うるま市長選挙 市民の「移転阻止」に醒めた眼 

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ご存じのようにうるま市長戦で、島袋現職市長が当選しました。翁長知事率いる「オール沖縄」の宮古、浦添に継ぐ敗北です。

・島袋俊夫・・・31,369.000票
・山内末子・・・25,616.000
・得票差  ・・・5753票

一時は接戦と伝えられていたので、5753票もの大差がついたことには、私も驚きました。

完全に潮目が変わったことはたしかなようです。 

それを伝える沖縄タイムス(4月25日)です。

「8年ぶりとなる同市長選は、政府・与党が島袋氏を、名護市辺野古の新基地建設に反対する翁長雄志知事ら「オール沖縄」勢力が山内氏を支援する対立構図となっていた。双方が来年の知事選に影響する重要な選挙と位置付け、激戦を繰り広げてきた。
 選挙戦では、8年間の市政運営に対する評価や子育て支援策、経済施策などが大きな争点となった。島袋氏は企業誘致による雇用拡大で、失業率を10ポイント以上も改善した実績をアピール。今後は中城湾港新港地区のクルーズ船誘致などでさらなる経済の活性化を目指す。山内氏は市政刷新を訴えたが、島袋氏の支持基盤の強さに阻まれた」

Photo沖縄タイムス 

ご承知のように、この市長選はただの市長選ではなく、「翁長城」の外堀をめぐっての戦いでした。 

来年1月には、「翁長城」の内堀である稲嶺名護市長の続投を問う、名護市長選が待ち構えています。 

この名護市長選で、翁長氏サイドが4連敗目を喫すると、翁長氏の2期目はほぼ消滅します。 

C97qv3cumaajg_p山内末子候補ポスター 

「オール沖縄」は、その名から分かるように寄せ鍋集団にすきません。もはや「オール」という冠は重荷にすらなっているように見えます。 

そもそも城間那覇市長と稲嶺名護市長の2人しかいないのに、「オール」を名乗るのは図々しいというべきです。 

翁長氏は2014年11月に「新基地反対」「移設阻止」を掲げて当選しました。 

その結果、翁長知事は「移設阻止」に特化した知事という、世にも奇妙な地方行政官となってしまったわけです。 

ほかにもやるべきことは、沖縄に山積しているはずです。ぬかるみのように続く地域経済の落ち込み、それに伴う失業や貧困問題などは待ったなしだったはずです。

仲井真氏は大胆な経済ビジョンを構築し、その具体化に取りかかった所で、矢折れ刀尽きました。

仲井真氏を継いだ翁長氏は、中国詣で以外県の経済問題になんの手も打とうとしませんでした。

その理由は翁長氏の経済オンチぶりもありますが、それ以上に彼は「決められない首長」なのです。 

なぜなら支持基盤は、基地問題を巡っても共産党の「全基地地閉鎖」から、民進党の「基地容認」まで様々あるからです。 

その結果、最小限公約を掲げるしか「オール沖縄」にはできないわけです。 

つまり、「辺野古反対」「オスプレイ反対」、これ以外「オール沖縄」の政策(と言っていいのなら)はありません。 

これを越えると、「オール沖縄」の誰かが必ず反対し妨害しようとします。

辺野古以外に唯一ある現実的選択肢であるのハンセン敷地内への移動(小川案)は、「県内」にこだわる共産党の強固な反対に遭遇します。

県の経済界から待望される那覇空港第2滑走路建設さえ、今までとの不整合を問われた翁長氏は岩礁問題で工事を遅らせることすらためらいませんでした。

翁長氏からすれば、県民の利害などはどうでもいい、共産党に見捨てられたくないの一心なのでしょう。

このように翁長知事はこの最小限公約の針の穴のような可動範囲で動くしかなかったのです。 

それが明らかになったのは、現実的妥協と落し所を探るべき、去年の3月から半年間の「和解」調整期間に、毎月官房長官と膝を交えて会談する機会がありながら、なんの解決も見いだせなかったことです。 

落し所を見いだせないなら、司法判断を仰ぐしかないわけで、結果は最高裁まで上告して完敗です。 

現実的妥協ラインを設定できない政治家などは、ただの運動家、あるいは騒動師にすぎません。

 

Cig17m5uoaqv6yp警官隊に排除される山内候補 

まったく無関係なうるま市長選で、仮に山内氏が当選したとしても、まぁそれだけの話で、国はなんの関係もないと突き放したことでしょう。 

今回、米兵レイプ事件という神風が吹かなかったのに業をにやした地元紙は、「米軍流れ弾事件」をデッチ上げて反基地ムードを煽ろうとしましたが、無残にも失敗しました。 

既に移設阻止闘争は、去年に最高裁判決が出た時点で終わっています。

今なお翁長氏は岩礁問題などで延長戦をしたいようですが、それを見る県民の目はとうに醒めてきていると知るべきでしょう。 

それが改めてわかったのが、このうるま市長選挙でした。 

問題はむしろ、この「オール沖縄」の崩壊現象に際して、しっかりと翁長氏と稲嶺氏に対置できる保守候補者を絞り込めない保守陣営の問題です。 

それについては別稿に譲ります。 

 

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北朝鮮危機を整理しておきましょう

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長々と書いてきた北朝鮮危機を、短く整理しておきます。

今は戦争が始まるかどうかフィフティ・フィフティの状況です。

なぜなら、習に投げられたボールのお手並みを拝見している段階だからです。

基本的に2択です。

●(1)習がトランプとの約束に成功した場合
①中国の北朝鮮コントロールが実証されて、中国の国際的威信が高まる。
②北朝鮮から根深い恨みを買うことになる。
③米国は中国に宥和的になる。疑似G2関係ができることもありえる。
④トランプは支持層から離反される。
⑤南シナ海での中国の覇権を暗黙で承認する可能性がある。
⑥テロ支援国家指定をしない可能性がある。

(1)は火種を温存したままのあいまいなシナリオです。

朝鮮半島の武力紛争は一時的に回避されますが、周辺国情勢に大きな影を落します。

日本にとっては短期的には朝鮮半島の紛争が回避される代わりに、中長期的には中国のアジア覇権をトランプが容認する可能性すら出るので、複雑な立場ということになります。

ロシアが妙に北朝鮮の肩を持ったような態度をしたりするのは、米中接近されるとロシアの分が悪くなるからです。

ですから、ロシアは中国の「説得」を妨害しようとするでしょうし、北朝鮮への原油などの支援を継続することで正恩への影響力を保持しようとするでしょう。

トランプにとっては公約の中国との貿易戦争をやらずに、政治的にも協調するとなると、かつてのG2路線に復帰することを意味します。

これではラストベルトの労働者の失望を買い、政治的求心力を喪失するかもしれません。

Maxresdefaultカールビンソンと共同訓練する自衛艦

もうひとつのシナリオは、中国が「説得」に失敗した場合です。

●(2)習が北朝鮮の「説得」に失敗した場合。
①トランプは元の単独行動路線に復帰する。
②G2体制は未来永劫できない。
③習は中国共産党内部で、江沢民派の巻き返しにあい、激烈な内部闘争が勃発する。
④ロシアとの距離は相対的に縮まる。
⑤南シナ海問題では、中国の覇権を認めない。
⑥テロ支援国家指定を行う。
⑦経済封鎖が実施される。

