続いた「寒冷期」が存在します。
そういえば思い出しました。1970年当時の世界の気象学会はどんな警鐘を鳴らしていたのでしょうか。「来る小氷河期に備えよ!」でしたっけね(苦笑)。
そのわずか20年後に真逆ですか、まさに「君子ハ豹変ス」の見本ですな。 

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それはさておき、上の地球の気温変化グラフに、下図のCO2の排出量グラフを 重ねてみましょう。1940年~1980年にかけて、大気中のCO2濃度に低下が見られたのでしょうか、下図をご覧ください。

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 一目瞭然ですね。1940年のCO2排出量は50億トン弱、1980年には180億トン弱、つまり3.6倍になっているにもかかわらず、実際には寒冷期が来ているのです。
これをどのように、CO2の増大が地球の気温上昇につながったと整合性をもって説明するのでしょうか。 

下は極地における氷床ボーリングによる二酸化炭素とメタンの資料ですが、左端の現代と2万3千年前を較べれば同じだとわかります。
さらには1万3千年、3万3千年前にも高い時代がみられます。
The Vostok Ice Core: Temperature, CO2 and CH4
http://euanmearns.com/the-vostok-ice-core-temperature-co2-and-ch4/
 

Vostok_temperature_co2

これらをバッサリ切って視野に入れない、いや議論すらさせないでは、あまりに非科学的というもんではありませんか。
にもかかわらずその原因を一面的に人為的炭酸ガスのみに求めていき、経済や社会生活に大きな打撃を与えかねない現在の信仰にも似た風潮には疑問をもたざるをえません。

現在のグリーンファンドなどは巨額な資金を運用しており、いまや世界経済にも影響を与えるまでになっています。彼らの野望とこの人為的炭酸ガス説は無縁とは考えにくいのです。

 

 

2022年11月28日 (月)

地球温暖化は特に珍しい現象ではない

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負ける時はこんなものです。
高安は続いて2回負けました。相性がわるいのは確かですが、確率論的にもありません。
2回目の優勝決定で負けたのは、よもや決定戦て変化するとは思わなかったからです。
それにしてもそこまでして勝ちたいのか、阿炎。
おまけに脳震盪おこしている力士を動かすとは、相撲協会の無知に呆れました。殺す気ですか。
ボクシングのように医療スタッフを土俵下に待機させておく時代にとうになっているし、そもそもあの高い土俵の構造ではしなくてもいいけが人が続出して当然です。

その後、いまやダースベーダー化した義時の陰鬱なるドラマを見てからのW杯観戦でした。
もう気分ダダ下がり。
案の定、日本代表は攻め続けてもテトラポットにハネ返される波のように一点がとれず、こういう状態はあぶないなと思っていたら、たった一発の主将のクリアミスで裏をとられて得点を許しました。

決定力不足のひとことに尽きます。
あんな単調な攻撃を繰り返しても、守りに入ったコスタリカには通じません。
上田綺世がかわいそうでした。いくら奮闘してくれていても活かせていない。
ミスパスが多くキラーパスがなし。これでは点につながりません。
ですから、いくらゴール前でFKをもらっても、CKをいくつ得てもまったく入る気がしませんでした。
やたら駆け回るが、決定力に繋がらない昭和の日本代表に戻ったような気分です。

「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」というそうですが、今回もそのとおりとなりました。
吉田の板倉の一発のロングパスで勝ち、吉田の一発のミスパスで負けました。
https://twitter.com/i/status/1596830789941202945


202111140

アゴラ

気を取り直します。
さて2020年に、CO2が史上最高値だったのを知っていますか。
なんとコロナの真っ最中で世界経済が最低だったのにかかわらず、CO2だけは出まくっていたことになります。

「ロンドン(CNN) 二酸化炭素(CO2)をはじめとする大気中の温室効果ガスの濃度は年々上昇を続け、昨年さらに観測史上最高値を更新したことが、世界気象機関(WMO)の新たな報告で明らかになった。
WMOが25日に発表した報告書によると、昨年のCO2濃度は産業革命前の149%を記録した。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で新たな排出量は一時的に減少したものの、大気中の濃度が過去10年間、次第に上昇してきた傾向に変化はみられなかった。」(CNN2021.10.27 )
CNN.co.jp : 大気中のCO2濃度、昨年も記録更新 世界気象機関の報告

これを炭酸ガス人為説の間違いの傍証のように言っている人がいましたが、そうではありません。
こういう時間差が出るのは、CO2が海洋や植物に吸い込まれる自然界の緩衝作用が働いているからです。
植物や自然界がいったんCO2を吸収して一定時間ため込んでから吐き出すのです。

では、いったいどのくらいの時間かかって吸い込まれているのかは大事なポイントです。 
というのは、海洋や植物に吸収されるまでに長い時間がかかるのです。
つまり、今この世界にあるCO2は、ただいま現在のものではなく、過去に由来して蓄積しているのです。
この蓄積期間にも説がいろいろとあるようですが、最短で5年間、長いもので200年間という学者もいるそうです。 

このCO2が自然界に吸収されるまでの期間を、「滞留時間」と呼びますが、これを最短の5年間ととると、モロに人間の活動によるという証明となります。
 一方200年ととると、人間活動との関係が微妙になります。 
というのは工業化のきっかけとなった産業革命が起きたのが18世紀半ばから19世紀だからで、人為説ならばそこから有意な気温上昇がなければならないはずですが、実は19世紀にはテムズような河が凍るような小氷河期が到来したこともあるのです。
また20世紀にも70年代には寒冷期が来ています。
その頃には氷河期がやってくると人類はおびえていたのをもう忘れたようです。

とろで、よく勘違いされていますが、地球温暖化は特に珍しい現象ではなく、COP26が言うように産業革命から突然始まったわけでもありません。
たとえば、日本の古代縄文期、古代ローマ時代、そして中世など、人類がこの地球上に現れてからもなんどとなく気温上昇をみました。

下のグラフは国立極地研究所の採取したもので、上から過去170年間、中は過去千年間、下は過去4千年間年の温度変化データです。
気象観測データ(赤線)と観測と気候モデルから導出したデータ(黒線)を、氷床コアを使った温度復元データ(青線)と比較 したものです。  

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●国立極地研究所、グリーンランド過去4千年の温度復元(2015年1月

 極地研は上図の結果から、このように述べています。

「気温変動の長期傾向としては、過去4千年間で1.5℃程度の寒冷化傾向を見いだした。
過去十年間(西暦2000年から2010年まで)におけるグリーンランド氷床の頂上付近の平均気温は、過去千年の温度記録のなかで2度起こった特に気温の高い時期に匹敵することが判明した。
なお、それらの高温期は西暦1930-1940年代と西暦1140年代に発生している。
過去4千年間には、現在を上回る温暖期が繰り返し発生していることがわかった。
これらの結果から、最近十年間の平均気温は、過去4千年でみれば自然起源で変動しうる範囲に収まっている」(極地研前掲)

極地研は、「人為起源の温室効果ガスの放出により今後さらに温暖化が進行することが懸念されている」としなからも、過去千年に3回数十年の期間に渡って30度以上の期間があったとしています。
まず中央のグラフをご覧下さい。左から西暦1140年代頃(中世温暖期)、1930~1940年頃、そして現代2000年代の3つです。

さらに上段グラフを見ると、過去4千年まで時間を遡れば、紀元前にはたびたび30度を超える時期が存在しているのがわかります。
また下段グラフはいちばん直近の170年スパンの温度変化ですが、1930年代に30度を超えた期間があるものの1970年代には寒冷化の時期も存在します。

このように見ると、極地研が言うように、「最近十年間の平均気温は、過去4千年でみれば自然起源で変動しうる範囲に収まっている 」というのが正直な事実で、地球の温度は上昇と下降を繰り返しているのです。
決してCOPが警告するように産業革命以降一本調子で上昇し続けているわけではありません。

では、CO2増大と気温上昇には相関関係があるのでしょうか?
そう、確かにあることはあります。
ただし、一般に流布されているように「CO2増大によって気温上昇が起きた」のではなく、その真逆のプロセスによって、ですが。 

今日もグラフばかりで恐縮ですが、次の図をご覧ください。 

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上図の破線がCO2です。実線が気温です。一見パラレルですが、よく見ると面白いことに気がつきませんか。
そうです、CO2の増大は気温上昇した「後」に発現しているのです。 
この現象はちょうどサイダーを温めるとブクブクと炭酸の泡が出てくるように、海水面の温度上昇により海水に含まれていたCO2が空気中に放出されるからです。 

現在の気温ですとCO2放出が支配的ですが、0.6℃低下するとCO2濃度の上昇は止まるとの説もあります。 
ひとつつけ加えれば、CO2は自然界からも放出されており、人間活動由来なのは、そのうちたかだか3%でしかないのです。 
このように考えると、大気中の質量比0.054%にすぎないCO2が、その6倍もの0.330%の質量比をもち、5.3倍の温暖化効果をもつ水蒸気より温暖化効果があるというのは不自然ではないでしょうか。 

なんらかの原因で地球が温暖化した結果、海水温が上昇し膨大な水蒸気が発生し、それに伴ってCO2も放出されたと考えるのが素直だと思われます。 
また、そのCO2排出量のわずか3%ていどしか人間由来でないとすれば、人間活動由来のCO2「こそ」が地球温暖化の主犯であると決めつけるのは、あまりに飛躍がありすぎるように思えます。 

私は人為的炭酸ガスが増大していることは事実だと考えていますし、それが温暖化の一因となっていることも確かだろうと考えています。
また歯止めのない工業化が自然環境を破壊していることも事実だと思っています。
さらに現在なにかしらの複合的原因で、地球温暖化が進行する時期に当たっていることも事実だと思います。
ここまではCO2人為説派と一緒です。

