メダカと田んぼの豊かな関係 その2 生命回廊としての田んぼ
この近年、ブルーギルやブラックバスの在来種への被害が新聞の紙面にも登場します。この両名は私の住む北浦の湖にも霞ヶ浦にもわんさかといます。
ブラックバスなどもう百年も前から住んでいるようなわが世の春を謳歌しています。まったく悪食な魚で、強力な顎でワシワシとばかりにシラウオ、ワカサギなどの在来種や放流した稚魚を食べまくります。ブラックバスと並ぶ、というか今や外来魚第一位のアメリカナマズなどは、さらにタチが悪いことには、身体が平べったいでしょう。そのペタンコのお腹を利用して、在来魚の営巣、産卵、子育ての場である湖岸の浅瀬にまで乗り込んで食いまくります。
ぜひ、わが北浦にブラックバス釣りにいらした節には、キャッチ&リリースなどという西洋人風の偽善をせずに、絶対持って帰ってお食べ下さい。真水に漬けて泥抜きをすれば、私も何度か食べていますが、まんざらでもない味ですよ。軽く塩コショウし、オリーブ油でソテーするとなかなか。
第一リリースされた魚は、口の中を鋭い釣り針で裂かれ、時に逃げようとして全身を傷つけている場合が往々にしてあるのです。そこから傷が膿み、感染症に罹り、それを水中の他の生きものに感染拡大していく原因となります。もちろん、「自由になった」はずの魚も助かりません。
さて、メダカは小川や池などと田んぼを行き来しています。川や池でブルーギルなどの獰猛な大型の魚に追いかけられると、シュワッチと田んぼに逃げ込んできていたわけです。
田んぼは浅い水なので絶好の避難場所を提供していたわけです。しかし、これが用水路と田んぼの段差があって逃げられなくなり滅びつつあるわけなのです。
今の日本の基盤整備事業をかけられた田んぼは、ため池とポンプ場があって、そこからパイプラインで田んぼに水を供給する仕組みになっています。これは一斉に行われ、各戸の農家の自由にはなりません。昔からあった水利権をより画一的に近代化したものです。それに加わっていない農家は、各自小川や用水路、時には川から直にポンプで水を引いています。
従来、田んぼにあったなだらかな緩斜面の魚道である水路が消えました。パイプラインだと、直接に田んぼの隅にパイプのコックがあります。排水のための水路はありますが、水を溜める時期には締め切ってあります。
このように現代の田んぼは、外部の生態系と仕切られてしまいました。このことが、外部の環境と田んぼ、田んぼと田んぼを結びつけていた様々な糸を断ち切ってしまいました。
「生命回廊」の駅としての田んぼ
私はヒトにはなかなか見えないこのような生きものの往還のルートを、「生命回廊」と名付けています。森と田んぼの淵をつなぐ蛇の道、田んぼの淵と稲の茎を結ぶカエルやミズスマシの道、稲の茎と穂のあたりを繫ぐクモの道、そしてそれを空から旋回して狙うサギやタカの空の道、森の中に縦横にあるタヌキやウサギの道。
このような生命回廊が互いに交わり、集中し、また散らばっていくポイントが、水の湧き出る小川であり、田んぼだったのです。
このようにして、田んぼと湖水を往還していたメダカやドジョウ、小鮒、ウナギなどの「田の魚」たちにとっていっそう住みにくい世になっていったわけでした。
(続く)
■写真上 谷津の有機の田んぼ風景。地形に沿って田んぼが拡がっていることがわかります。左右には水路があり、湧き水も豊富です。左右の森が、雨水を溜め、浄化し、腐葉土によってミネラル豊かな水を田んぼに供給しています。たぶん平坦な場所の田んぼより美味しい米ができるはずです。ただ、難点は作業性と日照の悪さです。
■写真下 ♪お籠に摘んだは~幻か~の桑の実と、白い花は咲き始めたばかりのホオズキの花です。
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