日本農業が自由化されれば価格が下がるのか?その5 日本にコメを輸出できる国などない
あの国はスポーツ用品店に野球道具しかないというラテンアメリカ諸国とは思えない国なんですよ。フツー、中南米はサッカー一色。野球なんてカケラもないのに、キューバはカストロさんからして大の野球好きで、ちょっと前まで自分でもバット振ってたもんなぁ。次回のロンドン大会は野球は消滅しそうで、次は勝ってくんないと後がないんだよォ!
しかし、キューバのエルナンデスを上野がみごとに一本勝ちしてくれたからいいことにしようか。柔道はやっぱり一本勝ちじゃなくては。野口さんはショックだなぁ。陸連のバカヤロー。補欠までダメとは危機管理できてない!あー、たまにはこんな雑談もいいかもしれませんね。あっと言うまに一本書けてしまいますもん。
あ、忘れてはいけない。北京においてスチューデンツ・フォー・フリーチベット(SFT)http://www.studentsforafreetibet.org/article.php?id=1632が果敢な抗議行動をしました。一瞬で公安に暴力的に拘束されましたが、ペマ・ヨーコさんという父親を亡命チベット人に持つ日本女性も含まれているようです。選手村は装甲車で固められ、メーン会場にはミサイル、報道規制はすさまじく、市内での一切の意思表示も許さないという戒厳令オリンピックは異常としか言えません。
では気を取り直して、そろそろ本題に。ここまでしつこく議論をすると(←私がこんなに粘着質だとは自分でも思わなかった)、そうそう「農産物市場の開放」が簡単にできないというのが分かってきたかと思います。いいかげんな「開放」なら出来ますが、その結果、日本人の食がグチャグチャに破壊されかねないというのがお分かりになってきたかと思います。
どうせやるなら、アジア統一基準、アジアGAPくらいは構想しないとならないでしょう。アジアGAPに近いものはありますが、最大の農産物輸出国の中国があの前近代的状況ですから。
今日はコメ自由化いきます。関税障壁と日本の農産物自由化の壁の象徴のように言われています。論者によっては、コメを日本の悪しき農業体質そのもののように言う人すらいます。そうであるかどうかは、前回の「奇跡の穀物 コメ」のシリーズで私なりにコメを丹念に論じたつもりでいます。日本文化と自然そのものであると結論づけました。経済的な側面は7月29日と8月4日に論じたつもりです。
繰り返しになりますが、単純に経済的側面だけで見た場合、「日本のコメは高いのか」といえば、アップした7月29日の記事でも述べましたが、世界中を見渡しても、日本に対してコメを輸出できる国など事実上「ない」以上、比較対照できない食材だということを抜いて議論できないのではないかと思われます。
正確に言えば、コメは世の中真砂の数あれど、日本人の繊細なコメに対する味覚を満足させるものなど世界には存在しない以上、高いも安いもないだろう、というのが私の感慨です。1993年の凶作の折、日本人がタイ米に見向きもせずに、今に至って思い出しては「あんなものは食べられなかった」と慨嘆する体験世代すらあります。
賭けてもいいですが、仮にベトナム米が10㌔1000円で売られたとしても誰が買うのでしょうか?在日の東南アジアの人しか買わないでしょう。というより仕入れる所すらないんじゃないかな。ですから、事実上流通する可能性がかぎりなくゼロのものと、比較することはできないのです。
ちょっと脱線しましすが、個人的な嗜好でいえば、タイ米は捨てたものではなくて、93年の凶作時に大喜びした珍しい日本人が私です。特にタイ料理のグリンカレーにはあのパサパサ感がたまりません。また、ジャスミンライスというのもあって、少し混ぜて炊くと実にいい香りがします。
コメは文化そのものでして、たとえば日本のカレーライスが小麦粉でねっとりしているのは、日本米にあわせて発展したからです。南インドの、たとえばマドラスカリー(現地ではカリーとはいいません。なんとかマサラといいますが)は米と一緒に食べますが、とうぜんのこととしてカリーはサラサラ、米はパサパサです。だから手ですくってたべられるわけですね。日本米でやったら手がグチャグチャです。
