やや旧聞になりますが、去る9月13日、クリミアのセバストポリ軍港のドックがドローンによる爆撃を受け、造船所にあったロプーチャ級揚陸艦「ミンスク」とキロ級潜水艦「ロストフ・ナ・ドヌ」が大破しました。
修繕は不可能なようで、2隻共に廃艦となるようです。
これでいままでのロシア海軍の損失の累計はこのようになります。
・巡洋艦モスクワ、ネプチューン対艦ミサイルで撃沈
・揚陸艦サラトフ、トーチカU弾道ミサイルで大破着底 ※停泊時
・外洋曳船ヴァシリー・べフ、ハープーン対艦ミサイルで撃沈
・揚陸艦ミンスク、ストームシャドウ/SCALP-EG巡航ミサイルで大破 ※入渠時
・潜水艦ロストフ・ナ・ドヌ、同上
・2022年2月24日の開戦以降ロシア黒海艦隊が喪失した大型艦・・・5隻(小型高速艇などは除く)
JSF氏による
決して強力とはいえないものの、黒海の海上優勢を握っていたロシア黒海艦隊は半身不随に追い込まれつつあるようです。
さて、13日夜の攻撃は大きな火災を引き起こしていたことが、遠景からも確認できます。
英国国防省は直ちに衛星写真を公開していますが、ドックが精密な爆撃にあったことがわかります。
揚陸艦ミンスクと潜水艦ロストフ・ナ・ドヌは復帰が困難な大損害(JSF) - エキスパート - Yahoo!ニュース
潜水艦の被害写真が漏洩し、施設だけではなく停泊していた艦船にも損傷が出たようです。
JSF
ロシア国防省の発表。
「ロシア国防省は、今夜、セヴァストポリのオルジョニキーゼ造船所で10発の巡航ミサイルによる攻撃と、3隻の無人ボートがあった発表し、この攻撃についてウクライナを非難している。声明はまた、防空システムによる7発のミサイルの撃墜し、および占領者の巡視船ヴァシルビコフによってウクライナ軍のUAVの破壊したとしている。
しかし、「敵の巡航ミサイルの攻撃の結果、修理中の2隻の船が損傷した」とロシア国防省は述べた」
セヴァストポリへの攻撃-ロシア国防省は2隻の艦船の損傷を発表した|RBCウクライナ
ロシア側の発表では、巡航ミサイル10発と自爆無人水上艇(UAV)3隻の攻撃を受けたようです。
うち、巡航ミサイル7発とUAV3隻を撃破したが、巡航ミサイル3発が防空網を突破しました。
どうやらウクライナ軍は、ストームシャドウ巡航ミサイルとSCALP-EG巡航ミサイルの両方を使用したようです。
セバストポリ軍港は、ロシア軍の最重要軍事施設として防空されていたはずですが、西側の提供した長距離巡航ミサイルが3割の高い確率で防空網を突破したことになります。
ストームシャドウ/SCALP」を搭載したSu-24M戦闘爆撃機 ウクライナ国防省
またウクライナ海軍はセバストポリ翌日の14日早朝、巡航ミサイルと無人機を使用してクリミア半島東部エフパトリヤ近郊のロシア施設を攻撃し、S-300とS-400からなる複合防空システムの破壊に成功しました。
攻撃にはウクライナ国産の巡航ミサイル「ネプチューン」と自爆ドローンが使用され、攻撃ではまず、自爆ドローンによって防空システムの目となるレーダーとアンテナを破壊し、止めを刺すようにミサイルの発射装置もネプチューンによって破壊しました。
これで南部ヘルソンやクリミア半島に重点的に配置されていたS-400は、わずか1カ月で2基破壊されたことになります。
22日には、艦隊司令部がウクライナ軍によるミサイル攻撃を受け、少なくとも兵士1人が死亡したと、ロシア側が発表しました。
南部戦域は、S-400を搭載した広域防空艦の巡洋艦モスクワが、去年4月にウクライナ軍の地対艦ミサイルで撃沈されたことで黒海上空の航空優勢の確保が困難になったままです。
このためにズミイヌイ島(蛇島)のウクライナによる奪還を許し、島の周辺では外洋曳船ヴァシリー・べフが地対艦ミサイルで撃沈されています。
黒海の要衝であったズミイヌイ島を奪還されたために、黒海の海上優勢の維持は非常に難しくなりました。
もはやロシア黒海艦隊は、かつてのようにウクライナ沿岸に不用意に近寄ることすらできなくなっているのです。
そして黒海艦隊の聖地とでもいうべきクリミア半島最北端のセバストポリまで今回攻撃を受けたことに、ロシア海軍は深刻な衝撃を受けたはずです。
これで決定的になったことは、ロシアにはもはやオデーサを攻略する能力を喪失したということです。
セバストポリに停泊していた揚陸艦の任務は、オデーサ攻略時に海からの海軍歩兵の揚陸をしかけて助攻することでした。
しかし、陸上部隊がドニエプロ川の左岸に撤退してしまい、これ以上の西進ができないうえに、海上からの揚陸艦は損傷を受けてエスコートするはずの残存艦隊がウクライナに接近すらできないようでは、もはやオデーサ侵攻は断念するしかありません。
ロシア海軍は、ウクライナの長距離ミサイルの射程内に入ってしまって、もはや安全地帯ではなくなったセバストポリから黒海艦隊をロシア本土のノヴォロシスク港に移動させるでしょう。
つまりクリミアを支配し続けることは、少なくとも軍事的には無意味になりつつあるということを意味します。
クリミアは、農業に不適で、水すらウクライナ側から給水されているような無価値な土地です。
民族的にも、ロシア語系、ウクライナ語系、クリミアタタール人などがいて複雑です。
わざわざ国連制裁を受けてまで略奪する土地ではなく、ロシアはセバストポリの使用権をウクライナから得ていたのですから、どうして傀儡国家まで作って侵攻する必要があったのかさえ疑問です。
ですからクリミア半島の価値は、あくまでセバストポリ軍港があってのものなのです。
セバストポリとそこを母港とする黒海艦隊があってこそのクリミア半島に侵攻した意味があったわけです。
セバストポリが危険地帯となり、停泊していた艦船が破壊されたり、修理もできなくなるとすれば、港だけあっても無意味です。
さっさと施設や器材、人員まで含めてノヴォロシスクに移動するほうが賢明かもしれません。
こうしてみると、クリミア半島をロシアが支配し続ける意味は、純粋に政治的なものになります。
クリミアの放棄は、プーチンの政治的な挫折を意味します。
一方ウクライナ側からも、逆の意味で同じです。
ウクライナからすれば、米国が言ってくるクリミア放棄した朝鮮戦争型和平案を実態で蹴ってみせることを意味します。
ウクライナは、東部と南部の国土の20%を占領しているロシア軍を追い出すことを目標にしています。
しかし、欧米はロシア軍がウクライナ領土から完全に撤退することを停戦・和平交渉の条件としている限り、ウクライナ戦争は長期戦となり、消耗戦となることが避けられない、と見ています。
消耗戦となった場合、戦争経済に再編可能な専制体制のロシアに対して、欧米諸国からの武器供与に依存するウクライナは不利だと考えています。
やっと1年間たって戦車や戦闘機、長射程ミサイルの供与が決まりましたが、ウクライナ側から見ればそれは西側陣営の腰が引けているからであり、欧米からすればゼレンスキーが強硬すぎるからだということになります。
この亀裂は今はわずかですが、明らかに欧米は支援疲れしつつあります。
そこで調停案として出てきたのが、この朝鮮戦争型和平案です。
2022年2月24日侵略開始時点の線を休戦ラインとして、停戦に入るとする案です。
ゼレンスキーはこの案に強く反対しています。
ひとつは、2014年に奪われたクリミアがロシア領土として固定化されてしまうことで、おそらく二度とクリミアはウクライナの懐に帰る日はないはずです。
そうなった場合、クリミア半島のウクライナ国民を見捨てたということになります。
そしてふたつめは、仮にこの案を呑むとしても守られる保証がなにもないからです。
ゼレンスキーが、再三に渡って「われわれはミンスク合意の過ちを繰り返さない」と述べているのは、2015年2月に結ばれた停戦条約である「ミンスク合意」がまったく守られなかったという苦い経験があるからです。
ミンスク合意は、ドイツとフランスの2国を調停役として交えていたはずですが、ロシアはドネツクなどにロシア兵を浸透させて、親露派政権を作ってしまいました。
この狡猾なロシシの動きを傍観していた西側陣営に対する不信感がウクライナにはあります。
どうしてもウクライナを朝鮮半島型和平に導きたいのなら、ウクライナをNATOとEUに加盟させて担保とするしかありませんが、むしろ欧米側にその度胸があるか、です。
このような中で、ウクライナが見せたセバストポリ攻撃は、朝鮮半島型和平に対する回答でもあるのです。
