すごいなぁ、でも相当に違うなぁ・・・トキワ養鶏さんのテレビ報道を見て
先日のこと、見るともなく夕方のテレビニュースを観ていたところ、フランスのムシュー・ナンジャラというシェフが、日本で選りすぐりの食材を集めて開いたフェアが、報道されていました。
ほほぉーってなかんじで観ていると、旧知の青森のトキワ養鶏さんが出てきました。T養鶏と書こうかとも思いましたが、褒められている番組だからいいよね。トキワさんとは、もうかれこれ10年以上の知り合いです。パル・システム生協を通してでしたが、率いる石沢さんという東北人独特の朴訥な構えの中にも、才気迸る経営にいつも驚かされ続けてきました。
元々はケージ養鶏の中堅規模の法人でしたが、この5,6年の間に平飼養鶏へと転換を計ってきました。石沢さんの経営のアンテナは、常に鋭く時代の一歩先を読んでいました。例えば、BMW農法というバクテリア(B)、ミネラル(M)を水(W)を通して家畜に吸収させ、また畜舎の床にも散布することで菌相を豊かにし、汚臭や汚水を浄化する農法にも率先して取り組んできました。そう言えば、今のBMW技術協会の会長は氏でしたね。
また、去年からの飼料の高騰の先を予め読むようにしての飼料用米の作付けを大規模に行うなど、つねにチャレンジし続ける精神には頭が下がります。
飼料用米についてはちょっと批判もありますが、しかし現実に地元行政を巻き込んで実際に現場で使うところまで仕立て上げるというのは並大抵の力ではありません。 今回、初めて鶏舎の内部をテレビで拝見しました。正直な感想を言えば、同じ平飼養鶏といっても、なんて違うんだってかんじでしょうか。なまじ同業だから違いに眼が行くのかもしれません。 まずテレビクルーは、身体を清めるということで隣の温泉で洗浄されます。これはヤラセか、石沢さんのせっかく遠くまで来たんだから、温泉でも楽しみなさいという心優しいサービスでしょうね。無菌豚じゃあるまいし、平飼養鶏は諸々の菌との共存が前提の哲学ですから。 と思ったところ、鶏舎内部に入る氏の姿が異様なのです。なんと白衣とマスク、頭には抗菌の帽子、とうぜん白長靴のいでたち。いわゆる対ウイルス防除ファションですな。 大手のイセ・ファームあたりのウインドレス(無窓)鶏舎という精密器械工業の工場もどきならともかく、同業者の平飼養鶏でここまでやっている所は初めて見ました。おまけに、舎内はビニールカーテンで密封されて、開放鶏舎ではありますが、通風のない事実上の密封鶏舎です。作業通路と鶏舎内も同じくビニールで仕切られていました。これは過酷な東北という地の風土も考慮に入れる必要があるでしょう。 そして思ったより、鶏(岡崎横縞という小松種鶏場の最新作でしたが)の飼育密度が高いのです。ちゃんとカウントしていませんからなんとも言えませんが、どう見ても多いなぁ、という実感。 私の地は、冬もマイナス5度を超えることはない温暖な地です。ですから、冬場も、ビニールすら張らずスカスカの通風で、トリさんは耐えています。ですから、寒さに耐えるために羽根の下の羽毛がびっしりと生え揃ってきます。 また、私の養鶏の根っこの哲学は、「いい菌、悪い菌、皆んな一緒に共存する中で初めて強い鶏ができる」というものですので、作業通路の分離、消毒槽の設置、トリインフル防除のための網など、最低限の防疫はしていますが、トキワさんのような対ウイルス装備で仕事をすることなど考えられもしません。だって、あれ暑いんですよ。息苦しいし。 平飼養鶏といっても色々あるのですね。私のような様々な菌や自然状況との共存を大事にしている所もあり、トキワさんのようにきちっと管理して防除するという考え方もあるようです。 たぶん東北の過酷な寒気を考えると、このような密封した鶏舎が必要ですし、その中で病気を予防するためにはあのような厳しい防除措置も必要なのでしょう。なにが正しい、間違っているという次元ではなく、その地方地方の環境の中からそれぞれの養鶏哲学が生れていくのだなと思いました。
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