地球温暖化について回り道をするようにして考えています。
既にある結論に簡単に飛びつくより、私自身がひとつひとつわかってきたことをお話ししする中から、地球温暖化といった大きな問題を考えていきたいと考えています。いきなりCO2がどーしたの、こーしたのという話を始めてもシロートには良くわかりませんもんね。
さてさて皆さん、上の写真は有名な写真です。アラスカ沖で砕氷船から撮られたものです。(「ニュートン」2008年別冊より参照のため引用)たぶんこのホッキョクグマの2頭の生存は厳しいだろうなと哀しい気持にさせられます。そしてこれがCO2の増大による地球温暖化説の証拠の一枚として人の心を大きく揺さぶりました。ゴアさんの「不都合な真実」にも同じような写真が載っていて、以下の説明が加えられています。では、ゴアさんの本を見てみましょう。
字が小さいのですがこうあります。「1970年代、北極の氷冠はかなりのスピードで縮小をし始めました。これは、ホッキョクグマにとっては悪い知らせです。ホッキョクグマはアザラシを追って氷盤から氷盤へと移っていきます。多くの氷が溶けてしまったために、クマたちはこれまでよりもずっと長い距離を泳がなくてはならなくなりました。次の氷盤にたどりつく前に、おぼれ死んでしまうホッキョクグマもでてきたのです。こんなことはこれまでなかったことです」(「不都合な真実」P86:87)
また、NHKスペシャル「気候大異変」では「もう遅すぎるのか!」と叫びながら放映していました。たしか、溺れたホキョクグマの映像もありましたね。
私は動物が大好きなので、このテの報道には極端に弱いのです。湾岸戦争の折りのイラク軍による原油の海への放出によって、原油まみれになって眼ばかり光らせている水鳥の写真には怒りがこみ上げてきました。許せん、イラク!おいフセイン、ここに来て座りなさい、という気分に「操作」されたのです。
今「操作」と言いましたが、この原油まみれの水鳥の写真は、湾岸戦争とはまったく関係のないやらせ映像であったことが後に分かってしまいます。なんのことはない米国の広告代理店が、反イラク感情を煽るため、米政府の要請で「湾岸戦争の自然界の被害者」として捏造したものだったのです。ひでぇ話ですな。米国のみならずよくあることらしいですが、心情にダイレクトに訴えかける映像には注意しなきゃあと思い至ったわけであります。気をつけよう、甘い言葉と悲しい画像。
話を北極に戻しましょう。北極圏の海淵の氷が溶けていっているのは事実です。これは前々回に触れました。そして、これに追い打ちをかけるようにして、2040年の夏に北極海の海氷が消滅するというもっともらしい情報が大々的に流されて大騒ぎになりました。
海氷がみんな溶けりゃあ大変ですよ。世界の海水面が上昇して世界中水浸しだ!大津波がくるぞ!海を見ろ、壁だ、いや大津波だ!長野に移住しろ!
ウソ。しません。中学校で習ったアルキメデスの法則を思い出すこと!海氷は、自分の体積分の水を押し退けて浮いているんですぜ。仮に溶けてたとしても、海面上の部分が海面上昇に影響を与えるのみです。コップの中にアイスコーヒーと氷を入れて、氷が溶けて水の線が上がりますか。試してみましょう。こんなトンデモ説が実際飛び交ったのだから、まったくもう。┐( ̄ヘ ̄)┌ フゥゥ~
ちなみに、IPCCも海面上昇の原因を北極海の海氷が溶けたためとは説明せずに、海水温度上昇による海水の膨張のためとしています。
地球大沈没は横において、2040年北極海氷消滅説はホッキョクグマの絶滅とも絡んで大きな問題になりました。なんせシロクマはヒグマから分かれた種ですが、ヒグマは怖いけど、シロクマはパンダから隈どりを取ったみたいでとても可愛いですからねぇ。
これが皆んな溺れ死ぬとは尋常ではない。世界野生動物基金(WWF」も「ホッキョクグマは歴史上の動物になる」といい、英国「インデペンデント」紙も「ホッキョクグマは動物園でしかみられなくなる」と叫びました。
で、セーブ、ホッキョクグマとなったわけです。私なんぞ、ひと頃グリンピースのセーブホッキョクグマのTシャツを着て、カンパもしてしまった。なんて軽薄なんだ。( ̄○ ̄;)では実際にホッキョクグマは絶滅の危機にあるのでしょうか?
