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日本農業が難しいわけ・兼業農家問題

_edited_edited_4 前回の記事の資料として、民主党の現農水副大臣の山田正彦氏の文書を最下段にアップいたします。


民主党の農業政策は箇条書きのようなものはあるのですが、まとまったものは非常に少なく、2006年5月に提出された「農林漁業再生法案」に付帯した談話がコンパクトでいいかと思われます。

これは亡くなられた中川昭一氏が農水大臣だった当時の担い手資金法案に対しての反対のための文書ですが、この短文の中には、日米FTA政策を除いて、現在の民主党政権の考え方の基本が述べられています。

今や、中川昭一氏が惜しくも若くして亡くなられ(合掌)、代わって山田氏が農業権力の座についているのは、なんとも時代の流れを感じます。 

さて、今日の本題です。この山田談話中で民主党は「耕地面積の5割、販売農家の7割を切り捨てるのか」と叫んでいますが、なるほどであるな、民主党は弱者の味方だな、と思われた方も多いかと思います。

だいたい農業外の人はそう思われるようです。特にリベラルな方は、貧農vs富農、あるいは一生懸命に畑にしがみつく老人の零細農家vsブイブイ言っている大規模農家という図式で捉えておられるようです。
そこで今回はこの農業における「規模」についてお話したいと思います。

いきなり余談から始まるようですが、まだ私が就農して間もない頃。関東でも平飼養鶏の連絡会を作ろうという機運があって、私もその会合に顔を出したことがありました。

酒を酌み交わしつつ私からすれば、酔ったはずみに肩のひとつも組んで「村中でバカにされているオレたちだが、頑張ろうなぁ!」みたいな気分だったのですが、なにやら雰囲気が違うのです。おいそこ、ゴルフのハンディの話、すんじゃねぇ!ボーナスが出ただと?

「何羽飼ってるんです?」、「はい、20羽ばかり」、「では失礼ですが、食えんでしょう」、「いや、食い切れずに近所に配ってますよ、カハハ」、「へ?どこか出荷は?」、「ああ、道の駅に週に10パックくらいですかねぇ」、「は?いつもは何をご職業に?」、「はい私、公務員ですから」・・・チャチャチャララ~♪(白子海苔の昔のCMの節で)

なんのことはないそこに来た人で、農業でメシを食っているのは私一人!あとは学校の教師やら公務員、JAの職員。おいおいカンベンしてよ。ここは農業を語る場ではなかったんかぁぁぁ。はい、ではないのですね。

その人たちはといえば皆、20羽といえどニワトリを飼う面積が庭にあるくらいですから、農村で、代々の立派な伝統的な農家家屋に住み、お国言葉はペラペラ(あたりまえか)、見た目や、たぶんDNAは私などのようなにわか百姓よりよほど農民農民していらっしゃいます。

思えば、これが私の「兼業農家」という未知との遭遇の始まりでした。いえね、私は農家といえば、皆農家、それで飯を食っているプロと勝手に思っていたのです。確かに「ケンギョーノウカ」という言葉くらいは知っていましたが、村の中に腰を落ち着けて見渡すと、笑えるほど多いんですな、これが。

よく都会の経済評論家が、「農家は車を3台も持っている金持ちだ」だの、「大きな銭湯のような家に住んでいる」などと言いますが、まぁ当たっているような力いっぱいハズしているような話ですね。

のような言い方をすれば、私のような零細農家ですら2台もクルマ持ってます。ただし、一台は軽トラで、フツーこれは農業機械の範疇だぞ。家もデカイが、たった600万円で自分で作ったんだぞ、とかこちら農村側にも言い分はあります。ただし私のようなケースはレアなのです。瘦せても枯れても、私は「専業農家」ですから。

典型的な朝の「農家」の風景をみてみましょう。まず娘が町の店に出勤、息子がJAに出勤、別な息子が製鉄会社の下請けに出勤、嫁さんも事務の仕事に、おっかあも町のスーパーのレジ打ちのパートで出勤、そして親父自身も土木屋にご出勤。

おっとと、誰が畑や田んぼに行くんでしょう?
いないんですな、これが、わ、はは。笑ってる場合か、でもそうなんだから仕方がない。私の村などは専業農家といって、それでしっかりメシを食っている農家数が多いという奇特な村として有名なほどです(ホント)。
しかし多くの農村部は、特に米作地帯では圧倒的に兼業が多いのが実情です。

コメを作っている農家は140万戸ほどあるといわれています。私の実感的な試算では、1反歩(10アール・300坪)で、実質の現金収入は1万円ていどにすぎません。
となると先日発表された貧困率でみるとどうなのでしょう。貧困率(相対的貧困率)とは、国民の一人一人の可処分所得の中央値以下の層だそうで、228万円以下だそうです。


げ、私たち農民が田んぼだけでその貧困率ギリギリに達するためは実に22ヘクタールが必要なわけです。今、つい実にと言ってしまったのは、22ヘクタールとは馬鹿げて広い。私の村でそんな稲作面積を持っている農家はありません。県内でも50ヘクタールが最高のはずです。

ところが稲作農家の140万戸のうち1ヘクタール未満が7割ときています。これでは、ぜぇ~たいに食えません。食えなければ、兼業になるのは当然です。

となると、日本でコメだけで食べている農家はいくつあると思いますか。140万戸の農家のうちわずか3万戸です。しかも貧困率とやらギリギリの年収300万円以上をとった数字でもです。
さらにこの3万戸の農家のうち、コメの生産販売が8割の農家の数はもはや絶句する数字です。・・・2千戸。

