日米FTAをなぜ日本は望むのか? 自動車産業の生贄にされた農業
NAFTAを考え続けています。飽きっぽい私としては実に異例のロングランであります(苦笑)。
私が粘着モードに入ると、カミさんは露骨にイヤな顔をします。朝から晩まで、「ねぇなんでメキシコはNAFTAをやっちゃったのよ。こうなるの、わかっていたでしょうに」とか、「サパティスタの闘争は、ヨーロッパに影響与えたのかな」とか、ご飯を食べていてもぶつぶつ言い出すのですから、もはや家庭円満の敵ですらあります。NAFTAは地縛霊かつうの。除霊せにゃなりません。鹿島神宮にでも行って御祓いしてもらおうかしら。祓いたまえ、゛清めたまえ。アントラーズに次節、川崎に勝たせたまえ~、シャーシャー。
今、私がずっとこの小さな胸を痛めて続けていた悩みは、「なぜこの時期に民主党が日米fFTAを結ぶといいだしたのだろう」です。米国の利害はミエミエですが、日本の利害が、見えんのだぎゃぁ(←わしゃ名古屋人きゃ)。
これを考えている時に救いの神のように篠山登生氏からコメントをいただき、氏のブログを拝見しました。長年、衆議院議員を勤められ、農業分野で活発なご発言をなされてきた先達の論説に、私は眼から洗っていないコンタクトレンズが一枚、はらはらと落ちた気分を味わいました。
メキシコがNAFTAに食いついた理由はわかりやすいといえます。、メキシコ政府はたぶん国境地帯ティファナの特別経済区に味をしめて、その大規模化、全国化を計ることで、低賃金を武器にした米国企業の出先工場展開を狙っていたのでしょう。これによって、メキシコは大量の雇用と資本投資を期待できるという胸算用です。
また、安価なメキシコ産農産物を米国市場に輸出できるという思惑もあったでしょう。実際NAFTA以降、トマトやアスパラガス、イチゴなどは米国市場で大きなシェアを占めています。
この結末は、稿を改めてお伝えすることをお約束したいと思うのですが、よー分からんのはわが国がナゼ?なのですよ。ここで篠山さんのブログから大きなサジェスチョンを頂戴しました。どちらにお住まいか存じませんが、足を向けては寝られません。
解の補助線は、お燐の韓国にありました。韓国は実は米韓FTAは14カ月間の交渉を経て、現在両国の国会で批准を待つばかりとなっています。
米国のほうが、オバマ政権になったためもあり、正直それどころではないので、現在足踏み状態だそうです。米国の方も一枚岩ではなく、全米自動車労組などの反対もあるそうです。
韓国は他にもEUなどと積極的にFTA交渉を持っています。それがわが国をいらだたせているといいます。
そう言えば、ニュースで韓国農民が過激反対デモをしていたことを、私の低容量メモリーから取り出しました。たしか香港まで出張して暴れたために国際問題にまで発展しました。おとなしすぎるわが国の農民と、足して二で割るとちょうど平均国になりますなぁ。
当時の私も映像を見ながらふ~んスゴイね、ていどの感想でして、そして今は我が身の哀しさよ、です。というのも、よもや日米FTAが現実政治の俎上に登ること自体考えにくかったからです。今でも大部分の日本農民はそうだと思います。まだピンっと来ていません。むしろ所得補償金という甘い飴玉がいくら入るかの獲らぬタヌキのなんとやらをしている始末です。
韓国政府が米韓FTAを締結に邁進したのは、自動車関税が原因でした。韓国のヒョンダイ(現代)自動車にとって米国市場は死活でした。そしてヒョンダイ自動車の死活は、韓国経済の死活と直結していたのです。だから、ノムヒョン政権は、農業部門が受ける大打撃を事前に分かっていながら、締結に突き進んだのです。
米韓FTAにより、ヒョンダイ自動車は米国市場でかけられていた自動車関税をゼロにでき、一挙にシェアを伸ばす起爆剤にできたのでした。ただし、韓国農民を切り捨てて。
このようなFTAの動きは、ASEAN諸国と中国などの間にも見られます。このような競合する新興工業国と熾烈な市場競争をしている日本の輸出産業、ことに自動車産業にとっては、米国とのFTAは喉から手が出るほど欲しい協定だったのです。
しかし、日本の農業は衰退したといっても、それなりの規模を持ち、なにより日本人にとってかけがえのないお米という瑞穂の民の心の拠り所とでもいうべきものがありました。ですから、財界としても本心はともかくとして、大前研一氏などのようにスッキリと日本農業は潰れてしまえ、外国から輸入しろ、とまでは国民感情の上でもなかなか言い切れなかったのです。
ここに、同友会提言のような財界による農業改革案が出てくるわけです。ダメ農民にやらせないで、企業に参入させろ、米など㌔160円で作って見せるぞ、こう言い放ったのが「voice」誌9月号の伊藤忠商事会長でした。
民主党の今回の日米FTAマニフェストの背後には、篠山氏も指摘するように、自動車産業と一体となった自動車総連がいると思います。いずれにせよ、自動車総連、つまりは連合と財界への供物に日本農業は供せられようとしています。
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