(2)は中国の北朝鮮へのコントロール失敗のケースです。

先日の「圧力をかける国には核攻撃をしてやる」という名指しこそ避けていますが、あきらかに中国に対しての核攻撃を宣告するところから見ても、うまくいっているとはいえないようです。

「説得」が失敗した場合、テロ支援国家指定が始まります。海洋封鎖や、金融関係を封じて経済的日干しにするでしょう。

それでもラチがあかず正恩が核実験や弾道ミサイルを発射し続ければ、最終的選択である軍事オプションとなります。

いいかえれば、北朝鮮が先制攻撃を仕掛けない限り、この経済封鎖期間が挟まるわけで、いきなり始まるということはありえません。

米軍がまだのんびりして見えるのはそのためです。

武力紛争に至った場合、民間人の被害、難民、テロなどの可能性が出るでしょう。

国際関係的には日露が有利になります。

最悪シナリオでは、正恩が核を使うケースもないとはいえません。その兆候が現れたら、米国は躊躇なく予防的先制攻撃をするでしょう。

米軍が戦端を切る場合の注目点は以下です。

①北朝鮮がミサイル実験をもう一回やった場合、成功するかどうか。
②同じく6回目の核実験をやって成功するかどうか。

①②が成功すれば、(1)の中国の「説得」が失敗したわけで、自動的に(2)シナリオとなります。

テロ支援国家指定実施は、北朝鮮と取引がある中国系銀行にとって、米国との取引ができなくなる悪夢ですが、それが現実になります。

また米軍は今までの威嚇的効果をねらった軍事行動から、本気モードに入ります。

●米軍が先制攻撃する場合の兆候
①空母打撃群の集中。最低で3隻。できれば6隻
②本土からの増援の到来
③情報ブラックアウト
④米国民間人避難計画の発動

ですから、以下の兆候が在日米軍に現れたら警戒度を高めましょう。

①カールビンソン打撃群の消息がわからなくなる
②横田、嘉手納、普天間、三沢、岩国などに大量の航空機が来援する、
③米軍の動向がさっぱり発表されなくなる
④米国人とその家族の避難が秘かに始まる

北朝鮮はいつも気が狂ったようなことを喚いているのですが、妙に静かになった時は危険です。

もっとも良いシナリオは、核実験と弾道ミサイル発射に共に失敗したケースです。これは、米国のサイバー攻撃が的確に成功している証です。

その場合、米国は先制攻撃する必要がありませんから、一定期間は様子見の膠着状態となります。

正恩は居すわりますが、核と弾道ミサイルを封じられていれば、「凶器を持った貧乏な狂人」から「ただの貧乏な狂人」となるので脅威度は減ります。

日本としては、とりあえずこれが最良のパターンです。

くりかえしますが、今は戦争が始まる状況ではありません。備えながら、いくつもの可能性を考えながら状況を注視する時期です。

おっと、ちっとも短くないじゃないか(笑い)。

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速報 うるま市長選に現職島袋氏当選される!

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おめでとうございます。やりました!

うるま市長選現職島袋氏当選です。「オール沖縄」に対しての、大きな一歩、だめ押しの一歩です。

翁長「オール沖縄」4連敗です。次は天王山の名護です。

歯ぎしりせんばかりの琉球新報です。

Photo当選した島袋俊夫市長

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翁長知事の応援もむなしく落選した反基地運動家の山内末子氏。
日本共産党サイトより引用http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-04-21/2017042101_08_1.html


「任期満了に伴う、うるま市長選は23日投開票され、3期目を目指した現職の島袋俊夫氏(64)=自民、公明推薦=が当選を確実にした。翁長県政と政府与党との代理戦の様相を呈していた中、自公は7月にある那覇市議選や来年1月の名護市長選、県内政局の天王山となる県知事選に向けて弾みをつけた。
 島袋氏は、経済振興を中心に中城湾港新港地区への企業誘致や「市民協働のまちづくり」を掲げ、市政継続を訴えていた。
 うるま市の当日有権者数は9万4629人(男性4万6953人、女性4万7676人)。投票総数は5万7439。投票率は60・70%で、8年前の前回(62・55%)よりも1・85ポイント下がった。

 島袋 俊夫(しまぶく・としお) 1952年10月生まれ、市天願出身。沖国短大卒。旧具志川市議会議長2期、うるま市議会議長を1期務めた。2009年の市長選で初当選。」

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日曜写真館 水辺にも春が来た

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北朝鮮危機 ソン・イルホがなぜこの時期に拉致問題を持ち出したのだろうか?

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北朝鮮の宋日昊(ソンイルホ)日朝国交正常化担当大使が、17日ピョンヤンでこんなことを述べています。 

「北朝鮮のソン・イルホ日朝国交正常化担当大使は、ピョンヤンで記者会見し、北朝鮮が拉致被害者を含む日本人行方不明者の全面的な調査を行うことを約束した3年前の合意について、日本側が破棄したとしたうえで、「拉致については誰も関心がない」と主張しました。一方で日本側から要望があれば、残留日本人などの問題には今後も取り組む用意があるという姿勢を示しました。」
「朝鮮半島で戦争の火が付けば、日本に一番被害が及ぶ」
 

精神衛生上よくないので、この発言の額面どおりに受け取ってはいけません。 

どのような時期に、どうしてわざわざ日本のメディアを集めてこんな挑発的なことを言ったのか考えてみましょう。 

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まず時期です。この発言は4月17日、太陽節の翌々日です。北朝鮮が16日に弾道ミサイルを発射してみせてぶざまな失敗に終わった翌日に行われています。 失敗は3会続いて起きています。

今年2月から3月にかけての北極星2型、スカッドERの発射にはかろうじて成功したものの、3月以降は全部失敗です。

4月5日、失敗。飛距離は60キロ。4月16日、失敗。発射後5秒後に爆発。そして今回の爆発です。

ニューヨークタイムズによれば、旧ソ連製ミサイルの失敗率はわずか13%なのにかかわらず、北朝鮮のミサイルのそれは実に88%もの確率で失敗に帰しています。

10発撃って9発落ちるようなシロモノを戦力とはいいません。

北朝鮮の発射失敗を横目に、米国はこの弾道ミサイル実験に、冷やかな対応を示したのみでした。.

訪日したベンスはこう語ったのみでした。

「私に言えるのは、(北朝鮮のミサイル発射が)失敗したということだ。あれはさらなる挑発だった。そしてそれは終わらせなければならない」((ロナルドレーガン艦上でのCNNインタビュー)。 

失敗に終わったのではなく、サイバー攻撃が成功して自爆スイッチを米国が押してしまったからだと見られています。

ニューヨークタイムズ(4月15日)に報じられた"Left of Launch operation"(「発射寸前作戦」なお「発射の残骸」は誤訳)で、これはオバマ時代からの遺産です。
参考資料 http://newsphere.jp/world-report/20170421-1/

