民主党の本音 日米FTA「推進」マニフェスト 民主党の農業政策の頭脳篠原孝衆議院議員のびっくり発言録
民主党の日米FTA締結マニフェストにあきれて、もうエンザロ村にかえっちまおうかとも思いましたが、やや気を取り直して少々続けます。というのも、このFTA問題は、単なる選挙でどーしたこーしたという目先の話ではなく、日本農業や環境問題のこれからを考える大きな試金石になるからです。
私はそもそも農業と国際貿易はなじまないと思っています。今回の民主党日米FTAマニフェスト騒動を見ていると、一定の論調というものがあるのがわかります。民主党の今回のFTA締結路線を、単なる言い間違えではなく、積極支持する考えかたです。
つまり、日本農業の土着的性格からくる非効率性を論難し、進歩した欧米農業に学べという考えです。これを突き詰めていくと、たぶん、その先には古式ゆかしいデビッド・リカードの比較優位説由来の国際分業論が待ちかまえています。要するに、日本農業は非効率なんだからいっそやめちまって、工業製品をじゃかすか出して、外貨を稼ぐ見返りに輸入農産物一本でやっていけるじゃないか、という極論です。
もちろん、現実の民主党はこんな極論は言いません。しかし、ベースにそのような考えの残香がプーンと漂う時があります。というのは、今の民主党の農業政策を考えた篠原孝氏を現実に知っているからです。
それでは皆さん、前「次の内閣農林水産大臣」である篠原孝衆議院議(現政調副会長・長野1区)をご紹介しましょう。議員とは2007年12月に議院会館で座談会をしています。その時のメモを頼りに、民主党農業政策の頭脳がどのようなことを考えているのかをご紹介しましょう。
議員は入室するやいなや、「こんな忙しい日に、迷惑な!」と叫び、貧乏ゆすりをせんばかりにしてまくしたてました。以下、私のような一介の農家が口を挟む余地はほとんどなく、頭の悪い学生が教授にご高説を賜るというかんじであります。のっけから私ども日本国民をバカ呼ばわりです。いやー手厳しい。
■発言録その1
「ドイツ人は賢いが、日本人は馬鹿(ホントにホントにこの表現を使った)で軽く、時々の事件で盲動する。BSEの時も出るやいなや大騒ぎして、一晩で変化してしまった。今の原油高や飼料高が続けばよい。そうでもなければ、日本人は馬鹿だから変わらない」(←国会でぜひ、そのご高説をわれら愚民どもにお話し下さることを望みます)
■発言録その2
「1バレル100ドルを超える原油高が続けば、冬加温している施設園芸は潰れる。旬産旬消(この言葉の発明者だとひとしきり自慢)を実現するにはそのほうがいい」(←わが村に来て、そのご高説を直接農家にお話することをお勧めしたい)
■発言録その3
「飼料を外国から輸入しているような加工畜産(この言葉の発明者だとひとしきり自慢)は今の飼料高でどんどん縮小するだろう。大変にいいことである」(←実際に去年の今頃に農村に来て私ども愚昧な畜産農家に直接そのご高説を説諭されることをお勧めしたい)
■発言録その4
●「今まではの農業補助金は、全部JAが吸い取っていた。民主党の直接支払いは直接農家の懐に行く。今まではJAに行ったからダメだった。農家に使途目的を問わない金を払っていくのがこの直接支払いだ。何に使ってもいい。パチンコでもかまわない」(←よもやパチンコでもいいという言葉が出てくるとは・・・!もはや大先生の毒気に当てられて、誰も言い返す元気なし。座談会変じて先生ひとりの独演会に)
■発言録その5
●「ヨーロッパの農家など所得の半分は政府から来る直接支払いで食べている。ドイツの農家など皆んな補助金の直接払いで生活しているんだ。それを知らないで直接支払いを批判するな」(←誇りある農家はヨーロッパにはいないようで。進んだヨーロッパ農民の奴隷根性すら大絶賛)