結論からいいましょう、ご安心くだされ、絶滅していません。
ふ~、またかい、という気分になりますがまずはこの表をご覧下さい。(典拠・ビョルン・ロンボルグ・ただし私は氏の意見をすべて肯定するものではない)
表の左側の横軸の最初の起点には1980とあります。これは1980年を表します。縦軸が頭数です。お分かりのとおり、1980年にはわずか500頭に過ぎず、乱獲により絶滅寸前であったということが見て取れます。ちなみに当時は海氷の融解は観測されていません。あくまで人為的な乱獲が原因です。
これが保護政策の結果が出て、5年後にはハドソン湾だけで一気に1500頭まで回復していきます。以後1990年代からはほぼ横ばいという安定した状態が続いています。減少トレンドの線が引かれていますが、1980年代の絶滅の危機からは大幅に増加していると言っていいでしょう。
今上げた2005年850頭という数字は、あくまでも北極圏のハドソン湾地域のみの数字です。他にいくつものホッキョクグマの棲息地があります。ホッキョクグマの総個体数は、北極圏というそれでなくとも厳しい自然の中で、おまけに広域に拡がっているために諸説あるようですが、おおむね総数2万5千頭(坪田俊男/北海道大学院教授・クマ生態学)という説が妥当なようです。少なくとも絶滅しそうだというデーターはありません。そう言っているのはマスコミと一部の環境保護団体だけです。
それはこの北極圏で生活し、猟をしているイヌイットが年間なんと400頭ものホッキョクグマを狩猟していることでもわかるでしょう。イヌイットは合衆国政府が禁猟方針を打ち出したことに強く反発しています。もし絶滅寸前ならば、年間400頭もの狩猟はできないはずですから。グリーンピースさん、可愛くて賢い「絶滅危惧種」のホッキョクグマを殺す「悪い」イヌイットに突撃してくれ。
一点注意していただきたいことがあります。それはこの2万5千頭という個体数が自然界の上限であると思われることです。たぶんこの北極圏という生態系では、それ以上ホッキョクグマの個体数が増大すれば、ホッキョクグマの餌となるアザラシなどの海洋哺乳類が減少しすぎてしまい、やがてホッキョクグマ自身も餌不足で減少してしまうからです。増えればただいいというものではないのです。それは北海道のエゾシカの増大による地域生態系の攪乱という事例で日本も経験しています。
食物連鎖の体系の中で、ホッキョクグマはこの生態系の中で最上位に位置します。ホッキョクグマを捕食できるのはこの北極の自然界ではいません。もしあるとすればそれば、私たち人間というかならずしも自然生態系の内にはいない存在だけです。
ホッキョクグマが絶滅に瀕して絶滅危惧種になった場合、クマの食料であるアザラシが増えすぎます。その結果アザラシの捕食する下位生物である小型魚類が激減していくことになります。これは深刻な影響を北極の生態系に与えていきます。北極に生きる多くの生物にとって共通の食料の小型魚類が減少することだからです。小型魚類の減少はそれを食べるシャチやクジラなどの海棲哺乳類に深刻な打撃を与えるはずです。
逆にホッキョクグマが増加しすぎれば、アザラシが減少しすぎるでしょう。食料であるアザラシが減りすぎれば、ホッキョクグマは生存できません。生態系は冷厳な食物連鎖の中で安定しています。これを敵対的共生とよびます。自然界はこの敵対的共生によってしっかりと守られているのです。
ひとつの環境(生態系)の中でホッキョクグマを一定の範囲で淘汰できるのは私たち人類、ヒトしかいないのです。ですから、イヌイットの400頭の狩猟は理にかなったことです。イヌイットは乱獲をすれば獲物がなくなるというギリギリの線の上で狩猟をしているのです。
さて、具体的な地域とデーターを出しましょう。世界動物保護連合(IUCN)の調査では、ホッキョクグマ個体群20個のうちバフィン湾の1から2の群で個体数が減少しているだけで、半分以上の個体群は安定、ビューフォート海付近の2個体群では増大しているという結果がでています。この調査結果を見て、どうして絶滅寸前などといえるのか首を傾げたくなります。
さてここで、前々回ご登場頂いた北極圏研究の世界的権威の赤祖父先生に再びご登場願いましょう。皆様、世界的な大学者に拍手を!不肖私が品悪く、市民語に翻訳をいたします。では、先生レクチャーを。
たしかに海氷は溶けているが、それは9月夏の短い季節だけで、その時にだけマスコミが押し寄せて写真をとりまくりおる。北極圏の海氷は冬になれば北極海一面覆われるのだ。しかしこの時には知らんぷり。2007年には確かに減ったが、その原因は風に吹き寄せられたためであった。「ニューヨークタイムズ」の記者が、夏に北極点で水が溜まった写真をあろうことか「北極点でも氷が溶け出した」と書きおったから怒って抗議をしたもんだ。そうしたらなんと・・・え~先生、あの~、恐縮ですが、シロクマの話をお願いしたいのですが。
おほん、シロクマではないホッキョクグマだ。ホッキョクグマなど北極圏では珍しくもなんともないぞ。第一、今より暖かかった間氷期初期にもホッキョクグマは生き残ったのだ。この素晴らしい生物の生命力を馬鹿にしてはいかん。あいつらはタフなのだ。
ん?「海氷が融けてホッキョクグマが溺れ死ぬ」とはなんたるヨタ話だ。9月の短い北極の夏が過ぎれば、海氷は元に戻るのだ。アザラシが海岸ぷちを移動すれば、それをホッキョクグマは追う。だだそれだけのことだ。そんなことはマスコミや政治家や環境保護活動家が、われわれ北極圏で年中調査をしている専門家に聞けばすぐわかることだ、まったくもう(←先生どんどんテンション高まる。怖いぞ!)。
なに?溺れたホッキョクグマがいただと。それも原因は分かっている。嵐で乗っていた海氷が沖に流されたのだ。不運だったとしかいえないが、厳しい自然界にはよくあることで、それをマスコミが「溺れ死んで絶滅か!」とはやす。何度も北極圏研究者が教えてやっても、自分に都合の悪いことは一切報道しないのだ。自分にとって「都合のいい真実」ばかり流す。けしからん!だからどんどんと誤情報が一人歩きをして、混乱にワをかけている。
先生、ありがとうございました。気つけに一杯やって下さい。
[本日のまとめ1] ホッキョクグマは1980年の500頭の絶滅寸前状態から、保護政策により増大している。現在はほぼ安定した個体数の状態を保っている。
[本日のまとめ2] 夏の短い解氷期が終われば、北極海は一面氷に覆われるので心配はいらない。溺れたホッキョクグマの画像は、嵐で乗った氷盤が沖に流されたため。北極海の解氷とは無関係。北極海の氷が溶けて地球上が水浸しになるというのはトンデモ話にすぎず。
[本日のまとめ3] 気をつけよう、甘い言葉と悲しい画像。マスコミ報道には売らんがためのセンセーショナリズムが多々混ざっている場合がある。よく自分の頭で見て、確かめて、そして考えよう。
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