ただしここからが違うのですが、地球温暖化の原因と思われるのは、太陽黒点の変化などたぶん片手の指の数では足りないほど存在します。
そのうちの有力な説のひとつが、黒点変化説です。

太陽の黒点の数はガリレオの時代から観測されています。黒点数と地球の気候に相関があることは以前から知られていました。
黒点数はおよそ11年の周期で変動していますが、17世紀のマウンダ―期とよばれている時代にはほとんど黒点がありませんでした。
下図の縦軸が太陽黒点数で、横軸が気温です。
縦軸が減少すると、気温も低下しているのがわかります。

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太陽黒点数の変動 「気候変動とエネルギー問題」深井有

この時期にはロンドンのテームズ河が冬に凍り、氷の上でスケートをする絵が残されています。19世紀初めにも黒点数の少ないダルトン期があり、それ以降現在まで黒点数は上昇傾向にあります。
黒点数の変動周期と地球の平均気温をプロットしたのが下図で、太陽黒点と地球気温はあきらかな相関性を示しています。

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黒点数と平均気温の相関  深井前掲

つまり太陽の黒点が減り、その周期が伸びると地球は寒くなり、その反対は暖かくなるのです。
このような太陽黒点と地球気温の研究はいくつかあります。

下図は名古屋大学小川克郎名誉教授による、地球寒冷化を示す観測データです。

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尚業千、菅井径世、小川克郎『過去110年間の地球気温変化とCO2放出及び太陽活動との関係~NASA/GISS気温データベースによる』
Microsoft Word - 小川先生編集.doc (mottainaisociety.org)

 先入観なしにご覧ください。
あきらかに気温、気候の変化は太陽活動と相関しています。
単調な人為的CO2増加では説明が出来ません。
しかしこの太陽黒点の変動だけでも説明しきれず、宇宙線による変動説(スヴェンスマーク説) や地球規模の海流の変化など諸説があります。

頭を冷やしして視野を拡げましょう。
あと20年もたったら、なぜあのとき世界全体が狂ったようにひとつの方向に進んでしまったのか不思議にさえ思うことでしょう。
この勢いはとまりません。
すべての国家と膨大な企業が一定方向に動いた場合、行くところまで行き着かないと止まらないからです。

 

 

2022年11月27日 (日)

日曜写真館 蜜蜂は光と消えつ影と生れ

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花芯ふかく溺るる蜂を見て飽かず 木下夕爾

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われ蜂となりて向日葵の中にゐる 野見山朱鳥

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一日に一度は見上ぐ山茶花を 細見綾子

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小鳥来る山茶花一つ花咲かせ 山口青邨

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妙に素直に蜂のあくせく夢の中 阿部完市

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ぶつかれば激し十一月の蜂 中戸川朝人 

 

2022年11月26日 (土)

ノルウェーのエコミーイズム

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ノルウェイの急進的なEV政策について、もう少し詳しく見ていきましょう。
昨日見てきたように、脱炭素するにはカネがかかります。
膨大な数の充電施設をつくらねばならいので、インフラ整備から始めねばなりません。
そもそもEV(電気自動車)など、ただの自動車として見た場合、性能的には百年以上の歴史のあるガソリン車に及ぶべくもない未完成の技術です。

特に問題なのは、バッテリー技術が追いついていないことです。
フル充電まで実に8時間もかかりますから、使いたいときに使えるとは限りません。
そのうえフル充電しても、通常バッテリーで連続走行すると320㎞、大型バッテリーでも450㎞ていどです。
行った先に充電施設がなければ、牽引してもらうしかなくなります。
つまりは未完成のインフラの上でしか動けない不便にして、未完成のハンチクな車なのです。

ウクライナ戦争でガソリン価格が高騰したからEVのほうが有利だと言う人もいますが、下図のWTI原油先物市場を見ればわかるように、原油価格が高騰したのは一時的なもので、再びバレル80ドル前後まで下落して落ち着いています。

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マーケット|SBI証券 (sbisec.co.jp)

ですから、EVの意義があるとすれば、唯一「脱炭素」という一点だけに限定されてしまいます。
しかも脱炭素という以上、消費末端の車だけ脱炭素しても無意味です。
エネルギー源から末端まですべの行程で脱炭素しなければなりません。

ですから、脱炭素のエースとなっているEVは、発電から化石燃料を排し、製造工場の電力源も非化石燃料で賄わねばならないわけで、けっこうこれが大変です。
だって一国のエネルギー構造を根本から変えねばならないんですからね。

日本のエコ趣味者がいくらEVに乗ろうと、それを動かす電気が化石燃料を燃やして作っているのですから、ただのファッションです。

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EVのソーシャルデザイン革命、日産リーフ×坂本龍一さんインタビュー - ITmedia ビジネスオンライン

ノルウェイはさすが北欧の世田谷、自他ともに認める意識高い系国家ですから、こんなベタなことはしません。
発電から一貫してエコです。ほぼすべてが水力。

ノルウェイは北海油田という宝物を抱えている国でありながら、すんなりこの原油を自分の国で使わずに、「悪魔の化石燃料」はドイツに押しつけてそこでじゃんじゃん燃やさせています。
ノルウェイの空はキレイになっても、ドイツの環境は汚れてもよいということのようですが、もちろんこれでは地球全体のCO2は減りません。

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株式市場が注目!海外企業:ノルウェーの最大手エネルギーのエクイノール、原油高で業績好調とロシア撤退の背景=小田切尚登 | 週刊エコノミスト Online (mainichi.jp)

ところでノルウェイ最大の輸出品 は、原油と天然ガス、石油製品まであわせると86%にもなってしまいます。
日本で有名な魚介類などわずか10%にすぎません。

「2021年の最終四半期には、ノルウェーの石油とガスの輸出は月額1,000億ノルウェークローネ(115億米ドル)以上に達しました。これは、前年同期のほぼ3倍です。2021年の石油生産量は1億200万標準立方メートルに、天然ガスの生産量は1,130億立方メートルに増加しました。
ノルウェーは現在、ノルウェーの大陸棚で利用可能なすべての石油およびガス資源の約半分を抽出しています」
ノルウェー:2021年に石油とガスの輸出収入を記録!他にどのように彼らは大規模なEV補助金に資金を提供することができたでしょうか?– (wattsupwiththat.com)


  数 十億 %  
原油  $     29.6 43%  
天然ガス  $     23.0 34%  
石油精製品  $        6.1 9% 86%
鮮魚  $        6.8 10%  
生アルミニウム  $        2.9 4%  
トータル  $     68.5 100%  
欧州経済開発委員会

   wattsupwiththat.com

ですからノルウェー石油局のイングリッド・ソルベリ局長は原油の需要と価格が急上昇した年には、手放しで「素晴らしい年だった」と式典で叫んでしまったそうです。
もちろん彼女はこのスピーチで、ただのひとことも「気象変動」とか「脱炭素」などには言及しませんでした。
なかなかのプラグマチストぶりです。

では化石燃料を輸出しまくって炭酸ガスを排出していることを恥じて減産するのかとおもいきや、ノルウェイは原油価格の上昇に気をよくして増産するそうです。

[オスロ 6日 ロイター] - ノルウェー政府予算案によると、同国の来年の石油生産は15%増加する見通し。ヨハン・スベルドルップ油田が年内に増産する予定。
政府は「ノルウェーの大陸棚はこの厳しい時期に引き続き欧州に安定的、長期的に石油・ガスを供給しなければならない」と表明した。
来年の天然ガス生産は1210億立方メートルとなる見通し。今年は1220億立方メートルと予想されている。
ノルウェーはロシアのガス輸出削減を受け、欧州最大のガス供給国となっている。ヨハン・スベルドルップ油田で産出される原油は、ロシア産ウラル原油の代替として利用されている」
(ロイター2022年10月6日 )
ノルウェーの石油生産、来年15%増加へ=予算案 | ロイター (reuters.com)

なぜ、原油市場が高騰したのかといえば、対ロシア制裁によって供給が減ったからです。
このロシア制裁は軒並みヨーロパ諸国にエネルギー不足をもたらしました。
特にノルドストリームで、ロシアとガッチリ結ばれていたドイツなど真っ青になったようです。
しかしご心配なく、ノルウェイがその分を補ってくれています。
ドイツが青くなれば、ノルウェイは上機嫌になるという仕組みです。

では、このアコギとも言えそうな化石燃料商法で稼ぎだした収益は、どこに入っているのでしょうか。
石油事業はすべて国営ラインで運営されています。
政府系石油企業が採掘し、収益は国の財政を経由して政府系ファンドに化けます。
EV化にかかる膨大な支援金は、すべてここから支出されています。

「ノルウェーは世界で最も経済的に豊かな福祉国家の一つとして知られるが、それにはエクイノールが大きく貢献している。原油の売上高による収益の大半はノルウェー政府年金基金として積み立てられ、国際金融市場に投資されているためだ。同基金はこうした原資で国民の年金資産を運用しており、21年末時点の運用総額は12兆3400億クローネ(約172兆円)と政府系ファンド(SWF)では世界最大だ。
エクイノールの21年12月期の売上高は909億ドル(約11兆4534億円)であった。その80%がノルウェーで、米国(14%)とデンマーク(5%)を加えた3カ国が売上高のほぼすべてを占める。商品別では石油とガスがほぼ半々の比率である」
(エコノミスト2022年5月2日)
株式市場が注目!海外企業:ノルウェーの最大手エネルギーのエクイノール、

ここに出てくるエクイノールとは、ノルウェイに本拠を置く北欧最大のエネルギー企業です。
その売り上げたるや2021年には11兆4534円だそうです。
ちなみにトヨタが31兆3700億円ですから、その約3分の1という超大企業で、しかも国営です。
ノルウェイ最大手の企業が国営というのですから、まるで社会主義国のようです。
エクイノールは世界の石油企業ランキングでも9位です。

