新しい有機農業支援予算事業とは その3 一度地域を巻き込んだら、二度と引き返すことはできない
新有機農業支援予算の3つめの問題。新事業予算では地域に対する有機農業者の立場がまったく考慮されていません。
廃止されてしまった有機農業モデルタウン事業では、要として、市町村行政と協働することが条件づけられていました。
私は農水省の予算の組み方はよく知らないのですが、このモデルタウン事業において行政に仲立ちをさせることはいろいろな意味で意義あることでした。
まず、農村地域においては行政、あるいはJAとの協働することなしにはモノゴトがいっさい進まないのです。たとえば、協議会の会合を呼びかけるなどといったささいなことひとつでも、そこに行政やJAが参加していると、いないのとではまるで重みと広がりが違います。
これを事大主義と笑うなかれ。農村で幅広く地域興しをしようという時に、行政やJAを敵に回してはまず何もできません。彼らの持っている公共性は、農村では私たち変わり者連合である有機農業者の比ではないからです。
30余年間、いい意味でも悪い意味でも、私たち有機農業の関係者は、よく言えば栄光ある孤立、はっきり言ってout of order、序列外の存在でした。私たちの有機の仲間うちだけで組合を作り、産直事業を立ち上げ、村の催しや農業関係の集まりなどにも顔を出すことは稀でした。
なるほど、行政も、ましてやJAなどが、私たちを振り向こうともしなかったことは事実ですが、もう私たちはかつてのそれではない。それなりの力を付けて、確固たる経済基盤も、都市消費者との関係も作り上げてきています。もう孤立を粋がっているような子供じみたことは終わりにしたいのです。
私たち有機農業も幼年期が終わり、地域農業の一角として果たすべき役割を果たすべき時期です。その時期にこのモデルタウン事業がやってきたわけです。
・・・などと、殊勝に考えていたら、あっさりと仕分けられてしまい、次に農水省が言ってきたのは、「予算を復活させたが、今度のものは地域など考えなくてもいいんだよ。あんたがたの収益性や経済効率を向上させることだけやってくれたらいいんだから」ときたもんだ!
何を考えているのか農水省。そんなわけにいかんだろうが。
もう、私たちは一世一代の決意で、有機農業という住み慣れた穴ボコから出てきて、地域の行政や、なんとJAまでにも声を掛けてしまった後なんですぜ。ここで、「いやー、農水省がああいうもんで地域興しはいちおう中止つうことで、私らだけの収益性向上に邁進しますわ」などと頭をかきながら言い出せば、まぁご想像どおりですわな。もう百年間、地域は私たち「有機のてい」を信じてはくれないでしょう。田舎では信義は命より重いのです。
ですから、この地域行政や、JAなども含んだ減農薬減化学肥料生産者とともに地域を作っていくという私たちの有機農業推進協議会の規定方針は変えるわけにはいきません。名称も、「産地収益力向上協議会」などというゲロゲロの名称には絶対にしない。
冗談じゃない。政治に介入されるたびに地域主体を名称ぐるみコロコロ換えていたら、いったい農業者の主体性なんぞどこにあるのでしょうか?
農水省、そして私たちをよくぞ仕分けてくれた無知蒙昧な民主党議員の諸君、ひとこと言っておく。百姓をなめるなよ!
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