農業補助金をめぐるふたつの見方
農業補助金を考えています。実際もらったことがない農家の私が言うのだから説得力があるというのか、ないというのか(笑い)。
村の友人に「今、補助金について書いてるんだ」と言うと、このヤロー遠慮なく笑いながら、「ぶ、はは!単純なハマちゃんには無理だべよ。もう入り組んでて、ゴチャになっていて、いままでだって3年ごとにかわってぺよ。それが政権交代して仕組みがまた変わって、もう誰にもわ~けわかんねぇだべ」、だそうです。
農業外の人たちの農業補助金の記事を読むと、おおむね二つあるようです。ひとつは、「農業特権論」とでも言うべき論調です。
代表的な例は余丁町散人さんこと、橋本尚幸氏です。このブログは有名で、別に農業批判ブログというわけではないのですが、ある種執拗に日本農業を目の敵になさっていらっしゃる。
http://www.yochomachi.com/search/label/%E8%BE%B2%E6%A5%AD%E5%95%8F%E9%A1%8C
ご年配のようですが、いや、手厳しいこと。たまに読んでいてムカッとなるほどです。もうケチョンケチョン。日本農民など多すぎる、今の半数になれ、有機農産物なんぞなんの優位性もありゃしない、なんてことを平気でお書きになる。そして、悔しいことには数字的な裏付けや論理建てが明確です。
もし、私のブログに投稿なさったのなら、徹底的に討論をしたいような歯ごたえのある御仁です。宇宙空間から怪電波を発射しますという農業批判ではなくて、一部こっちのまっ芯を射抜いている部分があるのが耳が痛い。
一方、「テツの部屋」さんというブログもあります。この余丁町散人さんと真逆の立場です。
http://blog.livedoor.jp/hikochan4556/archives/51288816.html
さて、こちらの方は「先進国の大規模農業に対する農業補助金が、過剰な輸出食料となり、第3世界に輸出されて、その国の農業を歪めている」と主張します。そのとおりです。ここまではまったく同感です。
しかし、わが国の農業に対してとなると、いきなり違和感があります。「大規模中心の補助金である」(たぶん4品目横断政策のこと)ので、欧米と一緒みたいなことをおっしゃる。
違うだろって。途中までいい線だったのに、最後でコケる。なんで、欧米の農業補助金政策と、わが国のそれを並べるのでしょう。たぶん「テツの部屋」さんはこんな論理展開を考えておられます。
先進国の大規模農業補助⇒国外への余剰農産物の輸出⇒第3世界の農業への圧迫⇒食料危機。
ここが農業外の人にわかっていない一番目です。
日本の農業補助金は輸出には向かっていないのです。逆に、コメという特殊性によって自国内部に収縮します。世界で稀なる生産縮小カルテルに向かっていったのです。それが「減反」です。たぶん、この自国内部に縮小するというややっこしさがなかなかわからないだろうなぁ。
欧米は、国境措置(高関税)と、国内補助金、そして輸出補助金までつけて国内の農業をガードしました。そして当然余る国内穀物や酪農製品の生産は、外国に輸出したわけです。
では日本はといえば、過剰生産が出ると、自らの国の内部で生産を調整していきました。まことに「和の民」です。同じ国内生産過剰という問題を抱えて、出方がまったく違います。
ですから、「テツの部屋」さんが書かれるような、わが国の大規模農家に対する補助金が、第3世界野農業を圧迫することはありませんでした。まったく別種な次元の問題なのです。
欧米の農業補助金と日本のそれとは、一部重なりあいながらも異質なものだったのです。このことを押さえないで、欧米の農業補助金政策と、わが国を比較検討できません。
そしてもうひとつは、「テツの部屋」さんの言う「大規模農家」、「小規模農家」というカテゴライズが、そう農業外の人が思うように簡単なもんじゃないという現実です。
これが農業に本籍を置きながら、農業では食べていない膨大な農民層である「兼業農家」なのです。
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コメント
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やはり、農村地域疲弊原因の根幹に、これまで有力な兼業先であった誘致企業の空洞化という問題がある、というところが、なかなか、理解されていない点があますね。
というか、政治的に利用されていない点というか。
農村地域居住者の総合的収支改善のための政策、という視点がすっぽり抜け落ちてしまっている。
そんな感じがします。
農村地域における無数の換金回路の創出の必要性と、そのためのインセンティブの必要性を感じます。
投稿: Sas | 2009年11月19日 (木) 06時33分
農業を食料製造業と考えれば、日本には零細企業の農家がほとんどです。
工業では、ほとんどの町工場、零細企業では世界で太刀打ちできませんが、日本には世界に名立たる工業製造業の大手企業がたくさんあります。
もし農地法改正で日本の大手企業が農業に参入し易くなれば、我々日本人は、国産で安心・安全な美味い安価な食料が手に入り、輸出も出来、雇用も増えますし、年間餓死者2000人が出ている傍らで、単価維持のために食物を捨てるような事も無くなり、農家への補助金減少し無駄な税金も減ります。
僕らはこれからも、高い税金を払って、その税金の補助金で農薬たっぷり使い虫も食わない食物を作る農家から高値で買い食っていくのですが、もし職を失えば、いから食料自給率が高くなっても金が無くなった時点で、農家以外は自給自足できないんだから、そんな食物も食べれなくなり、その2000人の一人になってしまいます。
「農家」と地方農家が持つ投票(都市の数倍分の票)の獲得を画策する政治家、政党以外の人、日本の「農業」にとって、今の制度はどこが良いのでしょうか?
投稿: (-""-;) | 2013年8月 6日 (火) 12時09分