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2009年8月28日 (金)

グローバリズムの洪水の前で その5           農と食の危機は深ければ深いほど

_edited_5 初めの自問に戻りましょう。

日本農業の悲劇とはなにか。それは日本農業が自らの手によってその累積した矛盾をときほぐせないことです。自民党農政は確かに愚かではありましたが、土着的でした。自民党の愚劣さは百も挙げることが可能ですが、その泥臭い矛盾は日本農業の苦悩する姿そのものでもありました。ま、褒めてやればですが(笑)。

旧来の農業や農村の基盤そのものである農民を生かそうとすれば、農民の過半数が兼業化している以上、農業が産業部門としてなりたたず、それどころか「自由貿易体制という国益の障害となっている」(「同友会提言」)わけです。

かといって農民や農地を強引に整理大型化しようとすれば、自由経済社会の基本である私所有権とぶつかってしまい、農村の崩壊現象を招きかねない社会問題と化すおそれすらあります。水田の改良工事が、多くの反対や怨嗟を浴びながらとりあえず出来たのは、水系によって生産を握られている稲作の特殊性があったからです。一般にはそう簡単にいきません。

耕作放棄地の一般への情報開示ですらされていないのです。こんな状態下での農地の集約化は、伝聞と貸す話の持ち込み、あるいは競売物件といった有様です。

昨今、よくいわれる農業のトレンド用語に「所有権と耕作権の分離」という考えがありますが、それをするためには強力で透明性をもった行政権力が中に立つ必要があります。それなくして、農民の利害代表者であるJA農協の合意を得るのは至難です。

JA農協にとって、自分を迂回する農産物の集散をする団体が大きく成長することは、自分たちの一元的な農業におけるパワーの源泉の衰弱を意味してしまうからです。ですからとうぜんのこととして、「所有権と耕作権の分離」によって成り立つ農業法人には本能的に警戒感を持っています。

このような日本農業の自縄自縛、言い換えれば自己解決能力の欠落を尻目にして、黒船よろしくWTOやFTAというカタカナの津波が、黒い壁のように水平線に現れているのが見える時代となってしまいました。

農業の危機は食の危機です。そしてその危機が深ければ深いほど、解決は簡単ではありません。もし簡単で明快な答えを、今の日本農業に出す者がいたら眉にツバをつけて下さい。

つまりと、片方を解決しようとすれば片方が成り立たず、その双方を立てようとすれば政策があいまいになってしまい、政策たりえずなのです。まるで堅くねじれあってしまった糸玉のようです。

かくして、なまじ農村に長年根を張ってきた自民党にはそれをときほぐせないままに手をこまねき、とうとうその本質において都市型政党である民主党に政権の席を譲ってしまいました。

民主党議員に農村部を熟知する政治家は希です。民主党農水族トップの筒井、篠原、山田三氏はいずれも官僚出身で、農業にも農村にも縁がない人達です。彼らはまさに街の人から見た視線で、農業や農村を見ています。

いや待って下さい。ただひとり農村部を熟知し、農民を動かす勘どころを知り尽くし、日本の政界における随一の農政の政策家がいたことを危うく失念するところでした。それは小沢一郎氏、その人です。

_edited_4この政界髄一の農政の政策家が唱えていたことは第1に、農業市場の自由化を好む、好まないといった国内レベルの問題としてとらえず、もはや避けられないものとして認識することでした。

そして第2に、WTO体制やFTA締結が不可避であるならば、国内農業の活性化のために財界型農業再編を断行せねばなりません。

減反の緩和、農地法の改正により土地流動化を促し、異業種参入、大型化のための基盤整備、そしてゆくゆくは外国資本の農業市場参入、GM品種の導入まで展望に組み込んでいるはずです。

第3に、それらの新農政の障害となる小農には社会保障的な痛み止めを打って余命をまっとうしてもらう。それが農家所得補償制度です。FTA締結まで最短で5年。そしてセンシティブ農産物であるコメの移行期間が10~15年、とすれば直接所得補償の期間は最大で20年間。今平均で60歳の農家が、80歳。いわば掛け金なしの農業年金、はっきり言えば手切れ金、慰謝料だと思え、それで日本農業の抜本的構造改革が出来たら御の字だろう、と彼は言いたいのでしょう。

