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皆んな百姓になれ!実践的就農マニュアル 第6回 安易な共同をしてはならない  

Img_0022最初のボタンを掛け間違えると、最後のボタンが締まらない。この典型的なケースが私の農地取得の経験でした。

初めに土地の法的な権利を安易に譲渡するという不平等条約にサインしてしまったツケは長期に渡って私たちを苦しめました。

それでも最初の3年間ほどは穏やかな日々が続きました。私も、Kさんの共同農場に別れを告げ、沖縄から通算して3年間にわたる研修生生活から、独立農家への道をふみだしたのです。その感激は大きかったし、面倒をおかけしたKさんに対する感謝の念は深いものがありました。

そして3年間、倉庫を建て、そこの狭い屋根裏に住み、そこから鶏小屋を建てたり、畑の開墾を開始し始めました。当時の写真を見ると、当時の私たち夫婦は、無邪気なはじけるような笑顔をしています。まったく何もない広野に、スコップひとつで穴を堀り、杭を打ち、柱を建てという作業が楽しくてしかたがないという表情をしています。高い倉庫の屋根張りをして得意そうなカミさん、オンボロのジープを買って悦に入るふたり。当時の写真をスキャンしてデジタル化する予定ですので、そのうちお見せできるでしょう。

農場建設ほど楽しいことはないと思います。私たちの場合、単に農場だけを作ったのではなく、生活一切をすべて構想し、家づくりまで行こうと考えていました。手作りの母屋ができたのが、それから8年後です。ある意味、私の人生のもっとも濃縮された季節であったと思います。この時期を30歳代という、体力がもっとも溢れんばかりの世代にすごせたのは幸福でした。

Img_0017しかし、例によって禍福はあざなえる縄の如し。最初のボタンの掛け間違いの結果は3年後のある日に何の予兆もなくやってきました。

二分割して入植をしたFさんが私たちに「約束は履行出来なくなりました。名義は変更できません」という驚くべきことを言い出したのです。

暗転。理由は農林公庫が返済期間中の名義の変更は許さないからだというのです。二度驚愕。そのようなことは、3年たってから分る性格のものではなく、借り入れた時に担当者に問えば分かっているべきことではないですか。意図的だとしたら、非常識というよりむしろ悪質です。

当然私たちは怒りました。そしてなんとか対策はないのか、最悪の場合、土地の名義が変更できないのなら、差額の350万円を割賦でもいいから返済してほしいとFさんに申し出ました。しかし、これも出来ないということで、まったく解決不能な状態に立ち至ったのです。

以後の不毛な交渉の経過は省きます。今まで、共に同じ土地に入植し、協力し、酒を呑み交わしては夢を語ってきた両家に大きな亀裂が走り、狭い土地の中での反目が始まります。そしてこれを本来は調停すべき立場のKさんも無作為の立場から出ず、やがて入植仲間全体までをも巻き込んだトラブルにと発展していったのです。

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結局、それから3年後、様々な事情でF氏はこの入植地を離れ、農業すらも捨てて郷里の九州に帰っていきました。まことに慙愧に耐えません。F氏自ら招き寄せたこととはいえ、このような結末になるとは誰も予測すらつかなかったことです。

このF氏の離農事件をきっかけに私への非難が強まり、私は就農仲間と距離を開けるようになりました。それが結果としては、新規就農者の集団から訣を分かち、既存の村の農民との共同への道となっていきます。後のシャモ農場や大型有機農業グループ作りはその結果だったともいえます。

これから農業の道に入ろうという人にひとつ重要なアドバイスがあります。どうしても未知の農業の世界に飛び込もうという時に不安や恐怖が湧いてくることでしょう。その時に頼れるのは、自分と家族しかないということです。自分の体力、知力そして家族、ここにしか拠るべきものはないのです。

Img_0001_1 安易に「共同」や協働を求めないこと。近隣の仲間と協力することはいいことです。しかし、それも一線を引くこと。結(ゆい)のような相互扶助はそれ自体は素晴らしいことですが、借りた労働力はきちんと対価で返すこと。

よくあるのは、私のような土地の共同購入は特別な事例としても、新規就農者同士での農機具やお金の貸し借り、共同耕作、そして共同出荷などがあります。

これらは皆、トラブルの種だと思って下さい。借りた機械が故障したなどという例はよくあることです。壊された方は余裕がない経営基盤ですから、むっとなるでしょう。しこることすらありえます。だから、借りない、貸さない。自分で無理をしてでも、中古でもいいのですから買うことです。

ましてやお金の貸し借りは、もっとも友情が破壊される近道です。相手から頼むと頭を下げられればついその苦衷に同情してしまい貸してしまうかもしれません。友情を壊したかったら貸しなさい。金と土地というのは、永遠にトラブルの種なのです。だから安易な共同はしないことです。

今日は冗談をいう気にもなれないつらい経験をお話しました。私が言ったことを単なる精神論だとは思わないで下さい。私は共同するためには、しっかりと自分が自立する必要があることを言いたかったのです。さて、明日から、気持を切り換えて、明るくいきましょう!

写真は、今日の記事とは裏腹の明るいものばかりを集めました。上から熱帯果物。さてなにか名前はわかりますか?解答は明日に。次はキューバのサンバ奏者の人形。次はグアテマラの豹のカルナバル(謝肉祭)に使う面。下段はメキシコの陶器の大猫。

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