うちの市にも有機農業推進協議会が出来たけど・・・第4回 タコツボに入っていた有機農業者
地域をまとめあげるだけの力量がある農業団体と、その連合体が有機農業の世界にはありません。
これは全国レベルでも、各地域でも大同小異です。
日本有機農業研究会(日有研)は全国組織であり、わが国最古の老舗ですが、小規模農家が中心であり、法人の農業団体とは立場や利害が必ずしも一致するとはいえません。また、全国有機農業団体協議会(全有協)も、未だ各県レベルでは根っこがあるとは言い難いものがあります。
となると、有機農業推進法が出来ても、その地域で受け皿となるべき組織や、その地域的連合体が不在な以上、国が「各地方自治体に有機農業を支援する政策を作れ」という有機農業推進法は、具体的には誰に向けての法律なのか実態が見えにくいということになります。
県の有機農業推進フォーラムを作ってみてわかったことは、同じ有機農業者といっても、長年の間に培ってきた農法技術や、経営に対しての哲学が驚くほど異なっていたことです。私たちのグループのように直営農場15ヘクタールを会社方式で耕作する農業法人と、2ヘクタールていどの規模で有機農業に取り組む小規模農家は、技術的考え方はとうぜんとして、利害すら異なるのです。
おまけに、有機農業30余年間の歴史は、それぞれに自分の消費者、流通団体のみを相手にする狭い縦割り構造を作ってしまっていました。ここをあえて崩していこうという内発的な理由が今までなかった、というところがわが行方地域の現状でした。
つまりは私たち有機農業者は自分たちだけのタコツボを堀り、互いに干渉せずに、自ままに生きてきたのです。そしてそれをあたりまえだと思ってきました。このような人達に互いにネットワークを作り、地域作りに向かって行く気が起きるでしょうか。互いに違っていることが分かりきっている同業者と連携を取るということは、案外苦痛なもんです。
しかし時代はこのような閉鎖的な体質を濃厚にもつ有機農業者を、イヤでも表の空気に触れさせることを求めました。時代の要請としかいいようがありません。社会は有機農業を求めており、消費者の要望も大きくなっています。この不況の時代にあっても、3割ていどの価格差では、有機栽培を買うでしょう。
そしてそれのみならず、地域での慣行農法の行き詰まりを解決するには有機農業の長年蓄積してきた環境調和的な知恵と技術が必要だったのです。そして今まで有機農業を異端扱いしてきた農水省すらもが、有機農業推進法を受けて舵を大きく転換させました。これが有機農業によるモデルタウン構想事業だったのです。
だが残念なことに、私たちにはそのような時代の要請を真正面から受けとめる力が不足していたのです。
(続く)
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