NAFTAの近過去、日本の近未来 第3回 GM種子企業は、メキシコ農民から原種を奪った
私は民主党議員の何人かとお話をしたことがあります。ひとりは農水省官僚上がりのかのご高名な篠原孝さん、もうおひとりは商社出身のビジネスマンの方、そして隣村の村長から一躍衆議院議員になられたシンデレラ・ボーイ(という歳でもないか)の方です。
隣町の町長出身を除けば、いずれも農業現場をほとんどなにも知らないなぁというのが実感でした。そのような民主党議員の中で、珍しくもこの女性議員は農村問題や農業を真正面から扱っています。舟山やすえさんという参議院議員です。元農水省の官僚出身で、小沢一郎氏とも近い関係のようです。
■「やすえの活動日記」 http://yaplog.jp/yasueblog/
舟山さんのブログの最近の記事を読んでいたところ、面白い記事に出会いました。題して「種子が危ない」です。この記事の中で、舟山さんは、グローバル化の中で種子が失われていき、一部の巨大国際企業が独占していると批判しています。
まぁ確かに一般論としては、舟山さんが言うとおりなんですが、ではなぜFTAのことが一行も出て来ないのでしょうか。舟山さんも批判するグロバリゼーションとは具体的になんなのでしょう。
言うまでもないことです。グローバリゼーションとは、俗にWTO体制、そしてWTOドーハラウンドがなかなか進展しない中で、世界各地で進められている二国間自由貿易体制、すなわちFTAと切っても切り離せないことです。
そう思ってこのブログをスクロールしてみても、農家戸別所得補償政策についてはかなりのスペースを割いていますが、日米FTAのエの字もでてきません。これはフェアじゃないですね。舟山さんがあれほど熱をこめて支援し、実際に衆院選では具体的支援にまで駆けつけた、かの小沢一郎さんが熱心に進める日米FTAを見ないことにしてはいけない。
まぁ、彼女のブログの論調とま逆な小沢さんのFTA推進方針を紹介するわけにはいかなかったというのは、わからないではありませんが、選挙民に対してはずるいですよね。農水官僚をおやりになっていたんですから、FTAと農業問題がまさか別次元のことなんてことを信じているわけないですよね。
では、NAFTAで種子がどうなったのかを調べてみました。結論から言えば、すさまじいばかりのGM化の進行がありました。遺伝子組み換えトウモロコシが洪水のように米国から押し寄せてきたのです。
このGMトウモロコシによる被害はいくつかの側面に分けて見ることができます。
まずひとつは、GM種子が大量に米国から輸入されてしまったために、今までメキシコ農民が大切にしてきた多くの原種が失われていったことでした。
舟山さんもふれている、米国の巨大GM種子企業であるモンサントなどによる、原種のハンティングが盛んに行われたのです。その中には、密林のインディオたちが、先祖伝来大事に保存してきた原種トウモロコシや豆類も入っていました。これらが奪われていったのです。
そしてあろうことか、その一部はGM種子企業が商品化してしまい、それに特許権を設定して独占するという強盗まがいの非道なことすら行われました。WTO体制下ではTRIPS協定(知的所有権の貿易に関する協定)が有効とされ、いったん裁判所により特許権を認められると、この。GM種子企業がその販売ができる唯一の法人となってしまうのです。
このような方法でマジョコバ種の黒豆がメキシコの貧しい農民から奪われていきました。もはや、たとえば先祖伝来のマジョコバ黒豆を栽培するには、GM会社に特許料を支払うか、その種子を買うしかなくなってしまったのです。
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