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2023年3月21日 (火)

「隠し砦の三悪人」と小西議員

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小西氏と、この文書に顔を出す「隠し砦の三悪人」の顔ぶれのつながりがあぶり出されてきました。
なんのこたぁない、小西氏まで含めて彼ら全員が仲良く旧郵政省派閥に属し、通信政策局総務課上司、同僚という密室的関係です。

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【顔画像】小西文書の作成者は誰か|捏造ではないかと話題に (miyamatakeru.com)

このかつての上司と同僚は3名です。


・西潟暢央データ通信課長
・長塩義樹放送政策課長
・安藤友裕情報流通行政局長

以下、3名のプロフィールについては、miyamatakeru.com)を参考にさせていただきました。ありがとうございます。

西潟氏はこのような人物です。

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西潟暢央データ通信課長 

その後西潟暢央データ通信課長は総務省内の課をいくつか歴任した後、2008年には「総務大臣政務官事務取扱」(政務官と同じ役割)という、大臣の補助をする役職に抜擢。
実務では、組織のオンライン化やクラウド化を推進する役割を担った。

次に長塩義樹放送政策課長。

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長塩義樹放送政策課長

大阪大学法学部を卒業後、1988年に当時の郵政省に入庁。
情報流通行政局地上放送課長を経た後、「小西文書」が作成された2015年には放送政策課長。
2020年には東海総合通信局長となり、2022年に同職を退いており退職したとみられる。

3人目は、安藤友裕情報流通行政局長。

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安藤友裕情報流通行政局長

東海総合通信局長を経て、2012年には東海総合通信局長などを歴任し、2019年に総務省を退職し、同年からNTTコミュニケーションに天下り。
ちなみに、NTTドコモの電波回線を総務省が管理していることもあって、NTTグループは総務省の天下り先の代表格です。

そして4人目が、この文書を「暴露」し、いまや隠れもしない「小物世界の大物」と称されるコニたんこと小西ひろゆき議員。

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小西 洋之

1998年3月、東京大学教養学部教養学科卒業。同年4月、郵政省に入省。通信政策局総務課に配属される。郵政官僚時代はITベンチャー支援をはじめ、情報通信政策などに携わるほかに農林水産省や経済産業省へ出向したという経歴の持ち主です。
在職中は「隠し砦の三悪人」と同じ部局にいたと思われます。
誰がどう見ても、このルートで漏洩したとしか思えません。

たぶん総務省旧郵政省派の「隠し砦の三悪人」の誰かが、小西氏に耳うちして「小西文書」を見せた。
小西氏のほうから「何か高市を叩ける材料をくれ」といったのか、官邸支配を嫌悪する総務省側が言い出したのは不明。
いずれにしても出された「第一級の行政文書」に、小西氏は大喜びで飛びつき、柳の下の4匹を狙った。
しかし、漏洩された総務省はビビった。
国家機密漏洩罪、守秘義務違反、歪曲していたらもっと罪は深くなって、総務省は組織解体の危機に陥る。
そこで今回の調査報告を出して、連座するのはお断りだという組織防衛に走った。
そうは大きくハズれていないと思いますよ。
さぁどうするね、小西クン。

総務省はもっとも大きな利権を抱えている省庁です。
省庁利権さえ確保しておけば、自由自在に民間企業を操れるだけではなく、官僚の天下り先をキープできます。
総務省利権の源泉は電波利権、即ち総務省が放送と携帯の電波帯を無料で割り当てる形とすることで、新たに電波が欲しい事業者や、すでに電波を持っていて既得権を守りたい事業者の首根っこを握ることができます。
だから民間の放送事業者は、東北新社やNTTによる高額接待問題のような総務省官僚への接待を繰り返すのです。

本来は欧米のように電波ビジネスは、電波オークションで公平に入札額で決定すべきですが、それを行わず総務省が割り当て制度にしています。
この安価な割り当てによって最も恩恵を受けてきたのは大手新聞社やテレビ局です。
事業収入に占める電波利用料はNHK0.28%、フジテレビ系0.11%、日本テレビ系0.18%にすぎませんから、テレビ業界ほどほとんど濡れ手に粟の商売はないといってよいでしょう。

そしてもうひとつのコントロールの手段は、今回の「小西文書」に登場した放送法です。
いまは高市氏が総務大臣時代に「電波を止めることができる」と言ったたとが蒸し返されていますが、ほんとうに総務省を支配下に置いたのは、菅元総理の総務大臣時代でした。

たとえば、関西テレビの『あるある大事典II』の納豆データ捏造が大問題となると、菅氏は直ちに「電波停止もありうる」と発言して行政指導としては最も重い警告を出しました。
またTBSの『朝ズバッ!』でも不二家に関する捏造報道が起きると、放送局が事実と異なった報道をしたとして、総務大臣が放送局を行政処分できる内容の放送法改正案を提出しました。
政治的公平というアツモノではなく、情報バラエティで放送法改正を言い出すとは、さすが菅氏です。

結局、改正には至りませんでしたが、菅氏がテレビ業界から恐怖の眼で見られたことは確かでしょう。

今回、菅氏はなにも発言していませんが、その意見を聞きたいものです。

ところで、夕刊フジが世論調査しました。
調査数は1万千ですから、まずまず信用がおける数です。

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「注目のアンケートは17日昼から18日朝、夕刊フジ編集局ツイッターで行った。1万6783票の回答があった=別表。89・7%が、司直の捜査や証人喚問などを求め、《ここまで来たら喚問や刑事告発で白黒つけるべき》《早く地検なり警察の手に委ねて真相を捜査することが最善》《徹底的に真相究明》《東京地検特捜部の捜査待ってます》などの声が相次いだ 」
(ZAKZAK3月19日)

国会喚問に応じるのですね。

 

2023年3月20日 (月)

総務省みずから信憑性がないと言ってしまう

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そろそろ全体像が見えてくるのかな、また総務省が「正確性に係わる精査」文書を出してきました。
総務省|「政治的公平」に関する行政文書の正確性に係る精査について (soumu.go.jp)

小西氏は高市氏に対して、「捏造だというなら証拠を出せ」と言ってきたわけで、「大臣レク」があれば高市氏は即ギルティという論法です。
高市氏は正確にはこう言っています。

小西委員が入手された文書の信憑性に、私は大いに疑問を持っています。もし私と安倍総理の電話の内容が文書に残っているとしたら、私の電話に盗聴器でもついてるのでしょうか?大臣室に盗聴器がついてたとしても、安倍総理がなにをおっしゃったのかは入らないはず。まったくの捏造文書だと考えております」
「それはもう捏造でしょう。(そもそも)安倍首相は首相在任中は、いくら電話やメールをしてもかかってこない。何日かたって『何度も電話をもらってたよね』と言われるぐらいだった」
「安倍首相は放送法にも強い関心はなかったので、私と放送法についてちゃんとすり合わせていれば、安倍首相と私の委員会での答弁が食い違うことはなかった」
「どういう作り方をしたらあんな変な文書ができるのか。私のしゃべり方とも全然違う

(参院予算委員会3月4日)
高市氏「安倍氏は放送法に強い関心なかった」 総務省文書 - 産経ニュース (sankei.com)

安部氏は当時安保法制に集中したかったし、こういう放送法がらみでやっても意味がないと思っていたようです。
だから、仮に磯崎氏が放送法の手直しを進言しても相手にしなかったはずです。

まぁそれはそれとして、やっぱり私は高市氏が「信憑性に疑問がある」で止めておくべきだったと思いますね。
「議員辞職」を口にする必要はまったくありません。
小西側が言葉尻を取り上げて、文書がホンモノだったら辞めると高市は言った、無罪証明を出せ、という短絡論法に持ち込みたいのは明らかだからです。
モリカケで使い古された手ですよ、これは。
ですから、モリカケサクラで騒いだ野党やメディアの連中が、そっくりそのままの構図で騒ぎだしたのです。

Gyoseibunsho

小西ひろゆき氏

森友問題は故安部氏が「関係していたら辞める」と言った揚げ足取って、延々と追及して国会を空転させたのですが、こういう言い方をすれば、必ず野党とメディアは「疑われた側の安倍総理が無実の証拠を出す必要がある」という言い方で追い込もうとします。
あの人たちは、スキャンダルでしか政府を攻撃できない哀しい生き物なのです。

