コメの競争は安ければいいだけではない
またまた、名無しのコメントさんからコメントをいただきました。
もらうのはうれしいのですが、もう少しなんつうのかなぁ、キチンと農業を見て話ませんか。あなたの言うのは今回もこんなかんじなんです。
[以下引用]
でもその減反も結局は生産者つまり農家の為だよね。
生産者がガチで競争して、コメの値段が下がれば、消費者(少なくとも俺は)喜ぶよ。
[引用終了]
コメ以外の農産物にほとんど関税がゼロ、平均3%。日本の農産物の1割の関税が他の国に例を見ないほど高く、一方9割はないに等しい、という私のデーターに納得されましたか?前回まではピーナッツやコンニャクなどという枝葉末節というと作っている人には申し訳ないが(成田のテツちゃん許せ!君の茹で南京豆は最高だ!)コメと比較したら、まぁ傍流の農産物をさも大事のように言ってましたが、今度はとうとう「コメの値段」一本になりましたね。
少し分かってきたのかでしょうか。日本の農産物は関税なんかで守られちゃいないんです。その味の良さと作りの良さ、そして国産であることの安心感という「国産プレミアム」という自分自身の力で守っているのです。その部分を抜かして、コメの超高関税を一事が万事と言わんばかりの、なにも調べてこないで「国産は自由化されていないから高い」などと書き散らす経済評論家諸氏に、私は心底腹を立てているいるのです。野ツボにはまって、嫌気性発酵してしまえ!
さて、減反が「農家のためでしょう」とスラっと名無しコメント氏は言いますが、さてそうなんですかね。あなた、私の記事ぜんぜん読んでないでしょう。読んでいたら、兼業農家が今や米作りの大勢になりつつあること、そのような兼業農家、いわばパートタイム農家の利害のために減反という生産制限トラストが作られていることも書いたはずです。
簡単に「農家」てひとくくりにできるほど、日本の農業構造は簡単じゃないんですぜ。一年に1週間も畑や田んぼに出ない人まで、「農家」でカウントしているのが、今の日本なのです。その問題は長くなるので、別稿にしますが、それを理解しないで「農家のためでしょう」って安直に言われましてもねぇ、私ら主業農家(専業農家)は困りますよ。
じゃぁ、減反を止めたら名無しコメント氏が言うように安くなるのかといえば、さてどうでしょうかね。普通の自由競争ははじまるでしょう。しかし、競争=安くなるという現象になるかどうかは分かりませんよ。一時は確かに60キロ1万円を切ると予想されています。農水省は「半値になる」とまでのシミュレーションを出して煽っています(「日本農業新聞」4月23日)。
私はそんな簡単なことにはならないと思っています。競争は単純な安値化ではないからです。価格競争は他の産地を潰すか、自分が潰れるかのチキンレースです。本来の競争は、価格だけではなく、その質と価格による相関関係だからです。
今ですら既に質による大きな価格差がでてきています。コメがうまくないと揶揄されているわが茨城でも筑波山麓などでは地域ブランド化がうまくいっていますし、強制ガス乾燥によらない天日干し米、さらには私の友人たちなどが努力しているアイガモ農法のコメなどは目を見張るほど美味しいわけです。
美味しい、そして安全である。さらには、コメの美味しさの源である里山の湧き水の清浄さ、つまりは地域の水や土などの環境の素晴らしさをトータルに評価されていく「競争」でなければなりません。競争は価格だけではないのです。質や安全性、さらには環境との関わりまで含めてあるのです。
ですから私は、自由競争が価格の低落につながるとだけは思っていません。むしろ価格の分化がすすむと思っています。皆がお国の音頭のもとに減反という生産制限カルテルで価格統制をするのは、完全な間違いですが、かといって安価のみを狙った競争もまたメダルの裏面でしかありません。
「そんなこと関係ないや、ただひたすら安ければいいのさ」と言うならタイ米の古米でも食べてたらいかがでしょうか。なんだったら、MA米のシャリで寿司をお食べになったら?それはそれは安いですよ。
あ、い、いかん今日は農仕事が山積みなんだ!書いてる暇はない、ひぇ~!では、またゆっくりと、農業談義をしましょうぞ。
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