昨日、カミさんが大地を守る会の女性農業者全国集会に行き、大変に面白かったといいます。
女性の全国集会というのは、いい意味でのリクレーションなのです。みな、年に何回か羽根を伸ばしに東京にやってきます。ああ、今日は仕事もご飯もせずにすむ、仲間の生産者と会議の翌日はぎりぎりまで東京に居残って、映画にでも行っぺよ!浅草はどういくのですか?いや赤坂のなんたらというデパートじゃなかった、あ、ミッドシティだったっけが、どっちにしよう。楽しい悩み。
明るくて、エネルギーに溢れていて、好奇心旺盛で大好きだなぁ、彼女たち!この人たちがいるかぎり日本農業は潰れません。オリンピックを見ても分かるように、わが瑞穂の国は女性によって支えられている国なのですよ(とほほ)。それにしても星野ジャパン、帰って来なくていいぞぉ!
このブログも案外大地の職員の間で読まれているそうな。とてもうれしいです。長いから斜め読んでますとはYグループ長。ブログを書かれている人にはおわかりでしょうが、誰かがどこかで読んでいてくれるということほど、頼みになることはないのです。
さて前置きが長くなりました。就農実践マニュアル第3回です。今回は農地をどう取得するのか考えてみました。農地の前提として、どのような地域を就農に選ぶのかから、考えてみましょう。
ひと口に地域といっても、日本ほど変化の豊かな国土はありません。私は初めに沖縄に入り、結局農地を取得できなかったため、全国を旅した後に、この茨城に定住しました。候補地もいくつか見てきました。
ひと口で就農といってもどこに入るのかで、それ以後の農業の形や経営がまるで違ったものになってしまいます。
私が仮に沖縄で農地が買えたとしたら、どうしてもサトウキビを中心にせざるを得なかったかもしれません。そしてコメとの巡り合いもなかったことでしょう。沖縄はコメはまったくと言っていいほど作っていませんから。また、亜熱帯の有機農業の難しさから、有機農業の門を叩いたかどうかもわかりません。
のっけからナンですが、私は土地の選定にはまずまず成功したのですが、後の経過でホームラン級の失敗をしてしまいました。どんな大失敗をしたのかは次回にゆっくりとお話します。ホントはあんまり話したくないんだけど、ま、いいか。
入植ということは人生を賭けての飛躍ですから、運命のサイコロを簡単に振らないように。必ず候補地を複数持ち、地型、気候風土、経済圏、村の有り様をよく見てから、熟考して下さい。大失敗をやらかしたこの私が言うのだから間違いはありません(胸を張る)。
私の帰農仲間には、黒潮に面した温暖な伊豆半島や房総半島に入った者もいますし、内陸部の栃木、群馬、山梨、長野に入った人もいます。初めは似たような考えでしたが、10年、20年たつとまったく異なった農業の形になっています。それほどまでに農地の選択ということは決定的なことなのです。
いくつか選定にあたってのポイントを記しておきましょう。まず第1に、市場までの距離と、農地価格は反比例するということです。また、入植後の農業経営もまた、反比例するのです。私の住んでいる地域は、東京まで100㌔半径内でしたので、土地は決して安くはありませんでした。25年前当時で175万円/10㌃(300坪)でした。今はずっと下がって、とうとう100万円を切りました(たはぁ~大損した!)。水田なら30万円~50万円前後が相場です。
このような大きな都市に近い農村の農地価格は山間部の数倍はします。ただし長野県などは山間部でも相当に高いようですが。また、なかなか出物もありません。茨城県八郷などは50軒もの新規就農者がひしめいていますが、土地価格を聞くとゲッというほど高価です。まさに需給関係そのものです。
一方、山間部は行政の方からきてくれというラブコールをする地域もあり、様々な補助金や支援策が準備されています。廃屋などを斡旋する村もあります。憧れの伝統家屋に安価で入ることもできるかもしれません。ただし、禍福はあざなえる縄のごとしで、農業経営は至難であるとお断りをしておきます。