高市氏は、こういうところまで安部氏を模範にすることはありません。
総理を目指すのなら、もう少しぬらりくらりといった老獪さをおぼえられたほうがいいでしょう。


さて、漏洩された側の総務省は、こういう小西氏の追い込み方に恐怖心を覚えたのでしょう。
この文書が出たのは、旧自治省と旧郵政省との確執が遠因でした。

総務省大臣室に勤務していた高橋洋一氏はこう言っています。

「行政文書だろうと。あまり内容のよくないものだということはわかりました。正しいと思って私は読んでいたのですが、よく読んだところ、総務省のなかの、旧郵政省と旧自治省の争いが官邸までいったということです。磯崎補佐官は旧自治省の方です。
山田秘書官は旧郵政省の方ですから、そこでバトルしているだけの話です。
総務省内の話が官邸まで及んだ。特に高市さんは総務大臣でしたから、すぐにわかるのです。でも、「そんなところには関わらない」というスタンスだったと思います。ほとんど関心がない感じです。片寄せすると、一方の肩を持ってしまうことになるでしょう」
総務省『内部文書』の背景にある「旧郵政省と旧自治省の争い」 高橋洋一が指摘(ニッポン放送) - Yahoo!ニュース

つまりは総務省の旧郵政省閥が、旧自治省だった磯崎補佐官を貶めたかったので、彼を「ヤクザ」と悪しざまに書いた文書を流出させたようです。
高市氏はそんなことに関心がなかったし、介入する気もなかったのに、安部氏の後継者と見られたばかりに首を狙われてとばっちりを食ったのです。

問題はむしろ総務省側です。
高市氏が議員辞職に追い込まれでもしたら、国家公務員守秘義務違反、機密漏洩で問われるのは総務省の側だからです。
いまは黙っていますが、さすがの岸田さんも大臣が故なきことで首をとられれば、政府側は総務省の漏洩責任を問うでしょうから、総務省は大きな打撃を受けることになります。
そこで、総務省は自己保身の本能に従って組織防衛に走ったようです。
それがこの調査文書の公開です。

では、総務省調査をみていきます。
全文を書き起こしておきます。太字は引用者です。

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●「政治的公平」に関する行政文書の正確性に係る精査について
総務省が 3 月 7 日に公表した、放送法に定める「政治的公平」に関する行政文書の正確性について、文書に示された関係者に対し、総
務省職員が聞き取りを行うなどし、文書の作成者、発言者の確認の有無、作成経緯等を精査した結果は以下のとおり。

1 精査の対象とした文書
・総務省が 3 月 7 日に公表した全ての文書

2 文書の作成者等
・文書を構成する全 48 ファイル中(別表参照)、22 ファイルは作成者が確認できたが、26 ファイルは作成者が確認できていない
・また、発言者に対する内容の確認が行われたことが確認できたものはなかった。

3 文書中の不自然・不一致等(例)
① H.27.3.6 「大臣レクの結果について
安藤局長からのデブリ模様」の資料
作成者不明、形式が「聞き取り」

→文書整理 No.39 (P66)
山田秘書官(3/13(金))高市大臣から「総理」か「今井秘書官」に電話→文書整理 No.43 (P71 一つ目の・)、作成者不明
また、平川参事官の連絡 (3/9( 月 )) から山田秘書官の連絡(3/13(金))まで 4 日の期間
文書の作成経緯が特に不明なもの→文書整理 No.42、43
⑤ やりとりが記録された文書の記載上、正確な時刻が不明のもの
(一部再掲)
→文書整理 No.12、36、39、42
文書の作成者が不明のもの(一部再掲)
→文書整理 No.1、5、7、11、13~15、18、20、22、26、28、31、33、35、36、38~43、45~48

4 その他の精査の状況
礒崎補佐官関連
・礒崎補佐官から放送法の政治的公平に関する問合せ自体があったことは確認された。
・本件の過程で、強要などがあったとの認識は示されなかった。

・文書に記載されている打ち合わせの回数や個々の発言の内容が正確であるとの認識は示されなかった。
② 高市大臣関連
・引き続き精査を実施中。
③ 安倍総理関連
・引き続き精査を実施中。
※ 役職・肩書は全て当時のもの
000867909.pdf (soumu.go.jp)

うーん、なんといっても致命的なのは、この下図の全78ページの文書と48個のファイルのうち、作成者不明が3分の2に当たる50頁もあったことです。

文書の作成者が不明のもの(一部再掲)
→文書整理 No.1、5、7、11、13~15、18、20、22、26、28、31、33、35、36、38~43、45~48


これは痛い。

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ファイルの対応表

率直に言えば、ここまで作成者がわからないものを唯一の根拠として、国会で大臣を追及しようとした小西氏の行動は、ハナから無理があったのです。
大臣ひとりの首を獲り、さらには任命責任で政権を打倒しようと思っているのでしょうから、詰めが甘い。

総務省は既に「行政文書ファイル管理簿 にはない」と答えているわけで、その理由はひとつしか思い浮かびません。
「小西文書」が、たんに管理簿(台帳)に載せるまでもない私的なメモだったことです。
もし、小西が豪語するように「第一級の行政文書」だったなら、それは議事録、復命書、稟議書のようにきちんとした文書様式があり、日時がない、作成者も欠落し、罵倒語もあるようなものを作るはずがありません。

したがって「小西文書」とは、官僚が心覚えに書いて、部局内で回したていどのメモだったとかんがえるのが自然です。
小西氏が主張するように、「行政文書の管理簿に存在しない「極秘文書」だからこそ、提供者はこの文書を私に託した」などとという超機密文書にはとてもじゃありませんが見えません。
あれが「極秘文書」ですか、ぶはは、ご冗談を。
おそらく漏洩したほうも、かつての同僚だった小西氏に、「こんなもんもあるけどね」程度で見せたら、勝手に国会に持ち出されて、国会が空転する騒ぎにまで発展した、といったところでしょう。

さもなくば、池田信夫氏が言うように「官僚のクーデター」です。
こちらだと根が深いし、総務省の「前川喜平」の可能性も捨てきれませんが、現時点ではなんともいえません。

調査の結果、総務省はかんじんの高市大臣関係では、「問い合わせはあったが、強要はなかった」としていますから、磯崎氏はもちろん、高市氏や安部氏などは蚊帳の外でした。
内容も前回文書にあった、高市氏の発言などの回数や個々の発言の内容が「正確であるとは認められない」としています。
なんだ高市氏の「信憑性がない」という見方そのままじゃないですか。
総務省も漏洩文書が信憑性に乏しいと認めているのです。

礒崎補佐官から放送法の政治的公平に関する問合せ自体があったことは確認された。
・本件の過程で、強要などがあったとの認識は示されなかった。
・文書に記載されている打ち合わせの回数や個々の発言の内容が正確であるとの認識は示されなかった。

なんだ作成者が不明な上に、そこで言っていることの回数も内容も正確ではないということですか(脱力)。
しかもこの文書は行政文書ファイル管理簿には載っていないそうです。
はれほれ、ゼンゼンだめじゃん。

宮本岳志「この文書はどのような形で保存されていたのか」
総務省「総務省で電子的に保存されていた。確認した結果【”行政文書ファイル管理簿”への記載が行われておりませんでした】

小西さん、もう投了でしょう、これは。
かつての同僚に文書漏洩を頼んだことを白状して、楽になっちゃいなさい。

 

 

2023年3月19日 (日)

日曜写真館 たくましき光にめしひ鐵はこぶ

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はなうめのくれなゐに童が鉄かま 飯田蛇笏 

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ぐひすや火の籠りゐる鉄の色 石田郷子

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三日月の鉄牛牽きて戻りけり 齋藤玄

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叱咤する他なき寒さ鉄を積む 中田勘一

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春暁の鉄軋ませて電車発つ 畑佐白城子

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吹きつけし霧にたちまち冷ゆる鉄 宇佐美魚目

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春暁の鉄軋ませて電車発つ 畑佐白城子

S055

はくれむの負ふ錆び色は鉄の性 栗生純夫 

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北風に打つ鉄の皮ぽろぽろと 右城暮石

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夜の鉄に言葉鋭き男達 小倉清二郎

 

 

2023年3月18日 (土)

北朝鮮核武装を阻む3つの障壁

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北朝鮮がまたまたまた(以下略)弾道ミサイルを発射しました。
いかんと思いつつ、いまや日本国民はおしなべて馴れっこになりつつあります。 

ロフテッド軌道で打ち上げられ、北は自ら火星17号であると称しています。
また現在行われている米韓合同演習フリーダムシールドを「軍事的威嚇」だと非難し、これはそれに対する警告だとしていますが、無視しましょう。
合同演習をしようとしまいと、彼らは撃つのです。ウクライナに関心が集まっている内に撃たなにゃ損々ということです。

 発射は平壌国際空港(順安国際空港)から日本海に向けて行われ、公表された飛行性能の数値は以下の通りです。
・最大高度6045km
・水平距離1000.2km
・飛行時間4151秒(約69分)
北朝鮮今年2発目のICBMは火星17(JSF) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