なんともかとも、これがフードマイレージや旬産旬消、はたまた地産地消などの高邁な理念をわが国に初めて輸入したと自称する(*異論がかなりあるようです)人の現実の発言です。自民党には「自民党主義」などというものはありません。現実のままにそれこそブレ続けて、なんとか日本農業を沈めないようにしています。ま、今回は自分のほうが先に沈んでしまいましたが。
自民党農政に対しての批判は私はテンコ盛りです。それは今までのブログ記事にも書いてきました。同様にJAにももの申してきました。しかし、それはあくまでも、日本農業を一緒に盛り立てていこうという気持があればこそです。有機農業と慣行栽培の立場こそ違え、地域農業を共によくしていこうという意志があるからです。
しかし、篠原氏にはそのような共に苦渋に満ちた、矛盾だらけの現実を共有する気持はありません。理由は簡単です。日本人が馬鹿だからです。日本農民が愚昧だからです。石油を炊いてCO2を出すようなハウス農家は愚かであり、外国の飼料を高値で買って家畜を飼うような畜産農家は淘汰されたほうがましだからです。だから、馬鹿者と現実を共有してもしかたがないと篠原氏は考えるわけです。
そしてこのような愚かな日本農民は、政府が金をジャカスカやるからパチンコにでも行っていっそう愚民となり果て、うるさくしないで安楽死してくれ、というわけです。
このようにあからさまに民主党の本音を直接耳にした後には、今回の民主党マニフェストは、ある意味非常に分かりやすいものでした。
民主党は自民党内にも希な過激な農業グローバリズムの党だと断じざるを得ません。
選挙の時には、一見異なるようなことを言うでしょうか、それは眼くらましの飾りにすぎません。日米FTAまで言ってしまっては、それを否定することは不可能なはずです。そのマニフェスト文言が、「締結」だろうと「推進する」であろうと本質的にはなんら変わりありません。
私は民主党の農業政策は、小泉-竹中路線の新自由主義に近いものだと理解しています。もし、小泉改革がもう少し続けば、たぶん日本農業の非効率性に手を突っ込んだことでしょう。
小泉-竹中両氏の頭には、JA全農の解体と株式会社化、JA系金融機関の分離、そして農家に対する所得補償というセーフティネットを張った上での大再編があったと思われます。当然のこととして米国との農業市場の統合であるFTAも想定されていたでしょう。そして小泉改革は歴史の審判を受けましたが、今その遺志を継ぐのが、皮肉にもリベラルの仮面をまとった民主党だったというわけです。草葉の陰で小泉氏が浮かべる苦笑が目に浮かびます。あ、まだ生きてたか(笑)。
ここには現実の日本農業の現場から発想し、現場で苦渋を舐めたところから地域農業をどのように変えていくのかという発想はありません。まず、ガツンと愚かな日本農業に一撃を加え、その破壊力をもって、「強い国際競争力を持つ」日本農業を作るとでも言うような外国頼みの破壊の発想です。
だからそのための愚か者への一撃には日米FTA締結が有効であり、その外国の巨大な破壊力を借りて、愚民である日本農民を淘汰選別し、パチンコ屋で遊び惚けるていどのはした金で眠ってもらい、その後に「あるべき」日本農業を再建するという段取りなのでしょう。
書いていて夏だというのに寒気がしてきました。多くの農業現場で苦闘する民主党候補者の人達は誠実なひとばかりです。先日私が問い合わせた候補者も、夜にわざわざ私に電話をくれて、「ぜったいにFTAなど結ばせないから信じてくれ」と言ってきました。私は彼の地元での泥臭い実践を知っていますから、その言葉を信じましょう。
しかし、このような民主党幹部にいる人達のなんともいえない非人間的な冷たさには耐えきれません。あのような自国農民に対する軽侮に満ちた人たちが、権力中枢に一カ月後に坐っている光景には戦慄すら覚えます。
■写真 出始めた稲の花と国際会議で発言する篠原議員。国会傍聴記by下町の太陽より参考のために引用させていただきました。ありがとうございます。
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