ウクライナに平和と独立を
デニー氏が国連人権理事会なる所で演説したそうです。
かつての翁長氏の時には大きな注目を浴びたものですが、今回は本土メディアの扱いもわずかで、ネットも完全に無視。
どこかで誰かがナニかを言っている、ていどの扱いです。
実は私もこんなデニー演説はスルーしようと思っていたのです。
理由は簡単。こんなテンプレで書いたような演説など死ぬほど退屈だからです。
に書かせたほうがはるかにいい出来だったでしょう。
魂はこもらず、かといって冷徹な戦略もない。
翁長氏にはあった、オレの背中に沖縄の戦後70年を乗せてやるという気迫もない。
デニーさん、あなたわざわざジュネーブに道化をしに行ったのですか。
本土紙では、デニー氏の天敵のはずの産経が論評ぬきで丁寧に報じています。
「(略)玉城氏は18日、国連人権理の本会議場で開催された「国際秩序」の会議に出席した。演説で「沖縄は日本の総面積の0・6%しかないが、日本にある米軍基地の70%がこの小さな島に集中している」と指摘。「米軍基地が集中し、平和や意思決定への平等な参加が脅かされる沖縄の状況を世界中から関心を持ってもらうために、私はここにきた」と訴えた。
また、普天間飛行場の名護市辺野古への移設に関する平成31年(2019年)の県民投票に触れ、「民主的に行われた県民投票で沖縄の有権者が明確に反対したにもかかわらず、埋め立て工事は進んでいる」と言及。「私たちは軍事力の増強が日本の周辺地域の緊張を高めることを恐れている」とした上で、「沖縄県民の平和を希求する思いとは相いれない」との見方を示した。
「私たち沖縄県民は、2016年の国連総会で採択された『平和への権利』を私たちの地域において具体化するよう、関係政府による外交努力の強化を要請する」とも述べた。
沖縄県知事が国連人権理に出席し、発言するのは2回目。15年には翁長雄志前知事が辺野古移設反対を訴え、「沖縄の人々は自己決定権や人権をないがしろにされている。自国民の自由、平等、人権、民主主義、そういったものを守れない国が、どうして世界の国々とその価値観を共有できるだろうか」とスピーチした。
国連の理事会にNGOが意見表明する会合があり、関係者によると玉城氏はNGOの発言枠を譲り受ける形で演説した」
(産経9月19日)
沖縄知事「平和脅かされている」 国連で辺野古「反対」演説(産経新聞) - Yahoo!ニュース
なにが辺野古移設が「軍事力の増強で周辺地域の緊張を高める」でしょうか。
翁長氏の頃はまだそんなことを言っても通用しましたが、いまここまで台湾有事が現実化している中で、同じことを平気で言える神経の粗雑さがたまらない。
こんな台詞を聞いて、そうだ、日本こそがアジアの緊張を高めているんだ、なんて感じる人って、今何人いますか。
ウクライナ戦争の後は、いまや中坊でもだまされませんよ。
翁長演説の時は、英文テキストまで手に入れて論じたもので、翁長氏の反基地闘争は長期に渡って論じ尽くしました。
しかしこの2代目翁長の劣化コピーなんぞ、ただひたすら寒いだけです。
ついに国連人権理事会で「民族自決権」を主張し始めた翁長氏と、それをブロックした我那覇真子氏: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)
沖縄県民は「先住少数民族」ではない: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)
デニー氏の目的は、オレはこれだけのことをやっているんだという内向きの演説にすぎませんから、平気で手垢のついたことをくりかえしてはばかりません。
たとえば、臆面もなく「米軍基地70%集中論」ですか、もう飽き飽きします。
沖縄の人々も薄々感じておられるように「70%」という数字は虚構です。
これは日米共同使用施設を排除した数字だからです。
出典不明
もしそんな算定方法が許されるのなら、普天間や嘉手納、キャンプ・ハンセンに小規模でもいいから自衛隊を配備すればよくなってしまいます。
現にキャンプ ハンセン共同使用は、かつて在沖海兵隊司令官が口にしたことがありますし、陸自の水陸機動団の一部が前進配備される可能性はあります。
嘉手納基地も、那覇基地は非常に手狭ですから、その一部の機能を移転することは可能でしょう。
そもそも接受国の日本が民間共用で、提供されるほうの米軍が広々っていうのもヘンなのです。
こんなふうに日米共同使用施設が沖縄で増えると、基地負担70%説はどうなるんでしょうかね。
実態は変わらなくても、数字のトリックを根拠にしているからおかしくなるのです。
面積でいえば、北部訓練場が大きな面積を占めていたために負担が多く見えましたが、ここも面積の過半に相当する4千ヘクタールが既に返還されています。
その時、返還に大反対して、防衛施設庁職員リンチ事件まで引き起こしたのはいったい誰でしたかね。
「0.6%の沖縄に」という面積比率の言い方もさんざん聞きました。
では、人口比率ではどうなんでしょうか。
私は神奈川県の厚木基地の近くで育ちましたが、神奈川を中心として国道16号線沿いの1都3県には、日本の人口の実に約3割弱、約3千600万人が住んでいます。
もし、沖縄が0.6%の面積比率にというならば、人口比率の約3割も見なければ公平さを欠くというものではありませんか。
そこで、神奈川県だけに限って米軍基地をみてみましょう。
その多さと面積の大きさに驚くはずです。
まさに沖縄並です。
しかもその重要度において沖縄とは比較になりません。
神奈川県こそ、米国の世界戦略の根幹の一部であって、沖縄は前進基地にすぎないのです。
出典不明
簡単に神奈川の米軍基地群を見てみましょう。
国道16号線の起点近くには米海軍横須賀基地があり、ここには2008年9月から原子力空母が母港としています。
沖縄にも那覇軍港(現在は移動)やホワイトビーチがありますが、輸送船や潜水艦などの停泊地にすぎません。
横須賀基地の巨大さを理解するには、単に軍港施設に限らず付随する膨大な付随する施設群をみねばなりません。
第7艦隊の補給を受け持つ弾薬貯蔵施設(秋月、広、川上、嘉手納)の貯蔵能力は実に12万トンを越えます。
米国防総省が自ら「ペンタゴン最大のオイルターミナル」と呼んだのは、在日米軍燃料タンク施設(鶴見、佐世保、八戸)です。
鶴見オイルターミナルは国防総省管内のうち米本土まで含めて第2位の備蓄量、第3位は佐世保で、八戸(航空燃料)と合わせると1107万バレルを備蓄しています。
これは米海軍最強の第7艦隊全体の10回分の満タン量に相当します。米海軍は日本における高い技術力と、本土に蓄えられた燃料・弾薬、装備に支えられて初めて展開可能なのです。
沖縄が過剰な基地負担で苦しんでいるのは事実ですが、沖縄だけが、沖縄だけがくるしんでいる、本土は基地負担していないと叫ぶのはお止しなさい。
デニー氏のように、あたかも沖縄だけが米軍基地を引き受けて苦吟しており、本土はそのうえにあぐらを書いているという言い方はいいかげんお止めなさいということです。
「0.6%の土地に70%の米軍基地が集中」という言い方は、正確でないばかりか沖縄と本土を隔てる壁だからです。
次に、やっぱり言うだろうなと思っていたら言ったことは「2019年の民主的に行われた県民投票で沖縄の有権者が明確に反対したにもかかわらず」という言い方です。
この言い方は、「オール沖縄」の定番ですが、ただの数字のトリックにすぎません。
得票率は52%にすぎず、さらに移設反対は5割の投票率のうちの7割ですから、実体は約35%にすぎません。
しかもその「反対」は県内の別の地域・水域案も含めた数字ですから、オール沖縄のように「あらゆる県内移設反対」となると、さらにそれから割り引いて考えねばなりません。
たぶん県民のうち3割前後が「オールl沖縄」の真水といわれていますから、彼らが精一杯動員をかけててこの数字ということなのです。
ところがこの「移設に県民の7割が反対」というプロパガンダに利用してしまいました。
これも数字のトリックです。
こんなプロパガンダを宣伝しにわざわざジュネーブくんだりまで行ったのは、デニー氏の根深い翁長コンプレクスのためでしょう。
翁長テープなるモノによって「後継指名」されたことが唯一の知事選出馬の根拠だったデニー氏にとって、翁長氏のやったことをそのままカーボンコピーするしかなかったようです。
デニー氏は言い方の隅々まで翁長師匠のデッドコピーそのもの、新たに付け加えたものはなにひとつありません。