閑話休題。世界でone&onlyのジャポニカ米の競合商品はカリフォルニア米ですが、これが輸出余力がないのはご存じのとおりです(米国内の空前の日本食と寿司ブームだそうで、慶祝)。
では、本気でカリフォルニア米が生産を増大させたらどうしましょう。なんせ穀物生産では、良くも悪しくも世界一の米国(なぜコメの国なんだぁ!つけた奴、出てこい!ちなみに中国では美国、これにも苦笑)ですからね。
実は米国精米組合みたいな団体がだいぶ前に日本に陳情に来てはいるのです。開国しろみたいな陳情ですね。しかし、これはたぶんに米国内部向けのデモンストレーションで、あまり熱意が感じられませんでした。
というのは、調べるとすぐにわかるのですが、カリフォルニア州は水田を増産すること自体が難しいのです。カリフォルニア農業はロッキーの雪解け水で農業をしている地域です。もともとが乾燥地帯ですので、水量が豊かな地域ではない。水争いすらかつてはあったそうです。ですから、この地域では葡萄やオレンジのような果樹が盛んで、インペリアルバレーでレタスなどを作っています。
たしかにコメも作っていますが、膨大な水量を必要とするために大幅に増産できないでいるのが悩みなようです。生産量が増えないので、今の価格(約2000円/10㌔)で東部に売れるというのがミソで、増産すれば、すぐに値崩れを起こしかねません。ですから米国のコメ生産者は今ていどを少しずつ伸ばせたらいいね、ていどであると思われます。
米を栽培できる条件は、生育期に20℃以上が90日間(積算気温1800℃)、年間1000㎜以上の降雨量ですから、これをを満たす地域は、米国ではわずかにカリフォルニア、ジョージア、フロリダ、ルイジアナ、アラバマ、テキサスの南部諸州くらいなのです。そして、穀倉地帯の中西部は寒冷にすぎ、麦作とトウモロコシ類などしかできません。ですから、米国で米作をしているのはカリフォルニア州とルイジアナ州、そしてフロリダ州くらいです。ガンボスープにインデカ米がパラパラみたいな使い方か、ジャンバラヤでしょうか。ね、私たちにとって脅威足り得ませんでしょう。
ですから770%もの関税をかけずとも、コメ市場は「開けてもまったく平気」というのが、私の変わらぬ意見です。多少は喰い荒らされることがあっても、日本のコメが壊滅することなど絶対にありえません。日本人数千年のGohanの歴史を甘くみてもらっては困ります。
もし開放した衝撃があるとしたら、コメ市場を「開けた」ことによる農民の精神的なショックでしょうね。これは確かにあるかもしれない。しかし、やがて自分が作っているコメがじゅうぶんに国際競争力があることがわかって自信がつけば大丈夫ですって!政府や農政族、そしてJAが開放に反対するのは、もっと国内政治がらみのことだけにすぎません。
次回で最終回とします。
写真はノカンゾウ。水辺を好みます。北京五輪に対するプロテスト。次はわが村の田の風景。オシロイバナ。下段は収穫間近の芋畑。いずれも昨日撮影。
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コメント
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こんにちは。いつも興味深く読ませていただいています。里山や水田の風景に心が落ち着くのは、「瑞穂の国」の民だからでしょうか。日本の農業のことを実にわかりやすく(まさに現場から!)発信して下さっています。おもしろいです!
先日湧き水のことを書かれていましたが、ある田んぼの用水路が遠い山の向こうからはるばる引かれていたということをテレビでやっていました。先人たちのお驚くべき知恵と努力。
投稿: ニーニャ | 2008年8月14日 (木) 11時50分