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欧米3カ国記者の酔っぱらい問答

_edited_4 こんな話があります。

ちょっと昔のこと、欧米の新聞記者たち三人が京都に旅に出たそうです。なにやら、貿易関係の国際会議のはねた後のことで、せっかくこんなヘンピな極東の島国に来たのだから、京都まで足を伸ばそうと思ったようです。ちょうど今頃の季節です。

その車中、新幹線が風を切りながら進む周りの風景は一面の黄金の稲穂です。皆、初めは物珍しげに見ていましたが、アメリカ人とイタリア人の記者はトランプを始め、その中でひとりだけ、じっとこの稲穂の海を見ていたのが、フランス人だったそうです。

その夜、京都のイザカヤ・バーで記者連中が、ドライテイストのサケ・ワインを呑みながら話をしています。

まずは、アメリカ人 「俺の故郷は実は中西部で、トウモロコシを作ってるんだが、日本人もあれだけライスを作ってりゃ、輸出すりゃいいのに。あ、いかん、日米貿易の不均衡がもっとひどくなる」

フランス人 「うむ、このサケワインなかなかいける。グビっ。一本買って帰るか。俺のジイ様まではワイン作りをしていたんだ、話したっけ。親父の代になって、安い外国産ワインに押されて、今はただのグレープジュース屋になっちまったけどな」

_edited イタリア人 「なんだお前もか、俺の家も代々、北部の米作りだ。半分は燐国に出しているけどな。24ヘクタールを親父と出稼ぎ労働者を使って、今でもやってるよ。あんまりいい儲けにはならんと年中ぼやいているがね」

フランス人 「おい、その燐国ってまさかうちの国じゃねぇだろうな。イタリアのクソ安いワインを運ぶトレーラーを、アルプス超えの峠で待ち伏せて全部イタリア側に流してやったのはうちジイ様と親父たちなんだ!だいたいお前らときたら、バキュームカーで二束三文の馬糞ワインを運び込みやがって。おかげで、わが家代々のワイン作りも親父の代でオシマイだ!なんて野郎と一緒になったんだ、まったく、サローサロー、ラッサンサン」

イタリア人 「おいおい、こんな世界の外れの国にまで来て喧嘩を売るなよ、ドウドウ。第一俺の家は米屋でワイン屋じゃないって。でも、今日見た日本の米を見てどう思った?」

アメリカ人 「日本人はパンも沢山食べるんだし、ハムや肉も好きらしいから、もっと小麦なんかを作るべきじゃないのかね。あ、俺の国から買えばいいんだった、またまたこりゃ自爆か。ハハ」

_edited_3 フランス人 「笑ってる場合か。いつもアメリカ人はそれだ。なんでもメイドインUSAを買えってか。アメリカが大将か。そういうガサツさだから、お前らアメリカ人は世界中で嫌われているのが、なんで気がつかないのかねぇ。そんなだからイラクでもベトナムの二の舞をするんだ」

アメリカ人 「なんだって?WTCにはフランス人だって大勢いたろう。我が国の兵士はお前たちの仇をうっているんだぜ。それを、お前の国のドピルバンときたら『古いヨーロッパ』はノンだってシャレたことをぬかしやがる。その古いヨーロッパをナチスの侵略から解放するために数万の若者を死なせたのは俺たち『新しい大陸』だったはずだぜ!ファック!」

(ここで危うく摑み合いになり、仲居さんから日本語で「出ていてもらいますからね」と厳重注意。なぜか完全に通じる)

フランス人 「すまん、政治向きの話はやめよう。でも、今日の日本の稲を見ていて俺の実家のぶどう畑を思い出したんだ。たしか、あのような日本の米は、千年以上の歴史があると書いてあった。この美味いサケ・ワインも、この酒器のオチョコ・グラスって言ったっけ、の原料の粘土も、更にはそれを焼く時にも稲穂を利用するんだと聞いたよ。うちの国の大統領のシラクが大好きなスモウ・レスリングは、そもそもは米の豊作を神に祝う儀式だったそうだ」

イタリア人 「そういえばオレの町にも、いい葡萄酒が出来た時の祭があるよ。神父がイヤな顔をするローマ時代の酒の神の祭だが、大事にされている。でも祭の時には真っ先に神父が酔いつぶれるんだけどな、皆が飲ますから(笑)」

Img_0015 フランス人 「そうかそうか、わかった!お前らは皆んないいワインは自分で飲んじまって、俺たちには馬のションベンのよう奴を出してくるというわけだ。ゴホン、食事中に失礼。あんな馬の水様性のナニに限りなく近い液体・・・ワインだなんて呼ぶなよ・・・は、輸出用だったわけね。自分の国ではもっと美味いのを飲んでいる、ってわけだ」

アメリカ人 「イタリアの肩を持つわけじゃないが、フランス人はウルセーんだよ。産地呼称統制法でシャンパンはシンパーニュ地方のコレコレこういう製法で作ったものしか名乗れない、なんて自分の足をがんじがらめにしているのは、お前さんたち自身だぜ」

イタリア人 「そうだ、そうだ。ブルゴーニュ地方のワインだけ名乗れるからどーだとか、こーだとか。そんなこと金がない庶民は気にしちゃいないぜ」

フランス人 「お前、そんなこと言っていると、やがてこのアメリカがメキシコ人を大量に使ってそこそこの品質のカリフォルニアワインを、ギャっという安値でヨーロッパに大量輸出してくるぜ。今だってチリにシェアを食われているだろう。価格競争に入ったら負けなんだよ、俺らヨーロッパは、なんでイタリアはそこのところがわからないのかね」

イタリア人 「なんせ根が貧乏性なもんで。俺の親父もそっちの国に出稼ぎに行ってた時に、オレが出来たんだ。だから俺はフランス生れ。北部イタリアにはよくいるよ、俺みたいの。トラウマだね、この貧乏って奴は」

フランス人 「いや、ご同輩。俺のうちのワイナリーなんて、シャトーだなんて昔の栄光。アラブ人富豪に買われたそうになったり、ひどいざまさ。ワインも作っても在庫が増えるばかりで、とうとう親父は先祖代々のワイナリーを辞めて、高級グレープジュース屋さんだ。もっともそれが当たったんで、俺が大学に行けたんだがね」

イタリア人 「わかる、わかる。うちの親父も輸出の米で当てたんだ。で俺も大学に行けたってわけだ。一緒だな、ご同輩」」

フランス人 「おお友よ、今日、俺は米の実ったジャポンのイネを見れてうれしかったぞ。フランス人にとって葡萄や麦がそうであるように、文化そのものの農業というものがこのジャポンにはある。うちの村なら、瘦せていて、いい作物が出来なかった土地だったのを、うちの先祖が村の人に声をかけていい葡萄畑に変えていったんだ。何世代もかけてな。俺はこれを誇りに思っている。譲り渡せない文化そのものだとも思っている。だから、今日はいい風景を見せてもらったよ、文化に乾杯!」

残りのお二人さん、こわいフランスににらまれて、渋々乾杯。

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