国への非協力と訴訟合戦、そして惨敗という軌跡までそっくり踏襲してしまっています。
デニー氏が、移転阻止運動になにかひとつでも新しく付け加えた頁がありますか。
たぶんなにひとつない。
実務能力もなければ、政治的能力もない。
そしてなにより覚悟もない。あるのはスタンドプレーだけ。
この人は本当に空虚な人です。
先日お伝えした北朝鮮のロシアへの砲弾供与についての続報です。
「金正恩氏が豊富に保有しているものの一つは武器であり、特にウクライナの前線で復活の兆しを見せている20世紀の粗末な大砲である。北朝鮮は、国際戦略研究所の推定によると、21,600門以上の大砲からなる兵器庫を供給するための計り知れない弾薬を保有しており、この部隊が数十年にわたりソウルをマリウポリのような荒廃の脅威にさらし続けてきた。
「北朝鮮は老朽化した旧軍需品の在庫を大幅な値上げで処分する機会を両手で掴むだろう」と武器専門家のジュースト・オリマンス氏は語った」
北朝鮮はロシアへの武器販売から重要なライフラインを得ることができる - ジャパンタイムズ (japantimes.co.jp)
正恩にとって、プーチンの砲弾供与要請は渡りに船だったようで、すぐさま飛びついたようです。
昨今、北は仮想通貨窃盗業が仮想通貨取引所の閉鎖によって窮地に追いやられていたところだったからです。
「ソウルの韓国銀行によると、北朝鮮経済は2021年の成長に失敗し、昨年(2022年)は不透明な見通しに直面した。韓国銀行は同国の見通しを定期的に評価している数少ない機関の一つだという。一方、金氏の仮想通貨窃盗への一見儲かる事業は、デジタル資産取引所FTXの破綻を受けて窮地に直面している可能性がある」
(ジャパンタイムス前掲)
窃盗業が国家財政を支えているなんていう国は世界でも珍しいですが、この国はサイバーテロに関しては世界有数の人員を擁しています。
国民が食えなくても、こういうこそ泥、サイバーアタック、誘拐などの反社行為だけは世界一流です。
北にすれば、突然大きなマーケットができたようなものです。
155ミリ砲弾の単価は装薬や信管を合わせて新品でせいぜいが4万円ていどですが、パーフェクトな売り手市場ですから、狡猾な正恩が安く売る道理がありません。
砲弾だけではなく発射機までおつけするとこのていどになりますかな、パチパチ。(算盤を弾く音)
もちろんお支払いはドルでお願いします、ルーブルは一切お受けできません、ゴミですから。なんなら原油でもけっこうですよ、バレル40ドルていどが妥当かと、なんてね。
実はもう既に北朝鮮製砲弾は、イランや北アフリカ諸国に輸出すると見せかけてロシアに手渡され、戦場で使用されている、と米国は見ています。
「新たに機密解除された諜報機関によると、米国は、北朝鮮がウクライナ戦争のためにロシアに砲弾を密かに供給し、それらが輸送されている場所を隠すことによって非難している。
米国当局は、ロシアがイランから入手した無人機やその他の兵器とともに、北朝鮮の密かに輸送されたことは、モスクワの通常兵器でさえ8か月の戦闘中に減少したさらなる証拠であると信じています。北朝鮮は、弾薬が中東または北アフリカの国々に送られているかのように見せることによって、貨物を隠そうとしている、と諜報機関は言う。
最近の諜報機関は、米国の諜報機関が、ロシアが戦場で使用するために北朝鮮から数百万発のロケットと砲弾を購入する過程にあると述べてから約2か月後に行われた」
CNNで最初:米国は北朝鮮がロシアへの弾薬の出荷を隠そうとしていると非難している|CNN
「ウクライナ国防省情報総局のキリル・ブダノフ長官は13日に現地メディア「ニュー・ボイス・オブ・ウクライナ」の取材に「ロシアはすでに1カ月ほど前からロケット弾など北朝鮮製の兵器を使っている」と明らかにした。ブダノフ長官によると、1カ月半ほど前に北朝鮮とロシアは協定を結び、この時から北朝鮮製兵器の輸入が始まったという。これは7月22日にロシアのショイグ国防相が6・25戦争休戦協定70周年に北朝鮮を訪問し、武器や砲弾の供給を要請した時期と合致する」
(朝鮮日報9月15日)
ロシアに引き渡される予定の北の砲弾を奪ったウクライナ「ほとんどが1980~90年代製」「たまに変な所に飛ぶ」 -Chosun online 朝鮮日報
ただし鹵獲したウクライナ軍指揮官の話では 、北朝鮮製の砲弾や発射装置の品質は非常に劣悪で不発弾だらけのうえに、どこに飛ぶかわからないので、できたら使いたくないシロモノだそうです。
こわくて北朝鮮製の発射機に近づけないそうです。(笑)
こんなもんを使わされるロシア軍も哀れ。
「ウクライナ軍のルスランと名乗る砲兵指揮官はフィナンシャル・タイムズの取材に「北朝鮮製の砲弾はほとんどが1980年代か90年代に製造された」「不発の割合が高いのであまり使いたくはない」と述べていた。また別の砲兵も「砲弾は信頼性が非常に低く、たまに変なところに飛ぶので、発射台に近づいてはならない」と注意を呼びかけた」
(朝鮮日報前掲)
どうやら北朝鮮の砲弾保管の状態が極めて劣悪だったみたいですね。
砲弾の寿命はかなり長く。ロシア軍も米軍も冷戦時代の砲弾をいまも備蓄していますので、とくに北が80年代から90年代のモノを供与したとしてもそれ自体は驚きではありませんが、メンテが悪かったようです。
米軍も自衛隊も、空調つきの専用弾薬保管所を作って長期保管しています。
155mmりゅう弾砲を長期保管するために調達している倉庫 会計検査院 (jbaudit.go.jp)
あまり長期保管になった砲弾は、炸薬を詰め替えての再利用が可能です。
ロシアの数万台あるゾと豪語していた戦車の備蓄も、倉庫から取り出してみればボロボロでスクラップ同然の状態、電子部品はとっくに盗まれて売られているといった具合で、使い物になるのはごく少数でした。
メンテナンスや安全管理は一番めだたないので、真っ先に予算から削られるのです。
また21世紀型戦争は航空機やミサイルの対地攻撃が主で、砲撃の重要性は低いと思われていました。
実際に、米海兵隊の新シフト(フォースデザイン2030)では、戦車と砲兵を全廃しています。
kaiheitai-kaikaku-watanabe.pdf (goyuren.jp)
しかし、現実にウクライナに侵攻してみると、航空機攻撃は対空ミサイル網によって互いに封じられ、結局モノを言ったのは第1次大戦型の砲撃と塹壕でした。
ロシア軍は2022年2月末のウクライナ侵攻後、昨年1年間だけで1000万~1100万発を使ったとみられていますが、おそらくは砲弾備蓄はとうに使い切っているはずで、命知らずのロシア砲兵がやけくそでこの「どこにとぶかわからない」ような備蓄品を使っているようです。
もちろんロシアは全力で砲弾生産をしていますが、それでも砲弾の生産能力は年間100万~200万発で、必要量の10分の1でしかありません。
北は推定で2万1千門の大砲を持っていると言われていますから、品質はともかく砲弾の備蓄は佃煮にするほどあるはずです。
これを売り手市場でさばけ、対価として原油がもらえるかもしれないとすると、なんてすんばらしい話でしょうか。
こうしてロシアと北による「反帝同盟」(笑)が突如誕生したわけです。
EUはEV(電気自動車)の導入に異常なほど熱心でした。
なかでもその音頭を取っていたのがドイツです。
建前は「地球に優しく」ですが、もちろん下心はありました。
そのドイツが思わざる展開に、方針転換を迫られています。
そもそも、有体に言えばEV推進の目的はトヨタ潰しでした。
EUは地球環境を守るふりをして、トヨタの生み出した画期的環境負荷低減エンジンをであるハイブリットをゼロ・エミッションカーに入れない、というトンデモの決定をしました。
おいおい、クルマの中に内蔵した発電所を持つハイブリッドほど優れたエコカーはないんじゃありませんかね。
しかしハンブリッドカーはエコカーにあらずというEUの決定で、トヨタは大きな打撃を受けました。
ハイブリッドカー - Wikipedia
つまり、EUはEVのだけが唯一のエコカーであると宣言することで、事実上の「日本外し」を露骨に行ったのです。
うわぁぁ、セコ。
自動車発祥の地のヨーロッパ人らしいプライドの高さですが、ご想像どおりEU盟主ドイツのあのWがふたつつく企業のごり押しでしょう。
世界の自動車業界の盟主の座を奪われたことが、よほど悔しかったとみえます。
