• As20241225001545_comm
  • 20250115-143858
  • 20250113-081014
  • 20250114-011659
  • 20250113-133232
  • 20250113-134354
  • 20250113-134844
  • 20250113-135719
  • 20250114-062849
  • 20250112-044948

« クロピク、それは日本農業の病の象徴である | トップページ | 「木のヒゲ」じぃさんの懐で眠りたい »

2008年5月25日 (日)

誰がために農薬を撒く

Img_0011  先日の続きだ。この問題は、農業のある意味根幹で、リキが入った言い方をすれば、哲学や自然観にも触れる問題だからだ。ああ、いかん、肩に力が入っているゾ。穏やか~に、穏やか~に、アダージョでいきましょうぞ。

 なぜ、農民がこんな危険なクロピクを使用しているのか、あるいは、逆に私の住む有機農業の世界では使用していないのか。一方はJAの半強制的な防除暦(*防除の日取り、農薬の種類を記した暦のようなもの)があり、一方はJAS有機認証があるから・・・違う。そのようなことは表面的な事柄でしかない。

 自然観が違うからだ。いきなりエラソーな大上段な言い方で、このタヌキ如きがと思われるので恐縮だが、そうとしか言えないのだ。抽象的に言っても理解が難しいだろうから、例を上げるとしよう。

 そうだな、今の季節の有機のキャベツ畑にいらっしゃい。モンシチョウのお姉さんが実に嬉しげに舞っている。ただ食べて青い小さな糞をするだけなら可愛いものだが、恩を仇で返すというか、卵を大量に生んで頂けるのが困る。卵は孵って青虫となり、しっかりと食い散らす。震えるほどうれしい光景である。キャベツの芯に達するまで深く掘削する。こいつらは前世は炭鉱夫だったのだろうか。

 慣行農法(*通常の化学農法のこと)では予防防除ということをする。つまり、「食べられる前にやる」のだ。モンシロチョウのお姉さんがやって来る前に、あらかじめ化学農薬をブン撒いておく。するとお姉さん方は来たくても、行ったら死ぬのでいかないという寸法だ。これは化学農薬半減の、いわゆるエコ農法の減農薬栽培でもまったく一緒。モンシロチョウはそんな畑に行ったら確実に死ぬ。

 しかし、天はよくしてくれたことに、ここに面白い昆虫を与えてくれたもうた。アオムシコマユバチさん、こちらにどうぞ。皆さん拍手を、パチパチ!ご紹介しましょう、このアオムシコマユバチ氏は、その名のとおりアオムシの体内に寄生する。気味悪がらないでほしい。そのような昆虫はいっぱいある。体内ほど心地よい、暖かで栄養豊富な孵化する場所はないからだ。

 そして体内で生まれたアオムシコガユバチ(舌を嚙みそうな名)は、アオムシの体内から生まれて空に飛んでく。映画のエーリアンみたいだが、これが正しい彼らの生き方なのである。当然出ていかれたほうのアオムシは死ぬことになる。

 これが天敵関係というやつだ。このような天敵関係こそが、天が地球という惑星の自然界に与えたもうた恩寵なのだ。つまり一種類の種のみが自然界を支配しないように、天敵を使わしその個体数を制限するメカニズムです。これを私たちは自然界のバランスと呼んでいる。

 天敵は、敵対関係にある種を完全に抹殺することはしない。もしそのようなことをしてしまったら自分の自然界からの「取り分」、つまりは餌がなくなってしまうからだ。だから、食べ尽くさずに、寸止めをかける。一定枠で敵を残し、一定程度の繁殖は許す。増えたらそのぶんだけを食べる。人間の作り出したまがまがしいジェノサイドのクロピク野郎などと違って、実に紳士的なのだ。このような天敵関係は地表のみならず、土中でも行われている。

 また、天敵関係は共生関係ともつながる。ええっ、真逆じゃないかと思われるだろうか。これも例を上げよう。このモンシロチョウやハスモンヨトウ、シンクイムシが跋扈するのを避けるために防虫ネットなどを張るとする。これは有機農業でもよくやる技術だが、実はこれも微妙な自然界の共生関係を壊しているのである。

 というのは、モンシロチョウは単なる悪玉のお姉さんではないからだ。このような鱗翅目にはこれに共生する有用な微生物が存在するのである。この菌類によって植物は活性化したり防御力をつけたりもする。だから単に殺すだけでは解決にならないと有機農業のお百姓は言ってきたのである。

 有機農業はJAS有機認証のために殺虫剤や、土壌燻蒸などの化学農薬をつかわないのではない。語弊があるが、消費者の健康が第一義ですらない。それは自らの責任を持つ畑という自然界の中の天敵・共生関係という神の与えた恩寵を大事にしているからだ。ここが理解できないと、慣行農法と有機農業が本質的に別な自然観や哲学を有していることに気がつかないまま終わってしまうだろう。

 本記事は、日本有機農研理事で、私の百姓としての先達である魚住道郎氏のご教示をうけました。感謝いたします。

 

« クロピク、それは日本農業の病の象徴である | トップページ | 「木のヒゲ」じぃさんの懐で眠りたい »

日本の農業問題」カテゴリの記事

コメント

悪玉のお姉さん?ドロンジョ様の話のようですね。
今、貴重なベランダ食物山椒をねらっているのは、アゲハの仲間のようです。これも都会の蝶。

農村を離れて2ヶ月たち農業をやっていたころが遠い昔に感じてしまいます。
農業をやっていた時に悩まされた、モンシロやヨトウも、作物に良い影響を与える部分もあったなんて知りませんでした。。。勉強不足でした。

 これはすごい。考察だ、地に足着いた。そこのところがすごい。足指が開いていますね。
 この調子でいくと本ができますよ。「世に問いましょう、我社が引き受けます、120万でできます」という自費出版詐欺があるそうですが。
 ただただ知らぬ世界、勉強になります。というか、深くておもしろい。
 いちど開いて、一端閉じて、深あい息をし、姿勢を正してそれから拝見しています。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 誰がために農薬を撒く:

« クロピク、それは日本農業の病の象徴である | トップページ | 「木のヒゲ」じぃさんの懐で眠りたい »