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米、この奇跡の穀物 その3 田んぼは生命の曼陀羅

Img_0006 上の写真を見て下さい。ここは私の農場のすぐ側にある典型的な谷津田(やつだ)です。谷津田という言葉はあまり聞き慣れないかもしれません。写真を見ていただくとわかると思うのですが、両側から小高い森に挟まれた谷のような地形のことを言います。

この谷津田の左奥の森の2本伸びている樹には、トビの家族が営巣しています。この時期、まだ一人前にならない子供たちが何羽か羽根を拡げて、谷に吹く風に乗ってソアリング(滑空)の練習をしているのが見られます。昨日はめずらしくも夕方に黒っぽいゴイサギが人相わるくやや前のめりで田んぼをあさっていました。まことにヤー公のナワバリ巡回ようです。かれらは夜行性なのでめったにお会いできないのでラッキーでした。

Img_0005_2 この頃は、わが村でも低毒性の除草剤を田植えの前に一回だけ散布という減農薬の取り組みが盛んになってきています。また農薬の空中防除は15年前頃に私たち有機農業者が村に働きかけてやめさせたので、確かに田んぼの生きものが増えてきています。するとそれを食べに野鳥が沢山来るようになりました。

いちばんうれしいことは、この谷津田の数か所でヘイケボタルが出るようになったことです。夜ともなると、昼間は樹や草の葉の裏に隠れていたホタルはいっせいに夜空から降るように空中を浮遊します。荒らされるので、あまり人には教えたくないのですが、それは人生観が変わるような素晴らしい風景ですよ。

つい最近まで左手の斜面には野つつじが咲き、左手にはノカンゾウのオレンジの花が沢山見られました。昨日行ったら、ヤマユリが満開でした。秋ともなると、小道にはヨメナという野菊の一種が清楚な白い花を咲かせます。驚いたことに、今朝の散歩の時に自生のホオズキをみつけてしまいました。栽培種ではないようですので、図鑑で調べてみましょう。Img_0033

わずか1㌔くらいの短い谷津ですが、田んぼという水系が中心にあることで、飛躍的に生物種が多様化します。それは田んぼが単純なコンクリートの池ではなく、水系から乾燥した淵に続く地形を持っていることにあります。

このようなゆるやかな自然の淵である畦(あぜ)にかけてもっとも豊かな動植物相が見られます。土地と水の間を往復して両方に生きる場所を持っているカエルなどの両生類、ミズスマシのような水面を生きる生きもの、稲の茎に網を張るクモ類、水中に生きるメダカ、そして水系の生物連鎖のいちばん基層を作っている植物性プランクトンや動物性のプランクトンが生きています。そしてそれらを捕食しにくる様々な野鳥たちもこの谷津や湖、河川を中心に活動しています。

Img_0019 それは、生きている曼陀羅。地球上でもっとも多様な生物種を支える空間です。和辻哲郎の有名な「風土」(岩波文庫)という本に、和辻さんが欧州で秋にもかかわらずまったく虫の音を聞かなかったと言っています。そして欧州人が虫の音を「うるさい」と感じることも書いています。私たち日本人は扇風機にも虫の音モードをつけてしまうくらい、それを愛してきたことと対照的です。

このような生きもの曼陀羅を愛でる心を忘れずにいる私たち日本人にとって、「コメ」を作り続けていることのもうひとつの価値がここにもあるようです。

写真は上から谷津田の情景。自生しているミントのパープルの花房に蜜を吸いにきた在来種のミツバチ。ごくろうさん!そしてこれも自生しているホオズキ。赤くなり始めてきています。最下段はヤマユリ。野性種とも思えないケバイさ。上段の写真(5月撮影)以外、今朝撮りたてのホヤホヤです。

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コメント

わたしの生まれ育った都下地域も谷戸で、
小川に沿って小さな変形水田が何枚も続いていました。
(もうずいぶん住宅街になってしまったけど…)
当然コンバインの入れないそれらの畑では、
今でも一家総出の手作業でコメ作りがされています。
この光景が、すなわち無/減農薬とは限りませんが、
そのような光景が残っているだけでも、今となっては誇りです。

蛍が飛び交うような豊かさ、うらやましいです。

投稿: あずき | 2008年8月 6日 (水) 09時48分

ほっとするのですね、みなさんのブログ。細部の感じ方の違いは個々人ですから当然あるにしても、‘まっとう’だからです。
今回も画像が一段と美しいですね。
エコではないのですが、こちらさまのブログはプリントアウトして読んでいます。画面で長いのを読むのが苦手でpc
みなさんにコメントをいれようと思って書いたのですが例によって散漫になったので本日の自分のブログにしました。

投稿: 余情 半 | 2008年8月 7日 (木) 05時22分

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