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2019年5月22日 (水)

ファーウェイ排除進む

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ファーウェイが詰みました。
5月15日、トランプは米民間企業によるファウェイ製品の調達を事実上禁じる大統領令に署名し、米商務省も輸出管理法の運用を強化することを命じました。
これにより、米企業によるファーウェイへの部品やソフトの供給路は遮断されます。

「ワシントン 15日 ロイター] - トランプ米政権は15日、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]が米政府の許可なく米国の重要な技術を購入することを禁止するとともに、国家安全保障を理由に米国の通信ネットワークから同社の製品を事実上排除する措置を発表した。 
ファーウェイは部品調達を米国のサプライヤーに頼っているため、今回の2つの措置によって多くの製品の販売を継続することが難しくなる可能性がある。
米国は現在、中国と関税強化の応酬を繰り広げており、今回の発表は米中関係にとって微妙なタイミングとなった」(ロイター5月16日)

これに先立ち、グーグルはファーウェイのブラックリスト入りを受けて、アンドロイドOSの供給を止めるなどの措置をとりました。
このグーグルの禁止措置により、ファーウェイはスマホの基本ソフトを使用できなくなり、更新プログラムへのアクセスも不可能となりました。
つまり、現在中国国外で今後発売される新モデルのファーウェイスマホでは、他の互換ソフトに入れ換えない限り、アプリもメールも使えずないただのドンガラと化したわけです。
OSのスタンダードは数種類ありますが、いずれも米国です。通信機器のハードは、設計段階からOSに最適化されて作られているために必然的にそうならさるを得ません。

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出典不明

ではファーウェイにグーグルの代替えがあるかといえば、泣き面に蜂で、グーグルに追随して、インテル、クアルコム、ザイリンクス、ブロードコムなどの米IT企業も、ファーウェイへのアプリやソフトウェアなどの提供を停止してしまいました。
クァルコムは従業員にファーウェイとの連絡すら禁じたそうです。よくこれだけ嫌われたもんです(苦笑)。 
ファーウェイはこの秋にも代替えOSを出すと言っていますが、中国はその努力をせずにここまでのし上がってきたわけで、万人がみるところおそらく使いものにはならないでしょう。
ハードをまねるのは競合製品をバラバラにしてそっくりさんを作ればなんとかなりますが、膨大な知見と経験の上に成り立っているソフトは簡単にはパクれないのですよ。

下は中国空軍のJ-16とロシアのSu-30、Su-27UBですが、ほとんど見分けがつきません。
中国がロシアから大量購入をエサに実機を買い取って、総パクリして「独自製品」を作ってしまったからです。
パクっただけならまだしも、それを外国に輸出までしてしまうというのですから心臓に毛が生えています。
これがチャイナの流儀です。

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上から中国空軍のJ-16とロシアのSu-30、Su-27UB

中国系企業は典型的なキャッチアップ・ビジネスモデルで、先行する米国の成功モデルを技術ごとコピーして、米国製のソフトを乗せてそれをグローバル市場に安売りすることで成立してきました。
ですから、世界のサプライチェーンと販売ネットワークが前提としてあっての今の繁栄だったわけです。
ここから遮断されれば、いくら5Gの覇者を目指すと息巻いてみても、ファーウェイにはかんじんな製品を作る部品やマザーマシーンも気の利いた独自ソフトすらありません。
これらは日米欧の独壇場だからです。
したがって、テキメンにこの兵糧攻めは効果を現すでしょう。もはや時間の問題です。

中国のこのキャッチアップ戦法は一定のところまでは通用しました。
国営企業として国家から潤沢な資金と補助を貰って、先行する日米欧企業のまねさえしていれば済んだからです。
しかし今や、世界のサプライチェーンから追放され、単独で新たなビジネスモデルをいちから構築せねばならないことになりました。
ステーブ・ジョブズのようなまったく新しいビネスモデルを作る柔軟な発想を持つ人材が、中国社会から生まれるわけがないのです。
そもそも中国のような世界一の監視社会には、自由な想像力と思考を持つような人材はいられないからです。

そういえばこのファーウェイという企業は、監視社会システム作りのために中国政府が作ったような国営企業でしたっけね。
元来がただの携帯会社ではなく、他人の個人情報に忍び込んだり、外国企業の技術情報を盗むのが本職のような会社だったのです。
関連記事「ウィグル監獄社会」http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/11/post-7215-1.html

中国全土は人類がいまだ経験したことのない監視社会ですが、特に新疆ウィグル自治区は、「世界でも有数な強力な監視システム」(ニューズウィーク1918年10月23日)が張りめぐらされています。 
中国が外国企業から盗んだ最先端技術は、集中的に少数民族弾圧に用いられました。 
ガソリンスタンドに行けば顔認証によって身元を確認され、WI-FIを利用すれば、その通信記録は当局に傍受され、記録に残されます。
中国で電子マネーが優勢なのは、個人のカネの出し入れが当局に監視できるからです。 

中国国民はひとりひとり持ち点を与えられて、反共産党的行為や言動をすればどんどんと減点されて、しまいには労働改造所送りになってしまいます。
中国のIT企業がそろって共産統系国営企業なのは、この監視社会のシステム作りに携わってきたからです。
たとえば、ハイクビジョン(杭州海康威視数字技術)は共産党系企業ですが、ダーファ・テクノロジー(浙江大華技術)と合わせて世界シェアの実に4割を独占する監視カメラの大手です。
http://www.security-d.com/hikvision/ 
これらの中国企業は、中国共産党、あるいは人民解放軍の指導の下に手厚い資金注入を受けて作られました。
ですからファーウェイを作った会長が、軍の情報関係の軍人なのはけっして偶然ではありません。

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ニューズウィーク1918年10月23日

このファゥウェイが世界の次世代通信インフラである5Gを支配してしまえば、どのようなことになるのか、想像をたくましくする必要はないでしょう。
企業や国家機関、そして個人にいたるまで中国共産党へ流れるバックドアが開通してしまうのです。
かくして世界の「ウィグル化」が始まります。

ところでそれにしてもこの徹底ぶりがトランプ流です。口先だけでノーベル平和賞をもらってしまった前任者のヘタレとは大いに違います。
トランプがいまやっていることはまさに弾の飛ばない「戦争」です。
ありとあらゆる中国からの物品に高関税をかけるだけでは終わらず、おもだった中国系IT企業をサプライチェーンそのものから排除してしまいました。

「トランプ米大統領はこの日、国家安全保障上にリスクをもたらす企業の通信機器を国内企業が使用することを禁止する大統領令に署名した。
大統領令は、非常事態を宣言して商取引を規制する権限を大統領に与える国際緊急経済権限法を発動するもの。発令を受け、商務省は他の政府機関と協力し、150日以内に実施計画を取りまとめる」(ロイター前掲)

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バリカンパーフォーマンスをされているレスラーがファーウェイ会長にみえます。
産経 https://www.sankei.com/world/news/151015/wor151015... 

スゴイですね。トランプは「国家安全保障」という概念を目一杯拡大解釈しています。
当初のファーウェイの政府調達をしないという段階から、さらに進めて「脅威となる外国企業の通信機器」を米国企業が使用する事自体にも禁止範囲を拡げました。
これにより名指しこそしていませんが、ファーウェイ、ZTE、チャイナモバイルなどは完全に米国市場から自動的に排除されます。

今回の措置はあくまでも大統領令による「非常事態を宣言」によるものですので(←ちょっと使いすぎだよ)、議会の反対がなければ150日以内に商務省が実施案にまとめます。
おそらくこの5カ月の間に中国が折れればよし(しないと思いますが)、仮に報復措置をとればいっそうハードルが高い制裁となってしまいます。

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今回の大統領令

これもトランプ流で、第1球はマイクパーフォーマンスよろしく、相手バッターがゲッというような高め一杯の危険球を投げて見せ、これに怒って相手が食ってかかってこようもんなら、待ってましたとばかりにおもむろに大統領令を抜いて見せ、それが実施段階にのぼる5カ月間に相手が膝を屈するのを眺めているという段取りです。

ここまで米国を怒らせた原因は、ワシントンと北京での準備会合を重ねておおむね実務者間では詰めの段階まで行っていたからです。
それを合意文書の字句にこだわってチャブ台返ししたのは中国の方でした。
事務方合意が出来上がり、6月の習の訪米でいったん中締めでシャンシャンとなる交渉予定でしたが、あろうことか中国が国営企業に対しての不当な援助の撤廃の一項にゴネだして白紙に戻してしまったのです。馬鹿ですねぇ。

これに激怒した(とみせかけた)トランプが第4弾関税攻撃をかけ、さらに今回のファーウェイの全面排除となったわけです。

では野党の民主党や、トランプの天敵のメディアは、バカヤロー右翼のトランプめと言っているかと思えば、これが驚いたことには逆です。
今回のトランプの措置に諸手をあげて賛成で、むしろ手ぬるいくらだと言いそうな雰囲気です。
つまり、トランプは対中イケイケドンドンといった挙国一致体制を背景にしているということになります。

いやまったく、怒った米国はホント恐ろしい。
つくづくこの国と二度と戦争してはいけないと思います。
反米ヒダリや愛国右の皆さんから、属国と言われようとポチと嘲られようと、どうぞご勝手になさって下さい。
日本の戦後が戦争なく過ぎたのは、対米路線の原則が間違っていなかったからです。
自民党がいかにダメダメであろうと、首相が短命で使えなくとも、経済が20年間衰退の一途をたどろうとも、異星人支配の3年半があろうとも、平和を維持し続けられたのは米国との同盟という岩盤の上に乗っていたからです。

 


関連記事
「吉田ドクトリン」いう知恵」  http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/post-0bb1.html
「吉田という「戦後の設定者」が見たら、今をどう考えるだろうか?」 http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/post-6e61.html

 

 

 

2019年5月21日 (火)

丸山発言がロシア人に「分かりやすい」わけ

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昨日からの続きです。
今回の丸山発言のやり切れなさは、よりによってこれがビザなし渡航という日露信頼醸成措置の時に起きてしまったことです。

一般的にもビザなし渡航国は沢山ありますからゴッチャにされますが、逆にいえばビザをロシアに発給してもらうほうがおかしいともいえます。
だって、どうして自分の国行くのにわざわざ「ビザなし渡航」と呼ばねばならないんでしょうか。
ではそこから「千島連盟通信」から押えておきましょう。
http://4islands.jp/exchange/post-38.php

「平成4年(1992年)から始まった、日本国民と北方四島(択捉島・国後島・色丹島・歯舞群島)に住むロシア人住民との相互訪問による交流のことです。
この交流は、旅券(パスポート)、査証(ビザ)なしで、外務大臣の発行する身分証明書などにより渡航が認められていることから、「ビザなし交流」と呼ばれています。
日本とロシアの間で未だ解決されていない北方領土問題が解決するまでの間、日本国民が北方四島を訪れ(訪問事業)、北方四島のロシア人住民が日本を訪問する(受入事業)ことにより、相互理解と友好を深めることを目的としています。
どのような人が北方四島を訪問できるのか?【訪問事業】
現在次の者が日本政府により訪問を認められています。
①北方四島に居住していた者等
②北方領土返還要求運動関係者
③報道関係者
④訪問の目的に資する活動を行う各分野の専門家」

