政党マニフェストの裏側にある財界の本音とは 経済同友会の提言を見る
葦原微風様、ご注文了解いた しました。NAFTAはなかなか資料が少なくて困っております。ひとつ面白いことには、出てくる資料がことごとく経済同友会「農業の将来を拓く構造改革の促進」(2004年3月以下「同友会提言」と略)に見られるような財界ペースの内容だということです。
まず冒頭からこのように「同友会提言」は言います。では、財界の本音をお聞きください。なかなかのものですよ(笑)。
「わが国は、WTO交渉や、近年積極的に推進しているFTA交渉においても、農業問題が障害となり、主導権をにぎれずにいる」
「わが国が持続的な経済発展を遂げていくためにも自由貿易体制を積極的に推進していかねばならない。農業改革の遅れにより、国益を損ないグローバル社会において孤立することがあってはならない」
「農業はグローバリゼーションの障害」!実にクリアな立場です。いっそすがすがしいほどです。民主党のように日米FTA締結をマニフェストに載せたと思ったら、農業界の猛反発でたちどころに「促進」と言い換え、「農業分野の自由化はしない」などという世迷いごとを抜かしているのとは、まったく別次元です。これが財界の本音です。
また「VOICE」9月号には、伊藤忠商事会長丹羽宇一郎氏が「農業は強い産業になる」という実に興味深い対談を載せています。この丹羽氏の対談記事の内容は、実は04年「同友会提言」にも盛り込まれている内容で、要するに農業市場の全面開放を前提として、財界が考える「農業構造改革」を進めよという内容です。これについてはそのうちコメントを致したいと思います。
今とりあえず押さえておかねばならないことは、日本経済界の中枢の意志は明瞭に「グローバリゼーションは国益であり、その障害となっているのは農業である」としていることです。
ですから、民主党がマニフェストでFTA交渉から農業市場自由化を除外しようとしまいと、なんの拘束力もなく、農業市場自由化を前提としないFTA交渉などそもそもありえないのです。
発展途上国を対象とするそれと異なり、米国、EU、オーストラリア、中国を相手にしたFTA交渉において、最重要交渉議題こそが農業市場問題であり、移行期間や、セーフガードなどの多少の避難措置は交渉議題となりえても、農業を交渉の外に外しては、FTA交渉自体が開始できません。そのようなことは経産省官僚出身であり、かつイオン財閥の御曹司の岡田克也氏が知らないはずもないでないですか。
グローバリゼーションとは、農業市場の全面開放を前提としてしかありえないことを知らねばなりません。言い換えれば、グローバリゼーションは財界流の日本農業の構造改革を通じてしか向かえない道なのです。
次回あたりからメキシコにひとっ飛びしましょう。
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コメント
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濱田様お願いを聞いていただきありがとう御座います。農業の問題は19世紀初頭からの大問題であります。穀物条例以来、農産物の自由化は常にその国における農業の破壊と農民の減少を招いています。つまり資本家のみが儲けるための手段でした。日本の農業は敗戦の結果小作人が零細農民化して零細農業国家となり、その後、農民の努力にもかかわらす衰退の一本道をたどっています。労働者も、今回の世界的恐慌状態のとき、失業や賃金の低下という被害を受けています。メキシコでのFTA 前後の農業問題の進展を調べると同時に、このグローバリゼーションのさなかにおいて、日本農業をどうすればいいのかという点についても、高説を伺えればと思っています。簡単なことでないのは承知しております。前提条件として世界がどうなるのか、あるいは、どうしたいのかといったことが必要になるかもしれませんが、そのへんは、ご自説にしたがって、あるいは、あいまいでも結構です。民主党にしろ、自民党にしろ、労働者も農民も守るなどといっていますが、結局は財界、資本化の意図するところに、支配されていくものと思われます。それに抵抗して真に国民のためになる、方策というもがあるのでしょうか。正解が簡単にあるとは思っていませんので、無理のない範囲でブログを続けてください。楽しく読ませて貰ってます。
投稿: 葦原微風 | 2009年8月23日 (日) 18時07分