Emblem_of_us_cyber_command
Emblem of US Cyber-Command

オバマは弾道弾迎撃ミサイルのあまりの成功確率の低くさに懲りて、6年前からサイバー攻撃の開発研究を続けてきたと言われています。

米国政府は絶対に口外しませが、この奇妙なまでの米国の沈黙は、このサイバー・アタックによるミサイル発射妨害が確実に成功しつつあることを物語っています。 

北朝鮮という国はあまりに前近代的なので、交通やエネルギーインフラがコンピュータ管理になっていません。 

軍隊すら伝令や有線通信で行われているために、逆に周回遅れのトップランナーよろしく、サイバー攻撃に強い国になっています。 

ただ一カ所弱点がありました。それが弾道ミサイルの発射命令システムなのです。ここだけは北朝鮮もさすがに外国製電子部品を使っています。 

米国はこの電子部品に、サプライチェーンのどこかでコンピュータ・ウィルスを仕掛けたと思われます。

このようなトラップを仕掛けられると、原因を追及するためには膨大な部品をすべて洗いださねばなりません。

たぶんアトランダムに複数個仕掛けてあるはずですから、見つけ出すのは藁の山から針を見つけるような作業になります。

3回続けて失敗する原因が、仮に米国によるサイバー・アタックだった場合、正恩の発射指令システムにまで介入されるかもしれません。 

その場合、ミサイルは容赦なく地上で爆発します。核弾頭をつけていれば、近くにいる正恩の司令部まで蒸発することでしょう。

2009年にはイランの核施設に米国NSA(米国家安全保障局)がイスラエルと共同でサイバー攻撃を仕掛け、イラン核燃料施設をオシャカにしました。

たぶん次の北朝鮮の核実験に対しても、全力でサイバー攻撃を仕掛けるものと思われます。

このように考えてくると、北朝鮮は現在、見せ掛けの強がりとは裏腹に、深刻なパニックに陥っている可能性があります。

なにせ、唯一無二の切り札である弾道ミサイルと核爆弾が無効化された可能性があるですから。 

では、核ミサイルの無効化 があったとして、なぜソンイルホは日本人の拉致被害者について挑発的言辞を吐いたのでしょうか。 

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 私はこれは「逆さ言い」ではないかと思います。

米国ですら「逆さ言い」をします。

昨日書いたように、米国がやるやる、すぐにぶちのめしてやると息巻く時は、実はやらないのです。

本気でやるときにはシーンと静まり返って、静かに民間人を避難させていたりします。こう言うときこそコワイ。

ちなみに、米国のNEO(非戦闘員退避行動)は日本で実施されたことがあります。

2011年の福島第1原発事故の際に、関東一円の米国人、米軍家族に実施されました。気がついたら、米国人はいなかったのです。

静かに逃げていったでしょう。本番とはそんなものです。

そう考えると案外、北朝鮮も同じセオリで動いているのかもしれません。正恩が「超強力な先制攻撃」を警告無慈悲な先制攻撃を仕掛ける」といえば、なんらかの交渉の余地を残しているかもしれない、ということかもしれません。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/04/post-7462.php

ですから、この「鏡言語」の「拉致被害者なんて誰も関心がない」を通訳すれば、「なぁ日本人、関心あるだろう。返してほしいだろう」という意味になります(苦笑)。 

つまりは北朝鮮は、日朝交渉を再開したいということなのかもしれません。 

この仮定に立って推測を進めてみます。この時期に日朝交渉をしたい理由はひとつしか思いつきません。 

米軍の攻撃が始まる前に、日朝交渉が開始されてしまえば、米国は手を出せなくなるからです。 

拉致被害者5名が帰国したのは2002年10月でしたね。 

このとき、金正日は驚くべきことに拉致を認めて謝罪し、5名を「一時帰国」することを認めました。 

Photo_2小泉首相訪朝 官房副長官だった安部氏も写っている。

この年なにが起きていたのでしょうか。2002年4月8日に勃発した第2延坪海戦です。 

韓国西側の境界線上の海域に、北朝鮮海軍哨戒艇が侵入し、韓国海軍と激しい銃火を交えたものです。
第2延坪海戦 - Wikipedia 

韓国では大変に有名な事件で、朝鮮戦争の休戦が破綻しかけた時期でした。 

2第2延坪海戦

この時韓国は、米国に報復攻撃を求めたといわれています。 

後の 2010年11月23日の延坪島砲撃事件の際にも、韓国は報復攻撃を要請していますが、オバマは空母の派遣でなだめました。
延坪島砲撃事件 - Wikipedia 

この第2延坪海戦の起きたあたりから日朝交渉の準備が盛んになり、10月の小泉首相訪朝へとつながっていきます。 

このような日朝交渉が行われている間は、米国は北朝鮮に拳を振り降ろすことは難しくなります。 

ひるがえって現在、もし正恩が核実験を強行したとしたら、トランプは軍事オプションを取る可能性は充分にあります。 

断定する気はいささかもありませんが、ソンイルホがこの時期にわざわざ訪朝記者団にあえて拉致問題を持ち出した背景には、なんらかの北朝鮮の思惑があるような気がしてなりません。

 

 

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北朝鮮危機 米軍が変な情報公開をする理由は

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危機が長期化すると「危機疲れ」が出て、そのうち新聞社会面の一角に、「今日の北朝鮮危機」というコーナーができるかもしれませんね。 

さて、「無敵艦隊」がどこにいるのか分からなくなって、世界が騒いでいます。おーい、カールビンソンや~い、どこにいるだよぉ。(エコーかけてね) 

トランプが「無敵艦隊を送った」(誤訳ですが)と語ったので、すわっ、カールビンソンが朝鮮半島沖に着いたら火蓋が切られるのかと怯えた人も多かったと思います。 

スターウォーズのデススターが、ダスベイダーのテーマミュージックに乗って接近してくるかんじですね。 

まぁ確かに、原子力空母は現代のデススターではあります。 

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朝鮮危機前にNSCから追い出されたスティーブン・バノンなど、ほんとに「ホワイトハウスのダスベイダー」なんて呼ばれていましたしね。 

私は先週から今ただちの攻撃は、ありえないと書いてきました。 

その理由は、①空母戦力の集中が不足している、②在日米軍基地に米本土からの来援がない、③非戦闘員退避作戦(NEO)がないという3点をあげて、「今ではない」と主張してきました。 

するとなんと、米海軍が4月17日になって、肝心のデススターが朝鮮半島ではなく、実はインドネシア沖にいたことを公表しました。https://news.biglobe.ne.jp/international/0418/jj_170418_7087331290.html 

とうていXデイとされていた15日の太陽節はおろか、25日の建軍記念日に着くか着かないか、ということになりました。ハレホレ、ですな。 

かつてのレイテ沖海戦では、米海軍司令部が打った、「第34任務部隊は何処にありや?全世界は知らんと欲す」という有名な電報がありましたが、今回など「カールビンソン空母打撃群は何処にありや?全世界は知らんと欲す」ということになっちゃいましたね。 

では今回、なぜカールビンソンはこんな場所にいたのでしょうか。 

時系列で眺めてみます。 

・4月8日、米海軍第3艦隊はハリス太平洋軍司令官の命令により、シンガポール沖にいたカール・ビンソンの豪州寄港を中止し、朝鮮半島近海へ派遣すると発表。 

・4月11日、トランプ大統領は、「とても強力な大艦隊(アン アルマダ)を派遣した。北朝鮮は面倒を起こそうとしている。中国が協力を決断しなければ、われわれは独力で問題を解決する」と発言。 

同日、マティス国防長官は記者会見で、「カール・ビンソンが豪海軍との共同訓練を中止し、米軍がその理由を説明しなければならなくなったので、空母の行動を発表することになった」。 

国防総省、記者会見で「豪フリーマントルへの寄港は中止されたが、豪海軍との共同訓練は予定どおり実施される」。 

・4月15日、米海軍、スマトラ島とジャワ島の間のスンダ海峡を通ってインド洋へ出たカールビンソンの写真を公開。(下写真) 

