民主党農政の顕教と密教
民主党って党は面白いですね。右手と左手がまったく違うことをしています。
赤松農水大臣は、先だっての事業仕分けチームの横暴には、同じ社会党時代からの仲間である仙谷「仕分け共闘会議議長」に、「こるらぁ、ふざけんなよ!必ず復活折衝すっからな!」てなことを吠えていました。
いいな、がんばれ、赤松!赤松はよく燃えてススもたくさん出す(なんのこった)。こういう時にへらへら笑っていては、後々ヘタレと言われます。
一方、赤松さんのかつての盟友であった仙谷さんは、仕分け文革小組を率いて、財務省主導の下、川本裕子氏、土井丈朗氏、そしてあろうことかゴールドマンサックスのロバート・フェルドマン氏まで首切り役人にしてしまいました。
この人たちは「小泉-竹中-ホリエモン」(篠原孝さん命名)路線を推進した当事者です。私が秘かに恐れていた小泉-竹中-ホリエモン路線、言い換えれば新自由主義の復活の兆候ととられてもいたしかたないでしょう。
鳩山民主党政権は、市場原理主義を否定し、小泉-竹中-ホリエモン改革でおかしくなった日本を再建するということで、国民の期待を得たはずでした。それが政権成立早々に、かつての小泉-竹中災厄を引き起こした亡霊を呼び寄せたとなると、私はなんとも複雑な気分です。
今日のニュースではUSTR(米通商代表部)のカーク氏が、シンガポールなど4カ国のFTAに参加することを表明しました。この「環太平洋パートナーシップ協定」(TPP)は、アジア、太平洋地域の経済統合をめざす協定です。
既にシンガポール、チリ、NZ、ブルネイで発足し、オーストラリア、ベトナム、ペルーが参加を表明しています。これに米韓FTA(未締結)が連動するとなると、日本は完全に環太平洋経済圏FTAのカヤの外となります。
そもそも日米FTA締結という民主党マニフェストは、この米韓FTAを結ばれてしまうことによって、日本の自動車産業が米国市場で関税上の不利益を被る、という危機意識から構想されたものです。
間違いなく今週には、財界、そしてそれに連動した連合の自動車総連あたりからは、「この環太平洋FTAのバスに乗り遅れるのか」という叱咤が政権に飛ぶでことしょう。
さて、民主党農政にはふたつの体質があり、それぞれ未来にはふたつの道があります。
ひとつはいわば顕教である「農民の生活と生産を守る」という道です。安心して作ってくれ、農業を応援するぞということです。これが農家戸別所得補償制度に代表されるように「農家が安心して生産に励める」仕組みです。
バラマキと言われようがどうしようが、減反制度を自由参加にして、参加した農家には直接に金を出します、という制度です。私はさんざん批判していますが、従来の自民党農政と連続する「農民保護」政策です。選挙の時に聞いた民主党のいわゆる「国民目線」の農民版です。
今一つ民主党には別な側面があります。これが密教とでも言うべき流れです。
農業には未来がない、どうあがいでも国際競争力がない、滅亡産業部門だ。ならば、もう終末処理を考えたほうがいい。
成長政策など考えず、農村をレジャーランドにするか、定年退職後の団塊世代の老後の癒しの場とするか、いずれにせよ、農業政策としての考えはもはや不要という考えです。さぁ幕引きの10年が始まった、というわけです。
この密教の信仰する偶像は、国際自由貿易と市場原理主義です。グローバリゼーションと言ってもいいでしょう。
日米FTAをするには「農業が障壁になって、国益を阻害している」(経団連レポートの表現)ので、農業には安楽死してもらう。苦しんだあげく、ムシロ旗なんぞ持ち出されては困るので、そのセーフティネットとして農家戸別所得保障制度がある、というわけです。
政策においてはこのふたつの流れは、政策的に農家戸別所得保障制度で一致しました。しかし心が違うんですね。
前者は、やはり農業や農民に寄り添って発想します。なんとかしたいという気分も大いにあります。まぁ、「愛」があるってんでしょうか。今の赤松さんや篠原さんなどこの流れでしょう。
しかし後者は冷厳に日本農業をとうに見限っています。同じ農家戸別所得補償を言っても、彼らの農民を見る眼はまるで死人を見るような視線です。
このふたつの流れは今後も絡まりあいながら葛藤を続けることでしょう。かつての自民党農政もまったく同じでした。しかし、彼らは農村という人質をとられていたが故に、意思決定に遅れた。しかもその間に、小泉-竹中災厄をまき散らされて、支持基盤が崩壊してしまいました。
その後に来た民主党も同様の苦悩を味わうでしょう。
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民主党の詐欺政策については選挙前からわかっていましたが最近は改めて糞だと感じています。
農業にしても経済にしても甘い言葉だけで中身が無いのです。
なぜ国民は騙されたのかを考えるとテレビ他のマスメディアの力が大きいのです。
もっと私たちが情報を得て他の人に説得できなかったのか考えると悔しくてたまりません。
これからも度々コメントさせていただくことがあると思いますがよろしくお願いします。
投稿: きんちゃん | 2009年11月15日 (日) 20時21分