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レッドライン越え譲歩迫る 北朝鮮「ICBM発射」 - 読んで見フォト - 産経フォト (sankei.com)

ロフテッド軌道などという特殊な用語が説明なしで通じるくらい、よく撃ってくれました。

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火星14の仕組みはこうなっています。

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hwasong-14 火星14 (weapons-school.mods.jp)

注目願いたいのは、先端のシュラウドと呼ばれる部分です。
シュラウドとは、弾頭を覆って熱から守るカバーです。
これが、ミサイルにとって非常に重要です。
下の写真は弾頭の模型を見る正恩です。

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北朝鮮がミサイル発射に失敗=韓国 - BBCニュース

どうしてカバー如きが大事なのでしょうか。
ミサイルが目標に接近して爆発した場合の効果は、弾頭の爆発力によって決まります。
その爆発力は目標をとらえてナンボです。

ロケットから分離された核弾頭が目標に到達できるかどうかは、一にかかって再突入(re-entry )の正否によります。
再突入に失敗すれば、弾道ミサイルはオシャカだからです。
たとえば、スペースシャトルにおいては、再突入開始時の速度はおよそマッハ25(30,000 km/h)、はやぶさ2き帰還カプセルでは12 km/s(43,200 km/h)で大気圏に突入しました。

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ベルカ宇宙軍 on Twitter

すさまじい高速ですが、これにより周辺温度は1万℃、カプセル表面では3000℃に達します。
とんでもない温度で、打ち上げても再突入を可能とするシュラウドの技術がないと、宇宙空間に行ったきりとなってしまいます。
いったん大気圏外に出たミサイルを、再度大気圏内に突入させねばただの「人工衛星」で終わってしまうのがおわかりいただけたでしょうか。

これでは、「地球観測にようこそ」で終わってしまいますが、もちろん正恩が欲しいのは米国に到達し、打撃を与えうる大陸間弾道ミサイルですから、再突入の技術がなんとしてでもなければなりません。
あいにくこの再突入は宇宙技術の中でも高い障壁だとされていますが、北は獲得したと言っていますが、ほんとうに保有しているかどうかは実証されていません。

次に、弾頭に複数の核弾頭(MIRV/Multiple Independently-targetable Reentry Vehicle・ マーヴ・複数個別誘導再突入体)を搭載できる技術があるかです。

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MIRV(多弾頭)
GEPR

というのは多弾頭にするには、核爆弾を小型化しなければならないからです。
この再突入と多弾頭化、そして核の小型化の3セットがないと、ICBM技術は出来上がったとは呼ばないのです。

「多弾頭型の大陸間弾道ミサイルの弾頭は、再突入ヴィークル込みで一体あたり200kg程度にコンパクト化しなければならない。こうすれば、一体の大陸間弾道ミサイルで、弾頭が6本は仕込める。そうすれば、一回のミサイル発射で6箇所の目標を同時に攻撃できる」
北朝鮮5回目核実験と日本の安保 – Global Energy Policy Research | GEPR 

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娘とミサイル見物に行く親父
WSJ

「北朝鮮は、一度に複数の場所を攻撃できる重い部品を搭載して、ICBMの発射を成功させたことを示していない。韓国航空大学校のミサイル専門家、Chang Young-keun氏によると、そうするためには、ICBMにポスト・ブースト・ビークル(PBV)を搭載する必要がある。PBVは地球の大気圏外でミサイルのメインブースターから切り離され、別々の標的に向けて複数の弾頭を放つ装置だ。これらの部品を合わせると、重量が最大2トン増え、ミサイルの飛行可能距離がおよそ1200~2500マイル削られる」
(ウォールストリートジャーナル2022年12月6日)
北朝鮮の新型ICBM、兵器として依然技術不足 - WSJ

現時点で、北朝鮮は搭載量と飛距離を伸ばしてはいますが、前述した3点セットが完成したという証明はできていません。

 

 

 

2023年3月17日 (金)

漏洩した者をさっさと刑事告訴しろ

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まだ「小西文書」で騒いでいますが、ほぼ決着はつきかかっているようです。
これが高市氏潰しが目的なのは明々白々ですから、これで高市氏が潰れたら総理の器ではなかったということです。
高市さん、一種の総理のためのストレステストを受けていると覚悟してください。

森友が始まったのが2015年、加計が始まったのが2017年、桜を見る会が2020年、実に3年間、延々と安部叩きにメディアと野党は狂奔していたのです。
この間メディアは、さも安部氏にはヒトには言えない悪事がある極悪人であるかのように連日報じたのです。

こういう空気の中から、山上某のようなテロリストが現れたのはけだし当然のことです。
安部氏はこのような激しい個人攻撃を満身に浴びながら、安保法制をまとめ上げ、特定秘密法を通し、いまや自由主義陣営共通の安全保障アーキテクチャー(構造)となったFOIPを作り上げたのです。
安部氏の後継者になるということは、即ちこのような個人攻撃を受け続けるという意味です。

さて、日刊ゲンダイは、「高市氏 孤立し"白旗"寸前か」と題して、こんな記事を載せています。
いつもながら、報道というよりアジビラだね。

「もうほとんど“詰んだ”のではないか。
 安倍政権下で作成された「放送法」の解釈をめぐる総務省の行政文書。記載のある「大臣レク」について、当時の高市総務相(現・経済安保担当相)は「受けるはずがない」とレクそのものを否定していたが、13日の参院予算委員会の集中審議で、総務省担当者が「レクは行われた可能性が高い」と真逆の答弁を展開したのだ」
(日刊ゲンダイ3月14日)
高市早苗氏は“白旗”寸前…総務省文書「大臣レクあった」に抗弁も官邸から見放され孤立無援|ニフティニュース (nifty.com) 月。

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小西ひろゆき氏

ゲンダイさん、なにが「白旗寸前」ですか(笑)。
岸田氏が閣僚である高市氏になんの手助けもしないのは事実ですが(彼も潰したいのでしょうが)、彼女の負けん気は日増しに強くなっていますぜ。
野党とメディアは、なぁ高市や、「レクを受けた」ということさえ認めれば、楽になるぞ、自白せぇや、カツ丼食べるか、とやりたいみたいです(笑)。
ところが彼女は屈伏する気などナッシング。
昨日なんか、とぼけた質問をした杉尾元TBSキャスターを「もう質問するな」とやり込めたばかりです。

ところで、先日の予算委員会の小笠原情報流通行政局長の国会答弁は悲惨でした。

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【画像】高市大臣が存在否定の“大臣レク” 総務省「あった可能性が高い」 高市氏は中身否定「言うはずもないことが…」 - ライブドアニュース (livedoor.com)

「作成者によりますと「約8年前のことでもあり、記憶は定かではないが、日ごろ確実な仕事を心がけているので、上司の関与を経てこのような文書が残っているのであれば、同時期に放送法に関する大臣レクが行われたのではないかと認識している」ということでありました。
一方、当該文書に記載されました同席者の間では、同時期はNHK予算国会提出前の時期であり高市大臣に対し放送部局のレクが行われたことはあったかもしれないが、個々のレクの日付内容まで覚えていないとするものがあり、必ずしも一致していない部分がございます。以上を勘案いたしますと、2月13日に関係の大臣レクがあった可能性が高いと考えられます」

わかって言っているのでしょうか、小笠原局長。
わかっているなら狡猾、わかっていないなら、局長、あんたバカだ。
局長が言っているのは2点。

①高市大臣レク結果の文章については、作成者によると、「約8年前でもあり記憶は定かではない」としつつも、「日ごろ確実な仕事を心がけており、上司の関与を経てこのような文書が残っているのであれば、同時期に放送法に関する大臣レクが行われたのではないかと認識している」とのことだった。
同席者の認識は必ずしも一致していない部分もあるが、以上を勘案すると、2月13日に放送法関連のレクがあった可能性が高い

これは証言ではなく、ただの憶測です。
したがって「可能性がある」もないも、無価値な発言にすぎません。
だってそうでしょう。オレはいつもしっかりした仕事をしているから8年前もしたはずだ、ただし記憶にない、なんて恥ずかし気もなくよく言えたもんです。

記憶になければないと言えばいいし、あればあったでそれを縷々言えばよろしいだけのことです。
あの場には6人いて、半分は知らないと答えて、残り3人の総務省官僚で意見が割れ、しかも確たる証拠文書もない。

