日本農業が自由化されれば価格は下がるのか?その3 日本の農産品が高いというのはデマです
悲しいことに、頭から日本の農産物が高い!と断罪する人達は後を絶ちません。
日本国民が不当に高い価格の食料を買わされていて、多大な出費を強いられているという人すらいます。そのような論者の中の過激な人は、非合理的な日本農業はなくなったほうがましだとさえ唱えています。ほんとうにそうなのでしょうか、そこでデーターを調べてみることにしました。
では、具体的な数字を出して比較してみましょう。まず、2003年に総務省統計局が出した「世界の統計2003年版」に家計消費支出の食料支出の占める割合のデーターが出ています。日本は25%弱です。この数字はカナダ、ドイツ、イタリア、イギリスとまったく一緒です。特に日本の食卓が不利益をしているという証拠はありません。先進国としてはいたって妥当な水準です。
次に、ドイツと比べた野菜の価格を調べてみました。ゲッチンゲン市の青空市での価格調査のデーターがあります。青空市で生産者自身が売っていますから、流通コスト(卸と小売)が省かれているので、実際のスーパーではこの2割増しとお考えになればいいと思います。こちらの道の駅と比較するのが適当だとは思いますが、まぁいちおうの目安にはなります。
ドイツ・ゲッチンゲン市では、ピーマンが300㌘ひと袋で156円。卵が1個36円。平飼卵は42円。トマトは300㌘で95円。ブロッコリーが1個で246円。カリフラワーが1個150円。この価格をご覧になって、ドイツって農産物が安いと思われる方があれば、ハイ、手をお挙げ下さい。
ものにもよりけりですが、ほとんど同じ価格水準か、品物によってはもう俺、ドイツに移住したいと思いましたもん。平飼卵が42円ですぜ、俺なんか平均29円だぞウルウル、泣くな、泣いてはいけないハマタヌ(笑)!
たしかに農地一戸あたりの広さはドイツは20分の1ですが、だからと言って20倍安いなんてことはまったくないのは、今のゲッチゲン市の調査でお分かりになりましたね。もしそうならば、日本ではピーマンひと袋を3千円強で売っていることになります(笑)。
話を戻しましょう。さて、国産「高級」ということの筆頭によく上げられているコメですが、スーパーで流通するコメの最も安い相場が2000円/5㌔で、1合換算にすると60円、1合で茶碗3杯分ですから、一杯で20円となりますね。魚沼コシヒカリはこの約倍ですから茶碗一杯あたりで40円。これが高いですかねぇ。日本最高、つまりは世界最高級のお米が、お茶碗3杯で120円、缶コーヒー1本120円と同じ価格です。
高いと思うのはコメ一回の購買支出が5㎏単位だからで、5㎏あれば小家族でそうとうに持つでしょう。それはコメが保存がきく特性があるからで、パンを一時に5㎏買えば同じことです。同じ国産「高級」といってもホンマグロの大トロの「高級」とは同次元の問題ではないのです。
ここで注意しなければならないのは、輸入農産物を日本円に換算する場合、その時々の為替レートに左右されることです。
極端に言えば、かつて80円台までもっとも円安が進んだ時と、かつてのような固定相場制の時のように360円台とは比較にもならないでしょう。輸入農産物が「安い」と言う方は、この為替相場が生きものであることをどこかで忘れているような気がします。
大手商社が海外駐在員に、コメの現地価格の統計を出してもらったデーター(「データーブック世界の米」)があります。北米での価格差が面白いのです。1986年に1217円/5㎏だったものが、99年には3200円にと倍になっています。同じ北米コメの価格がどうして円換算するとこれまで違うのでしょう。
答は為替相場の上下です。輸入に頼ると上下し続ける為替相場により食料価格が上下してしまいます。まったく品質と関係がないところで国民生活が左右されてしまうのです。もし、またもや円高にふれて170円にでもなったらどうするんでしょうか。
あるいは、中国が元高になった場合(たぶん遠からずなりますが)、今の価格が3割、5割値上がりということもありえます。特に現代はデリバティブマネーが為替相場を左右する傾向がありますから、今がたまたま円安だからと言って、こんな水モノの為替相場に国民の命の糧を預けていいとは思えません。
さて皆さん、ここであらためてお聞きします。果たして日本の農産物は果たして「高い」のでしょうか、と。
写真は、モロヘイヤの畑。このネバネバがたまりませんわい。次はベネゼエラで買った仮面舞踏会のキザ男。ちょっと私の愛聴のビギンのライブ大全集が見えます。次はイランで買った錫の大皿。これを背中に背負って飛行機に持ち込みました。お客が来た時には、この大皿の上に色々な料理を乗せます。なかなかステキですよ。下段は朝もやの霞ヶ浦。朝5時に眠い目をこすりながら撮影。なにか印象派の絵みたいですね。
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印象!日の出。
投稿: ぶんぶんこ | 2008年8月11日 (月) 12時36分
結論から先に書きますが、日本の農産物は高いです。
多分、ヨーロッパでも最も物価が高い街、ロンドンと日本を半々で生活した上での感想です。
何と言ったらいいでしょうか‥
上の方、フリーレンジの卵とか、オーガニックな野菜とか、そういった部分を見れば、日本とさして違いはないでしょう。
(向こうの感覚だと、かなり割高です)
一方で、「食費を安くしよう」と思って、底辺を探すと、そりゃもう、かなりイギリスの方が安いです。
まあ、品質も「それなり」ですが、普通に街場の店で買える物です。
日本の農家~流通の大きな弱点がここでしょうね。
農産物の貿易がより自由になれば、この底辺の部分がかなり下がると期待します。
投稿: 660ss | 2008年8月11日 (月) 20時46分
泣かないで~!
頑張れ~!
応援しています♪
そして、眠い目をこすりながら撮っただけのことがある!
オ~!ビ~チフル♪
投稿: ゆっきんママ | 2008年8月11日 (月) 21時11分
モネが発表した事で若い画家は続いた!時代をつくった。
投稿: ぶんぶんこ | 2008年8月11日 (月) 21時45分