Photoいまごろ悠々とインド洋を航行中のカールビンソン 米海軍撮影

「防衛専門紙ディフェンス・ニューズ(電子版)は17日、同空母が15日時点で「韓国から約5600キロも離れている」」(時事4月17日)わけです。 

さてさて、これをどう考えるべきでしょうか。 

単なる凡ミス説もあります。実際、ホワイトハウス高官は、「国防総省の手違い」と説明している模様です。 

だとすると、おおぴらに政治宣伝したホワイトハウスは赤っ恥、NSCはなにしているんだということになります。 

バノンに替えてダンフォード統合参謀本部議長という制服組トップが入っているのに、ちょっとおかしいじゃないかということになります。 

私の憶測ですが、これは米国の意図的情報攪乱の可能性が高いと思います。

米軍が軍事上の機密に属することをペラペラしゃべる時には、必ず裏があります。

織田邦男(元空将)はこう述べています。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49767?page=2

「空母機動部隊の動き、巡航ミサイル搭載原潜の派遣、アフガニスタンでのMOAB (大規模爆風爆弾)の使用、あるいは岩国基地におけるF35Bの爆弾搭載訓練、SEALS支援船の派遣など、米軍は普段は決して公開しないものを続々と公開した。本当に作戦実施なら、手の内をばらすような馬鹿はしない」

まったくそのとおりで、米軍が本気に攻撃態勢するときは、インフォメーション・ブラックアウト(情報封止)と言われてピタっと情報を出さなくなります。

ややオーバーにいえば、派手に言ったことはやらないかもね、ということです。

特にSEALsチーム6が展開したというニュースなど、チーム6はパキスタンでウサマ・ビン・ラディンを抹殺した、DEVGRU(海軍特殊戦開発グループ)という暗殺に特化したチームです。DEVGRU - Wikipedia - ウィキペディア

Pakistancompoundbinladen襲撃されたパキスタンのウサマ・ビン・ラディンの隠れ家。この作戦は正恩斬首作戦よりも困難性が少ないと推測されたにもかかわらず、事前には完全に秘匿された。

そんなもの騒がせな米軍暗殺チームの展開状況などは、最高レベルの秘匿情報であって、「今、チーム6が韓国にいますから」と言うのは、何か腹にイチモツあると思ったほうがいいでしょう。

言い換えれば、当時よく喧伝されていた斬首作戦はやらないということです。

また、岩国にF35がこの時期に配備されたのも実はたまたま一致しただけで、通常の海兵隊前方配備計画があったから配備されただけです。

ですから、これが米国の意図的情報攪乱(ディス・インフォメーション)ならば、初めからカールビンソン空母打撃群は15日に来るつもりなどなかった、ということになります。

そもそも:あんがい空母打撃群は遅いのです。

たしかに空母自身は高速ですが、艦隊には20ノット以下の補給艦も随伴していますから、一隻でズンズン行くわけにはいきませんしね。

ひとことで言えば、北朝鮮に対しての威嚇の意味があるのは当然ですが、中国に対して「さっさと北朝鮮、いやあのヘンな頭の若造をどうにかしろ」という催促のようにも思われます。

今後、米国は中国を睨んだ展開になるでしょう。

カールビンソンは堂々と「遅刻」して朝鮮半島水域に到着するでしょうが、あの朝鮮半島東側の水域は、空母打撃群が展開するには大変手狭です。

仮に北朝鮮が中国と示し合わせて両岸から攻撃をしかけた場合、さすがのデススターもピンチに陥るからです。

ですから、半島から着かず離れずの海域で遊弋しながら、ホワイトハウスの命令をじっと待つことになります。

米国としては、北朝鮮問題があって中国との貿易戦争や、韓国のTHAAD配備で多少譲ったわけですから、成果が上がらねばまた再開することとなります。

ボールが習に投げられているわけですが、「戦略的忍耐は終わった」とベンス副大統領が言っている以上、延々と待つことはないでしょう。

中国が適正に対処せねば米国独力で・・・、という含みを持たせての展開となります。

ただし、25日に北朝鮮が核実験をすれば、一気にわからなくなります。

 

 

 

 
 

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北朝鮮危機 対話と軍事的圧力

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明日にでも空爆があるようなマスコミやネットの噂は間違いですが、危機は危機として厳然として存在し続けています。

北朝鮮が核武装を進め続ける限り、日米韓はそれを軍事的脅威の増大と見て対応レベルを上げていかざるをえません。

そのひとこまが、現在進行形で進んでいると思って下さい。 

ようやく織田邦男氏や部谷直亮氏など専門家の冷静な評論が出始めましたが、ほぼ私の見解と一緒です。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49758
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49767 

なお、両記事がアップされたのは4月19日ですので、私の「いますぐはない」という記事のほうが先ですので念のため。(ああ、こういうこと書かねばならないなんて、ほんとうに腹がたつ)As20160504001561_comml金王朝三代目。そうとうに劣化が進んでいると思う。

ただこう書くと「そうか、危機は去ったのか」とタカをくくる気分の人がでるかも知れませんが、それも間違いです。

21世紀初頭もまた戦争の世紀でした。今世紀に入って、ざっと見ただけで、アフガニスタン、イラク、ダルフール、東ティモール、パレスチナ、レバノン、グルジア、リビア、シリアなどで戦争が起きています。

ただ今回の北朝鮮が他の戦争と決定的に違うのは、この国が「核武装を持てば自らの欲するものが手に入る」という教義(ドクトリン)を行動原理としていることです。

いわば「核兵器信仰」が、北朝鮮を支配する宗教なのです。

Photo続・猿の惑星 生き残った地底人が核ミサイルを拝んでいます。山形さん、ありがとう。

これは正恩の一種の「強がり」だと思ってもらえば近いかもしれません。

北朝鮮は国連加盟国の下から勘定したほうが早いような極貧国です。農業は常に凶作、水害は年中行事。

工業生産などはないに等しく、鉱業だけでしのいでいる有り様です。

軍隊と秘密警察で国民を押さえつけている国ですが、この軍隊もとうに石油がなくただの鉄の箱で、国民は慢性的飢餓状態です。、

こういう国にありがちな、崩壊するのではないか、侵略されるのではないか、独裁者たる自分が処刑されるのではないかという危機感が行動原理となっています。

こういう心理から北朝鮮の「核兵器信仰」が生れました。

Sty1704150004f5海中発射ミサイルだと称する北極星2号。たぶん中国から貰ったのではないかと噂されています。

正恩が考えていることは、こんなことかもしれません。

「核爆弾さえ握ってしまえば、わが国は崩壊しないだろう。それどころかいつまでも中国は援助を寄越すだろう。いや米国や日本韓国なども支援するかもしれない。特に日本が日韓条約並の支援を寄こせばわが国は立ち直るはずだ」

では国際社会は、どうやってこの「核兵器信者」の迷妄を、解いてやったらいいのでしょうか。

このようなテンパった国に対して国際社会は、まず「対話」を求めます。

20年間に渡る間に出された多くの国連決議、六カ国協議は、まさにこの「対話」を求めたものでした。

Chinenews0507262005年6カ国協議。顔で笑って握手をして、足で蹴り合っています。

その上韓国は独自に、金大中・盧武鉉政権下で太陽政策という援助を与えながら対話を求めるという宥和政策を取りました。

2009081817381132009年9月 金大中と金正日会談 金大中はこの愚行でノーベル平和賞を取りました。

結果はご承知のとおりです。北朝鮮は常に対話を無視し、裏切り、逆切れして見せるという国際常識が通用しない国だということを暴露しました。

そして、対話と宥和をいいことにして時間稼ぎをし、今や核武装を完成の域に進めようとしています。

これを見て、なおいまだ日本には北朝鮮との「対話」でなんとかなると思っている左翼リベラル界隈の人が存在するほうが不思議なくらいです。

朝日にいわせると 「北朝鮮と日本 軍事より対話の道描け」(朝日新聞4月12日社説)だそうです。はいはい。
http://www.asahi.com/articles/DA3S12886993.html