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オイルメジャー・石油開発業界の世界市場シェアの分析 | ディールラボ (deallab.info)

このエクイノールこそが、ノルウェイの脱炭素の財源です。
ノルウェーの石油・ガス等の生産量は日量400万バレルに達し、日量400万バレルと言えば日本の石油消費量とほぼ同じです。

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ノルウェーの石油・ガス生産量(1971年~2022年)
via www.npd.no

しかもノルウェイはロシア制裁を奇貨として前年同期の約3倍にあたる大増産をかけています。

このペースで増産するなら、15兆円もの輸出になるそうです。
おいおい。エコ大国が炭酸ガス増やしてどうすると思いますが、彼らの脳内では整合性があるらしく、石油・ガスの生産で収入を得て、それでEVを導入することで帳消しのようです。
まるでマフィアが、人を殺して教会に駆け込んで懺悔するみたいな話です。

こんな急速なEV導入は日本では無理です。
日本にはノルウェーのような油田がありませんから、相当の経済負担をせねば不可能だからです。
岸田さんなら「有識者」を集めてエコ税などを答申させそうですし、小池さんなら来年度からは都内でのEV以外の新車販売を禁じます、なんてやりそうです。
こういうカラクリとは無縁なわが国でこんな馬鹿げたEV化は不可能なのです。

 

2022年11月25日 (金)

ノルウェーが世界一の脱炭素国になれたワケ

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なんにでも裏があるというとありきたりですが、ノルウェーが世界一のEV(電気自動車)普及国になった理由を考えると、いまのヨーロッパの脱炭素事情がわかってきます。

あまり知られていないかもしれませんが、ノルウェーは世界有数の脱炭素国家です。
エネルギー資源分布を見てみましょう。
赤色が石油、紫色がバイオ、青色が水力です。

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ノルウェーの国情および原子力事情 (14-05-06-01) - ATOMICA - (jaea.go.jp)

ノルウェーでは、石油・天然ガスエネルギー資源は主に輸出用であり、自国の電力は水力発電によって賄われる。渇水時等で電力不足が発生した場合は、スウェーデンなどの隣国またはロシアからの輸入電力によって不足分を補う。ノルウェーには原子力発電所はないが、1950年代から原子力の基礎研究を行っている」
ノルウェーの国情および原子力事情 (14-05-06-01) - ATOMICA - (jaea.go.jp) 

上図でわかるように、ノルウェーが北海油田を抱える世界有数の石油産出国と聞くと、サーモンとノーウェジアン・ウッドの国なんて思っていた私はビックリしましたが、なんとこれを全量輸出に当てて、自分の国のエネルギー源としては使っていないと聞くと二度びっくりしちゃいました。
自国の石油資源を使わずに全量輸出してしまうなんて、原油が一滴もとれず、常に中東諸国にもみ手している国の民族には想像を絶する国です。
水力が主力ですが、渇水期には電気を輸入してでも、原油だけは輸出するという根性の座りっぷりです。

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ドイツのエネルギー資源-自給率。輸入依存度、輸入先 ‐ドレスデン情報ファイル (de-info.net)

たとえば上図のように、ドイツなどはこのノルウェーからガッポリと石油を買い込んでいます。
中東なんぞよりはるかに多くのノルウェイ産原油に依存しているのですから、たいしたものです。
ノルウェー産原油は、ウクライナ戦争前で既に2、3位でしたから、ロシア産なき後いまや原油輸入の最大手ではないでしょうか。

「2019年の原油輸入量は約8,587万トン。最大の輸入相手国はロシアで31.5%、次いで、英国(11.9%)、ノルウェー(11.3%)、など。
中東諸国の割合は全体で5.4%にとどまる。その中ではイラクが最大で、3.1%を占める」
(ドレスデン情報ファイル)

つまり、ノルウェーは世界有数の産油国でありながら、自国ではまったく使わずにドイツなどに輸出している、という非常に「意識高い系国家」なのです。
つまりは、悪魔の化石燃料は全部ヨソさんの国に売ってしまう、自分はクリーンな水力で暮らす。
ヨソで出たCO2は知らん、というわけで、なかなか見上げた根性です。
さすがはノーベル平和賞を選ぶ国だけあります。
でも、それってエコミーイズムじゃないかしら。

これを頭に置いて、ノルウェーのEV自動車の普及率をながめてみましょう。

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日経

「【フランクフルト=深尾幸生】ノルウェーの2020年の新車販売(乗用車)で電気自動車(EV)が初めて全体の半分を上回った。ノルウェー道路交通情報評議会(OFV)が5日発表した同年のEV販売台数は19年比27%増の7万6804台で、シェアは54%と12ポイント上昇した。単月では過半に達していたが通年で超えるのは初めてだ」
(日経2021年1月6日)
ノルウェー、EVシェア通年でも過半に 20年54%: 日本経済新聞 (nikkei.com)

販売車上位はアウディのEV「e-tron」、米テスラ「モデル3」、独フォルクスワーゲン(VW)「ID.3」だそうです。
なんと売られている車は半分がEVで、プラグを差して充電するプラグインハイブリッド車(PHV)ののシェア20%を加えると7割以上がEVです。
確かにヨーロッパでは急速なEV化が進行しています。
水色がEV車、オレンジがガソリン車です。

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アゴラ研究所

「欧州においては官民一体でのEVシフトは急激に進んでいる。先月2021年11月のドイツのEV(純電気自動車:BEV、プラグインハイブリッド車:PHEV)のシェアは34%を超えてガソリン車を超えた。これは北欧などの小国を除くと初めてのことだと思う。またその他英国やフランスのEVのシェアも20%を大きく超えてきている」
(黒木照弘2021年12月28日)
欧州、特にドイツにおける電気自動車の急激な普及 | アゴラ 言論プラットフォーム (agora-web.jp)

ちなみに我が国は、ハイブリッド車が37%であるに対して、EV普及率はわずか0.4~1.2%でまったく低調で、いま日本で電気自動車買うのは意識が高い好事家しかいません。

では、ノルウェーはどうしてこんな極端ともいえるEVシフトが可能だったのでしょうか。
キャノングローバル研究所・杉山大志氏『「EV先進国」ノルウェーを支えているのは"北海油田"という矛盾』(20022年2月22日)がその謎を解いてくれています。

EVは実は大変なカネ喰い虫です。だってそうでしょう、急速充電施設だけで気が遠くなるような数が必要です。
EVはこの充電施設がないかぎりただの鉄の箱でとなってしまいます。
これを今のガソリンスタンド以上に全国津々浦々に作らないと、EVは普及しません。
この無理を押して普及させようというのですから、国策としての優遇策を取りました。

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「EVシフトは綺麗事ばかり」電気自動車先進国の「悲惨な現状」とは | MOBY [モビー] (car-moby.jp)

「だがこの背景を探ると、その強引さが目立つ。石油には重い税を掛ける一方で、電気自動車は税の減免を受けている。EVは駐車料金や高速料金も割引されており、バスレーンの利用などの優遇措置も手厚い」
(キャノングローバル研究所・杉山大志氏『「EV先進国」ノルウェーを支えているのは"北海油田"という矛盾』20022年2月22日)
「EV先進国」ノルウェーを支えているのは"北海油田"という矛盾 | キヤノングローバル戦略研究所 (cigs.canon)

EVは取得減税、駐車料金は割引、高速道路を走ってもタダ同然、バスレーンも走りたい放題ですか、スゴイね。

 ●ノルウェイのEV優遇策
  ・購入・輸入時の税金がかからない(1990年~)
 ・ 購入時の25%の付加価値税を免除(2001年~)
 ・道路税(1996年~2021年)の免除。2021年から軽減税率。2022年からは全額課税
   ・有料道路やフェリーの料金が無料(1997- 2017)、フェリー料金は定価の50%以下(2018年~)
 ・ 有料道路の料金は最大で定価の50%(2019年)
 ・ 市営駐車場の無料化(1999年~2017年)、 駐車場料金の上限を定価の50%以下(2018年~)
 ・ バスレーンの利用が可能(2005年~)
 ・ 社用車税を50%減税(2000年~2018年)。軽減率を40%(2018年~)、2022年からは20%に引き下げ
 ・ リースにかかる25%の付加価値税を免除(2015年)
 ・ 電気ワゴン車に変更する際の石油ワゴン車の廃車に対する補償(2018年)

                                                                                                                     (杉山前掲)

ここまでしても、ノルウェイという人口500万人ていどの小国ですら肝心要の急速充電装置が足りないのです。
不足が特に露になるのが、人口が多い都市部です。

「人口が多いノルウェー南部では、EVシフトの悲惨な現実が浮き彫りになっています。ノルウェーの高速道路には多い所で20基以上の急速充電設備が設置されていますが、それでもお盆や正月は、交通量が増えて大規模な充電渋滞が起こります。
充電設備の数はおおよそ日本の20倍ほど設置されていますが、これだけ整備されても一切のストレスなくBEVを使うには不足する様子。充電渋滞は同じくEV先進国である中国でも問題になっています」
「EVシフトは綺麗事ばかり」電気自動車先進国の「悲惨な現状」とは | MOBY [モビー] (car-moby.jp) 

大都市では500万人の国でも急速充電器の前に長蛇の列。
たぶん中国はEVにひとかたならぬ力を国策として投じていますが、あのだだッ広い国でいったいどれだけの急速充電装置が要るのやら。

上海のような2500万都市で、共産党がEVしか認めん、なんてやったら暴動が起きるかもしれません。
わが国でも、たとえば東京都でEV化などしたら、たちまち大渋滞が一斉に起きて都市交通がマヒするでしょう。(小池さんならやりそうなのでコワイ)

