人の手を離れた竹の反乱 その1 迷惑な雨後のタケノコ
雨後のタケノコとはよくいったもので、この間の長雨で見る見るうちにニョキニョキと生えたのがタケノコです。
一度高速撮影でもしてみたいもんです。まさに目の前でグイグイと生えてくるといったかんじ。まことに迷惑なヤカバラです。
竹という植物はまさに凡モンスーン気候を代表する植物で、東南アジアから中国南部、琉球弧、日本列島は北海道を除く全国どこに行っても油断をすると竹、また竹、イネ科タケ亜科に覆い尽くされることとなります。この竹軍団を雅びだと思っているのは最初のうちだけ、やがて連中のスーパーパワーに驚愕することになります。
沖縄のヤンバルで見た廃屋など、わずかな床板の隙間から竹が入り込み、一挙に腐った畳の各所にブスズスと竹が貫通するというシュールな眺めをみることが出来ます。♪テントの中でも月見ができるぅ~じゃなくて、家の中でも竹見ができるぅ~です。
竹という奴はですな、地下茎で繁殖するのですよ。ですから地上部だけ切っても痛くもかゆくもない。すぐに別な場所に頭を出します。クヌクヌと思ってシャベルで根をほじくり出しても、たった数節の根が地中に残っていただけで、芽が生えてそこから再生してしまうのです。ちょっとしたモンスタープラント。敵ながら天晴れというべきでしょう。
いや、かならずしも「敵」ではなく、長年アジアやアフリカ(アフリカ中部まで生息域)の人達はこれを細工してザルやヘラ、楊枝、釣り具、魚籠(びく)、竹箒などの道具にしたり、よく乾かして柱や桁などに利用してきました。昔の農家の粗壁は構造材として竹筋を編んで塗り込めてあります。独特のしなりと強靱さがうってつけだったわけです。また、スダレや竹の垣根にも用いました。農家の防風林にも利用されてきました。このように、竹にはかつて百を超える用途があったはずです。
もちろん春のタケノコはアジアを代表する食材でもあります。さらには炭にして竹炭にしますし、その製造過程でできる木酢酸は害虫の防除に描かすことのできない農業資材ともなります。
ところが、今の農村ではこれらの竹を用いた工芸がほとんど死滅してしまいました。かつては冬の間の重要な仕事だった竹細工は今やごく一部で残っているのみです。農家は竹を冬の間に刈り、竹林に手を入れることを放棄してしまいました。
よく写真などで見る京都の竹林は長い歳月をかけて手入れされ、間伐されて、ときには堆肥すら入れられて出来上がった「飼い馴らされた竹林」なのです。
(続く)
■写真上は、咲き始めた石榴のつぼみ。下は農場の竹林から侵攻してくるマダケのタケノコ。
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