この国を尋常な方法で再度、対話チャンネルの席に着かせるのは不可能です。

北朝鮮は中国からの会談要請に対してさえ無視を決め込み、返答すらしません。

中国が派遣した外交使節団は入国すら禁じられました。

これは北朝鮮が、今食わして貰っているはずのパトロンの言うことすら聞かないという事実上の拒絶とみられています。

こちらから対話チャンネルを切断する必要はありませんが、交渉の余地は残しつつも、軍事的圧力と経済的圧力をギリギリまで強化するしか方法は残っていません。

朝日のように「軍事」か「対話」かというように対立するものとして捉えるのではなく、軍事的圧力をかけつつ、対話に引き出すのが正しいのです。

その意味で、トランプは大変にオーソドックスなやり方で、北朝鮮の「核兵器信仰」に対応していると言えます。

C9whpzquiaasqcwロナルjドレーガン艦上で演説するペンス副大統領
https://twitter.com/CNFJ?lang=ja

来訪したペンス副大統領は、北京で韓国政府関係者と会談し、北朝鮮国境付近の視察も行いました。次いで韓国、日本を訪れています。

このペンスの歴訪によって、最終的な合意と布陣が完成しました。

その布陣は北朝鮮に対する攻撃オプションではなく、未確認情報で16隻といわれる米海軍イージス艦と自衛隊のイージス艦は、日本へのミサイル着弾を阻止するためのものだと受け取られています。
http://businessnewsline.com/news/201704190005060000.html

「米軍が北朝鮮の周辺海域に展開している米海軍のイージス艦を使って北朝鮮の弾道ミサイルの迎撃を行うことを検討していることがtheguardianによる報道で明らかとなった。
米政府は、北朝鮮の弾道ミサイルの迎撃を行うことにより、米国は北朝鮮が大量破壊兵器を使用することを阻止する実行的能力を有しているということを改めて示すことを検討している模様となる」(BusinessNewsline 4月19日)

私が恐れるのは、このような極度に緊張した状況でしばしば起きる偶発的戦闘が本格的戦争に拡大していくことです。

 

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北朝鮮危機 北朝鮮に核放棄させるためには原油と金を制裁せねばならない

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先週から違和感かあった右掌が、とうとう昨日激痛。いや、痛いの、痛くないのって。一時は箸も持てないあり様でした。 

右手が使えなければ仕事はできない、記事も書けないわけで、さすが病院嫌いの私もふっ飛んで行きました。 

レントゲンなど撮られましたが、筋や腱は大丈夫とのこと。腫れ止めと痛み止めをカバに食わせるほどもらって、いまは回復こそしていないもののなんとかキイボードていどは打てるようになっています。お見舞いありがとうございました。 

それにしてもああいう時に荒らしが来ると、ガクッと疲れますな。山路さんにまでご迷惑をおかけして申しわけありませんでした。 

さて、気を取り直していきましょうか。 

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北朝鮮情勢で見落とされがちなことがひとつあります。北朝鮮の命綱です。 

え、核兵器?う~ん。化学兵器?う~ん。どちらも怖いのは確かですが、核兵器を先制使用するほど状況が煮詰まっているとは思えません。 

核を使うのはギリギリの土壇場。ピョンヤンが炎上し、正恩がテンパってどうせ滅びるならもろともと思う時です。手下たちが口で勇ましいことを言っているうちは撃ちません。 

化学兵器は、弾道ミサイルが再突入する際の温度はなんと7000度といわれていますから、化学兵器が変質して使用不可能になると思われます。 

そもそも北朝鮮が、再突入技術という核ミサイルの必修過程をパスしたかどうかすらよく分からないのです。http://japanese.yonhapnews.co.kr/Politics2/2016/03/18/0900000000AJP20160318004400882.HTML

「韓国国防部の韓民求長官によると、専門家らは大気圏再突入時の弾道ミサイルは7000度程度の温度に耐える必要があるため、圧力や振動などの様々な影響を考慮し、この条件を満たす試験をするべきとの見解で一致しているという。
 北朝鮮が公開した実験は弾道ミサイルが実際に大気圏に再突入する時とは大きく異なる条件で行われたため、北朝鮮が再突入技術を確保したとは言えないとの見解を示したものとみられる」(韓国聯合 2016年3月16日)

もちろん日本は彼らが核ミサイルや化学兵器を打ち込んでくる可能性がゼロではない以上、「危機がある」ことを前提に立って、守りを固めねばならないのは当然のことです。 

ではどうやったら、正恩が核や化学兵器をほんとうに保有しているのかわかるでしょうか? 

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フェーク疑惑の出ている北朝鮮ICBM

これは国際査察をする以外に調べる方法がありません。

持っていたら頑として拒みます。核査察はとうぜん核放棄を前提にしていますからね。 

逆に全部フェークならば、これも頑として拒むでしょう。もはや金家家伝の威嚇戦法が使えなくなるからですし、第一、独裁者の体面に関わりますからね。 

どっちに転んでも拒否ですから、正恩が国際核査察を受け入れるように追い詰めていかねばなりません。それも正恩がカッとなってなにかやらかさないように、ジワジワと真綿で首を締めるように「平和的」にです。 

米国は、いやトランプはと限定すべきでしょうが、もちろんその方法に気がついています。

北朝鮮危機を見る上で見落とされているもっとも重要な環は、原油供給の停止です。

私が「 トランプに限定する」と述べたのは、オバマは知ってか知らずか北朝鮮への原油供給の存在を無視し続けてきたからです。

重村智計氏によれば、これをトランプに助言したのは、他ならぬ安部氏だったようです。http://ironna.jp/article/6306 

「「石油禁輸」は、安倍首相がトランプ大統領に強くアドバイスした戦略である。安倍首相は、北朝鮮への効果的な制裁策を聞かれ、「中国の対北石油全面禁輸」を伝えた」
「国と中国のメディアは、12日の米中首脳電話会談で「北朝鮮が核実験とミサイル実験に踏み切れば、中国は石油禁輸を実行する」意向を習主席が伝えたと報じた。画期的な政策転換だ」

既に、北朝鮮はミサイル実験を失敗したとはいえ実施しているわけですから、重村氏の説に従えば、中国は原油供給禁輸を実行していなければなりません。

E9a6ace5b882wikimapiarev4thumbnail2http://kazuohage.sblo.jp/article/164902193.html

中国側馬市村のパイプライン基地(赤丸)から鴨緑江を越えて供給パイプが、対岸の北朝鮮側金山湾油タンク(青丸)に延びているのがおわかりでしょうか。 

ちなみにこのパイプラインの位置は、かつての朝鮮戦争時の中国義勇軍渡河の位置とほほ同じだそうです。※謝辞白血病のハゲオヤジのブログ 

この原油供給パイプラインこそが、ほんとうの北朝鮮の命綱です。

北朝鮮は日本同様に原油の純輸入国で9割を輸入に頼っています。

そのために電力事情が逼迫し、衛星から撮影した東アジアにおいて北朝鮮領内は漆黒の闇となっています。

2014051105365083cNASAが公開した朝鮮半島の夜の画像。北朝鮮は暗闇に包まれている(AP)

