日本農業に対する質問に答えて その1
Q1 私たちの食べ物の安全性について、今、どのように思いますか?
自給率40%ということは、とりもなおさず食糧の過半を輸入食材に依存していることです。
例えば、中国産の食材の汚染は常識を超えています。これは中国の生産者の意識、あるいは生産工程管理上だけの問題ではなく、中国の水質や土壌そのものの汚染のために違法な薬剤、農薬を大量使用せねばならないからです。
また、これを検査しブロックすると言っても、現実には遠い外国は管理しきれるものではありません。水際でのブロックも職員の不足からうまくいっていません。産地表示にしても、国内で生産加工されてしまえば国産品でまかりとおります。
つまり、外国の環境汚染の危機を国内の食卓にリンクさせているのが輸入農産物なのです。外国の環境の危険性が食卓のうえに常にあるのが今の日本だと思います。
Q2 食料の輸入が増えたことで、安価で多彩な食生活が実現できているという意見がある一方、安全性などの問題が指摘されています。私たちの食べ物の多くが輸入されていることをどう思いますか?
追加してもう一点。輸入農産物はわが国に食糧、即ちタンパク質、転じてチッソという形で過剰なチッソを持ち込んでいます。河川、湖沼の汚染物質であるチッソは、外国由来が多くを占めています。つまり輸入されたタンパク質は、糞尿のかたちでチッソになります。ということは、外国から流入する膨大なチッソはわが国に蓄積し、環境を不断に汚染し続けているわけです。
もうひとつは、輸入農産物には、あたりまえですが、わが国の環境に責任はありません。農業が環境に対して大きな影響があることがわかってきた現在、6割を外国産に依存するということは、日本人は自国の環境に対して持つべき責任を6割放棄しているに等しいことだと自覚すべきです。
Q3 食料を国産でどれだけまかなっているか、その割合を示す「食料自給率」は、現在、およそ40%です。このことについてどう思いますか?
農業問題とは環境問題です。これは表裏の関係にあります。農業は、農業生産や林業を通して、里山エコシステムを持続的に管理しています。都会の消費者は、ともすればわが国の環境の守り手である農業の役割を忘れて、単なる食卓のバラエティや、安い、高いの問題にのみ眼が行きがちです。あまりに近視眼でしょう。
ドイツにこのような言葉があるそうです。
「もし、あなたの国内農産物が3マルク高いとすれば、1マルクはあなたの健康のため、1マルクはあなたの家族のため、そしてもう1マルクは自分の生きる国土のため」
NYのジャポニカ米は20ドル。味もそこそこだといいます。東南アジアはそれよりはるかに安いでしょう。
米など、自由化してしまえという経済学者も多いのです。そのほうが、消費者の利益だと。
経済的な合理性をいちばんに考えた場合、資本グローバリズムの観点からは当然なことでしょう。そもそもWTOとはそのためにあるのですから。
しかし、もしわが国の米生産が外国からの安価な米に制圧された場合(その可能性性は高まっていますが)、ごく一部の産地を除いて壊滅的な打撃を受けるでしょう。資本グローバリズムに決定的に欠ける視点、それが自国の環境なのです。
日本の水と土のエコシステムを司っているコメ生産が壊滅した場合、日本の里山にとってもまた決定打になると思います。
Q4 日本は、今、工業製品の輸出を進める上で、農産物のさらなる輸入を求められています。コメを含めた農産物の輸入自由化を進めていくべきだと思いますか?
進めるべきではありません。それは亡国の道です。
しかし、WTOのドーハラウンドの結果次第で、現実になります。日本はWTOのドーハラウンドから離脱すべきです。780%もの関税を今日本はコメにかけているはずですが、これはWTO体制ではアメリカの輸出補助金に並んで完全に否認を受ける政策なはずです。
WTOと日本農業は共存できないのです。小手先でどうなる段階を過ぎています。
今後とも今の日本農業の米作を保全するには、国際社会に対して正々堂々と「米作りは日本型環境システムである里山保全のための環境コストである!」と言い切ってしまうことです。
農業とはその国の土と水、すなわち環境そのものから生まれています。これを他の工業製品や金融のように自在に移転できるとかんがえること自体がおかしいのです。
この稿続く
写真は、八角堂からみた光景。
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