続 直販所が日本農業を変える 地域のハブには、女性がふさわしい
何回か前に私は直販所のひとつのモデルを茨城県勝田市の「協働館なかよし」にもっていると書いた。そのリーダーがまことに魅力的な女性なのだ。うれしいことには手放しで喜べ、邪気がなく、相手を立てられるという女性だ。そして天性の聞き上手ときているから、彼女を慕って大勢の主婦がスタッフで馳せ参じた。
この「協働館なかよし」ができたそもそもの由来は、勝田の本郷台地区の衰退にあった。本郷台団地という大型団地があったのだが、老朽化が激しく、住んでいる人たちも若い人がひとり減り、ふたり減りしていき、老人のほうが多くなってしまった。
同じ老人でも男のほうが残ると始末に終えない。自分で食べられない。洗濯も出来ない。靴下の場所もわからないというかんじにになってしまったのだ。当然、社会的な関係がないからボケる。
このコミュニティの中心にあった生協の本郷台店も、コミュニティと同様に老朽化し、売り上げ目標に達しなくなって継続が危ぶまれた。取り潰してさら地にという案もあったと聞く。
しかし、この時に彼女を中心とするグループが、これを生協から借り受け、地域で何が求められているのかという素朴な所から始めていった。それがなんでもありの地域拠点センターだった。
近くのお百姓が畑で取れた野菜を置きに来る、土や葉がついた大根、かっこうはわるいが葉の厚いホウレンソウ。住民も店のレンタルで借りる棚に自分の手作りの手芸品や工芸品を置いていく。売れれば売れただけ、月末に清算すればいいだけのことだ。
子供たちが学校を終わってキッズルームに走り込んで来る。二階ではフラダンス教室が真っ盛り。20畳くらいの大きなフリースペースで、今週ギターコンサートがあるよとポスターが貼ってあった。店の隅はカフェになっていて、彼女がご老人の身の上相談をしていた。その横でカラオケ指導をする人達もいる。
そして、もうひとつのこの店の特色である惣菜が、裏のヤードを改造したキッチンで手際よく作られて並べられていく。配達もするという。コンビニ弁当と違って、手の込んだバランスのいい食事が出来上がっていた。いくつか買ってみたが、どれも淡い味付けで、脂肪分がすくなくダシの効いた美味しいものだった。さすが主婦の手は違う。
ゴチャゴチャしていて、行政が作った公民館にはない活き活きとした活気のようなものがみなぎっている。結果として多機能になったが、これは意図したことではなくて、地域の素朴な要望を取り込んで解決していくうちにそうなってしまったようなのだ。だからとても明るくて自然だ。とってつけたところがない。
結果としては起業なのだが、彼女に「スゴイ起業でしたね」といってもえっという顔をするかもしれない。だって、意図してやったことじゃないから。ただ地域のために問題解決の手助けをしたくて始めただけなのだから。
このような地域の協働のセンターを男が仕切るのは難しい。男にはえてして生活がない。来る人たちの生活を見ようという姿勢が足りない。ひどい場合には、オレがオレがという部分が前に出てしまう。こうなったらもうダメだ。
地域のセンター、言ってみれば「ハブ」には女性がふさわしい。私たちが作る直売所もこんな女性がいてくれたらと切望する。男は女性を支えればいいのだ。金を借り歩く、算盤勘定をする、黙々と力仕事をするなどの脇役で女衆の力になる、そのくらいの気持でないと地域の直販所は出来はしないと思う。
男は直販所で芋でも焼いてりゃいいのだ。わ、はは。女衆を支えるのが、男の誇りなのだ。
■写真湖岸から見た風景。下は上総(かずさ)堀りの実験施設。
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コメント
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んだっぺ。じゃっど。
投稿: 余情 半 | 2009年2月 1日 (日) 10時54分