韓国中央日報(2017年2月24日)はこう述べています。
http://japanese.joins.com/article/186/226186.html

「中国の石油は北朝鮮にとって、救急室の患者がつけている酸素マスクのような生命線だ。このような事情をエネルギー経済研究院の研究員キム・ギョンスル博士が分かりやすく説明した。
「原油の100%、石油製品の90%を中国に依存している現実で、中国がパイプラインを閉めてしまえば、北朝鮮は数日間しか持ちこたることができない。あっという間に国家システムが崩れ、社会全体が心理的恐慌状態に陥る」

ただし1回止めると再開が難しくなるという要素があります。それは中国原油が粗悪なためにパイプを一回止めると、詰まってしまって再開が困難になるからです。 

「キム・ギョンスル博士の説明によると、大慶産石油にはパラフィン成分が多く、流れていなければ固まるパラフィン粒子がパイプラインにつく。使用を再開するにはパラフィン粒子を溶かす必要がある。時間がかかるということだ」

まぁそのとおりでありましょうが、それはさておき、重村氏は既に止めたのではないかと観測していますが、私ははなはだ怪しいと思っています。

というのは、北朝鮮と中国はハッキリ言えば共犯関係として、中国は北を「中国のナイフ」としてさんざん利用してきたからです。

その証拠に、北朝鮮はミサイル実験と核実験をやりたい放題やってきたわけですが、その間中国はこれを止めるどころか、原油や原子炉部品を売り続けてきました。

それを示した中国からの石油製品輸出と、逆に北朝鮮からの石炭輸入ゆ貿易量推移のグラフです。

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中国の対北朝鮮石炭輸入と石油製品輸出 田村秀男氏による
http://www.sankei.com/premium/news/170225/prm1702250016-n1.html

共に、国際社会がなんと叫ぼうと、国連が制裁を決議しようと馬耳東風。常任理事国の中国が堂々と北朝鮮に石油を売りつける一方、石炭を買い続けており、むしろ増やし続けていることがわかります。

「16年の中国からの対北輸出は石油製品が前年比26%、鉄鋼製品9%、自動車は45%各増と急増している。背景には中国の過剰生産があるはずだ」(田村秀男氏 グラフと同じ)

重村氏はこう指摘します。

「北朝鮮はアジアで最も石油のない国である。この問題の重要さに多くの人は気がついていない。北朝鮮の年間の石油輸入量は、最大でも70万トンである。この90%は中国が供給している。日本の自衛隊が年間消費する石油は年間150万トンに達する。その半分以下では全面戦争はできない」(同)

続いてもう一枚見て頂きましょう。中国の2015年の対北朝鮮輸出の主要品目です。

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この中国の主要輸出品を見ると脱力します。

中国は北朝鮮に対して、電子機器、原子炉、輸送機器、原油、医療、食料など、ほぼすべての戦略物資を供給していることがわかるでしょう。

これで北朝鮮が「制裁」に音をあげる道理がありません。

北朝鮮には小型武器、ミサイル、麻薬、覚醒剤、ニセタバコ、そして石炭ていどしか売るものがありませんが、そんなものは中国には売り先に困るほど余っています。

国というより暴力団ですが、北朝鮮はスーパーKという偽100ドル札まで作っていました。

とうぜんのこととして中国の北朝鮮への一方的貿易黒字となります。(数字は田村氏による)

・2016年中国の対北輸出・・・32億ドル
・同        対北輸入・・・27億ドル
△北の貿易赤字      ・・・5億ドル

では北朝鮮は、この赤字をどう処理しているのでしょうか。中国から金を借りているのです。

このからくりを田村氏はこう分析します。

「不足分は中国からの借り入れでまかなう、つまり中国の金融機関による融資で補うわけで、正恩氏直結の企業や商社、銀行は中国の金融機関との協力関係を保っている」

中国は瀋陽軍区(いまは戦区)の軍、あるいは国営金融機関を通して、正恩系列の企業や商社に融資してきました。

表向きには民生品貿易への融資ですが、その金が市民のためのバスに使われようが、弾道ミサイルに使われようが、金に色はついていません。

北朝鮮はそれをいいことに、中国の銀行を経由して、武器の売買をしていました。

2015年12月、北朝鮮がシンガポールのトンネル会社を使って武器輸出の代金を中国銀行を通して送金してもらっていたことが発覚しました。

これは国際的に反響を呼び、オバマも重い腰をあげざるを得ませんでしたが、上げたのは北朝鮮にだけ。肝心のバックについていた北京にはひとことの抗議の声すらあげなかったのです。

これは米国による、事実上の容認と受け取られました。前掲の貿易推移グラフを見ると15年あたりを境に、一気に急上昇しています。

北朝鮮に対して核と化学兵器の放棄を迫るために制裁したいのなら、正恩の原油と金を抑えねばならないのです。

この件に関して、トランプは習とディールしたようです。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170419-35052071-bloom_st-bus_all

「中国はこれまでと同じような取り組み方をしていない。あんな様子はこれまで誰も見たことがない。わが国のためにあれほど前向きな立場を中国が取るのを目にしたのは誰もいない」(ブルーミングバーク4月19日)

米国は中国を為替操作国認定しないかわりに、中国に原油輸出の停止を要請したと考えられています。

メディアは北の石炭輸出ばかり取り上げて、「北朝鮮に制裁強化」などと報じていましたが、どうしてこうも目がガラス玉なのでしょうか。

大事なことは輸出ではなく輸入。それも原油の輸入なのです。

また保守の皆さんも、「うわー、米国が中国に接近した。尖閣を忘れたのか」、なんて騒がないこと。ディール好きなあの大統領相手に右往左往していたら身が持ちませんよ。

そもそも、中国に北への原油止めるというプランは、安部さんがトランプに入れ智恵したらしいですからね。

■渡部昇一先生がお亡くなりになりました。先生と私は多くの点で意見を異にすることもありましたが、先生のリベラルな「自由主義」を基礎にした保守の精神には多くを教えて頂きました。
ご冥福をお祈りいたします。

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北朝鮮危機 米軍の先制攻撃はあるのだろうか?

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北朝鮮情勢を書きはじめたのが4月1日ですから、もうかれこれ18日間ですか。

正直言って、不謹慎かもしれませんが、さすが飽きましたね(笑)。

ただ日本国民が現実問題で、北朝鮮の核ミサイルや化学兵器ミサイルが襲いかねない状況の中で、戦後初めて国の安全保障を考え始めたのはよかったと思います

憲法前文のように、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、 われらの安全と生存を保持しようと決意」するだけでは、北朝鮮のような暴漢のような国から自分の国の平和を守れないのです。

「憲法改正に「賛成」と答えた人が、半数を超えた。
FNNが16日までの2日間実施した世論調査で、5月の憲法記念日を前に、憲法改正への賛否を尋ねたところ、憲法改正に「賛成」と答えた人は、半数を超えた(52.9%)。
「反対」は、4割未満だった(39.5%)。
ちょうど1年前の世論調査では、憲法改正に「賛成」と「反対」は、4割台半ばで同数だったが(賛成 45.5%、反対 45.5%)、今回、「賛成」が「反対」を10ポイント以上、上回った。
今回の調査で、憲法改正に「賛成」と答えた人を対象に、憲法9条を改正することへの賛否を尋ねたところ、半数を超える人が9条の改正に「賛成」と答え(56.3%)、「反対」は3割台後半だった(38.4%)。(FNN4月17日)

