民主党の農地集積加速基金凍結は大間違い 基金は耕作放棄地対策として有効
どうにも困りましたね。どうしてこうなるのか、さっぱり分からない。いえなに、民主党さんの新農業政策です。まだ組閣もされていないのにとやかく言うのは、良くないとは思いますが、あれだけの国民の支持を背負ったんですから、大きな責任を感じてもらわにゃなりません。
国民はようやく、選挙中に民主党がしつこく言い続けてきた「自民党の政策の無駄を省いて、子供手当て、農家所得補償、高速道路無料化に当てる」ということが、現実になにを意味するのか分かってきたのではないでしょうか。
農業関係は特にひどい「ムダ」を民主党新政権から指摘されており、既にマニフェストの段階で農地集積加速基金はやり玉に挙げられていました。
昨夜のテレビの報道番組で、筒井信隆さんが出てコメントを出しているのを見ました。いや~、彼の動く姿は初めて見たですが、選挙焼けなのかな顔がドス黒いですね。
しゃべり方など民主党農水族議員共通なのか、篠原孝さんもそうでしたが、一種独特の人を見下したしゃべり方をします。こんな簡単な事も分からんのか、お前は、というような口調です。どうやら農村受けしないキャラのようです。
ほとんど壊滅してしまった自民党農水族のおいちゃん達は、農協組合長タイプが多かったので、民主党農水族のオレは頭がいいんだってかんじには違和感があります。
筒井さんのしゃべったことはに要するに、「土地を貸すほうに金を出しても無駄だ。借りるほうの経営を安定させるのが先だ。だから農家戸別所得補償をする。文句あっか」というらしいことです。
結局、なにを言っても日米FTAを口走ろうが、農地集積促進凍結の是非を問われようが、答えはひとつ「農家戸別所得補償制度があるから大丈夫」というわけです。これではもう政策論議になりません。始めから答えはひとつしかないというのか、単なる同義反復ですもん。
なにがなんでも、全額基金の受け皿団体に全額振込済みであっても、凍結する、と。農家所得補償制度に金を引っ張るために潰す、と。もう結論が先にあるんだから、なにを農民が言っても無駄というわけです。
それはさておき、民主党さんは農村部に足がないという致命的な欠点があります。ですから、農業や農村の実態が分かっていない。農村が何に悩んでいて、突き当たっているのかを考える実感に乏しいのです。ですから、始めにこうだと決まった方針があると、逆にそれに合わせて現実の方を切り刻んでいってしまいます。この場合は、農家戸別所得補償制度がまずあって、そこからすべてが始まるというわけです。
まず農水省研究機関上がりの学者篠原さんが、彼の大脳皮質で考えたヨーロッパや米国の直接払い方式を翻訳してきました。それを派閥(一新会)の大ボスの小沢一郎さんに伝えたところ、これはいける、名前を変えて農家所得補償制度にしろと即決、ここから民主党の農業政策のすべてが始まったのです。
たぶん、小沢さんも似たことを考えていて、どうやって自民党の牙城である農村票をかき集めるのか、JA農協を弱体化させるのか、日米FTAをどうやって進めるのかに悩んでいたのかもしれません。農家所得補償制度なんてご大層な名前がついていますが、つまるところ純然たる銭金のバラまきに過ぎませんから、大義名分がないと公党としては格好がつきません。その政策理論的補強が欲しかったのでしょう。
実はこの話、ほかならぬ篠原さん自身から永田町の議員会館で聞いた話なのです。小沢さんへの農家戸別所得補償制度の提言をしたところ、ほとんど即決だったような口ぶりでした。それを話す篠原さんのやや得意気な表情が思い出されます。まぁ、5分に一回、臆面もなく自慢話をする人ではありますがね。この人も農村受けしないなぁ(苦笑)。
悪いことは言いません。民主党のお歴々の皆さん、政権を取る前にお忍びででもいいですから、農村部を回って直に農民の話を聞いて下さい。耕作放棄地だらけになった村の状況をしっかり見てほしいのです。まずはそこからです。
そしてなぜ借り手がつかないのかを聞いてみて下さい。私も耕作放棄地を管理していますが、離れた所ではなく、私の農地に隣接する土地しか借りませんでした。そうでもないと、トラクターを転がして行かねばならないからです。
しかし、そんな実質捨てられたような農地でもしっかりと地代は支払わねばなりません。当地では年に1万程度ですが、4反で年間4万といったところです。私からすれば、経営的に必要なわけではなく、隣地が荒れるのは困るから借りているにすぎません。それに地代がかかるんですから、うちのカミさんからはそんな土地借りるな、と年中言われています。
私も正直に言って農地集積基金に期待していたのです。この隣地の持ち主が基金から資金をもらえれば、私のほうは地代が大幅に減ることにつながりますから大助かりです。実際そう思って村の農水課に相談しようかとしたら、その矢先に「無駄だから凍結だ」そうで・・・なんともかとも。
その代わりが農家戸別所得補償制度(この長たらしい名前、なんとかならんのか)だそうですが、農家戸別所得補償って生産コストを販売価格が割り込んだ時に貰えるんでしたよね。だったら、この土地集積事業となんの関係もないじゃないですか。次元が違う話です。
耕作放棄地を使う借り手にとって負担減になる農地集積加速基金は、耕作放棄地対策としても非常に有効な政策です。筒井さんが言うように、仮に貸し手に支給されたとしても、現実の村内ではそれを貸し手が独占することは考えにくい。ぜったいに借りて手にも地代軽減のような形でシェアされます。
こういった村の現実を知らないで、欧米の翻訳でしかないような農家戸別補償制度一本で、今の矛盾だらけの日本農業を切り刻もうってのは、ちと思慮が足りないのではないかと民主党さんには申し上げておきましょう。
■写真 ムクゲの華に止まるアゲハ蝶。アゲハは実に警戒心が強いんです。撮らしてもらえません。この写真もさんざん苦労して望遠で狙ってやっと撮りました。中はなにかわかるかな。葛の華です。今咲き始めました。
■民主党のあまりの愚かさに、毎日イライラしているので、このような写真が撮れるとほっとします。それにしても、鳩山さんもうちょっと勉強して下さいよ。これじゃ、金星から奥さまの幸さんが連れて来たって言われちまいますぜ(力なく笑う)。
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いつも楽しく拝読させて頂いてます。
柴犬のまるちゃんです。
政治家も官僚も、民間以上に責任を負うシステムが必要ですね。
民間の場合、経営がうまく行かなかったり、嘘をついた途端に退場です。
これにならい、政治家や官僚が公約違反や無駄遣いをした場合、刑罰を科すくらいの制度がないとこの国は良くならないのではないでしょうか?
量刑は、これこそ国民裁判員制度で裁量することによって緊張感をもって国家経営にあたってもらえると思います。
投稿: まるちゃん | 2009年9月 8日 (火) 11時39分