見学会はなかなか難しい
昨日、私のグループでパルシステムの拡大担当者の見学会が行われました。
私たちのグループは東京近郊にあり、パルで有数の有機農産物の産地ですから、このような見学会はひんぱんに行われます。
今などは少ないほうですが、かつて私が代表理事を勤めていた時は月に2、3回というピッチで各地から見学者が訪れたものです。
今回は若手のスタッフに任せて、後半に生産者として顔を出したのですが、なかなか大変そうでしたね。どう言ったらいいのかな、見学者が聞きたい質問が重箱の隅をつつくようなものであると、それに引きづられるように、答えるスタッフも一緒になって重箱の隅に行っちゃうんです。う~、暗いよ、狭いよ。
有機農業の産地に来た消費者のよくある質問に、「有機栽培と無農薬栽培はどう違うのでしょうか?」というものがあります。案の定、今回もこれに引っかかってしまいました。
正直に言ってしまえば、こんな表示法ジャンル分け的なことはまったく有機農業にとって本質的なことではないのです。お国が勝手に決めたこと、ただ無視すると違法となるから遵守しているに過ぎません。
私でしたら、「そのような表示法的なことよりもっと大事なことがあるんですよ」さらりと受け流してしまって、土のこと天敵のこと、昆虫や土壌生物、微生物のことに話を持っていったでしょう。そのほうが私たちがほんとうに伝えたい重要なことですからね。
この質問に、JAS有機認証を私たちのグループで担当している千葉大哲学科出身の緻密な頭脳が、まんまと真っ正面から回答してしまいました。
「有機栽培でも農薬は使えます」(アッチャー、間違ってはいないが、説明が短過ぎて誤解を呼ぶぞ)
「ゲッ!」というような空気が見学者の間から漏れました。「では、無農薬栽培は使えないのですから、無農薬栽培のほうがより安全なんですか」(まぁ、そう思うだろうな・・・)
わがJAS認証担当、これにもまともに答えてしまいました。「JAS有機認証は微生物から抽出した毒素を利用した農薬は使用が認められています」(まぁ確かにね、でもね、「農薬」という表現はなにも予備知識がない人にはその言葉だけで誤解されちゃうんだぜ)。
私はこの時に助っ人に入ることにしました。質疑が栽培方法のジャンル区分という枝葉末節のドツボにはまりそうだったからです。消費者は、有機農業を質問する場合ほぼゼッタイに自分たちの健康被害のことから考えます。土壌や水といった自然生態系の方向から考えてくれる方は、百人いてもたぶん1、2名かしら。
そして化学肥料の弊害は、農薬と違って直接に消費者の健康被害に来ないと思っていますから、有機農業がなぜ化学肥料を使わないのかという理由を、私たちが化学農薬と結びつけて説明できないと、「え、なら無農薬有化学肥料のほうがいいじゃないの」というとんでもない結論を得てお帰りになりかねません。
「無農薬栽培というのは有化学肥料なんです。同じくエコファーマーも県ごとに違っていて、その県の平均の半分だということになっています。しかし、パルのように優先排除農薬で危ない農薬から止めようね、となりません。だいたい切っても平気という農薬から半減させているのが現状なんです。特に土壌燻蒸剤のような土壌に深刻な被害を与えて、危険性が高い農薬は温存されてしまっているのが現状です」
そして土壌燻蒸剤が地下で毒ガス(実際、土壌燻蒸剤の元祖は第1次世界大戦の毒ガスです)をまき散らしているようなもので、益虫も害虫もいったん皆殺しにしてしまうために確かに作物の害虫被害はでないが、土壌が何の生物も住めない世界となってしまい、その後にはかえって害虫だけが復活して大暴れをする土壌に変わり果てることなどを、できるだけ平易に説明しました。
ほんとうは時間さえあれば、化学肥料がもたらす土壌の弊害もたっぷりとお話したかったのですが、時間切れ、残念。ほんとうはここから話さないとダメなんです。化学肥料が土壌バランスを崩し、その結果害虫が暴れたり、病気にかかったりしたので、化学農薬を使わざるを得なかったのが道筋なのです。
だから、化学肥料と化学農薬をワンセットでお話しないとまず理解ができないと思います。ところが表示法にとらわれると、そんなことは吹っ飛んで、「使える農薬、使えない農薬」という資材問題に話がすりかわってしまうのです。これではなんのためにわざわざ産地に来たのかわかりませんものね。
私は見学会というのは、ある意味、特殊な時間だと思っています。まず時間が限られています。だいたい2時間くらいでしょう。その中で畑を見て1時間使ってしまうと、お話できる時間は非常に限られたものになります。
そして、失礼ながらほとんど予備知識がない場合が大部分です。あらかじめ資料は渡されていても、しょせん文字ヅラでしかありません。よくても抽象的にしか理解されていないのです。直接に生産者が現場を背景にしゃべるのとは訳が違います。
消費者と直にお話できるのは希有な機会です。できるだけ私たちの現状や想いをストレートにお伝え出来たらなと思います。
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