一方トヨタは太っ腹にもハイブリッドの特許を公開して普及を図っていたのですから、そちらを世界基準にすればよいものを、なんとしてでも日本に屈するのだけはイヤだったんでしょう。
気分はわからないでもありませんが、大きな眼で見れば自分で墓穴を掘ったのです。
欧州は、内燃機関からEVへの乗り換え促進のために、手厚い購入補助金と、大幅な減免税政策を導入し、その結果、EVの世界販売台数は、2020年に200万台、2021年に440万台、2022年は700万台と、毎年2倍に近い勢いで増え続けています。
また、ネックだった世界の公共のEV充電器も、2022年末時点で250万ヶ所を超えたといわれています。
かくして、いままでハンチクなクルマだと思われていたEVが、一気に自動車業界の帝王の座を狙う位置につけたのです。
ノルウェーのエコミーイズム: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)
ただし、これによってうたい文句どおりCO2が削減できたかといえば、これがはなはだ疑問です。
たしかにEVは走行中のCO2は排出はありませんが、もっと広い眼でみたライフサイクルではどうでしょうか。
ライフサイクルCO2排出量とは、自動車の製造時から運転・廃棄時までを含めて計算したCO2の量のことです。
これについては、スウエーデンのボルボが行った研究があります。
Volvo-C40-Recharge-LCA-report.pdf (volvocars.com)
電気自動車(EV)は本当に環境にやさしいのか | キヤノングローバル戦略研究所 (cigs.canon)
上図がその結果ですが、縦軸が20万キロ走行時のCO2排出量。
一番左が同等な内燃機関車(ICE)。残り3つがEVであるC40で、発電の構成によって結果が異なっているのがわかります。
左から順に、世界平均(Global electricity mix)、EU平均(EU electricity mix)、そして全て風力で賄った(wind electricity)場合、としている。
本来、環境負荷は廃棄までのライフサイクルと稼働や設置による負荷まで含めて比較すべきものであり、EVの場合でいえば電源、電池の廃棄にかかわる負荷、発電負荷などが適正に判断されていないと、正当な判断はできません。
上図のスウエーデンの研究を見ると、EVは製造原料、リチニウムイオンバッテリーの生産に関わるCO2排出量が内燃機関の倍近くになっています。
そしてなによりEVの燃料に当たる電気の発電のために発電所において日常的にCO2を発生させています。
え、太陽光発電だからエコだろうですって。
そう簡単なもんじゃないのはいままで何回も説明しましたが、不安定な再エネのために必ず火力や原子力がバックアップに入っているのです。
風が止まって風車が動かないた、雨になって太陽光が使えないという時に、一瞬で化石燃料発電に切り替わる仕組みなのです。
つまり、EVを走らせるためには電気が必要であり、その電気を作るためには化石燃料が必要であるという夢のない話にになるのです。
なんのこたぁないEVを動かすためには発電量をふやさねばならず、その結果さらに多くのCO2を排出せねばならず、普及すればするほど電気消費量が増えてCO2も増えるという仕組みです。
お分かりでしょうか、再エネがそうであるように、EVもまた偽薬なんです。
このEVが持つ根本矛盾を、バカではないのでEUもわかっちゃいるのです。(と思いたい)
ただ、今の温暖化阻止の波を利用して、なんとしてでも究極の内燃機関を作り上げてしまった憎きトヨタを叩き潰したいのです。
だから内燃機関車をEU市場から完全に排除して、ハイブリッドという優れた環境負荷低減技術まで葬ろうとしたのです。
ですから、電気自動車の本質的矛盾、すなわら普及すればするほど電力消費が増えてCo2が増えてしまうという笑えない矛盾については、見えません見えません、いつか誰かが解決してくれる未来を信じて先送りにしましょう、という「賢者の知恵」(なのかよ)がEUの考えでした。
ところが、思わざる伏兵が現れました。
EVを作るのに、特に新しい技術はいらないのです。
EVはしょせん日用品(コモディティ)であって、大量生産される電池とモーターが付いたプラットフォームに、外観の違うボディを乗せただけのものにすぎません。
部品数はたかだか1万~2万ていどにすぎませんから、いわばアルミの一体型のダイキャストに内装を載せたゴーカートみたいなものです。
ハッキリ言えば、こんなていどのものは自動車後進国でもすぐにできてしまいます。
一方、現代に通用する内燃機関車を作るには、特許だらけの設計に基づいて精密加工技術、冶金技術がモノをいう世界で、部品数だけでもEVの2倍の3万いるといわれています。
トヨタの副社長が、叩き上げのエンジン鍛造工場の親方であるのは知られた話です。
だから世界でも、優秀な自動車エンジンは日本とドイツ、そしてスウエーデンくらいしか出来なかったのです。
これをEVだけが善玉、ハイブリッドまで含めて内燃機関車は悪玉、EU域内では内燃機関車は売らせないとしてしまったらなにが起きるでしょうか。
自動車生産後進国が、なかんずく世界一の低品質自動車生産国の中国が押し寄せて来るに決まっているじゃありませんか。
しかも中国は、新規参入にあたって必ずえげつないダンピングを仕掛けてきます。
徹底的に安く売りさばき、,その生産力とバカ安で市場を制圧するのです。
典型例は太陽電池パネルです。
太陽光パネルは、世界各国で作っていましたが、いったん中国が市場に参入するやいなやダンピング価格によって世界市場は瞬く間に支配されてしまいました。まさに侵略。
このEVでも、中国はやっぱりやらかしてくれました。
「独メディアのドイチェ・ヴェレは2023年9月14日、EUが中国の電気自動車(EV)に対してダンピング調査を実施することについて、EUに「太陽光発電と同じ轍は踏まない」との意図が見えると報じた。
記事によると、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は中国のEVに対する調査開始を発表した際、数年前に欧州の太陽光発電産業が崩壊した例に言及。「EUは中国の不公正な貿易手段がわれわれの太陽エネルギー産業にどのような影響を与えたかを忘れていない。このようなことはEVで繰り返してはならない」と強調した。
記事は、「中国の太陽エネルギー産業が欧州市場に進出した際、その巨大な生産力と価格の安さが欧州企業を苦しめ、2011年からわずか数年の間に欧州企業の倒産が相次いで発表された。2013年5月、EUは中国製の太陽光パネルに懲罰関税を課すと発表。一方、中国はEU産の化学製品やワインなどへの反ダンピング調査で応じ、貿易戦争に懸念が高まった」と説明した」
中国製EVにダンピング調査、EUの危機感「太陽光発電と同じ轍は踏まぬ」―独メディア (recordchina.co.jp)
やっぱりね。
EUは中国の太陽光パネル産業が欧州市場に進出した際、たちまちその巨大な生産量と安さ故に欧州の太陽光産業を完全に駆逐してしまった教訓を忘れたようです。
2011年からわずか数年間で、欧州の太陽光エネルギー産業は壊滅し、2013年5月になってようやくEUは中国製の太陽光パネルに懲罰関税を課すことにしたのですが、時に遅し。
だって、地場の太陽光産業はなくなっていたんですから。
そのうえこのEUの出し遅れた制裁に対しても、もちろん中国は大喜びで乗りました。
だって報復関税かけるリッパな口実になるじゃないですか。
わが国はダンピングなどしていないにも関わらず、不当な不利益を被ったかわいそうなボク,というわけです。
中国はEU産の化学製品やワインなどへの反ダンピング関税を課してました。
なんで自動車関税に対してワインかよ、と思いますが、ご承知のようにそういう国なんです、あの国は。
彼らにとって貿易もまた「戦争」なのです。
無理が通れば道理が引っ込む。不正がまかり通り、間違いが堂々と行われる世の中では、筋違いなことでも押し通せる。
経済を制圧してしまえば政治は自ずとついてくる、政治と経済を押さえれば支配したのも同然だ、それが彼らのセオリです。
この轍を、きっちりEUは再び踏もうとしています。
日本をはずしたら中国が来た、しかもこいつにはルールが通用しないというわけです。
遠からず欧州市場は中国製EVに蹂躙されることでしょう。