元々、旧島民をはじめとする日本人が、北方領土にロシアのビザで入ることは、日本がロシアの実効支配を認めることになってしまいます。
だから外務省は渡航自粛を勧告していたのですが、パスポートやビザはなしで、外務大臣が発行する身分証明書などの簡単な手続きで渡航が認められる特別な仕組みを作ったわけです。
これが「ビザなし渡航」です。

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墓を修繕する元島民 FNN https://www.fnn.jp/posts/00345790HDK

では、これはただのといっては失礼ですが、元島民の墓参りや友好行事かといえば、違うと思います。
もちろんそれは大事なことですが、それで終わってしまっては北方領土返還交渉とはなんの関係もないイベントになってしまいます。
現実には開始から30年ちかく続けてくると、そうなりかかっていたのも事実なようです。
これを惰性に流れていると批判する若い人たちの発言を受けて、鈴木宗男氏が答えたのが2018年8月3日の渡航団の船中のことでした。

「皆さんビザなし交流だけでは意味がないんです。平和条約締結のための一つの手段としてやっているということを最初に共有しなければいけない。国民の税金を使ってるんです。全部日本人の税金ですよ?夕食会、昼食会、御馳走様でしたじゃない。こっちが金払っているんですから。これ、みんなわかってますか?」(FNN 2018年8月3日 )

一方、受け入れ側のロシア人の対応もこのようなものだと参加者は語っています。

「日本とロシアの主張は並行線なんだと今回の訪問でつくづく思いました。(日本人が)『ロシアで税金払って』暮らすなら、(ロシアは)大歓迎ってことなんです。そしてこの活動の意義を明確にしないことで得をする人もいるんだなって」(FNN前掲)

これは領土交渉が進展を見せるかに見えた昨今でも同様で、ロシア側は共同経済活動はウェルカム、人口が少ないからロシアに税金を払ってくれるなら住もうが、会社を立ち上げようがどうぞご勝手にという態度です。

つまり、ロシアにとって北方領土は、ロシアの主権さえ認めるならば、開かれた土地ですよ、といいたいようです。

一方、鈴木氏が言う「平和条約締結のための手段」という意味は、こういったビサなし渡航を継続する中で互いに悪気はないんだという信頼関係を作り出し、それを平和条約に結びつけていくという流れをつくるということです。
すると平和条約を締結するには、国境線の確定をせねばなりませんから、本腰を入れた領土交渉につながるということになります。

では「主権」とはなんなのかといえば、それは統治権という言葉に置き換えてもいいでしょう。
そこに住む国民のために行政を敷き、税金を徴収し、治安を守り、軍隊を置くという諸権利のことです。

したがって、ロシアは北方領土で十全に主権を行使し、強力な軍隊を置いています。

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北方領土で軍隊を視察するメドベージェフ  ロイター https://www.newsweekjapan.jp/koizumi/2017/02/post-6.php

だからロシア外相のように「北方領土返還と呼ぶな」とまで言ってのける始末です。
彼らからすれば、日本にとっては「不法占拠」だろうと、ロシア人が血を流して得た土地は神聖な領土だというわけです。

日本人は強固に「固有の領土」という意識を濃厚に持っていますが、ロシア人にはそんなシャレたものはありません。
そもそもロシア民族の概念にないのですから、ラブロフと話すことは、宇宙人と「領土」について話すようなものです。

その理由は、これは中国もそうですが、領土というのは、伸び縮みするゴム風船のようなものだからです。
ちなみに米国も似たようなもので、メキシコのような周辺国からはカリフォルニアやテキサスをむしりとって領土にしてしまいました。
共通するのは戦争に勝てば、領土というゴム風船はパンパンに膨張し、負ければ縮むということです。

ロシアの起源は、882年頃に成立したキエフ大公国ですが、最初の首都はキエフで、えっ、そこってウクライナのいまの首都なのではと思う方、正解です。
このキエフ大公国は1240年に、モンゴルによって滅ぼされ、その後、モスクワ大公国へとつながっていきます。
ここで首都がモスクワになるのですが、以後ロシア・ツァーリ国(1547年~1721年)→ロシア帝国(1721年~1917年)と発展しました。
この間、ロシアが何をしていたのかといえば、東西南北に冒険商人を派遣して居住地を作ると、そこに砦を作って軍隊を置き、ひたすら征服をしまくっては領土を城げていたわけです。
そしてとうとうロシア版の「約束の地」である太平洋を臨む極東にまで到達したのです。ウーラー。

つまり、ロシア領のほとんどすべては「征服した土地」であって、日本のような海に囲まれた列島とその周辺の島々という海で区切られた分かりやすい領土ではなかったのです。
もしロシアに「固有の領土」はどこだと問えば、キエフとモスクワ周辺のえらく小さな国になってしまうことでしょう。

ロシアの後継国家であるソ連において史上最大の版図と、多数の衛星国を従えるようになったロシアは、第3次大戦、つまり冷戦に負けてナイアガラ瀑布の滝下りを演じてしてしまいました。
ロシア本体はかろうじて保持したものの、ソ連邦として領土化していたベラルーシ、ウクライナ、バルト諸国は独立し、外周部だった東欧圏はごっそりと脱落しました。
ロシアからすれば、歴史的な大縮小です。

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ウクライナ紛争 http://freezzaa.com/archives/1079

縮むと悔しいので、また元の大きさにもどすべく陰謀をめぐらし、相手を挑発し、戦争をしかけようとしました。
中国の習の夢が「中華の夢」と称して最大版図だった清朝領土の復活であるとすれば、プーチンの夢は最大版図だったソ連の復活なのです。
こうして起きたのがウクライナ紛争です。
このウクライナ紛争によってロシアは、現代国際社会の「国境線の力による変更を許さない」という国家間原則に触れてしまい、経済制裁を食うはめになります。

このように見てくると、丸山氏が言った「北方領土は戦争でなければ戻らないのではないか」というのはあながち的外れではありませんでした。
ロシア人知識人からこのような質問をされたことがあると、小川和久氏は述べています。

「1875年、樺太・千島交換条約で、樺太はロシア領、千島は日本領と決められました。ところが日露戦争の後、勝った日本は南樺太を領有しました。もし第2次大戦がなくて、現在ロシアが南樺太を返してくれと言い続けていたら、日本は返還してくれたでしょうか?」

おそらくノーでしょう。ましておや、「固有の領土」意識がないロシア人なら、ということです。

と言ってしまうとこれで終わりになるので、ここからが勝負なわけです。
今までのビザなし渡航を、戦略的に平和条約締結にむすびつけていこうとする政府の思惑もその一環です。

ところが今回の丸山発言は、ロシアには変な「安心感」を与えてしまったはずです。

「日ロ関係の流れの中で最もひどい(発言だ)」と述べ、批判した。モスクワで開催された日ロ知事会議の会場で記者団に述べた。 コサチョフ氏は「そのような挑発的な発言ができるのは、存在する問題の解決を望まない人々だ」と語った。(共同5月14日)https://www.sankei.com/world/news/190514/wor1905140004-n1.html

ロシアは別に怒ってはいません。常識的なことをマルヤマは言っただけでのことで、それ自体に驚きはないはずです。
むしろそれにオタつく政党や、待ってましたとばかりにバッシングに勤しむメディアの様子を苦笑しているだけのことです。
たぶんロシア人はこう思ったはずです。

「なんだヤポンスキーも我々と同じ発想じゃないか。日露両国の信頼醸成が大事だ、共同経済活動だとアベは言っているが、本心は戦争で奪い返すっていうオプションも持っているだな。そもそも日本の親方は米国だ。米軍にクリル諸島まで出張ってこられたらたいへんだ。この話は引き延ばすだけ引き延ばして、むしるだけむしってやるきゃないか」、と。

 

 

2019年5月20日 (月)

丸山議員の戦争発言

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丸山穂高議員が袋叩きにあっているようです。なんでもロシアと戦争するの、しないのと言ったとか。
立憲や社民あたりが騒ぐならわかるのですが、所属していた日本維新の会からもバッサリと除名されて、議員辞職勧告までされそうな勢いです。

もっとも議員辞職勧告は法的拘束力がなく、かつて鈴木宗男氏への勧告が可決されただけで、すべて否決されています。
すると辞職勧告だけではなまぬるいと見たのか、維新がなんとロシア大使館に謝罪に赴くに至っては、さすがに私も呆れました。

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「日本維新の会の片山虎之助共同代表と馬場伸幸幹事長は17日午後、東京都内のロシア大使館を訪問した。ガルージン駐日ロシア大使と面会し、同党を除名処分となった丸山穂高衆院議員の戦争で北方領土を取り返すことの是非に触れた発言を謝罪した。 出席者によると、片山氏は「わが党にいた議員の発言で不快な思いをさせた。維新の考えでは全くない」と釈明した。
 タス通信によると、ガルージン氏は丸山氏の発言について「受け入れがたい」としつつも、この発言によってロシアと日本の関係発展が逆行することはないと表明。謝罪は「本国に伝える」と応じた」(共同 5月17日)

やれやれ、クリミアをむしり取り、ウクライナを侵略し、シリアの反アサド市民に爆弾を降らせているロシアに対して、「戦争」を口にしただけで平謝りですか。ナイーブなことです。
安倍自民党に配慮したのでしょうが、ここまで゙やる必要はありません。せっかく統一地方選で躍進したのに艶消しでした。

自民よりスッキリした保守政党をめざす維新が、このオタオタぶりはみっともない。
2島返還容認論の立場ですが、橋下氏もこんな言っていることですから、「丸山議員の言説は我が党の方針とは異なります」でお終いにしておけばよかったのです。

ちなみにその橋下氏のツイートです。

「これぞマーケティング政治の真髄。ポピュリズムと批判されるだろうが、今の世論ではある程度支持されると判断したのだろう。ロシアにも一切の返還を認めないという強烈な世論がある。再び戦争しない限りは妥協するしかない。2島決着に賛成だ」(2019年1月20日)

立場は円山氏とは違いますが、戦争で失った領土は戦争でしか戻らないとする認識は共通しています。
一般論としてはそのとおりなんですがね・・・。

さて丸山さんはよく言えばイキがいいというか、悪くいえば右寄りの過激な発言をしてきた人でしたから待ってましたとばかりニ標的にされてしまったようです。
こういう舌禍事件の時には、なにを言ったのか押えておきましょう。彼の発言は丸山氏のツイートにあります。

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 ま、このツイートで文字化されているだけなら問題とされるほうがおかしいと思えます。ところがこれは5月12日に酔いが覚めてから発信したものなのです。

問題はその前夜11日夜のことでした。
国後島に元島民で組織するビザなし訪問団との懇親会の時のことです。団長の大塚小彌太氏が同行記者団の取材に応じていたときに、どうやら丸山氏がからんたようです。

絡み酒の癖があるらしい丸山氏は、大塚団長に「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」と議論を吹きかけたようです。
よくある議論好きの酔っぱらいがやりそうなことですが、内輪の飲み会でするならともかく、ロシアが実効支配している国後島でのビザなし渡航団という微妙なスタンスが分かっていてやっているとは思えません。

