食にコストをかけないで、一体なににかけるのですか
検疫の盲点
引用開始
日本にも波及したメラミンの汚染牛乳問題。品質をごまかすために工業用の物質を混ぜる「贋造(がんぞう)」と呼ばれる行為に厚生労働省幹部は「何十年も前の話だと思っていた」と驚きを隠せない。農薬や抗生物質、細菌の検出に重点を置く現在の検疫体制で、工業用物質は盲点となっている実態が明らかになった。
中国で被害が相次いだのを受け、厚労省は今月12日からマーガリンの原料となる乳脂肪調整品の輸入を保留していた。ただ、厚労省は「中国側からは『加工品に使った』という情報はなかった」(監視安全課)として、原材料に乳製品を使った菓子、加工食品の輸入は、19日まで続いた。
メラミンは工業用の樹脂として使用されるため、厚労省は「食品に混入することはあり得ない。国際的にも食品の添加物にはなり得ない」(同)として検査項目に入れていなかった。しかし、中国では牛乳を水で薄めてもメラミンを混ぜることで、タンパク質を高く見せかける「贋造」が横行していた。
現在の検査項目は大腸菌などの細菌、食品添加物、抗生物質、残留農薬に重点が置かれている。「終戦直後の厚生省(当時は、酒にメチルアルコールが混入していないかなどさまざまな『贋造』を検疫で調べていた」(厚労省幹部)というが、近年、品質を重視する消費者志向から「贋造品」を輸出してくるケースは皆無だったという。
厚労省幹部は「工業用の化学物質は数万種類はある。次は何が出てくるか分からない中で、検査をするのは費用に加え、技術面でも不可能。日本の輸入業者が、中国の工場に衛生管理者を常駐させて、原料から製品まで一括管理するしか手がない」と検疫体制の限界を認めている。
■メラミン 尿素とアンモニアから合成され、メラミン樹脂の原料となる。樹脂は表面が硬く、接着剤や塗料、食器などに使用。国立医薬品食品衛生研究所のウェブサイトによると、口から大量に摂取すると、腎臓やぼうこうに影響が出て、結石ができることがある。皮膚に付いたり、口に入ったりした場合は、応急措置として水などで洗浄する。米国で昨年、中国産原料を使ったペットフードを食べて死ぬ犬や猫が相次ぎ、米政府はメラミンが検出されたとして輸入を禁止した。
(産経Web) 引用終了
なんともかとも、いやはや。連日のような食品の安全性に対する事件です。私自身、やや食傷ぎみで今日もアップしようかどうしようか迷っていました。しかし、コメントをすることにしました。
立て続けに起きた2ツの事件には共通項があります。両者とも「輸入食料」によって引き起こされたということです。メタミドホスは中国産のモチ米でした。メタミドホスはシロアリ駆除剤です。今日本では野菜、米はおろかシロアリにすら禁止されています。
今回もまた樹脂用メラミン(*上の写真は中国で廃棄されるメラミン乳)という常識ではありえない化学物質がまずはお膝元の中国で出て死者まで出し、そして国外にも飛び火しました。
厚労省にも一理あります。わが国では食品の「贋造」(がんぞう・ニセモノ作り)は想定していなかったのです。わが国の「贋造」は、食品添加物の範疇でなされるのですが、中国のやり方は次元が違います。食品に平然と工業用薬品を使うということをします。
例えば、スーダン・レッドという絨毯用染色剤を入れて肉を赤くしたり、硝酸塩という工業用塩を漬け物に使ったり、タンパク質含有率を高めるために今回のように工業用メラミンを入れたりします。すさまじいの一語に尽きます。食品添加物が安全に見えてくるほどです。
そしてもう一点。これらがタチがわるいことに副原料として使われていることが多かったことです。国民は地道な商いをしている和菓子屋さんの大福の餅取り粉に、よもや毒米由来の有機リン系殺虫剤メタミドホスが入っているなどと想像すらしないでしょう。丸大という大メーカーのクリーム饅頭にまさか工業用メラミンなどが入っているとは予想だにしなかったはずです。現状では、消費者は防ぎようがないのです。
今回の事件はBSEと同じように、大きく日本の食料問題を変えていくと思われます。1円でも安い食品を求めた結果、食の安全性を手放してきた代償が突きつけられました。食の安全とは、食のプロセスを明らかにしていくこと、確認できることです。これはコストと時間がかかることなのです。
私のブログでも「国産の農産物は高いのか」というテーマを巡って討論になりました。私がその中で言ったことは、今ある誠実な日本の農業を潰してしまえば、外国産の農産物に支配されますよ、いったんそうなったら二度と元には戻りませんよ、ということでした。今回2つの立て続けに起きた事件はこのことを改めて日本人に教えたと思います。
食は生活の基本です。食に対価を払わなくて、一体何に払うのでしょうか。
■ ココログ側の事情で、写真が1MB以上アップできないでいます。今までわがブログ自慢のデジタル写真がお見せできないで私も悲しい。近々原因を突き止めて、またアップいたしますので、しばしお待ちを。
■誤「メラニン」⇒「メラミン」、いやまことにすいません、訂正いたしました。この版では修正済みです。余情半様、ご指摘感謝します。このテよくやるんすよ。前には「カスタトロフ」(正しくはカタストロフ)、そのまた前は「シュミレーション」、正しくは「シミュレーション」。なんせ耳からビートルズの歌詞を覚えたという人ですから。
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コメント
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突然のコメント失礼致します。
勝手ながら私どものサイトからこの記事へリンクをさせていただきました。
http://sirube-note.com/health-controller/
もしよろしければ、こちらのページより相互リンク登録もしていただけましたら幸いです。
http://sirube-note.com/health-controller/link/register/
現在のページからのリンクは一定期間の予定ですが、よろしくお願い致します。
(自動書込のため、不適切なコメントとなっていましたら申し訳ございません)
token:KhwITbRp
投稿: sirube | 2008年9月21日 (日) 09時19分
もしもし、「メラミン」です。入力ミスとは存じますが「メラニン」ではありません。言葉が似ていてエラい違いです。……(ノ゚ο゚)ノミ(ノ _ _)ノ 落ち着いて、オチツイテ・・・。
投稿: 余情 半 | 2008年9月21日 (日) 10時37分
こんにちは♪
毎度のコメントになってしまいますが、全く同感です。
私たち国民が安全より安さを求めた「ツケ」がまわってきたんですよね。
そして中国を云々言う前に、もっと謙虚になって食について根本的なことを考えなくてはいけないと思います。
投稿: ゆっきんママ | 2008年9月21日 (日) 16時11分