地元議員はもはや不要の仕組みに
私の選挙区の民主党議員は、堂々と額賀福志郎さんを破って、国会の赤絨毯を踏んでいます。太洋村という海岸淵の小さな村の村長が、今や衆議院議員です。
彼はなかなかやり手の村長として名を上げていましたが、国政レベルの見識はまったく聞いたことはありませんでした。たぶんかつての中選挙区制ならば、自民党候補のひとりとして立候補したのでしょうが、なにぶん小選挙区の1人区では額賀氏の指定席と化していました。
この元村長さんの民主党候補は、選挙期間中に一貫してこう訴えてきました。
「自民党の現職は大物化してしまい、地元にもろくに帰ってこない。地元は秘書だけで東京の人間となってしまった。これでは地元の声は国政に届かない。地元を知り尽くしている自分はこの流れを変えて、国政に地元の声を届けてみせる!」
それなりに説得力のある呼びかけだったとみえて、総理候補にまで擬せられたことのある額賀さんが、よもやの敗北を喫してしまう結果を生みました。まぁ、比例で復活しましたけれど。
で、今、どうなっているでしょうか?地元の声は民主党候補者の訴えどおり国政に反映されているでしょうか?
地方の声」を政府などに伝える陳情について、民主党県連は20日までに、一元的な受け皿窓口となる「政策推進委員会」を県連内に新設する方針を決めた。陳情の流れも「政治主導」に切り替えるため党本部が幹事長室を窓口として一元化したことに伴う対応で、県内からの陳情は県連から党本部を通じて政務三役などに取り次がれる仕組みとなる。 茨城新聞 11月21日
今まで、個別の地元議員が聴取していた陳情を、今後は県連の窓口で一括することにしたのだそうです。これは、中央の幹事長室一元化に合わせての措置で、県連政策推進室にいったん一元化し、このフィルターを通してから、中央本部の幹事長室に伝えられ、そしてここで選別して、政府に伝えるということになるそうです。
この新しいシステムだと、「県政策推進室」とやらが地域の陳情を聞くだけで、地元議員のこまめな地元応対はいらなくなります。民主党県連は,「地元に根ざした議員を作る仕組み」と言っていますが、どんなもんでしょうかね。
農業というきわめて地域的な色彩が強いものを、このように一括して県窓口で集約というのはいかにも乱暴な話です。
たとえば、同じ茨城県と言っても、山間地の県北と、農業地帯の県南、あるいは沿岸部の漁業地帯では、同じ「茨城県の農業」といってもまったく抱える問題が違うのです。
これを自民党は地元秘書や、議員本人が聞き取り、政府や官庁に取り次いでいたわけです。とうぜん、その間の金銭の授受や、利権構造が発生したことは、想像に難くありません。
これを「改革」すると小沢幹事長は言うわけです。幹事長室、つまりは小沢一郎氏の元に国民の陳情は一括して一元化する、と言うのですからなんともすさまじい。
彼のさじ加減ひとつで「政府に伝えられる」というシステムを民主党は作ってしまったことになります。あたかも、スターリン独裁時代のソ連の社会システムを見るようです。
小沢氏は「族議員を作らない」というもっともらしい言いわけをしているようですが、今までさんざんゼネコンで金権腐敗の限りを尽くした小沢氏の言うことを、真に受ける人がどれほどいるのでしょうか。
今度は岩手の利権だけではなく、全国くまなく利権は自分に集中させる、こう小沢一郎氏は言っているのです。
国会対策委員長レベルにして、小沢氏のご機嫌を伺い、強行採決をしたかと思えば、直ちにそれを止めるという右往左往ぶりが伝えられています。一年生議員は徹夜のまま強行採決の挙手要員に駆り出されたそうです。その中に元村長もいたのでしょう。「地元の声を国政に届ける」のはまだまだ先の話のようです。
今の日本は、ひとりの陰の人物にすべての権力が集中し、一切の利権を牛耳るという「一人独裁国家」に変貌しようとしています。このような国を、皆さんはお望みだったのでしょうか?
先日のTBSの時事放談の記録を読みましたが、他ならぬ自民党田中派の七奉行の数少ない生き残りであり、盟友であると思われていた前民主党最高顧問渡部恒三さんがこう言っていたそうです。ご参考までに付け加えます。
渡部氏:国対委員長(山岡賢次氏))おりますけどねえ、まあ何となく小沢くんが右といえばはい、左といえばはい、となっちゃいましたね。はい、と言わない私は首になっちゃった。
Q:でも、民主党議員はそう言われると右左とついていくわけですか。
渡部氏:もうそれは着いていきますねえ。そらたいしたもんだわ。昔の軍隊よりたいしたもんだ。
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