しかも相手が、長い時間をかけ粘り強い北方領土交渉に関わってきた大塚団長です。高齢になられてひとりふたりと欠けていく元島民の方ですから、デリカシーがないにもほどがあります。バカですか。
大塚氏が、「はい、戦争しましょう」なんて言うはずもなく、憤然と「戦争なんて言葉は使いたくない。戦争はするべきではない」とハネかえされました。

すると更に畳みかけるように、丸山氏は「戦争しないとどうしようもなくないですか」とやってしまいました。
大塚氏は内心、「なにが戦争だ、今までの交渉経緯も、いま首相が取り組んでいる領土交渉も知らないのか。このバカな若造め」、という気分だったのでしょう。

その丸山氏と大塚団長のやりとりのが明らかになっていますので、貼っておきます。
(高橋克己氏 アゴラより引用http://agora-web.jp/archives/2039115.html)

丸山穂高議員:「団長は、戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか?反対ですか?」
元島民・訪問団長:「戦争で?反対…」
丸山穂高議員:「ロシアが混乱しているときに、取り返すのはOKですか」
元島民・訪問団長:「いや、戦争なんて言葉は使いたくないです。使いたくない」
丸山穂高議員:「でも取り返せないですよね」
元島民・訪問団長:「いや、戦争したって…戦争するべきではない」
丸山穂高議員:「戦争しないとどうしようもなくないですか? 僕らはその、いいならいいし…」
元島民・訪問団長:「…戦争なんてやめてください」
丸山穂高議員:「何をどうしたいんですか」
丸山穂高議員:「何をですか」
丸山穂高議員:「どうすれば」
元島民・訪問団長:「どうすれば、って何をですか」
丸山穂高議員:「この島を」
元島民・訪問団長:「それを私に聞かれても困ります。率直に言うと、返してもらったら一番いい」
丸山穂高議員:「戦争なく?」
元島民・訪問団長:「戦争なく。戦争はすべきではないと思います。これは個人的な意見です」
丸山穂高議員:「なるほどね…。」
元島民・訪問団長:「早く平和条約を結んで解決してほしいです」

やはり全文を読み通しても議員としての常識に欠けています。国会議員が、こういったオフィシャルな席で、一般国民と「戦争」を手段として認めるのか否かについて、迷惑がっている相手に絡んでしまっているのですからどうかしています。

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おそらく丸山氏は、今までの彼の発言から憶測すれば、軍事的手段を欠いた領土交渉には限界があると言いたかったのでしょうし、一般論としてはそのとおりです。

丸山氏に言わせれば、北方領土は日本国領土ですから、他国の領土を武力で奪う利己的他害性を有する侵略行為ではないと言いたいのかもしれません。
ならばこれは他国との紛争解決ではないから憲法には抵触せず、自国主権内部から外国軍隊を排除する一種の正当防衛だといいたいのかもしれません。
苦しいなぁ。
というのは国際社会は、実効支配を領土の絶対要件としていますから、実に70有余手放した主権が認められるためには、いつにかかって二カ国間の交渉次第なのです。

かつて辞職勧告が可決されてしまった新党大地の鈴木宗男氏は、「政治家の究極の目的は世界平和。戦争による解決を持ち出す発想はあり得ない」などといっていますが、いかがなものでしょうか。
なるほど鈴木氏が言うように、日本国憲法の第9条は、「国際紛争を解決する手段としての戦争」を放棄していますが、わが国に対しての侵略まで容認しているわけではなく、今の国際社会秩序の不安定さを見るといつわが国を取り巻く状況が暗転するのかわからない状況です。

韓国のように平然と国家間の条約すら廃棄する事態が現実のものとしてあることがわかりました。
さらには、レーダー照射事件のように一方的に武力紛争化する場合すらなしとはいえません。
その場合、鈴木氏のように「世界平和」を唱えてさえいれば平和になるのでしょうか。

北方領土交渉においては、戦争で失った領土は、それがいかに不当であろうと、道理を欠いていようと、戦争以外の方法では返って来ないというのは厳然たる事実であって、沖縄返還は世界史上まれに見る例なのです。
それゆえノーベル平和賞が授与されたわけです。
国際紛争の解決手段としての戦争を憲法で放棄したわが国にとって、実力奪還は不可能に等しいわけで、だからこそ戦争で奪われた領土を外交交渉で取り返すというとてつもない難事業をしているのです

それをいまさら「一筋縄ではいかないと痛感した」なんてツイートするようでは、丸山さん、あんた交渉経過ちっとも勉強してなかったでしょうと思います。

世界第2位の軍事大国相手の領土交渉を、純粋に平和交渉だけで返還させるというのは無理がある反面、だからといって「戦争」という最終的解決方法が必要かといえば、それも違います。

というのは、安易に「戦争」などを叫ぶことは、今まで継続されてきた対露交渉のハードルを無視して、いきなり解決不可能な領域に送り込んでしまうことに等しいからです。
いま「戦争」を手段として唱えることは、憲法上の制約でそのような手段がとれないことが分かりきっているが故に、悪しき原理主義です。
これでは、現実になにもするな
と同じです。

ちょうど9条2項改憲を主張するゲル氏が、「原理的には2項改憲でなければ意味がない」といいながら、一方で「「野党も納得してから改憲論議を始める」と言っているようなもので、要はやらないと一緒のことです。

現時点で、北方領土交渉のネックは二つあります。
ひとつは2島返還された場合、残り2島の主権と帰属問題をどうするのかという主権の及ぶ範囲です。
ロシアは「北方領土返還」という日本側の用語にすら反発しており、4島すべての主権はロシアにあると主張しているくらいですから、仮に2島(ないしは面積的に半分)返還したとしても、領土を何らかの条件で有償譲渡したという形にしたいのかもしれません。

いまひとつは返還された2島に、米軍が安保条約を根拠にして基地を置くか、あるいは拒否するのかどうか、の問題です。 
これについてはドイツの再統合時の事例から不可能ではないと思いますが、ロシアは色よい対応を示していません。

いずれにしても、どちらもロシア内部の「神聖不可侵なわが領土をカネで譲り渡すのか」といったナショナリズムともろに衝突することは必定で、現にラブロフが年がら年中吠えています。
だから、大変な交渉をしている安倍氏の足をひっぱりなさんなと思います。

 

関連記事 http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/11/post-8277-2.html

 

 

 

 

2019年5月19日 (日)

日曜写真館 梅雨前のひとときです

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水田の向こうは湖です

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山椒のことを木の芽というのがわかります

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少し前までは裸樹でした

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柚子の花を知っていますか

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舗装道路の割れ目にすら咲くポピーです

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お百姓は水田の端に植えて楽しんでいます

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梅雨の前のひとときです

 

 

2019年5月18日 (土)

イラン情勢緊迫

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イラン情勢が沸点を迎えようとしています。

「ロウハニ大統領はテレビ演説で、英国、フランス、ドイツ、中国、ロシアに書簡を送り、濃縮ウランと重水の他国への売却をもはや行わないと通知したことを明らかにした。濃縮ウランと重水の輸出は核合意で義務付けられていた。
これら5カ国はイランの石油・銀行セクターを米国の制裁から守るという約束を60日以内に履行する必要があると訴え、果たされなければ高レベルのウラン濃縮を再開すると明言した。
5カ国が交渉の場に戻って合意が成立し、石油と銀行セクターにおけるイランの利益が守られるなら、同国は義務の履行を再開すると表明した。
ロウハニ大統領はテレビ演説で、英国、フランス、ドイツ、中国、ロシアに書簡を送り、濃縮ウランと重水の他国への売却をもはや行わないと通知したことを明らかにした。濃縮ウランと重水の輸出は核合意で義務付けられていた。
これら5カ国はイランの石油・銀行セクターを米国の制裁から守るという約束を60日以内に履行する必要があると訴え、果たされなければ高レベルのウラン濃縮を再開すると明言した。
5カ国が交渉の場に戻って合意が成立し、石油と銀行セクターにおけるイランの利益が守られるなら、同国は義務の履行を再開すると表明した」
(ロイター5月8日)
https://jp.reuters.com/article/usa-iran-rouhani-idJPKCN1SE0N8

米国は1年前にイラン核合意の枠組みから離脱していますが、これが1年後のイランの回答ということになります。
これでイラン核合意は事実上廃棄されたに等しい状態になりました。

2015年に締結されたいわゆる「イラン核合意」は、正式には「包括的共同行動計画(JCPOA)」と呼ばれ、共同という冠名称でわかるように核合意に参加した国々はオバマ時代の米国、ロシア、中国、ドイツ、英国、フランス、EUで構成されています。
ですから、米国の離脱に対して英仏独は厳しい批判をしています。

まぁ、他の締結国からすれば、渋るイランを交渉の場に引き出し、飲みたくない水を呑ませるのに実に13年もかかっていますから、トランプ流「思いつき」でつぶされたらたまらんということです。
そもそも壊しておきながらトランプに代替案があるのかないのかわからないわけで、あるのはCVID一直線です。
締結国からすれば冗談じゃないというのもわからないではありませんし、ちゃぶ台返しされた側のイランが怒るのも無理なからぬ側面もあります。

 

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産経

このイラン核合意は、オバマ時代に進められたもので、オバマ流現実主義が濃厚で、有体に言えば再びイランが核武装できる余地を残したあいまいな妥結でした。
内容を見てみましょう。トランプの怒りも理解できますよ。

728_41_nenpyo_i外務省http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics...

①イランは濃縮ウラン活動を25年間制限する。この期間は国際原子力機関(IAEA)の監視下に置く。
②兵器級核物質を作る遠心分離機数は1万9000基から約6000基に減少させる。兵器級にはウラン濃度が90%必要だが、3・67%までに制限する。
③既に濃縮済みのウラン量を15年間で1万キロから300キロに減少させる。
④ウラン濃縮活動は既にあるナタンツ濃縮施設で実施し、アラークの重水製造施設は核兵器用のプルトニウムが製造出来ないように変え、フォルド濃縮関連施設は核研究開発センターとする。
⑤以上の条約にイランが反した場合、経済制裁を再度導入するが、遵守すれば経済制裁を段階的に解除する。

読んでお分かりのように、一見イランが兵器級核物質をつくれないようにみえますが、時限条約なことに気がつかれたでしょうか。
たとえば③をご覧ください。イランは核兵器に転用できる高濃縮ウランや兵器級プルトニウムを15年間は生産しないといいますが、裏を返せば15年後には許されるわけです。
条約発効が2015年ですから、2030年まで、あと正味10年間イランが辛抱すれば再び晴れて核兵器開発に乗り出せるわけで、その時には国際社会はしょーがねぇなとぶつくさ言いながら容認せざるを得ないというわけです。 

また、②の遠心分離機も1万千基あったのを10年間は6104基に限定するというものにすぎません。 
これでは10年後にまた遠心分離機を元の数に戻して下さい、といわんばかりにもみえます。
つまり、いかにもオバマが作りそうな初めから腰が引けて妥協を急いだザル条約なのです。