その時の相手は、おとなしく定められたルールに従う日本ではなく、自動車に対してワインでやりかえすことなど屁とも思わない中国なのです。かくしてEUは、日本を落としたつもりだった「EVの罠」に自分で落ちてしまいました。
ユン・ソンニョル大統領は、着々とムン・ジェイン政権の後始末をしているようです。
ユンは、親北派の司令塔だった民主労総に打撃を与え、元慰安婦には一円のカネも渡さずすべて私物化していた挺対協代表ユン・ミヒャン(尹美香)を裁判に追い込み、ムン政権与党だった「共に民主党」の代表イ·ジェミョン(李在明 )は「ユン・ソンニョル政府の暴走を防ぐ」として始めた断食を国民の支持を得られないまま病院送りで中断しています。
やれやれ、しょーもない人たちばかりだ。
そして政府に巣くう親北派の牙城である統一省にもメスが入りました。
「ソウル 2日 ロイター] - 韓国の尹錫悦大統領は2日、対北朝鮮関係を担当する統一省について、これまでの過度な援助重視の姿勢を改める必要があるとの見解を示した。
尹大統領は先月末、新たな統一相に保守派の政治学者で北朝鮮の人権問題を積極的に批判している金暎浩・誠信女子大学教授(63)を指名したばかり」
(ロイター9月2日)
韓国統一省、北朝鮮支援重視を修正へ 尹大統領「変革の時」 | Reuters
金暎浩(キム・ギョンホ )統一相
Chosun Online | 朝鮮日報
指名されたキム・ギョンホ新統一相は、このような施政方針を示しています。
「金氏は就任に際し「価値と原則に基づいて統一・対北朝鮮政策を推し進めていくことが、朝鮮半島問題を最も正しく解決し、統一を早める近道だ」と表明。冷却している南北関係を踏まえ組織改編に着手する考えを明らかにした。
韓国メディアによると、統一省は「交流協力局」や「南北会談本部」といった南北交流・協力に関する部署を一つに統合する計画。職員の15%に当たる80人以上の人員削減に取り組み、8月下旬にも改編が完了する見込みという」
(時事8月4日)
尹政権、統一省改革を推進 「北朝鮮支援省」から転換―韓国:時事ドットコム (jiji.com)
振り返れば、2018年9月にムン・ジェインは訪朝し、正恩と抱擁しあっているという気持ち悪い写真を世界に流しました。
米国が、対中第3次関税制裁を発動しようとするその時に、ピョンヤンに言って抱き合っていたわけです。
https://www.youtube.com/watch?v=cEWYjNMmoAA
正恩の千代丸のような腹がつかえて、がぶり寄りみたいになっています(失笑)。
旧ソ連圏では、ヤニ臭いオヤジたちが頬ずりしてキスまでしていましたが、その朝鮮バージョンです。
この訪朝をムンは「完全な非核化を得るためだ」だと言い繕いました。
もちろん見え透いたウソで、ムンの本心は北の核武装を助け、南北統一の道筋を果たすことでした。
「ソウル=水野祥】韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は18日、北朝鮮の首都平壌(ピョンヤン)で、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と今年3回目の南北首脳会談を行った。会談は19日も行われる。北朝鮮が表明している「完全な非核化」について、文氏が正恩氏から具体的な措置を引き出せるかどうかが焦点となる。
会談は平壌の朝鮮労働党本部で、18日午後3時45分から2時間行われた。平壌共同取材団によると、正恩氏は会談冒頭、「文大統領の絶え間ない努力で北南(南北)関係、朝米(米朝)関係が良くなった。歴史的な朝米会談のきっかけを見つけてくれた」と語り、6月に行われたトランプ米大統領との首脳会談を成果と強調した。「朝米間で、さらに進展した結果が出せると思った」とも述べた。
これに対し、文氏は「新しい時代を開こうとする金委員長の決断に謝意を表する。豊かな結果を残す会談とし、全世界の人に平和と繁栄の成果を見せたい」と応じた」
(読売2018年9月18日)
核問題の専門家は同行せず、経済使節団として財界トップを200名総ざらいで連れていったそうで、もうハナっから国連制裁決議破りする気ムンムンでした。
恍惚とした表情のムンには気の毒ですが、何を「合意」しようと、北の非核化の進展には何の関係もありませんでした。
そもそも当時、トランプが投げたエサである米朝直接交渉が進行していたのですから、パシリのようなムンに非核化の言質など与えるはずがありません。
そしてこの訪朝でムンは勝手に朝鮮戦争終結宣言まで出してしまいました。
「陸・海・空のすべての空間で一切の敵対行為中断」などと寝言を言っていますが、在韓国連軍や米韓同盟はいつ相談をうけたのでしょうか。
朝鮮戦争は終結したから、在韓国連軍、つまりは在韓米軍にはさっさと撤退してくれ、ということのようで、米朝間でなにも決まらないうちから、米韓合意もないままの「敵対行為終結宣言」ですから、米朝双方から交渉のノイズ扱いされました。
いままで左翼系の韓国大統領は、おなじような失敗を繰り返して、その都度カネをむしりとられてきました。
キム・デジュン(金大中)の時は、巨額の裏金が直接に2代目に手渡されたことが明らかになっています。
これが暴露されたために、金大中はノーベル平和賞はカネで買ったものと韓国国内で叩かれることになります。
「金大中政権時では、引退後の処遇を恐怖する金大中氏が、当時5億ドルの秘密支援を北に行い、南北首脳会談を実現してノーベル賞の権威付けによってこの恐怖を逃れた。秘密支援は3年後に暴露された。この時北は10億ドルを要求したという」
(産経2月10日 古田博司)
http://www.sankei.com/column/news/160210/clm1602100004-n1.html
正恩が南北会談をした目的は、韓国のムンが喜びそうなことを言ってやることで、米韓日の結束を分断し、核武装のための時間稼ぎをすること、そしてもうひとつは韓国から支援のカネをむしり取ることでした。
たぶん、ムンもキム・デジュンを上回る数倍の現ナマを政府専用機で運んだはずです。
北からすれば、核兵器の開発までの時間稼ぎができたうえに、カネまで貰えるというひと粒で二度おいしい南北会談でした。
え、韓国ウォンで持っていったのかって、わけないしょ。
北は「帝国主義マネー」のドル以外受け取りませんよ。
ところで新統一相のキム・ギョンホは、ムン政権時代には異端の保守論客でした。
在野時代のキムの著作を、ハンギョレが紹介しています。
「著書『米中覇権戦争と危機における大韓民国』の中で、北朝鮮は我々の存在そのものを脅かす実存的な敵であると主張した。 「韓国の自由民主主義とその敵」という本の中で、彼は南北関係は敵対的であり、北朝鮮は全体主義であり、どんな種類の宥和政策も無効であると述べました。 南北と北朝鮮の関係は、死ぬか生きてみないと終わらせられない「敵対関係」であり、北朝鮮との対話、協力、共存を求めることは、その本質を曖昧にする「詐欺」です」
(ハンギョレ 2023年7月20日)
北朝鮮は「味方」か「敵」かのどちらかだと主張する韓国統一閣僚候補の金浩鎬:政治と社会:漢民日報 (hani.co.kr)
まったく異論の余地はありません。ドストライクの正論です。
そして当時のムン政権に対してはこう切り捨てています。
「2018年の著書『韓国の自由民主主義とその敵』では、ロマンティック・ナショナリズム(南北和解の追求)に基づく「金国モデル」は、南北関係が敵対体制間の実際の敵対者であることを人々が認識することを妨げていると主張している。(略)
ろうそくデモをしている議員の行動が大韓民国の自由民主主義システムを弱体化させ、全体主義を支持する結果につながった 」
(ハンギョレ前掲)
韓国の東京新聞であるハンギョレは、キムの思想はネオナチだ、極右だと言っていますが、この新聞からそう言われるということはフツーの保守ということです。
とまれ、北との関係に自由主義の価値観を据え、北の人々が「自由民主主義の価値観のために立ち上がるべきだ。統一が両国国民により良い、より人間らしい生活をもたらすべきだ」としたことは、画期的なことです。
したがってキム統一相にとっての「統一」とは、正恩ひとり独裁体制が打倒され、北朝鮮国民が専制と服従から解放されることなのです。
具体的には、統一省を大幅縮小し、交流部門も廃止しました。
そして北朝鮮関係の情報収集や拉致担当を親切しました。