普及率が幸いにも低い我が国でも、EV充電器はいつも大混雑です。

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EVスマートブログ

「充電は一般的に30分かかりますので(スポットにより異なります)、1台待ちが出ている場合には平均的に15分待った後、充電を開始しますので、通常は30分で済むところが45分かかることになります」
電気自動車の充電スポットは混雑していて、待たなきゃなんない? - EVsmartブログ

そしてこのEV優遇策が可能だったのは、杉山氏によれば、ズバリ北海油田が生み出す潤沢な収入があったからです。

「そして、このような大盤振る舞いがなぜ可能かというと、北海油田の石油・ガスの輸出から潤沢な収入が得られるからだ。現状では、EVは実力で普及しているのではなく、政策的に強引に導入されているに過ぎない。ノルウェーを見て同じようなことがすぐ日本でもできると思うのは早計である」
(杉山前掲)

つまり急進的なEVシフトには優遇策があって、その財源は原油輸出なのです。
化石燃料を売って脱炭素国家を作る、おお、これを矛盾に感じないのですからさすがと言ってあげましょう。

まぁあたしゃゼッタイにEVなんか買わんね。こんな不完全なインフラしかない未完成な技術のEV買ってどないする。
排気ガス対策を
重ねた、日本のガソリン車は世界でもっとも完成された自動車技術です。

 

 

 

 

2022年11月24日 (木)

岸田さん、終了の鐘が聞こえます

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ドヒャー、な、なんとW杯でドイツに勝ってしまったぁぁ。
腰が抜けた。いまでも信じられない。

さて気を取り直して、今日は気楽に床屋政談をいたします。
内政は誰が書いても似たようなかんじになるのであまりやりたくないのですが、ま、いいか。

岸田政権が早々と行き詰まってしまったようです。
当然といえば当然ですが、参院選の後に盛んに言われていた、あの「黄金の3年間」はおーいどこにいったんだ~い。
3年間どころか、泥沼の1年じゃないか。

「岸田文雄首相が総務相だった寺田稔氏を事実上更迭し、閣僚の辞任は1カ月間で3人目となった。首相は当初、重要法案への影響を避けるため寺田氏の続投を探ったものの、自民党内外や世論の辞任論を受け転換した。党内にはさらなる閣僚交代に向けた内閣改造論もくすぶる。
「大変ご迷惑をかけて申し訳ない」。首相は21日、首相官邸で会談した公明党の山口那津男代表に寺田氏の辞任について頭を下げた」
(日経11月21日)
くすぶる内閣改造論 岸田首相、遅れた寺田氏更迭: 日本経済新聞 (nikkei.com)

なんでも、メディアによれば、岸田氏は予算編成後の12月から1月召集の通常国会までに、人事の改造に踏み切る可能性があるということのようです。
理由はご承知のとおり、わずか1カ月で閣僚のうち山際大志郎前経済再生担当相、葉梨康弘前法相、寺田稔前総務相を相次いで失い、さらに秋葉復興大臣までスタンバっているようで、もうメタメタ。
かてて加えて、岸田氏自身の公職選挙法の白紙領収書問題も浮上して、もう満身火達磨。

そこで改造ですって。馬鹿だね。
貧すれば鈍する。候補まで入れれば4人、自分も入れれば5人も辞任しては改造しか思い浮かばないのでしょうが、拙速で改造してもロクなことにはなりませんぞ。
空気は入れ替わらず、ろくな身体検査もしていないものだから、鵜の目鷹の目でゴシップを探しているメディアにまたつつきだされるに決まっています。

こういうじり貧モードになると、岸田氏の悪い所だけ出ているのです。
決断ができない、やさしいといえば言えるが優柔不断。
今回の寺田氏の斬り方が典型です。
いやね岸田さん、そもそもこの一件は寺田氏自身が釈明しているように一大臣の首が飛ぶようなことじゃないんですよ。

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ドキュメント 寺田総務大臣更迭 辞任ドミノ “岸田流”の顛末は | NHK政治マガジン

「当然、建物の所有者には賃料を支払います。金額も適正で、収支報告書に適正に記載しています。妻も適正に税務申告している」
また、人件費としてスタッフらに毎年500万円ほど支出しているのに、税務申告を行っていないのではないかと指摘された質問には、手元のメモを見ずに、こうそらんじた。(略)
寺田は旧大蔵省出身。20代で税務署長も務め、主計局で予算査定にあたる主計官も務めた」
(NHK11月23日)

寺田氏は税務署長もやったし、なんせ時めく主計官だっただけのお人だけあって、数字にめっぽう強いはずなのに事務所がつまらないチョンボをしたようです。
まずいことはまずいが、しかしそれで政治生命をなくすようなことではないのです。
これが二代目三代目の議員ともなれば、城代家老みたいな人がでてきて、すべて選挙責任者の私の責任でございます、と腹を切るのですが、あいにくこの人は不動産屋の伜で初代。だれも守ってくれない。

しかし初めは追及にはめげなかったのですが、次から次に「疑惑」がでてきてとうとう詰まってしまったようです。
なんせワイドショーはしつこいですからね。
それになんといっても、この人には岸田御大がバックについていました。
岸田氏と寺田氏は同じ宏池会、しかも同じ広島出身、しかも増税派。
だからなんとか守りたかったのでしょうが、決断しないままタイに行ってしまいました。

残された寺田氏は辞任を決心していたようです。
予算案がかかっている国会審議が空転していますから、辞めてしまえばなんとかなると考えたのでしょう。
しかし、自民党執行部が辞任ドミノを恐れて止めたようです。
帰国した岸田氏も止めたが、決心は変わらずに辞任してしまったという顛末。

国民から見れば、スパっと切ればカッコウがついたものを、初めは辞めさせる必要はないとかばっておいて、手のひら返ししたように見えてしまいます。
公明党からは葉梨の時になぜ一緒に切らなかったと怒られる。
それでなくてもこの「友党」は、旧統一教会騒動の火の粉が降りかかって来ることに怯えて、イライラしていた時ですから。
こういう守るなら徹底して守る、守れないなら泣いて馬謖を斬ると見得を切って見せるくらいでないと、首相は勤まりません。

守るか切るかの二択しかないんですら、「決断と 実行」しなさい。

ことほど左様に、なにもかも決断が遅いのです。
参院選までは昼寝をしてワイドショーを観ていた罪です。
このグータラの半年をやったために、3割と呼ばれる岩盤の保守層からすっかり見切りをつけられてしまいました。
で、参院選が終わったらピシっとするかと思いきや、安倍氏国葬を決めたではいいのですが、いつやるんだという間延びぶり。
すっかりその間にアチラ系に「被害者は山上。安倍は殺されてもとうぜんの悪魔」という空気を作られてしまいました。
これじゃあ、安部氏を毀損したくて国葬をしたのかという気分です。
亡くなって1カ月以内に国葬を行っていれば、あんなことにはなりませんでした。遅い。

一方メディアからすれば、党内左派の岸田氏は安部氏の復権を阻む壁として期待していたために、初めの半年は異様なほどソっと無風状態に置いてくれました。
岸田氏もそれを知っているので、ワイドショー民が嫌うことは一切言わない徹底ぶりでした。
だから支持率はなにもしていていないのに6割超え。
これを岸田氏は実力だと勘違いしちゃったようです。
違うんだって、メディアは安部氏がいたから岸田氏を立てていただけで、安部氏が死ねばしょせん岸田氏も自民。もう用済みなのです。
結局、この無為の半年の間に、本来岸田政権を支持していたはずの岩盤の保守層に愛想を尽かされてしまいました。

何度も書いてきたので繰り返しませんが、旧統一教会問題でも、寺田問題と一緒で、ピシッと原則をたててから対応せずに、ワイドショーを見てきめるものだから、ズルズルどこまでも後退。ここでも遅い。
初めから、「政治家は国民が求めれば誰の所にでも政見を語りに行きます」と言ってりゃあよかっただけのことです。
とうとうこれが政権の命取りになりそうです。

防衛費増額は、今の中国や北朝鮮、あるいはウクライナ侵略をみれば、だれひとり反対する者なんかいないはずなのに、財務省がリストアップしたような「有識者」を集めて会議を作らせて、出てきた答えが水増しと防衛増税ですから、なんともかとも。
改悪させるために「有識者」呼んだのでしょうか。

「岸田文雄首相は22日、防衛力強化に関する政府有識者会議座長の佐々江賢一郎元駐米大使と官邸で会い、報告書を受け取った。報告書は、防衛費増額のために不足する財源について「国民全体で負担することを視野に入れなければならない」とし、事実上の増税を提起。抑止力向上のため敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有が不可欠だと明記した」
(共同11月22日)
岸田首相が増税を提起 防衛費増額に「国民全体で負担することを視野に入れなくては」 - 社会 : 日刊スポーツ (nikkansports.com) 

防衛費増額は増税で、というのは岸田さん自身の考えです。
岸田氏が財務省のいいなりなのは有名です。
だから増税派ばかりを集めて、防衛問題の専門家がひとりもいない有識者の配置にしたのです。
メンバーを選んだのは財務省、彼らがあらかじめペーパーを作って粗筋を決め、「えーお配りした資料にありますとおり」と落とし所まで作ってあります。
これは私も多少経験していますが、官庁が民間から「貴重なご意見をお聞きする」時に必ず使う手管です。
初めから防衛費増額は増税でやる、と結論ができていたのです。
防衛増税する課目も、「法人税と所得税に加え、たばこ税、金融所得課税の計4税目の増税論」と決めてあったようです。

