さすが大地を守る会!減反反対をキッチリ言ったぞ!
今日届いた「NEWS大地を守る」6月号(大地を守る会発行)を見ました。かねてから私の持論である「減反は日本農業を腐らせている」という主張とほぼ一緒なのでニコニコしてしまいました。
ここまでちゃんと減反に対してノーというのは、実は農業関係流通では難しいのですよ。ハッキリ言って、農産物の最大の供給元であるJAとの関係がありますから、なかなか言えない。というか減反問題なんてまともに考えている生協や農産物流通なんか皆無だと思っていたんで、大地を守る会のこの主張はとても励みになります。さすがは戎谷さん、冴えてます!
減反問題を正面からとらえようとしないので、今の日本の農業関係流通は農水省の手練手管にまどわされっぱなしです。例えば、減反を死守したいための「水田フル活用」政策なんかですね。減反面積を維持するために開いた水田に飼料用米を作ってみせたり、米粉を広めてみたりとあの手この手です。
理念にはうなずけるものがあるとしても、隠された目的が減反死守ということを見ないので、スゴイ!としか思えないわけです。飼料用米など半額補助金、つまりは減反の財源からでていることに眼つぶっています。だから、税金で竹馬を履かせてもらった畜産自立運動というヘンテコなことになってしまっています。
あるいは、どこの政党も自給率アップを言わぬ日とてないのに、日本の自給率アップとは直接関係のない(米の自給率はMA米なかりせば100%超です)米食推進を強引にむすびつけたりします。自給率アップ゚したければ油糧穀物である大豆、菜種などや、飼料作物の小麦などの生産を上げるしかないのに、です。
さて減反問題。JA、全農こそが減反反対の総本山です。JAはこう言います。減反をすると「米価が下落して、零細農家が潰れる」⇒「米作を維持できなくなって耕作放棄地が増える」⇒「自給率が下がる」⇒「日本の食糧の危機」というのが図式です。これは自民、民主、農水省、ほとんど一致した図式といっていいでしょう。
だからJAは減反という生産制限カルテルを死守して、価格統制を敷かねばならないと言っているわけです。
この主張はそれなりに日本農業の一面の真理であって、確かに今の米作は兼業農家が主力となってしまっています。北海道や大潟村などは例外です。皆だいたい横並びで1ヘクタール~1.5ヘクタールは多いほう、少ない人だとせいぜいが20アールていどをシコシコとやっています。
じゃあこれをして「零細農家」というのかと言えば、実情はちょっと違う。答えはもうお分かりですね、今まで何度もこのブログで触れてきたように、ここで言う「零細農家」とは、その言葉から連想されるような、農地に必死にしがみついて、爪を大地に立てるようにして健気に生きている老農夫ではないのです。
ではなにか?単なる「現住所勤め人、本籍農村」の村の人だというだけです。確かに、現に会ってみれば私などのようなにわか百姓と違って、立派な農家づくりの家に住み、消防団や青年団にも属していて、いやさすがにDNAの農民の血をひしひしと感じますが、実際の職業は勤め人や公務員です。だって、年に1週間も田んぼや畑に出ませんからね。収入もほぼ100%農業外収入です。農業収入は余祿にすぎません。
これで「零細農家」はないでしょう。はっきりと兼業農家と表現すべきなのに、国民感情に訴えるためにこの表現をとりつづけています。だから、国民は誤解して、減反を止めると、頑張っている零細のじぃ様、ばぁ様などの小規模農家が潰れてしまうと錯覚しています。これはちょっとないな、と思います。
ところで話は変わるようですが、JAはなんで食べているのかと言えば、米の販売手数料です。そしてもうひとつは、金融、もうひとつおまけに資材売り、と。
あまりJAを刺激したくないのでほどほどにしておきますが、JAをひとつの企業と考えると分かりやすいと思います。JAにも企業利害が明瞭にあることが分かるでしょう。
JAにとっては米の価格低落は、膨大な販売手数料の激減を意味します。同時に、組合員の営農口座の減少となります。これは分かりにくいかもしれませんから,多少説明しますね。村の人は、仮に勤め人となってもJAの営農口座とは縁が切れません。勤め先の振込も、ガス代も、兼業で作っている米やイモなどの農業資材の引き落としも、またその売り上げ代金も一括してJA営農口座一本で済ませられるからメンドーがないわけです。だから減反政策を止めて、米作りから離れたとしたら、JAバンクを使う必要がなくなっちゃいますもんね。
そして、毎月のJA共済も手厚く、孫の手のようにきめ細かく村の人を覆っています。保険、年金、果ては葬式までJA共済はフォローしています。病気になったら病院は各地の協同病院、死んだら墓石もJA。結婚式場もJA、指輪もJA。スーパーもJA。育った伜が後継者になればなったで、相談窓口はJA、機械の更新の補助金の相談もJA。買うのは当然JA。修理はJA。そして子供の誰か、親戚の誰かは必ずJA職員。JAは農村地域最大の雇用者でもあるからです。
ああ、こうして書き上げているだけで村のガイドブックになりそうです。ですから、さきほど書いたJAを「ひとつの企業」として考えるというのは、その意味で正確ではありません。JAとはある意味、農村そのもの、村宇宙を支える巨大な柱のようなものだからです。ここが理解できないと、JAの組織心理はわからないでしょう。JAはある意味、村そのもの。自らが単なる私企業ではなく、それを超越した日本農業と農村の守護神だと信じて疑っていないのですから。
兼業農家を農業にむすびつけているのはただの一点。米作りだけと言っていいでしょう。ですからここが切れると、村人のうちの大多数を占める兼業農家はJAと縁が切れていきかねないのです。それはJAにとって悪夢以外のなにものでもありません。そしてそれを永遠の票田にしていた自民.民主両党の農水族にとっても。 「零細農家が潰れる」論にしがみついているかぎり日本農業には先はみえないでしょう。それは今や国民に理解されない村の感覚に他ならないからです。 こう考えたらいいと思います。俵に足がかかった日本農業に必要なことが、つまるところは村の利害なのか、農業そのものの利害なのかです。今まではそれは一致していました。しかしとうにそのような幸福な時代は終わっています。とうに終わっているのに、その形骸にしがみついて、結局経済行為としての米作をダメにしているのが今の日本です。 このことを腑分けするのは大変難しいことです。しかし、今農業内部からやらねば、次に来るのは企業参入自由化の大波の時代なのです。
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突然、失礼しました。
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投稿: hikaku | 2009年5月13日 (水) 19時14分