かつて農民はコメを作ることで生きてきました。しかし、今のご時世はそれを許さない。しかし、村から出ていけない。家もあって墓もある。田んぼもある。それの面倒も見ねばならない。子供はとうぜん継がない。


日本の農業問題を複雑にさせている最大の原因は、この兼業農家にあります。

2006/05/18
「担い手経営安定対策法案」(政府案)衆議院可決および「農林漁業再生基本法案」(民主党案)否決に関して(談話)

 

民主党『次の内閣』ネクスト農林水産大臣
山田 正彦

一、 本日、政府が提出した「農業の担い手に対する経営安定のための交付金に関する法律案」が衆議院本会議で可決され、また民主党の農林漁業再生プランを法案化した「農林漁業再生基本法案」(食料の国内生産及び安全性確保のための農政等の改革に関する基本法案)が否決された。

二、 政府案は、直接支払いの対象である担い手を、都府県4ヘクタール、北海道10ヘクタールと農地面積で限定し、加えて20ヘクタール以上の一定の要件を満たす集落営農としている。審議のなかで政府は、品目横断的直接支払いは、スタート時に販売農家の3割、農地面積の5割が対象となることを明らかにした。そうであれば販売農家の7割、農地面積の5割は対象から外れることになる。対象外の農家は、これまでの麦を耕作しても10アールあたり4万円の麦作経営安定資金、10アールあたり2万7000円の大豆交付金が支給されなくなり、当然のことながら小麦、大豆の耕作を放棄することになる。そうなればさらに自給率が下がることは明らかである。

た担い手として認定された農家、集落営農に参加することができた農家も、審議のなかで中川大臣が現行水準での支給であると答弁していることから、これまでの支給額と変わらないことになり、従来と比べて耕作者にとってメリットが全くない。このように本日可決した政府案は、さらに耕作放棄地を増大させ、食料自給率を下げるものである。これは農家のみならず国民の期待を大きく裏切るものであり、断じて認めることはできない。

三、 民主党案では、主要農産物を計画的に生産するすべての販売農家を対象に直接支払いを行うこととしている。また、予算規模1兆円を明示し、食料自給率を10年間で10%アップして50%にすることを約束している。具体的には、小麦は83万トンを400万トンへ、大豆は27万トンを52万トンへ、 菜種(油脂)は600トンを32万トンへと増収を図ることで、それぞれ8%、1%、1%の自給率向上を図るものである

四、 以上のように両案は基本的な農政に関する姿勢が異なり、民主党案こそが危機に瀕している日本の農業を救うことは明白である。今回の審議では否決されたが、今後もこの法案の主旨にのっとり、都市生活者には自給率上昇による食の安全確保を、農業者には欧米並みの直接支払いによる農業振興を訴えて、国民の期待に添えるよう全力を尽くす決意である。
以 上

(太字は引用者)

この山田談話を読むと、民主党政権の農業政策の基本が以下にあることがわかると思います。
■ 1)自民党の大規模農家、法人を作るための品目横断政策を小規模農家切り捨てとして批判。

■ 2)自給率を10年間(2006年当時)で10%アップさせることを目標とする。そのために大豆、小麦、菜種を増収する。

■ 3)規模にかかわらずすべての農家に対して直接支払いをする。

 

 

 

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コメント

日本農業が難しかったから、多くの農家
が兼業農家にならざるを得なかったと私
は思います。

昭和30年代の私が小学校・中学校時代
農村は殆ど専業農家で多くは食料自給的
な複合農業だったように記憶しています。
裏作に麦や菜種、裏作だったはっきりし
ませんが、大豆も作っていました。
耕耘機・トラックターもなく、馬や牛で
田畑を鋤いていました。

昭和35年の安保条約改定後の池田首相
の所得倍増計画の中、日本は重化学工業
が進み農村から都会へ若者等の人口移動
が起り、農村も農業近代化・機械化への
転換が起ったと理解していますが、農業
では所得倍増が難しかったことが現在
まで尾引いているように感じています。

その時に農村では何が起ったか。

農業近代化・機械化のなかで、農家は、
新たに借金を背負わせられる状況になり
農業生産物の価格が倍増した訳でない
ので、兼業で借金払いする状況だった
と理解しています。

農家が新しく借金を背負わされた一つ
の機械化です。耕耘機・トラックター
等の機械は必ずしも、当時の農業規模
からは馬や牛でもよかったのに機械化
神話にだまされて借金を背負わされて
農業機械を買わされていきました。

もっと深刻な借金は、国の構造改善事業
で、当時のお金で自分の田圃を改めて
買い直す様な高額な借金を農民はさせ
られました。その為、何十年も農民は
借金払いをさせられ、私の父の87歳
で死ぬ数年前にやっと借金払いが終わり
ました。更に、問題なのは、各農家は、
農道の為と狭い土地の一部を差し出させ
、その道路は農道というより、農家以外
の人の塘路として使われ、酷い場合は、
幹線の国道等のバイパスに使われている
道路もかなりあります。

この借金を払う為に、農民の多くは当時
土建業者の日雇い労働者として働いて
いました。時代が変わって、今のような
兼業農家が多いのは、才覚がないと専業
農家をやっていけないように日本農業で
第二次産業・第三次産業労働者程の所得
を得るのが困難な状況に未だあると私は
思っています。母に私が30歳頃転身を
考えた時に農業を選択枝を伝えたら、
おまえには、百姓はやっていけない と
諭されました。

郷里でずっと専業農家をやって来たのは
2歳上の幼なじみただ一人です。その
幼なじみも自分の息子を専業農家の跡取り
にしてよいのか迷っていました。


投稿: 百姓の子 | 2009年10月27日 (火) 20時56分

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