「政府・与党は、有識者会議の報告書を踏まえ、防衛費の規模や財源の調整を本格化させる。年末に国家安全保障戦略と併せて改定する中期防衛力整備計画(中期防)や2023年度予算編成・税制改正を通じ、今後5年間の歳出・歳入の枠組みを定める方針で、与党内では基幹税目である法人税と所得税に加え、たばこ税、金融所得課税の計4税目の増税論が浮上している。
報告書では、防衛費拡充の財源について「幅広い税目による負担が必要だ」と明記。原案で財源の候補として盛り込んだ「法人税」の文言は経済界の反発が強く削除した」(時事11月23日)
防衛費拡充へ調整本格化 与党、法人・所得増税を視野:時事ドットコム (jiji.com) 

「財源は国民が負担する」という言い方でオブラートに包んでいますが、もう増税したくて腕をブンブン振り回しています。
「安易な国債発行は超インフレになる」なんてヨタ飛ばしてた「有識者」がいたようですが、デフレ下ではゼェータイになりません。
防衛は国民生活を守る大きな堤防のようなものなのですから、建設国債でもなんでも充当すればよいのです。

それに妙に触れないようにしているようですが、外為特会の為替差益37兆円をお忘れでしょうか。
与党が黙っているもんだから、国民民主の玉木氏にこう突っ込まれてしまいました。

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東京

「外為特会は為替相場の安定のため、急激な変動時の為替介入などに備えて設置。主にドル建ての米国債で運用され、今年3月末時点の資産残高は約1兆3000億ドル。円換算の決算残高は約158兆円だった。
 玉木氏は、円安によって外為特会が円ベースで膨張していると指摘する。今月6日の衆院代表質問では、年初の1ドル=116円から145円になった際に約37兆円増したとの試算を披露し、「国の特会は円安でウハウハだ」と強調。「円安で苦しむ個人や事業者のため、緊急経済対策の財源に充てて」と求めた」
(東京10月26日)
円安で為替差益が37兆円?野党が外為特会の「埋蔵金」に熱視線 それでも岸田首相が冷ややかな理由は…:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp) 

玉木氏がいうように、外為特会とは為替介入のための基金ですが、いまや円安で含み益が37兆もあるのですよ、お立ち会い。
増税、増税という前にどうしてこれを使わないのか、そちらのほうがヘンです。
1年間に防衛費を倍増させてもあと5兆ですから、この先7年間はこれで充当できます。
国債との合わせ技を使えば、もっと長く引っ張れます。
それをいきなり「国民のみなさんに負担願う」ですから、豆腐の角にアタマをぶつけて死んでしまえ。

こんなていたらくですから、保守層の岸田人気はボトムです。
うちのブログなんか、褒めるべき時は褒めてきましたが、もう愛想が尽きました。勝手にしなさい。
アチラ系は、本来なら親和性が高いはずの宏池会系首相なのに、ワイドショーでは毎日バッシングです。

当然のこととして、内閣支持率もまっさかさまですが、保守層から既に見放されていますから歯止めがかかりません。
もはや支持率レッドゾーンの30%台、首相辞めろが40%台です。

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「首相早く辞めて」43% 「寺田氏辞任すべきだ」70% 毎日新聞世論調査 | 毎日新聞 (mainichi.jp)

一方、政党支持率のほうは、自民は堅調で4割弱の支持率をキープしています。
ですから世論調査では、自民は支持するが、岸田はイヤなのです。

その理由はあまりにも立憲が悲惨だからで、支持率は1割以下の7.2%。
維新にムネオがいなければ、とうに逆転されていたでしょう。

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政党支持率 自民39.5% 立民8.2% 内閣支持率は上昇 | NHK政治マガジン

ですから今の政権の支持率は低調でも、いわゆる青木率(政権支持率+与党支持率)では70%を確保しています。
60%を切ると回復不能でのポンコツで、あとはジャンクボックス行きだそうですので、よかったですね、岸田さん。まだ余命がありそうです。

ちなみにあの3年半の異星人支配を引き起こした、2009年の麻生政権末期の内閣支持率と政党支持率を見てみましょう。
なんと自民は民主にひっくり返されています。

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asahi.com(朝日新聞社):自民支持率、最低の20% 朝日新聞緊急世論調査 - 2009総選挙

麻生内閣の支持率はこんなかんじでした。

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asou2 (meijo-u.ac.jp)

なんと麻生内閣支持率は10%チョボチョボ。よくここまで落ちたものだと感心しますが、当時はそういう空気だったのです。
青木率に換算すれば、40%ていどですからリカバリー不可能です。
ウワーイ、民主党政権がやって来ると、狂喜乱舞した朝日は、当時こんな記事を書いていました。

「「いま投票するとしたら」として聞いた衆院比例区の投票先も民主42%、自民19%と民主が圧倒。内閣支持率は17%で、前回の20%から下落した。(略) 望む政権の形を聞いた質問では、「民主中心の政権に代わるのがよい」が49%で、「自民中心の政権が続くのがよい」は22%にとどまった。前回はそれぞれ47%、24%だった。他の回答傾向と合わせ、政権交代を求める機運がさらに高まっている」
(朝日2009年7月19日)

まぁ、当時の空気を知っている者とすれば、支持率8%くらいで野党第一党を豪語している今の立憲ならばコワイことありません。
当時の流行り言葉で言えば「政権交代」するには、せめて立憲が単独で30%以上、他の野党と合わせて自民の4割を凌ぐ支持率を叩き出さないかぎりダメです。
したがって、岸田政権は、いくら追い詰められても、解散する道理がないので、メディアは盛んに「次の首相は誰」なんてやって、ミニ政権交代の空気を作ろうとしているのです。

そりゃ菅さんがやるのが一番ですよ。菅さん、カンバーク。(エコーかけてね)

 

2022年11月23日 (水)

ロシアが仕掛けるウクライナ経済破壊戦争

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ウクライナ軍の力強い反撃とは裏腹に、ウクライナ経済は崩壊の危機に瀕しています。
原因はいうまでもありませんが、ロシアによるウクライナ侵略です。
ロシアの侵略の影響を直接に受けたのは電力でした。

「[キーウ(キエフ) 18日 ロイター] - ウクライナのシュミハリ首相は18日、国内のエネルギーシステムのほぼ半分がロシア軍の攻撃により機能停止状態に陥っていると明らかにした。首都キーウ(キエフ)の当局者は、首都の電力網が「完全に停止」する可能性があると警告している。
シュミハリ首相は欧州委員会のドムブロフスキス委員との会談後「ロシアはウクライナの重要インフラへのミサイル攻撃を続けており、エネルギーシステムのほぼ半分が使用不能になっている」と述べた。
首都キーウはロシア軍のミサイルやドローンによる攻撃で大きな被害を受けた都市の一つで、電気、暖房、水道などが影響を受けている。
キーウ市のミコラ・ポボロズニク次官は「(電力網の)完全な停止を含むさまざまなシナリオへの対応を準備している」と述べた。電力網が完全に停止した場合の措置については言及しなかったが、キーウ当局者はこれまでに住民の他の都市への避難は検討していないと明らかにしている」
(ロイター11月18日)
ウクライナ首都の電力網「完全停止」の恐れ、国内インフラ半分が停止 | Reuters

街は暗闇に包まれ、市民は今後迎える厳冬期には、暖房シェルターと呼ばれる公共施設に避難せねばならなくなるかもしれません。
工場が破壊されたり操業短縮を迫られたために、失業率が35%に達しています。

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ロシア、市民生活を狙い撃ち 首都8割が断水、電力不足も(共同通信) - Yahoo!ニュース 

軍事的勝利が遠のいたロシアが狙っているのは、消耗戦に持ち込むことです。
軍事的消耗戦のみならず、ウクライナの経済・電源・交通インフラを狙い撃ちにして、ウクライナ経済全体を破壊しようとしています。
かつての大戦で日本が敗北したのが、この経済破壊をやられたためでした。
大戦末期の日本は海軍が壊滅した後、潜水艦による燃料や資源、食料の輸入の道を閉ざされ、全国の都市に爆撃を受けて経済と生活インフラが土台から崩れ去ってしまいしました。

国民は飢えに苦しみ希望を失いました。
このかつて米国がB-29と潜水艦を使って日本を敗北に追い込んだことを、今度、ロシアはミサイル攻撃でしようとしているわけです。
ちなみに、このような民間人に無用の苦痛を与える戦略爆撃という方法は、戦時国際法とそれを発展させた戦後の国際人道法によって禁止されています。

ただし、国際人道法は国内裁判所のように強制管轄権がなく、国際法に違反するかを判断し国際法の遵守を強制する機関がありません。
例えば、刑法などの国内法であれば、その内容を強制的に実現する警察力があり法としての強制力がありますが、国際法では国際法違反に制裁を加え遵守を強制する機関がありません。

ですから、南シナ海に軍事要塞を作ってしまった中国のようにいくら国際司法裁判所から勧告を受けようが、「あんなもんは紙屑だ」と言ってしまえるわけです。
作ってしまえば勝ち、侵略戦争でも勝てば文句は出ない、これが国際社会がロシアや中国のような「力の信奉者」を生んでしまった理由です。

というわけで、国際法は実効的な拘束力がないも同然で、ならず者国家がやりたい放題できる素地を残してしまっている、これが国際法の最大の弱点です。
しかしあくまでもやってよいこと悪いことの国際的基準はあり続けるという意味で、ないよりはましでしょう。

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厳冬期迫るウクライナ、ロシアの攻撃で電力危機…400万人が計画停電の対象 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

ロシアは、本来、軍事施設を精密爆撃するために作られたミサイルを、おしげもなく非軍事的なエネルギーと生活インフラ攻撃に投じました。高価なイスカンダル・ミサイルなどを発電所攻撃に使用するのですから、軍事常識ではありえない戦術です。
今さらいうまでもなく国際法違反ですが、ロシア相手に人道と良心を訴えるだけ虚しくなります。