その上に、核兵器と一体となったその運搬手段の弾道ミサイルについては、なんの規制もないまま無条約状態のままです。

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「米国が主張する最も重要な項目は、イランによる弾道ミサイル開発を制限することに「失敗」した点だ。非核ミサイル開発の継続を許したことで、この合意による核開発制限が期限切れとなった場合、イランはすぐに核弾頭を搭載することが可能だと批判派は指摘している」
(ロイター2018年5月9日)

https://jp.reuters.com/article/iran-us-deal-idJPKBN1HG14O

「欧州諸国がいかなる懲罰的な対応を取ろうとも、イランが、ミサイルの射程距離に表面的な「上限」を設ける以上のミサイル開発規制に同意することは考えにくい。(イラン政府はこれまで、射程距離2000キロを超えるミサイル開発を自粛すると示している。これは、何らかの軍事衝突が起きた場合に、イスラエル中心部や中東地域の米軍基地を狙える射程だ。) 」(前掲)

整理すると、イラン核合意の問題点はこんなことです。 

①核物質製造装置・核原料については時限つき制限を受けているだけにすぎない。
②条約失効後には、イランの核開発に歯止めをかける者がいなくなる。
③弾道ミサイルが合意に含まれていないために、野放し状態である。

その上に、イランは中東の覇権国になる野望を隠そうともせずに、中東の火薬庫に火種をくべて回っています。
たとえばシリアでは、ロシアと並んで凶悪なアサド政権の事実上の主力軍事力です。
イランは革命防衛隊という準正規軍を派兵して、反アサドの市民を大量虐殺していることが分かっています。

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イランが支援するハマス

イエメン、レバノンでも軍事支援してきました。
イエメン内戦では、サウジ正規軍とイラン革命防衛隊が交戦関係にあるといわれています。
もっとも米国が神経を尖らせているのが、パレスチナガザ地区を統治しているハマスがイスラエルにロケット砲を打ち込むなどの軍事挑発を続けていることです。
ジハードの主力であるハマスは、イラン革命防衛隊のパレスチナ出張所のようなもので、物心共に大きな支援を受けてきました。

とりあえずハマスとイスラエルは停戦合意をしましたが、同じくイランから軍事支援を受けるイスラム聖戦(PIJ)は停戦に合意していません。
この5月の停戦発効前にガザ地区から700発以上のロケット砲がイスラエル領土に打ちこまれましたが、これの武器を供給しているのがイランです。

もしイランが核兵器を手にしたら、イスラエルはイランの核の射程内に入ることになります。
その場合、イスラエルは宿敵イランに自らの生命を預けることは拒否するでしょうから、いままで隠然と保有いるといわれた核を公然と登場させることでしょう。

また、イランのもう一つの宿敵であるサウジも核武装に走る可能性が高いと言われています。
つまり、イランの核を容認すれば、イスラエル、サウジへと核の連鎖が始まることになります。
地域の複数国が核武装に走った場合、米国にも止められません。

一方イラクにおけるイランの浸透ぶりは、すさまじいものがあります。

「米国は、イラクで兵士5800人と複数の軍事基地を擁している。一方、イランは、公式には95人の軍事顧問を置いているだけだが、イランの勢力は米国の5倍はあると、アバディ首相顧問は言う。安全保障の専門家も、「イランの影響力は、イラクのあらゆる機関に浸透している」と述べる」
(エコノミスト2017年4月12日)

「これら民兵組織は、イラン革命防衛隊の助けを借りてバグダッド陥落を防ぐと、国を「守る」ため、残された国家機構の大半を事実上掌握した。既にバグダッドの大半は約100の民兵組織の間で山分けされている。ほとんどのイラク・シーア派は自国のシスタニ師に忠誠を誓うが、民兵組織の指導者の多くはイランの最高指導者ハメネイ師に従うと言う。一部の民兵組織は議会に代表がおり、2018年の選挙に向けて親イラン連合を結成する可能性もある」
(岡崎研究所 前掲)http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9603

イラクはありとあらゆる国家機関・軍隊に親イランの勢力が浸透され、事実上イランの属国状態となっています。
おそらく次の選挙で親イラン政権が成立するでしょう。
かくして駐イラク米軍はイランの海に浮かぶ孤島にすぎないまでに追い込まれ、先日来のイラン情勢の緊迫を受けて大使館員の一部の国外脱出が進められました。

このような中東の覇権国への意志をむき出しにしたイランが、核を手にしたらどうなるのか、これが米国の強い危機意識です。

さて米国は、最大12万人の兵力を投入する計画を持っているとNYタイムスが報じています。

「国防総省の対イラン攻撃計画は何年も前から更新され続けてきたが、今回の新たな計画は政権一の対イラン強硬派であるボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当の指示で策定された。
きっかけはイラン並びにその配下のアラブ人武装組織が中東地域の米軍に攻撃を仕掛ける危険性が高い、との情報があったためだ。計画にはイランが本格的に核開発に乗り出したケースへの対処も含まれている。
計画の最も重要なポイントは米部隊がイランに侵攻するのかどうかだが、侵攻までは考慮されていない。
米国は過去のイラク戦争で約4000人の兵士を失った。うち600人以上はイラン支援のイラク民兵の攻撃によるものだ。地上侵攻は避けたいはずだ 」(NYタイムス2019年5月13日)

直ちに陸上兵力の侵攻が行われる可能性は低いと思われます。この状況て先に手をだすほどイランは馬鹿とは思えません。
ありえるのは偶発的衝突が局地的戦闘となり、さらには戦争に発展するケースです。
衝突シナリオとしては、第1に先述した親イラン武装勢力による米国軍人・米政府関係者・民間人へのテロが起きた場合、第2にホルムズ海峡における小競り合いから軍事衝突に発展する場合です。

既にイランは原油の主要ルートであるホルムズ海峡付近で対艦ミサイルを発射するなど軍事姿勢を強めていますが、このホルムズ海峡に面するカタールのアルウデイド米空軍基地には1万3千人の米軍兵士が駐留しているとポンペオは認めています。
また5月13日にはこのカタールの基地にB52戦略爆撃機が到着し、エーブラハム・リンカーン空母打撃群も中東海域に到着しています。

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ホルムズ海峡 出典不明

ホルムズ海峡はもっとも狭い部分で30キロ余りしかありませんが、5月12日、ホルムズ海峡付近でサウジの石油タンカー2隻、ノルウェーのタンカーとUAEのタンカーそれぞれ1隻が何者かの攻撃を受け、船体の一部を破壊されるという事件が起きました。
イランは否定していますが、米国はイランの仕業だとみていますが、決定的拠がないようです。

この情勢で、イランから米国に軍事攻撃をかける理由は乏しいと考えられますが、偶発的衝突から本格的軍事衝突へと発展する可能性はよりいっそう高まったと思われます。

 

 

 

 

2019年5月17日 (金)

北朝鮮の最後の外貨獲得手段「奴隷輸出」も禁止される

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北朝鮮と韓国はいわば鏡あわせの中に住んでいる住人のようなもので、互いに妙に似ているため憎悪を抱いたり、尊崇してみたりしますが、結局は似た所に墜ちていくようです。
その合わせ鏡の軸になっているのが米国です。それは米国がヘゲモニック・ステート(覇権国)だからです。
ですから、米国との関係が良ければ経済も社会も安定しますが、基軸から離れるに従って悪化していきます。

今の状況がそれに当たります。
韓国の状況は昨日見たように、肝心な為政者のムン・ジェインが、この悪化の一途を辿る経済に無関心だから始末に負えません。
彼の頭には北しかなく、経済危機である事すら認めないのですから、対応策など出てくるはずもありません。
今や韓国の主要紙にすら「幽体離脱」と書かれている始末です。
肝心の為政者に当事者意識がないのですから、もはや治療不可能です。

では、合わせ鏡のもう一方の北はどうでしょうか。
こちらも初回の米朝会談において、世界のメディアはこのまま北が非核化路線に入ることによって、十重二十重の制裁が解かれて国際社会に復帰するという美しい勘違いをしました。

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ニューズウィークhttps://www.newsweekjapan.jp/glenn/2019/03/post-21...

結果は、正恩が米国を甘く見すぎていた祟りで、第2回会談で妥協を出し惜しんだために従来のノーディール(取り決めなし)状態に逆戻りしました。
トランプが核を全部放棄しろと言っているのに、使わない核実験場と代替施設がゴマンとある核老朽施設の廃棄ていどでは、「段階的非核化」もなにもあったもんじゃありません。
思い切って火星15の査察受け入れと、解体のための国外撤去くらいは呑むべきだったのです。

うろたえた正恩はハノイからの帰り道に中国にすがろうとしてあえなく断られ、ではロシアにすがろうと向かったウラジオストクでは予定を切り上げて失意の帰国をするハメになりました。
ロシア紙からも「なんの成果もなかった」と言われてしまっては、もはや投了同然です。

あまりに正恩が青くて未熟なすっぱい果実だとわかってしまったためか、北の特権階級はもぞもぞと蠢動を開始しています。
というのは「給料」が政府から出ないからです。

「昨年11月に筆者(加藤達也記者)がインタビューした元北朝鮮兵士の脱北者、呉青成(オ・チョンソン)氏は北朝鮮には月給という報酬制度は事実上、存在しないと証言。ソウル在住の別の脱北者は「北の住民は権力の大きさに応じ、ピンハネや恐喝で金品を得て暮らしている。権力は暮らしの糧だ」と明かした。 
この脱北者によれば体制を中枢で支える層は、正恩氏が「統治資金(外貨)」から下賜する金品も生活の大きな原資となっている。指導者による“面倒見”で、この多寡が特権層の政権への忠誠度を左右するのだという。
北は資本主義社会以上に“カネの切れ目”にシビアなのだ」
(加藤達也 産経5月13日「虎穴に入らずんば」)
https://www.sankei.com/world/news/190513/wor1905130010-n1.html

たとえば2018年には思いつき的にいきなり給料を10倍に引き上げましたが(おいおい、そんなことしたら普通の国だったらインフレになるぞ)、それを喜ぶ国民はひとりもいませんでした。
だっていくら紙が10倍に増えたってそれで買える商品がないんですから、なんともかとも。

「通常、給料が10倍になれば、市場でモノを買う人が増えて、物価や為替レートに変化が生じたりするはずだが、そのような現象は見られなかった。 その理由を情報筋は次のように説明した。
 「市場の基準通貨はすでに中国人民元になっている。また、他に先駆けて2013年から生産担当制を試験的に導入した単位(工場、企業所、機関)で働いている人は、給料を他より多くもらっていた」
 理由はそれだけではない。北朝鮮の市場でのコメ1キロの値段は5000北朝鮮ウォン(約65円)前後であることを考えると、給料全額をつぎ込んでもたった4キロのコメしか買えない。10倍になっても、平均的な4人家族の1ヶ月の生活費50万北朝鮮ウォン(約6500円)とは依然としてかけ離れた額なのだ」(デイリーNK2018年5月18日)
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/180522/soc1805220021-n1.html

食糧は北朝鮮政府が定めた1日1人あたりの配給目標は573グラムですが、そんなものは守られたためしがなく、国民は自力で食糧を調達せねばなりません。

工場の原料も来ない場合が多いので、これではどうにもなりません。

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産経 https://www.sankei.com/world/news/180809/wor180809

