グローバリズムの洪水の前に その2 日本の現状、メキシコ、そしてキューバ
書き始めた当初は、民主党の「とうとう出たか、日米FTA締結!」という真夏のお化けを見たような恐怖の感情でした。自民党も似たようなことを口走りますが、日本の政党がここまでハッキリと、FTA、しかも日米FTAという世界第1位と2位の経済圏の統合というグロバリゼーションの極を言い出したのはこれが初めてだったからです。
とうとうこの日が来たか、というのが私の正直な感慨でした。しかもこれを言い出した政党に国民は一週間後320議席以上という異常な議席数を与えようとしています。しかも、この日米FTAの主導者である暗黒卿は100議席以上の党内派閥を得るとみられています。かくして小沢派の政治的影響力は、予想される最大野党自民党衆院の議席総数すら上回るウルトラ級のものとなるわけです。
これはなにを意味するのでしょうか?私は、グローバリズム推進派が日本政界で初めて最大派閥となることだと考えています。今まで経済界が常に言い続けてきた「日本農業は、自由貿易体制という国益の敵である」というグローバリズム路線に、大きく道が切り拓かれたと認識しています。
しかし、FTAと言ってもその実態は日本では余り知られていません。農業者ですら大部分は「ふ~ん、ところでなんだそのアルファベットは。そたらことより目先の補助金、いやさ直接に所得補塡までしてくれる気のきいた政策なんだから、この際しっかり貰っておけばいかっぺさ」ということです。これが哀しい村の現実です。
つまり、日本の農業の現実の中にどっぷり漬かってしまっては見えるものも見えなくなるのです。私は政権交代自体には大賛成ですし、別に、民主党批判をしたいわけでもなく、まして村の選挙のあり方がどうのと言い出すつもりもありません。私は政治には嫌悪感すらもっている人間ですから。ただ、この日本の「現実」に浸っていると何も見えなくなるのです。
そこで、私はあえて逆上って考えることにしました。グローバリズムとはナンダ?ということを、まっすぐに農業者として見つめてみたいのです。抽象的になら学者にでも言えます。慶応の金子勝さんや山本純一さんの本はいくつか読みましたが、大変に教えられる反面、靴の上から水虫をかくという気分になりました。農業者って世界で一番せこくて、自分の利害にうるさく、しぶとい人種なんですよ。都市のリベラルインテリは「第3世界の闘う民衆」みたいになると無意識に美化してしまうんだなぁ。
てな、学者へチャチャを入れて入れていてもラチがあかないので、まずはFTAの本場とでもいうべきメキシコを調査し、その中でFTAがどんな農業に対する影響を与えたのか知りたいと思いました。FTA抵抗の一方の極とでもいうべきサパティスタも取り上げます。
そしてそれに留まらず、できればもうひとつの中南米であるキューバ農業や国づくりのあり方を対比してみていきたいと思うようになりました。
抵抗だけしていても何事も変わらないというのが、自称リアリストの私の信条だからです。このキューバも礼賛されることが多いので、できるだけ農業政策や環境政策に踏み込んで見ていければと思っています。
実は結論を先に言ってしまえば、キューバはやっぱりすごいっす。社会主義と農業が水と油、コミュニズムは農業の天敵と常日頃思っている「保守反動」の私ですらたまげています。社会主義がどーした、こーしたという次元で見ていては、キューバは理解できないですね。社会主義農業は、ソ連、中国、東欧、北朝鮮、ベトナム、すべて例外なく正視に耐えないような失敗をしてきましたが、なぜキューバのみが成功したのか興味が尽きません。
日本の有機農業に何が根本的に欠けているのか、それが有機農業を包む社会総体を作る想像力だということが、キューバを知るとよく分かりますよ。これについては、メキシコの現状が陰惨なので、先にこっちからお話したいくらいですが、まぁ織りまぜながらということで。
え~、てなことを全部やり始めるとたぶんこのブログは、「農と中南米のありんくりん」と名前を変えねばならなくなりそうなので、テーゲー(*沖縄語でテキトー)に断続しながらやることにします。
今日はいつるも増してひっちらかった内容でごめんなさい。
■写真はボリビアの街角です。メキシコやキューバの写真もあるはずなのですがデジタルではないので、ちょっとアップするのに手間がかかっています。まぁそのうち。
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