政府の追加経済対策には有機農業の「ゆ」の字もない!
春爛漫です。昨年収穫した時にこぼれた菜種が、花を咲かせました。ホトケノザが今年はどうしたことか、大張り切りで、農場のあちこちでわが世の春を謳歌しています。
政府の追加経済対策が出てきました。環境、エコ車両や家電を中心としたかなり思い切った推進政策による景気回復を狙っていますね。なかなかのものだととりあえずは評価します。
農業分野では、「日本農業新聞」(4/9)によれば、総額1兆302億円をつぎ込んで、「担い手への農地集積対策と利用拡大」と、「農業機械事業リースの大幅拡充」、そして「水田転作の助成」がメーンのようです。
農業外の方々にはなんか暗号みたいで、なんのことか分からないかもしれませんので、少々解説をしましょう。「担い手への農地集積」、いきなりきました。この「担い手」というのも、「飛翔体」みたいな日本的表現でなんのこっちゃですが、官僚用語で言うところの「中核農家」です。あ、これも分かりにくいか。三里塚の反対派農民じゃありませんぜ。これは地域の中の大規模専業農家のことです。それならそうと書けばいいのに、ボヤかしたがるのだよな。主業農家なんて言い方もあります。ちなみに兼業農家は、「自給的農家」なんてコジャレた言い方もして、いっそう混乱に拍車がかかっています。あ、いかん用語解説で終わってしまう。
「農地集積」というのは、つまりですな、高齢化や離農などで使われなくなった農地を、できるだけ専業農家に集めて、大規模化を押し進めようということを狙っています。自民党の農政の4ヘクタール以上の農業者に、農地を集積して、そこに予算を重点配分しようとした作物横断政策の延長だと思えば、そうハズさないと思います。
これと次の「農業機械のリース事業拡大」は、たぶん一対の政策のはずです。大規模化に欠かせないトラクターやコンバイン、自動結束機械などの農業機械を、政府がなんらかの助成を付けてリースしやすくして装備にかかる固定費を減らしましょうということだと思います。
そして最後の「水田転作の助成」は、これだけで一本の記事にしたいような項目ですが、これは「水田フル活用」政策を予算化したものです。要するに、コメから飼料用米や米粉などにすることに、上乗せで助成金を出そうというものです。言うまでもなく、これは減反の堅持と表裏一体の政策です。
これらを見ていると、なにをしたいのかうっすらと見えてきますね。農業経営の大規模化は避けられないので、ここに予算を集中配分して生産基盤を強くする。一方、既存の兼業農家が主体のコメ作農家に対しては痛みが出ないように少しずつ転作をしてもらう、ってなことでしょうか。
まぁ、今の農水省のお役人さんが考えれば、こうなるだろうなという模範解答みたいなものです。今日のところは論評を避けます。ただ一点だけ。この追加経済対策には有機農業の「ゆ」の字もないのです!他の産業分野では、あれだけかまびすしくエコ、エコ、アザラク(知ってますか、黒井ミサ?古い!)と環境を前面に押し出したのに、農業分野ではまったくスルーです。農水省のレベルがそこはかとなく知れます。農水省は3兆円の予算と数千人を擁する(違ったかな?)を持つ巨大官庁ですが、有機農業の担当はただの2人、予算ハナクソていどですからねぇ。
有機農業者なんて耳アカ(やたら垢にこだわるな、今日は)ていどしか存在しないし、みんな揃ってヒネクレ者なので、選挙の票にもならないからでしょうか。私たち有機農家は軽んじられていても、今や都会の消費者が求める有機農産物の需要は巨大なはず。都市生活者の皆さん、もっと声を上げて下さい!
どうして「有機農産物を購入するたびにエコポイントをゲット!」とか、「JAS有機認証シール100枚集めれば、抽選で有機の畑へ一泊2日のご招待!」、「有機の田舎拠点を作る」ってならないのかしら、かえって不思議です。有機農業推進法ってどこに消えたのかしら?
また有機農業者に対しても、減税措置などがなければおかしいですね。それだけの生産リスクを背負って、今までなんの国からの支援もなかったのですから、ここで出さないでいつ出す、ってなもんですよ。まぁ、ミソカス扱いはなれているのでなんとも思いませんがね、ふハハ(力なく笑う)。お、いじけるな、いじけては負けだぞ、ハマタヌ!
■写真下はアルゼンチンの霧に煙るフィツロイ(撮影 わが家の世界漫遊詩人)
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