自給率向上、減反、飼料米、一粒で3度美味しい妙案とは
国内食料自給率というわかったようなわからない数字は、だれが「発明」したのかわかりませんが、たぶん初めはこんなかんじでできたんでしょう。
ところは、霞が関一丁目一番地にそびえ立つ古色蒼然たる巨大官庁の森閑とした奥まった一室。別名「大ダヌキ様の間」
今日も歳ふりた大ダヌキが、子ダヌキを呼び寄せてなにやら密談の様子。昼なお暗い部屋で、扇子をパタパタいわせながら。
古ダヌキ「またWTOがまわって来るが、なんかパンチのあるコメ守れキャンペーンが張れないか。MA米のクズ米を80万トンも輸入して、無駄な税金使ってることがバレて、消費者が騒ぐわ、農水族からどうにかしろと怒鳴られるわで、たまらん。食料安保とからめて、自給率低下キャンペーンが張れないだろうかねぇ」
子ダヌキ「しかし局長、国内自給率は60%台を確保しています。自給率の数字はちょっと使えないんじゃないでしょうか」
古「「このクソたわけ!その60%っていうのは販売ベースだがや(←興奮すると名古弁が出る)。カロリーベースを使かわんぎゃ。そうすれば、一気に半分以下だぎゃ。4割を切ったと聞けば、国民もビビりまくるぎゃ」
子「そたらこと言っても、カロリーさ低い野菜なんかはいくら作っても自給率向上につながらぺよ(←どうやら茨城出身らしい)。したら、野菜農家が怒るでしょうよ。カボチャやイモ農家はいいかもしれないけんど。あ、うちの実家も街道の脇で作ってが。それと、畜産の扱いさどうしたらいっかっぺ」
古「バカ、お前の実家のことなんか聞いてないゾ。それにお国言葉を出すな(←自分が先に出したことを忘れているよう)日本農業の大黒柱のコメを守るために、野菜農家にはここで恥を忍んでもらおう。コメがあるからこそ、兼業農家が生き残れるんだ。兼業農家こそ票田。そのくらい知っとるだろ。
畜産はもともと農業のハンパ者だし、半分工業だから、主管を経産省に移してしまえばいい。あ、もちろんこれジョークよ、ジョーク。畜産の飼料はほとんど外国産だから、これでスパッと畜産の国内生産分を自給率からぶった切れる」
子「野菜と畜産、それと花なんかもスパッですか?ゼッタイJAが怒りますよ」
古「大丈夫!そここそチャンスなんだ、とJAには言ってやれ。国内自給率向上のニシキの御旗が欲しくないかと言ってやるのよ。だいいち素人には食糧自給率なんかどうやって計算しているのかわかるまい」
子「そうですね。EU諸国は国内自給率の計算自体してませんもんね。数字だけポンと出せば消費者には分からないって寸法ですね。なんて悪賢い、いやもとい賢明であらせられる。
しかし、飼料自給なんてできるんですかね?実験はいくつかあるようですが、実施するとしても膨大な面積が要りますし、質にしてもどうやっても外国産穀物のほうが優秀だし、第一クソ高くて使えない・・・」
古「まったくお前は頭が堅い。地方農政事務所に飛ばすぞ。いいか、100%飼料自給なんぞ初めからできるわけがないだろう。いいんだよ、農水省もやっているというところが見せられればいいんだ。
ほら、米の転作奨励金があったろ。あれにどこかの暇な研究所がやっていた飼料米をやらせて、助成金をつけてみろ。減反政策と、飼料自給で一粒で二度おいしい。
いや減反は維持できるわ、畜産飼料を自給するぞってポーズもとれるから、自給率向上に挑戦するわが省!となると、一粒で三度おいしい!われながらなんたる名案!
さっそくこれでたたき台を作れ。できたら、ブワーっと宣伝かけろ!ブワーっだ。スポーツ選手も雇って派手にやれ!これでシブチンのクソ財務省から予算を分捕れるぞ。わが省、これで先10年安泰。そしてわしゃ次官候補!」
これは悪意のこもったフィクションです。実在の団体と似ていることがあっても、それは偶然の一致にすぎません。
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