東京から逃げ帰って
東京から帰ってきて、わが村の坂にさしかかると妙にホッとします。逆に、東京に行くと早く帰りたくなります。
このように言うと、いちおう東京生まれのくせに田舎人をきどっているように聞こえるかも知れませんが、実際そうなのですからしかたがありません。
昨日、カミさんの甘言に乗せられて、上野の森美術館にレオナール・フジタ展をみに行くはめになりました。かねてからフジタという人には関心があって、「キキ・ド・モンパルナス」や「仰臥する裸婦」などはぜひ実物を見たいと思っていたのは確かです。
あ、それと私の目当ては上野駅で売っている崎陽軒のシュウマイね。あれは私の子供の時からの三大好物でして、カミさんが東京に行くたびにおねだりをするモノなのです(笑うな)。カミさんに、「フジタの展覧会に付いてきていい子にしていたら、シュウマイ買ってあげるからね」と言われてうかつにもつり出されてしまったというわけです。
しかし、最終日の日曜、予想どおりあまりの人にうへぇ~です。カミさんはゆっくりとあれやこれや見たいらしいのですが、こんなに空気が悪くて、見渡す限り村全体の人口ほどの人の群がうごいめいている場所は、もうゴカンベンという気分になってしまいました。
それと、晩年の宗教絵画はちょっとね。名馬も老いれば駄馬になると、カミさんにささやいて膝を蹴り上げられました。やはり1920年代からの20年間がレオナール・フジタ、いや、藤田嗣治の真骨頂でしょう。わずか30㎝ほどの近距離でモンパルナスのキキを眺めさせていただきました。
しかし、根性もそれまで。「もう帰るのぉ!ヒキョーモノ!」とののしるカミさんの手を取るようにして美術館を出て、ゼイゼイ言いながら逃げ込んだコーヒーショップが、コーヒー一杯ぬあんと600円も取りやがった時には、「て、店長を呼べぇ!」と怒鳴りそうになりました。おまけに、飯は高くてまずく、居酒屋くんだりで、な、なんとフクザワ翁がご出動となった時には、もう二度と東京などには来るまいと堅く堅く決心したものです。
そんな情けない私ですから、東京から村の峠を超えたあたりで現金にも元気を取り戻します。オイハギの群から逃げ延びて安全地帯に帰り着いたという気分です。農場で尻尾をブンブンと振っているワン公の頭をなぜることが出来たあたりでは、もう人間の外形がゆるゆると融け出していることでしょう。
てなわけで、気分や感性の一部は未だ町っ子ですが、肝心の身体のほうはすっかり村の人、それが今日の私の気分です。
■写真 お茶の花と実。そして野菊の花。
« タミフル効かない耐性インフル急増! | トップページ | 直販所が日本農業を変える 地域の食の活性化拠点として »
私も毎日「東京から逃げ帰って」いますしかも一目散に。だから痛勤です。妻殿も東京に出ると頭がくらくらとするそうです。
投稿: 余情 半 | 2009年1月27日 (火) 23時17分