「韓国政府は8日、北朝鮮政策の中核官庁である統一省の人員を617人から536人に大幅に削減し、南北対話・交流協力部門を「南北関係管理団」に統廃合した。その一方で、北朝鮮関連の情報を収集分析する機能や、韓国人拉致問題対策は強化。拉致被害者対策の担当組織を新設した」
(ロイター前掲)
そして目玉人事として、脱北者の元北の外交官を補佐官に登用しました。
【ソウル=桜井紀雄】韓国で対北朝鮮政策を統括する金暎浩(キム・ヨンホ)統一相は6日、北朝鮮情報の分析などを担当する統一相直属の特別補佐役を新設し、北朝鮮外交官出身の高英煥(コ・ヨンファン)氏(70)を任命した。脱北者が韓国の国会議員になるケースはあったが、対北政策に関わる特別ポストに就任するのは異例だ。
金統一相は、任命に際し、高氏が北朝鮮の全体主義と韓国の民主主義という2つの体制を熟知する点を挙げ、「高氏の専門性が加われば、統一省の政策能力を画期的に強化できる」と強調した」
(産経9月6日)
韓国、北朝鮮元外交官を統一相特別補佐に任命 1991年に亡命 - 産経ニュース (sankei.com) 。
じっくりとユン大統領とキム統一相の仕事ぷりを拝見しましょう。
ロシアと北朝鮮が「軍事協力」をするそうです。
「ロシアのプーチン大統領は、極東を訪問している北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記と13日にも首脳会談を行うとみられます。ウクライナ侵攻で兵器や武器の不足が指摘されるなか、ロシアの外交筋は、プーチン大統領がキム総書記との間で、軍事技術協力の拡大などで合意する見通しだと明らかにしました。
北朝鮮のキム・ジョンウン総書記を乗せた専用列車は12日、国境を越えてロシアに入った後、北上していて、ロシアの鉄道関係者によりますと、列車は、極東のアムール州に向かうということです。
一方、ロシアのプーチン大統領は、アムール州にあるボストーチヌイ宇宙基地を訪問すると明らかにしていて、13日にも宇宙基地で首脳会談が行われるのか関心が集まっています。
この首脳会談について、ロシアの外交筋は、NHKの取材に対して、プーチン大統領がキム総書記との間で包括的な枠組みを通して軍事技術協力を拡大することで合意する見通しだと明らかにしました」
(NHK9月13日)
ロシア 北朝鮮と軍事協力拡大などで合意へ きょうにも首脳会談 | NHK | ロシア
このNHK記事のタイトルは「ロシア 北朝鮮と軍事協力拡大などで合意へ きょうにも首脳会談」ですが、ここだけ見ると、そうかプーチンは北に軍事支援をする気だなと思っちゃいますね。
いままでそういう力関係でしたし、ロシアは北なんぞ肉体労働者の供給地くらいにしか思ってこなかったはずです。
そもそも、ソ連軍大尉だったキム・イルソンを、ソ連軍のジープに乗せて帰国させて朝鮮民主主義なんじゃら共和国をデッチ上げたのもソ連でした。
だから初めからロシアにとって、北なんぞ貧乏な衛星国でしかなかったのです。
13日、ロシア極東アムール州のボストーチヌ…:宇宙基地を訪問するロ朝首脳:時事ドットコム (jiji.com)
そういう隠微な関係だったために、ロシアはこっそりと北の核兵器開発を支援してきましたし、まがいなりとも核兵器保有国にしてしまったのは、ロシアと中国です。
その意味で、ロシアこそが北の核開発の核の共犯者です。
そしていまやその中露にすらコントロール不能になってしまったのが、正恩の北です。
このままだと、ロシアの技術を得て最期のハードルを超えて、行くところまで行くでしょう。
そうなったら、さすがの米国も手が出せなくなるからです。
止めることができるのは、あえていえば米国がピンポイントでICBM関連と核関連施設を潰すことくらいでしょうが、絶対にバイデンはしません。
正恩が核のカードを握っている可能性があるからです。
せいぜい痛くもかゆくもないB-1を飛ばしてアリバイ作りをするくらいで、すっかり足元を見られています。
どうせなにもできまい、バイデンのいるうちに核開発を完了しておくのだ、と正恩にタカをくくられてしまっているのです。
作ってしまえばこちらのもの、というわけです。
だからどこにこんなミサイルの在庫があるんだ、と驚くほど惜しげもなくポンポンと撃ちまくっています。
長距離のアレが一発あれば国民が腹一杯食えるというのにね、なんて常識を言ってもムダです。
この「米帝と戦っている」というポーズがあるから支援を取り付けられるので、いわばビジネスのようなもの。
今回の訪露に際しても正恩は、「私たちは帝国主義との戦いで共にあり続けると、確信している」 なんて、いまや誰も信じていないマルクス主義の死語まで持ち出してその意義を盛っています。
な~に言ってるんだか、現代でバリバリ現役の帝国主義国家はロシアと中国でしょうが。
ついでに国の富の大部分を軍備に投じるっていう軍国主義をやらかしているも、あんたの国です。
とはいえ、初代からかれこれ70年間も使っているビジネスモデルですから、手脂でヌラヌラと黒光してもう変更できません。
実は、核による脅迫に対しての対応はひとつしかありません。
かつてのシンガポール米朝首脳会談直前に北のチェ・ソンヒ外務次官が「核対核で対決するぞ」という核脅迫発言をしたことがありました。
この核脅迫に対するトランプの対応。
「あなたは自分の核戦力について語るが、米国の核兵力はあまりにも大規模で強力で、私はそれが決して使われずに済むことを神に祈っている」
(トランプ書簡)
「われわれと会談場で会うか、『核対核の対決』で会うかは、全面的に米国の決心と行動に懸かっている」
(ペンス発言)
やるならやれ、米国はやりかえすぞ、そして勝つぞ、いいのかという意味です。これが正解。
北はこういう分かりやすい言語で語ってやらねばならない国なのです。
すなわち核脅迫に対しては核で応えるといういう話法で臨まないと、正恩は状況を正しく理解できません。
この正恩の瀬戸際外交、言い換えればマッドマンセオリを見抜いたのがトランプでした。
おまえがマッドマンのふりをするなら、オレの方がはるかにほんとうのマッドマンだ、試してみるかいと言い、軍事的圧力と制裁をかけ続けたのです。
そしてトランプに尻を炙られるようにして正恩は狸穴から引きずり出されましたが、会談の席上でも北はゴネまくって、あっさりボルトンに見抜かれて交渉の席を蹴られてしまいました。
その直後、正恩はプーチンと会談するのですか、プーチンから冷淡な対応をされるというオマケをもらいます。
この核脅迫はウクライナ戦争でロシアも用いました。
バイデンは始めからロシアの核に恐怖していることを公言する人物でしたからこの脅迫に引っ掛かって、戦争冒頭から米国は介入しないなんて言ってしまってロシアを歓喜させ、その後ウクライナ支援も五月雨的にするという度し難い失敗をしてしまいました。
本当にケンカ下手な人物です。
さて、いまや朝露の力関係は逆転しました。
ロシアが喉から手が出るほど欲しいのは、武器、なかんずくローテクの大砲の砲弾です。
ショイグ国防相は、今年7月、北朝鮮がコロナのパンデミックにより国境を封鎖して以来、初めての外国高官として北朝鮮を訪問しました。
米国務省は、このショイグは正恩に弾薬の供与を要請し、両国での合同軍事演習の実施も打診したと述べています。
今回、正恩はこのショイグとも会談しています。
ロイター
「[ウラジオストク(ロシア) 16日 ロイター] - ロシアを訪問している北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記は16日、ウラジオストク郊外でショイグ国防相の出迎えを受け、核兵器を搭載可能な戦略爆撃機や極超音速ミサイル「キンジャル」を視察した。
金氏は戦略爆撃機の「Tu─160」、「Tu─95」、「Tu─22M3」を視察。ショイグ氏はこのうちの1機について「モスクワと日本の間を往復できる」と説明した。
金氏は爆撃機からどのようにミサイルを発射するのかと質問。ロシアの当局者は、こうした戦略爆撃機がロシアの核戦力部隊の柱の一つになっていると述べた。
金氏はその後、ウラジオストクでロシア太平洋艦隊の艦船を視察した」
(ロイター2023年9月17日)
金正恩氏、戦略爆撃機や極超音速ミサイル視察 ショイグ氏が案内 | ロイター (reuters.com)
