辺野古移転はなくなった・そして
上の写真は名護市役所です。象集団が作った風土を生かした公共建築の傑作ですが、新たな名護市長に反対派が押す稲嶺進氏に決まりました。予想どおりの僅差でした。
阿波根昌鴻さんも、天界であの温顔をほころばせていらっしゃることでしょう。そしてショーコーさんの写真に見守られて、長期の炙られるような炎天下の下で座り込みを続けた監視団の皆さん、ご苦労様でした。長い戦いをしばし忘れて、チクとコシユックイして下さい。皆さんの辺野古移転阻止という運動目標は十分に達せられましたから。
さて視点を変えます。情を抑えて今後の展開を考えてみます。
実は、意外に思われるかもしれませんが、この選挙結果ほど鳩山政権を追い詰める結果はありませんでした。「県民の思いを重視する」という表現で、のらりくらりと国防方針を地方自治体に転嫁し続けてきた首相は、これで完全に退路を断たれることとなりました。
首相は「ゼロベースで」などとピントのはずれたことを言っていますが、今度こそ中央政府が決断を下す番です。しかし、この選挙結果により、選択肢は極端に狭まりました。辺野古移転が地域の民意によって拒否された以上、県内移設候補だった伊江島、下地島はほぼありえません。両地元自治体とも反対決議をしているうえに、伊江島に至っては沖縄の「反戦の聖地」ですらあります。
つまり、県内移設の線は完全に消えたと言っていいでしょう。ならば県外移設となるのでしょうか。交渉には「相手」がいます。私たち日本人はとかく忘れがちですが、今回の普天間移設問題には「相手」が存在します。あたりまえですが、それは米国政府です。
ここで改めて交渉相手の米国にとっての普天間基地が「なければならない緒条件」を上げてみましょう。たぶん条件は大きくふたつです。
まず第1に、普天間基地が存在する意味は、東アジア有事、なかでも台湾有事のためのに緊急展開部隊を送り込むためのヘリコプター基地です。そしてその基地の所在地は、ヘリコプターの航続範囲が台湾から緊急有事に即応できる範囲内です。この条件に合うのは、北九州の一部と奄美諸島の一部、そして沖縄本島です。
第2に、普天間基地というのは単独では存在しません。あくまでも海兵隊の駐屯地(キャンプ)とワンセットなのです。有事即応する部隊とヘリコプター部隊は一つがいの軍事ユニットなのです。となると、海兵隊駐屯地と離れた普天間基地の存在はありえないことになります。
もし普天間飛行場のようなヘリ基地を県外に移設するとなると、同時にキャンプハンセンなどの海兵隊駐屯地も移設せねばならなくなり、大変な大事となります。
また、グアムでは東アジアでの緊急展開にあまりに遠すぎる上に、事実上、嘉手納空軍基地を除く沖縄の基地すべてを撤去するに等しくなり、現実性がありません。社民党や伊波宜野湾市長の言説は空想的期待にすぎません。米国がその条件を飲むことはありえないでしょう。
したがって、普天間基地は、現状の諸条件の中では動きようがないと思われます。そしてその場合の答えは、消去法によって論理的にただひとつしかありえません。
普天間基地は居すわり続けます。ある米国政府関係者は、この普天間移設の交渉に15年かかったのだから、あと15年はかかるだろうね、とのたもうたそうです。
かくして、すべては15年前の振り出しに戻りました。しかも単純に戻ったのではなく、もつれて、歪んで、地域を二分し憎み合って戻ったのです。
私は為政者に必要な条件は、「毒」を飲む精神の強さを持つことだと思っています。この場合、普天間を辺野古に移転するという「毒」を飲むか、さもなくば交渉相手に「毒」を飲ませるしかなかったはずです。
鳩山首相は、この「毒」という言葉からもっとも遠いひとです。いつも他人の顔色を伺い、ヘラヘラと無節操な言い逃れで人生を渡れると思ってきた御仁です。もっとも首相に据えてはならないタイプの人でした。それにしても、こんなマザコン男とゼネコン男がリーダーでなければ、この民主党政権はよほどましなものになっていたでしょうに。
しかし、もう逃げられません。今度は「毒」を飲むのは、他人に毒の杯を回し続けて恥じなかったこの男の番ですから。
鳩山首相、あなたに少しでも勇気というものがあるのならば、米政府に対して真正面から「県民の思い」を対置しなさい。結果、普天間基地が居すわるのなら、それを県民に、いや、私たち日本国民すべてにわかるように説明しなさい。それがあなたの首相としてのたぶん最後の仕事になるはずですから。
■追記
記事をアップした後に、首相の発言が伝わってきました。「辺野古移転の現行計画も除外しない」そうです。また名護市長選の結果も、「それはそれとしてひとつの意志として考える」のだそうです(爆笑)。いちどこの人の脳味噌を開けて、中身がオガクズでないのか確かめてみる必要がありそうです。
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