最後に4番め。小沢民主党はJA農協が衰退し、解体の道に進む政策を打つでしょう。まずジャブとして2009indexで農協を批判し、JA農協=農政連の自民党支持を揺さぶりました。次いで来るのは、本格的な「農協民営化」です。農協は民間だろうなんて言わないで下さいね。あれは半官半民の農水省系列の公社みたいなもんですから。

そしてなにより、日米FTAを締結をめざす財界型農業改革を断行していく時の最大の障害が、間違いなくJA農協だからです。またJAの抱え持つ巨額のJA系金融も魅力なはずです。誰にとってですかって?もちろん米国にとってですよ。郵政民営化の真実の標的が簡保であったように、その巨額の預金資産の自由化は米国にとって垂涎なはずです。

これが、今まで自民党すら言い出せなかったどぎついまでの本音です。自民党は片足を保守王国とまでいわれた農村に置いている故に農政すべてが中途半端でした。これぞ、民主党でなければ出来ない「改革」ではないでしょうか。

この20年間を使って、彼からすれば日本の宿痾である日本農業の大再編をする絵を描きたいと思っているはずです。それが彼の考える「普通の国」であり、そのための権力の源泉である議席数を手に入れ、一新会(小沢派)は100名を超え、既に民主党中枢は、小沢、鳩山、渡部、羽田、石井と経政会出身で占められています。この民主党政権は、長期政権として日本に君臨することでしょう。

・・・来るべきグローバリズムの洪水という災厄を日本農業にもたらすのは、小沢一郎というただひとりの人物から発しています。そして今や彼は権力の中心に坐ってしまいました。こともあろうに、日本農業にとってもっとも危険な人物が。

先ほど私は、日本の農と食の病は深く、簡単な答えを持って来る者には眉にツバをつけて下さいと言いました。その簡単な回答を持って小沢氏はやってきます。それが日米FTA締結のための日本農民の安楽死と、財界型農業再編です。

小沢氏は「安心しろ、FTAを締結しても農民の再生産は所得補償で守る」と言いました。なるほど彼は嘘は言っていません。ただし老いたわが日本の農民が生きているあと20年間限りは、ですが。

次回はメキシコのソールフードのトウモロコシに必ず行きます!

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コメント

痩せ蛙 負けるな一茶 ここにあり
「FTAなんかより仕事したら」って、神様の声が聞こえてくるようです。
先を読んで、自分だけどう儲けるのかというのも一つ。先を読んで社会全体の行く末を警告するのも一つ。どちらにせよ、現状の流れ着く先を正しく見据えなければ対策も方針もたてられない。近過去のメキシコの状況から、日本の近未来を類推して、「今なにをなすべきか」を日本農業に訴えましょう。

農業者戸別所得補償制度の問題点に、もっとも、まともに取り組んでいる貴サイトにようやくたどり着くことができ、意を強くしております。
民主党のFTAについての麗しき誤解、一部の農業者の農業者戸別所得補償制度についての麗しき誤解、この二つが相乗している総選挙前の農村部の民意の状況、といったところでしょうか。
問題は、品目横断策もそうなんですが、ドーハラウンド以前のヨーロッパなどの直接支払いのスキームやアメリカのデミニミス逃れの新青の政策のACRE支払いのスキームを、WTO状況の変化の中でも、まだ、民主党はまねしつづけているところに問題があるんでしょうし、また、FTAについてみれば、韓国の盧 武鉉前大統領のポイント稼ぎの米韓FTA協定の甘い夢の段階でのFTAへの誤解を、民主党は、まだ夢見つづけている。という点が、一番の問題のように見えますね。
わたくしの方も、ブログ
http://www.sasayama.or.jp/wordpress/?cat=10
で、いろいろこの点、検証しておりますので、今後とも、よろしくご指導願います。

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