「キーウ政府にとって、ウクライナ軍が地位を獲得し続けたとしても、市民の物質的ニーズを満たしながら戦争を起訴するためのコストは増加するだろう。さらに悪いことに、冬が迫っており、ロシアは9月以来経験した一連の軍事的失敗に不満を抱いており、重要なインフラをミサイル攻撃することで、ウクライナ経済を壊滅させることに傾倒している。火曜日だけでも、推定で90発のロシアのミサイルがウクライナ全土に降り注いだ。
ウクライナの最大の問題は、プーチン氏の軍隊がもたらす軍事的脅威だけではなく、ロシアの攻撃が経済にもたらす経済破壊に対処することかもしれない。
しかもキーウが切実に必要としている大規模で継続的な援助は、西側の経済状況の悪化のために減少する可能性がある」
(ニューヨークタイムス11月18日)
Ukraine Is Advancing, and Russia Is Retreating, but President Zelensky Has a Big Problem - Revista de Prensa (almendron.com)

ここ数週間で、ミサイルとドローンがウクライナのエネルギーインフラの40%を攻撃し、全国で長時間停電を引き起こしました。
これにより約450万人のウクライナ市民が電気を失い、キーウの35万戸が停電し、80%が水道を奪われました。

「国連人道問題調整事務所(OCHA)は今月、600万人のウクライナ人が現在「国内避難民」であると報告した。
さらに700万人が海外に避難した。ウクライナ国立銀行によると、失業率は今年の第2四半期までに35%に達した。貧困率は2020年に2.5%だったが、12月までに25%に近づき、来年末までにその2倍になる可能性がある。
戦時中の激動と破壊は、子供たちにとって特に困難でした。ウクライナではさらに50万人近くが貧困に追い込まれており、この地域で2番目に大きなシェアを占めている」
(NYT前掲)

電源の喪失40%、道路・橋梁の喪失無数、失業率35%、貧困率25%とは、凄まじい破壊の爪痕です。

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♯1 ロシア軍を食い止めるため破壊されたキーウ近郊の橋 : ウクライナ 戦時下の復興 キーウ近郊からの報告 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

開戦前から、プーチン政権中枢はウクライナを解体すべきだと放言していました。 
プーチン政権における好戦言説担当のメドベージェフ安保会議副書紀 は、6月15日、インターネット上に、「2年後の世界地図に、ウクライナは存在するだろうか」と書き込み、プーチンの最側近パトルシェフ安保会議書記も「現在のウクライナは崩壊し、いくつかの国に分かれる可能性がある」と平然と語っています。
彼らプーチン政権中枢には、ウクライナは「そもそも国ですらない」、1990年代に分裂して消滅したユーゴスラビアのようになるべきだという考えがあります。
だから民間施設の破壊をためらわわずとことん破壊し焦土に変えてしまい、反露的ウクライナ人はシベリア奥地に強制移住させ、ロシア語だけを公用語とし、軍事占領したところから領土化していく、これがプーチンの「絶対戦争」の考えなのです。

10月18日、クリミア大橋がウクライナの攻撃で破壊されると、プーチンが呼び寄せて最高司令官に任命したのが、セルゲイ・スロビキン将軍でした。

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セルゲイ・スロビキン将軍
ム破壊計画もその一環、露軍、ヘルソン州ドニプロ川右岸から「撤退」準備へ ロシアの「ハルマゲドン将軍」

スロベキン将軍は別名「ハルマゲドン将軍」と呼ばれ、2017年にシリアでロシア軍を指揮している間、アレッポへの無差別爆撃を指揮した人物です。

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「ここは地獄」、変わり果てたアレッポの街 シリア内戦(1/3) - CNN.co.jp

「(スロベキンは)1990年代のタジキスタンやチェチェンでの紛争、そして最近では2015年にロシアがアサド政権側に付いて介入したシリア内戦に参加した。空爆作戦の経験がないにも関わらず、ロシア航空宇宙軍の司令官として、シリア北部アレッポの大部分を消滅させた空爆を指揮した。
英イーストアングリア大学のウォルドロン教授は、ロシアはシリア内戦に介入し、無制限の空爆と民間人への攻撃を繰り広げたと指摘する。ロシア軍の攻撃の責任者だったスロヴィキン氏は、「必要などんな手段も使う用意があるのは明らか」だったという。
米ワシントンを拠点とするシンクタンク「中東研究所」のシリア・プログラム責任者、チャールズ・リスター氏は、スロヴィキン氏は「敵に対して絶対的に容赦ない態度」をとり、戦闘員と民間人を同一視していると話す。
スロヴィキン氏の指揮のもと、ロシア部隊は神経ガス「サリン」の使用隠ぺいに関与したと、リスター氏は言う。 シリア北西部ハーン・シェイフンで80人以上が死亡した化学攻撃が起きる数分前に、シリアの航空機にサリンが積み込まれるのをロシア部隊が目撃していたのだという」
(BBC2022年10月13日)
あだなは「アルマゲドン将軍」 ウクライナ侵攻の新総司令官、スロヴィキン将軍とはどんな人物か - BBCニュース

プーチンからスロビキン将軍が命じられたことは、全力を上げてウクライナの電力網、ダム、通信、水道、下水処理場、火力発電所を徹底的に破壊し尽くすことです。
電力網は、開戦以来すでにロシアの主要な攻撃目標でしたが、さらにスロベキシに与えられたのは、発電所を稼働させ続けるためにに必要な燃料供給プラント、送電網、そして市民を冷蔵庫と闇に投げ込む街の集中暖房施設でした。

この発電施設と電力網の破壊により影響を受けたのは市民生活だけではなく、EUへ例年15億ユーロ稼いでいる電力輸出を断念せざるをえなくなりました。
世界銀行、ウクライナの2022年経済成長率をマイナス45.1%と予測しました。



ウクライナに平和と独立を

 

2022年11月22日 (火)

ウクライナ軍先遣隊、ドニエプル川を渡河

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今日の記事は実は1週間前に書いたのですが、ポーランドミサイル落下事件などがあってお蔵入りしていたものです。(泣)
捨てるのも悔しいので、アップいたします。

 

驚くべき速度でウクライナ軍が前進しています。
どうやら、ドニエプル川を先遣隊が渡河したようです。

もちろん本格的な渡河作戦ではなく、偵察部隊だととものと思われますが、早い!

ユーチューブの動画から見ると、ゾディアックに分乗した特殊部隊のようです。
規模は分かりませんが複数見えますので、20~30人の小隊規模だと推測されます。

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ウクライナ軍の一部が渡河上陸したと推定されるのは、ヘルソン西南のキンバーン砂嘴(さし)のようです。
下地図の左上に見えますね。

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特報!ドニプロ川渡河成功!

岬や半島の先端から海に向かって細長く突き出た砂礫の州を砂嘴(スピット)と呼ぶそうです。
グーグルアースで見ると、このような細長い砂の突堤のような地形で、キャンプ場があるだけで、集落は見えません。

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現在、ヘルソン州を巡る戦いは、ドニエプル川に架かるアントノフスキー橋、鉄道橋、ノーバ・カホフカ水力発電所の橋桁が破壊されたために、両軍がドニエプル川を挟んで対峙する形へと移行しました。
ロシア軍は、ヘルソン南のドニエプル川南岸に陣地を構築していると考えられます。
元陸自第1空挺団に所属していたことのある、西村金一元1左はこう述べています。

「ロシア軍がへルソンを撤退するというのは、ドニエプル川からクリミア半島の付け根までの間(約100キロ)で防御戦闘を行うことであって、クリミア半島まで抵抗せずに後退することではない。
ロシア軍が、この防御戦闘で時間をかけて守り切るのか、あるいはウクライナ軍のドニエプル川渡河時の戦力分離に乗じて撃退する行動(反撃)を取るのか、注目すべきところである。
なぜなら、ロシア軍が反撃ができないのであれば、時間の経過とともに国境線まで押されていくし、反撃を行いウクライナ軍に大きな打撃を与えられれば、現状の接触線を保持することができるからだ 」
(西村金一11月14日)
ロシア軍のヘルソン撤退で天王山迎えるウクライナ戦争 クリミアまでの100キロが勝負、化学兵器使用の可能性高まる(3/7) | JBpress

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JBプレス

ウクライナ軍 の進撃ルートはふたつ考えられます。
ひとつはそのままドニエプル川を渡河して南下し、ヘルソン州からロシア軍を一掃し、クリミア半島境界にまで至るルートです。
ロシア軍がヘルソン市を撤退した理由は、第1に、ドニエプル川を天然の要害として利用し、渡河をできなくすること、第2にヘルソン市に布陣したウクライナ軍に砲撃を浴びせて市民もろとも抹殺すること、そして第3に、仮に渡河したとしてもドニエプル川を挟んで分断してしまい、渡河部隊を撃滅することなどが考えられます。

実はプーチンはこのヘルソン戦線に、ロシア陸軍のエリート空挺部隊を投入していました。

「プーチンは、ロシア軍が利用できる残りのエリート空挺部隊の多くを含む、ヘルソン西部の防衛にかなりのロシア軍を投入していた。彼はまた、9月21日に命じた予備軍の部分的な動員によって生み出された援軍を約束した。
それらの軍隊は懸命に戦ったが、多くの損失を被った。
このロシアの決意と希少なエリート部隊の割り当てにもかかわらず、ウクライナの成功は、多くの点で9月中旬のハリコフ州での勝利よりもさらにウクライナの勝利を印象づけることとなった 」
(戦争研究所 11月13日)
ウクライナ紛争の最新情報 |戦争研究所 (understandingwar.org)

