ありんくりん先生のオーガニック・スクール その5 どうして化学肥料や農薬を使うの?
A9 化学肥料は微生物の餌にはならない。
今の日本ではほとんどが化学肥料に頼った農業をしている。先生のグループみたいなそれに頼らない(有機農法って言うんだけど)方法はごく一部だ。化学肥料は大部分が石油からできている。自動車の油を作った副産物からだね。だからいっぱいあって安い。お百姓さんは喜んで使った。
植物は有機質をいったん無機質に変えてから吸収するので、化学肥料だけでも生育することはします。
でも、「作物を作る」っていうことは、単に植物を育てるということだけじゃない。土というのは単なる作物を支えている土台じゃなくて、作物も含めて土全体をみていかなくちゃならない。土あっての作物だからね。言ってみれば、土というお母さんの懐で眠る赤ちゃんが、野菜なんだよ。
そのお母さんである土にとって、いちばん大事なご飯はなんだろう。ハイ、うんちょ?虫の死んだの?葉っぱの腐ったの?君の30点の算数テスト?
うん、いいぞ。それらが皆んな大事な栄養となって、お母さんの土になっていくんだったね。
微生物はこのうんちょや虫の死骸、葉っぱの腐ったものなんかを自分のご飯にして土を富ましてくれる。だから、微生物という友達がいないといい土にならないんだ。微生物にとって無機質は餌にはならない(ただしミネラルも無機質だが、これは吸収します)。
化学肥料は、土全体の働きで作物を育てるんじゃなくて、作物だけに必要な栄養だけをやる作りになっている。チッソは大きくなる成長栄養、リンサンは実をつけるために必要な栄養というふうにね。
Q10 じゃあ農薬はなぜかけるんでしょうか?危ないってわかっているのに?
A10 土が弱くなったので、作物がひ弱ですぐに病気にかかるからです。
だって楽だもん。人手が足りないもん。野菜の値段ずっと安いもん。 堆肥作りというのはとても大変な手間がかかるんだ。昔は山の落ち葉を集めていたりしたが、今はなかなかそこまでできない(だから山が荒れたんだがね。哀しい連鎖だ)、そこで木屑、もみがら、米ヌカ、家畜のうんちょやオシッコ、骨粉、カキガラなんかを混ぜて、水をかけて微生物の力を借りて、切り返しながら待つこと半年。これでいい堆肥ができる。 この仕事は機械化された今でも大変な手間がかかるし、堆肥を寝かせておく場所もいるんで、今のお百姓さんは、いいことはわかっていてもなかなかしなくなってしまった。お百姓さん自身が歳とったせいもあるんだよ。60過ぎで堆肥作りは、作るのも大変だが、それを畑に撒くのもひと苦労。 こうして日本の畑から堆肥が消えると、その堆肥にたっぷりと含まれていた微生物とその餌が同時に消えていってしまった。するとどうなっただろう?お母さんの土が弱くなっていったために、その子供である作物もひ弱になっていっちゃたんだ。
化学肥料だけでも育つことは育つ。だから、お百姓さんは、メンドーな堆肥を作ったりすることを止めて、袋入りの化学肥料をパラパラふってオシマイにするようになってしまった。
そうなると病気でまくり。白菜は昨日のような嵐が来ると、根が張っていないので、すぐにコロコロこける。雨の後にくわっと温度が上がるとレタスなんかはすぐに芯から腐さる。きゅうりは真っ白にかびのようてものが生えて腐る。しかたがないので、シュワッチと農薬をかける。
虫がついてほうれんそうに穴があくと、消費者が買ってくれないので、殺虫剤をかける。大根に虫食いがあると買いたたかれるんで、土中燻蒸剤という毒ガスを土の中に散布する。だから、農薬がこんなに使われるというのは、町の消費者の過剰なきれい好きにもあるんだよ。虫がすこしくらい食っていてもなんちゃことないだろう。とって食べればいいだけだ。
虫と言っても、害虫を食べるいい虫も大勢いるんだけど、それも一緒にミナゴロシだから、天敵となるいい虫も死んでしまう。ところが、ミナゴロシをした後に復活するのは、な~んと害虫軍団のほうだ。悪党はしぶとい。けど、いい虫さんは農薬ズレしていないもんでね。
すると、殺虫剤を散布した後に、復活してくるのは害虫軍団だけ。そしてこのようなミナゴロシの中で、仮に100匹死んでも、1匹生き残ると、そいつに耐性が生れてしまう。つまり、害虫がいっそう強くなる一方だ。これじゃあ、農薬は濃度を濃くせねばならないし、金はかさむし、第一人体にも危険だ。 中国では、ホウレンソウにシロアリ駆除剤を撒いていたことがわかったが、既に香港ではそれを食べた死者まででる騒ぎとなった。中国は農薬が事実上野放し状態なので、工場の排水なんかもあって、水や土の汚染は取り返しがつかないところまで進んでしまっている。 水俣病やイタイイタイ病などがものすごい数出ていると思う。中国の農家のことを考えると、胸が痛む。おうちに帰ったら、お母さんに中国産の食品は、安くてもゼッタイに買わないでね、って言っておいてね。
さて、それだけじゃなくて、害虫のほうもあんまりしつこくやられると、こりゃヤバイ、もっと子孫を作っておこうとして産卵率を上げていく。これではいくら農薬をかけても永遠にイタチゴッコだね。 そこで、思い出したのが、リトルフレンド・微生物だったんだ。今、モーレツに微生物が見直されて研究も進んできているのはうれしい。
というわけで、いくら農薬をかけても害虫はなくならないとわかってきたんだ。今、その反省から、すこしでも農薬を減らして、堆肥を入れて土を富ましていこう、やがては完全に化学肥料や化学農薬に頼らない有機農業になっていこうという努力が始まってきたというわけだ。
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