さて、昨日も書きましたが、私はこのまま状況が一定期間にわたって固定化するのではないかと思って見始めています。

言い換えれば、北朝鮮危機の長期化です。

米国が戦争に踏み切る「レッドライン」はICBMの保有ですから、正恩にとってICBMを保有しているのかどうかは「分からない」、というあいまいさのままに置くことは利益です。

ですからこれがバレてしまう核査察は絶対に受け入れませんし、長距離ミサイルも銀河2号のようなロケットだと言い張ることでしょう。

私はたぶん持っていていないと思っています。15日の太陽節軍事パレードの肝は8台のICBMでした。

全部で8台あって、4台がキャニスター(発射筒)に入った自走式発射機で残りはトラックで牽引されていました。

これがホンモノなら、理論上はどこからでも撃てるので、昨日書いたように米国にとって発射前に潰すことができなくなります。

しかしニセモノといって悪ければ、モックアップ(実物大模型)の可能性も専門家から指摘されています。

静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之氏は『ニュースを疑え』第577号でこう述べています。

PhotoICBM発射筒を搭載したWS51200トラック 西氏による

「これらの弾道ミサイルがモックアップだと考えられる理由は二つある。まず、北朝鮮は2012年と13年のパレードで、大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星13号」としてモックアップを公開した過去がある。
 火星13号は、単純な構造の枠に薄い金属板を溶接した物体に特徴的なへこみ(痩せ馬)がみられ、12年のパレードの6基は部品の位置が少しずつ異なり、13年のパレードの火星13号も、エンジンの位置を示すリベットが、ミサイルの下端からわずか50センチという、ありえない位置に打たれていた」

つまり今回登場したICBMは、「火星13号」で既に公開済の実物大模型と同じ溶接の凹みがあるので、使い回しではないかと思われるわけです。

このような分析は既に米国の情報機関が徹底的におこなっているはずで、トランプに「正恩のICBMはフェークだ」と伝えているはずです。

ならば、トランプにとって軍事的圧力を掛け続けて妥協を引き出すまで継続するでしょうが、現実の攻撃は慎重になるでしょう。

もし、本気でトランプがやるならば、空母打撃群をできる限り集中させます。

何度も書いているように、今動員できるのはカールビンソンのみ。ロナルドレーガンは横須賀で定期修理中、太平洋に残るはミニッツだけですが、カリフォルニア沖ですから25日の建軍記念日には到底間に合いません。

C9mwxq9vyaemsk8定期修理中のロナルドレーガン

在日米海軍司令部のツイッターを読むと、実にのどかものです。https://twitter.com/CNFJ?lang=ja

「ロナルド・レーガンて行動中でしたよね? カール・ビンソンの方々も何事もなく無事終了するよう祈ってます」というRTに答えてこうです。

一緒に休暇とっているわけじゃありませんからね。

これにカールビンソン打撃群のトマホークが最低で300発加わりますから、合わせて800発超のトマホークを撃ち込めることになります。

もちろん北朝鮮全域が攻撃可能範囲ですが、やるかどうかとは別問題です。

2017010600066299roupeiro0003viewhttps://news.yahoo.co.jp/byline/pyonjiniru/20170106-00066299/NEO(非戦闘員退避行動)訓練

小川和久氏は、このような見解を示しています。(西氏と同じ)

「韓国在留米国関係者12万人以上に対するNEO(非戦闘員退避行動)が実施されていないことです。使える軍事力を突きつけてはいるものの、北朝鮮側の主にソウルに対する火砲による反撃だけでも甚大な損害が出ると予想されるのに、本気で軍事力を行使するのにNEOを実施しないわけがない、というわけです。
 NEOには戦争のほか災害時などについての計画もあり、福島第1原発事故の時にも実施されました。 私が知っている計画は朝鮮半島での戦争に関するものですが、12万5000人の米国関係者を10日ほどかけて、航空機でグアムに避難させるというものです。 NEOの動きは1か月前から始まり、北朝鮮は米国が本気で戦争を始める気になっていると感じるわけで、譲歩を強いるための圧力にもなるというものです」

かつて本気で北の核施設の空爆を考えたクリントンは、秘密が漏洩するのを恐れて金泳三に伝達せずに、米国人の避難計画を実施しようとして、強烈に噛みつかれて断念したという経緯もあります。

もし、現在米軍が本気で北朝鮮を攻撃する気なら、NEO(非戦闘員退避行動)をとっくにやっているはずです。

ちなみに沖縄の米軍基地前で、「ゴーホームヤンキー」とヘイトしている自称「平和運動家」たちがいますが、米軍家族や軍属が逃げ始めたらホントにホント危険なのですよ。

ですから、平和のためには「ゴーホーム」どころか、「ズッと居てくれ!」と米軍にシュプレッヒコールしなければなりませんね。もちろん冗談ですが。

それはさておき、この推測が正しいならば、トランプは軍事的プレッシャーを掛け続け、中国も同調して北朝鮮への原油供給停止を実施し、非軍事的方法で手をあげさせようとしているようにも思えます。

なお、一部の未確認情報では、中国の原油は既に供給が止まっているという情報もあります。

ただし、北朝鮮が再度核実験をしてみせ、新型ロケットエンジンの実験を再開すれば、この限りではありません。

■右指が腱鞘炎のようになってしまいました。痛くて動きません。今日は片手の指でうっています。われながらよーやるよですが,明日はどうなりますか・・・。

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北朝鮮危機 正恩があいまい戦略をとったとしたら 

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多くの識者の意見には一定のポジションがあらかじめあるとみえて、その位置に従って材料を選んで立論しがちです。

特にいまのような先が見えない状況では、よくもまぁと思えるほどバラバラの意見となります。

ある者はあすにでも正恩の原爆が東京に降ってくるかのように言い、ある者は話合いで解決できる、トランプは挑発するなと主張します。

本来職業的ニュートラル感覚がなければならない外交官あがりの評論家さえ、「マッドマン・セオリ」(狂人の論理)と言い出したのには失笑しました。

マッド・トランプとマッド・ジョンウンとの闘争だから分からないよ、と元職業外交官はいうのですから、おいおいです。

待って下さい。正恩が投げたカードがどのようなものであったのか、あなた方はよく見ましたか。

おとといから昨日にかけて正恩から投げられたカードは、とりあえず3枚です。

①「中距離弾道弾の失敗」
②「核実験なし」
③「移動式発射機に乗った固形式燃料のICBM」

ここから推測できる文脈はなんなのでしょうか。

これもしょせん明日からの状況で変化していくことでしょうが、手さぐりで見ていきます

まず、訪韓のミサイル発射の挨拶を受けたベンス副大統領の反応です。

「【ソウル支局】米ホワイトハウス当局者は16日、北朝鮮が同日発射したミサイルについて「ICBM(大陸間弾道弾)ではない。おそらくは中距離ミサイルだ。発射後4~5秒で失敗した」と説明した。今後の対応については「大統領は軍事、外交など幅広い選択肢を持つが、今回の失敗したミサイルに特に対処する必要はない」と述べ、当面は静観する姿勢を示した。ペンス米副大統領のアジア歴訪に同行する記者団に語った」(毎日新聞2017年4月16日 )