ではどうするのかといえば、自由市場に横流しして売りさばき、中国元を得て中国から原料を引っ張ってくるのです。
これでやっと原料も工員の食糧も確保できるというわけです。

「昨年、お上(金正恩氏)が平壌の化粧品工場を視察し、国産化粧品の質を改善し、生産量を増やせと指示を下した。それに従い、新義州化粧品工場も原料を中国から輸入して、質の高い化粧品を作っている」(情報筋)
工場への原料供給が正常化し、国からの生産量のノルマが増やされた。それでより多くの労働者と技術者が必要になったため、工場は高待遇を掲げて人員の募集に乗り出した。
工場の幹部は、生産した化粧品を市場で売りさばき、その代金でコメを購入、労働者に配給することで、人員募集とノルマの達成を同時にやってのけたのだ」(デイリーNK 2018年04月30日)
https://dailynk.jp/archives/109232?zkzk=110561

どうしてこのようなことになったのか、説明する必要はありませんね。
正恩が「核大国」になりたいという野心という、危険な妄想を抱いたからです。
この男は、人民にコメを配給することにはすこぶる吝嗇ですが、核兵器を作るカネには糸目をつけませんでした。

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https://www.youtube.com/watch?v=dDwMDPN8AZc

たとえば上の写真の長距離弾道ミサイル・火星15だと(右に正恩がいます)、ピースキーパー・ミサイルが約70億円ですが、北が作るとなると法外な吹っ掛けをされたことでしょうからその10倍はしてもおかしくはないと言われています。

「指導者就任後、正恩氏は米国を対等な核軍縮交渉に引っ張り出す戦略を立て、米東海岸を直撃できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の完成を目指した。ウクライナから高性能ロケットエンジンを技術者ごと買った疑いも出ているが、核・ミサイルが急激に高性能化したことを考えると高額な技術の買い付け先は多岐にわたるはずだ」(加藤前掲)

居抜きで技術者込みで言い値でウクライナから技術者込みで買ったようですから、果たしていったいいくらつぎ込んだのやら。
もちろん北朝鮮ウォンなんかで払ったら冗談にもなりませんから、米ドルでしょうね。
世界最貧国がこんな馬鹿げたことをすれば、直ちに外貨が払底して当然です。

ではお宝の外貨と食糧を得るためにどうしてきたのでしょうか。
ひとつは、堂々とたかりゆすりをして外国からの援助をせしめるというのが、金家のお家芸でした。
初代はソ連と中国を手玉にとって、その両方から支援をせしめるという高等テクニックを使っていたのですが、1991年のソ連のほうかいによってあえなくオジャン。
以後、6カ国協議で2代目が奮闘してなんとか糊口をしのいできたのですが、これも3代目が本気で「核大国」を目指してしまっために国連制裁を受けてパー。

そりゃあ売れるものならなんでも売りましたよ、はい。
鉛入りのマツタケ、他国のEEZでとってきた水産物(自国のEEZは中国に売っちゃったもんで)、弾道ミサイル、化学兵器、弾道ミサイル、そしてなんといっても北の「特産品」は覚醒剤と偽札でした(おいおい)。
2001年12月の海保に追いかけられて奄美沖で自沈した工作船は、覚醒剤を運んできたものだと思われています。
九州南西海域工作船事件 - Wikipedia

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https://mainichi.jp/articles/20161222/k00/00m/040/...

偽札は「スーパーK」と呼ばれた精巧なニセ100ドル紙幣で、これを大量に流通させていたこともわかっています。
この原盤を作ったのがイランで、当時からイランとは核開発・弾道ミサイルなども含めた裏ルートが存在しているといわれてきました。

それはさておき、まともなものでは石炭ですが、チャン・ソンタクの頃はじゃんじゃん中国に売り飛ばしてにわか成金すら誕生したほどです。
しかしその石炭もいまや制裁破りの禁輸品に指定されて、密輸したらあえなく米国に貨物船ごと拿捕されてしまうという悲劇。
返せ強盗め、と北が罵っても米国が返すはずがありません。

それどころかさらに制裁の壁は高くなる一方です。
このまま調子に乗って弾道ミサイルを発射していると、次は拿捕・海上封鎖の段階に入るでしょう。

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https://www.news-postseven.com/archives/20160613_4...

しかし実は隠し球がもうひとつあったのです。それは「現代の奴隷輸出」とまで言われている労働者輸出でした。

「1970年代から始まった北朝鮮の労働者の輸出は、1990年代に経済難が発生して以来、北朝鮮政府が海外で外貨を獲得する重要な手段になった。アメリカ国務省は『2006年例国際人身売買報告書』の中で、北朝鮮政府が自国国民を「非熟練契約労働者」として輸出していると取り上げ、こういった労働者に対する労働搾取と人権問題を指摘した。北朝鮮は現在、中国、ロシア、東欧国家、中東などへ労働者を派遣しており、その数は3万人に上ると推算される」(北朝鮮分析2010年3化通10日)
https://plaza.rakuten.co.jp/spada100/diary/201003120000/

北は輸出商品として労働者を出し、その賃金の8割をピンハネしてきました。

「オランダ・ライデン大学のレムコ・ブロイカー教授は10日、米政府系ラジオ放送「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」とのインタビューで「ポーランド各地では今も北朝鮮労働者が外貨稼ぎをしている」とした上で「ポーランドの造船所で外貨稼ぎのために働く北朝鮮労働者は1日12-16時間作業をしているが、毎月の給与は平均27ドル(約3100円)しかない」と伝えた。ポーランド企業が北朝鮮労働者に正確にいくらの給与を支払っているかは知られていない。 
米国務省などは「北朝鮮政府は海外で働く労働者が受け取る給与の70-80%をピンハネし、残りを労働者に与えている」との見方を示している」(朝鮮日報2018年11月12日)
http://www.chosunonline.com/m/svc/article.html?contid=2018111200866

海外に働く北労働者総数は約6万人から6万5000人、大所ではロシアと中国の二カ国。
それにサウジアラビア、クウェ―ト、アラブ首長国連邦など中東諸国、そしてアフリカ諸国など世界約40カ国に派遣されています。上の写真はタンザニアで撮影されたものです。
労働者海外派遣による総収入は推定で年間1億5000万ドルから2億3000万ドルとみられ、労働職種は建設業、レストラン、鉱山、森林業、道路建設などが主でした。

ところが対北制裁によって、北朝鮮の労働者の労働ビザ発給は禁止されたために、残された唯一ともいえる外貨獲得源であった労働者覇権ビジネスまでが解体の危機にあります。
ちなみに、先日のロシア訪問の裏テーマは、ロシアにいる8000人の北労働者のビザ再発給をプーチン氏に要請することだったと言われていますが、すげなく断られたようです。
しかも、中国までもが同調し始めました。

「中国政府が三月初旬、国内に北朝鮮から派遣されている労働者について、六月末までに帰国させるよう、雇用する中国企業などに求めていたことが分かった。複数の外交筋が明らかにした。国連安全保障理事会が北朝鮮に対する制裁決議で定める十二月の送還期限を、独自に繰り上げた形。制裁の確実な履行を要求する米国との間で貿易摩擦を抱えていることが、背景にあるとみられる。(略)
 国連安保理は二〇一七年十二月に採択した制裁決議で、北朝鮮が外貨獲得源として海外に派遣した出稼ぎ労働者を、二年以内に送還させるよう定めた。
中国が送還期限を約六カ月前倒ししたことについて、外交筋は「米国との貿易協議を意識しているはずだ」と指摘する。
 別の北朝鮮消息筋によると、北朝鮮は三月上旬、中国で活動する人民軍系列の複数の貿易会社に六月までに撤収するよう指示を出したという。消息筋は「(中国の期限繰り上げと)関連した動きだろう」と話している」
(東京新聞2019年4月23日)

このように北の最後の外貨獲得手段だった奴隷輸出の道も封鎖されようとしています。
まさに孤立無援・四面楚歌を絵に描いたようです。
 

 

 

2019年5月16日 (木)

韓国中央日報に見る韓国経済危機の現状

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模様替えしました。なんか自分のブログではないみたいですね(笑い)。

さて、朝鮮半島は南北共に仲良くドン詰まっています。

まずは韓国ですが、通貨の下落に歯止めがかかりません。
Investing.com でUSD/KRW - アメリカドル 韓国ウォンの相場を見てみましょう。まずは2017年からみてみます。ムンが就任後直後の2017年11月からの落ち込みが目立ち始めます。
ムン・ジェイン政権の始まりが2017年5月であったことを頭にとどめておいて下さい。

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https://jp.investing.com/currencies/usd-krw

直近の為替チャートです。

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現在は5月13日の相場が1187.50ウォンまでウォン安が進み、2017年1月から2年4カ月来の安値水準を記録しています。
このウォンの対ドル下落率は4月以降4.6%を超えており、主要国のうちトルコ、アルゼンチンを除くと最も高い下落幅です。

メドとされた1150~1170ウォンをあっさり突破してしまいました。鈴置高史氏はこのように述べています。

「4月30日のウォン急落も、同日発表の統計「2019年3月の産業活動動向」に足を引っ張られた側面が強い。
 3月の景気の動向指数(循環変動値)と先行指数(同)は、それぞれ前月比0・1ポイント下落した。2つの指数が共に10か月連続で下げるのは、1970年1月にこの統計をとり始めて初めて。
 2019年の第1四半期の製造業の平均稼働率は71・9で、世界金融危機直後の2009年第1四半期以来の低い水準となった。生産、投資はそれぞれ前期比3・0%減、5・4%減だった」(デイリー新潮5月2日)
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190502-00561166-shincho-kr

1150ウォンは、外国投資機関が韓国株を手放す分水嶺だそうで、ここを切る後はもうとめどなくウォンは落下していくことになります。

「症状はウォン安と株安の連鎖だ。ウォンが一定水準以下に下がると、ドル資産を基に運用する外国人投資家が保有する韓国株を売って損の拡大を防ぐ。株価が下がると外国人投資家はさらに保有株を売ってドルに替えるのでウォン安が進む――という悪循環である」(デイリー新潮前掲)

このまま放置すれば、遠からずホットマネーの餌食となってしまうことでしょう。
サムスン系の中央日報は原因についてこう述べています。

「深刻な経済難に苦しめられる両国に次いでウォンが急激に下がっているのは決して軽く見過ごすことではない。
ある国の通貨価値は対外的にその国の経済の総体的位置づけと競争力を反映するものだ。ウォンの価値急落はそうした点で韓国経済に深刻な危険信号とみなければならない。

原因をめぐって多様な分析が出ている。国内景気不振、対北朝鮮リスクの再浮上、米中貿易紛争、韓米の金利差などが議論される」(中央日報5月14日【社説】急落するウォン、経済体力の危険知らせる信号だ」
https://japanese.joins.com/article/318/253318.html?servcode=100&sectcode=110&cloc=jp|main|top_news

