日本農業はこうして腐った その4 農業土建立国
年間3兆円以上という農業関係の助成金は、回り廻ってロンダリングされながら地元政治家、農水族の政治資金になっていきました。
多少説明をしましょう。農業と建設関係とは関係がなさそうにみえると思います。ところが農村に来れば、特に冬に来訪されればよくそのつながりはわかるはずです。レンコン畑にはブルが入り基盤整備をし、田んぼにはユンボがうなりを上げて暗渠を掘っています。新たな農道は3月末日をめがけて大ピッチでアスファルトをブン撒いています。もっと大規模になると、ダム建設という数百億円規模の事業で農村とからみあってきます。
日常的風景として、農家は稲刈りの終わった秋から建設業に働きに行きます。そして土建員として春の中頃まで働いて、また田んぼの準備の頃に帰ってくるような循環は農村のあたりまえの風景でした。この傾向は、雪の積もる地方では顕著です。一年の半分を農家として働き、半分を土建業で働く、これが多くの日本農民の姿なのかもしれません。私たちの村など、まだ冬の芹栽培があるだけましだといえましょう。
わが村のように冬に家族の顔を見れて仕事が出来る幸せ、これは本州では特権的な地位だったのです。このように農業と土木業は地方における数少ない基盤産業であり、その双方は複雑にからみあったいわば「地方利害共同体」のようになっているのです。
この農業補助金と旧建設省予算事業の政治風土の上に権勢を誇ったのが旧田中派です。小沢一郎は、師である田中角栄から伝授された建設-農業関係の利権構造をダイレクトの企業献金から、実態のない政治研究会⇒政党支部を通しての迂回献金方式に「近代化」しました。
そしてざる法の政治資金規正法を作ったのも彼です。小選挙区制や政党助成金も彼のプランが現実化したものです。しかし実態は西松事件で明らかになったように、あからさまな収賄を意図した企業献金を巧みに隠すものでしかなかったように、腐臭を放つ自民党政治のリニューアルでしかなかったのです。
小沢一郎ほど企業献金の裏表を知り尽くした政治家はいないでしょう。自らの選挙区を「王国」に変え、藩主のごとくゼネコンを顎で使える政治家もそう何人もいないはずです。蛇足ながら、この西松事件で同時に自民党側で名前が上がった二階俊博は、かつて小沢一郎の腰ギンチャクで和歌山でミニ小沢一郎でした。
いずれ触れますが、小沢一郎が民主党の農業政策にさせた農家所得戸別保障政策などは、まさに故松岡利勝農相もどきの農村への銭バラマキ方針以外の何者でもありません。あの民主党の農業政策のどこがリベラルなのか私には皆目見当もつきません。あれは小沢による旧田中派の土建屋立国へのあからさまな回帰でしかないのです。
自民党がどうの、民主党がどうの、松岡が、小沢が、二階がという問題では既になく、このような利権巣窟の沼地のごとくなったわが日本の農業をどこかで甦らせねばなりません。それなくして、自給率の向上もコメの防衛も空論にすぎません。
文中敬称略
■写真はイグアスの煙る大瀑布(撮影はあの人)
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コメント
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久しぶりにコメントさせていただきます。
わかりやすく説明してくださってありがとうございます。
♬燃える男の赤いトラクター♬
あの頭にこびりついた宣伝も、いまにして思えば
農政の変化に加担していたということに?!
投稿: bianca | 2009年4月 8日 (水) 22時49分