必要とされる有機農業・伸びない有機農業 その5 有機農業は21世紀の主流になる!・・・はずだった
今日は一転して快晴です。抜けるような雲ひとつない蒼天が、里山の上にどこまでも拡がっています。2月から4月にかけて私たちトリ屋にとってのかき入れ時で、まぁ野鳥ですら卵を産もうかという季節ですから。
この1年ちょっとしたミスから玉突き的に農場全体の生産が低迷してしまって、「ジタバタしてもしゃーねぇ」と思いつつやや憂鬱でした。農家なんか成績がいいと機嫌がいい単純な生きものなんですよ。この春のパワーをお借りして、なんとか盛り返していただけないでしょうか、という切ない季節様へのお願いです。何卒よろしゅうお願いいたします、春の女神様(ペコ)。
春の女神様にペコペコしていたかと思えば、いきなり脈絡もなく大ぼらを吹きます。私は21世紀、しかもそんなに遅くない時期に有機農業が絶対的に必要とされる時代が来ると思っています。地球環境にとって究極的に低負荷な農業技術はこれ以外存在しないからです。その時に、有機農業は人類の最後の選択として取りうる唯一の農業形態のモデル(理念型)になるはずです。
それは単に農業技術一般にとどまらず、人と自然の関係、人と共同体との関係、人と自然界の生物との関係、そして人と人との関係にまで及ぶ膨大な前世紀の価値観の転換をもたらすものとなるでしょう。
この要請される条件はとうに来ているのです。しかし、私たちの力があまりに弱い。そして国が本気でEU諸国のように国策として有機農業を支援する気がないためにさんざんなことになっています。なんと有機農業はわが国では衰弱しているのですから!
もし、日本という底力がある国が、国策として本気で取り組むのならば、いや、もっと有体に言ってしまえば、日本が国力を消耗させない前に真剣になって取り組むのならば、その結果は下図のEUのような増大を必ず示すと思われます。EU諸国では国策として有機農業への転換を既に10年以上前の1990代に行ってきています。結果は、ご覧の通りです。90年代初頭からほぼ10倍にも有機農産物の生産は増大しました。
また、下の図は国政モニターで見た国民がどの段階で安全が必要かを問うたことに対する答えです。圧倒的に生産段階における安全性が飛び抜けて要請されていることがわかります。
中国産農産物が激減したことは各種のデーターで明らかになってきています。
輸入野菜は、生鮮野菜において10年ぶりに70万tの大台を切りました(「日本農業新聞」1月30日)この原因は言うまでもなく、青菜にシロアリ駆除剤をぶっかける如きの非常識な農薬使用法、製造工程でメタミドホスが混入するような非常識極まる加工段階、そして居直りを決め込み恥を知らないような生産物責任皆無な意識のあり方が、自ら墓穴を掘ってしまったのです。
それはさておき、今の国産農産物への追い風は、いわばライバルの敵失によるもので、残念ながらわが国の実力が増した結果ではありません。わが日本有機農業は、この国民の期待にまったく応えきれていません。それは前々回の記事で見た有機認証取得者の停滞状況を見るデーターを見ても、私の狭い知見の中でも、この数年有機農業を目指す農家は減りこそすれ増えてはいないのです。ことに去年あたりからの落ち込みは目を覆うばかりです。JAS有機認証を新たに目指す農業者はほぼ皆無になってしまったのです!
> 私はこの有機農業の停滞と落ち込みの最大の原因はJAS有機認証制度にこそあると思ってきました。有機認証制度は後の回に書くように、有機農業者というそもそも様々な農業形態の中で、よりによって最も営利性が薄い業態に対して、嫌もウーもなく、過大なコスト負担を強要し、農業経営の手足を縛り、まるでボディブローのように有機農業者を窒息させていきました。
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