フツー、そういうことは「可能性はない」と判断するのです。
無理に「可能性がある」と言いたいものだから、小笠原局長の答弁はこんな短い中で前段と後段がズレています。
「確かな仕事」をしていたなら、大雑把にでも内容を覚えているのは常識で、少なくとも何に対してレクしたのか、誰にしたのか、くらいは記憶に止まっているべきです。
この答弁を読んだ記者達の多くは、そんなことを忘れるかねぇと関心していました。
内容は忘れても、「したこと」はしっかり覚えているのがあたりまえだそうです。
6人もいたのですから、それを証拠づけるスケジュール表のひとつくらい見つけてもいいでしょうに。

共産党の宮本岳志議員の「この文書はどのような形で保存されていたのか」という質問に対して、「電子的に保存されていた。確認した結果、行政文書ファイル管理簿への記載が行われておりませんでした」、と答えています。
ならば、なおさらおかしい。
じゃあ、「小西文書」はどこにあって、どいう形態で誰が持っていたのですか。
結局、証拠となる裏付け資料はない、記憶はおぼろ、出席した者の意見もくい違う、しかし「レクした可能性が高い」って言うんですから、小笠原局長は高市氏になにか含むものがあるようです。

それとも誰か、たとえば「上司の関与を経て」というくらいですから、この「上司」をかばっているのでしょうか。
たぶんそんなところでしょうね。この漏洩事件はNTTに出向したようなペーペーじゃなくて、 総務省の上層部から指示が出ているはずです。
こういう時には、「可能性についてはお答えできません」と言うべきです。
なにか隠しているのは総務省官僚の側ではないのですか。
つまりあんな答弁に証拠能力はないのです。
メディアはこのあいまいな憶測発言を、まるで事実の証言のように報じるの「公正中立」とは言えません。

この文書自体にも不審なことがいくつかあります。
高市氏が「捏造」(後に高市氏はこの言葉はきついので訂正しました)と呼ぶように、高市氏の「電話」内容をどうして総務官僚が知っているのでしょうか
この部分です。

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「政治的公平に関する国会答弁の件について、高市大臣から総理か今井秘書官かに電話があったようだ。
・ 総理は「軽く総務委員会で答弁しておいた方が良いのではないか」という反応だったとのこと。
本件については総理が前向きであり、今井秘書官の指示で、菅官房長官には本件について相談していない。

ちっとちょっと、どうして高市氏の電話内容を知っているのよ。
総務省には大臣電話に盗聴装置を仕掛けているのですか。

なんで高市氏と総理の電話で、総理がこう言ったとわかるのでしょうか、不思議ですね。
これもまた憶測と忖度です。
彼ら官僚は、大臣など腰掛けですぐに通過していく軽くてパーの神輿のほうが都合がよいのです。
かつての民主党政権時の防衛大臣のように、専門知識皆無。くじ引きで大臣になったようなヒトなら理想的です。
大臣答弁の台本を渡せばいいだけの、カワイイ操り人形だからです。

一方、高市氏のような理念と骨があり、しかも総理直結のパイプまで揃った政治家がトップになられると、本能的に忌避します。
そういう優秀な政治家は、省益に反することもしかねないからです。
8年前、総務官僚たちは高市氏が放送法について従来の解釈とは温度差があることを知って怯え、足を引っ張ろうとしたはずです。
総務省とはっきり見解が異なる礒崎補佐官などに至っては、「総理に影響のない人物が激高して変なヤクザがからんだようだ」とまで感情的書かれ方をされています。

ここで問題は一転して総務省に投げ返えされます。
では誰が68枚もの「取り扱い厳重注意」指定の文書を、野党に流出させたのでしょうか。
小西氏が情報公開法の手続きをして入手したなら問題ありませんが、そうではなく総務官僚Xの手によって、特定の政治家に打撃を与えるために流出したとなると、問題は別です。

かつて防衛省の内部文書の取り扱いについて野党はさんざん追求したものですが、今回は「取り扱い厳重注意」分署が大量に流出し、世界に拡散してしまいました。
中国やロシアは、なんてセキュリティが甘い国だとせせら笑っていることでしょうから、国益の棄損です。

あたりまえですが、日本にも国家公務員法に守秘義務が定めてあります。

●国家公務員法第 100 条
職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。

ここで言う「職務上知ることのできた秘密」とは、職員が職務に関連して知り得たすべての秘密をいいます。
したがって、例えば、税務署の職員が税務調査によって偶然知り得た納税者の家庭的事情や、労働基準監督署の職員が調査の過程で偶然知り得た調査対象企業の経営状況なども「職務上知ることのできた秘密」に含まれます。
ましてや今回の「取り扱い注意」文書などは、ストレートに守秘義務対象に属することはいうまでもありません。
なお、これは退職後も適用されます。

これについて小西氏側は「公益通報」だと言っているようです。
公益通報が恣意的に解釈されると、オレはこれは正義だと信じてどんどん漏洩させてしまうことになりかねません。
今回がこのケースですが、「公益通報」には厳然と条件があります。
それが「違法性」の有無です。

●公益通報(いわゆる内部告発)と守秘義務の関係について
公益通報の対象となる「通報対象事実」は、犯罪行為の事実等を指すものであり、一般的には、公益通報により、守秘義務違反に問われることはないものと考えられます。
ただし、公益通報者が、通報中に、犯罪行為の事実等のほかに職務上知り得た秘密を外部機関に漏らした場合には、当該秘密は「通報対象事実」に該当せず、守秘義務違反に該当する場合もあります。
untitled (jinji.go.jp)

たとえば高市氏が殺人を計画していたなどということを官僚が知って、それを証拠立てる文書を流したのならこれはリッパな「公益通報」です。
今回は放送法の解釈についてであって、しかも内容的にはなんの新味もありません。
ただ「総理に電話した」ということを、想像力たくましくこう言ったに違いないと憶測しているだけのことです。
たった4カ所の高市氏当所に63ページという膨大な文書を流出させたのですから、大丈夫ですか、と言いたくなります。

高市氏と磯崎氏は、容疑者不詳で国家公務員法違反で東京地検特捜に刑事告訴すべきです。

2023年3月16日 (木)

プーチンvsブリゴジンの内ゲバ発生か?

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ISW(戦争研究所)が面白いレポートを出しています。
あのならず者集団「ワグネル」の指導者であるブリゴジンと、プーチンがいまや抜き差しならない対立をしているという情報です。
ロシアの攻撃キャンペーン評価、12年2023月<>日 |戦争研究所 (understandingwar.org)

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エフゲニープリゴジン
「弾薬供給を拒否」 ワグネルトップがロシア軍批判 対立激化か - 産経ニュース (sankei.com)

「ロシア国防省(MoD)とワグナーグループの投資家エフゲニープリゴジンの間の紛争は、バフムトの戦いを背景に最高潮に達した可能性があります。
ロシア国防省、特にロシア国防相セルゲイ・ショイグとロシア参謀総長ヴァレリー・ゲラシモフ将軍は、プリゴジンを弱体化させ、クレムリンでのより大きな影響力への野心を狂わせるために、エリートと有罪判決を受けたワグナー軍の両方をバクムットに故意に消耗させる機会をつかんでいる可能性があります」
(ISW)

なるほどね、どうしてバフムト戦線であるような甚大な人的消耗を前提としたゾンビーアタックをかけるのか、私も不思議に思っていました。
なにせ銃も満足に渡さないで、仲間の死体から奪えですから、これはもう戦術なんてもんじゃありません。
バフムト戦線でのロシア軍のゾンビーアタック: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)

共産圏の軍隊はみんなああいうものなのだ、と言えばそれで終わりなのですが、どうやらISWはその背景にプーチン陣営とブリゴジンの対立があったとみています。
朝鮮戦争の折の人海戦術の背景にも、投入された共産軍兵士の大部分は投降した旧国府軍兵士らで占められていたといいますし、プーチンがいまや邪魔者となったブリゴジン軍「ワグネル」をすり潰すにはいい機会だったようです。

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ウクライナ要衝バフムト中心まで1.2km ロシア主張 (tv-asahi.co.jp)

「ロシアの国防省は、プリゴジンが囚人を募集し、弾薬を確保する能力をますます制限しており、プリゴジンにロシアの国防省への依存を公に認めることを余儀なくさせていました。
たとえば、プリゴジンは、彼が手紙を郵送し、弾薬の緊急要求で国防省の代表者(おそらくショイグとゲラシモフに)を送ろうとしたが、代表者が彼の苦情を提示することを許可されなかったと公に不満を述べた」
(ISW前掲)

ブリゴジンは、新たに囚人などを使って兵員を集めようとしましたが国防省から拒絶され、さらには武器弾薬さえも与えられなかったようです。
特に刑務所を人材プールにしていたワグネルにとって、囚人を利用できなくなることは致命的だったはずです。
結果、丸腰のワグネル戦闘員に無謀な突撃を繰り返させ、バフムトの半分はかろうじて占領したものの、全滅に等しい打撃を受けてしまいました。
怒ったブリゴジンは、西側メディアに自軍の戦死者の映像を公開し、実情を暴露しました。
もちろんプーチンへの当てつけです。