中央日報の分析は一部当たっています。
米中経済戦争による中国経済の停滞予測はそのとおりです。中国輸出で食っている韓国経済にとっていい影響がでる道理がありません。

韓国は輸出に有利なウォン安政策をとっていますが、景気が回復せず、不況はいっそうひどくなる一方です。

「通常ウォン安になれば輸出は好調を見せる。しかし輸出はこの5カ月連続で減少した。半導体輸出不振に主力輸出市場である米国と中国の貿易摩擦の影響が重なったためだ。
そうでなくても内需景気が低迷する中で輸出までウォン安の恩恵を受けられず韓国の経済体力に対する悲観論が広がり、これがウォンをさらに引き下げている格好だ。」(中央日報 前掲)

国債格付け機関のムーディーズは韓国に協議団を送っており、その際に韓国エコノミストと面談しています。その内容はいささか衝撃的です。

「質問=ムーディーズ側の関心は何か。
  エコノミスト=例年とは違って北核に関する質問はほとんどなかった。多くの韓国経済の数値と見通しはすべて把握して来る。
今年は
(1)成長率目標(2.6%)は達成可能か
(2)税収見通しが良くないが、財政健全性は悪化しないのか
(3)過度な半導体依存に対する代案は何か
(4)市場的だった韓国でなぜ全国民主労働組合総連盟(民主労総)のような反市場主義が勢力を強めるのか
という4つの点を詳しく問いただした。

 質問=格付けは落ちるのか。
  エコノミスト=すぐに現在の「Aa3」を[Aa2」に格下げする可能性は50%以下だろう。しかし今後の見通しを「安定的」から「否定的」に変える可能性は高いようだ。これは6カ月以内にマイナス要因が改善されなければ格下げするという予告と変わらない。

  質問=どんな影響が予想されるのか。
  エコノミスト=1999年2月以降、韓国は12回も格上げされた。保守・進歩政権に関係なく一度も格下げされたことはない。これが20年ぶりに格下げとなる場合、文在寅政権は致命傷を受けるしかない。これ以上は「経済が良くなっている」と言い張るのも難しくなる」(中央日報前掲)

ムーディーズは「反市場主義勢力」の民主労総がなぜ勢いを強めているのかと問うていますが、それはパククネ政権を「革命」して誕生させたろうそくデモの黒幕が民主労総だからです。

民主労総は職場を文字どおり支配しています。争議のワンシーンです。

「きれいに塗装されてベルトコンベアに載せた白い車が赤くさびた鎖で縛り付けられていた。鎖には大きな錠前まで付けられている。
50代の労働組合代議員が車の中に入り、別の鎖で手首を縛って車体とつなげた。決死抗戦の態勢だ。
もちろんベルトコンベアは停止し、工場の業務はマヒした。労使に分かれた従業員たちは歯でかみ切ろうとしたり、押し合いになったり、足げにしたりした。 24日、現代自動車蔚山工場の作業場で繰り広げられた光景だという」(朝鮮日報2017年12月3日)

完成車を出荷させないなどは手ぬるいほうで、いったん暴発すれば下の写真のような暴動まがいの「抗議行動」が見られます。 

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彼らはムン政権をパペットにしている事実上の政権のオーナーです。
ムン政権の最低賃金上昇政策による景気てこ入れという奇妙な政策も、彼らに言われるままに採用し、韓国経済を衰弱させる原因となりました。
関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2018/12/post-0a76.html

民主労総は各地で争議を頻発させているだけではなく、他の労組と職の奪い合いまでする始末で、よりいいところを見せようとするためか釜山の「徴用工」像設置にまで走っています。
また
いうまでもなく、民主労総は北朝鮮を崇拝する従北派です。

このような韓国版関西生コンに浸透された財閥系大企業は、生産現場を彼らに支配されたためにいっそう企業体力を奪われ、軒並み格付けで「ネガティブ」(投資不適格)宣告されています。

「雰囲気はさらに悪化している。ムーディーズは現代車、サムスン電子、SKハイニックスの格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。
3月には投資不振と輸出悪化、最低賃金引き上げによる雇用委縮を理由に成長率予測値を2.1%に下方修正した。4月初めに訪韓したS&P評価団も「所得主導成長が格付けにマイナスの影響を及ぼすだろう」と警告した」(中央前掲)

原因は、大統領のムンの無為無策とそれを認めない強引な政治手法にあると中央日報は指摘しています。

「それでも大統領は「巨視的に見ると韓国経済は大きく成功した」という幽体離脱話法に固執している。
「現実を認めない政府の存在自体がさらに大きな危機」という経済学者の警告には耳をふさぐ。
ここには所得主導成長の失敗を認めた瞬間、政治的に自滅するかもしれないという恐怖感がある」(中央日報前掲)

そしてもうひとつの大きな原因は、中央日報がさらりと書き流した「北朝鮮リスクの浮上」です。
こうさらりと書かれると、韓国は当事者意識がないと見えます。
中央日報さん、ムン政権が内政を放り出してまで金看板としてきた政策が、対北融和政策でしたが、お忘れになりましたか。

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https://grapee.jp/491989

私から見れば今の韓国経済の窮状は、ムン政権によって、この先地獄に突入することになるだろうという暗い予測が内外を覆っているからです。

韓国のウォン相場は米国との協調関係の善し悪しに左右されてきました。
たとえば、最大の通貨危機だった1997年のキム・テジュン政権時のアジア通貨危機では、デフォルト(債務不履行)寸前となり、韓国はIMFの管理下に置かれました。

「1997年の危機当時は、米国との関係が極度に悪化していた。米国は日本に対してもスワップを締結しないよう指示して韓国をIMF(国際通貨基金)の救済申請に追い込んだ」(鈴置前掲)

いちばん激烈に南北融和・米韓安保の見直しを叫んだノ・ムヒョンの政権時には、最高900ウォン/1ドルのウォン高から1600ウォン近くのウォン安へと短期間での乱高下を演じました。

このようなことは偶然ではありません。特に米国はこの間あからさまなまでに、意にそぐわない政権に対しては金融・為替などの非軍事的方法で打ちのめす手法を取っています。
今の最悪となった米韓関係と、韓国ウォンの地獄へのスリップ現象は無縁ではありえないのです。

ですから、ムン政権がどれほど為替操作してウォン安に誘導しようとも、輸出も国内需要も伸びないのは、ムンがとった基本政策が誤っているからです。
外に対しては日米政府と逆方向に走った仲介戦術、あるいは米韓同盟を廃棄することを米国にいわせたいとみえるムン政権への米国の意思表明でもあるのです。

中央日報は現実を見ないで成長し続けていると主張するムンを「幽体離脱」と皮肉った上で、唯一の救助方法は日韓スワップしかないとしています。

「まともな政府なら今ごろ、韓米通貨スワップは難しいとしても、韓日通貨スワップ程度は復元して最後の安全弁を用意しなければいけない。しかし危機意識がないというのがさらに大きな危機だ。青瓦台(チョンワデ、大統領府)は「良い経済数値」探しに気を取られている」(中央日報 前掲)

 なにが「韓日スワップていどは」だつうの(苦笑)、日本がそれを呑むことは絶対にありえませんって。

 

 

 

 

2019年5月15日 (水)

グラフで見る中国の貿易構造にみる米中貿易戦争の行方

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中国は米国の制裁関税に対して報復措置を発表しました。

「発表の数時間前には、トランプ米大統領が報復行動をけん制するコメントを発したものの、中国はこうした米国の圧力には屈さない立場を明示し、米中貿易摩擦は一層エスカレートする様相を呈している。
中国財政省によると、対象は米国から輸入する5140品目。中国は昨年9月、米国が発動した追加関税への報復措置として600億ドル分の米国製品に対し5%および10%の関税を上乗せしたが、今回この税率を5─25%とした。
液化天然ガスや大豆、落花生油、石油化学製品、冷凍野菜、化粧品など2493品目に対する追加関税は25%に、その他の1078品目は20%とする。ただ、原油や大型航空機などは、今回の追加関税の対象には含まれていない」(ロイター5月13日)
https://jp.reuters.com/article/usa-trade-china-tariffs-idJPKCN1SJ1QC

報復関税600億ドルの内訳はご覧のとおり 液化天然ガスや大豆、落花生油、石油化学製品、冷凍野菜、化粧品など2493品目です。
原油や航空機はまた別だと言っていますが、中国には気の毒ですが、これでは初めから中国の負けは決まったようなものです。

まず中国の貿易構造を押えておきましょう。
中国は世界最大の輸出大国です。2009年にドイツを抜いて世界一に躍り出ました。

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典拠 経済産業研究所 「世界一の輸出大国となった中国― 貿易大国から貿易強国へ ―」
https://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/100224world.html

さらに先日も述べましたが、中国の輸出に占める外資系企業の比率が実に3割という大きな割合を占めています。

「中国における貿易拡大の担い手は外資企業である。1979年から2009年までの30年間、香港と台湾の企業を含む外資による対中投資の累計は9,400億ドルに達している。外資企業は中国において工業生産の30%のシェアを持つようになっており、中国の輸出全体に占める工業製品の割合も90%を超えている」(経済産業研究所前掲)

これは、アップルやナイキ、あるいはホンハイなどのような米国や台湾の企業が中国の輸出の主力になっていることを現しています。
言い換えれば、ファーウェイのような海外で大きなシェアを持つ製造業はまだ少なく、外資頼みだということです。
ですから、米国の制裁関税第4弾は、これら外資ブランドの消費財を直撃したために、大きな打撃となります。

第3に中国の輸出は基本的に、日本の生産財に頼ってきました。言ってみれば、かつての高度成長期前の日本を思わせる加工貿易をしているのが現在の中国です。

「部品と機械を主に日本から輸入し、製品を主に米国に輸出するという「三角貿易」を反映して、中国にとって米国は最大の輸出相手国である一方で、日本は最大の輸入相手国である」(経済産業研究所 前掲)

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典拠 同上

これは日本の立場からすれば、中国が最大の輸出相手国ということになります。

中国の輸出の3割を占める外資系企業の部品・製造装置などの中間財を輸出しているのは日本ですから、今回の米国の制裁関税で最も大きな影響を受ける可能性があるのはわが国ですので、心しておいたほうがよいでしょう。

第4に、中国の上位の輸出相手国・地域を見ると、先進工業国がその大半を占めています。これは中国における外資主導の加工貿易の主要輸出先が先進国市場であることを表しています。

では、中国の最大の貿易相手国である米国の貿易構造をみてみましょう。

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典拠 海外投資データバンク 「アメリカの貿易相手国(輸出・輸入別)
http://www.world401.com/data_yougo/usa_boueki.html

「80~90年代の日米貿易摩擦のイメージから、アメリカの貿易相手は「日本の割合が相当多いだろう」と思っている人が多いかもしれませんが、現実は全く違います。ご覧のように、日本はアメリカの輸入内訳で第四位(金額ベースで6%)にすぎません。為替が円高・円安に関わらず、90年代以降は日本からの輸入比率は漸減傾向にあります」(上グラフと同じ)

日本は米国にとってカナダ、メキシコからの輸入額より少ない位置を占めています。これは日本の経済力が平成年間衰退の一途を辿ったことだけではなく、NAFTAで進出した米国企業が大きな位置を占めていることを物語っています。

