価格問題をまっ正面から消費者に提起すべきです その1 未曾有の危機
従来の高齢化や土壌の崩壊などといった内在的な問題に加えて、大変な問題が生じました。
それはいうまでもなく、未曾有の資材、飼料、原油価格などのトリプル高騰という未だかつて日本農業が経験したことのないツナミの襲来です。私の所属する生産グループの農家からは悲鳴ともつかない声が多く寄せられています。
それを受けて、私の農場とグループは徹底的な農生産物の原価計算の割り出しと分析を急いでいます。現在、これが終了しているのは鶏卵部門だけですが、追って蔬菜部門も分析していくつもりです。
私の農場を例に採ります。去年2007年6月と、本年2008年6月のコストを比較してみましょう。同時期、同飼養羽数で比較しています。特に、すさまじい値上がりをしているのが飼料代です。実質のコスト支出が約41万から51万円、実に25%の上昇をみています。
次いで雛代が4%、光熱費が25%などのコスト上昇をしています。他に項目もありますが、省略して、トータルで116%の上昇です。つまり約2割ものコスト上昇があったということになります。結果、一個あたり原価コストは、昨年6月が26円であったのに対し、今年同月は29.8円、15%もの上昇となりました。1個あたりにして11.8円、約1.2円という大幅なものです。
手元に、全農が弾き出した畜産物価格に対しての影響額という資料がありますが、この資料はこのように言っています。採卵鶏は12.6%/㎏、ブロイラーが17.9%/㎏、養豚が11.5%/枝肉㎏、和牛が4.4%/枝肉㎏、乳牛4.6%/生乳㎏となると述べています。奇しくも、私の出した数字、15%と 符合します。この数字の信憑性がご理解いただけたでしょうか。
1個あたりの原価コストが15%上昇するということは、もはや個人やグループの経営努力の範囲を大きく超えています。
余情半さんが先日のブログで提唱されたことに賛同します。ttp://kantannihasinjinai.blogspot.com/
余情半さんがおっしゃるように、「逃げ回っていてもしかたがない」のです。生産者と流通はこの危機の痛みをオブラートにかけずに消費者と共有することを提起すべきです。
国際的な食料危機は必ず日本にも襲来します。いや、もう既に農業、漁業という第1次産業は高波を食らって溺れかけています。ところが市場で主導権を握る、量販、大規模流通がデフレ型低下価格競争の迷妄から覚めないのです。
それは消費者意識においてもまったく同様です。消費者は「今日の続きに明日明後日がある」と、なんとなく思っています。国も流通も食糧が危機だと言わないからです。なんとなく海の向こうの発展途上国だけの問題だと思っているのです。このような消費者意識に打撃を与えるべきです。
たぶん、コストアップによる値上げをした場合、消費は一挙に7割近くまで下がるでしょう。更に安い価格帯の商品に消費構造がシフトする可能性が大です。現に地鶏シャモではそのような現象が生じました。だから、刹那的な言い訳ではなく、大きな立場に立ったアナウンス説明が必要なのです。消費意識そのものを変えないで、この時代を乗り切るのは不可能です。
全農はこの資料の中で、この異常なコスト高騰により相当数の農家が赤字転落になると指摘しています。日本の農業は、とうとう俵に足がかかりました。私の推定した5年以内というデッドラインは大幅に書き換えられなければならないかもしれません。
団結して休漁をした漁民をうらやましく思えます。農民には、残念ながら今はそんな力はない。全国一斉に農産物の出荷を止める団結力はない。農家が農業捨てる兼業化が進みすぎているからです。このままでは、個別に孤立したまま潰れていくのを待つしかないのかと歯ぎしりする昨今です。
(この稿続く)
写真は、上から開花し始めたアサザの花。中段は谷津の有機の水田。その下はソーメンカボチャ。最下段は畦に咲くノカンゾウの花。
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