私がグローバリズムと戦おうと思ったわけ その6 民主党政権トレサビリティ路線は官の権限の肥大化
民主党政権がトレサビリティを徹底すると言っています。GAP(適正農業規範)もど~んとやるんだとか。
ため息がでてきますね。だから素人はイヤダ。
民主党の政策は、野党時代に培った消費者団体や市民運動家の意見が、多々盛り込まれています。CO225%削減から始まって、夫婦別姓、外国人参政権付与、人権擁護法とか・・・このトレサビリティもいかにも、消費者受けしそうな政策です。
例の悪名高きMA米事件から、このすべての農産物にトレサビリティを義務づけようという流れが現れてきたようです。しかし、このMA米事件は大きくはWTO交渉によるMA米という関税に伴う措置からきているのですし、悪徳業者と農水省の地方事務所の怠慢による失態がそれを助長しました。
だからといって、トレサビリティをすべての農産物に拡げようというのは、いかがなものでしょうか。
有機JASは、日本でたぶん最初の農産物トレサビリティでした。ですから、トレサビリティに関してはもっとも経験を摘んでいます。なんで民主党は、トレサビリティなんて政策を考えつく前に、なんでうちの団体にでも見学に来ないんでしょうか。
まずは左の写真をご覧下さい。うちの団体の冷蔵倉庫の扉に貼ってある表示です。この貼り紙の黄色の欄の上から二番めにご注目下さい。「エコチャレンジ」とあるのは減農薬減化学肥料(特別栽培=特栽)というジャンルの商品です。
また「theふーど」とあるのは有機JASのジャンルの商品です。
「このふたつを区分して保管しなさい」とこの貼り紙は注意を促しているわけです。
素人の皆さんは、トレサビリティと気安く一言で言いますが、これほど大変なことはありません。やりゃ分かる。
つまりは、消費者が手にした一本のニンジンが、どの畑で、誰が作り、いつの時期に種を蒔いて、どのような栽培管理をして、どのような土壌資材や種を使って、いつ収穫し、そしてそれをだれが生産工程管理の責任を負い、そしていかなるジャンルの農産物であるのかを誰が格付けしたのか・・・まぁおおざっぱに言って(←これでもですぜ)、このようなことを明確に表示し、区分して保管する。
以上の工程すべてをせっせと帳簿を作り、記録し、保管するわけです。帳簿の記録だけで膨大なものとなります。うちのグループでは事務所の壁面にいっぱいズラーっとファイルされて並んでおります。
あ~、よ~やっているよですが、しかしこれが有機JASを取得した個人や団体の負わされた有機JAS法に基づく義務です。このうち一点でも間違っていたり、虚偽をすれば認証取り消しとなります。
そしてこの工程管理は、単に帳簿だけにとどまらず、倉庫、コンテナ、荷姿、トラックに至るまで区別されて管理されなければなりません。流通業者の手に渡るまで、取り引きの伝票、農産物の区分けをするわけです。
私たちのグループではこれらの管理のために専従職員を雇用しているほど、大変な手間となります。また、上の貼り紙のように、農産物の区分けのために、それを置く冷蔵倉庫を別途に使用しています。
これがいかにすさまじいコストを農業現場に要求するものか、なんとなくでもお分かりいただけましたでしょうか。このコストは販売価格に転化できませんし、とうぜんの国はビタ一文支援の助成などは出してくれません。ただひたすら取り締まるだけ。
前に一度試算したところ、センターコスト15%のうちの実に5%という腰が抜けそうな数字が出て、見えません、見えません、見えなかったことにしよう、クワバラ、クワバラ、ツルカメ、ツルカメと言い合ったことがありました。
私たちもこれが有機農業の生産にかかるコストや手間なら惜しみませんよ。多少高い土作りだって、微生物の研究だって、有機に向いた種作りだって、いくらでも金をかけます。しかし、このトレサビリティは、なんの生産もしない、ただの表示義務だというだけだからバカバカしくもなります。
そうです、この有機JASのもうひとつの側面とは、このトレサビリティの徹底して至り着いた姿です。日本の農産物の大部分がされていない現状ですが、この有機JASのやり方に他を合わせようというオソロシイことを、民主党の素人衆は仰せになっているようです。これがどのようなことを招くのか、一回有機JASの現場を視察してから、マニフェスト化して頂きたかったものです。
とまれ、このようにしてトレサビリティの行き着いた姿である有機JASにより、有機農業のコスト増大と、行政の権限の関与の肥大化を招いたのでした。
前々回で有機JASの三つの大罪と言いましたが、ここにもうひとつ追加します。四つめの大罪、有機農業に対する行政権力の関与を大きくし、官の権限を強化してしまったこと。
JAS有機で踏んだ轍を、他の農業部門もが辿ることを、民主党政権は選ぶのでしょうか。
(くたびれてきたけど、まだ続けると思う)
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