しかしなんといっても輸入のダントツは中国です。
米中間の貿易で大きいのは中国から米国への流れで、米国から中国の流れはさほど大きくありません
トランプのいう貿易不均衡は、日本に対しては間違いですが、中国に対しては当たっているともいえます。
ただしこの米国の貿易赤字は、米国の好景気によってもたらされたものであって、貿易赤字の額のみに注目するのは間違っています。
ただし、今回のように米中間で貿易戦争をした場合、米国よりも中国が失うものが比較にならないほど大きいということは確かです。

しかも、米国が中国へ輸出しているのは下図のように、中国に進出した米国系資本の作ったPCや携帯などの電子機器だけで3割を占めています。
機械設備とあるのは、「キャタピラ」などのように米国企業ありながら中国メイドで本国に輸出している米国ブランドも多いからです。
これがトランプが、中国進出の米国企業に「さっさと帰ってこい」という理由です。

中国は米国への報復関税で「原油と航空機は別に考える」としていますが、言い換えれば代替がないということを白状しています。
中国が暗に認めるように米国は原油の輸出先に困っていません。
国際原油市場の難点は、かつてはOPECによる原油統制でしたし、その統制が緩んだ今は世界の火薬庫中東に依存しているし危うさがネックでした。
しかし、シェールガスの実用化により世界一の産油国となった米国は、原油供給の不安定さに嫌気を持つ国々にとって政治状況に左右されない米国原油は福音です。
こんな米国は、あえて中国に買ってもらわなくともかまわないのです。

https://eetimes.jp/ee/articles/1902/15/news029.html

一方、中国が米国に輸出しているのは、下図のようにほぼすべてが生活必需物資であり、他の国からの代替えがそれほど容易ではありません。

米国から中国への輸出品は中国で生産できない中間財や穀物などの食糧関連です。
中国の国際穀物市場での爆買いは有名で、下図のように今や中国は国際穀物市場を独占する勢いで毎年増加し続けています。

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戦略検討フォーラム http://j-strategy.com/opinion2/1457

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戦略検討フォーラム 前掲

「特に、大豆の輸入については7,900万トンと、過去最高となった2014/15年度の7,700万トンを更新する輸入見通しだ。これは、世界の大豆貿易量1億2,392万トンの内の64%になる。
中国の通関(海関)統計によれば、2015年8月の大豆輸入量は、前年同月比+29%の780万トンとなった。1-8月累計では、同+9.8%の5,240万トンで、国別内訳ではブラジル2,790万トン(シェア53.2%)、米国1,700万トン(同32.4%)、アルゼンチン530万トン(同10.1%)である」(戦略検討フォーラム 前掲)

このように見てくると、、今回の中国による報復関税の引き上げは、中国自らの消費者物価を直撃することになる可能性が非常に高いといえるでしょう。
中国は中華バブル期に14億人がかつての自力更生路線から白米と肉に走りました。
結果は自給国家からの転落と、輸入大国です。しかも米国産のです。

このように食糧輸入においても米国穀物の3割を穴埋めする国は現れない以上、代替は存在せず、そのまま小売り物価値上げにスライドしていきます。。
中国は去年以来の景気減速下の物価上昇ということに見舞われるかもしれません。
これによる民衆の不満がどこに向かうのか予断を許しません。

またこのことによって生じるであろう中国国内の消費市場の低迷は、「14億市場」を夢見て進出した外国系企業の熱を覚ますものと思われます。

 

※桜も散ったので、デザインを変更しました。今回はシンプルな新緑カラーです。

 

 

 

 

 

 

 

2019年5月14日 (火)

北朝鮮版イスカンデルは誰に向けて撃ったのか?

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先週5月9日にも、北朝鮮が短距離弾道ミサイルを発射しました。
今回は米国もためらうことなく、これを「飛翔体」なんてわけのわからない表現ではなく「弾道ミサイル」だと認定しました。

なんというのか、こりゃ落語でいう「間」ですな。意識的に一拍置いて余韻を作り、次の踏み込みを強調するって仕掛けです。
もちろん米国は初めからこれが「弾道ミサイル」だなんて分かっていました。
素人のウォッチャーですら直ちに「9K720イスカンデル」と識別できるのに、米国の軍事情報関係者が分からないはずがありません。

初めの発射の5月4日から5日後ですから、この「間」はいわば北に対して米国が頭を冷やしておけというというシグナルだったはずですが、例によって例のごとく北はこれを都合よく「容認」と受け取ったようです。
馬鹿ですね。しょーもない。この甘ったれた状況認識癖が改まらない限り、正恩はこれで国を滅ぼすことになるでしょう。

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聯合

正恩はよせばいいのに、現況で満ち足りずに核大国の夢を見ました。
今のままでも核などに頼らずとも、米国からは中国と自由主義圏とのバッファゾーン、逆もまた真なりという役割を珍重されていたのですから、そのままでもよかったものを。

どこの国もインフラがガタガタで、国民が総飢餓線上の国なんか攻撃したくはありません。
いったん攻撃してしまえば、周辺国対応もさることながら、北の戦後処理が面倒だからです。
地上進攻すれば、穴にこもった北朝鮮軍をひとつひとつ潰していかねばならず、苦労して勝ったとしても飢餓の民を放っておくわけにもいきません。

ですから、北の存在が「管理された危機」としてある分には、どうぞおかまいなくそのままカルト最貧国としてご自由におやり下さいというのが米中露日の本音だったのです。
これは反対側の韓国も一緒で、鈴置氏がかねがね指摘しているようにムンが「核を持った統一朝鮮」などという危険な妄想にさえとらわれなければ、このまま機嫌よくわけのわからない反日国家をやって頂いてもよかったのです。

それをなにをトチ狂ったのか、南北融和から始まって、核開発に長距離核ミサイルときたもんだ・・。もうため息が出ます。
ここまでやってしまっては、正恩の解決能力をはるかに超えてしまっています。
今やもう彼は自分で振り上げた拳の降ろし場所がなくなってしまっているのです。

方や米国は第3回会談という餌をぶら下げつつ、更に徹底した制裁強化を狙っています。
3回目の米朝会談を否定しないのはトランプの腹芸の類で、こちらが会談を口にしているうちに妥協しろよと言っているだけのことです。
従わなければ、さらなる制裁強化案を国連安保理に提出することになります。
その時になっても第3回の米朝会談の可能性をトランプが言うでしょうか。微妙ですが、言わないでしょうな。
ここまで追い込んで会談を口にするなら、そりゃハードルは第2回の比ではないことでしょう。

米国は、海上臨検かそれに伴う海上封鎖と拿捕、そして正恩の個人資産の完全凍結という段階に進むということになります。
むしろこれが既定路線で、今までの2回の会談が脇道だったのかもしれません。
すでに米国はインドネシアで北の貨物船を拿捕していますから、このような違法な国連制裁破りは今後海上臨検し、拿捕する可能性があるということを北に通告していますから、実施段階に入るのは簡単なことです。

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[9日 ロイター] - 米司法省は9日、北朝鮮船舶を差し押さえたと発表した。北朝鮮から不正に石炭を輸出し米国や国連の制裁に違反したという。米国が北朝鮮船舶を差し押さえるのは初めて」(ロイター5月9日 写真も同じ)

これを無視して更に家伝の瀬戸際戦術なのか、軍部なだめなのか知りませんが、ムン閣下就任3周年を祝砲のつもりか気持ちよく撃ちまくっているわけで、さてさてどうなりますことやら。
ひとつだけ確実なことは、ムン閣下の「人道支援」の夢がはかなく散ったということです。

北からも「なにが人道支援だ。エラソーに」と言われている始末ですから、ムン閣下どうするんでしょう。(知ったこっちゃありませんが)

「ソウル聯合ニュース】北朝鮮の対外宣伝インターネットメディア「メアリ」は12日、「根本的な問題の代わりに人道主義に言及することは口先だけの方便と恩着せ」と主張した。人道主義の内容については明らかにしていないが、韓国政府が北朝鮮に対する食糧支援を推進していることから、これを指すとみられる」(韓国聯合5月12日)
https://jp.yna.co.kr/view/AJP20190512000200882?section=nk/index

「口先だけの方便で恩着せがましい」とまで言われちゃ、仕方ないですな(笑い)。
北が要求しているのは開城工業団地の再開ですが、コレをすれば100%韓国はセカンダリー・ボイコットの対象となりますが、ムン閣下の煮え切らない態度を見ていると、ぜひ意地悪くこの肝試しを勧めたくなります。
まぁ、今の韓国が米国から金融アクセスの禁止をくらったら、冗談抜きで韓国は二度目のIMF管理に転落しますがね。

さて 一方、米国は一発目の発射以降、このイスカンデルの出元を探っていたと思われます。

「高度なミサイルの試射に最初から成功していることから考えると、北朝鮮がイスカンデルの完成品をロシアか第三国から輸入したと考えるのが自然だ。ロシア軍向けのイスカンデルMの射程は400キロ以上、輸出用イスカンデルEの射程は280キロ以下である」(静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之 『NEWSを疑え!』第768号(2019年5月13日特別号))

出元は、西氏の指摘ではロシアそのものが売ったか、ないしはロシアから買ったものを転売したものだと思われるようです。
ロシアは、天然ガス以外売るものが枯渇しているのて、外貨を稼げるならなんでも売ります。
「特産品」の軍事製品はその目玉商品で、戦車から戦闘機まで売れるものはなんでもみさかいなしに売ってきた過去があります。
虎の子のスホーイ27を中国に売ったら、違法コピーされたことさえあります。
ただし、売ったのはモンキーモデルの型落ちですが。

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上の写真(西氏前掲)は左がロシアのイスカンデル、右が北朝鮮が5月4日に発射した「精密誘導兵器」ですが、ロケット技術者のマルクス・シラー博士(ドイツのシュムッカー・テクノロギー社)は矢印の留め具と発射レールの類似を指摘しています。

仮に正規のものなら、たとえばこのイスカンデルならM型は400キロ以上の射程ですが、輸出商品は自分に向けて撃たれるとシャレにならないのでその半分程度の280キロ程度に押えてある廉価版です。
現在の状況で、ロシアが正規品を売るとは思えませんから、かつての顧客のシリアかベラルーシあたりからブラックマーケットを経て買ったものだと思われます。北はシリアのアサド政権に化学兵器を提供していた過去がありますから、おそらくアサド゙政権が売った可能性が濃厚です。

北-シリア-イランは、武器・化学兵器・弾道ミサイルや核開発技術の国際地下ネットワークを作っています。
北の弾道ミサイルの原型はスカッドですが、これもこの両国のいずれかから入手したもので、それを自国生産して逆に売りつけています。
今、米国は北と並んでイラン制裁にも乗り出していますから、その影響もそのうち出るはずです。

それはさておき、北が入手したのは、モンキーモデルでしょうから、誘導装置や射程などはかなり本家版から割り引いたほうがよさそうです。

ちなみに、 韓国も10年前からイスカンデルそっくりさんの玄武2B弾道ミサイルを保有しています。
この韓国版イスカンデルも朝鮮日報(2011年6月)によれば、ロシアにおいて弾道ミサイルの解体を請け負っていた韓国人スクラップ業者が、国家安全企画部(現・国家情報院)の指示で盗んだものだそうです。
やれやれ、南北揃って、他人様から盗んでコピー製品を作るという発想が同じというのが泣かせます。