このロシア軍空挺部隊が対岸に防衛陣地を築いて待ち構えていた場合、この渡河作戦は大変に困難な戦いになると思われますので、今回のウクライナ部隊の渡河は、このロシア軍の規模、陣地の配置などを偵察しにいった可能性はありえます。
ただしロシア軍はもはや後退していない、という情報もあります。

というのはロシア軍がクリミア半島北部で塹壕を作っていることが、衛星写真でわかっているからです。

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クリミア|北部で塹壕を掘るロシア軍ウクライナのニュース (ukranews.com)

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ウクライナニュース

「衛星画像などを手がける米企業「プラネット・ラブズPBC」は2022年11月12日までに、ロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島の北部に位置するアルミアンスク町近くでロシア軍が塹壕を新たに築いているとする衛星画像を公開した。
ジャンコイに近い検問所付近でも塹壕が掘られていると言う。ロシア側は、ロシア国営通信によると、ヘルソン州の州都をヘルソン市から、州南東部の港湾都市ヘニチェスクに移転すると発表した。
「状況はクリミアの北西部、アルミャンスク近くでも同じです。古い塹壕は改装され、新しい塹壕が掘られます。この画像では、掘削機が新しい塹壕を掘っているのを見ることができます」と彼は塹壕の写真を投稿して書いた。

ヘルソン地域にも要塞が建設されています」

クリミア|北部で塹壕を掘るロシア軍ウクライナのニュース (ukranews.com)

また、ウクライナ軍がヘルソンから東にアゾフ海沿岸に進んだ場合に障害となるが、メウリポリの軍要塞化です。

「(CNN) ウクライナ南部ザポリージャ州メリトポリのフェドロフ市長は13日、ロシア軍が同市を占領中に「巨大な軍事基地」に変えたと述べた。メリウトポリ市はロシアによるウクライナ侵攻が始まった初期からロシア軍の支配下にある。
フェドロフ氏はテレグラムへの投稿で、「ロシア軍は占領したメリトポリとメリトポリ地区を巨大な軍事施設に変えた」と述べた。ヘルソンやザポリージャ州トクマクからロシア軍がメリトポリに到着しているという。
フェドロフ氏は「メリトポリ市の周辺に要塞(ようさい)が建設されている」と述べた。ロシア軍は接収した地元の住宅や学校などで暮らし、住宅地に軍装備品が配備されているという」
(CNN11月15日)
ロシア軍、メリトポリ市を「巨大な軍事基地」に(CNN.co.jp) - Yahoo!ニュース

とまれ、急速に情勢は動いています。

 

 

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戦死したウクライナ義勇兵たち。日本人も1名加わった。5列目左端。

ウクライナに平和と独立を

 

 

2022年11月21日 (月)

ロシア・フレンドに堕ちた森喜朗氏のゼレンスキー叩き

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元首相の森喜朗氏が、北方領土交渉の同志であった鈴木宗男議員のパーティでこんなことを言ったそうです。

「森喜朗元首相は18日夜、都内で開かれた日本維新の会の鈴木宗男参院議員のパーティーであいさつし、ウクライナのゼレンスキー大統領を批判した。「ロシアのプーチン大統領だけが批判され、ゼレンスキー氏は全く何も叱られないのは、どういうことか。ゼレンスキー氏は、多くのウクライナの人たちを苦しめている」と発言した。
ロシアのウクライナ侵攻に関する報道に関しても「日本のマスコミは一方に偏る。西側の報道に動かされてしまっている。欧州や米国の報道のみを使っている感じがしてならない」と指摘した。
加えて「戦争には勝ちか、負けかのどちらかがある。このままやっていけば(ロシアが)核を使うことになるかもしれない。プーチン氏にもメンツがある」と言及。ロシアに厳しい姿勢を取る岸田文雄首相に関し「米国一辺倒になってしまった」と不満を示した」
(日経 2022年11月18日)
森喜朗氏がゼレンスキー大統領批判「ウクライナ人苦しめた」: 日本経済新聞 (nikkei.com)

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【速報動画】森氏がゼレンスキー氏批判 「ウクライナ人苦しめた」 | 山陰中央新報デジタル (sanin-chuo.co.jp)

この森氏のトンデモ発言は、この人物がよくやるリップサービスでの失言ではありません。
本心です。
だから困る。聞き流していい類のことではありません。
「プーチンを説得できるのは鈴木ムネオだけだ」とも言っているていどのことは、ご愛嬌で聞き流しましょう。
ムネオ氏にプーチンを説得できるなんて誰一人思わないでしょうから、失笑して、心の中でバーカとつぶやけば済むことです。

問題は、ロシアと戦っている国の指導者であるゼレンスキーを「国民を苦しめている」という言い方で否定し、支援する西側諸国を「米国一辺倒になった」と言ってしまったことです。
これでは、森氏は力による現状変更を是としたと、とらえられても致し方がありません。
つまり自由主義陣営の政治指導者として、自ら失格を宣言したに等しいのです。
さらには、世界でロシアに並ぶ力による現状変更をしている国、すなわち中国の軍事膨張をも是としてしまったことになります。


この森氏の力による現状変更に対する鈍感さは、今に始まったことではありません。
森氏は2014年3月のロシアのクリミア半島侵攻に際して、同年9月9日、これを強く批判したEUに対してこんなことを言っているのです。

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ウクライナにロシアはすでに侵攻している:アメリカのタルボット元国務副長官インタビュー | ハフポスト NEWS (huffingtonpost.jp)

「ロシアの国家や国民は、かつての領土であるだけに、住民が多く住むこの地域がNATOに加わるというのでは、ロシアが不服を伝えるのは、私は十分理解ができる。
EUが2年前、ノーベル平和賞を受賞して驚いた。EUがなぜ平和賞を取るのだろうと思って調べた。60年間ヨーロッパに戦争がなかったからというのが、評価だったということだ。その(EUの)皆さんが本当にウクライナのことを反ロシア戦線に巻き込んで、ロシアを叩くということを本当に考えているのか。それではノーベル賞は泣くのでは、という思いです。
ヨーロッパもロシアも自由とそして民主主義、そしてお互いに自由の繁栄を願う国だから、できれば理想を言えば新しいヨーロッパの体制が出来上がってもいいのではないだろうか」
国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」 (jfir.or.jp)

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森・プーチン 日ロをつなぐ義理人情: 日本経済新聞 (nikkei.com)

2014年当時から森氏は、ロシアのクリミア侵攻はEUが反ロシア戦線にウクライナをまきこんだからだというロシアの言い分をそのまま踏襲して、力による国境線の変更をおおっぴらに擁護してしまっています。
この言い方は、今回のウクライナ侵略でも、プーチンの侵略を正当化する理由で、ロシア・フレンドが盛んに流布していた説です。

「冷戦集結時に米欧はNATO不拡大をロシアに約束しただろう。裏切られた」というものです。
なんでも安倍氏とふたりきりの時になると、この愚痴とも怒りともつかない「ロシアは裏切られた」とぶつぶつ言っていたそうです。
「不拡大約束」がされたなどとは、外交の都市伝説にすぎません。
しかしプーチンはこれを固く信じており、2022年2月24日のウクライナ侵攻を始めるにあたっての演説でもこう言っています。

「NATOを1インチたりとも拡大しないという約束もあったが、彼らは我々を欺き、さらにはもてあそんだのだ」
(ブルームバーク2022年2月24日)

鶴岡路人氏が、この「不拡大約束説」に詳細な検証を加えています。
※『プーチンの主張する「NATO不拡大約束」は、なぜ無かったと言えるのか』
fsight 2022年3月2日
プーチンの主張する「NATO不拡大約束」は、なぜ無かったと言えるのか:鶴岡路人 | Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト (fsight.jp)

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ベーカー・ゴルバチョフ会談 一番右側がベーカー   フォーサイト

これはNATO東方拡大「約束」説が生まれたのは、1990年2月の米ソ交渉でのことです。

・ベーカー 「今すぐ回答を求めるわけではないが1つ質問をしたい。ドイツ統一が実現するとして、(1)NATOの枠の外で完全に独立して米軍部隊の存在しない統一ドイツがよいか(2)NATOとのつながりを維持したうえで、しかしNATOの管轄権や部隊は現在の境界から東には拡大しないとの保証のついた統一ドイツがよいか?」
・ゴルバチョフ 「全てについてじっくり考えたい。指導部において議論する。しかし、当然のことながら、NATOの領域が拡大することは受け入れられない」
・ベーカー 「その点については同意する」

この部分だけ取り出すと、確かにそう聞こえないではありませんが、これについては当のゴルバチョフ自身が、東ドイツ領だけの話だと説明しています。

「「(NATO不拡大の)保証はもっぱらドイツ統一に関して与えられたものだった」
「旧東ドイツ領だけでなく、東方全体へのNATO不拡大問題を提起すべきだったのか。私は確信している。この問題を我々が提起するのは単に愚かなことだったであろう、と。なぜなら、当時はNATOだけでなく、まだワルシャワ条約機構も存在していたからである。あの当時こんなことを言っていたら、我々はもっと非難されていただろう。NATOの東方拡大のプロセスは、別の問題である」
(『ゴルバチョフは回顧録』)

ベーカー発言は、1990年9月に締結される「ドイツの最終的地位」を念頭に置いて話しています。
この条約は第5条3項にこうあります。

「外国部隊や核兵器、およびその運搬手段はドイツの同地域[旧東独地域]に駐留、展開されない」

これがNATO「不拡大」の中身です。
そもそも当時はワルシャワ条約機構が存在していたのですから、東方拡大をするしないもあったもんじゃありませんが。

「不拡大」は旧東ドイツ領と明示され、この地域に限定されているのです。
したがって、ゴルバチョフとベーカーの間の「NATOの領域が拡大することは受け入れられない」 「その点については同意する」というやりとりは、東ドイツに対してだけ言ったものなのです。
ここを読み飛ばして一人歩きさせてしまい、旧ソ連圏全体にすり替えてしまったのが「不拡大約束説」です。
NATOが「不拡大約束」を破ったから戦争になったという都市伝説: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)

