民主党政権の農水大臣に赤松広隆氏が就任 小沢一郎に直結する農業界と「しがらみがない」人事
大方の予想を裏切って赤松広隆氏が新政権の農水大臣に就任しました。たぶんこれを予想しえた人は、皆無ではなかったのかと思います。
「日本農業新聞」(9/17)によれば、農業と無縁であることで農水省や農業界とのしがらみを断つ人事だと観測されています。言い換えれば、「農業界のしがらみ」の最たる存在であったJA農協との対立モードに入るための人事と受けとめられているようです。
赤松氏の経歴は良く知られているように、今はなき社会党末期の「プリンス」書記長が挙げられます。福島瑞穂消費者担当大臣の大先輩というか、かつての上司ですね。旧社会党によくありがちな、多額の政治献金を「外国人所有の会社」(要するに朝鮮総連系パチンコ屋のこと)から受け取るという不祥事を起こしています。とうぜんのこととして、千葉景子法務大臣などと並んで、閣内でも強力な在日外国人参政権付与の立場です。ま、このあたりは農業とは関係がないのでここまでとします。
また、書記長という要職にあったにもかかわらず、社会党崩壊後はいったん社民党に合流したものの、離れています。現在は横路グループに属しています。この事情は筒井さんなどと一緒ですね。
さて、興味深いことが二点あります。ひとつは、赤松氏が旧社会党の折りに、党議違反をしたことがあり処分を食っていることです。それがなんと「米の関税化」でした。当時米は関税化されておらず、数量規制だったのですが、それにひとりで反対して処分を食ったということになります。
このへんの事情をもう少し知りたいと思っています。というのは、彼と農業との接点はほとんど見いだせないからです。北大農学部出身で、農業に詳しい鉢呂氏などや、農水官僚(研究職ですが)出身の篠原氏などと、そのあたりが違います。
今日の「日本農業新聞」(9/18)によれば、副大臣に山田正彦氏、郡司彰氏政務次官に佐々隆博氏、舟山康江氏が入ったそうです。「農水通で脇を固めて、官僚を使いこなし、政権中枢と直結する赤松広隆大臣が掲示決断や財源確保をするマニフェスト実現チーム」(民主党関係者)だとのことです。
いずれにせよ、旧社会党時代から、米と関税の問題には独自の考えがあったというのは、興味深いことです。
といいますのは、現在、WTO交渉は2010年末の妥結に向けて、インドなどの開発途上国と米国との調整段階に入っています。この大詰めの情勢の中で、日本は交渉に敗北することが必至と言われています。日本の主張は、おそらくまったく通らないでしょう。そしてMA米が120万トンへと増加していきます。多分、赤松大臣の任期中にWTOとそれに伴うMA米の増加について苦渋の決断を迫られるはずです。
このような大きな流れの中で、民主党が掲げている日米FTA締結促進というマニフェスト公約がどのようにはまっていくのか、私にはさっぱり見当がつきません。通常ならば、FTAはWTOの代替えといわれています。WTOという世界で統一の貿易障壁をなくすという交渉は、このドーハラウンドで明らかになりましたが、そうとうに困難なことだと分かりました。利害当事者があまりにも多過ぎて、船頭多くして舟山に登る状態だからです。
となると、二国間で締結ができて、当該国以外の口出しをシャットアウトできるFTAにがぜん注目が集まってきたのが、この数年の強い傾向です。
実はASEAN諸国と中国との間のFTAは相当に進んでおり、安倍内閣時代に日本もそれに対する警戒心から、一挙にFTA交渉を進展させる方向に舵を切りました。ただし、日米FTAまでは、自民党の土着的な性格から言い出せなかったのだと思います。
その総仕上げとでもいうのが、今回民主党が出してきて農業界を震撼させた日米FTAだったのです。つまり、自民党もFTAをせざるを得なかったところまで、追い込まれていたのですが、日米FTAという世界一位、二位の経済圏の統合というところまでは言い出せなかったのです。
それをふっ飛ばしたのがほかならぬ民主党でした。民主党はかなり前の段階でFTA促進を政策化していたのでした。それが2006年政権政策でした。そしてこの時、それを作るように命じたのが民主党代表の小沢一郎氏、そしてそのとりまとめをしたのが、この赤松広隆氏でした。
これが赤松氏の興味深い二点めです。つまり、小沢氏の政策ブレーンであり、たぶん今回の選挙マニフェスト作りの中心にいた人物のひとりが、ほかでもない農水大臣に坐ったというのは果たして偶然でしょうか?
長くなりましたので、続きはまた次回ということで。
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