「ロンドン 22日 ロイター] - ロシアのウクライナ侵攻に部隊を派遣しているロシア民間軍事会社ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏は22日、弾薬を奪われ殺害されたという戦闘員数十人の遺体画像を公開した。弾薬供給を巡る軍部への非難を一段と加速させた格好。
プリゴジン氏は21日、ロシアのショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長がワグネルへの弾薬の供給を拒否し、ワグネルを崩壊させようとしていると批判した。一方、国防省はこうした批判を否定している。
プリゴジン氏はこの日、ウクライナ東部バフムトで戦死した数十人の戦闘員が凍土の上に倒れている写真を公開。異例の手段で軍部を批判し、戦闘員らは弾薬が不足したため死亡したと主張した」
(ロイター2日通23日)
ワグネル創設者、戦闘員の遺体画像公開 弾薬供給巡る軍批判加速 | ロイター (reuters.com)

プリゴジンはプーチンに、バフムトから撤退させると脅迫しました。
一方、人的消耗が激しいバフムトでの市街戦の矢面にワグネルを利用してきたロシア軍は窮地に立たされることになります。
ロシア軍中枢のショイグ国防大臣やゲラシモフ参謀総長兼総司令官の意図は、戦略的要衝でもないバフムトで、うるさくなってきたワグネル軍を潰してしまい、ブリゴジンの影響力を断つことでした。
しかしここでワグネル軍に撤退されれば、代替がいないのです。

しかし、しょせんPMC(Private military company /民間軍事企業)は傭兵にすぎません。
正規軍とは違って大砲や戦車などは持たない軽装備ですから、「ワグネル」がこんなに前面に出てくることのほうがヘンなのです。
米軍もPMCを使っていますが、不祥事を起こしたせいで契約は縮小し、基地の警備ていどでおちついています。

ワグネル軍がここまで重用されたのは、プーチンが緒戦のキーウ侵攻に失敗したことにショックを受けて、ショイグ、ゲラシモフといった軍中枢に対して深い不信感を持ってしまったからです。
このロシア軍の弱さは、4日でゼレンスキーを亡命に追い込み、首都にロシア国旗を翻すつもりだったプーチンにとって大きな政治的打撃でした。
ここで登場するのが、かつてプーチンの料理番だったエフゲニー・ブリゴジンです。
なんだか『沈黙の戦艦』のスティブン・セガールみたいな話で笑ってしまいますが、ホントです。

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料理人時代のブルガジンとプーチン

「プーチンのシェフ」がロシア政界で台頭 配食事業を経て民間軍事会社創設、ウクライナ侵攻で暗躍:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

この料理長は、シェフを辞めた後に政府にケータリングをする会社でボロ儲けし、オルガルヒとして頭角を現します。
一般のオルガルヒは戦争に消極的で、次々にプーチンによって消されていきますが、このブリゴジンだけはプーチンの「影の軍隊」としてまともな軍隊には任せられないようなダーティな任務で重用されることになります。
これが「ワグネル」です。

プリゴジンは、2014年のドンバスでワグネルが誕生したと述べています。

「古い武器を掃除し、防弾チョッキを自分で見つけ、この問題で私を助けてくれる専門家を見つけました。その瞬間から、2014 年 5 月 1 日から、愛国者のグループが生まれました」

そしてドンバスの分離主義者に加担した後、中央アフリカ共和国、スーダン、リビア、モザンビーク、ウクライナ、シリアなどを転戦して、 何年にもわたって多くの残虐行為に関わったとされています。
今回のウクライナ戦争においても、ブリゴジンは信用を失墜したショイグ・ゲラシモフを口汚く罵り、ロシア右翼の代弁者として正規軍に代わるような勢いでした。
こういう調子で、大受けしました。

「この役立たずども全員に機関銃を持たせて、裸足で前線へ送ってやる」

そして去年6月には、ゼベロドネツクで攻防で大きな戦果をあげたと主張しています。

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[深層NEWS]東部セベロドネツク攻防「南から露突破なら補給線断たれる」…高橋杉雄氏 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

「ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めてから24日で4か月がたち、ロシア軍は、東部2州のうちルハンシク州の完全掌握を目指してウクライナ側が拠点とするセベロドネツクへの攻撃を続けています。
ルハンシク州のハイダイ知事は24日、地元メディアに対して「残念ながら、ウクライナ軍はセベロドネツクから撤退せざるをえない」と述べ、防衛にあたってきた部隊が別の拠点に移動することを明らかにしました」
(NHK2022年6月25日)
ロシア セベロドネツク掌握の見通しも一進一退の攻防続くか | NHK | ウクライナ情勢

このセベロドネツク攻防の前には、プーチンから囚人の動員を許され、弾薬の補給も受けられるようになっていきます。
かくしてプーチンの信用を勝ち得たワクネルは、もはやかつてのようなダーティな戦争屋ではなく、ロシア軍の先鋒を担うようになっていきます。
この力を背景にして、ブリゴジンは政治力を発揮し、総司令官のラピンの解任をプーチンに働きかけ、自分の盟友である「アルマゲドン将軍」ことセルゲイ・スロヴィキンを後任として昇進させることに成功しました。

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セルゲイ・スロヴィキン将軍
露メディア「ロシア軍の指導部は、民間人の犠牲を問題視しない者ばかりだ」 | 「アルマゲドン将軍」はウクライナ侵攻をどう変えるのか | クーリエ・ジャポン (courrier.jp)

スロヴィキンはシリア内戦において残虐な民間人殺戮を実行した男です。
たぶんブリゴジンとはシリア絡みで知り合ったのでしょう。

ウクライナでも民間人への打撃を与えることに狂奔しました。それが電力施設への無差別爆撃です。

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ロシア大規模攻撃 電力供給は5割まで低下 インフラ被害深刻化 | 毎日新聞 (mainichi.jp)

「スロヴィキン氏は冬の到来を迎えたウクライナでエネルギーインフラ破壊作戦を開始し、住民数百万人を電気も水道もない状態に陥らせた。また、南部の街ヘルソンからのロシア軍の撤退を指揮した。この撤退はウクライナ側にとって大きな成功となった」
(BBC 2023年1月12日)
ロシア、ウクライナ侵攻の総司令官を交代 3カ月で2度目 - BBCニュース

去年10月には、もはや軍の中枢を押さえるまで一歩というところまで、ブリゴジンは迫っていたのです。
そしておそらくは次の大統領選に病弱なプーチンは出られず、オレが候補として出てやる、そう考えたのでしょう。
ここでプーチンに赤信号が点灯しました。
こんな危険な男は排除せねばならない。
プーチンは、周囲には唐突に10月5日の演説で、エカテリーナ2世の権威に挑戦したプガチョフの乱を連想させる暗喩を使いました。
皇帝に楯突く者は容赦しないぞ、という意思表示です。

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エメリヤン・プガチョフ - Wikipedia

「ロシア文化の神話にしたがえば、凡庸な司令官のミスを正すには、前線で岐路にあるとき、毅然として口数が少なく言葉を選ばない(クトゥーゾフやジューコフのような)民衆的な将軍が登場しなければならない。
そして神話の中だと、そうした武将たちは、もうひとつ重要な資質を備えていなければならない。つまりその人物は、いかなる場合でも、まずい決定を下して大惨事を起こした君主を批判すべきではない。それによって当局の権威を失墜させるべきでもない。逆に権威を強化しなければならないのだ。
君主はしばし背後に下がり、司令官に戦況を好転させる。その後に表舞台へ出て、勝利を手にするのである」
(クーリエジャポン2022年11月10日 )
露メディア「ロシア軍の指導部は、民間人の犠牲を問題視しない者ばかりだ」 | 「アルマゲドン将軍」はウクライナ侵攻をどう変えるのか | クーリエ・ジャポン (courrier.jp)

つまり、プーチン皇帝はブリゴジンが「大祖国戦争」の頃のジューコフのように「君主を批判せずに」、「口数がすくなく言葉を選ぶ武将」であるうちは重用しても、公然とモスクワを非難し、国軍の人事にかこつけて自分を批判するようになった時、ためらわずに抹殺する決意をしたはずです。
そしてブリゴジンに、なんの戦略的に無価値なバフムトを攻略することを命じました。