さらに悪いことには、こういう間違った知識の上に立ってロシアに迎合し、北方領土交渉につなげてしまったことです。
森氏はロシアのウクライナ侵略を諸手を上げて賛美することこそが、プーチンによい心証を与えて北方領土返還につながると信じていることです。
このまったく別の次元のことを混同して、ロシアを擁護することをムネオ氏はウクライナ戦争以来、一貫して言い続けています。

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経済制裁ではなく話し合いで解決すべき!ロシアと関係の深い鈴木宗男さんから見た「ロシア・ウクライナ危機」 - YouTube

「日本には国益の問題として北方領土や平和条約交渉の問題がある。米英と立ち位置が違う」と述べ、欧米に足並みをそろえて制裁に踏み切った日本政府の対応に疑問を呈した。講演後、記者団に「日本からパイプを閉ざした感じだ」と語った」
(日経2022年3月13日)
「ウクライナにも責任」 維新・鈴木氏、ロシア侵攻巡り: 日本経済新聞 (nikkei.com)

これは北方領土という自国の個別利害を、力による現状変更の禁止という普遍的価値より上位に置く考え方です。

こんな森氏ですから、ウクライナ戦争は「理想を言えば新しいヨーロッパの体制が出来上がる」好ましい出来事であり、「ゼレンスキーは国民を苦しめている」悪逆な男だとさえ考えていたようです。
なんですか、この「ロシアが主導する新しい世界」とは。おお、気持ち悪りぃ。
プーチンが構想する「新しい世界」とは、2011年にプーチンが「ユーラシア思想」としてロシアの公的なイデオロギーとなった世界観です。
この「ユーラシア思想」は、プーチンが傾倒するドゥーギンが作ったものでした。

「ドゥーギンが描く構図によれば、今後、ドイツがロシアへの依存度を一段と高めることによって、欧州は次第にロシア圏とドイツ圏へと分断されていく。
英国は(EU離脱後)ボロボロの状態となり、ロシアは漁夫の利を得ることで『ユーラシア帝国』へと拡大・発展していく、というものだ。
ドゥーギンはさらに、アジア方面についても、ロシアの野望を実現するために、中国が内部的混乱、分裂、行政的分離などを通じ没落しなければならないと主張する一方、日本とは極東におけるパートナーとなることを提唱する。(略)
ドゥーギンの戦略論は「新ユーラシアニズム」ともいうべきものであり、目指すべき将来目標として、旧ソ連邦諸国を再びロシアが併合するとともに、欧州連合(EU)諸国もロシアの〝保護領にするという極論から成り立っている」
(斎藤 彰 元読売新聞アメリカ総局長2022年3月26日 )
プーチンも洗脳?超保守主義学者の危険すぎる思想  Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン) (ismedia.jp)

この「ユーラシア帝国」の核心となるのが、ドゥーギンが言う「高貴なる永遠のロシア民族」です。
森さん、ムネオさん、よかったね、この壮大な「ユーラシア帝国」の端っこにはわが日本も生存を許されていますぞ。(笑)
それを知ってか知らずか、プーチン帝国を「自由と民主の国」と褒めたたえているのがわがムネオ氏なのです。
ロシアが極度の独裁国家であることがこれほど暴露されてきているのに、いまだ平然とこういえる神経がわかりません。
ウェルカム・トゥ・プーチンズワールド: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)

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 ユーチューブ前出

森氏のこの発言はいうまでもなく、今、西側の一部に芽生えている「ウクライナ疲れ」に呼応した考えです。

「西側は全力を挙げてウクライナを支援しているのに、支援するのは当然だといった高圧的なゼレンスキーの態度は好感を持っては受け止められていない。
この戦争で、世界中で小麦のような食糧資源や石油や天然ガスなどのエネルギー資源の供給が減り、諸物価が高騰して国民の生活が苦しくなっている。そのために、イタリアやスウェーデンなどで、排外的な極右が勢力を拡大し、政権を担うまでになっている。これが「ウクライナ疲れ」である。
今回のゼレンスキーの勇み足は、この「ウクライナ疲れ」に拍車をかける可能性がある」
(舛添要一 2022年11月19日)
【舛添直言】ポーランド着弾のミサイル、ゼレンスキーの露軍発射説に西側辟易 NATOを巻き込み第三次世界大戦を引き起こしてはならない(1/5) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

では、どうしたらよいと言われるですか、元都知事閣下。
疲れたから支援なんぞ止めろとでも。現実にそう言っているプーチンフレンドの極右もいるようです。
一方アチラ系は盛んに和平交渉をしろと言い、ゼレンスキーが戦争好きなように言っています。
森氏の今回のトンデモ発言はこの空気に乗ったのです。

では、「ゼレンスキーを叱ったら」、戦争は終わりになるでしょうか。
ウクライナ戦争が終わる可能性があるとすれば、次の想定が可能な時です。

① プーチンがロシア国内向けに「勝利宣言」を発することができる成果を上げた時。
それは開戦時の2月24日の線、すなわちドンバス、ルハンシクといった東部2州と南部クリミアを完全に掌握し、しかもウクライナ軍が奪還を完全に放棄したとプーチンが確信した時です。

これはありえません。ウクライナ軍は東部2州を奪還する勢いで、クリミアの境界にまで迫るのは時間の問題です。
これを可能にする兵員的な余裕をウクライナはつけてきており、西側からハイマースや、対レーダーミサイル、ドローンなどを提供されて、いまや装備の質的にもロシア軍を上回ってきています。
ですから、今の時点でウクライナが「停戦」に応じる意味が見いだせない以上、プーチンの勝利宣言はだせないでしょう。

②ふたつめの戦争が終わる可能性としては、プーチンがなんらかの理由で権力を追われることです。
理由はいろいろあるでしょうが、プーチンが患っているといわれている重病が深刻化したり、反プーチン勢力のクーデターも、今はないとはいえない状況になってきました。
小泉悠氏がいうように独裁政権は折れる時には、ポッキリいくのです。

今、盛んに流されているゼレンスキーバッシングは和平交渉論とセットです。
西側が軍事支援をするから戦争が続くのだ、だから支援を減らすかなくしてしまえば、ウクライナの継戦能力が枯渇して抵抗を続けられなくなる、そうすればプーチンが「勝利宣言」を出せる、というロシアフレンドの思惑にすぎません。

森氏の発言はこのような隠れた意図に沿ってしゃべっていますから、実に悪質です。

ISWはこう述べて、和平交渉に厳しく釘を刺しています。

「交渉はウクライナに対するロシアの戦争を終わらせることはできません。彼らはそれを一時停止することしかできません。
2014年の最初のロシア侵攻に続く8年間の致命的な「停戦」の後、2022年2月にロシアの新たな侵略が行われたことは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がキーウを征服するまで休まないことを示しています。
今年の侵略に対するウクライナの抵抗は、ウクライナ人が簡単に降伏しないことを示しています。
プチニズムがクレムリンを支配している限り、紛争は解決できません。交渉はその現実を変えることはありません。
彼らは、プーチンやプチニストの後継者がウクライナの独立に対する攻撃を再開することを検討する条件を作り出すことしかできません」
(ISW2022年11月17日)
ロシアとの交渉に反対する訴訟 |戦争研究所 (understandingwar.org)

このようにISWが述べるように、和平交渉論は2014年から2022年2月24日まで実に8年間も「休戦」していたことを忘れた議論にすぎません。
その休戦がプーチンの思惑ひとつで破られた事実をウクライナは忘れないからこそ、最低でも2月24日以前のラインまでロシア軍を押し返す時まで、そして最終的には東部2州とクリミアの完全奪還まで戦わざるを得ないのです。

これが戦争の現実であり、「ゼレンスキーを叱った」くらいでどうなるものでもありません。
グレンコ・アンドリー氏は、ゼレンスキーはウクライナ国内では宥和派なのだとして、こうツイートしています

「ウクライナの政治軸で言えば、ゼレンスキーの対露姿勢は「妥協派」「宥和派」「譲歩派」です。対露独立派の政治家達は連綿と、ゼレンスキーを「ロシアに対して弱腰だ!」と批判しています。
それで、元々譲歩派のゼでさえ「交渉は不可能。戦場で勝つしかない」という結論に辿り着いたのです。なぜか。理由は、いくら譲歩してもロシアはあまりにもひどいので、譲歩したくてもできないと理解したからです。ロシアは譲歩ではなく、国家の解体と民族の絶滅を目指しているので、どんな宥和派でも戦う事を選ぶのです。
簡単に言うと、こういう事です。
ゼ「占領地に特別地位を与える。武力奪還はしない。NATOにも入らない。戦いたくない。とりあえず、話し合いましょう!」
プーチン「とりあえず、国を明け渡して死ね。話はそこからだ。」
ゼ「話にならない。戦いたくないけど、このまま殺されるだけ。」
グレンコ アンドリー(新刊『ロシアのウクライナ侵略で問われる日本の覚悟』発売中)(@Gurenko_Andrii)さん / Twitter












これ以上分かりやすい説明はないでしょう。
わからないのは、すっかりロシア脳になってしまっている森氏や鈴木氏などのほうです。
岸田自民党総裁は森氏を厳重に注意して、引退を勧告すべきです。
森さん、もう早めに引退しなさい。あなたは老害です。

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