トリインフルエンザの謎 第2回 ウイルス、この奇怪な生物?非生物?
普通H5N1とかH5N2、H7N1などと読んでいます。この記号の読み方ですが、H1とかH5、7とかつくのはこれはウイルスの「株」の名称です。H5からH16まであります。
次に来るN1とかN2はそのウイルスの感染が強いか弱いかの度合いを示しています。N1型が一番高いわけで、N2型だと弱毒でワクチンになどに利用されている型です。ですからH5N1は、H5というインフルエンザ・ウイルス株の仲間で、N1つまり一番感染力がモーレツ,だということになります。N1からN9まであります。
よく誤解があるのは、トリ型のH5やH7などの株と、ヒト型のH1などが同じインフルエンザとして理解されてしまうことです。いや、正確じゃあないな、同じ「インフルエンザ」には違いがないのですが、トリ型のインフルエンザはヒトに感染しません。逆もまた真なり。トリがクシュンといっても、ヒトには移ることはまずありえません。
それはなぜなんでしょうか?実はこれがウイルスの面白さです。
インフルエンザ・ウイルスは原則として、ひとつの自然宿主を持っています。けっこうああ見えても律儀な奴のようです。ヒト・インフルはヒトにだけ、トリ・インフルはトリにだけにしか罹りません。ウイルスはひとつの鍵孔に一つの鍵というほど、宿主とする対象の生物種は限定されているのです。これを「種の壁」といいます。ウイルスは「種の壁」に阻まれて、他の種類を異にする種に感染拡大ができないのです。トリ・インフルなら鳥類だけ、ヒト・インフルならヒトだけ。ね、分かりやすいでしょう。
ウイルスは地球最古の生物のひとつですが、非常に変わっています。自分の固有の細胞の姿を持たないんです。タンパク質と核酸しかないのです。ついでにいえば、生物と非生物のいずれにも分類できない(!)というまっことミョウテケリンな生きものなのです。
ウイルスは宿主の体内に侵入し、宿主のDNAに干渉して、その細胞を使って自分をコピーさせるという悪質なマルチ商法まがいの(やや違うけど)手口で繁殖していきます。これが感染がひどくなる(拡大する)という現象です。ん~、エーリアンみたいで不気味。
しかし弱点があって、寄生相手が決まっているうえに、空中に放出されてしまうと、自分の固有の細胞の「外殻」(細胞膜)を持たないために、たちどころに死滅してしまいます。自然界にあるウイルスというのは、ただ空中にプカプカ浮いていると思われるでしょうが、必ずトリやらヒトなどの自然宿主という住処(すみか)があるのです。そこが固有の形を持つバクテリアや微生物、土壌の微小生物、プランクトンなどとの大きな違いです。
そしてもうひとつのウイルスの特徴は、やはり固有の外殻がないためなのですが、変異するスピードが猛烈に速いということにあります。A型と思ったらAの変種株、あっと思ったらB型みたいな変幻を見せるんです。こりゃあ自分の型を持たない強みですよね。自分の固有の型を持っていたらこうはいきません。
結果、ウイルス由来であるインフルエンザには沢山の型(株)があります。ヒト型なら香港株(香港風邪)がどーしたの、ソ連株(ソ連風邪)がどーしたのと、今年のトレンドがあるわけです。これは鳥類のトリインフルエンザも同じで、青海株あり、゛韓国株、バイカル株ありです。
この「今年のトレンド株」を読まねばならない難しさが、株式市場ではないが、防疫関係者の永遠の悩みなのです。トレンド株を読み損なったら、せっかく金出して作ったワクチンはパーだもんね。
では、「新型インフルエンザ」といわれるものは一体なんなでしょう?次回はそこをおはなししましょう。
■本記事は自動で指定日アップされたものです。
写真はインゲンの花
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