価格問題をまっ正面から消費者に提起すべきです その2 今、農-流-消がなすべきこと
さて、この29.8円/個という原価は、私のグループGPセンター出荷価格26円から赤字出荷していることになります。25年やってきましたが、まったく初めての体験です。
出荷が流れて、入金が滞っていないので、かろうじて農場を維持できているという、いわゆる自転車操業状態に入ったことが分かります。また、私は、長年やってきてご縁がある出荷先が多く、大小合わせて6か所と取引関係がありますので、なんとか経営を維持できています。これがパルシステムだけが出荷先ならば、私の経営は早晩破綻するでしょう。
では、一般の養鶏業はどうでしょうか。自然養鶏はその体質がシンプルです。つまり低エネルギー消費型で、家族労働主体の低人件費型、地域の自給飼料も適時組み合わせています。薬剤、抗生物質の使用はゼロです。鶏糞出しや焼却の作業もミニマムかゼロです。冬季の遮蔽、加温もありませんから、資材代・光熱費もミニマムです。このような、たぶん日本の畜産でこれより下はないと思われる超低コスト型自然養鶏にして赤字の淵に立たされているのですから、他は推して知るべしでしょう。
たぶん、エネルギー多消費型の一般のケージ養鶏や、ウインドレス養鶏、ブロイラーなどではこのコストアップ重圧は、私たちの比ではないと思われます。
大規模経営は飼料の四半期先までの一括大量買い上げ、自社便、自動化などのスケールメリットで逃れられるでしょうが、中規模から下の業者の打撃は計り知れないものがあります。私以上に苦しいと思います。倒産が相次ぐでしょう。このことは全農も予測しています。養鶏哲学や方法論においてまったく異なった同業者ですが、ここ一番、頑張ってほしいものです。
一方、この危機の時代に、いまだスーパーマーケットチェーンの多くは「生活応援」、「価格据え置き宣言」などというたわごとで、消費の確保を考えています。いや、確保どころか新たな市場競争を始めてすらいます。これは国内の第1次産業が壊滅しようというこの時期に最悪の選択です。まさに自らの墓穴を掘るに等しい愚行です。ここ1年、この低価格競争に耐えたのなら、なにかしらの展望が生まれるとでも思っているのでしたら、その戦略眼のなさにかえって驚嘆するほどです。
来年は更に、食料を禁輸する国も増大し、温暖化の影響で米国、豪州などの穀物生産は毎年恒例のようになった被害を食らうでしょう。悪魔のバイオエタノール生産は歯止めが効かず、ハゲタカファンドの暴走も止まりません。かくして、食料の需給関係はタイトになり、国際食糧市場は完全なパニックの様相に突入します。
この状況の中で、最後の砦であるはずの国内農生産をまだ買いたたこうとしているのを愚行とよばずしてなんと呼びますか!今、流通がすべきはまず、この危機的な食糧需給について、しっかりとしたアナウンスをすることです。未だ大部分の消費者は、よもやそこまでとは思っていない。自分の財布の中身にしか気がいっていないのが現状です。
そのような消費者意識に真実の衝撃を与えるべきです。この食糧の危機状況にはとうぶん「終わり」がないのです。これについては多くのバックデーターを提出できます。むしろこのデーターを読み込むと、この状況はひょっとしたら「終わりの始まり」なのかもしれないと思うほどです。
この中で、もうひとつ先の時代を見越して、新しいビジョンを掲げたグループのみが生き残れると知るべきです。農-流-消まで貫く、農業-漁業のフードシステムを作る時期です。これからの5年、ほんとうの生き残りをかけた農業と流通そして消費者の戦いが始まります。その中で、生産以外の「農の文明的な価値」も再発見されるのだろうと私は考えます。
写真は、カボチャのポール栽培。底が白くなりません。面白い光景でしょう。中段は谷津田の夏。下段はすげ笠。まだ実用品です。
« 価格問題をまっ正面から消費者に提起すべきです その1 未曾有の危機 | トップページ | ギター談義をしたい »
「日本の農業問題」カテゴリの記事
- EPA発効 日本農業にはよい刺激となるだろう(2019.02.02)
- TPP 兼業を守ることが農業保護ではない(2016.02.06)
- コメントにお答えして エサ米は市場原理から逸脱している(2015.10.14)
- TPP交渉大筋合意 「完全敗北」だって?(2015.10.12)
それでもなお、日本の農産物は、(多分)世界で最も高価なんですよね。
少し前、フィリピンで、米価上昇に対して抗議するデモがありましたが‥
日本の米の値段は、その倍以上です。
日本の消費者は何故黙っているのでしょう?
諦めているのか、「世界相場」を知らないのか‥
この、どうしようもない程の非効率な農業を何とかできないなら、日本の農業は一度滅びた方がいいのかもしれませんね。
投稿: 660ss | 2008年7月26日 (土) 22時34分