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韓国聯合

それはさておき、北がこの米国が与えた「間」を理解することなく5日後に2回目を撃った相手は日米ではありません。
それは北の世界唯一の「友邦」であるかの国のケツを蹴り上げ、ついでに軍部をなだめるために撃ったのです。

米国は苦笑いしていることでしょう。
射程推定280キロでは朝鮮半島の半分ていどしか届きませんから、痛くもかゆくもありません。
到達可能な米軍施設は、平沢(ピョンテク)市の在韓米軍司令部も烏山(オサン)空軍基地のみで、軍事境界線100キロ後方から撃てば射程に入ります。

仮に北が撃っても、ミサイルはみかけは大きいのですが、全部爆薬ではなく大部分は燃料ですから、炸薬量はイスカンデルE型で480キロにすぎません。
つまり航空機がぶら下げている1000ポンド爆弾一発ていどの威力しかないのですから、命中してもビルが半壊すれば御の字ていどのものです。
そもそも航空機なら、1000ポンド爆弾をF15Eストライクイーグルならば13発搭載できるとされていますから、1機で13発分のイスカンデルと同等だということになります。
こんな貴重品のイスカンデルをなけなしの外貨を叩いて買ったのでしょうから、いったい何発あるのやら。
というわけで、北の弾道ミサイルをみくびってはいけませんが、過剰な不安を抱く必要もないのです。

 

 

 

 

2019年5月13日 (月)

米中決裂

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米国の対中経済制裁第4弾が、今日、正式に発表されます。

「【ワシントン=河浪武史、シリコンバレー=白石武志】トランプ米政権は13日、中国からの輸入品すべてに制裁関税を拡大する「第4弾」の詳細案を公表する。スマートフォン(スマホ)やノートパソコンなど消費者に身近なハイテク製品にも25%の関税が上乗せされる懸念がある。日本や韓国、台湾などアジアに広がるサプライチェーン(供給網)への影響も避けられない。
トランプ大統領は残るすべての中国製品の関税を引き上げるよう指示した。金額はおよそ3000億ドル(33兆円)分になる」。米中閣僚級協議が平行線に終わった10日夕、米通商代表部(USTR)は急きょ声明を出した。産業界の意見を踏まえて発動日や対象品目を最終的に決める予定で、実際の発動には2カ月以上かかるのが通例だ 」(日経5月12日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44690520R10C19A5EA2000/

今回のことが衝撃的だったのは、その3000億ドル(33兆円)という数字そのものではなく、従来制裁対象外とされた輸入依存度が高い品目が対象となったことてす。
その多くは下図にあるように、スマホやPC・衣類などの一般消費財で、その多くは米国ブランドです。

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日経前掲

トランプは返り血を覚悟しています。でなければ、このような制裁関税のかけ方はしないでしょう。

「第4弾は家計を直撃する消費財が多いのも特徴だ。米ピーターソン国際経済研究所の分析によると、第4弾の対象品目のうち、IT製品や玩具など消費財は全体の40%を占める。消費者への直接の影響を避けるため、第1弾と第2弾は消費財の割合が1%と低く、家電・家具などを含む第3弾でも24%だった。
USTRは第1~3弾で対中依存度が5割を超える玩具や履物、布製品を対象から外すなど、他国品では代替しにくい品目をリストから除き物価上昇を極力避けてきた。だが第4弾で制裁対象が大幅に拡大すれば、国内総生産(GDP)の7割を占める個人消費が下振れするリスクも高まる」(日経前掲)

つまり、安価な労働力を目当てに中国に進出している米国系企業のみならず、世界各国の中国進出企業は、中国から輸出するに当たって製品に一律に25%の制裁関税がかかってくるということになります。
たとえば日経が記事の中で「象徴的」として紹介しているのはアップルです。

アップルの主力スマホiPhoneは、約200社に及ぶサプライチェーンからなっていますが、最終組み立ては中国です。
組み立てているのは、台湾の総統選にも出馬を宣言した郭台銘率いる鴻海(ホンハイ)精密工業です。

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ウォールストリートジャーナル

中国に進出した外国企業のビジネスモデルはこうです。
ダイソンやアップルの製品には、design by USAとかUKとか書いてありますが、Assembly in Chinaとも併記してあります。
これは商品企画・設計・マネージメント・アフターサービスなどは本社の「川上」でやり、「川下」の生産は中国でしているということです。
利益率も川上のほうが遥かに大きいですから、今回の第4弾の追加制裁は川上を直撃します。

また川下を握るのもこれまたホンハイのような外国系企業ですが、ここも上の写真のように産業用ロボットを導入せずに内陸部の安い労働力を使って労働集約型で利益を出しています。

ですから、今回の第4弾の制裁関税でこの中国進出企業のビジネスモデルが根本的に崩壊しかねません。
ホンハイはインドに逃避しようとしていますが、そう簡単に拠点工場を移すのは困難だとみられています。
郭さん、足元が燃えだしましたよ。総統選なんかでカネ使っている場合じゃないと思いますが。

また同じことはユニクロにも言えます。ユニクロは、従来の第1弾から3弾までの制裁関税では革ベルていどしか引っかからなかったのですが、この第4弾でほぼすべての製品が対象となる予想です。
ユニクロはかねてから中国シフトを縮小し、東南アジアや南アジアに分散を開始していましたが、これか決定的な中国離れの後押しとなることでしょう。

米国メディアによれば、アップルの場合、この第4弾の25%追加関税を食らった場合、主力モデルで160ドル(約1万7600円)もの値上げになるとの試算が出ているといいます。
常識的に考えて、1万7千円もスマホが値上がりしたら、ただでさえ高いので有名なiPhoneの価格競争力はゼロに等しくなります。

トランプの目的ははっきりしています。日経の見立てのように世界のサプライチェーンから中国を切り離し干上がらせることです。
過度なグローバル化が中国の急成長の秘密でしたが、ここから中国を追い出すと決意したことになります。
そのためには、米国企業であろうとも例外はないということになります。

影響はもちろん米国・中国のみならず、世界的なものとなるでしょう。

アップルのiPhoneの需要が低迷した場合、表面的には日本はiPhoneの完成品を生産していないため、日米二国間の輸出入金額には大きな影響が出ませんが、中国に向けて輸出される日本産部品への需要は縮小し、結果として日本経済にもマイナスの影響が及びます。

また、日本からの輸出だけではなく中国広州に新工場をつくってしまったトヨタを先頭に、多くの企業が中国進出していますから、受けるか影響はより大きく、かつ複雑なものになるはずです。

今日の株式相場は週明けからナイアガラとなるでしょうし、先行きはまったく読めなくなります。
当然、消費税など上げている場合かということになるはずです。

下の図表はやや古いのですが、OECDにより2015年に発表された国際産業連関表(2011年)に基づき、アジア各国と米国の「国内外最終需要依存度」を算出したものです。
各国の自国最終需要への依存度をみています。

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典拠 大和総研

ご覧のように、棒グラフの青色が自国消費分ですから、米国と日本は並んで9割弱が自国消費です。
この国内需要が鉄板であることが日本経済の強みです。
ただしこれを支える6割の個人消費次第が景気の不透明感に嫌気をさすと、デフレ帝国の逆襲となります。

一方、アジア諸国も、内需主体といわれるインドネシア・フィリピンは自国への依存度が8割に迫っているのに対し、韓国は6割、タイやベトナムは5割強にとどまり、国外需要への依存が相対的に大きいといえます。

国外依存のうち中国が占める割合を見てみましょう。

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典拠 大和総研

台湾、マレーシア、韓国が高い比率を示しています。
今回、早くも第4弾制裁が発表されると、中国依存度が高い韓国ウォンなどの通貨が投げ売られているようです。
事次第では、第2次アジア通貨危機に連鎖する可能性も捨てきれません。

特にウォン安が止まらない韓国にとって、更にホットマネーが売り浴びせられた場合、これが最後の一撃となるかもしれません。
その場合、既に外貨が払底しているうえに、通貨スワップもないに等しく(もっていてもジャンク債)、おまけにヒダリ特有の重度の経済オンチであられるムン閣下が座っている韓国はどうするのでしょうか。(まぁ、知ったこちゃありませんがね)

米国は返り血をあびる覚悟で、中国に進出した米国企業を国内に力づくで呼び戻そうとしています。
トランプのツイートはこう言っています。まぁ、そのとおりですな。

「関税を避けるためのそのような簡単な方法は? 古き良きアメリカであなたの商品や製品を作るか生産してください。 とても簡単です」
Such an easy way to avoid Tariffs? Make or produce your goods and products in the good old USA. It’s very simple!

中国の発展は、トランプにいわせれば、米国の技術と富を盗むことから始まりました。

●中国経済発展のビジネスモデル
①外国に低賃金で資本投下をさせる
②同時に技術移転を強要させる
③その外国技術を違法コピーし類似品を国内製造し、安価で輸出する
④中国から輸出品は為替操作による元安に助けられ、シェアを独占する
⑤外国企業は中国市場では資本移動を禁止され、経営介入されて中国市場から駆逐される

スマホのファーウェイが典型ですが、先端産業は米国が技術の主要な原産国であるにもかかわらず、いまや衰退の途を歩むことになります。
これは目先の利益に目が眩んだグローバル企業にも問題があるんだよ、アップルよ、自分の国に回帰しろ、そうトランプは言っているわけです。 

トランプはさらにFRBに1%利下げしろと命じました。
大統領のFRBへの命令権はないのですが、想定される対中経済戦争による景気後退の歯止めであることは間違いありません。

今後ですが、正直よくわかりません。
いちおう2カ月の猶予期間が設けてありますが、それは貿易の国際的慣習に従ったまででのことで、トランプはソンナものが役に立つとはおもってもいないでしょう。

というのは、ここまで強烈な第4弾を出した対中要求理由は、経済分野だけでもこんなにあります。

●米国の中国への要求
①資本取引規制・移動の自由化
②中国市場への自由なアクセスの完全保障
③外国企業経営への介入禁止
④為替操作の禁止
⑤知的財産権の剽窃防止と保護
⑥不正な輸出補助金の完全撤廃
⑦国営企業への保護の禁止
⑥労働教育施設を用いた奴隷労働の禁止
⑨以上が法律により担保され、行政による恣意的運用ができない環境づくり

更にこれに交渉項目には入っていませんが、今後中国との交渉で出てきそうなものは、南シナ海の人口島の解体、一帯一路政策の中止、国内の少数民族保護や人権尊重なども加わってくるでしょう。
これは中国共産党が自ら築いてきた利権を手放さねばならないことが故に、中国は絶対に呑めません。

これをすべて呑んだら、中国共産党のビジネスモデルそのものが根本的に瓦解し、晴れて「普通の国」となります。
「普通の国」とは、中華帝国はいくつかの自由主義の国家群に分解し、自由選挙が行われ、少数民族と人民の自由が回復することです。
あまりにも当たり前のことですが、それが中国国民と周辺国にとっては最良のことなのです。
しかし、かの国がそれを易々と呑むような可愛いタマでないことは誰もが知っています。

 

 

 

 

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