ロシアは正恩に、プーチンはロケットを見せ、ショイグは戦略爆撃機と超音速ミサイルと艦隊を見せたというわけで、実に分かりやすいメニューを開陳したものです。
どうだ、坊や大砲の弾をくれたらこいつらの一部をわけてやってもいいんだぜ、というわけです。
というのは、今、ロシアは深刻な大砲の弾不足に陥っていますが、国内生産はパンクしており、供与してくれる外国はいません。
ロシアはウクライナに軍事侵攻し、大量の武器を消費していますが、経済制裁を受けているため、思うように国内で武器弾薬の製造できないのです。
中国がとばっちりを恐れているために、ロシアに軍事協力しているのは、世界で唯一イランですが、それも戦闘用ドローンに限っています。
核開発完成寸前のイランも、この時期西側と不必要にもめたくはないからです。
いままでロシアがかろうじて戦線を均衡できたのは、「戦場の女神」と呼ばれる大砲とその砲弾のストックを潤沢にあったからです。
ウクライナ軍が1発撃つと10発返ってくるといわれたほどの砲撃力の差は、ひとえにこの弾薬の備蓄にありました。
「ワシントン(ロイター)-ロシアは今後数年間で砲弾の生産を年間約2万発に増やすことができる可能性があり、モスクワのウクライナ戦争のニーズにはまだ遠く及ばない、と西側当局者は金曜日に述べた。
匿名を条件に語った当局者は、ロシアが昨年ウクライナで10万から11万発の発砲をしたと推定した。
「昨年10万発を費やし、戦いの真っ只中でありながら年間2万発しか生産できない場合、それはそれほど強力な立場ではないと思います」
(ロイター9月9日)
ロシアは大砲の生産を増やしているが、まだ不十分であると西側当局者は言う|ロイター (reuters.com)
一方、いまや遅まきながら米国は大増産にとりかかっており、155mm砲弾の生産量は2025年までに月産9万発に到達する予定で、国防総省の調達担当者は「155mm砲弾の増産ペースは予定よりも早く進んでいる」と述べています。
というのは、さすがの米国もひと頃、深刻な155ミリ榴弾の在庫が不足してしまい、その代替としてたっぷり抱えている(300万発)クラスター弾の供与で凌いだからです。
NATOの約束した砲弾生産量(年間100万発)の状況は不透明なものの、月8万発程度の砲弾供給量を欧州企業が確保すれば2025年に月18万発のウクライナへの供給体制が見えてきます。
この西側のそ胡散体制が本格化した場合、もはやロシアは唯一の頼みの砲撃力で完全逆転されてしまい、永遠に戦場での優位を回復できないでしょう。
そこで、プーチンは恥も外聞もなく正恩の足元にひざまずいたというわけです。
世界最強を誇ったロシアが、世界最貧国にひれ伏す、嗚呼、落ちぶれたくはないものです。
残るは、支払い条件ですが、イランはロシアとの取引でルーブルでの受け取りを拒否しているようで、米ドルかゴールドでの支払いを要求していると言われています。
ロシア国内でしか使えないような紙屑はいらんということで、実にドライです。
おそらく北も同じことを言うはずですので、おそらくバーター決済になるか、原油払いとなるでしょう。
ほんの1年半までは、こんな屈辱的なことは想像もつきませんでしたね、プーチン閣下。
再稼働をめぐっては全国各地で30を超える原告団が結成されて、各地の地裁で「勝利判決」が出ています。
たとえば、2016年3月に大津地裁運転差し止め判決がありました。
こんな判決です。
「関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)は安全性が確保されていないとして、滋賀県の住民29人が再稼働差し止めを求めた仮処分申請で、大津地裁は9日、関電に運転差し止めを命じる決定を出した。山本善彦裁判長は「過酷事故対策などに危惧すべき点があるのに、安全性の確保について関電は主張や証明を尽くしていない」と判断した。仮処分決定は直ちに効力が生じるため、関電は運転中の3号機を10日に停止させる。
高浜3、4号機の差し止め決定は昨年4月の福井地裁に続き2件目。運転中の原発を止める仮処分決定は初めて。
関電は決定を不服とし、異議と執行停止を申し立てる。3号機は10日午前10時から出力を落とす作業を始め、同日午後8時に停止する予定。
山本裁判長は決定で「東京電力福島第1原発事故の原因究明は道半ばだ」と指摘。事故を踏まえた新規制基準の過酷事故対策について、「関電の主張や証明の程度では、新規制基準や(原子力規制委員会が審査で与えた)設置変更許可が、直ちに公共の安寧の基礎になると考えることをためらわざるを得ない」と述べた」
(時事2018年3月9日)
なにが「原因究明は道半ばだ」っての。
大津地裁運転差し止め判決 その1 山本裁判官の「法の名の下の無法」: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)
大津地裁運転差し止め判決 その2 電力会社は今後の抑止のために損害賠償訴訟をすべきだ: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)
大津地裁運転差し止め判決 その3 日仏原子力規制を比較してみると: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)
これを原告団は「画期的判決」などと歓喜していましたが、確かにこの人らとは真逆の意味で「画期的」なことには違いありません。
http://news.ameba.jp/20160309-632/
山本善彦裁判官はたった4回の審理で、ろくに専門家も呼ばないまま安全基準の検証などきれいさっぱりスルーして出した判決がこの再稼働差し止め仮処分命令でした。
いやー、専門家が何年もかかって再稼働を認めたものを、一瞬で覆せるってわけで、この裁判官神の如き人ですな。
そもそも仮処分などは金銭債権者が倒産しそうな債務者の財産を急いで差し押さえる時になど使われる法律です。
あくまでもその本旨は経済案件に使うもので、仮処分というから仰々しいのでなんのことはない倒産、夜逃げ、ローン破産などで使ってきた法律なのです。
それを社会のエネルギーインフラの稼働の可否に適用するというのですから、筋違いも甚だしいんじゃありませんか。
裁判官も法曹なら、こんな勘違いなことを裁判所に訴えるな、とたしなめるべきなんですが、運動家と一緒になってワッショイ、ワッショイ、原発再稼働をゆるさないぞぉ、なんてやっているんですから、困った君です。
これでは原子力安全行政の権限を持つはずの原子力規制委員会の頭越しに、裁判所が原発の運転の可否を決めていることになります。
原子力規制委員会は、会計検査院と同等の独立性を担保された国家機関なことをお忘れか。
規制委員会は、「内閣からの独立の地位」を与えられて原子力の規制・監視を しているわけです。
言い換えれば「政治からの独立」がなければ、原子力の規制監視は素可能なのです。
ところが、この大津地裁判決は脱原発派への政治的従属を選んでしまいました。
まるで裁判官は、原発の再稼働権限をただの裁判官の個性や思想に左右される属人的なもののように扱っています。
つまりこの大津地裁判決は、再稼働について唯一権限を与えられた原子力規制委員会の独立性に対する著しい侵害なのです。
まるで司法はスーパーバワーをもって、三権の上に超越しているとでも思っているのでしょうか。
原子力規制委員会の決定は、政府はおろか、国会ですら取り消せないことを思い出して下さい。ん
それほど規制委員会は専門家を結集し、専門家を集めて原子力施設の安全性を徹底検証しているのであって、その厚みを知らない者のみが、たった4回の短期審理で専門家不在のまま判決をデッチあげられるのです。
福島事故の時の、素人政治家の事故処理介入による混乱を反省して、政府は任命権者であっても、指導することはできない独立した機関を作ったのです。
このような行為を、越権行為、あるいは「法の名の下の無法」と呼びます。
山本裁判官は、原子力規制委の独立性を侵害することで、せっかく出来た福島事故を総括して生まれた規制委員会の新安全基準など「緩やかにすぎて合理性を欠き、適合しても安全性は確保されていない」と簡単にひねり潰したのです。
唖然とするような傲慢さと無知です。
しかし、わが国では司法の構造上できてしまいます。
そしていったん放射脳の裁判官にあたったら最期、いくつも出て、その都度再稼働は動いては泊まり、止まっては動くを繰り返すことになります。