むしろ山間部は林業が盛んな地域ですので、無理に農業を追うより、木工とか紙漉き、家具づくり、陶芸などの工芸関係をやってみたい人にふさわしいと思います。工芸ならば、毎日出荷をしなくとも済みますし、美しい環境の中で思う存分創作に打ち込めます。
では第2に、どこから買うかですが、まず行政の農林課と農業委員会、農業改良普及センター(旧改良普及所)に当たって下さい。昔は相手にもされませんでしたが、あんがい今は親身で相談に乗ってくれるようです。
また、行政関係は耕作放棄地の情報を集約しているので、そこを借地することも可能です。現在の当地茨城南部の農地借料は年間1万円ていどです。無理せずに、自宅周り+5反程度だけを購入して、あとは耕作放棄地を借りるのも賢いかと思います。
次はJAかな。これも一昔前は新規就農者など「どこの馬の骨」扱いでしたが、今は新規就農者に好意的な所も多いようです。JAやさとのように就農者支援政策を持って、資金や住居や売り先も支援しているすごいJAもあります。またJAは土地バンクといって、不要な土地情報をプールして、利用したい人に斡旋などをしているところもあります。そして地元の農業団体も、ツテがあれば尋ねて見て下さい。
田舎の土地物件を扱う不動産屋は、茨城・石岡近郊だとあるようですが、まず吹っ掛けられます。反単位ではなく、坪単位で物件を出してきたら即帰りましょう。農地を坪単位で買っていては農業になりません。都会や地方都市の不動産屋は、宅地を基準にしているようですから、とてつもない馬鹿げた額を言ってきます。
例えば、皆さんが都市部にお住まいならば、平均で坪50万円くらいでしょうか。この感覚で農地を「坪1万ですぞ。超格安!」と言われると心が動くやもしれません。
り~ん、鳴り響く警報の音!農地の売買単位は反(たん・10㌃・300坪)ですから、坪1万円ならば、反あたり300万円となります。これは、現在の茨城県の農地相場の約3倍です。3倍などいいほうで、坪2万、ときには5万などというイスタンブールの絨毯商人もびっくりの価格を吹っ掛けるトンデモ不動産屋すらいます。
実際、うちの村に入ったある人など都会の不動産屋から、相場の6倍もの額で買ってしまい、後から相場を知ってコサックダンスよろしく地団駄を踏んでいました。もし、不動産屋の暖簾をくぐるのなら、村の不動産屋に、地元の人と一緒に行きましょう。まずボラれません。村内は信用ですから、無垢な都会の人を吹っ掛けたとバレたら商売になりませんから。
農地を取得する価格の目安は、手取り年間収益の5年間分がめどです。それ以上農地購入にかけると、入ってからの返済圧力で経営に負担がかかりすぎます。たとえば、コメなら平均年間収益が手どりで10万円ですから、その5年間分で50万円以上出して買ってはならないということになります。
第3に、農地はだいたい天気がいい日に見に行くことが多いのですが、仮に一回目が晴れだとしても、かならず雨の時に行ってみましょう。というのはこのブログ5月22日にも書きましたが、晴れだとなにもかも良く見えるのです。
空は高く澄み渡っており、春ならヒバリやホトトギスが歌い、初夏ならツバメが低く飛ぶ、「おお!わが終の住処はここにあり!」と気が動いてしまいます。しかし、これが大雨の時には、斜面に雨水でうがたれた小川がくねり、崖は崩落し、そもそもその農地に行くアクセスの道が泥沼となって通行不可という場合すらあります。絶対に、決める前に雨の日に行くことをお勧めします。そのドジをこいた私が言うのですから間違いはない。
次回は私の懺悔の記録をご紹介します。いやー、失敗談は尽きませんよ(泣く)。百の成功談より、ひとつの失敗談を大事にして下さいね。
写真は、農場の日の出。4時50分くらい。次も同じく。太陽がでかかっています。次は蛾ですが、すいません名前を調べておきます。実に妖艶に美しい。次はセージの花房に首を突っ込む蜂。八角堂のステンドグラス。イギリス製のアンティクというと聞こえがいいですが、買ってから合成樹脂製だとバレた(涙)。
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