トランプ自身の反応はマティスが、「大統領はこれ以上のコメントはない」と代弁しています。

まず1枚目の北朝鮮のカードです。

 デイと考えられていた15日太陽節の翌日、北朝鮮はスカッドER(北極星2号の異説もあります)を発射し、しかも原因不明で発射直後に爆発しました。

爆発した理由は、自爆説、サイバー攻撃説、と技術的失敗説がありますが、三回続けての失敗ですので、サイバー攻撃説の信憑性が強まってきました。

もちろん米国は、そんなことを公表するはずがありませんので、数十年後に「あの時はねぇ」で分かることでしょう。

これは先日の軍事パレードにも、移動式発射装置に載せて登場した中距離弾道ミサイルです。

ちなみに 、この中距離弾道ミサイルは日本に向けたものです。撃たれた私たちが天ボケしているので、撃ったほうも気抜けしていることでしょう。

PhotoスカッドER

次の「核実験なし」は、技術的には大型のおそらく水爆級だといわれる核兵器実験のことです。

これと投射手段のICBMはペアになっています。いくら破壊力があっても投射手段がなければただのバクダンです。

そこで3枚目のカードの、「移動式発射装置に乗った固形燃料型ICBM」をどう評価するかということになります

たぶん、これが今回正恩が切ったカードで一番国際社会に見せたかったものだったはずです。

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米国は敵が多い国ですが、その中でももっとも手に負えない奴だと認識しているのが、実はこの北朝鮮です。 

朝鮮戦争休戦以降、北朝鮮は巧みに米国を挑発しつつ、一線を越えることを回避してきました。 

それは米軍が国境から指呼の距離に展開しているということもあって、中国も巻き込みかねない全面戦争を避けるという暗黙の合意が両者の間に存在したからです。 

そしてなにより、米国は戦争するに際して国際社会の盟主として、常に疑う余地がない「大義」を掲げる必要があったからです。 

たとえば今回のシリア攻撃は、「毒ガスを子供に使用して多くを殺した」という大義がありました。 

裏を返せば、北朝鮮が米国を直接攻撃したり、米国民にテロを仕掛けたりしなければ、米国は手を出さないと彼らは知っていたことになります。 

少し時間を巻き戻してみましょう。 

1994年、クリントン政権は北朝鮮の核施設を空爆することを真剣に検討し、それを韓国に通告しました。 

辺真一氏によれば、当時韓国大統領だった金泳三は、クリントンの在韓米国人の秘かな救出作戦を知るや、怒ってクリントンにかみついたそうです。 

また別な説によれば、金日成からも「核武装する気はない。だから今回はかんべんしてくれ」との泣きが入ったからとも言われています。 

いま思えば、タイミング的にはこの時しかなかったのですが、クリントンの判断は「まだ放っておいても核武装はできまい」というものでした。 

送電線がない原発は核兵器製造以外の目的であるはずがないのにかかわらず、クリントンは「大義不足」と考え、結局、6カ国協議の20年間の泥沼に足を踏み込んだのでした。 

次のタイミングは、第1期オバマ政権時の2010年11月、北朝鮮軍の韓国の延坪島砲撃事件でした。 

この時、イ・ミョンバク韓国大統領は反撃を求めましたが、オバマは拒否しました。

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オバマは、空母打撃群を朝鮮半島水域に向かわせることで、ムニャムニャとお茶を濁すだけに止まりました。 

これはオバマ特有の「平和主義」だけではなく、まだ北朝鮮が核武装化が幼稚な段階にすぎず、少なくとも自分の2期内に完成するわけがないと思っていたからです。

こうして20年の「話合い」の時間が、北朝鮮に与えられました。 

そして今。

北朝鮮は中距離弾道ミサイル実験を「訓練」の域にまで高め、かつ即応性がある固体燃料ミサイルの同時発射というレベルにまで達しました。 

そして新型の大型ICBM用ロケットエンジン開発も、終盤に差しかかったと称しています。 

あまりにも急速の核武装化の進化に、中国からの技術供与、あるいは実物供与が疑われるほどです。 

つまり、北朝鮮は米国本土に到達する投射手段であるICBMに、その手をかけたことになります。 

これは北朝鮮の核が「放置してよい」段階を越えて、米国にとって直接の脅威に成長したことを意味します。 

言い換えれば、米国は北朝鮮攻撃の「大義」を得たことになりました。 

さて、15日の軍事パレードに搭乗した新型ICBMは2種類ありました。 

ひとつが下写真1番目の旧式のトレーラー牽引型であり、もうひとつが2枚目の16輪の重野戦機動トラック型のものです。 

Photo_3トレーラー牽引型ICBM 

Photo_5自走式移動発射装置型ICBM

この自走式ICBMの登場に、見ていた米国政府関係者は背筋に冷たいものが走ったはずです。
 

なぜならこれは原理的には、いつでもどこからでも自由な時間を選んで米国本土を攻撃しうる能力を北朝鮮が獲得した、あるいは、テストをしていませんから、「獲得しつつある」ということになります。 

ICBMの最大の欠点は、露天式の発射台に固定的に据えて発射するしかないことです。 

Yjimage銀河2号 

上の写真は銀河2号長距離ミサイルですが、大規模発射台に据えて、液体燃料を数日かけて注入してからおもむろに撃つという段取りになります。 

現実に、そんなことをトロトロしていたら、「対米核攻撃の兆候」と米国に認定されて、空爆されてお終いです。 

移動式発射台から発射するには、コールドローンチといって、2枚上の写真のようなキャニスター(収納筒)の中にミサイルを納めて、圧縮ガスによって打ち上げ、空中で推進剤に点火して上昇させます。 

Nkm702jpp023302152コールドローンンチで発射した北極星2号

コールドローンチできるICBMを移動式発射装置のキャニスターに入れたまま、山中に隠蔽し発射することが可能となるわけです。
 

この方法で発射されると、事前に捕捉して破壊することはほとんど無理です。 

さて、こうして見て来ると、北朝鮮のICBM発射を事前に察知して阻止することが大変に難しいことが分かってきます。

そう考えてくると、偶然にか意図的にか、正恩は難しい問いをトランプに突きつけたことになります。 

ICBMも実験することなく保有し、核実験はしないであえてあいまいな状態に置くことも正恩は取り得るからです。 

中距離弾道ミサイルはパカパカ撃つが、ICBMは撃たない、核実験はしないが核兵器を保有しているのは間違いないというあいまいな状態も可能だというわけです。

ただ保有しているだけですら、ホンモノかニセモノかは分からないし、分からないからこそ「あいまい戦略」なのです。

この「あいまい戦略」の目的は、米国の「大義」を封じることです。

この「究極の宙ぶらりん状態」は、米国政府中枢に取っても甘いささやきになるはずです。 

今までクリントンやオバマがさんざんやってきた、「大義が足りないから捨ておく」という選択肢も合理化できるからです。 

トランプがこの方法を取った場合、米国の敗北と見なされて、トランプはやるやる詐欺として2期目は諦めたほうがいいでしょう。

一方、正恩にとっては、現況で状況を固定化することで、国家と自分のリスクを回避し、米中の譲歩を引き出せる「あいまい戦略」はなかなか妙味のある考え方ではないのでしょうか。

現在、米中露三カ国による確執に満ちた共同圧力が加えられていることでしょうが、かんじんのトランプが、どのようにこれを判断するのか、私には予測がつかないと正直にお断りしておきます。

※追記 大幅に加筆修正しました。 

 

 

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