その結果、電力は恒常的に不足し、どこか一カ所の狩意句発電所が停止したりすれば、2018年の北海道大停電のような事態を引き起します。
今回の海洋放出についても同じことが起きないとは言えません。
海洋放出についてどこかの「市民団体」が放出停止の仮処分命令を提訴した場合、オカシナ者がゴマンといる地裁判事で同調して仮処分命令を出さないともかぎりません。
どうしたらよいのでしょうか。
電力会社と政府が唯々諾々と訴訟を待っているのではなく、「汚染水」あるいは「汚染海産物」などと発言した団体を提訴することです。
この大津地裁差し止め判決によって、関西電力は原発停止による1日5億5千万円といわれる損害を被り、管内の電気料金値下げは不可能に追い込まれました。
このような「基準外的圧力」による原発停止に対しては、電力会社はその失われた損失の対価を原告団に請求すべきです。
こんなことが司法にできるのならば、沖縄米軍基地使用差し止め仮処分、自衛隊職務執行差し止め仮処分なんかも可能かもしれません。(もちろんできませんので念のため)
こういう法を借りた無法行為を起こさせないために、風評をばらまく団体やメディアに対して法的措置で臨むべきです。
事故直後には幅広い層に共感をもたれていた脱原発運動ですが、いまはかつてのような勢いは完全に失せています。
その理由は色々ありますが、代替エネルギーについてリアルな提案ができなかったこともあるでしょう。
現実には9割弱が化石燃料に依存する国になっているにもかかわらず、初めからその代替は再生可能エネルギーで「決まり」だからです。
現状日本は9割、化石燃料依存ですぞ。それを太陽光で決まり、みたいに言われてもねぇ。
下の2枚のグラフを見てください。紫の原子力がグラフ右端では消滅して、替わりに火力のピンク色が激増しているのがわかりますね。
これが、「原発ゼロ」の現実です。
同時に、電力会社は燃料コストの増加によって、電力料金を値上げせざるをえなくなっています。
(図 東電HP)
このシビアな現実をいつまで続けていくつもりなのでしょうか。電気料金の値上がりは、2011年から消費税5%分に等しいと言われています。
まちがいなく、この電力高騰と薄氷の電力供給態勢は、日本のデフレ脱却の足をモーレツに引っ張っています。
このたいへんな状況に対する偽薬が、再エネです。
電力は、原子力だろうと、火力だろうと、はたまた再エネだろうと、消費者にとって、要は電力を安く安定供給してくれることが一番なはずなのに、電源選択こそが至上の命題であるかのような錯覚を作ってしまいました。
この無関係なふたつを強引に結合させてしまったのが、「東電悪玉論」、あるいは「東電戦犯論」と呼ばれる東電バッシングです。
つまり、飯田哲也氏あたりにいわせると、こういうロジックになります。
「東電という極悪な会社が、政府から原発と引き換えにして、まるで幕藩態勢のような地域独占を与えられて肥え太り、競争相手がいないのをもっけの幸いにしてクソ高い電気料金を課し、そのくせ原発の安全に注意しなかったためにフクシマ事故を起こしてしまった」
こんな東電は潰してしまえ。そして独占を解体して、市民参加の出来る再エネにチェンジしよう、そのためのロケットブースターがFIT(全量固定価格買い取り制度)だ、と言うわけです。
(1)電力制度批判
①電力会社は地域独占体制で利益を貪っている(電力会社幕藩体制論)
②電力会社は総括原価方式でコストを電力料金になんでも転嫁できるので原発を国の言うままに量産しまくった(総括原価方式特権論)(2)東電バッシング
③電力会社は事故を未然に防げたにもかかわらず、対策を怠ったために大事故を起こした(福島事故事前防止可能論)
④事故に際しては現場から撤退を図った(東電撤退論)(3)原発再稼働反対
⑤全原発も直ちに廃炉にするべき (再稼働阻止)(4)再エネ普及のためのFIT推進
⑥原子力がなくとも、省エネと安全・安心な再エネがあるので大丈夫だ(再エネ代替論)
➆再エネ普及のためのFIT推進(5)電力自由化
⑧電力会社の特権を剥奪し、電力市場を開放しろ(電力自由化)
スッと読むと納得しそうですが、こうして区切ってみるとまったく別の次元の論議が雑然と積み重なっているのが分かるでしょう。
最後の電力自由化論に至っては、原発とはなんの関係もありません。
それを強引に接着しているセメダインが、「東電憎し」「東電極悪論」です。
だから、反原発派にとって、ナニガなんでも、福島事故は極悪の東電が安全を怠ったために起きた人災でないと困るのです。
念のためにお断りしておきますが、再エネ自体が間違った技術だと言っているわけではありません。むしろ非常に面白いし、はまる所にはまれば大変に有力な電源です。
ただし、それは以下の条件が必要です。
①水量が豊か、風が強いなどの自然条件に合った地域特性が利用できる場合
②長い送電網を通して消費地に送るという送電ロスがなく、地場で費消できる条件
③発電の不安定という宿命的な欠陥を補うための蓄電設備
これらの条件が揃えばいいのですが、現実には実現が難しい。
ですから、再エネに対する過度な思い入れによって、まるで原子力にすぐに取って替われるというような幻想は持たないことです。
再エネは、使い方を間違えねば、漢方薬のように社会の体質を変えるいい薬ですが、世界トップクラスの工業国のベースロード電源になるような代物ではまったくありません。
今の反原発派が主張するように、ベース電源全部を再エネに入れ換えるといったやり方をすれば、ただの偽薬となって、かえって症状を悪化させるだけです。
そしてこのような脱原発運動は、急速に国民大衆から離れてただの左翼運動に転落していきました。
つまり党派の囲い込みとドグマ化です。
山本太郎はこう述べています。
「脱原発派だけどTPP賛成というのは嘘つき」「TPP推進派は『向こう』に行ってくれたらいい。逆に『こちら』の空気を醸し出しながら中立を装うのが一番怖い。それでは第2、第3の自民党だ」
(ニューズウィーク 2014年2月11日号同)
このような自分の主張のみが正しいとするカルト化傾向に対して、運動初期の指導者だった飯田哲也氏はこう警告しています。
「挙げ句の果てに運動の『セクト化』が進み、互いを罵る悪循環に陥った。まるで革命を目指しながら、内部分裂と暴力で崩壊した連合赤軍のようだ」
『最初はみんな熱く盛り上がるが、熱が冷めて自分たちが少数派になるにつれ、運動が純化し極論に寄ってしまう』」
(ニューズウィーク2014年2月11日)
あるいは、福島県出身の社会学者・関沼博氏の表現を使えば、もっと手厳しくこのように述べています。
「あたかも宗教紛争のようだ。
脱原発派科学者の筆頭だった飯田でさえ自然エネルギーの穏やかな転換をとなえただけで隠れ推進派として攻撃される。
「事故当時は女子中学生で、運動参加者から脱原発アイドルと呼ばれる藤波心も『なぜか原発推進派』と批判されたことがある。『こだわりすぎて自分の活動に酔いしれるだけでは原発はなくならない』と藤波は指摘する」
(ニューズウィーク前掲)
ここで出てくる藤波氏というのは、当時脱原発アイドルだった藤波心さんのことですが、彼女を誹謗した人たちは、「原発はなくならない」ということなどということは、とうに折り込み済みなはずです。
なぜなら、原発がなくならない限り運動対象は不滅だからです。
原発がなくならない以上、永遠に脱原発運動も組織も存在する理由があり、運動の中心にいる左翼政党はそれによって党勢拡大の手段にできると思っているからです。
もし、本気で原発をなくしたいのなら、デモなどするより、原子力に替わるエネルギー源の開発のための研究を真面目にしたほうが、よほど現実的なはずです。
そして、その代替エネルギーが実用化するまで電力会社が体力を維持できるように暫定的に安全性を規制委員会から認められた少数の原発を稼働してつないでいくというのが、現実的な選択なはずです。
しかし、この脱原発運動家たちは、本気で原発をなくすつもりがないとみえて、街頭で「再稼働反対」と叫ぶことが、ただひとつの脱原発の道だと信じているようです。
そして、自分ひとりが叫ぶだけならまだしも、徒党を組んで、時間をかけても本気で原発をなくそうと考えるような人間たちは「原発推進派だから向こう側」であり、つまりは「敵」であり、フンサイ対象なのです。
なんと不毛なことでしょうか。
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