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富山和子「川は生きている」を読む 第5回 Aさんへの手紙

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Aさん。
今度機会があってあなたの生れた国に行くことになりました。あなたの国にはVAC(Vuon・Ao・Chuong)と言って、「栽培」、「魚養殖」、「畜産」を通して循環させるやり方があるそうですね。素晴らしい方法です。ぜひ拝見したいと思います。
日本は今まで循環型農業-漁業-林業を大事にしてきた歴史がありました。
たとえば、このシリーズのどこかでふれるでしょうが、山を手入れして豊かにしていくと、その山から流れ出す川もまた豊かな滋養分が含まれるようになります。腐植物質やミネラル分、そして適度なチッソ分が、川の水として途中の田に注ぎ、人々の飲み水となり、そしてやがて海に注ぎます。
この滋養分に富んだ河川の水は最終的に海の植物プランクトンを豊穣にさせ、それを食べる「魚が湧く海」をつくるのです。
このような見事な流れ、生きものの鎖がズタズタになってきています。
林業があり、農業があり飲み水があり、沿海漁業があるというふうにバラバラにあるのではなく、「川」という文字どおり一本の流れで繋がっていたることを、現代の日本人は理解できなくなっているようです。
言い換えれば、人が生きるということ、その糧を得ることということが、実はその国の地形的成り立ちと不可分であり、その中でこそ農業や林業、そして沿海漁業が位置するのかを考えてみたいというのが今の「富山和子」シリーズです。
農業は、その置かれた地形に規定されます。万国普遍の農業などありえません。農業はすぐれてその地域の産物なのです。
あなたの国にも、私の国と同じようにその国、その地域の成り立ち、地形、生態資源、そして人の「志源」があるはずです。
あなたの国に行ったなら、私の関心はまずその国の地形と、人です。
それがわかれば、なぜそのような産業ができたのかわかります。あなたの国の山岳の標高、川の流れの速さ、治水のあり方。どのような林業があるのかも知りたい。
そして田んぼや畑の作られかた。そこからため池があっての養殖など。これらが絡まり合って初めて「有機」なのです
Img_0037_edited このように考えると「有機」とはその土地の文化そのものだと分かるでしょう。
Aさん、有機農業ということを化学農薬を使わないとか、化学肥料を使わないというふうに狭く考えてしまってはいけません。
えてしてそのような傾向に走ってしまいます。しかしそうではない、ほんとうの「有機」というのは技術一般でも、ましてや表示一般でもありません。その土地の成り立ち、人のあり方、そしてその中で産業のあり方を絡ませて実現していくことなのです。
そして志源とあえて付け加えたのは、いくらシステムがあっても、例えばHACCPやISO、JASがシステムとしてあったとしても、つまるところ志の源(みなもと)がなければ意味がないからです。
今の中国をご覧なさい。今中国の農産製品を買おうという勇気のある日本の消費者は限りなくありません。今ある商品も不良在庫になっているようです。今後も企画をするのがむずかしいでしょう。Img_0050_edited
なぜか?今の中国の食品産業には大きく志と知見が抜け落ちているからです。一見近代的なシステムがあるようでも、その芯になるものがありません。それがない人たちが、システムを構築しても持続できないでしょう。そのような志が欠落した人は、やがてそれに馴れるとそのシステムの裏をかくようになり、不正を考え始めるからです。そして、やがて破綻します。
有機農業は志です。狭く我のみを高しとするのではなく、地域の自然や人々、産業と繋がろうとする志を持つことです。
あなたの母国に行ける日を楽しみにしております。

■写真は秋茗荷の花園。さるすべりが咲く村の墓地と村の田んぼ。

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コメント

秋ミョウガの花園・・・
なんてステキなんでしょう♪
ところで、Aさんの国ってどちらですか?

投稿: ゆっきんママ | 2008年10月15日 (水) 21時35分

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