私は日本農業の同時翻訳者をしたい
とうとう有機農業界の大魔神こと、茨城大学中島紀一先生の授業でしゃべるまで、1週間を切りました。
いやー正直、先生の前はつらい。ほんとうにデキンボーの学生に戻ったような気分です。
今までご縁があって、いくつかの大学でお話させていただきました。だいたい私のところに舞い込む講演依頼は起業関係が多かったのです。いちおういくつかの新しい農業ビジネス(てなもんか)みたいなことをしてきたので、それについての話をする中から、「農業ってこんな面白い世界なんだぜ!」みたいな話をしてきたわけです。
どういうわけか、私のホラ噺が受けて、一橋大とか立教、茨大などで学生諸君にあることないことをくっちゃべってきました。私、短時間なら、熱血先生できますから。
ところで、私は日本農業の同時翻訳者のようなことををしたいのです。
というのは、日本農業は自らを語る言葉が決してうまくありません。というか、度し難く下手だといっていいでしょう。もし私が日本農業という「商品を売る」ことを企画せよ、と命じられたのならば、商品はすばらしく発展性があって、キラキラとしているのに、どうしてこんな「売り方」しかできないのか、と悩むでしょう。
現在、日本農業は自分をこんなイメージで自己紹介しています。
・・・私は歳をとり、先行きがない。いくら出荷しても儲からない、だから継いでくれると思っていた子供も去り、老いた妻と二人で田畑を耕している始末です。体も動かないので、トラクターやコンバインもつらいです。
その機械もよく故障して、その修理代も馬鹿にはできません。このように私の村も荒れて、耕作放棄地がそこかしこで増えています。昔は日本国民を食べさせているのは私たち農民だという誇りもありましたが、政府が自給率40%を切ったと宣伝しています。
もう私の人生とともに、日本農業も終わりなのかもしれません(深いため息で終わる)・・・
日本農業という美しい人がこのようにいうのです。
こんな自己紹介では若者は農業の世界に来ない!来るはずがない、来たら奇跡です。
しかしわが方の農業世界から流す情報ときたら、こんなことばかり。つらい、哀しい、潰れる・・・。全部ネガティブ。たまさか楽しい情報があったとて、消費者との田植え、稲刈り、餅つき、果てはノギャル。主語はあくまで斜陽農業に来てもらえる都会の人との話だけ。
農水省は毎日、茶の間に「日本の食料自給率41%」というバイアスのかかった情報を流し続けて、それを聞くのが、消費者だけでなく農民もいるのだと気がつかないのでしょうか。農水省が日々、農民のモチベーションを落としてどうするのだ!
これが政府や、JAの広報です。私はこんな自己卑下した農業観をいいかげんにやめたいのです。他者に哀れみを乞うようなことばかり言ってなんになるのですか。
私は日本農業の同時翻訳者として、こう明るく言い放ちたいのです。
自信を持て!うつむくな!俺ら、けっこう、そう自分が思っているよりずっとイケているぜ!
儲かるって!ひとりひとりが、頭をひねって個性的なものを作っていれば大丈夫だ。大規模だけが能じゃない。そしてこの21世紀こそ、都会の人間が俺らの農村にやって来て、百姓をやりたいって言いだす時代なんだ、って!
すばらしい中身を、哀れみを乞うような情けないパッケージで包むなんて、そのようなことはありでしょうか?すばらしいものを、すばらしく表現したい、美しいものを、美しく遇したい。
そんなシンプルなことを、農学部の若者に伝えられればと思うのです。
■写真 うちに来た小犬。性別不明。まだ名なし。
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お初にコメント失礼いたします。
私はラブホやパチンコ屋などの看板文字を製作しているものですが・・・おそらく
農業が素人のblogでは私が1番 農業に関する記事が多い! と思います。
大分以前より貴blogの存在は存じておりましたが・・・(兼業)農家の方は農地利権原理主義で、まともに私の意見を聞いてもらえないので躊躇しておりました。
簡単に申しますと・・・
フランスでは
① 51%が農業所得でなければ補助金を出さない。
② 飛び飛びの畑を(委員会が)強制的に買い上げ集約・大規模化する。
・・・の施策を講じて日本の40倍の平均耕作地面積を実現しました。それで現在フランスは自給率が126%ぐらいです。
(米国は日本の100倍 豪は1000倍の平均耕作地面積)
いかがお考えでしょうか?
投稿: 柳生大佐 | 2009年10月28日 (水) 19時32分