どうしてこんな意味がない街を攻撃しているのか西側軍事筋は首をひねったものですが、答えはワグネル潰しだったのです。

プーチンは冷酷にも、銃も弾薬も渡さずに丸裸でウクライナ軍機関銃陣地に突撃させました。
どのようなことになるのかは百も承知でそうさせたのです。
その結果、かろうじてバフムトの半分は占領したものの、事実上この地でワグネル軍は壊滅的打撃を受けました。
将校クラスまで脱走して、ウクライナ軍に逃げ込むありさまです。

ロシア軍大勝利、ウクライナ軍崩壊とロシアンフレンドは煽っていましたが、実情はこうだったのです。
続いて今年の1月になって、プリゴジンが総司令官に押し込んだスロヴィキンは副司令官に降格されて、ブリゴジンの天敵であるゲラシモフが復活しました。
完全なブリゴジン包囲体制です。

ISWはこう結論づけます。

「ロシア軍指導部は、バクムットでワグナー軍とプリゴジンの影響力を潰そうとしているのかもしれない」
(ISW前掲)

そしてウォールストリートジャナルはブリゴジンは「蚊帳の外」に追い出されたと述べています。

「プリゴジン氏は、1月のバフムト北部の都市ソレダルや昨夏のセベロドネツクにおける勝利を自らの手柄にしようとするなど、戦場でのワグネル戦闘員の存在感を利用して、プーチン政権に対する影響力を高めることを狙ってきた。
 ところが、プリゴジン氏はここにきて蚊帳の外に置かれつつある。背景には、ロシアが戦闘態勢の見直しに着手していることがある。具体的には、ウクライナ侵攻を指揮してきた前司令官を交代させるとともに、プリゴジン氏による戦闘員の追加動員を制限している。
プリゴジン氏の攻撃は、ウラジーミル・プーチン大統領が議員や軍幹部、宗教指導者を前に年次教書演説を行っているタイミングで起きた。演説では、長期化するウクライナ侵攻に多くの時間が割かれた」
(WSJ2月25日)
ロシアの内紛露呈、ワグネル創設者は蚊帳の外に - WSJ

ブリゴジンのモスクワ非難は、プーチンの年次教書演説に合わせて行われました。
彼の非難の矛先は、ショイグやゲラシモフにはなく、クレムリンの主に対して向けられています。
さて、ブリゴジンが破れたままになってしまうのか、それともモスクワに駆け上るのか、まったく読めません。
一番考えられるのは、他のオルガリヒと同様に、ひっそりと「自殺」していたでしょうか。

いずれにしても、ロシアはここにきて大きく揺らぎ始めました。

 

 

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ウクライナに平和と独立を

2023年3月15日 (水)

総務省にも「前川喜平」がいたようだ

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総務省「小西文書」を読むと、高市氏の部分はきわめて少なく、文書に内容がないことがわかりました。
なんせたった4カ所で、発言内容も「電話をした」ていどのことですからね。

本来は高市=言論弾圧でやりたかったのでしょうが、毎日の願いも虚しく「小西文書」には高市氏は4カ所しか登場せずにスカ。
しかたがないので、高市氏の言葉尻だけを捉えて、小西氏は「レクがあったかないか」という方向に、追及を逸らしていってしまいました。
こういう「追及」も、連日なされると、高市氏がなにか隠している悪人に見えてきます。

20230314-062510

おいおい、です。
大臣レクがあろうとなかろうと、どっちだっていいじゃん、そんなこと。
ゴールポストを動かすンじゃないよ。

小西氏らは第1次攻撃目標である言論弾圧に置くことに失敗したので、あわてて「大臣レク」をもらったか否かにすり替えたのですが、いかんともせんショボイ。
本来の「放送法第4条を改悪する悪人」路線にしてほしかったですね。
それなら、もう少しかみ合った議論になったはずです。

20230315-032056

これこれ、これが本筋。
というのは、高市氏や文書中に出てくる磯崎補佐官の放送法に関する考えは、総務省の公式見解とやや違うからです。
踏襲しつつも、さらに一歩踏み出そうとしています。
※高市氏は昨日、磯崎氏の影響は受けていない証拠を出すと言っています。

まず、放送法4条をおさえておきます。

●放送法
(国内放送等の放送番組の編集等)
第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
放送法 | e-Gov法令検索

誰の眼にも、第4条なんてあってなきが如しというのはわかりますね。
左翼偏向番組なんか真っ昼間から夜中までじゃんじゃんありますし、逆に左巻きじゃないワイドショーの司会者なんていたのかしら。
放送局も放送法なんか信じちゃいないし、視聴者もこんな条文があったなんて知らない。
こうしてモリカケサクラの時なんぞ、ワイドショー情報が情報弱者に流れ込んでいたものです。

だから高市氏が総務大臣だった時「電波を止められます」と放送法に定められたことを発言すると、暗黒時代がやってきたというメディアの煽りに乗ってしまうことになります。
その原因は、所轄官庁の総務省が第4条2項の「政治的公平性」を死文化したからです。

総務省の見解はこうです。

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総務省見解を要約します。

●総務省の放送法第4条についての見解
①放送法3条の「放送の自由」を最優先する。
②ひとつの番組で見ずに、放送番組全体で見る。
③4条2項の「政治的公平性」の判断は、BPOなどのような事業者の自主的取組に任せる。

総務省は、放送法で放送事業者の自由は保障されているから、文句があるなら放送業界が作ったBPOに言え、つまりは監視対象自らに監視をさせるということです。
どこに業界の管理とその取り締まりを、業界団体に丸投げする官庁がありますか。
こういうのを所轄官庁との馴れ合いとか癒着とか呼びます。
当然のこととしてBPOは、政治的公平性が怪しい人物らによって委員ポストが独占されることになりました。
このようにハナから「政治的公平性」を骨抜きにしていたのが、ほかでもない所轄官庁のはずの総務省だったのです。

一方、「小西文書」に添付してる高市氏の答弁はこうです。

●平成27年5月12日 参議院総務委員会 高市総務大臣答弁
放送法第4条第1項第2号の政治的に公平であることに関する政府のこれまでの解釈の補充的な説明として申し上げましたら、1つの番組のみでも選挙期間中またはそれに近接する期間において、殊更に特定の候補者や候補予定者のみを相当の時間に渡り取り上げる特別番組を放送した場合のように選挙の公平性に明らかに支障を及ぼすと認められる場合といった極端な場合におきましては一般論として、政治的に公平性であることを確保しているとは認められないと考えられます」

高市氏が言っているのは、総務省見解を踏まえつつ、極端な場合は政治的公平性を確保していない、ということです。
ここで例示されているのは、国論を二分する政治問題や選挙期間中に特定の候補者に対して誹謗したり、逆に礼賛するようなことは逸脱だとしています。

活字媒体と違って政府から特権的電波帯を割り当てられている放送事業者が、一定の法的規範に従うのは当然のことで、そのために放送法が存在したはずです。
総務省は、地上波の特権的割り当てによって発生した電波利権に大あぐらを書いている官庁です。

 2013年のテレビ局の事業収入は、NHKが6517億円、フジテレビが3468億円、日本テレビが2277億円です。
企業でいう「仕入れ」の電波利用料は1993年から導入されましたが、NHKがわずか18億7800万円、フジテレビ系が3億9920万円、日本テレビ系が4億3260万円で、事業収入に占める電波利用料はNHK0.28%、フジテレビ系0.11%、日本テレビ系0.18%にすぎません。

「2006年度の歳入の内訳をみると,携帯電話関連で8割を占めているとみられる。ここで議論がある。携帯電話関連で637億円くらい負担しているのに,テレビやラジオは約6.7億円と2ケタ少ない。売り上げは携帯電話事業のほうがテレビよりも大きいが,電波帯域はテレビのほうが広い。一方で,アマチュア無線などが2.6億円負担している。当然,テレビの負担は少なすぎるという声が上がっている」
(日経テック2008年4月22日)

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電波の特定財源「電波利用料」 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)

あきらかにテレビ局は、この安価な電波利用料によって労せずして大儲けできる業界なのです。

総務省はこの放送事業者を監督すべき立場なはずですが、東北新社の総務省高額接待実験でも分かったように、むしろこの利権の擁護者と化しています。
ですから、一方でいつでも電波を止められると脅しながら、片方では甘い利権のアメを与え続け、「政治的公平性」のようなトゲは見て見ぬふりをしてきました。
有体にいえば総務省は、放送法は、放送業事業者への武器としては持っておいて損はないが、常日頃は4条の「政治的公平性」などどうでもよく、むしろ骨抜きにして癒着してきたのです。

