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米、この奇跡の穀物 その5 湧き水の教え

Img_0042 参って、地主さんに酒一本を手土産に相談すると「あそこはオレもてを焼いたんだぁ。じゃあ井戸でも一本掘ったらいかっぺよ」、ご冗談でしょう。井戸一本掘ったら60万円はしますよ、まったく~。私がムッとしたのを見て、「ならば、新宅のジイ様に相談すりゃいかっぺ。あのジィ様はあのあたりの湧き水にくわしいぞぉ」。

そしてこの新宅のジィ様に酒2本を手土産に(本数が増えた)教えを乞いに行きました。このジィ様とひと晩飲んだあげく快諾。そして翌早朝、さっそく現地に行くと、ジィ様田んぼはさっと見た後でいきなり、山に入っていくのです。足拵えは地下足袋、軽快そのもの。とてもジイ様とは思えません。ちょと沖縄のチョーイチさんに似ていなくもありません。オタオタしていると私が遅れます。

腰には鉈(なた)を吊るし、手には刃の厚い鎌を持ち、バサバサとかき分けながら見て回ります。なにを聞いても、「う~」とか「あ~」しかいいません。そして正午ちかくかれこれ数時間も山を歩いたあたりで、見つけました最初の湧き水です。それから面白いように数か所の湧き水を発見しました。

Img_0021 湧き水というのを見たことがおありですか。もちろん蛇口がついているなんとかの名水ではありません。まったくの人が触ったこともない天然水です。

沖縄でも源河(ゲンガ)という河の源流まで行ったことがあるのですが、森の湧き水はもっと小さくたよやかです。わずか30㎝くらいの大きさの砂まじりの窪地の底からふっふっと透き通った水が湧き出しているのです。

ジィ様は塩を白い小皿に供えて、手を合わせました。ジィ様に言わせると、この湧き水は神、水神様なのだそうです。そして、田んぼは水神様にお願いして作るものなのだそうです。ひと昔前には、早春の田作りの開始の時には、皆、湧き水の水神様に来て祈りを捧げたのが風習だったそうです。人によっては祠(ほこら)も作ったといいます。今でもその跡は残っていました。このような湧き水が私が借りた谷津田の両脇に数か所にあることを発見しました。ジィ様せは至極満足げでした。

そして夕方になろうとする時間になって、私にこの水を田んぼに引く技術的な方法を教えて頂きました。え、どんな方法かって。現物を見ないで説明するのは難しいのですが、やや湧き水がある場所からの勾配を工夫し、水の道を用意すること、そしてもっと田んぼをたがやして柔らかくしたら、呼び水として下の小川からボンプで毎日水を引いてやること、ただし、あまりやりすぎぬこと。

田への水の引き方もただ角からパイプで水を流してもまんべんなく行き渡らないので、あるていど耕して平らになったら縦横に溝を1尺(約33㎝)幅に切って、そこに順次流し込んでいく。そしてあとはひたすら「待つ」ことだそうです。「ここは昔は湧き水だけで田んぼさ作った場所だ。ぜったいにできる!」

毎日のようにジィ様は見に来てくれて、時には湧き水を点検に山に入っていきました。「大丈夫、まだ水神様はあのあたりにいる」と森から田へと伸びる斜面の中程を指さします。ほんとかいなと思いながら、ひたすら呼び水をして、待ちます。

そして1週間ほどたつと水が確かに増えているのがわかりました!そして思い切ってポンプの呼び水を切ってもさほど減らないのです。涙がでるほど嬉しかった記憶があります。コメと水との関係、更には湧き水を頂いている森林との関わりが肌身でわかった瞬間です。Img_0025

コメは水でできています。水は森林で蓄えられます。そして腐葉土と土中微生物により各種ミネラル、栄養素を与えられ、磨き上げられた水となり、田んぼに注いでいくのです。コメは田んぼの中だけで見ていてもはわかりません。その水がどこから来るのか、何が源なのかが分かってくるとコメが、日本の生態系の中心に位置していることがおわかりになるでしょう。

写真は、わが村の田んぼ。ペットボトルの風車が回ります。そして月見草。最下段は図鑑で調べます(笑)。

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