国内自給率が40%だから、外国の食料に6割も依存している、というデマ
昨夜、石川遼クンのフードアクションジャパンのCMを見ました。玉子かけご飯が好きなんだって!かわいいね。自給率64%、ふーんいい線いってんじゃないの、と思いつつ・・・ん?国内自給率64%って、どういうふうに計算したの?と職業病的疑問がムクムクと。
彼の1カ月(おまけして1週間でもいいや)の総摂取カロリーを算出して、それを食品別に分類し、更にそれの国内自給率を乗じて出した値・・・まさかね。
気安く「皆さんも自分の国産自給率をやってみましょう」なんて言っているけど、玉子かけご飯が堂々と出てくるようだと(←玉子はカロリー自給率でほとんどノーカン)、要するに農水省のカロリーベース方式ではなく、販売ベース自給率でいいんでしょうなぁ(笑)。われわれ一般が皆、糖尿病患者か、栄養士が家族にいるはずもないんだから、カロリーベース計算などできるはずもないから、買った食品の額でみますよね、フツー。
農水省は、カロリーベースの41%(1%上がってましたね)なんて数字を同時にCMで大きく流すなっての。国民が混乱するじゃないか。
というか、政府は混乱するように意識的に言っているんでしょう。というのは、ニュースキャスターが「われわれ日本人は自給率40%ですから、6割は外国の食料に依存しているってことですよね!」なんて大きな声で言っていたのを何度か聞いたことがあります。
もちろん、デタラメです。この国民的な勘違いは一回といておいたほうがいいですね。
日本の輸入食料依存度はさほど大きくはありません。たぶんえっと思われるでしょう。思うはずです、農水省の徹底した国内自給率40%という執拗な意識への刷り込みによって、日本人は皆自分の国が最低のランクの農業国だと思わされてきたからです。
まず、日本の農産物輸入額の先進5カ国での比較をみてみましょう。
1位は日本?いえいえ、米国で599億ドルです。2位こそ日本に違いない。いえ、なんとドイツです。あのエコ大国、有機農業先進国と思われていたドイツで570億ドルです。続いて、3位英国、日本が同率で415億ドルで続きます。155億ドルも2位ドイツと差を開けられています。続いて4位フランスが346億ドルと続きます。
では、続いて1人あたり輸入量をみます。今度は1位がフランス593㌔、2位ドイツ570㌔、3位英国557㌔、ここでようやく4位日本が出てきて437㌔です。
ついでに国内経済GDPに占める農産物輸入比率をみます。1位は英国の1.9%、2位ドイツ1.8%、3位フランス1.7%、4位日本0.9%となります。5位米国です。
ダメ押しとなる数字があります。先進5カ国の農産物生産額です。第1位は米国1500億ドル、そして2位がなんと!わが国日本793億ドルです。EU諸国などはるかに少ない額しか農産物を生産していません。かの農業大国オーストラリア203億ドルの実に3倍です。先進国という枠をはずしても、世界第5位の農業生産額を誇っているのです!これはさすが私もビックリ。 単品においても、タマネギの生産量世界一(ギョッ)、ほうれんそう、柿(笑)3位(ゲっ)、みかん、たまご4位、キャベツ5位(ええっ)、イチゴ、きゅうり6位(たまげた)と、ベスト10入りの農産物がうじゃうじゃあります。販売金額との兼ね合いがあったとしても、EU諸国の農産物価格はさほど日本と違いがないのです。 ここで国内食料自給率と比較してみましょう。農産物輸入第1位の米国は119%、2位ドイツが91%、3位英国74%、4位フランス130%で、私たち日本が40%ですから、この農産物輸入をしめす様々な指標が、カロリーベース自給率とはまったく相関関係がないことがお分かりだと思います。 (続く)
(*以上の資料は『農業経営者』誌副編集長 浅川芳弘氏の論考に拠る)
一体農水省の言う国内自給率とはなんの数字だったのか疑問に思われないでしょうか?このように大規模な農業生産量を持つわが国が、6割も外国に食料を依存しているはずもないではありませんか。
確かにわが国の農業は危機に直面しています。しかし、誤った根拠による誤った情報の流布は、結局、過てる政策選択につながっていくのです。これは日本農業を真に建て直していこうとする時、最も避けるべきことではないのでしょうか。
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コメント
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濱田様
大変いい話を聞きました。不勉強でした。いやー驚いた。食料自給率を考えなおさなければいけないし、国民によく知らせなければ。農水省は外国向けに40%などという数字を発表しているのかな。日本は農産物輸入国だと宣伝するために。続きを楽しみにしています。
投稿: 葦原微風 | 2009年10月20日 (火) 15時49分