そのような総務省官僚たちにとって、元総務省官僚でありながら、かねがね問題意識を持っていた礒崎陽輔補佐官は目の上のたんこぶだったはずです。
「小西メモ」にも、安藤情報流通行政局長の磯崎氏に対する「官邸に影響力ないからヤクザに絡まれたようなもの」というような侮辱的言辞が記録されているほどです。
磯崎氏はなまじ省内にいただけに実情を知り尽くしており、しかも魔王安倍の懐刀になってしまい、4条を的確に使えと言うのですから、抹殺したい対象と考えていたことでしょう。

その磯崎氏は「小西文書」の中で、このように質問しています。

20230314-060929

「聞きたいことは2つある。まず1つ目だが、1つの番組では見ない、全体で見るというが、全体で見るときの基準が不明確ではないかということ。「全体でみる」「総合的に見る」というのが総務省の答弁となっているが、これは逃げるための理屈になっているのではないか。そこは逃げてはいけないのではないか。
(確かに様々な事例、事案があるので、「基準」を作れとは言わないが)総務省としての考え方を整理して教えて欲しい」

磯崎氏は、もっと原則的に放送法を運用しろ、と言っているだけのことで、高市氏も似たような考え方をしていたと思います。
3条の報道編成の自由は守られるべきだが、行き過ぎは4条でチェックして対応してもいいのではないかという意見です。
あたりまえではないですか。行き過ぎもチェックできないような放送法4条など無意味です。
むしろあることで、免罪符を与えているだけのことです。

そもそもこんな放送法4条は、超安価に電波帯を分けてやる言い訳に作ったような条項にすぎません。
これだけ公平に作られているのだからパブリックインフラです、だから安くせにゃならんのです、ということを法的に担保しているだけで、前述のように総務省みずからの手で空文化していました。

なんせ管轄機関が、当該事業者に監視してもらえと、業界丸投げを堂々と言っているのですから、話にならない。

私は今回の「取り扱い厳重注意」文書が易々と野党議員の手に渡ったのは、なんらかの総務省官僚の意志、ないしは黙認があったのだと思っています。
総務省は目障りだった高市氏を叩き、政治生命を抹殺しようと考えていたのかもしれません。
そう考える、総務省の「前川喜平」がいたとしてもおかしくないのです。

ちなみにホンモノの前川氏は、事務次官就任前後でありながら、なんと国会前でシュプレッヒコールをあげていたそうです(笑)。
ハンパないね。
この男の動機は、獣医学部新設を阻むという文科省の省益と、自分の左翼思想が二重になっています。
今回の総務省の「前川」官僚にも、同類の臭みを感じます。
漏洩したのはNTTに出向している人物と特定されていますが、彼はただのトカゲのシッポ切りでしょう。
将来の総理を期待されている現役大臣の首を獲ろうという仕掛けですから、もっと大物が控えているはずです。
それもひとりではなく複数。

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朝鮮学校の無償化不適用「不条理」と語り、「SEALDs」集会に参加 前川喜平氏に慄然とした  | 草莽崛起ーPRIDE OF JAPAN (fc2.com)

毎日などはまるで安部政権が言論弾圧するつもりだった、と大げさに書き立てています。
毎日新聞は1面トップには、「安倍政権、放送法の「政治的公平」解釈変更議論か 立憲が内部文書」と大きな活字が踊っています。

「立憲民主党の小西洋之参院議員は2日、国会内で記者会見し、2014~15年に安倍内閣が一部の民放番組を問題視し、放送法が規定する「政治的公平」の「解釈変更」(小西氏)を試みていたことを示す総務省作成の内部文書を入手したとして公表した。当時の高市早苗総務相は、政治的公平性を欠く放送を繰り返した局に電波停止を命じる可能性に言及しており、政府内での議論の結果だった可能性がある」
(毎日3月2日)
安倍政権、放送法の「政治的公平」解釈変更議論か 立憲が内部文書 | 毎日新聞 (mainichi.jp)

まぁ、政府が法律の解釈変更をするなんてことは違法でもなんでもありませんから、「公益通報」には該当しないでしょう。
ですから、今回仮に「総務省の前川喜平」がいたとすれば、守秘義務違反を問われることになります。

2023年3月14日 (火)

資料「小西文書」開示される

 

054_20230313161901

総務省のいわゆる「小西文書」が開示されています。
000866745.pdf (soumu.go.jp)
総務省|政治的公平に関する文書の公開について (soumu.go.jp)

そこで、高市氏に関しての部分だけ機械的に抜き出してみました。

20230313-110932

①「政治的公平」に関する放送法の解釈について(磯崎補佐官関連)
平成 27年
2 月 13 日(金):高市大臣レク(状況説明)
17 日(火):磯崎補佐官レク(高市大臣レク結果の報告
5 月 12 日(火):参・総務委員会
(自)藤川政人議員からの「政治的公平」に関する質問に対し、磯崎補佐
官と調整したものに基づいて、高市大臣が答弁

②礒崎総理補佐官ご説明結果(概要)
大臣レクの結果について安藤局長からのデブリ模様
(平成27年3月6日(金) 夕刻
○ 安藤局長から、総理に連絡する際は、
・今回の整理ペーパーの内容は「事務的にはギリギリの線のものであること」、
・礒崎補佐官に対し、一度「(高市大臣から)答弁は準備します」とお伝えして
いること

③高市大臣と総理の電話会談の結果
(平成27年3月9日(月)夕刻)
・ 政治的公平に関する件で高市大臣から総理に電話(日時不明)。
・ 総理からは、「今までの放送法の解釈がおかしい」旨の発言。
実際に問題意識を持っている番組を複数例示?(サンデーモーニング他)

④山田総理秘書官からの連絡
【政治的公平の件について】
(平成27年3月13日(金)17:45)
・ 政治的公平に関する国会答弁の件について、高市大臣から総理か今井秘書官かに電話があったようだ。
・ 総理は「軽く総務委員会で答弁しておいた方が良いのではないか」という反応だったとのこと。

以上の4箇所です。
見る限り「電話をした」「電話があった」というていどのことです。
なにかを高市氏が指示したという記載はありません。

また、この総務省文書とは別に、高市大臣の国会答弁も添付されております。

20230313-111826 20230313-111826

● 平成27年5月12日(火)
参議院総務委員会 
○高市大臣
最近の放送を見てどう思うかということなんですけれども、今ですね割と忙しくしておりまして、放送番組をじっくりとたくさん見る機会には恵まれておりません。ただ、放送番組は放送事業者が自らの責任において編集するものでございまして、放送法は放送事業者による自主自律を基本とする枠組みになっておりますから、個別の放送番組の内容について、何か言えということでしたら、なかなかコメントしづろうございます。なお、個別の番組について何か社会的な問題が発生した場合には、まずは放送事業者が調査を行うなど私的な取り組みが行われることとなります。総務省としても放送事業者の取り組みの結果を踏まえて適切に対応することにしております。

○高市大臣
率直に申し上げまして、藤川委員の問題意識、共有されている方も多いんじゃないかと思いますし、私自身の総務大臣の職に就きまして、非常にここのところの解釈というのも難しいものだなぁと感じております。例えばですね、国論を二分するような政治的課題について、ある時間帯で与党党首の記者会見のみを放送したとしても、あとのニュースの時間に野党党首のそれに対する意見を取り上げている場合のように、ある番組で一方の政治的見解のみを取り上げて放送した場合でも、他の番組で他の政治的見解を取り上げて放送しているような場合は、放送事業者の番組全体として政治的公平を確保しているものと認められるとされております。

○高市大臣
放送法は放送事業者の自主自律を基本とする枠組みとなっており、放送番組はそのもとで、放送事業者が自らの責任において編集するものであります。政治的公平の観点から番組の編集の考え方について社会的に問われた場合には、放送事業者において政治的公平を確保しているということについて国民に対して説明をする必要があると考えております。

○高市大臣
放送法第4条第1項第2号の政治的に公平であることに関する政府のこれまでの解釈の補充的な説明として申し上げましたら、1つの番組のみでも選挙期間中またはそれに近接する期間において、殊更に特定の候補者や候補予定者のみを相当の時間に渡り取り上げる特別番組を放送した場合のように選挙の公平性に明らかに支障を及ぼすと認められる場合といった極端な場合におきましては一般論として、政治的に公平性であることを確保しているとは認められないと考えられます。

○高市大臣
前問と同じように政府のこれまでの解釈の補充的な説明として申し上げますが、1つ番組のみでも国論を二分するような政治課題について、放送事業者が一方の政治的見解を取り上げず、殊更に他の政治的見解のみを取り上げて、それを指示する内容を相当な時間に渡り繰り返す番組を放送した場合のように当該放送事業者の番組編集が不偏不党の立場から明らかに逸脱していると認められる場合といった極端な場合においては、一般論として政治的に公平性であることを確保していることは認められないものと考えます。

