農家の経営赤字を尺度にする民主党農家戸別所得保障政策の怪
うちのカミさんはバラが好きです。先だっての自分の誕生日には、一万本のバラは無理でしたが、30本のバラをご自身に贈呈しておりました。
たはぁ、私、カミさんの誕生日わすれてた!またしばらく頭が上がりませぬ。でも、自分でプレゼントできるんだから、よかったじゃん(ではないか)。
さて、柳生大佐様、コメントをありがとうございます。お詳しいですね。関心しました。
[引用開始]
フランスでは51%が農業所得でなければ補助金を出さない。
飛び飛びの畑を(委員会が)強制的に買い上げ集約・大規模化する。
・・・の施策を講じて日本の40倍の平均耕作地面積を実現しました。それで現在フランスは自給率が126%ぐらいです。
(米国は日本の100倍 豪は1000倍の平均耕作地面積)[引用終了]
そのうちじっくりとやろうと思っていた直接支払いについてです。仰せのようにフランス、ドイツなどのEU諸国やアメリカにはすでに存在しています。
ま、アメリカはちょっとはずしましょう。あまりにも規模や、国情、歴史が違いすぎます。巨大サイズの人工的な植民国家は比較対象にはなりにくい。
ヨーロッパはその意味で、風土はそうとうに異なりますが、サイズは近いものがあります。といっても、もしわが国が西欧にあったら人口的にも経済的にも、巨大国家となってしまいますが(笑い)。少子化、少子化と言われ続けて、ついうっかり忘れるんですが、わが国は1億人クラブ世界10カ国に堂々ランクインしているんですよねぇ。
ま、それはともかく、柳生様のご指摘のようにフランスの補助金や直接払いはすっきりと面積に対して行われています。通常、常識的に考えればそうなります。
なぜでしょうか?それは万人が見ても「耕地面積」というのは動かしがたい農業経営の尺度だからです。
ところが、これが民主党の農家戸別所得補償制度の考えている経営コストの数字を尺度にするとそう簡単にはいきません。
たとえば、そうですね、農家の税金申告ってどうやっているかご存じでしょうか?青色を税務署は勧めていますが、ほとんどの農家は「白」です。だって、簡単だもん。
税金を申告する日に、公民館などに行くとお役人が、こう聞くわけですな。
「え~、なん反歩水稲を作っていらっしゃいますかぁ?ほうほう、5反歩ですか、するとですなぁ」と言って早見表を取り出します。
そこには水稲1反歩あたりいくらいくらとかかる所得税が乗っているという便利さ。鶏なら1千羽あたりこれだけの税とはじめから見込みで決まっているのです。
所得税申告期に、泣きながら一家をあげて領収書を整理し、納税申告書を書いていらっしゃる商工業者の皆様、まことに申し訳ござらぬ。農家の税金申告なぞ、こんなにアバウトなもんなのです。
だから年中行事のようにして、チクリで(←大体同業者の妬みです)挙げられて重加算税を食い、出荷組合ごと芋づる式にご用となることもあります。それが芋の出荷組合だったら出来すぎですが。
かくも農家のコストは藪の中なのです。有機JAS認証を私の組合でやった時には、それが大きな壁でした。有機JAS認証を取得するためには、出荷伝票はもちろんのこと、肥料などの資材の伝票まで細々と要求されます。
ところが多くの農家はそれを保管していなかったのだから、さぁ大変。最後はおっかぁの家計簿に貼りついているレシートで、認証官に「これを認めろ」と談判をする始末でした。
私は専業農家ですが、農家の経費なぞ誰が知っているのでしょう。当の農家すらはなはだ怪しいものなのに。
販売額自体がすこぶるファジー。農家の出荷はいまだ青果市場(いちば)の仲買との相対取引が多いですから、伝票なしの現金がポンポン行き来します。おっと、正確にはいちおう伝票はついているのですが、その伝票たるや、まるで符牒。名前の部分には屋号もどきの記号。だいたい出荷の箱数や束数は書いてあっても、かんじんな単価欄や合計が空白。
おいおい、こんなのを「伝票」っていうのか!
資材に至ってはこれも超ファジー。肥料やハウスパイプなどの資材は盆暮れ払いはあたりまえですし、出入りの業者とも相対の現金払いや、盆暮れに端数を切ってざっくりと払って、お互いにこにこ、さぁ一杯やっか。
ある意味、農村というのは、よくも悪しくも、この21世紀に至っても商品経済が貫徹していないのです。
基調はあくまでも「ひと対ひと」の社会ですから。
かつてサラリーマンから帰農したときにはたまげましたが、昨今はこんな資本システムが徹底しない社会もありかな、とおおらかな気持ちでつきあっています。
ですから、こんな実態を知っている私には、選挙前に(*実際は選挙前の07年11月に一回国会に一度提出し翌年否決されていますので2度目ですが)民主党が「生産費-販売価格」、いわゆるマイナス経費を補てんしてくれるという農家にとって夢のような制度をマニフェストでドドンっと出してきた時に、あ~これで農村票のゆくえは決まったな、と思ったものです。結果はご承知のとおりです。
民主党は、この曖昧模糊とした農家の経営コストの赤字に対して1兆4千億円という巨額な税金を注ぎ込もうとしている。 ひとりの農家としてはっきり申し上げますが、この民主党政権の農業政策は、正気の沙汰ではありません。農村の実態を知らない者が安易に考えたか、あるいは、農村の実態を知り抜いた者が農村票めあてと日米FTA締結のセーフティネットのために作ったような政策です。 それは今まで以上に、農民の国家への依存体質を強め、いっそう農業を衰弱させていくことになるでしょう。
■ 写真 バラは今ドライフラワーにしています。中央は朝焼け。今朝はすごい朝焼けでした。下は園芸種の花ですが、名前は知らないのです。しかし、美しいというより、ケバいですな。私は野草の花のほうが好きです。
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コメント
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濱田さま
私のコメントを記事に取り上げていただき恐縮です。
やはり日本の政治家が
俵の”ひょう”ではなく 票田 としか農家を見ていないことが日本の農業を衰退させてしまった原因でしょう。
とにかく日本の就農戸数は300万戸
ところが人口が2倍の米国の就農戸数は200万戸・・・と
アベコベなんですから・・・・
これを全部保護してしまおうという民主党の戸別補償は却って自民党以上に日本農業をダメにしてしまいます。
私は現在
東京の西多摩に住んでおりますが・分かりやすく言うと「新撰組の故郷」です。
言葉も東北弁に近いですよ。
ご存知とは思いますが・・・
農家の嫁の事件簿
http://kamatsuta.way-nifty.com/blog/
というblogをご存知でしょうか?
これは岩手県の酪農のAKIさんというお嫁さんが書かれているものですが・2年ほど前にblogの総合1位になりました!
私も「コーヒーでも飲みに来なさい」と言われているのですが
東北道を田沢湖方面とは逆ですので・なかなか行く機会がありません。
投稿: 柳生大佐 | 2009年10月29日 (木) 23時30分