必要とされる有機農業・伸びない有機農業 その3 JAS有機認証は外国産農産物に門戸を開いてしまった
いや~、すごい暴風雨でしたね!台風の小さいヤツといったかんじです。
積んであったコンテナは数メートル飛ぶは、雛の雨除けのビニールはパタパタとふっ飛ぶ寸前。あわてて風雨の中に留めに行ったり。
もう風と雨が真横からビューッですよ。こんな悪天候の中、うちで預かっている少年は、さほど気にする風もなく、黙々と外仕事をしていました。あんがい大物なのかも。
さて、日本の有機農業がなんで伸びないんだろうな、というユーウツなことについてしみじみしています。この伸び悩み現象は、この数年誰の目にも明らかになってきました。その停滞状況はJAS有機認証の取得者が、日本では減少し、日本で売られているJAS有機認証シール付きの農産物は今や外国産のほうが多いという情けない状況です。(下図参照)
スーパーなどでJAS有機認証シール付き農産物を見ますか?ほとんどないでしょう。だいたいがエコファーマーです。納豆やソースなどの加工品も国産有機農産物はみかけないと思います。大部分がオーストラリアか米国産です。
事実、日本のJAS有機認証を取得している大勢は外国産なのです。これを下の表でみてみましょう。 やや古い資料ですが、国内の認証件数が4547件であるのに対して、外国産は約4倍もの19366件です。もはや勝負あったってかんじですね。
日本のJAS有機認証は、日本の潜在的に巨大な有機農産物の消費市場を目指して殺到する外国産農産物のために作られたのです。このことは、私の同業者、友人諸君にも異論が多々あるでしょうが、私はそうであると断定します。
この有機認証法は、認証法をもつ一国と、それを輸入する一国でほぼ同一の有機認証基準を持たないとなりません。外国から有機農産物を日本に輸出したいと思ったら、日本のJAS有機認証を取らねば、「有機農産物」と名乗れないわけです。ですから、外国の有機農産物出荷団体は、ぜがひでも日本に有機認証法を作らせる必要があったわけです。
有機認証は、単なる国内的なガイドラインではなく、国家法であり、さらにそれは貿易関係を持つ諸国と共有される国際貿易が前提なのです。認証法はそのための共通ツールだと思えばいいでしょう。
これが、私のいうグローバル経済の実態なのです。もっと言えば、このJAS有機認証は、日本が好き好んで制定したわけではなく、WTO(国際貿易機関)とFAO(国連食糧農業機構)という国連の2ツの機関が合同で作ったCODEX(コーデックス)委員会を舞台にして作られたものでした。
日本は協議の段階(ステップ)を踏むごとにジリジリと後退を続け、ほぼ諸外国の言い分のままにJAS有機認証を制定「させられ」ました。今年、WTOを舞台にした「WTO決戦」で、JAや農水省などが必至の形相で「日本の食と農を守れ」と叫んでいる姿を見るにつけ、私は「あなたがた、有機農産物の時は、小指一本動かさなかっただろう。今そのツケが回ってきているんだよ」と思わずにはいられません。
今頃になって農水省やJAは「WTOに妥協するな」と叫んでいますが、もっとも最初に外国に売り渡した日本の農産物はわが有機農産物だったのです。それは味噌ッカスとしてしか認識されていなかった日本の有機農業は、日本農業本隊を守るためのただの捨て石でしかなかったからにすぎません。
今年、全ての農産物、特に米を中心にして降りかかってくるWTO体制とは、このような自由貿易という名のもとに世界を「平準化」していくスチームローラーのような仕組みなのです。
農水省は、省としての存在価値であったはずの自国農業保護を、有機農業に関してはいとも簡単に捨てました。有機農業はあまりに少数派であり、JAは減農薬減化学肥料栽培(特別栽培)止まり、消費者の支持もないと農水省は考えたに違いありません。そして、それはやがて来るであろう、いや当時からつばぜり合いを演じていたはずのWTO交渉での交渉敗北時のシミュレーションをわが日本有機農業の先行きに見ていたのではないのでしょうか。
いずれにせよ、本来、わが国の有機農業を盛んにするかと思われたJAS有機認証法は、わが国の有機農業を圧迫し、10年をたたずして外国産に市場を譲り渡すこととなりました。これについてもう少し考えてみたいと思います。
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