なお、総務省の「政治的公平性」についての見解は以下です。

20230313-104858

この高市総務大臣(当時)答弁が、「言論弾圧を画策していた」かどうか、お読みになればわかるはずです。
高市氏は、完全に総務省の見解を踏襲して答弁しています。

以上、私の主観入れずに引用しましたが、果たしてこれが大臣辞任すべきものかどうかの判断はお任せいたします。

 

2023年3月13日 (月)

なにが「一級の行政文書」だ

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ああ、うるさい、まるで高市大臣の首をとったかのような煩さです。
なんでも行政文書に書いてあったからホントだ、捏造だからホントだったら議員辞める、と言ったんだから高市は辞職しろということのようです。

日刊ゲンダイは大喜びで、高市はひとりボッチだ、もうすぐ議員辞職に追い込めるゾ、とこう書いています。

放送法の政治的公平性をめぐり、解釈変更に至ったプロセスが記された総務省の内部文書が表沙汰になって1週間あまり。事態は動いているのに、高市早苗経済安保担当相は強情を張り続け、居場所を失いつつある。
 問題のペーパーを行政文書と認めた総務省は10日、調査状況を発表。発言記録があった総務省関係者など十数人に聞き取りをしたところ、当時の礒崎陽輔首相補佐官から政治的公平性に関する問い合わせがあったと説明したが、高市大臣や安倍元首相に関連する資料は内容の精査を続けるとした。
一方の高市大臣は、資料の一部の正確性が確認できないことについて、当時の総務相として「責任を感じている。大変申し訳ない」と閣議後の会見で謝罪。しかし、参院本会議では自身の名前が記された4文書について「正しい情報ではない」「大臣も議員も辞職すべきとは考えていない」と強気な姿勢を崩さなかった」
(日刊ゲンダイ3月12日)
高市早苗氏に「更迭」浮上! 謝罪はしても辞職拒否、火ダルマ必至の岸田首相が決断も|ニフティニュース (nifty.com) 源太イ。

まさに、「森友に便宜を与えていたら辞職する」と言った故安部氏と同じですね。
高市さん、安部氏の時もそうでしたが、こんなことは安易に言わないこと。
売り言葉に買い言葉で議員の首をかけると不用意に言ってしまったから、小西氏やメディアが有頂天になったのですよ。

では、その行政文書ってナンなの?
「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」というものが、定義しています。
まずはそこから当たったらいいのに、最初のボタンをキチンとかけないから服が歪んでいきます。

2 この法律において「行政文書」とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。
行政機関の保有する情報の公開に関する法律 | e-Gov法令検索

要は、「当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有している文書」にすぎません。
お役人が仕事の時に書いたメモ、報告書、取得した文書、図画などの総称です。
いうまでもないことですが、あくまでも「お役人が書いた」というだけのことで、正確さが担保されているわけでもなんでもありません。
ましてや今回の「小西文書」とやらは、仮にこれが正式な報告書なら必ず備えてなければならない、発出の日時、担当部局名、担当者、宛て先等の必須項目がすべて欠落していますから、「行政文書」といっても一番格が低い「行政メモ」の類です。
これが例の「西山文書」みたいな秘密議定書の類や決済文書、正式の議事録ならもう少しカッコウがついたんですがね。
こんな程度の「爆発物」で大臣の首狩りをするというのですから、小西氏に哀れすら感じます。

これが民間企業なら問題にすらならなかったでしょう。
というか、まともな民間会社だったらありえません。
親会社に説明に行った者が、そこの幹部の悪口を書いただけのメモを外部に漏らすんですからね。
ところがそれを仰々しく「行政文書であるゾ」と銘打って出してくれば、へへぇ、お上の言うことかと国民が思うと考えているようです。
小西氏は、日本人の官高民低意識につけ込んだのです。ああ、イヤダ。

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小西ひろゆき (参議院議員)さんはTwitter

「小西文書」には、平成27年(8年も前ですぜ)に磯崎補佐官に総務省流通行政局長と放送政策課長がレクチャー(大臣レク) したことがメモされています。
この中で、高市氏が登場するのはわずか4カ所です。

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〇がついているのが高市氏の発言のようですが、「放送事業者の番組全体で見る」とはどういうことか、「政治的公平性の確保について、これを判断するのは誰?」という質問をしているようです。
たぶん正式な議事録では前後の文脈があり、質問ももっと長かったはずですが、たったこれだけです。
直接放送法についての高市氏の意見は記載されていません。

しかも正確さとはほど遠く、誰それが「こう言った」ということを仲間うちに伝える目的で政策したメモすぎません。
私は農水省との会議に出たことがありますが、官庁は事前に細かな資料を揃え、会議の発言も詳細に議事録で取っています。
これは所属セクションに持ち帰って、報告するための資料にするためです。

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小西ひろゆき (参議院議員)さんはTwitter

そしてこの1次報告書は一般公開はされません。
次回の会議の時に、セクションの責任者がチェックして、さらに参加者に回覧し確認してから正式な議事録となります。
今回の「小西文書」なるものは、単に誰それがこういうのを聞いたていどのことを書き記したペーパーていどで「行政メモ」です。
それも書いた者の主観が濃厚に入ったものです。
たとえばこの部分。

「礒崎補佐官は官邸内で影響力はない(長谷川補佐官は影響力あるとの言)。... 今回の話は変なヤクザに絡まれたって話ではないか」

おいおい、いくら直属ではないとはいえ、首相補佐官を「官邸内では影響力がない」という噂を書き、さらには磯崎氏を「ヤクザ」呼ばわりしたうえで、「絡まれた」とまで書いています。
ここまで品性に欠けることを正式な行政文書で書けるはずがなく(まちがいなく所属長が削除します)、行政メモであっても書いた者の「お仲間」に配ったような私的メモの類です。
仮にこのような特定の人物をヤクザ呼ばわりした文書を、そのまま官邸も読む文書にして配ったら、この書いた人物は左遷ていどでは済まないはずです。
こんなジャンク文書を使って、「小西文書」=「行政文書」=真実という短絡の三段論法で、高市氏の首を獲ろうとしています。
図々しくはありませんか。

もちろん文書には、開示義務があります。
正式な開示請求があれば同法第5条「行政文書の開示義務」に則って開示されることもあります。
今回、小西氏がどこの誰から手に入れたのか知りませんが(特定されています)、開示請求によらない文書の入手ですから、小西氏とそれを漏洩した官僚は違法性を問われねばなりません。

メモとはいえ、自分らで「行政文書は真実だ」と言っているのですから、相応の罰を受けてもらいましょう。

 ● 懲戒処分の指針について
(13) 公文書の不適正な取扱い
   ア 公文書を偽造し、若しくは変造し、若しくは虚偽の公文書を作成し、又は公文書を毀棄した職員は、免職又は停職とする。
懲戒処分の指針について (jinji.go.jp)

立憲はこの漏洩を「公益通報」だとしており、小西氏は漏洩した官僚は「真の英雄だ」とまで言っています。

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立憲・小西氏の資料、与党が配布認めず 質疑取りやめ午後に再協議へ [放送法めぐる内部文書問題]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

「安倍政権下で、安倍総理や高市大臣の違法行為を告発した総務省職員は、国家公務員の鏡であり、真の英雄です」
J-CAST

このようなハンパなメモを「公益通報」とするかどうかは、後の判断にお任せしますが、普通の民間企業なら即刻アウトです。
なぜなら、前述したようにこの磯崎補佐官の会議に出席した参加者全員が閲覧して、内容に対して確認がとれて初めて共有化された行政文書である議事録となるからです。
このような主観的な私的メモに、特定の人物を貶めるようなことが記されており、それを決済を仰がずに野党に手渡して倒閣スキャンダルとして漏洩した場合、書いた者は企業から訴追されるかもしれません。

日本の官僚の中には、文科省次官まで行った前川喜平や経産省の反原発運動家の古賀茂明のようなものか大勢います。
彼らが自分のメモ書きを行政文書だ、これは公益通報だといって、野党に手渡したらどうでしょうか。
役人は自分の書いた私的メモ一本で、大臣の首を獲れて政権に打撃を与えられることになりはしませんか。
たまったもんじゃありません。

 

2023年3月12日 (日)

日曜写真館 手折られて恋の椿となりにけり

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ころもがへ椿は花の紬かな  舎羅

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ふるさとの山は麗し藪椿 八木高穂

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翼なき鳥にも似たる椿かな マブソン

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青眼椿落ちて椿のほかはみなぶるー 小宅容義

S2-026

たかが椿の下を通るに身構ふる 林 朋子

S-007_20230312050101

一はるの花を持ける椿かな 鈴木道彦

 

 

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